説明

紙通し駆動装置

【課題】 本発明は、印刷機の紙通しにおける駆動装置において、駆動ローラの汚れを防止し、紙通し走行体を確実に走行させる駆動装置を提供し、紙通し時のトラブルを防止し紙通し作業の効率化を計ることを目的とする。
【解決手段】 輪転機の給紙部より折機に至る経路にガイドレールを敷設し、ウエブの先端を保持した走行体を走行させ紙通しを行う装置において、前記走行体を押圧挟持し駆動する一対の駆動ローラうち少なくとも一方の外周面に対し押圧するブラシを設けたことを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機の新聞輪転機などにおける紙通し装置の駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における紙通し装置について、図6ないし図9に基づいて説明する。図6は要部斜視図、図7は図6のA−A部断面図、図8は駆動装置側面図、図9は駆動装置正面図である。
【0003】
印刷機の新聞輪転機などにおける紙通し装置は例えば特開平05-212847若しくは特開平08-090750に示すように給紙装置から折機まで、紙通し経路に沿って設けるガイドレール1の中にウエブ3の先端を保持した走行体2を紙通し駆動装置4によって走行させることにより自動的に紙通しするようになっている。
【0004】
図6は前記紙通し装置の駆動部分の斜視図で、走行体2を紙通し経路に沿って設けられているガイドレール1の溝1bに通し、走行体本体2aに取り付けた継手2dにウエブの先端3を貼り付け、ガイドレール1の切欠部1d部分に一対の駆動ローラ41a、41bで走行体2を押圧挟持し、該駆動ローラ41a、41bをモータ42で駆動し走行体2を走行させている。図7は図6のA−A部分の断面図で、ガイドレール1の溝1b、及び割れ目1cに走行体2を通し、スラスト受けガイド2bが溝1bに沿ってガイドされるようになっている。
【0005】
ガイドレール1の切欠部1dの断面が図8で、駆動装置4の側面図である。ブラケット43bは図示しない機械フレームに固設されており、一方の駆動ローラ41bはブラケット43bに回転自在・軸方向固定に支持されている。該駆動ローラ41bの一端はモータ42に連結されて駆動される。該駆動ローラ41bの一端側に歯車45bを固設し、他方の駆動ローラ41aの一端に固設された歯車45aと噛合って他方の駆動ローラ41aが駆動されている。他方の駆動ローラ41aは押付アーム44のアーム44aに回転自在・軸方向固定に支持されており、アーム44aはブラケット43bに固設されたブラケット44cに支持されたピン44bを中心に回動できるようになっており、ばね44fに付勢されて他方の駆動ローラ41aを、一方の駆動ローラ41bに押圧するようになっている。上記両駆動ローラ41a、41bが走行体2を押圧挟持し、駆動ローラ41a、41bの回転により走行するようになっている。
【0006】
一方の駆動ローラ41bは金属製で走行体2と接触する外周面41dは摩擦係数を上げ、駆動力を大きくするために凹凸をつけている。他方の駆動ローラ41aの外周面はウレタンなどの樹脂で覆っている。
【0007】
ところが、印刷機の雰囲気は微細なインキ粒子や紙紛が浮遊しており、長期間使用すると各部がよごれてくる。ガイドレール1特に溝1bの汚れは走行体2の走行抵抗を増し、また、駆動ローラ41a、41bの外周面41c、41dの汚れは走行体2の駆動力を低下させる。
【0008】
【特許文献1】実開平07−002051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述したようにガイドレール1の汚れ、駆動ローラの外周面41c、41dの汚れや、凹みの目詰りは走行体2の走行抵抗の増加や走行体2への駆動力の低下となり、走行体2の走行不良による紙通し失敗や、ウエブ3の両端の先端をそれぞれ機械両側に設けたガイドレール1に沿って走行体2により搬送する場合は両側の走行ずれを生じ、途中で逆方向に引き合いし破断する紙通し失敗や、一方のたるみが大きくなり回転物に絡まってウエブ3が破断し紙通しが失敗するなどの課題がある。
【0010】
ガイドレール1の汚れは例えば実開平07-002051があるが、駆動ローラ外周面を清掃するものは無く、上述の障害を起こしている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、輪転機の給紙部より折機に至る経路にガイドレールを敷設し、ウエブの先端を保持した走行体を走行させ紙通しを行う装置において、前記走行体を押圧挟持し駆動する一対の駆動ローラのうち少なくとも一方の外周面に対し押圧するブラシを設けたことを特徴とする。
【0012】
また、上記課題を解決するために、請求項2に記載の本発明は、請求項1の本発明において、前記押圧するブラシは押圧量を調整できるようになっていることを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するために、請求項3に記載の本発明は、請求項1の本発明において、前記押圧するブラシが樹脂製であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に記載の紙通し駆動装置によれば、紙通し走行体2の走行が正確になり、紙通しが確実にできるようになるので、紙通し作業時間短縮になる。
【0015】
また、走行体2の走行が極端に悪くなると人手により紙通し作業をすることになるが、その場合は時間制限との関係で一時的に人員を増員する必要があり、省人化されている現代の状態では非常に困難であり、費用の無駄、他部門への悪影響などの問題が発生する。これらの問題を減少させる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る紙通し駆動装置を、図1乃至図3を用いて説明する。
一対の駆動ローラ41a、41bがあり、図は従来と同様に金属製で表面に凹凸を付けた駆動ローラ41bをモータ42で駆動している。他方の駆動ローラは、走行体の寿命を考慮しウレタン等の摩擦係数の高い樹脂製とし、表面は平滑としている。
該駆動ローラ41bの外周面には、ブラケット43aに支持されたブラケット5bの先端に設けたブラシ5aを押圧している。ブラシは、ローラの4a及び4c又は41b及び41dの全幅一列のブラシでも良く、41c又は41dのみに接するよう段差に刈り込み或いは部分植え込みのブラシでも良い。
ブラケット5bはブラシ5aを駆動ローラ41bに対し接離し、押圧量を調整できるように長孔5cを設け、ボルト5dでブラケット43aに取り付けている。
【0017】
駆動ローラ41bの表面は、硬化させたり、耐磨耗性の硬化剤を溶着等させたものでもよい。駆動ローラ41aは外周面はウレタンなどの樹脂を使っているが、走行体との摩擦力を上げ駆動力を大きくするため、両駆動ローラ41a、41b共金属ローラで表面凹凸にしてもよい。しかしながら、両凹凸面での挟持による走行体の塑性変形が生じ易く、結果走行体の使用可能限度、即ち寿命を短くする欠点を有する。
尚走行体との摩擦力は、両ローラ間の挟持力に大きく影響するが、挟持力を増加すると、上記と同じ理由で走行体の塑性変形を生じさせ寿命を短くさせることになる。従って、走行体の塑性変形を起こさせない軽い挟持力で確実な走行駆動力をいかに確保するかが重要で、ローラ汚れの対処がキーポイントとなっている。
【0018】
ブラシ5aは駆動ローラ41bに対し取り付けたもので説明したが、どちらか一方又は両駆動ローラ41a、41bに付けてもよい。
インキミストや紙粉の固着による汚れは、一般に金属部に多く付着発生し、特に溝部に滞留し堆積固着し易い。即ち、見かけ上ローラの凹凸表面の溝は無くなり平滑となるため駆動摩擦力を大幅に低下させる。従って、どちらか一方に取り付ける場合、凹凸金属ローラ側に取り付けた方がより大きい効果を得ることができる。
【0019】
ブラシ5aで凹凸を設けた駆動ローラ41bの表面41dを押圧することにより、紙通し作業の時の駆動ローラ41bが回転する度に表面の凹部に詰まった汚れを取り除くため、長期間放置し固着が進行することが無く、容易に取り除くことができる。従って、常に駆動ローラ41bの摩擦力の低下を防ぎ、走行体2の確実な走行をさせることができる。
紙粉或いはインキミストを含む汚れは、毎回当たりわずかな量だが、掻き取られた後ブラシ近傍に落下し、堆積することになる。図4のトレー7は汚れを溜め、ブラシ押圧量を調整する時等に、除去することができる。汚れを溜める別な方法として、図2のローラ部の安全カバー46をトレー兼用の構造にすることも出来る。
【0020】
前記ブラシの適正押圧量は、ブラシの材質、線径、硬度、剛性により変化するが、一般に多過ぎると曲がり、或いは折れが発生する他、ブラシ先端での凹部の掻き取り効果が減少する。逆に短いと、磨耗により早く掻き取り不良となるため、押圧量を再調整する頻度が多くなり、その調整作業が大きな負担となってくる。従って、これらの状況を判断して、設定することになる。
ブラシ5aの材質は相手の駆動ローラ41の寿命をより長く保つため、駆動ローラ41の表面硬度より低いものが好ましい。樹脂、特にナイロン製は清掃効果と相互の磨耗を考慮すると適当である。
【0021】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態について図4及び図5を用いて説明する。
前記第1の実施の形態においては、ブラシ装置5の駆動ローラ41に対する押圧調整は、取り付けボルト5dを緩めて直接移動させるものであったが、ブラシ押圧調整装置6により位置に設定できるようにしたものである。
【0022】
ブラシ押圧調整装置6はブラケット43aにブラシ押圧調整装置6のブラケット62を固設し、該ブラケット62には雌ねじ部62aを設け、該雌ねじ部62aに押しボルト61の雄ねじ部61aを螺合させ、押しボルト先端61bでブラシ装置5のブラケット5bを押すようになっており、押しボルト61で調整後、止ナット63で固定するようになっている。
【0023】
ブラシ5aが磨耗して駆動ローラ41b側に移動させたい時は、ブラシ装置ブラケット5bを固定しているボルト5dを緩め、次に、ブラシ押圧調整装置6の止ナット63を緩め、押しボルト61を回転させ、押しボルト先端61bでブラシ装置ブラケット5bを所望する量動かせ、ボルト5dを固定し、止ナット63でロックしブラシ5aの移動調整を行なうようになっている。
別な構成例として、ブラケット5bを薄いバネ板にて形成し、前記押しボルト61にてブラケット5bの押し量を調整する事も出来る。この場合、ブラケット5bを固定しているボルト5dを緩め再固定する作業も不要となる。
【0024】
該ブラシ押圧調整装置6によって、ブラシ5aの移動が精度良く、しかも小さな力で調整ができるので調整作業が容易であり、ブラシ5aの駆動ローラ41bに対する押圧状態を良好に保つ事が容易になり、駆動ローラ表面41dの凹部に詰まった汚れを取り除ける状態の維持が容易になり、よって、駆動ローラ41bの摩擦力の低下を防ぐことができ、走行体2の確実な走行をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る紙通し駆動装置の正面図
【0026】
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る紙通し駆動装置の下面図
【0027】
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る紙通し駆動装置の側面図
【0028】
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る紙通し駆動装置の正面図
【0029】
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る紙通し駆動装置の側面図
【0030】
【図6】従来の紙通し駆動装置の要部斜視図
【0031】
【図7】図6の断面A−A部断面図
【0032】
【図8】従来の紙通し駆動装置の側面図
【0033】
【図9】従来の紙通し駆動装置の正面図
【符号の説明】
【0034】
1 ガイドレール 1a ガイドレール本体 1b 溝
1c 割れ目 1d 切欠部
2 走行体 2a 走行体本体 2b スラスト受ガイド 2c 継手
3 ウエブ(紙)
4 紙通し駆動装置 4a 本発明の駆動装置 4b 従来の駆動装置
41 駆動ローラ 41a 駆動ローラ 41b 駆動ローラ
41c 圧接面 41d 圧接面
42 駆動モータ
43 ブラケット 43a ブラケット 43b ブラケット
44 押付アーム 44a アーム 44b ピン 44c ブラケット
44d ボルト 44e ナット 44f ばね
45 歯車 45a 歯車 45b 歯車
46(46a、46b) 安全カバー
5 ブラシ装置 5a ブラシ 5b ブラケット 5c 長孔 5d ボルト
6 ブラシ押圧調整装置
61 押しボルト 61a 雄ねじ部 61b 押しボルト先端
62 ブラケット 62a 雌ねじ部
63 止ナット
7 トレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪転機の給紙部より折機に至る経路にガイドレールを敷設し、ウエブの先端を保持した走行体を走行させ紙通しを行う装置において、前記走行体を押圧挟持し駆動する一対の駆動ローラと、該一対の駆動ローラのうち少なくとも一方の外周面に対し押圧するブラシを設けたことを特徴とする紙通し駆動装置。
【請求項2】
前記押圧するブラシは押圧量を調整できるようになっている請求項1の紙通し 駆動装置。
【請求項3】
前記押圧するブラシが樹脂製である請求項2の紙通し 駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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