説明

紫外線照射用器具および紫外線照射装置

【課題】 照射強度が異なる複数の照射領域を簡便に形成することを可能にする。
【解決手段】 皮膚に紫外線を照射するための光源16からの紫外線の透過率が異なる複数種の遮光フィルタ18と、これら遮光フィルタ18を支持する支持部材61とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚科診療において、例えば、光源から出射された紫外線を皮膚に照射して最少紅斑量を診断する、あるいは紫外線を照射して治療を行うための紫外線照射用器具および紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚科診療では、光過敏性疾患等を治療する際、患者ごとに皮膚の最少紅斑量(MED)を算出することが求められている。最少紅斑量は、患者の皮膚に、紫外線の照射強度が異なる複数の照射領域、すなわちスポットをそれぞれ形成し、各スポットにおける皮膚の状態を、医師が目視で診察することにより判定されている。
【0003】
このような照射強度が異なる複数のスポットを形成するために用いられる従来の紫外線照射装置としては、紫外線照射装置と別体の光源装置からの紫外線を通過させる複数の窓孔と、これら各窓孔を1つずつ順に開閉するためのシャッタを有する露光部とを備える構成が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
この従来の紫外線照射装置では、光源装置による紫外線の照射光の下で、シャッタを間欠移動させることで、各窓孔が自動的に1つずつ開閉されて、照射強度が異なる複数のスポットが順次形成される。そして、この従来の紫外線照射装置では、光源装置が設置された場所で紫外線が照射される患者から離れた場所に医師が退避し、シャッタ機構を遠隔操作することで、医師が曝露することを防ぐことが可能とされている。
【特許文献1】特開平7―88113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の紫外線照射装置と共に使用される光源装置は、一般に、紫外線の照射による治療を行うための光源装置であって、紫外線を照射するための照射専用室内に設置されている。したがって、最少紅斑量を測定する際、患者は、照射専用室内で紫外線を照射する照射部位に上述の紫外線照射装置をかざした状態で保持して、複数のスポットがそれぞれ形成される。このため、従来の紫外線照射装置では、患者が、最少紅斑量を診断するために紫外線を照射するスポットを含めて、身体の他の部位も光源装置からの紫外線に曝されてしまうという問題があった。
【0006】
また、従来の紫外線照射装置を用いて最少紅斑量を測定する場合には、光源装置を設置する照射専用室を用意する、あるいは光源装置からの照射光を遮るための遮蔽物等を設置する必要があり、測定するために充分なスペースを確保する必要があった。
【0007】
また、従来の紫外線照射装置では、患者に紫外線を照射する際、医師が、光源装置を操作する作業を行うと共に、紫外線が照射される患者から一旦退避する、あるいは遮蔽物によって光源装置による照射光を遮蔽する作業を行う等の必要があり、最少紅斑量の測定作業が煩雑であるという不都合があった。
【0008】
そこで、本発明は、紫外線の照射強度が異なる複数の照射領域を簡便に形成することができる紫外線照射用器具および紫外線照射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る紫外線照射用器具は、皮膚に紫外線を照射するための光源からの紫外線の透過率が異なる複数種の遮光フィルタと、これら遮光フィルタを支持する支持部材とを備える。
【0010】
以上のように構成した本発明に係る紫外線照射用器具によれば、光源から照射された紫外線を、透過率が異なる複数種の遮光フィルタを通過させることによって、紫外線の照射強度を異ならせた複数種の照射領域がそれぞれ形成される。したがって、この紫外線照射用器具によれば、照射強度が異なる複数の照射領域が簡便に形成され、照射光を機械的に遮光する必要がないので、構成の簡素化、器具全体の小型化、薄型化が図られる。
【0011】
また、本発明に係る紫外線照射用器具は、遮光フィルタの近傍に、この遮光フィルタからの照射光の光軸方向に突出されてこの遮光フィルタを包囲する突出部が設けられることが好ましい。これによって、突出部を皮膚に突き当てて当接させることで、照射光による照射位置が安定して保持され、照射位置の精度が向上される。
【0012】
また、本発明に係る紫外線照射装置は、皮膚に紫外線を照射するための光源と、この光源からの紫外線の透過率が異なる複数種の遮光フィルタとを備える。
【0013】
以上のように構成された本発明に係る紫外線照射装置によれば、光源装置を設置するスペースを確保する必要がなくなり、光源からの照射光が複数種の遮光フィルタを通過することで、照射強度が異なる複数の照射領域が簡便に形成される。
【0014】
また、本発明に係る紫外線照射装置は、遮光フィルタの近傍に、この遮光フィルタからの照射光の光軸方向に突出されてこの遮光フィルタを包囲する突出部が設けられることが好ましい。この突出部によって、各遮光フィルタを通過した照射光の照射領域の外方に照射光が漏れ出ることが防止される。加えて、この突出部を皮膚に突き当てて当接させることで、照射光による照射位置が安定して保持され、照射位置の精度が向上される。
【0015】
また、本発明に係る紫外線照射装置が備える光源は、紫外発光蛍光層が設けられた一対の基板を有する平板構造をなしていることが好ましい。これによって、光源による照射光の照射強度が充分に確保され、照射領域における照射強度の均一性が向上され、光源を点灯させた際に所望の照射強度の照射光が速やかに得られると共に、装置全体の小型化、薄型化が図られる。
【0016】
また、本発明に係る紫外線照射装置は、光源による照射光を遮断する閉塞位置と、この照射光を照射させる開放位置とに移動可能に設けられたシャッタ部材を有するシャッタ手段を備えてもよい。これによって、シャッタ部材を閉塞位置と開放位置とに移動させることで、紫外線の照射が確実に遮断される。
【0017】
また、本発明に係る紫外線照射装置は、遮光フィルタからの照射光を遮断するカバー部材を備えてもよい。これによって、複数種の遮光フィルタのうちで任意の遮光フィルタを一時的に使用しない場合に、任意の遮光フィルタからの照射光を用意に遮断することが可能になり、使用する遮光フィルタが適宜調整される。
【発明の効果】
【0018】
上述したように本発明によれば、透過率が異なる複数種の遮光フィルタによって、光源の照射光を機械的に遮光する代わりに光学的に遮光することで、照射強度が異なる複数の照射領域を簡便に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の紫外線照射装置は、患者の皮膚の最少紅斑量(MED)を診断するためのいわゆる診察器具である紫外線照射装置として使用されると共に、光線治療器としても使用することが可能に構成されている。
【0021】
図1に示すように、紫外線照射装置1は、紫外線を照射する照射部11と、この照射部11を駆動制御するための制御部12と、これら照射部11と制御部12とを電気的に接続する接続コード13とを備えている。
【0022】
照射部11は、図2および図3に示すように、皮膚に紫外線を照射するための光源16と、この光源16からの紫外線の透過率が異なる複数種の遮光フィルタ18を有するフィルタ部材17と、光源16を冷却するための冷却機構19と、光源16および冷却機構19を覆うと共にフィルタ部材17を支持する筐体20とを備えている。
【0023】
光源16は、図4(a)および図4(b)に示すように、いわゆるナローバンドB紫外線(UV−B)を照射するための紫外蛍光ランプ21を有している。この紫外蛍光ランプ21は、平板構造をなしており、互いに対向して配置された一組の紫外線取り出し側基板22および背面側基板23と、これら紫外線取り出し側基板22と背面側基板23との間に配置された封止用の枠部材24とを有している。
【0024】
枠部材24は、例えばガラス材によって形成されており、紫外線取り出し側基板22および背面側基板23の各外周縁に沿って配置されている。紫外蛍光ランプ21は、一組の各基板22,23と枠部材24とによって、内部が気密に封止された放電室26が形成されている。この放電室26内には、放電媒体として例えばキセノンや、キセノンにネオンやアルゴン等の他の希ガスが混合された混合ガス等の気体が封入されている。この気体は、希ガスが100%であり、例えば従来のナローバンドUV−Bの光線治療器等の光源に用いられている水銀励起の紫外蛍光ランプと異なり、水銀蒸気を含有していないので、環境への影響が少なく、発光の立ち上がり特性が向上されている。したがって、紫外蛍光ランプ21は、照射光の照射強度が充分に確保され、照射領域である各スポットSにおける照射強度の均一性が向上され、点灯させた際に所望の照射強度の照射光が速やかに得られる。
【0025】
紫外線取り出し側基板22は、波長300nm以上の光を透過させる紫外透過性のガラス材によって形成されており、図4(b)に示すように、放電室26側の内面上に、紫外発光蛍光体層27が形成されている。この紫外発光蛍光体層27は、真空紫外線励起用のYF3:Gd(ガドリニウム),Pr(プラセオジウム)蛍光体、YBO3:Gd,Pr蛍光体、YBXY:Gd,Pr蛍光体(但し、X,Yは任意の整数)、(Y1-XGdX)Al3(BO34(但し、0≦X≦1)蛍光体等や、これら蛍光体を混合してなる混合蛍光体が用いられ、厚さが例えば20μm〜50μm程度にされている。これら紫外発光蛍光体層27は、例えば、キセノンの放電による主に147nmの紫外線によって励起され、310nm近傍に鋭いピークをもつ発光スペクトルのナローバンドUV−Bを発光する。なお、310nm近傍に鋭いピークとは、例えば、313nmに半値幅5nm以下程度のピークを指している。また、紫外発光蛍光体層27は、Gdを付活されている蛍光体で、UV−Bを強く発光するものであれば、Prを含んでいなくてもよい。
【0026】
背面側基板23は、放電室26側の内面上に、図4(a)に示すように、一対の電極28a,28bがそれぞれ設けられている。これら一対の電極28a,28bは、櫛の歯状をなす平面状に形成されおり、互いに歯を向き合わせて、一方の電極の歯の間に他方の電極の歯が入り込んで噛み合わされた状態に配置されている。これら各電極28a,28b上には、シリカを主成分とする誘電体層29が形成され、この誘電体層29上に、上述した紫外発光蛍光体層27と同一である紫外発光蛍光体層27が積層されて形成されている。
【0027】
また、背面側基板23には、図1に示すように、紫外蛍光ランプ21の熱を放熱するための複数の放熱フィン25が立設されている。これら放熱フィン25は、冷却機構19に対向する位置に設けられており、冷却機構19を介して良好に放熱させる。
【0028】
なお、各電極28a,28bは、例えば、銀や銅等の導電性が比較的高い材料からなる導電性ペーストをスクリーン印刷すること等によって所望のパターンに形成され、微細加工が可能であり、各電極28a,28bの櫛の歯の幅や隣接する歯の間隔(ピッチ)を数十μm程度に狭めて容易に形成することが可能にされている。さらに、例えばスパッタリングによる導電性膜の形成とフォトリソグラフィ技術とを組み合わせて用いることで、各電極28a,28bの歯の幅やピッチをμmオーダー以下に形成することも可能とされ、小型、薄型でありながら照射強度を充分に大きくすることができる。
【0029】
そして、本実施形態の紫外線照射装置1では、制御部12の後述する電源36内のインバータ(不図示)から紫外蛍光ランプ21の各電極28a,28bの間に、周波数が10〜100kHz程度、電圧が数kV程度の正弦波または矩形波等の交流の高電圧が印加される。このような電圧が印加されることで、光源16は、放電室26内に誘電体層29による誘電体バリア放電が生じ、放電媒体であるキセノンが紫外線を放射する。このキセノンが放射する主に波長147nmおよび波長172nmの紫外線によって、光源16は、各紫外発光蛍光体層27が励起され、波長310nm近傍に鋭いピークをもつナローバンドUV−Bを発光する。
【0030】
フィルタ部材17は、筐体20の後述するフィルタ装着部39に着脱可能に係合されており、紫外線の透過率が異なる9種類の遮光フィルタ18と、遮光フィルタ18が設けられずに光源16からの紫外線を通過させる円形状の開口31とを有している。フィルタ部材17には、各遮光フィルタ18、開口31が直線上に配置されており、紫外線の透過率が例えば10%から10%刻みで90%まで各遮光フィルタ18が順番に大きくなるように配置され、100%に相当する開口31が設けられている。
したがって、このフィルタ部材17によれば、皮膚に照射強度が異なる10種類の各スポットSがそれぞれ形成される。各スポットSは、直径5mm〜30mm程度に形成され、フィルタ部材17の一端側から他端側に向かって照射強度が大きくなっている。
【0031】
なお、遮光フィルタ18は、医師が診療する際等の必要に応じて、照射強度が異なる10〜20種類程度のスポットSを形成するように、個数が適宜調整されてもよい。また、各遮光フィルタ18は、1つの直線上に配列されたが、複数の列状、放射状、円周上に沿って配置される等の他の配列にされてもよいことは勿論である。
【0032】
遮光フィルタ18は、例えば、ガラス基板が直径5mm〜30mm程度の円形状や、一辺5mm〜30mm程度の方形状等に形成され、このガラス基板の表面に所望の膜厚のクロム膜が成膜されてなる。この遮光フィルタ18は、クロム膜の膜厚によって透過する光量を制御するように構成されており、例えば反射型固定式NDフィルタ(シグマ光機社製)が用いられている。また、遮光フィルタとしては、ガラス基板の表面に複数の点状の窪みが形成され、これら窪みによる乱反射によって波長310nm近傍の紫外線の透過率を変化させるように構成された光学フィルタ等が用いられてもよい。
【0033】
また、フィルタ部材17には、各遮光フィルタ18および開口31の外周部に、遮光フィルタ18からの照射光の光軸方向とほぼ平行に突出されて遮光フィルタ18を包囲するように一体に連続して形成された突出部33を有している。すなわち、突出部33には、各遮光フィルタ18および開口31に対応する位置に貫通穴32がそれぞれ設けられている。したがって、各遮光フィルタ18、開口31をそれぞれ通過した各紫外線は、突出部33の各貫通穴32の内壁によって、各スポットSの外方に漏れ出ることが防止される。また、フィルタ部材17は、突出部33を皮膚に当接させることで、紫外線照射装置1が皮膚の対象部位に対して位置決めされ、照射位置が安定して容易に保持されるので、紫外線の照射時にスポットSの位置ずれが生じることが抑えられ、照射位置の精度が向上される。この突出部33の当接面は、紫外線を照射する対象部位に応じて、対象部位の平均的な形状にならった形状に湾曲されて形成されてもよく、当接位置の安定性を向上し、照射位置の精度を更に向上することができる。
【0034】
なお、突出部33は、貫通穴32を有して一体に形成されたが、照射光がスポットSの外方に漏れ出ることを遮断するための円筒状や平板状の遮断壁が、各遮光フィルタ18の外周に亘って囲むように立設される構成にされてもよい。また、フィルタ部材17は、各遮光フィルタ18、および光源16からの紫外線をそのまま透過する開口31を有する構成にされたが、複数種の遮光フィルタ18のみを備え、開口がフィルタ部材と別途に設けられる構成にされてもよい。
【0035】
上述したようにフィルタ部材17は、筐体20の一側部に対して着脱可能に構成されたことで、透過率が異なる他の遮光フィルタを有する他のフィルタ部材と容易に差し替えることが可能にされている。
【0036】
冷却機構19は、光源16に隣接する位置に設けられており、図示しないが、複数の冷却ファンと、これら各冷却ファンを回転駆動する複数の駆動モータ(不図示)とを有している。筐体20には、図1および図2に示すように、各冷却ファンに対応する位置に排気口34aがそれぞれ設けられ、側面にスリット状をなす複数の吸気口34bが設けられている。
【0037】
筐体20の一側部には、図2および図3に示すように、フィルタ部材17が着脱可能に係合されて装着されるフィルタ装着部39が形成されている。また、筐体20の外周部の一側面には、照射部11を把持するための取っ手35が設けられており、この取っ手35の内部に、接続コード13の一端が挿通されている。また、この取っ手35には、光源16を点灯させる際に押し込み操作するための操作ボタン38が設けられており、制御部12に電気的に接続されている。
【0038】
制御部12は、光源16および冷却機構19に電力を供給する電源36と、光源16の点灯状態を制御する制御回路37とを有している。制御回路37は、タイマー処理回路を有しており、操作ボタン38が押し込み操作され、紫外蛍光ランプ21の点灯時から予め設定された時間が経過した後に、光源16の紫外蛍光ランプ21を自動的に消灯させる。
【0039】
以上のように構成された紫外線照射装置1について、照射強度が異なる複数種のスポットSをそれぞれ形成する際の操作手順を説明する。
【0040】
まず、紫外線照射装置1は、患者の例えば腕や腹等の照射部位の皮膚に、照射部11の突出部33を当接させた状態で保持される。
【0041】
次に、操作ボタン38を押し込み操作することで、光源16の紫外蛍光ランプ21が点灯され、紫外蛍光ランプ21から比較的速やかに所望の照射強度の紫外線が放射され、各遮光フィルタ18および開口31を通過した照射光が、異なる照射強度で各スポットSに照射される。紫外線照射装置1では、紫外線の照射中に、紫外線が各スポットSの外方に漏れ出ないので、患者は照射部位以外に不必要に照射されることがなく、医師も患者から離れることなく紫外線の曝露が防止される。
【0042】
続いて、紫外蛍光ランプ21の点灯時から所定時間が経過した後、制御部12のタイマー処理回路によって、紫外蛍光ランプ21が自動的に消灯されることで、照射強度が異なる各スポットSがそれぞれ形成される。そして、各スポットSにおける皮膚の状態によって、医師が患者の最少紅斑量を診断する。
【0043】
上述したように、紫外線照射装置1によれば、紫外線の透過率が異なる複数種の遮光フィルタ18を有するフィルタ部材17を備えることによって、従来のような機械的な露光部を備える必要がなく、遮光フィルタ18によって光学的に、照射強度が異なる各スポットSを比較的短時間で簡便に形成することができる。したがって、この紫外線照射装置1によれば、光源装置を別途に設置するスペースを確保する必要がなくなり、装置全体の小型化、薄型化を実現することができる。
【0044】
また、この紫外線照射装置1によれば、貫通穴32を有する突出部33を備えることで、各遮光フィルタ18および開口31からの照射光がスポットSの外方に漏れ出ることが防止されるので、患者も照射部位以外の箇所が不必要に曝露されることが防がれると共に、医師が患者から離れた場所に退避することなく曝露されることを防ぐことができる。したがって、突出部33によれば、医師の曝露を防ぐために、照射光を遮蔽する遮蔽物を別途に設置する作業を省くことができる。加えて、この紫外線照射装置1によれば、突出部33を皮膚に沿って突き当てることで、照射部11が安定して保持されるので、照射強度が異なる各スポットSの照射位置の精度を向上することができる。
【0045】
また、紫外線照射装置1は、光源16が平板構造の紫外蛍光ランプ21を有することで、光源16による照射光の照射強度が充分に確保され、各スポットSにおける照射強度の均一性が向上され、光源16を点灯させた際に所望の照射強度の照射光が速やかに得られると共に、装置全体の小型化、薄型化が図られる。
【0046】
さらに、この紫外線照射装置1によれば、形成された各スポットSの状態から最少紅斑量が診断された後、フィルタ部材17を筐体20から取り外すことで、光源16による照射光を遮光することなく直接照射することが可能になり、患者の患部に紫外線を照射して治療を行うための光線治療器としても利用することができる。
【0047】
以下、他の実施形態について説明する。なお、他の実施形態において、上述した実施形態の紫外線照射装置1と同一の構成部材には、便宜上、同一符号を付して説明を省略する。
【0048】
(他の実施形態)
上述した紫外線照射装置1は、制御部12の制御回路37によって、紫外蛍光ランプ21の点灯および消灯を経過時間に基づいて切り替えることで照射時間を制御するように構成されたが、照射部が有するシャッタ板によって各遮光フィルタからの照射光を遮断することで照射時間を制御することも更に可能に構成される点が異なる。
【0049】
他の実施形態の紫外線照射装置は、図5に示すように、皮膚に紫外線を照射するための照射部41と、この照射部41を駆動制御するための制御部12とを備えている。
【0050】
照射部41は、光源16からの紫外線の透過率が異なる複数の遮光フィルタ18を支持するフィルタ部材43と、このフィルタ部材43を矢印a方向に移動可能に支持する筐体44と、各遮光フィルタ18および開口31からの各照射光を遮断するためのシャッタ板46を有するシャッタ機構45とを備えている。
【0051】
フィルタ部材43は、略平板状に形成されており、複数種の遮光フィルタ18および開口31がそれぞれ設けられている。フィルタ部材43の長手方向の両側面には、筐体44に設けられたガイドレール(不図示)に係合されるガイド溝48が形成されている。また、フィルタ部材43には、長手方向の一端部に、後述するフィルタ装着部51に対して引き出し操作するための操作片49が設けられている。
【0052】
筐体44には、光源16に対してフィルタ部材43が挿脱可能に装着されるフィルタ装着部51が設けられている。このフィルタ装着部51は、筐体44の側面に一端が開口されて形成されている。
【0053】
シャッタ機構45は、シャッタ板46と、このシャッタ板46を矢印b方向に対して移動させる駆動機構47とを有している。シャッタ板46は、各貫通穴32内の各遮光フィルタ18および開口31を一斉に遮蔽するのに足る大きさに形成されており、各貫通穴32を閉塞して照射光を遮断する閉塞位置と、各貫通穴32を開放して照射光を照射させる開放位置とに移動可能に設けられている。駆動機構47は、シャッタ板46に噛合されたギア列(不図示)を駆動するためのモータ53を有している。
【0054】
そして、このシャッタ機構45は、制御部12の制御回路37のタイマー処理回路によって、シャッタ機構45のシャッタ板46を駆動制御させることで、各遮光フィルタ18および開口31からの照射光による照射時間が制御される。また、シャッタ板46によって、遮光フィルタ18に塵埃が付着することや、照射部41の内部に塵埃が進入することも良好に防止することができる。なお、シャッタ板は、光源16と各遮光フィルタ18との間に対して進退動作するように設けられて、光源16からの照射光を遮断する構成にされてもよい。
【0055】
また、この照射部41は、任意の遮光フィルタ18からの紫外線が照射されないように突出部33の任意の貫通穴32内に嵌め込まれるカバー部材であるキャップ55を備えている。キャップ部材55は、例えば樹脂材等によって有底円筒状に形成されており、貫通穴32内に係合されることで、その貫通穴32に対応する遮光フィルタ18または開口31からの照射光が遮断される。すなわち、キャップ部材55によれば、照射が不要とされる任意の照射強度のスポットSが形成されないように、スポットSの個数を容易に調整することができる。
【0056】
また、本実施形態における制御部12の制御回路37は、タイマー処理回路によって、シャッタ機構45のモータ53を駆動制御することで、シャッタ板46の開放時から所定の時間経過した後に、シャッタ板46を閉塞位置に移動させて、シャッタ板46によって遮光フィルタ18および開口31をそれぞれ閉塞させる。なお、制御回路37は、タイマー処理回路によって、シャッタ機構45のシャッタ板46を駆動制御すると共に、紫外蛍光ランプ21の点灯時間の制御をそれぞれ行うように構成されてもよい。
【0057】
以上のように構成された紫外線照射部41は、シャッタ板46によって各遮光フィルタ18および開口31が一斉に閉塞されている状態で、皮膚に突出部33を突き当てて当接させた状態に保持される。
【0058】
次に、制御部12によって紫外蛍光ランプ21が点灯され、シャッタ機構45によってシャッタ板46が開放位置に移動されることで、各遮光フィルタ18および開口31を通過した紫外線の照射が開始される。
【0059】
続いて、シャッタ板46の開放時から所定の時間経過した後、制御部12の制御回路37は、タイマー処理回路によって、シャッタ機構45のモータ53を駆動制御することで、シャッタ板46を閉塞位置に移動させて、シャッタ板46によって遮光フィルタ18および開口31からの照射光が遮断される。また、制御部12のタイマー処理回路によって、紫外蛍光ランプ21は自動的に消灯される。これによって、照射強度が異なる各スポットSがそれぞれ形成される。
【0060】
上述したように、本実施形態の紫外線照射装置が備える照射部41によれば、各遮光フィルタ18および開口31からの照射光を遮断するシャッタ板46を有するシャッタ機構45を備えることによって、光源16による照射光の照射時間を制御することができる。
【0061】
また、この照射部41によれば、フィルタ部材43をa方向にスライド操作することで筐体44のフィルタ装着部51に対して容易に挿脱することが可能になり、他のフィルタ部材と容易に交換することができる。
【0062】
(更に他の実施形態)
上述した実施形態の紫外線照射装置は、紫外線を照射する光源を備える構成にされたが、他の光源装置からの照射光によって、照射強度が異なるスポットSを形成する紫外線照射用器具について説明する。
【0063】
図6に示すように、本実施形態の紫外線照射用器具2は、紫外線の透過率が異なる複数種の遮光フィルタ18と、これら遮光フィルタ18を支持する支持部材61とを備えている。支持部材61には、各遮光フィルタ18および開口31が直線上に配列されており、長手方向の一端側に、把持するための取っ手62が一体に形成されている。
【0064】
要するに、本実施形態の紫外線照射用器具2は、上述の紫外線照射装置の照射部11,41が有するフィルタ部材17,43を単体で利用する構成にほぼ等しく、外部の光源装置による照射光を遮光することで、照射強度が異なる複数種のスポットSをそれぞれ形成することが可能にされている。
【0065】
上述したように、本実施形態の紫外線照射用器具2によれば、各遮光フィルタ18および開口31によって照射強度が異なる複数種のスポットSを光学的に形成することができるため、上述の従来のような機械的な露光部を備える必要がなく、構成の簡素化が図られ、器具全体の小型化、薄型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態の紫外線照射装置を示す模式図である。
【図2】前記紫外線照射装置が備える照射部を示す斜視図である。
【図3】前記照射部を示す斜視図である。
【図4】光源の紫外蛍光ランプを説明するための図であって、(a)が横断面図、(b)が縦断面図である。
【図5】他の実施形態に係る照射部を示す斜視図である。
【図6】更に他の実施形態に係る紫外線照射用器具を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
1 紫外線照射装置
11 照射部
12 制御部
16 光源
17 フィルタ部材
18 遮光フィルタ
21 紫外蛍光ランプ
32 貫通穴
33 突出部
39 フィルタ装着部
61 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に紫外線を照射するための光源からの前記紫外線の透過率が異なる複数種の遮光フィルタと、
前記遮光フィルタを支持する支持部材と
を備える紫外線照射用器具。
【請求項2】
前記遮光フィルタの近傍には、該遮光フィルタからの照射光の光軸方向に突出されて該遮光フィルタを包囲する突出部が設けられている請求項1に記載の紫外線照射用器具。
【請求項3】
皮膚に紫外線を照射するための光源と、
前記光源からの前記紫外線の透過率が異なる複数種の遮光フィルタと
を備える紫外線照射装置。
【請求項4】
前記遮光フィルタの近傍には、該遮光フィルタからの照射光の光軸方向に突出されて該遮光フィルタを包囲する突出部が設けられている請求項3に記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記光源は、紫外発光蛍光層が設けられた一対の基板を有する平板構造をなしている請求項3または4に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記遮光フィルタを支持する支持部材と、
前記支持部材が着脱可能に装着される装着部とを備える請求項3ないし5のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記光源による照射光を遮断する閉塞位置と、該照射光を照射させる開放位置とに移動可能に設けられたシャッタ部材を有するシャッタ手段を備える請求項3ないし6のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。
【請求項8】
前記シャッタ手段は、前記シャッタ部材を開閉動作させる駆動手段を有する請求項7に記載の紫外線照射装置。
【請求項9】
前記遮光フィルタからの照射光を遮断するカバー部材を備える請求項1ないし8のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−87472(P2006−87472A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273221(P2004−273221)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(300022353)NECライティング株式会社 (483)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【Fターム(参考)】