説明

素振り練習具

【目的】素振りの早さと不自然さを、発生する音の高低とシャフトの曲がりで判定できる練習具を提供する。
【構成】フレキシブルチューブである波形管25の根本側端部にグリップ部10を設け、その先端部にウエイト部12を設けた棒状体のものからなる。これにより棒状体の一方端から他方端の全体に渡り貫通孔15が形成される。この練習具を使用して素振りを行うと、貫通孔15をエアーが通過して音が発生し、素振りの早さに応じて音の高低差が生ずる。更に素振りが不自然な場合には、波形管25の部分が曲がり、変形する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、ゴルフスウィングや野球のバットスウィングの練習用のための素振り練習具に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】従来においては、ゴルフスウィングやバットスウィングの練習をする場合には、実際のゴルフクラブやバットを使用して素振りの練習を行っている。ゴルフスウィングやバットスウィングの練習の目的は、先ずスウィングスピードの向上を図ることと、正しいスウィングを身に付けることである。そこでスウィングスピードを向上させるために、素振りを繰り返して練習するわけであるが、そのスピードが向上したか否かを判断するためには、特殊な機械や器具並びに測定器を用いて、例えばゴルフであれば、模擬のプラスチック製のゴルフボールを実際のクラブで打撃してそのミートの瞬間のヘッドスピードを測定する装置が存在している。しかし、このような測定器を使用せずに簡単にスウィングスピードを判定できるような練習具は存在していなかった。
【0003】また素振りの正さをチェックをする場合には、実際に使用するゴルフクラブやバットを使用して、大きな鏡の前で素振りを行い、鏡に写し出されたスウィングを見て自己のスウィングのチェックをしたり、或いは他者に自己のスウィングを見てもらい、そのスウィングの問題点等を指摘してもらいながら、スウィングの修正をしているのが現状である。或いはビデオカメラでスウィングを録画して、その後録画を再生することによってスウィングチェックを行っている。そこで本願発明においては、極めて簡単な道具によってスウィングスピードを判断できるもの、またスウィングの正しさを身に付けるために、その癖や問題点等を自己自身が判断して、容易にスウィングの修正ができる練習具を提供することをその課題としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本願発明の第1のものは、一方端部分にグリップ部10が設けられた棒状体のものから成り、この棒状体の一方端から他方端の全体に渡って貫通孔15を設け、この貫通孔15の内周面の一部又は全部に複数の略環状凹凸部を形成したものである。本願発明の第2のものは、上記第1の発明において、棒状体の一部又は全部を塑性変形を行う可撓性を有するものから形成したものである。ここで塑性変形を行う可撓性を有するものとは、手の力によって曲げを生じさせることができ、且つそのままの状態を維持することができ、しかも手の力によって元の形状に復元することのできるものをいう。本願発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、貫通孔15の先端開口部を閉塞し、棒状体の周側面の適宜位置に少なくとも1つ孔部を設けたものである。
【0005】本願発明の第4のものは、一方端部分にグリップ部10が設けられた棒状体のものから成り、この棒状体の一方端から他方端の全体に渡って貫通孔15を設け、棒状体の一部又は全部をフレキシブルチューブである波形管25によって形成したものである。ここで、波形管というのは、一般にその機能上の観点からフレキシブルチューブといわれているもので、管壁が波形形状を有している金属製の管体をいい、ベローズ管とも言われているものである。本願発明の第5のものにおいては、上記第4の発明において、グリップ部10と反対側の棒状体の先端部側にウエイト部12を付加したものである。本願発明の第6のものは、一方端部分にグリップ部10が設けられた棒状体のものから成り、この棒状体の一部又は全部を塑性変形を行う可撓性を有するものから形成したものである。
【0006】
【作用】上記の第6の発明以外の発明においては、素振りをすることによって練習具から音が発生し、スウィングスピードが早ければ高い音が出て、それが遅ければ相対的に低い音が出る。これにより自己のスウィングスピードを判断して、その向上を図る目安とすることができる。他方上記の発明のうち、棒状体が可撓性を有するものにおいては、自己の素振りが自然であるか否か、余分なところに変な力が入っていないか否か、変な癖があるか否か等を判定することができるものであり、自己のスウィングが不自然な場合には練習具の可撓性を有する部分が変形してしまい、その問題の部分を判定することができる。
【0007】即ちスウィングが不自然であったり、変な癖がある場合又はスウィングに問題がある場合には、練習具を構成する塑性変形を行う可撓性を有する部分が変形して、曲がってしまい、その曲がりの方向や大きさ等によりスウィングの問題点を発見することができるのである。そして、この練習具が変形しないように素振りの練習を重ねることにより、そのスウィングの修正を図ることができる。更に上記の発明において、貫通孔や孔部が設けられ、且つ可撓性を有するものからなる練習具においては、スウィングスピードと共にスウィングの不自然な箇所の両者を同時に判定することができる。また上記第5の発明においては、ウエイト部の付加によって実際のゴルフクラブやバットの重さと同等のものとすることができ、実際の道具を使用して練習するのと同様の作用を発揮する。
【0008】尚、本願発明に係る練習具が音を発生することの原因は、一般にフレキシブルチューブと言われている波形管(ベローズ管)を使用した点にあることが経験上判明している。発明者は、波形管を取り扱っており、この波形管を利用してゴルフスウィングの練習を行っていた際に、この波形管が音を発生させること、またスウィングスピードにより音の高低差が生じることを発見して、本願発明を完成したのである。現在の時点で明らかなことは、この波形管の内周面の複数の波形形状(環状の凹凸部)、即ち内周面の内径が小さくなったり大きくなったりする繰り返しによって、この貫通孔を通過するエアーによって音が発生するということである。従って、本願発明に係る練習具によって素振りを行うと、その貫通孔が設けられたものにあっては、この貫通孔内をエアーが通過して、「ピュー」という音が極めて明瞭に発生する。しかもこの音は、スウィングが早い場合には高い音が発生し、スウィングが遅い場合には相対的に低い音が発生するのである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面と共に発明の実施の形態について説明する。図1は、本願発明に係る練習具としてゴルフスウィング用のものを図示しており、その(A)が全体正面図、その(B)が断面説明図、その(C)がシャフト部の一部拡大断面図である。この練習具は、根本部のグリップ部10と、中間部のシャフト部11と、先端部のウエイト部12とから成る。ウエイト部12は、特に設けなくとも実施可能である。つまりグリップ部10とシャフト部11との合計重量をほぼゴルフクラブと同等のものとしておけばよいからである。シャフト部11は、一般にフレキシブルチューブと言われているステンレス製の波形管25を利用している。波形管25はシャフト部11からグリップ部10の内部に渡って、グリップ部10の根本側端部まで延長しており、この例においては波形管25の一方端部にグリップ用のクッション材を巻回し、更に革を巻回して(図示省略)グリップ部10を形成している。このグリップ部10の構成は自由に設計することができる。
【0010】シャフト部11に利用されている波形管25は、その断面を図1(C)に示しており、管壁が環状の凹凸部の繰り返しによって波形に形成されたもので、この波形のピッチによって可撓性の度合が決定される。波形管は、管壁の環状の凹凸部がスパイラル状に形成されたものであってもよい。更にシャフト部11の先端にはウエイト部12が設けられ、このウエイト部12は、内部に貫通孔が設けられ、且つ一方端内周面に雌ねじが形成されたネジ棒13を利用し、シャフト部11の先端に螺着している。このネジ棒13の外側にはゴム14を被覆している。被覆部材の素材は自由である。この先端のウエイト部12は、可撓性を有していない。以上により、このゴルフ用の棒状体からなる練習具は、その根本部のグリップ部10の端部から先端部のウエイト部12の先端までの全体に渡り貫通孔15が形成され、且つグリップ部10とシャフト部11の部分が可撓性を有する部分となる。
【0011】上記の実施の形態においては、貫通孔15は、棒状体の根本部(グリップ部)から先端部までの全体に渡って設けられているが、この先端部の開口部を閉塞して、棒状体の周側面の適当な位置に1個又はそれ以上の複数の孔部を形成して実施することも可能である。しかしこの場合には、発生する音は前記の実施形態に比較すれば不明瞭なものとなる。ウエイト部12は、ネジ棒を使用せずに、波形管25からなるシャフト部11の先端にゴム玉等の重りを付加して実施することも可能で、この場合には練習具全体の棒状体が可撓性を有するものとなる。またこのゴム玉等の重りからなるウエイト部は必ずしもシャフト部の先端に設けるばかりでなく、多少グリップ部の側に位置したシャフト部の箇所に設け、シャフト部の先端がウエイト部の先に突出したものであってもよい。
【0012】また必要に応じてシャフト部11の適宜位置に変形しない剛性の管体を付加したり、剛性の管体によってシャフト部11の一部を形成することも自由である。グリップ部10の内部の波形管25を変形しない剛性の管体にて形成して、必要に応じてグリップ部10を変形しないような構成とすることもできる。また、この練習具の長さは、実際のゴルフクラブと同等のものとする必要はなく、実際のクラブより短いものとして実施することができる。例えばその長さを一例として70cm程度のものとして実施することができ、その結果、室内でも素振りの練習をすることができるようになる。更にシャフト部11がフレキシブルチューブにより形成されているため、この部分を丸く変形させて普通の大きさの鞄の中に収納することも可能となって、持ち運びも便利となるのである。
【0013】以上の構成により、この練習具の使用者は、室内等でゴルフスウィングの練習を行うことができ、両手でグリップを握り、適宜スタンスを取ってからアドレスに入り、この練習具を振り上げてバックスウィングに入り、トップにて切り返してスウィングに入り、体の回転と共にスウィングを行う。すると貫通孔から「ピュー」という音が発生して、そのスウィングスピードの実感をつかむことができると同時に、スウィングに問題点があれば、可撓性を有する部分が変形してそのスウィングの問題点を判断することができる。
【0014】ここでスウィングがバランスよく体の回転のリズムに合致すれば、練習具は曲がらずに振り切れるが、余分な力が入ったり、バランスを崩すと曲がってしまう。この曲がり具合により、手打ち、手の返しの良否、クラブフェースの開き具合、トップの切り返しの良否、並びに回転の良否について判定を下すことができる。上記の実施の形態において、波形管をグリップの端部にまで設けたものにおいては、両手でグリップ部を握り、スウィングした際に左右の手のバランスが崩れたり、何れか一方の手に力が入り過ぎると、真っ直ぐであったグリップ部の部分も変形して曲がってしまい、グリップの問題点をも判断することができる。
【0015】図2は、野球用のバットスウィング用の練習具を図示しており、通常のバットの形状を有する金属製のバット20の根本部から先端部の全体に渡り貫通孔15を設ける。この根本部がグリップ部10を形成する。貫通孔15のグリップ部10の側の一部分にフレキシブルチューブからなるステンレス製の波形管25を嵌合する。この波形管25は、貫通孔21の全体に渡って嵌合するようにしてもよいし、バットの先端側の一部分に嵌合してもよい。また波形管を使用せずに、貫通孔15の内面形状の一部又は全部を略環状凹凸形状に形成してもよいことは勿論である。このような構成により、使用者がスウィングの練習をすることにより、練習具から「ピュー」という音が発生する。そして、スウィングスピードが早くなればこの音がより高い音となる。
【0016】この構成においては、波形管25がバット20の内部に設備されている関係上、波形管25は変形しない。このバットスウィング用の練習具は、実際の実戦用のバットととして使用することも可能である。バットスウィング用の練習具として、先に示したゴルフスウィング用練習具をそのままバットスウィング用として改造することも当然可能であり、その場合には、グリップ部10をバット用に太く形成し、ウエイト部をバットの重量と同等のものとすべく重いものを取り付ければよい。このようにしてバットスウィングを行い、スウィングスピードによる音を聞き分けつつ、且つ素振りに不自然な箇所があると波形管が変形してバットスウィングのチェックもできることとなる。
【0017】以上、実施の形態について説明したが、本願発明においては、各構成要素の大きさや形状等は自由に設計することができる。素振りにより音を発生させるためだけであれば、貫通孔内周面の形状のみを環状の凹凸部に形成すればよく、特に波形管を使用しなくとも実施することができる。他方素振りの問題点をチェックするためだけであれば、シャフト部等を可撓性を有する素材によって形成すればよく、貫通孔を設ける必要はない。貫通孔の内径は特に限定されるものでなく、如何なる内径のものでも音は発生する。とりわけ既製のフレキシブルチューブからなる波形管を使用することにより、上記のスウィングスピードによる高低音の発生と、スウィングの問題点のチェックの両方を兼ね備えた素振り練習具を容易に得ることができるのである。貫通孔の先端を閉塞したものにおいては、棒状体の周側面に設けられる孔部の位置、数、及び大きさは全く自由に設定することができる。
【0018】
【発明の効果】本願発明においては、以下の如き効果を有する。本願発明において貫通孔が設けられたもの又は貫通孔の先端が閉塞されているが周側面に孔部が設けられたものにおいては、素振りをすることによって練習具から音が発生し、スウィングスピードが早ければ高い音が出て、それが遅ければ相対的に低い音が出る。これにより自己のスウィングスピードを判断して、素振りの練習を繰り返し、スウィングスピードを向上させる目安とすることができる。本願発明の第6のものにおいては、自己の素振りが自然であるか否か、余分なところに変な力が入っていないか否か、変な癖があるか否か等を判定することができるものであり、自己のスウィングが不自然な場合には練習具の可撓性を有する部分が変形してしまい、その問題の部分を判断することができる。練習者は、素振りを繰り返し、練習具が変形しなくなることを目指して練習し、練習具が変形しない正しいスウィングを繰り返すことにより、正しいスウィングを身に付けることができる。
【0019】本願発明において、貫通孔や孔部が設けられ、且つ可撓性を有するものからなる練習具においては、上記のスウィングスピード及びスウィングの問題点の両者について同時に判定することができる。本願発明の第5のものにおいては、ウエイト部の付加によって実際のゴルフクラブやバットと同様のものとして素振りの練習を行うことができる。更に、本願発明の可撓性を有するものにおいては、その部分で曲げることができるため、普通の大きさの鞄等に収納することもできる。フレキシブルチューブを使用して形成したものにあっては、既製のチューブを使用して容易に本願発明の練習具を製造でき、そのコストも極めて安いものにすることができる。以上、本願発明は多大な効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るゴルフスウィング練習用の一実施形態を示し、その(A)が全体正面図、その(B)が断面説明図、その(C)がシャフト部の一部拡大断面説明図である。
【図2】本願発明に係る野球用のバットスウィング練習用の一実施形態を示す断面説明図である。
【符号の説明】
10 グリップ部、11 シャフト部、12 ウエイト部、20 バット、15 貫通孔、25 波形管

【特許請求の範囲】
【請求項1】一方端部分にグリップ部(10)が設けられた棒状体のものから成り、この棒状体の一方端から他方端の全体に渡って貫通孔(15)を設け、この貫通孔(15)の内周面の一部又は全部に複数の略環状凹凸部を形成した素振り練習具。
【請求項2】棒状体の一部又は全部を塑性変形を行う可撓性を有するものから形成したことを特徴とする請求項1に記載の素振り練習具。
【請求項3】貫通孔(15)の先端開口部を閉塞し、棒状体の周側面の適宜位置に少なくとも1つ孔部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の素振り練習具。
【請求項4】一方端部分にグリップ部(10)が設けられた棒状体のものから成り、この棒状体の一方端から他方端の全体に渡って貫通孔(15)を設け、棒状体の一部又は全部をフレキシブルチューブである波形管(25)によって形成した素振り練習具。
【請求項5】グリップ部(10)と反対側の棒状体の先端部側にウエイト部(12)を付加したことを特徴とする請求項4に記載の素振り練習具。
【請求項6】一方端部分にグリップ部(10)が設けられた棒状体のものから成り、この棒状体の一部又は全部を塑性変形を行う可撓性を有するものから形成した素振り練習具。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平9−19524
【公開日】平成9年(1997)1月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−192590
【出願日】平成7年(1995)7月4日
【出願人】(395013980)