説明

素振り用木刀

【課題】従来の木刀は、剣道形の練習や単に筋力アップを目的として作られている。これは古来の真剣による剣術に由来するものであり、現代の剣道修行者にとってそれなりの効果はあるが、現代の竹刀のみを使用する剣道試合ではその効果に於いて物足りない。本発明は、有効打突技術を向上させる素振り用の木刀を提供する。
【解決手段】柄の部分の断面を正円にし、刀身は先端に行くほど重くし、刀身に大きな反りを加えることで、この木刀を使用して素振りをする事により竹刀を使った剣道試合に於いて左手の小指及び薬指の握りのずれをなくし、打突の瞬時、両手での柄の絞りは強く、速く、かつ、正確になり、しっかりと竹刀の刃の部分で打つことが出来、打った後も腕が良く伸びる。これによって有効打突となり勝利を得ることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剣道の修行をする者が使用する素振り用木刀に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の木刀は、主に二つの目的を持った物が作られている。
【0003】
一つは、真剣を模造し柄の部分の断面は瓜実形をなし、刀身部分も若干刃部は薄くなっているがほぼ瓜実形の断面をしている。そして剣先に行くほど細く軽くなっている。刀身の反りも全長の1%程でほぼ直線に近い。主に剣道形の練習に使用されている。長さは102cm。全体の重量は、500g程度である。(図1参照)
【0004】
もう一つは、素振り用に使用するため、筋力アップを目的として全体の重量を重くしている物、あるいは柄の部分は細いが刀身部分を重くしている物。この場合も柄の断面は瓜実形をなし刀身の反りは無い。長さは色々有り全体の重量は、1kgを超える。(図2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008―99869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に述べた従来の木刀は、単に剣道形の練習及び昇段審査時の剣道形の披露に使用するもの。(剣道形の練習も意義はある。)あるいは筋力アップを目的として素振り用に作られたものである。先端に行くほど刀身の断面を太くした木刀が提案されている。(例えば特許文献1参照)この木刀は確かに筋力アップには効果があるが剣道技術のアップはあまり期待出来ない。
【0007】
現代の剣道は竹刀を使った打突により勝敗が決する。勝敗を決める有効打突は、力まかせの強打ではなく、竹刀の刃とする部分が正確に相手の打突部位にあたり、そして打った腕は即座に伸びていなければならない。先に述べた従来の木刀ではこの技術を養う事は出来ない。
【0008】
本発明は、このような有効打突技術を向上させるべく考案した画期的な素振り用の木刀である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして本発明は、上記目的を達成する為に、剣道家達が従来から持つ木刀に対する常識的概念を覆し、柄の部分の断面は正円で直径は竹刀のサイズとほぼ同じとし剣先に行くほど大きく、そして重くする。(柄以外の刀身の断面は正円でなくともよい。)刀身の反り、つまり木刀の曲がりは、木刀の全長の2%から18%の範囲とする。
【0010】
上記課題解決手段による作用は次の通りである。
木刀を持って素振りをし、打突部位で瞬時に木刀を止めた時、柄の断面が正円であれば木刀が手の内で滑り回りやすい。又、木刀に大きな反りがあれば尚回りやすくなる。そして剣先が重いと一層回りやすくなる。木刀が回ってしまえば刃筋は傾き正しい打突が出来ない。
【0011】
本発明の木刀で正しい素振りをする為には打突を止めた瞬時、左手の小指と薬指で強く柄を握る力と両手で強く正しく柄を絞る力が従来の木刀に比べて数倍必要になる。その為、この発明の木刀で素振りすることにより一段と正しい打突技術が身に付く。尚、この木刀で素振りをする時、剣道試合用の籠手をはめて行うと手の内で木刀が一層滑りやすく本木刀を使った素振りの効果が一段と高まる。
【発明の効果】
【0012】
上記課題解決手段による技術的効果は次の通りである。
本発明木刀による左右面、左右胴、籠手の素振りをする事により、左手小指及び薬指の竹刀を握る力を強くし、打突した時の両手の絞りが強く正しくなり、竹刀を使った剣道試合において狙った相手の部位を正しい刃筋ですばやく正確に打突出来、打突後はまっすぐに腕を伸ばすことが出来る。
【0013】
すなわち剣道で言う“手の内”が一段と向上する。そのため言うまでもなく打突速度が速くなり、打突後瞬時に手、腕、肩の力が抜け素早く次の動作に移る事が出来る。
【0014】
本発明は、長年剣道を続けてきた人でも実際に本木刀を振って見なければ納得出来ない。想像だけではまず思いつくことは出来ない。
【0015】
又、この技術は居合道の訓練にも、又、柄の部分を長くする事により薙刀の訓練用として応用する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の木刀の正面と断面の説明図。(その1)
【図2】従来の木刀の正面と断面の説明図。(その2)
【図3】本発明の木刀の正面と断面の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明木刀の柄の断面直径は、小学生から大人までが使用する各サイズの竹刀の柄の断面直径とほぼ同径とし、正円とする。刀身は大きく反り(全長の2%から18%)、剣先に行くほど太くする。(当然剣先に行くほど重くなる。)刀身部分の断面形状は特に規定しないが、考えられる断面形状を図3に示す。木刀の全長は使用する者の体力と技量に合わして50cmから200cmとし、木刀の全重量も同様に200gから1500gとする。
【0018】
上記柄の断面、刀身の反り、剣先の重さ、全長そして全重量を組み合わせて製作することで使用者に最適の長さ、重さ及びバランスを有する木刀が選択できる。
【符号の説明】
【0019】
1 従来の木刀その1の柄の部分の形状を表す断面
2 同刀身の部分の形状を表す断面
3 同刀身の反り
4 従来の木刀その2の柄の部分の形状を表す断面
5 同刀身の部分の形状を表す断面
6 同刀身の反り
7 発明木刀の柄の部分の形状を表す断面
8 同刀身の部分の形状を表す断面(6種類)
9 発明木刀の刀身の反り


【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄の部分の断面が正円である木刀で刀身は先に行くほど太く重くした木刀。
【請求項2】
柄の部分の断面の径に対して先端部分の断面の径を1.2倍から2.4倍とした請求項1記載の木刀。
【請求項3】
刀身の反り(曲がり)は、全長に対して2%から18%に大きくした請求項1及び2記載の木刀。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−200345(P2011−200345A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69072(P2010−69072)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(310007313)