説明

紫外線照射システム

【課題】照度センサの点検を容易に行うことができるようにした紫外線照射システムを提供する。
【解決手段】紫外線照射装置1は、被処理液体を通す流路に設けられ、該流路を通る前記被処理液体に紫外線を照射することにより該被処理液体を処理する紫外線ランプ6と、該紫外線ランプの照度をモニタするための照度センサ7と、を備える。照度センサ点検設備3は、検査用の紫外線ランプ29と、検査用の基準照度計31と、検査対象たる照度センサをセットするためのセンサ設置部30と、前記基準照度計の出力と前記センサ設置部にセットされた前記検査対象たる照度センサの出力とを比較することで、前記検査対象たる照度センサの信頼度を点検する比較装置と、を備える。紫外線照射装置1から照度センサ7を外してセンサ設置部30にセットすることで、該照度センサ7を照度センサ点検設備3で点検する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理液体に紫外線を照射することにより該被処理液体を処理する紫外線照射システムにおいて、必要とする紫外線照射量を確実に確保できるように、紫外線照度をモニタすることに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理において、紫外線照射装置は目的に応じた対象物に対する必要紫外線照射量を確保する必要がある。たとえば、公共事業では、大腸菌群を99.9%不活化するために消毒前の下水二次処理水に30mJ/cm2の紫外線照射量を確保することが求められている。また、産業界では、一般細菌を99.9%不活化するために超純水に30〜50mJ/cm2の紫外線照射量を確保することを要求されている。
【0003】
水処理において、被処理液体に対する紫外線照射量は、紫外線照射装置の光源の経時変化や水質によって変化する。すなわち、紫外線照射装置においては紫外線を発する光源が使用時間とともに低下し、これが被処理液体に対する紫外線照射量に影響を与える。また、水質による影響としては濁度、色度、紫外線透過率、水温、処理流量などが変化すると被処理液体に対する紫外線照射量に影響を与える。さらに、紫外線照射装置内の被処理液体と接している面では硬度分、スケールなどが付着する場合があり、その付着物によって光源からの紫外線が吸収されることがある。その付着面が紫外線ランプを内挿している透明保護管であったり、周囲からの紫外線を受ける流路管であったりすれば、付着物の存在は被処理液体に対する紫外線照射量の低下を招く。また、その付着物が紫外線照度をモニタ検知する照度センサの窓に付着すれば、照度のモニタリング値が実際より低い値を示してしまう。
【0004】
水処理向け紫外線照射装置において、紫外線照度を連続モニタリングする照度センサを具備したものは既に存在している。この照度センサの出力に基づき、紫外線照度が所定基準よりも低下したことが検知されたならば、紫外線ランプを交換することで、被処理液体に対する紫外線照射量を低下させることなく、適切な紫外線処理を行うことができる。ところで、照度センサは受光部が劣化する恐れがあるため、定期的に点検する必要がある。モニタ用の照度センサそのものが劣化したのでは、紫外線照度の正確なモニタができないからである。一般に、その点検は、同じ紫外線ランプの光を、点検すべき照度センサと基準となる照度計とで同時に受光し、それぞれの検知データを比較照合することで行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、今までのところ、専用の照度センサ点検設備が開発されておらず、照度センサの点検に際して、各ユーザは、市販の照度計を基準照度計として用意し、適宜の場所で照度センサと基準照度計とに紫外線ランプの光を照射し、それぞれの検知データを比較照合することで点検を行っていた。そのため、照度センサ点検作業を行うことが面倒であったので、照度センサ点検作業を行い易い環境を整えることが望まれていた。
【0006】
一方、水質のモニタに関しては、既に種々のタイプの水質測定機器が市販されている。しかし、従来は、紫外線照射装置との組み合わせで適切な水質測定機器を提供することがなされておらず、各ユーザが、独自に水質測定機器を用意して、自前で水質管理を行わねばならず、面倒であった。
【0007】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、照度センサの点検を容易に行うことができるようにした紫外線照射システムを提供しようとするものである。更には、水質測定も容易に行うことができるようにした紫外線照射システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る紫外線照射システムは、被処理液体を通す流路に設けられ、該流路を通る前記被処理液体に紫外線を照射することにより該被処理液体を処理する紫外線ランプと、該紫外線ランプの照度をモニタするための照度センサと、を備えた紫外線照射装置と、検査用の紫外線ランプと、検査用の基準照度計と、検査対象たる照度センサをセットするためのセンサ設置部と、前記基準照度計の出力と前記センサ設置部にセットされた前記検査対象たる照度センサの出力とを比較することで、前記検査対象たる照度センサの信頼度を点検する比較装置と、を備えた照度センサ点検設備と、を具備し、前記紫外線照射装置から前記照度センサを外して前記センサ設置部にセットすることで、該照度センサを前記照度センサ点検設備で点検できることを特徴とする。これにより、専用の照度センサ点検設備を具備した紫外線照射システムを提供することができるので、照度センサの点検を容易に行うことができるようになる。
【0009】
本発明の紫外線照射システムにおいては、前記紫外線照射装置において前記流路を通る前記被処理液体の水質をモニタする水質測定機器を更に具備するようにしてもよい。これにより、水質測定も容易に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施例につき詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係る紫外線照射システムの正面略図である。この実施例に係る紫外線照射システムにあっては、設備全体が1つのフレーム又は筐体内に納められており、該フレーム又は筐体の下部に紫外線照射装置1が収容されており、その上部の右側に電源設備2が収容され、その上部の左側に照度センサ点検設備3が収容されている。
【0012】
紫外線照射装置1は、被処理液体を通す流路を形成する密閉管4と、該密閉管4の中に挿入された紫外線透過管(石英管)5と、該紫外線透過管(石英管)5の中に収納された紫外線ランプ6とを含んでいる。公知のように、密閉管4の両端のカバー部4a,4bを外して紫外線透過管5にアクセスし、紫外線ランプ6の交換などを行うことができるようになっている。また、密閉管4には、被処理液体を導入又は排出するためのポート4c,4dが設けられている。このポート4c,4dに配管(図示せず)が接続され、該配管を介して被処理液体が密閉管4に流される。被処理液体は密閉管4内を流れる過程で、紫外線透過管(石英管)5を透過して照射される紫外線ランプ6からの紫外線に曝され、殺菌又は消毒などの所定の処理が施される。
【0013】
密閉管4の所定箇所には、内部に配置した紫外線ランプ6の照度をモニタするための照度センサ7が配置される。この照度センサ7は、例えば、密閉管4の側面に設けられた透明面を通してその内部の紫外線ランプ6から照射された紫外線を受光し、その受光量に応じた電気的検知信号を出力する。この照度センサ7は、密閉管4の所定設置箇所からの取り外しが自在であるが、常時は密閉管4の所定箇所に設置されていて、照度を常時モニタする。照度センサ点検設備3を使用して、該照度センサ7の点検を行う時は、密閉管4の所定箇所から照度センサ7が外されて、後述するように、照度センサ点検設備3にセットされる。
【0014】
また、密閉管4の所定箇所あるいは、ポート4c,4dに接続された配管(図示せず)の所定箇所には、各種の水質をモニタするための各種の水質測定機器(図示せず)が配置される。水質測定項目としては濁度、色度、紫外線透過率、水温、処理流量などの各項目があり、それらの項目を測定するのに必要なセンサや測定機器が設けられる。
【0015】
電源設備2には、紫外線ランプ6に対する電源供給回路が設けられていると共に、上記照度センサ7からの出力信号を受信して所定の紫外線ランプ照度モニタ処理を行う電子・電気機器、上記各種の水質測定機器(図示せず)からの測定信号を受信して所定の水質モニタ処理を行う電子・電気機器、その他の種々の測定機器あるいは制御機器が設けられている。
【0016】
図2は、電源設備2における表示パネル面の一例を示す。この図を参照して、本システムが有する各種のモニタ機能、測定機能などについて列挙する。表示計8〜12は、上記水質測定機器が測定した水質測定結果を表示するものであり、濁度計8,色度計9,紫外線透過率計10,流量計11,水温計12などである。これらは、上記の各水質測定項目である濁度、色度、紫外線透過率、水温、処理流量の測定結果を表示するものである。更に、紫外線照射量計13、電源表示灯14,漏電表示灯15,盤内温度異常表示灯16,UV異常表示灯17,UV点灯表示灯18,積算時間計19,クリーニング異常表示灯20,濁度異常表示灯21,色度異常表示灯22,UV運転切替スイッチ23,紫外線透過率異常表示灯24,流量異常表示灯25,水温異常表示灯26,紫外線照射量異常表示灯27が設けられている。また、付設照度計28は、上記照度センサ7からの出力信号に基づき、紫外線照度のモニタ結果を表示する。
【0017】
なお、この実施例で示した紫外線照射装置1は光源の紫外線ランプ6を2灯使用しているため、UV点灯表示灯18は、それぞれに対応して合計2個設けられている。漏電表示灯15、盤内温度異常表示灯16、UV異常表示灯17、クリーニング異常表示灯20は紫外線照射装置1の装置としての異常を示すためのものである。濁度異常表示灯21、色度異常表示灯22、紫外線透過率異常表示灯24、流量異常表示灯25は水質にのみ依存する異常を示している。これらの水質異常は、上述の水質測定機器の測定データに基づき判定する。水温異常表示灯は処理水が止水し、かつ、光源が点灯していた場合に水温が上昇するために設けてある。紫外線照射量異常表示灯は付設照度計と流量計からの情報にて得られる紫外線照射量が異常となった場合に表示する。その他、積算時間計19は光源の点灯時間の積算時間を示し、光源を交換する際、リセットが可能である。
【0018】
図3は、照度センサ点検設備3の構成例を示す。照度センサ点検設備3の内部には、紫外線照射装置1に使用する光源の紫外線ランプ6と同じ波長の紫外線を発光する紫外線ランプ29が検査用の光源として設けられており、更に、検査用の基準照度計31と、検査対象たる照度センサ7をセットするためのセンサ設置部30とが、測定台32に載せられている。比較装置を含む点検用電子機器33は、前記基準照度計31の出力と前記センサ設置部30にセットされた前記検査対象たる照度センサ7の出力とを該比較装置にて比較することで、前記検査対象たる照度センサ7の信頼度を点検する。ここで、照度センサ7の感度が落ちていると判定されたら、密閉管4にセットする照度センサ7を別のものに交換したり、該照度センサ7の掃除・修理等のメンテナンスを行えばよい。なお、この照度センサ点検設備3を使用して、前記照度センサ7の点検を行う時のみ、該照度センサ7が密閉管4の所定箇所から外されて、該照度センサ点検設備3のセンサ設置部30にセットされる。このように、照度センサ点検設備3が紫外線照射装置1に付属して予め設置されているので、照度センサ点検作業を行い易い。
【0019】
なお、照度センサ点検設備3は、図1に示すように紫外線照射装置1と同一フレーム又は筐体内に収容されていなくてもよい。つまり、照度センサ点検設備3が紫外線照射装置1から分離されていても、1体のシステムとして、近くにまとめられていれば、本発明の目的を達成することができる。また、水質測定機器も紫外線照射装置1から分離して設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例に係る紫外線照射システムの正面略図。
【図2】電源設備における表示パネル面の一例を示す図。
【図3】照度センサ点検設備の構成例を示す略図。
【符号の説明】
【0021】
1 紫外線照射装置
2 電源設備
3 照度センサ点検設備
4 密閉管
5 紫外線透過管(石英管)
6 紫外線ランプ
7 照度センサ
30 センサ設置部
31 検査用の基準照度計
32 測定台
33 比較装置を含む点検用電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液体を通す流路に設けられ、該流路を通る前記被処理液体に紫外線を照射することにより該被処理液体を処理する紫外線ランプと、該紫外線ランプの照度をモニタするための照度センサと、を備えた紫外線照射装置と、
検査用の紫外線ランプと、検査用の基準照度計と、検査対象たる照度センサをセットするためのセンサ設置部と、前記基準照度計の出力と前記センサ設置部にセットされた前記検査対象たる照度センサの出力とを比較することで、前記検査対象たる照度センサの信頼度を点検する比較装置と、を備えた照度センサ点検設備と、
を具備し、前記紫外線照射装置から前記照度センサを外して前記センサ設置部にセットすることで、該照度センサを前記照度センサ点検設備で点検できることを特徴とする紫外線照射システム。
【請求項2】
前記紫外線照射装置を収容する設備内に前記照度センサ点検設備を併設したことを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射システム。
【請求項3】
前記紫外線照射装置において前記流路を通る前記被処理液体の水質をモニタする水質測定機器を更に具備する請求項1又は2に記載の紫外線照射システム。
【請求項4】
前記水質測定機器は、前記被処理液体の濁度、色度、紫外線透過率、水温、処理流量の一部またはすべてを測定項目として測定するものである請求項3に記載の紫外線照射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−104981(P2008−104981A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−291769(P2006−291769)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(391031155)株式会社日本フォトサイエンス (12)
【Fターム(参考)】