説明

紡糸用ノズル

【目的】 これまでの技術の有する問題を悉く解消し、ノズル吐出口近傍での樹脂溶着を生じ難くして耐溶着性に優れると共に、ノズル孔の摩耗を生じ難くして耐摩耗性に優れる紡糸用ノズルを提供する。
【構成】 溶融物質自体を溶融紡糸する紡糸用ノズル或は繊維表面に溶融物質をコーティングしながら紡糸する紡糸用ノズルであって、少なくともノズル吐出口近傍にNi基合金が被覆されたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、溶融樹脂(例えばポリエステルやナイロン等の溶融樹脂)等の溶融物質自体を溶融紡糸する紡糸用ノズル、或は繊維表面に溶融金属等の溶融物質をコーティングしながら紡糸する紡糸用ノズルに関し、特に糸切れがなくて良好な紡糸性を有すると共にノズル孔の耐摩耗性に優れた紡糸用ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】化学繊維の製造は、ポリエステルやナイロン等の溶融樹脂を溶融紡糸する方法により行なわれ、この溶融紡糸をするに際して紡糸用ノズルが使用される。かかる紡糸用ノズルとしては、耐食性に優れたステンレス鋼等の材料に、複数個の孔(紡糸ノズル孔)を円周方向に1列或いは同心円状に複数列、ドリルまたは放電加工により穿孔し、該材料のノズル吐出口側の表面即ち紡糸口金表面(以降、ノズル表面ということがある)を鏡面または梨地面に仕上げたものが用いられている。
【0003】ところで、ポリエステルやナイロン等を溶融紡糸するに際し、その溶融紡糸温度は約300℃の高温であるため、溶融状態の樹脂から低分子量物質が発揮性ガスとなって発生する。この様な発揮性ガスが紡糸中にノズル吐出口近傍のノズル表面に付着固化したり、或いは紡出された樹脂がノズル吐出口近傍のノズル表面やノズル孔内面に付着すると、ニーリングと称する紡出中の樹脂糸条の曲がりが発生し、この樹脂糸条がノズル表面に付着することがある。このニーリングに起因して、糸径の斑、紡出糸条の脈動、糸切れ等が発生し、長時間に亘り安定して紡糸することが不可能となる。そのため、7〜10日で紡糸を停止し、溶着物(上記付着した物)を取り除く必要があり、操業効率が低下するという問題が生じる。
【0004】また溶融紡糸する際の別の問題として、溶融樹脂中に含まれるルチルやアルミナによる紡糸ノズル孔の摩耗がある。即ち、ルチルやアルミナにより紡糸ノズル孔のノズル吐出口側の縁が摩耗し、ノズル孔径や形状が変化し、それに伴って糸の径や均質性に変化を来す。そのため、現状では約1年程度で新しい紡糸用ノズルと交換することが余儀なくされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記の様な問題を解決する為に、これまで下記の如き様々な技術が提案されているが、いずれも夫々問題を有している。例えば、特開昭53−6613号には、前記溶着(付着)に係る問題の解決する為に、紡糸口金表面(ノズル表面)にガスや蒸気を吹き付ける方法が提案されている。しかしながら、この方法では、ノズル表面の冷却による糸径斑の増大や糸切れ、細化過程への影響等があって、充分な効果が得られていない。
【0006】一般に耐溶着性はノズル表面での耐濡れ性を改善すると向上すると考えられており、かかる観点から、ノズル吐出口近傍のノズル表面に金や白金を蒸着する方法も提案されている(例えば、特開平1−282307号)。しかしながら、この方法では、金や白金の蒸着膜は密着性不足のため紡糸時に剥離し、紡糸条中に不純物として混入したり、ノズル孔の摩耗を却って助長してしまうという欠点がある。
【0007】また金属コーティング繊維の製造(繊維表面に溶融金属をコーティングしながら紡糸する)に際して用いる紡糸用ノズルに関して、例えば特開昭63−2837号や同63−2838号には、耐濡れ性を改善して溶融金属の溶着を防止すると共に耐摩耗性を向上して摩耗に係る問題を解決することを目的として、溶融金属に接するノズル部分をBN,SiC,Si34 等のセラミックス焼結体とする技術が提案されている。しかしながら、これらセラミックス焼結体は前記したステンレス鋼に比べて硬度は高いものの、靭性不足により割れや欠けが生じ易いため、摩耗に係る問題を十分に解決できないという欠点がある。
【0008】更に、ピッチ系炭素繊維の溶融紡糸において、上記と同様の問題を解決することを目的とし、紡糸口金表面(ノズル表面)、に溶融ピッチで濡れないTiN,Al23 ,Ti02 ,SiO2 ,BN,Si34 ,SiC,TiC等のセラミックスを被覆することも提案されている(例えば、特開平2−74620号)。しかしながら、これらのセラミックスの被覆は、物理蒸着法や化学蒸着法等の気相コーティング法でないと達成できないので、一度に多量の処理ができ難く、製造コストが高く、且つ生産性が悪いという問題がある。
【0009】本発明は、このような事情に着目してなされたものであって、その目的は、これまでの技術の有する問題を悉く解消し、ノズル吐出口近傍での樹脂溶着を生じ難くして耐溶着性に優れると共に、ノズル孔の摩耗を生じ難くして耐摩耗性に優れる紡糸用ノズルを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本発明とは、溶融物質自体を溶融紡糸する紡糸用ノズル或は繊維表面に溶融物質をコーティングしながら紡糸する紡糸用ノズルであって、少なくともノズル吐出口近傍にNi基合金が被覆されたものである点に要旨を有するものである。上記紡糸用ノズルにおいて、前記Ni基合金は、ノズル吐出口近傍の紡糸口金表面およびノズル孔内面に被覆されることが最も効果的である。
【0011】また前記Ni基合金としては、P,WおよびBよりなる群から選ばれる1種以上の元素を含有したものが挙げられ、該Ni基合金中におけるこれらの元素の含有量は、単独または合計で0.5〜15重量%であることが好ましい。更に、前記Ni基合金の被覆厚みは1〜10μmであることが好ましく、該Ni基合金の表面粗さは、Ra(平均粗さ)で0.7〜2.0μmであることが好ましい。
【0012】
【作用】本発明者らは、上記の様な問題を解決すべく、特に溶着が発生し易いノズル吐出口近傍に被覆する最適な物質について様々な角度から検討した。その結果、ノズル吐出口近傍にNi基合金を被覆したものでは、このNi基合金の性質に起因して、前記従来技術の有する問題点を解消することができ、ノズル吐出口近傍での樹脂溶着が生じ難く、且つノズル孔の摩耗が生じ難くなることを見い出し、本発明を完成した。上記構成を採用することによって、上記の効果が得られた理由についてはその全てを解明し得た訳ではないが、おそらく次の様に考えることができる。
【0013】まずNi−P系等のNi基合金は、硬度が高く且つ靭性に優れている。例えば、前記したステンレス鋼等に比べると極めて高い硬度を有し、また前記のセラミックス焼結体に比べると極めて靭性に優れている。そのため耐摩耗性に優れると共に、前記セラミックス焼結体の如き靭性不足による割れや欠けも生じ難く、紡糸中のノズル孔の摩耗を効果的に防止することができる。
【0014】一方、Ni基合金等について、溶融樹脂等の溶融物質に対する耐濡れ性を調べた結果、Ni−P系等のNi基合金は耐濡れ性に優れ、溶融物質で濡れ難いという知見が得られた。例えば、前記ステンレス鋼等に比べると極めて耐濡れ性に優れ、また前記のセラミックス焼結体と略同等の耐濡れ性を有している。しかも、ステンレス鋼等のノズル基材へのNi基合金の被覆は、多量処理が可能なめっきにより行なうことができるばかりか、ノズル基材との密着性に優れているので、前記の金や白金の蒸着膜の場合の如き密着性不足に起因する問題や、TiN等の気相コーティング膜の場合の如き高製造コスト等の問題点が生じ難い。
【0015】本発明に係る紡糸用ノズルは、溶融物質で濡れず且つ紡糸中のノズル孔の摩耗を防止することのできる様な性質を有するNi基合金が、少なくともノズル吐出口近傍に被覆されているので、前記従来技術の有する問題点を解消し得、ノズル吐出口近傍での樹脂溶着が生じ難く、且つノズル孔の摩耗が生じ難くなる。
【0016】前記Ni基合金の被覆部位に関しては、溶着および摩耗が発生し易いところ、即ち上記の如く少なくともノズル吐出口近傍とするが、具体的にはノズル吐出口近傍の紡糸口金表面およびノズル孔内面とすれば最も効果的である。それは、樹脂等の溶着が問題となるのは前述の如くノズル表面のノズル吐出口近傍の紡糸口金表面(ノズル表面)であり、また摩耗が問題となるのはノズル孔であって特にノズル吐出口近傍のノズル孔内面の摩耗が糸の径や均質性の変化等の問題を引き起こすので、それらの部分にNi基合金を被覆しておけば本発明の効果が発揮されるからである。但し、ノズル吐出口近傍の紡糸口金表面だけに限らず、該紡糸口金表面全面に亘ってNi基合金を被覆することを排除するものではなく、この様な構成を採用することによって、本発明に係る紡糸用ノズルの生産性が向上することになる。
【0017】本発明において、少なくともノズル吐出口近傍に被覆するNi基合金としては、後記実施例で示すNi−P系合金の他、Pの代わりにまたはPと共にWやB等の元素を含有した各種Ni基合金を挙げることができ、これらのNi基合金は耐濡れ性および耐摩耗性に優れ、紡糸用ノズルの溶着および摩耗の問題を解決できる。
【0018】本発明で用いるNi基合金において、P,W,B等の含有量は、単独または合計で0.5〜15重量%にするのが好ましく、この含有範囲で紡糸用ノズルの溶着および摩耗の問題を確実に解決できる。これらの元素の含有量が0.5重量%未満になると硬度が低下して耐摩耗性が低下し、15重量%を超えると耐濡れ性が低下する。
【0019】Ni基合金の被覆厚みは、1〜10μmであることが好ましく、この厚み範囲では紡糸用ノズルの摩耗の問題を確実に解決でき、またステンレス鋼等のノズル基材とNi基合金の被覆層との密着性に優れたものにできる。尚この被覆厚みを1μm未満にすると極微量の摩耗であっても耐摩耗性上の寿命が短くなり、10μmを超えるとノズル基材との密着性が低下する傾向にある。
【0020】Ni基合金の表面粗さは、Ra(平均粗さ:以下「Ra」と略記する)で0.7〜2.0μmであることが好ましい。即ち、表面粗さが上記の範囲であると、ノズル吐出口近傍の汚れ、濡れおよび糸切れ回数が大幅に低減され、長時間に亘り安定して紡糸を行なうことができる。また摩耗によるノズル孔径の増加が最も抑制されるのである。
【0021】尚Ni基合金を被覆する方法としては、前述の如く多量処理が可能な各種めっき法を採用できる。かかるめっき法としては、電気めっきや無電解めっきが挙げられ、例えばNi−P系合金を被覆する場合には、電気めっきでも良いし、無電解めっきでも良い。またこれらNi基合金が被覆されるノズル基材の材質としては、特に制限されるものではなく、ステンレス鋼、工具鋼、セラミックス焼結体等を使用することができるが、Ni基合金めっきの密着性や電気めっき処理時の導電性の点からするとステンレス鋼を使用することが最も望ましい。
【0022】本発明は各種紡糸用ノズルに適用でき、溶融樹脂(例えばポリエステルやナイロン等の溶融樹脂)等の溶融物質自体を溶融紡糸する紡糸用ノズル、或いは繊維表面に溶融金属等の溶融物質をコーティングしながら紡糸する紡糸用ノズルとして好適に使用できる。
【0023】以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定するものではなく、前後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0024】
【実施例】図1は本発明に係る紡糸用ノズルの一構成例の要部(一部のノズル)を示す縦断面図、図2はそのノズル吐出口近傍を示す拡大図である。これらの図において、1はステンレス鋼(SUS316)からなる紡糸用ノズル本体、Aは紡糸用ノズルの吐出口側、2はノズル表面(紡糸用ノズル本体1のノズル吐出口側Aの紡糸口金表面)、3はノズル孔、4はノズル表面2に被覆されたNi−P系合金めっき層、5はランド、6は吐出口近傍のノズル孔2内面に被覆されたNi−P系合金めっき層を夫々示す。
【0025】ここで、比較のために、従来の紡糸用ノズルについてのノズル吐出口近傍の縦断面図を図3に示す。図3に示した紡糸用ノズルは、上記のNi−P系合金が被覆されていないが、この点を除いては、図1および図2に示した本発明の紡糸用ノズルと同様の構成を有するものであり、対応する部分には同一の参照符号を付してある。図3に示す紡糸用ノズルにおいて、樹脂等の溶着が問題となるのはノズル吐出口近傍のノズル表面2aであり、また摩耗が問題となるのはノズル孔3であって特にノズル吐出口近傍部Cのノズル孔内面である。
【0026】本発明に係る紡糸用ノズルは、次の様にして製作した。まずステンレス鋼(SUS316)かならる紡糸用ノズル基材に対し、径(ノズル孔2の直径):0.15mm、ランド5の長さ:0.6mmのノズル孔3を同心円状に3列で250ホールをドリル加工により穿孔して設けた。次に、ノズル吐出口近傍のノズル表面2およびノズル孔3内面に、Ni−P系合金めっき層4,6を電気めっき法により被覆した。ここで、めっき条件を変化させることによって、Ni−P系合金めっき層4,6のP含有量を0.1〜30重量%の範囲で変化させると共に、めっき時間を変化させることによって、Ni−P系合金めっき層4,6の厚みを0.5,1,5,10,15(μm)と変化させた。またステンレス鋼(紡糸用ノズル本体1)の表面の仕上げを、鏡面仕上げからショットブラスト仕上げまで変化させることによって、Ni−P系合金めっき層4,6の表面粗さをRaで0.5,0.7,1.0,2.0,3.0(μm)と変化させた。
【0027】溶融樹脂を溶融紡糸する装置の紡糸用ノズルとして上記本発明に係る紡糸用ノズルを用い、下記の如くポリエチレン樹脂について溶融紡糸し、ポリエチレン繊維の製造を行った。即ち、ポリエチレン溶融樹脂を一定流量で紡糸パックに供給し、該紡糸パックから紡糸用ノズルに送給し、このノズル孔3のノズル吐出口より吐出させることにより紡糸し、紡糸された糸(繊維)を300mm/分の引取速度で巻き取り、繊維径:20μmのポリエチレン繊維を得た。このときノズル孔3の温度は300℃となる様に制御した。また紡糸時のパック圧力は55kg/cm2 Gであった。
【0028】上記紡糸の際に、ノズル孔3のノズル吐出口近傍の汚れおよび濡れの発生状況、糸揺れの発生状況等を観察すると共に、糸切れ回数の測定を行った。また1000時間紡糸後におけるノズル吐出口近傍のノズル孔3内面の直径(内径)を測定し、その径の増加の程度より摩耗量を調べた。これらの結果を表1〜5に示す(但し、糸揺れの発生状況を除く)。尚前記ノズル孔3内面の直径の初期値は前述の如く0.15mmであり、Ni−P系合金の表面粗さはRaで1.0μmである。
【0029】
【表1】


【0030】
【表2】


【0031】
【表3】


【0032】
【表4】


【0033】
【表5】


【0034】表1〜5には従来の紡糸用ノズルを用いた場合の性能水準については示していないが、その性能水準に比べて、本発明に係る紡糸用ノズルを用いた場合は各性能とも優れており、ノズル吐出口近傍の汚れおよび濡れの発生の程度が小さく、それに伴って糸揺れの発生の程度が小さく、また糸揺れ回数も少なく、一方ノズル孔径の増加の程度が小さくて耐摩耗性に優れている。特に、本発明に係る紡糸用ノズルは、Ni−P系合金めっき層の厚みが、1,5,10μmの場合、更にこの厚みの場合にNi−P系合金めっき層のP含有量が0.5〜15重量%であるとき、ノズル吐出口近傍の汚れおよび濡れの発生の程度、糸揺れ発生の程度、糸切れ回数が大幅に低減し、長時間に亘り安定して紡糸および引取を行うことができ、また摩耗によるノズル孔内径の増加の程度が大幅に低減していることが上記表1〜5より分かる。
【0035】尚上記本発明に係るNi−P系合金めっき層に代えて、Ni−W系合金(例えばNi−5〜20%W合金)、Ni−B系合金(例えばNi−1〜3%B合金)、Ni−P−W系(例えばNi−2〜6%P−5〜20%W合金)、Ni−P−B系合金(例えばNi−2〜6%P−1〜3%B合金)、Ni−P−W−B系合金(例えばNi−2〜6%P−5〜20%W−1〜3%B合金)等のNi基合金のめっき層とした場合も、上記と同様の傾向の結果が得られた。
【0036】更に、上記Ni−P系合金めっき層に代えて、TiN,Al23 等の気相コーティング膜を被覆した紡糸用ノズルを比較例として作製し、これを用いて上記実施例と同様の溶融紡糸、観察及び測定を行ったところ、これらのコーティング膜(セラミックス層)は前記したセラミックス焼結体と同様に、硬質は高いものの、靭性不足により割れや欠けが起こり、剥離してしまうため、長時間の使用に耐えなかった。
【0037】膜厚が5μmで且つP含有量が1重量%で、表面粗さをRaで0.5,0.7,1.0,2.0,3.0(μm)と変化させた場合の結果を表6に示す。表面粗さがRaで0.7,1.0,2.0の場合は紡口近傍の汚れ、濡れ、糸切れ回数が大幅に低減し、長時間に亘り安定して紡糸、引取を行なうことができる。また、ノズル孔の摩耗による増加が最も抑制されることが分かる。しかしながら表面粗さがRaで0.5,3.0(μm)の場合には、改善効果が顕著でなかった。
【0038】
【表6】


【0039】
【発明の効果】本発明の紡糸用ノズルは、前述の如き構成を有しており、ノズル吐出口近傍での樹脂等の溶着が生じ難くて耐溶着性に優れると共に、ノズル孔の摩耗が生じ難くて耐摩耗性に優れており、同時に従来技術の有する問題点を解消し得る。従って、ニーリングに起因する糸径の斑、紡出糸条の脈動及び糸切れが発生し難く、そのため長時間に亘り安定して紡糸することが可能となると共に、操業効率を向上し得、またノズル孔径や形状の変化による糸の径や均質性の変化が生じ難く、そのため新しいノズルと交換する必要が生じる迄の期間を延長し得るようになるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る紡糸用ノズルの一構成例の要部を示す縦断面図である。
【図2】図1に示した紡糸用ノズルのノズル吐出口近傍を示す拡大図である。
【図3】従来の紡糸用ノズルのノズル吐出口近傍を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 紡糸用ノズル本体
2 ノズル表面
3 ノズル孔
4,6 Ni−P系合金めっき層
5 ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶融物質自体を溶融紡糸する紡糸用ノズル或は繊維表面に溶融物質をコーティングしながら紡糸する紡糸用ノズルであって、少なくともノズル吐出口近傍にNi基合金が被覆されたものであることを特徴とする紡糸用ノズル。
【請求項2】 前記Ni基合金が、ノズル吐出口近傍の紡糸口金表面およびノズル孔内面に被覆されたものである請求項1に記載の紡糸用ノズル。
【請求項3】 前記Ni基合金が、P,WおよびBよりなる群から選ばれる1種以上の元素を含有したものである請求項1または2に記載の紡糸用ノズル。
【請求項4】 前記Ni基合金中におけるP,W,Bの含有量が、単独または合計で0.5〜15重量%である請求項3に記載の紡糸用ノズル。
【請求項5】 前記Ni基合金の被覆厚みが1〜10μmである請求項1〜4のいずれかに記載の紡糸用ノズル。
【請求項6】 前記Ni基合金の表面粗さが、Ra(平均粗さ)で0.7〜2.0μmである請求項1〜5のいずれかに記載の紡糸用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平7−70809
【公開日】平成7年(1995)3月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−135851
【出願日】平成6年(1994)6月17日
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)