説明

索条式駆動装置を備えたトロリコンベア

【課題】水平カーブ状経路を含む搬送経路に沿ってキャリアを移動可能な信頼性が高い索条式駆動装置を備えたトロリコンベアを提供する。
【解決手段】上下揺動部材により左右方向へ揺動可能に支持された左右揺動部材に取り付けた握索体及び被操作体9等からなる握索装置1を前端トロリ21に取り付けた。トロリ21が放索操作ガイドレール11を通過すると、握索装置1が放索状態となり、上下揺動部材及び左右揺動部材が上方へ揺動して索条Wと干渉しないようになり、キャリア20を水平カーブ状経路CRに沿ってフリクションローラ式駆動装置FDにより搬送することができる。トロリ21が握索操作ガイドレール12を通過すると、上下揺動部材及び左右揺動部材が下方へ揺動して握索体が索条Wを掴んだ握索状態CLとなり、キャリア20を直線状経路SRに沿って索条式駆動装置WDにより搬送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置により駆動されて移動する無端状の索条によりトロリを駆動する索条式駆動装置を備えたトロリコンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のトロリ間を連結ロッドにより連結したキャリアを、直線状経路及び水平カーブ状経路を含む搬送経路に沿って設置されたコンベアレールにより支持して移動させるトロリコンベアとして、水平軸まわりに回転する駆動プーリ(駆動輪体)及び従動プーリ(従動輪体)間に掛け渡した無端状の索条(回転体)の駆動力を用いる索条式駆動装置(無端回動式送り装置)を直線経路に設置するとともに、垂直軸まわりに回転するフリクションローラの駆動力を用いるフリクションローラ式駆動装置(摩擦式送り装置)を直線経路及び水平カーブ状経路に設置するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
前記索条式駆動装置は、前端のトロリ(被案内装置)に上下方向に揺動自在な受動体を下側へ突出付勢して設け、受動体の下側の面を圧接受動面に形成し、この圧接受動面を前記索条に圧接させて駆動力がキャリアへ伝達された状態とし、受動体の移動経路にストッパー体を突出させ、受動体を上方へ揺動させて回動体から離反させることにより駆動力がキャリアへ伝達されない状態としている。
【0003】
また、トロリコンベアではないが、索条式駆動装置として、索条に対する挟持溝を有する相対向する二枚のクランプ板を平行リンクによりパレットに対し相互に接離自在に設け、二枚のクランプ板間に引張りバネを設け、一端にクランプ板に対する駆動部を有するとともに他端にパレットより前方に突出する被駆動部を有するコントロールレバーを枢着してなり、クランプ板が索条を掴んだ握索状態(駆動力がキャリアへ伝達された状態)から、コントロールレバーの被駆動部をカム面等により操作してクランプ板の間隔を拡げることにより放索状態(駆動力がキャリアへ伝達されない状態)とする握索装置を用いるものがある(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−261144号公報(図1−3、図7)
【特許文献2】実開昭59−83821号公報(第1−5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の索条式駆動装置は、索条の上側から受動体の圧接受動面を圧接することにより索条の駆動力をキャリアに伝達する構成であることから、上下振動防止等のために、索条を下側から受けて摺接案内するプレート体を経路方向に沿って連続的又は断続的に設置する必要があるとともに、プレート体を索条に摺接させていることから、索条及びプレート体が摩耗しやすく、これらの摩耗に伴い、水平軸まわりに揺動する受動体の圧接受動面と索条との当たりが悪くなってキャリアが円滑かつ確実に搬送されなくなる等、索条式駆動装置によるキャリア搬送の信頼性を長期間に亘って確保することができない。
また、特許文献2の索条式駆動装置は、一対のクランプ板が左右から索条を掴んで確実に握索する構成であることから、パレット搬送の信頼性を長期間に亘って確保することができるが、レールを水平カーブ状とすると、パレットが水平カーブ状を移動する際にクランプ板と索条とが干渉するため、水平カーブ状経路を含む搬送経路に対しては使用することができない。
【0006】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、水平カーブ状経路を含む搬送経路に沿ってキャリアを移動させることができるとともに、索条式駆動装置によるキャリア搬送の信頼性を長期間に亘って確保することができる、索条式駆動装置を備えたトロリコンベアを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る索条式駆動装置を備えたトロリコンベアは、前記課題解決のために、複数のトロリ間を連結ロッドにより連結してなるキャリアを直線状経路及び水平カーブ状経路を含む搬送経路に沿って搬送する、主に前記直線状経路における前記キャリアの搬送を行うための、無端状の索条を用いた索条式駆動装置を備えたトロリコンベアであって、前記トロリの何れかに連結固定された連結部材、該連結部材により左右方向軸まわりに上下方向へ揺動可能に支持された上下揺動部材、該上下揺動部材により左右一対の上下方向軸まわりに左右方向へ揺動可能に支持され、前記上下方向軸が前後方向の中間に位置するように前後方向へ延びる左右一対の左右揺動部材、該左右揺動部材の前記上下方向軸よりも前側又は後側に左右方向内側に突設された、前記索条を掴む左右一対の握索体、前記左右揺動部材の前記上下方向軸よりも後側又は前側に左右方向外側に突設された、搬送経路の所定箇所に設置された操作手段により操作される被操作体、及び、前記握索体が前記索条を掴む方向へ前記左右揺動部材を付勢する付勢手段からなる、前記索条の駆動力を前記キャリアへ伝達する握索状態と前記駆動力を前記キャリアへ伝達しない放索状態とを切り替える握索装置と、該握索装置が取り付けられたトロリが、前記直線経路から前記水平カーブ状経路へ差し掛かる手前で、前記被操作体を操作し、前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索装置を前記放索状態とし、前記左右揺動部材と前記索条とが左右方向へ相対的に揺動してもこれらが干渉しないように前記上下揺動部材及び左右揺動部材を上下方向へ揺動させ、さらに前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索体により前記トロリに突設した被挟持体を挟持させる、前記操作手段である放索操作ガイドレールと、前記握索装置が取り付けられたトロリが、前記水平カーブ状経路から前記直線経路へ進入した後に、前記被操作体を操作し、前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索体を前記付勢手段の付勢力に抗して前記被挟持体から離間させ、前記上下揺動部材及び左右揺動部材を上下方向へ揺動させて前記握索体を前記索条の左右に位置させ、さらに前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索体により前記索条を掴ませる、前記操作手段である握索操作ガイドレールとを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る索条式駆動装置を備えたトロリコンベアによれば、複数のトロリ間を連結ロッドにより連結してなるキャリアを直線状経路及び水平カーブ状経路を含む搬送経路に沿って搬送する、主に前記直線状経路における前記キャリアの搬送を行うための、無端状の索条を用いた索条式駆動装置を備えたトロリコンベアであって、前記トロリの何れかに連結固定された連結部材、該連結部材により左右方向軸まわりに上下方向へ揺動可能に支持された上下揺動部材、該上下揺動部材により左右一対の上下方向軸まわりに左右方向へ揺動可能に支持され、前記上下方向軸が前後方向の中間に位置するように前後方向へ延びる左右一対の左右揺動部材、該左右揺動部材の前記上下方向軸よりも前側又は後側に左右方向内側に突設された、前記索条を掴む左右一対の握索体、前記左右揺動部材の前記上下方向軸よりも後側又は前側に左右方向外側に突設された、搬送経路の所定箇所に設置された操作手段により操作される被操作体、及び、前記握索体が前記索条を掴む方向へ前記左右揺動部材を付勢する付勢手段からなる、前記索条の駆動力を前記キャリアへ伝達する握索状態と前記駆動力を前記キャリアへ伝達しない放索状態とを切り替える握索装置と、該握索装置が取り付けられたトロリが、前記直線経路から前記水平カーブ状経路へ差し掛かる手前で、前記被操作体を操作し、前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索装置を前記放索状態とし、前記左右揺動部材と前記索条とが左右方向へ相対的に揺動してもこれらが干渉しないように前記上下揺動部材及び左右揺動部材を上下方向へ揺動させ、さらに前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索体により前記トロリに突設した被挟持体を挟持させる、前記操作手段である放索操作ガイドレールと、前記握索装置が取り付けられたトロリが、前記水平カーブ状経路から前記直線経路へ進入した後に、前記被操作体を操作し、前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索体を前記付勢手段の付勢力に抗して前記被挟持体から離間させ、前記上下揺動部材及び左右揺動部材を上下方向へ揺動させて前記握索体を前記索条の左右に位置させ、さらに前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索体により前記索条を掴ませる、前記操作手段である握索操作ガイドレールとを備えたので、索条式駆動装置によりキャリアを搬送する経路では、左右一対の握索体が索条式駆動装置の索条を確実に掴んだ握索状態でキャリアが搬送され、索条に摺接する部材がないことから索条等の摩耗を抑えることができるため、索条式駆動装置によるキャリア搬送の信頼性を長期間に亘って確保することができる。
【0009】
また、直線状経路から水平カーブ状経路へ差し掛かる手前で、放索操作ガイドレールにより被操作体が操作されて握索装置が放索状態とされ、その上、左右揺動部材と索条とが左右方向へ相対的に揺動してもこれらが干渉しないように上下揺動部材及び左右揺動部材が上下方向へ揺動しているため、水平カーブ状経路では、索条式駆動装置以外の駆動装置、例えばフリクションローラ式駆動装置によりキャリアを搬送することができる。
さらに、放索操作カイドレールにより被操作体が操作され、握索体がトロリに突設した被挟持体を挟持することから、握索装置自体により、上下揺動部材及び左右揺動部材が上下方向へ揺動した状態が保持される。
よって、上下揺動部材及び左右揺動部材を上下方向へ揺動させた状態を保持するガイドレールを水平カーブ状経路に沿って設置する必要がないため、キャリアを直線状経路及び水平カーブ状経路を含む搬送経路に沿って搬送する索条式駆動装置を備えたトロリコンベアにおいて、その構造の簡素化及びコストの低減化を図ることができ、特に水平カーブ状経路の長さが長いライン構成において、その効果が大きい。
さらにまた、被操作体を操作する放索操作ガイドレールの長さが短く、被操作体と放索操作ガイドレールとが接触している距離(時間)が短いことから、被操作体及び放索操作ガイドレールの摩耗が小さいため、耐久性及び信頼性が向上する。
また、このようなキャリアを直線状経路及び水平カーブ状経路を含む搬送経路に沿って搬送する索条式駆動装置を備えたトロリコンベアは、右カーブと左カーブとが混在するライン構成であっても使用することができ、様々なライン構成にフレキシブルに対応することができるとともに、キャリアを水平カーブ状経路にストレージすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、キャリアの搬送方向(図中矢印A参照。)を前とし、左右は前方へ向かっていうものとする。また、右方から見た図を正面図とする。
【0011】
図1は本発明の実施の形態に係る索条式駆動装置WDを備えたトロリコンベアの一例を示す概略平面図であり、直線経路SRから右方へ90°屈曲する水平カーブ状経路CRを有している。
索条式駆動装置WDは、図示しない駆動プーリ及び従動プーリ間に掛け渡した無端状の索条(ワイヤーロープ、ワイヤーケーブル)Wを、駆動装置により駆動プーリを駆動することにより移動させながら、この索条Wを握索装置1により掴んだ握索状態CLの、図示しない被搬送物が載置されたキャリア20を、主に直線状経路SRに沿って搬送するものである。
【0012】
なお、水平カーブ状経路CRがあることから、索条Wを水平方向に屈曲させる必要があるため、索条Wを水平プーリ19によりガイドすることにより、索条Wの方向を変えている。
また、フリクションローラ式駆動装置FDは、キャリア20のトロリ21,22,23,24及び連結ロッド25,26,27の左右側面をフリクションローラFが圧接される被駆動面20Aとして、この被駆動面20Aに対し、フリクションローラFを圧接することにより、キャリア20を、水平カーブ状経路CRを含む、索条式駆動装置WDにより搬送される経路以外の搬送経路に沿って搬送するものである。
【0013】
図2〜図4は、キャリア20及び握索装置1の構成説明図であり、図2及び図3は正面図、図4は前端トロリ21を前方から見た図である。
また、図2(a)はキャリア20を直線経路SRで搬送している状態を、図2(b)は前後のキャリア20,20を連続してストレージしている状態を、図3(a)は握索装置1が放索操作ガイドレール11により操作された後の状態を、図3(b)は握索装置1が握索操作ガイドレール12により操作された後の状態を示している。
【0014】
図1〜図3に示すように、キャリア20は、前端トロリ21と後端トロリ22との間に、被搬送物を支持する荷受体30が取り付けられた前後のロードトロリ23,24を備えており、前端トロリ21と前ロードトロリ23とは前連結ロッド25を介して、前ロードトロリ23と後ロードトロリ24とは中間連結ロッド27を介して、後ロードトロリ24と後端トロリ22とは後連結ロッド26を介して連結される。
ここで、前端トロリ21の後端部と前連結ロッド25の前端部とは、垂直軸21A及び水平軸25Aをまわりに回動可能に、前ロードトロリ23の前端部と前連結ロッド25の後端部とは、垂直軸23A及び水平軸25Bまわりに回動可能に、後端トロリ22の前端部と後連結ロッド26の前端部とは、垂直軸22A及び水平軸26Bまわりに回動可能に、後ロードトロリ24の後端部と後連結ロッド26の前端部とは、垂直軸24B及び水平軸26Aまわりに回動可能に連結される。
【0015】
また、前ロードトロリ23の後端部と中間連結ロッド27の前端部とは、垂直軸23B及び水平軸27Aまわりに回動可能に、後ロードトロリ24の前端部と中間連結ロッド27の後端部とは、垂直軸24A及び水平軸27Bまわりに回動可能に連結され、中間連結ロッド27の中間部はカーブ状経路の円滑走行が可能なように伸縮可能に構成される。
なお、キャリア20を構成するトロリ21,…及び連結ロッド25,…の構成は本実施の形態に限定されるものではなく、搬送方向に離間した複数のトロリ間を連結ロッドにより連結してなるものであればよい。
【0016】
図1〜図4に示すように、各トロリ21〜24には、走行車輪28,…及びサイドローラ29,…が取り付けられており、搬送経路に沿って配設されたヨーク17,…に固定された左右の走行レール18,18上部の立起部にサイドローラ29,…が当接するため、左右方向への振れ止めがされた状態で、走行レール18,18のコ字状開口部に走行車輪28,…が係合するため、各トロリ21〜24は走行レール18,18に沿って移動可能であり、キャリア20は搬送経路に沿って移動することができる。
また、前端トロリ21には、移動している索条Wの駆動力をキャリア20へ伝達する握索状態CLと前記索条Wの駆動力をキャリア20へ伝達しない放索状態OPとを切り替える握索装置1が取り付けられているため、握索装置1の握放索(握索状態CL及び放索状態OP)の切り替えを行うことにより、キャリア20を搬送経路に沿って移動させたり、停止及びストレージすることができる。
【0017】
次に、前端トロリ21に取り付けられた握索装置1及び該握索装置1を操作する操作手段の構成及び動作の詳細について説明するが、握索装置1は、必ずしも前端トロリ21に取り付ける必要はなく、トロリ21,22,…の何れかに取り付ければよい。
図5は握索状態CLである握索装置1の平面図、図6は放索状態OPである握索装置1平面図、図7は握索装置1の要部拡大正面図、図8は握索装置1の分解斜視図であり、図8には放索操作ガイドレール11,11の斜視図も示している。
また、図9は握索装置1並びに放索操作ガイドレール11及び握索操作ガイドレール12の動作説明用概略図であり、図9(a)は平面図、図9(b)は正面図である。
なお、説明の都合及び図面の了解性の観点から、図9(a)においては、左右一対の放索操作ガイドレール11,11及び握索操作ガイドレール12,12の右側のもののみを、図9(b)においては、左右一対の左右揺動部材6,6及び握索体7,7の左側のもののみを表示している。
【0018】
図4〜図8に示すように、前端トロリ21には、前後方向へ延びる左右一対の垂直板及びその後端部から下側斜め後方へ延びる左右一対の垂直板からなる正面視略へ字状の連結部材2,2が連結固定され、連結部材2,2により、連結部材2,2下端部の左右方向軸3まわりに上下方向へ揺動可能に、前方へ延びる上下揺動部材4が支持され、上下揺動部材4前端部には、上下方向の通孔4B,4Bが形成された左右一対のボス部4A,4Aが溶着等により取り付けられる。
また、上下揺動部材4後部の、左右方向軸3の上側に設けた当止板4Cが、連結部材2の下側斜め後方へ延びる垂直板の後面により当て止めされるため、上下揺動部材4は、その前端部のボス部4A,4Aの通孔4B,4Bが垂直方向となった状態が保持される。
【0019】
さらに、前後方向へ延び、その前後方向の中間部に、上下方向の通孔6B,6Bが形成された左右一対のボス部6A,6Aが溶着等により取り付けられた、左右一対の左右揺動部材6,6が、そのボス部6A,6Aを上下揺動部材4の左右のボス部4A,4Aの下側に位置させ、上下のボス部4A,6Aの通孔4B,6B内に上下方向軸5を挿通し、該上下方向軸5の螺孔5Aにワッシャ15,16を介して上下のボルト13,14を螺合することにより、上下揺動部材4に取り付けられる。
よって、左右一対の左右揺動部材6,6は、上下揺動部材4により左右一対の上下方向軸5,5まわりに左右方向へ揺動可能に支持される。
【0020】
さらにまた、左右揺動部材6,6の上下方向軸5,5よりも前側には、その左右方向内側に突出する、平面視略かまぼこ断面状の左右一対の握索体7,7が取り付けられ、左右揺動部材6,6の上下方向軸5,5よりも後側には、その左右方向内側に突出するばね受け6C,6Cにコイルの端末部を外嵌させた、握索体7,7が索条Wを掴む方向へ左右揺動部材6,6を付勢する付勢手段である圧縮コイルばね8が取り付けられる。
また、左右揺動部材6,6の上下方向軸5,5よりも後側(後端部)の左右方向外側には、搬送経路の所定箇所に設置された操作手段により操作される被操作体9,9が突設される。
よって、キャリア20が直線経路SRに位置し、握索装置1の被操作体9,9が前記操作手段により操作されない状態では、圧縮コイルばね8により左右の握索体7,7同士が近づく方向へ常時付勢されているため、握索体7,7に形成された前後方向へ延びる係合溝7A,7Aが索条Wに係合して、左右一対の握索体7,7が索条Wの左右を掴んだ状態である握索状態CLが保持される。
なお、被操作体9,9は、左右揺動部材6,6に着脱可能に取り付けられるため、搬送経路の所定箇所に設置された操作手段により操作されて摩耗した際には、容易に交換することができる。
【0021】
図1に示すように、左右一対の放索操作ガイドレール11,11は、握索装置1が取り付けられた前端トロリ21が直線経路SRから水平カーブ状経路CRへ差し掛かる手前で握索装置1の被操作体9,9を操作することができる位置に設置される。
また、図1、図5、図6、図8及び図9に示すように、放索操作ガイドレール11,11は、前方へ行くにしたがって左右方向の間隔が狭くなるように傾斜する左右方向揺動操作部11A,11A、前方へ行くにしたがって下方へ傾斜する上下方向揺動操作部11B,11B、及び、前方へ行くにしたがって左右方向の間隔が広くなるように傾斜する左右方向揺動操作部11C,11Cからなる。
【0022】
よって、図9のP1並びに図1及び図5に示すように、握索状態CLで索条Wにより前方へ移動してきたキャリア20の前端トロリ21に対し、その握索装置1の被操作体9,9が放索操作ガイドレール11,11の前記左右方向揺動操作部11A,11Aにガイドされながら前方へ移動すると、図9のP2及び図6に示すように、左右揺動部材6,6が、被操作体9,9の左右方向の間隔が狭くなるように、付勢手段8の付勢力に抗して上下方向軸5,5まわりに揺動させられることから、握索体7,7の間隔が広くなるため、握索体7,7が索条Wから離間した放索状態OPとなる。
【0023】
この放索状態OPで、惰性又は前記フリクションローラ式駆動装置FDによりキャリア20が前方へ移動すると、握索装置1の被操作体9,9が前記上下方向揺動操作部11B,11Bによりガイドされながら下方へ移動するため、図9のP3並びに図7の二点鎖線及び図3(a)に示すように、上下揺動部材4及び左右揺動部材6,6が上方へ揺動し、左右揺動部材6,6と索条Wとが左右方向へ相対的に揺動してもこれらが干渉しないようになる。
さらに、この状態で、惰性又は前記フリクションローラ式駆動装置FDによりキャリア20が前方へ移動すると、前記左右方向揺動操作部11C,11Cによりガイドされながら、握索装置1の被操作体9,9が圧縮コイルばね8の付勢力により左右方向の間隔が広くなるように移動するため、図9のP4並びに図3(a)、図4及び図7に示すトロリ21から垂下するように突設された被挟持体10を握索体7,7が挟持した状態が圧縮コイルばね8の付勢力により保持される。
この状態では、図1に示す水平カーブ状経路CRに沿って、キャリア20を前記フリクションローラ式駆動装置FDにより搬送することができる。
【0024】
図1に示すように、左右一対の握索操作ガイドレール12,12は、握索装置1が取り付けられた前端トロリ21が水平カーブ状経路CRから直線経路SRへ進入した後に握索装置1の被操作体9,9を操作することができる位置に設置される。
また、図1及び図9に示すように、握索操作ガイドレール12,12は、前方へ行くにしたがって左右方向の間隔が狭くなるように傾斜する左右方向揺動操作部12A,12A、前方へ行くにしたがって上方へ傾斜する上下方向揺動操作部12B,12B、及び、前方へ行くにしたがって左右方向の間隔が広くなるように傾斜する左右方向揺動操作部12C,12Cからなる。
よって、図3(a)の状態から前記フリクションローラ式駆動装置FDにより水平カーブ状経路CRを搬送されてきたキャリア20がさらに前進して、その前端トロリ21が水平カーブ状経路CRから直線経路SRへ進入し、その握索装置1の被操作体9,9が握索操作ガイドレール12,12の前記左右方向揺動操作部12A,12Aにガイドされながら前方へ移動すると、左右揺動部材6,6が、被操作体9,9の左右方向の間隔が狭くなるように、圧縮コイルばね8の付勢力に抗して上下方向軸5,5まわりに揺動させられることから、握索体7,7の間隔が広くなるため、握索体7,7が被挟持体10から離間する。
【0025】
この状態で前記フリクションローラ式駆動装置FDによりキャリア20が前方へ移動すると、握索装置1の被操作体9,9が前記上下方向揺動操作部12B,12Bによりガイドされながら上方へ移動するため、図3(b)に示すように、上下揺動部材4及び左右揺動部材6,6が下方へ揺動し、左右の握索体7,7が索条Wの左右に位置した状態となる。
さらにこの状態から、前記フリクションローラ式駆動装置FDによりキャリア20が前方へ移動すると、前記左右方向揺動操作部12C,12Cによりガイドされながら、握索装置1の被操作体9,9が圧縮コイルばね8の付勢力により左右方向の間隔が広くなるように移動するため、左右揺動部材6,6が上下方向軸5,5まわりに揺動して握索体7,7の間隔が狭くなり、図1及び図3(b)に示す左右一対の握索体7,7が索条Wの左右を掴んだ状態である握索状態CLとなる。
よって、キャリア20は、水平カーブ状経路CRから直線状経路SRに繋がる部分を通って、索条式駆動装置WDにより搬送される。
【0026】
次に、前後のキャリア20,…を連続してストレージする動作について説明する。
図2(b)に示すように、先行キャリア20の前端トロリ21に取り付けられた握索装置1が図示しない放索操作体により放索状態OPとされ停止した状態で、図2(a)に示すように前端トロリ21に取り付けられた握索装置1を握索状態CLとして後方から先行キャリア20に向かって移動してきた後行キャリア20は、先行キャリア20の後端トロリ22から後方に突出する放索操作体である図1〜図3に示すプッシャ31により、図2(b)に示すように握索装置1の握索体7,7の間隔が押し広げられて放索状態OPとなるため、先行キャリア20に衝突した状態で停止する。
このような構成により、後行キャリア20を先行キャリア20に衝突させた状態で次々と停止させてストレージすることができる。
【0027】
図10は本発明の実施の形態に係る索条式駆動装置WDを備えたトロリコンベアの別の構成例を示す概略平面図であり、直線経路SRから右方へ180°屈曲する水平カーブ状経路CRを有している。また、図10において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示しており、索条Wは左右の水平プーリ19,19によりガイドされ、その方向を変えている。
図10の構成においても、図1の構成と同様に、左右一対の放索操作ガイドレール11,11を、握索装置1が取り付けられた前端トロリ21が直線経路SRから水平カーブ状経路CRへ差し掛かる手前で握索装置1の被操作体9,9を操作することができる位置に設置し、左右一対の握索操作ガイドレール12,12を、握索装置1が取り付けられた前端トロリ21が水平カーブ状経路CRから直線経路SRへ進入した後に握索装置1の被操作体9,9を操作することができる位置に設置している。
【0028】
よって、前端トロリ21が放索操作ガイドレール11,11を通過することにより、前端トロリ21に取り付けられた握索装置1は、放索状態OPとなった後に、上下揺動部材4及び左右揺動部材6,6が上方へ揺動し、握索体7,7が被挟持体10を挟持した状態が保持され、この状態では左右揺動部材6,6と索条Wとが左右方向へ相対的に揺動してもこれらが干渉しないため、キャリア20を水平カーブ状経路CRに沿って前記フリクションローラ式駆動装置FDにより搬送することができる。
また、前端トロリ21が握索操作ガイドレール12,12を通過することにより、握索体7,7が被挟持体10から離間し、上下揺動部材4及び左右揺動部材6,6が下方へ揺動して握索体7,7が索条Wの左右に位置した状態となった後に、左右一対の握索体7,7が索条Wの左右を掴んだ握索状態CLとなるため、キャリア20を水平カーブ状経路CRから直線状経路SRに繋がる部分を通って索条式駆動装置WDにより搬送することができる。
【0029】
以上のような索条式駆動装置WDを備えたトロリコンベアの構成によれば、索条式駆動装置WDによりキャリア20を搬送する経路では、左右一対の握索体7,7が索条Wを確実に掴んだ握索状態CLでキャリア20が搬送され、索条Wに摺接する部材がないことから索条W等の摩耗を抑えることができるため、索条式駆動装置WDによるキャリア搬送の信頼性を長期間に亘って確保することができる。
また、直線状経路SRから水平カーブ状経路CRへ差し掛かる手前で、放索操作ガイドレール11,11により被操作体9,9が操作されて握索装置1が放索状態OPとされ、その上、左右揺動部材6,6と索条Wとが左右方向へ相対的に揺動してもこれらが干渉しないように上下揺動部材4及び左右揺動部材6,6が上下方向へ揺動しているため、水平カーブ状経路CRでは、フリクションローラ式駆動装置FDによりキャリア20を搬送することができる。
【0030】
さらに、放索操作カイドレール11,11により被操作体9,9が操作され、握索体7,7が前端トロリ21に突設した被挟持体10を挟持することから、握索装置1自体により、上下揺動部材4及び左右揺動部材6,6が上下方向へ揺動した状態が保持される。
よって、上下揺動部材4及び左右揺動部材6,6を上下方向へ揺動させた状態を保持するガイドレールを水平カーブ状経路CRに沿って設置する必要がないため、キャリア20を直線状経路SR及び水平カーブ状経路CRを含む搬送経路に沿って搬送する索条式駆動装置WDを備えたトロリコンベアにおいて、その構造の簡素化及びコストの低減化を図ることができ、特に水平カーブ状経路CRの長さが長いライン構成において、例えば図1の構成よりも図10の構成において、その効果が大きい。
【0031】
さらにまた、被操作体9,9を操作する放索操作ガイドレール11,11の長さが短く、被操作体9,9と放索操作ガイドレール11,11とが接触している距離(時間)が短いことから、被操作体9,9及び放索操作ガイドレール11,11の摩耗が小さいため、耐久性及び信頼性が向上する。
また、このようなキャリア20を直線状経路SR及び水平カーブ状経路CRを含む搬送経路に沿って搬送する索条式駆動装置WDを備えたトロリコンベアは、右カーブと左カーブとが混在するライン構成であっても使用することができ、様々なライン構成にフレキシブルに対応することができるとともに、キャリア20を水平カーブ状経路CRにストレージすることもできる。
【0032】
以上の説明においては、索条式駆動装置WDを備えたトロリコンベアがフロアコンベアである場合を示したが、前記トロリコンベアはオーバーヘッドコンベアであってもよい。
また、索条式駆動装置WDにより搬送される経路以外の搬送経路に沿ってキャリア20を駆動する駆動装置がフリクションローラ式駆動装置FDである場合を示したが、プッシャによりキャリア20を押送するチェーンコンベア式駆動装置等の他の駆動装置を用いてもよい。
さらに、本発明の索条式駆動装置WDを備えたトロリコンベアは、直線状経路SR及び水平カーブ状経路CRを含む搬送経路に沿ってキャリア20を搬送するものであり、この搬送経路には垂直カーブ状経路(縦曲がり経路)があってもよく、キャリア20を垂直カーブ状経路を介して上下の高さ違いに配置された直線経路間で移動させることも可能であり、例えば水平カーブ状経路におけるキャリア搬送をフリクションローラ式駆動装置FD等により行い、垂直カーブ状経路におけるキャリア搬送をチェーンコンベア式駆動装置等により行えばよい。
さらにまた、握索装置1において、左右揺動部材6,6の前後方向の中間に位置する上下方向軸5,5の前側に握索体7,7を、上下方向軸5,5の後側に被操作体9,9を設ける構成を示したが、これらを逆にした構成、すなわち上下方向軸5,5の後側に握索体7,7を、上下方向軸5,5の前側に被操作体9,9を設ける構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態に係る索条式駆動装置を備えたトロリコンベアを示す概略平面図である。
【図2】キャリア及び握索装置の構成説明図であり、(a)はキャリアを直線経路で搬送している状態を示す正面図、(b)は前後のキャリアを連続してストレージしている状態を示す正面図である。
【図3】同構成説明図であり、(a)は握索装置が放索操作ガイドレールにより操作された後の状態を示す正面図、(b)は握索装置が握索操作ガイドレールにより操作された後の状態を示す正面図である。
【図4】前端トロリを前方から見た図である。
【図5】握索状態である握索装置の平面図である。
【図6】放索状態である握索装置の平面図である。
【図7】握索装置の要部拡大正面図である。
【図8】握索装置の分解斜視図である。
【図9】握索装置並びに放索操作ガイドレール及び握索操作ガイドレールの動作説明用概略図であり、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る索条式駆動装置を備えたトロリコンベアの別の構成例を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0034】
A 搬送方向
CL 握索状態
OP 放索状態
SR 直線状経路
CR 水平カーブ状経路
W 索条
WD 索条式駆動装置
F フリクションローラ
FD フリクションローラ式駆動装置
1 握索装置
2 連結部材
3 左右方向軸
4 上下揺動部材
5 上下方向軸
6 左右揺動部材
7 握索体
8 圧縮コイルばね(付勢手段)
9 被操作体
10 被挟持体
11 放索操作ガイドレール(操作手段)
11A 左右方向揺動操作部
11B 上下方向揺動操作部
11C 左右方向揺動操作部
12 握索操作ガイドレール(操作手段)
12A 左右方向揺動操作部
12B 上下方向揺動操作部
12C 左右方向揺動操作部
18 走行レール
20 キャリア
20A 被駆動面
21 前端トロリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトロリ間を連結ロッドにより連結してなるキャリアを直線状経路及び水平カーブ状経路を含む搬送経路に沿って搬送する、主に前記直線状経路における前記キャリアの搬送を行うための、無端状の索条を用いた索条式駆動装置を備えたトロリコンベアであって、
前記トロリの何れかに連結固定された連結部材、該連結部材により左右方向軸まわりに上下方向へ揺動可能に支持された上下揺動部材、該上下揺動部材により左右一対の上下方向軸まわりに左右方向へ揺動可能に支持され、前記上下方向軸が前後方向の中間に位置するように前後方向へ延びる左右一対の左右揺動部材、該左右揺動部材の前記上下方向軸よりも前側又は後側に左右方向内側に突設された、前記索条を掴む左右一対の握索体、前記左右揺動部材の前記上下方向軸よりも後側又は前側に左右方向外側に突設された、搬送経路の所定箇所に設置された操作手段により操作される被操作体、及び、前記握索体が前記索条を掴む方向へ前記左右揺動部材を付勢する付勢手段からなる、前記索条の駆動力を前記キャリアへ伝達する握索状態と前記駆動力を前記キャリアへ伝達しない放索状態とを切り替える握索装置と、
該握索装置が取り付けられたトロリが、前記直線経路から前記水平カーブ状経路へ差し掛かる手前で、前記被操作体を操作し、前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索装置を前記放索状態とし、前記左右揺動部材と前記索条とが左右方向へ相対的に揺動してもこれらが干渉しないように前記上下揺動部材及び左右揺動部材を上下方向へ揺動させ、さらに前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索体により前記トロリに突設した被挟持体を挟持させる、前記操作手段である放索操作ガイドレールと、
前記握索装置が取り付けられたトロリが、前記水平カーブ状経路から前記直線経路へ進入した後に、前記被操作体を操作し、前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索体を前記付勢手段の付勢力に抗して前記被挟持体から離間させ、前記上下揺動部材及び左右揺動部材を上下方向へ揺動させて前記握索体を前記索条の左右に位置させ、さらに前記左右揺動部材を左右方向へ揺動させて前記握索体により前記索条を掴ませる、前記操作手段である握索操作ガイドレールと、
を備えたことを特徴とする索条式駆動装置を備えたトロリコンベア。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−64854(P2010−64854A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233033(P2008−233033)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)