説明

紫外線照射装置

【課題】 ワイパの動きを滑らかにすることができる紫外線照射装置を提供する。
【解決手段】 紫外線ランプが内装され、並列にフレーム29に支持された複数の紫外線の透過管31、各々の透過管31の外側に長手方向に移動自由に装着されたワイパ33、複数の透過管31の間に平行に延材させて設けられた移動部材35、この移動部材35を延在方向に移動させる駆動手段37, 39、そして移動部材37, 39にワイパ33を係合させる係合部材51を備える。このように、ワイパ33と透過管31の間の摩擦力がワイパロッド35の長手方向、すなわちワイパロッド35の剛性の高い方向に働くため、ワイパロッド35の変形などが少なく、ワイパ33の動きを滑らかにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外線照射装置に係り、特に、流路を流れる液体の紫外線処理を行なう紫外線照射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】紫外線照射装置は、被処理液が流入する流路または槽内に紫外線ランプが内挿された紫外線の透過管を設置し、被処理液中の微生物の殺滅、有機物の酸化分解、その他の有毒物質の分解などを行なうものである。このような紫外線照射装置では、透過管が被処理液中に浸かった状態であるため、被処理液中の微生物や有機物質などの不純物が透過管の表面に付着し、この付着物によって被処理液への紫外線照射量が低下する。このような、紫外線照射能力の低下、すなわち紫外線処理能力の低下を防ぐため、紫外線照射中に透過管の表面の清掃を行なえるようにした紫外線照射装置が特開平8−243554号公報に提案されている。このような清掃機構付の紫外線照射装置では、紫外線照射モジュールと清掃機構部とから構成されている。紫外線照射モジュールは、紫外線ランプを内挿した紫外線の透過管がフレームに棚状に設置されたものである。この紫外線モジュールが、被処理液の流路などに複数平行に並べて設置される。清掃機構部は、複数の紫外線モジュールの上部に設置された駆動装置と移動部材、この移動部材に固定され、紫外線照射モジュールの上部から下部に向けて透過管の間に垂下されている略棒状または略帯状のアーム、そして、透過管に装着されたワイパなどで構成されている。アームには、棚状に設置された透過管に対応する位置にワイパと係合する複数の係合部材が固定されている。透過管の外側表面が汚れ、被処理液への紫外線の照射量が低下した場合、駆動装置の動作に応じて、移動部材が透過管の長手方向に移動し、これに応じてアームが透過管の間を移動することで、ワイパが透過管の外側表面を払拭し、付着物などを除去する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の清掃機構付の紫外線照射装置では、上端部で紫外線照射モジュールの上部に在る移動部材に固定された略棒状または略帯状のアームとこのアームに固定された係合部材とを介してワイパを移動させるため、アームの下端部側では移動部材からの距離が遠くなり、ワイパと透過管の間の摩擦によりアームが斜めに傾いた状態で移動することになる。このため、ワイパが円滑に動かない。
【0004】本発明の課題は、ワイパの動きを円滑にできる紫外線照射装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の紫外線照射装置は、紫外線ランプが内装され、並列にフレームに支持された複数の紫外線の透過管と、各々の透過管の外側に長手方向に移動自由に装着されたワイパと、複数の透過管の間に平行に延材させて設けられた移動部材と、この移動部材を延在方向に移動させる駆動手段と、移動部材にワイパを係合させる係合部材とを備えることにより上記課題を解決する。
【0006】このような構成とすれば、透過管と平行にに延在している移動部材に直接固定された係合部材によりワイパを移動させるため、ワイパと移動部材の距離が近くなるため、ワイパの動きを円滑にすることができる。
【0007】さらに、ワイパが透過管の外表面に長手方向に複数配置され、隣り合う2本の透過管のワイパを長手方向に位置をずらして配置すれば、被処理液の紫外線照射域での流れに直角な方向の混合が促進され、流れの短絡が抑制されるため、紫外線処理の効果を高めることができるので好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用してなる紫外線照射装置の一実施形態を図1乃至図3を参照して説明する。図1は、本発明を適用してなる紫外線照射装置の概略側面図である。図2(a)は、図1のAの部分を拡大した側面図、(b)は、断面図である。図3(a)(b)は、ワイパの停止位置の例を示す上面図である。
【0009】本実施形態の紫外線照射装置1は、図1に示すように、紫外線処理槽3、流入槽5、流出槽7、で構成される開水路と紫外線処理槽3の中に設置されている紫外線照射モジュール8などで構成されている。紫外線処理槽3は、紫外線処理槽用脚部9の上に据え付けられ、上流側に流入槽5が、下流側に流出槽7が一体に形成されている。流入槽5は、流入槽用脚部11の上に据え付けられ、紫外線処理槽3の底面よりも低い位置に底面を有しており、流入槽5の下部側面には、流入口13を形成するフランジ管15が取り付けられている。流出槽7は、流出槽用脚部20の上に据え付けられ、内部が上部槽17と下部槽19の2段構造になっており、下部槽19は、紫外線処理槽3の底面よりも低い位置に底面を有している。上部槽17の底板18に形成されている図示していない穴の上側の周囲には、枠状の越流堰21が設けられており、下部槽19の側面には、流出口23を形成するフランジ管25が取り付けられている。
【0010】紫外線消毒装置1には、1以上の紫外線照射モジュール8が設置されており、紫外線照射モジュール8は、防食性の材質、例えばステンレスやアルミニウムなどの金属や樹脂などで形成されたフレーム29、紫外線を透過する材質、例えば石英ガラスなどで形成された2本の透過管31、防食性の材質、例えばステンレスやテフロン(登録商標)などで形成されたワイパ33、移動部材であり、例えばステンレスやテフロンコーティング材などで形成されたワイパロッド35、そして、駆動手段である駆動シリンダ37と例えばステンレスやテフロンコーティング材などで形成された継手部材39などで構成されている。フレーム29は、透過管31より長く形成された横枠29aと、横枠29aに垂直に固定された縦枠29bと29cからなる。縦枠29bと29cには、透過管31の両端部を保持するソケット47と49が各々取り付けられている。透過管31は、内部に、図示していない紫外線ランプが挿入されており、また、ソケット47と49内に備えられたO−リングなどのシール材により透過管31内に液体が進入しないようにシールされた状態で支持されている。透過管31の外側には、リング状のワイパ33が装着されおり、2本の透過管31の間には、ワイパロッド35が透過管31と平行に延在している。
【0011】ワイパ33とワイパロッド35は、図2に示すように、係合部材51により一体に動くようになっている。ワイパロッド35の透過管31に面する2箇所の部分に、各々2つづつの係合部材51がワイパ33を挟み込むように取り付けられている。係合部材51は、ワイパロッド35と同様に例えばステンレスやテフロンコーティング材などからなり、二股状に形成され、棒状の基部51aと、二股に分かれたアーム部51bとを有し、基部51aでワイパロッド35に固定されている。アーム部51bの基部51a側は、透過管31に沿って、透過管31を囲むように形成され、開放側は、2本のアームが平行に真っ直ぐ伸びている。すなわち、アーム部51bは、略U字形状に形成されている。
【0012】ワイパロッド35は、図1に示すように、一方の端部で継手部材39に連結されている。継手部材39は、横枠29aの一方の端部上側に横枠29aと平行に設置された駆動シリンダ37のピストン40に連結されている。また、横枠29aの駆動シリンダ37が設置されている側の端部には、固定用板53が横枠29aに垂直に取り付けられており、縦枠29cと固定用板53との間に2本のガイドロッド55が上下に平行に固定されている。2本のガイドロッド55は、継手部材39に設けられた上下2箇所の穴に挿通され、駆動シリンダ37のピストン40の伸縮に応じて継手部材39が透過管31の長手方向に移動できるようにガイドしている。
【0013】紫外線照射モジュール8は、紫外線処理槽3内の流入槽5側と流出槽7側の側面間に固定されたアングル材からなるラック57に、横枠29aの両端部を引っ掛けて吊り下げられた状態で設置されている。
【0014】このような構成の紫外線照射装置1の動作と本発明の特徴部について説明する。流入槽5に流入口13から流入した被処理液は、紫外線処理槽3に設置された紫外線照射モジュール8の透過管31の長手方向に沿って流れ、紫外線の照射を受けることにより、被処理液中の微生物の殺滅、有機物の酸化分解、その他の有毒物質の分解などが行なわれる。流出槽7の上部槽17に設けた越流堰21を越えた被処理液は、下部槽19に落下し、流出口23から次工程などに送られる。紫外線処理槽3内の被処理液の水位は、越流堰21によって、上側の透過管31上面が水没した状態になるように保たれている。このように、透過管31が被処理液中に浸かった状態であるため、被処理液の紫外線処理を続けると、被処理液中の微生物や有機物質などが透過管31の表面に付着し、被処理液への紫外線照射能力が低下する。このため、例えば紫外線センサなどで紫外線の照度を検出し、紫外線の照度が必要レベルより低くなった場合には、ワイパ33を透過管31の長手方向に沿って往復移動させることで透過管31の外側表面を払拭して透過管31の付着物を除去する。フレーム29の横枠29a上に設置された駆動シリンダ37は、例えばエア駆動シリンダ、モータ駆動シリンダ、油圧駆動シリンダなどであり、透過管31の長手方向にピストン40が伸縮、すなわち往復移動する。ピストン40とワイパロッド35とは継手部材39を介して連結されているので、ピストン40の往復移動に応じて、透過管31の間に透過管31に平行に延在しているワイパロッド35が透過管31の長手方向に沿って移動し、ワイパーロッド35に固定された係合部材51がワイパ33を透過管31の外側表面を払拭しながら往復移動させる。透過管31の外側表面の付着物が取り除かれ、紫外線照射量が必要なレベル以上になると駆動シリンダ37が停止し、ワイパ33の移動が停止する。このとき、図3に示すように、隣接する紫外線照射モジュール8に取り付けられた透過管31に装着されたワイパ33が交互に位置がずれた状態に配置されるように停止している。例えば、図3(a)は、3つの紫外線照射モジュール8が設置されている場合であり、中央の紫外線照射モジュール8の駆動シリンダ37が最大ストロークになっているとき、その両側の紫外線照射モジュール8の駆動シリンダ37が最小ストローク、すなわち、ピストン40が引っ込んだ状態になるようにすればよい。図3(b)は、図3(a)と逆の状態でワイパ33が停止している状態を示している。
【0015】このように、透過管31の間に透過管31に平行に延在するワイパロッド35が係合部材51のみを介してワイパ33を移動させているので、ワイパ33とワイパロッド35の距離が近く、従来の紫外線照射装置のように、ワイパと透過管の間の摩擦によって斜め傾いて移動するアームのような部材がないため、ワイパ33の動きを滑らかにすることができる。
【0016】さらに、従来の紫外線照射装置では、アームが透過管の間に櫛状に垂下されているため、透過管を支持するフレームの縦枠と合わせ、被処理液の流れに垂直に面する多数の部材が生ずることになり、これらに被処理水中のごみなどが引っかかり流路を塞ぐ恐れがある。しかし、本実施形態の紫外線照射装置1では、従来のような櫛状に垂下されたアームが存在しないため、被処理液の流れに垂直に面する部材が、フレーム29の縦枠29bのみであり、ごみなどが引っ掛かることによる流路の閉塞の恐れが少ない。
【0017】また、従来の紫外線照射装置では、複数の紫外線照射モジュール上に1つの清掃機構部を取り付けている。このため、紫外線ランプが切れた場合、清掃機後部を紫外線照射モジュール上から取り外した後、紫外線ランプが切れた紫外線照射モジュールを取り出して紫外線ランプを交換するというように紫外線ランプの交換に手間がかかる。しかし、本実施形態の紫外線照射装置では、各々の紫外線照射モジュール8がワイパ33の駆動機構、すなわち駆動シリンダ37や継手部材39などを有しているため、ランプが切れたモジュールのみを簡単に取り出すことができる。但し、複数の紫外線照射モジュール8に対して1つの駆動機構、すなわち1組の駆動シリンダ37や継手部材39などのみを備えるような構成にしてもよい。
【0018】ところで、紫外線ランプの処理能力は、紫外線処理の対象となる微生物や物質などへの照射量で決まる。照射量は、紫外線照度と照射時間の積である。また、紫外線照度は、被処理液による拡散と吸収により、紫外線ランプから離れるにしたがって急激に減衰する。このため、必要な効果を得るためには、紫外線ランプの間隔は、被処理液の紫外線の拡散や吸収に応じて決められた間隔以下にする必要がある。
【0019】しかし、従来の紫外線照射装置では、ワイパの動きを滑らかにするために、アームが斜めに傾かないような剛性を得られるアームの太さにすることが考えられるが、この場合、紫外線ランプの間隔が広くなり、十分な紫外線処理効果を得られない恐れがあった。一方、本発明を適用した紫外線照射装置では、ワイパ33と透過管31の間の摩擦力がワイパロッド35の軸方向、すなわちワイパロッド35の剛性の高い方向に働くため、ワイパロッド35を細くでき、紫外線ランプの間隔を最適な間隔にできる。また、移動手段をワイパーロッド35に代えて無端状のワイヤなどにし、駆動手段を駆動シリンダ37と継手部材39に代えて透過管31の両端部側に設けたプーリとプーリを回転させるモータなどにすれば、移動手段の太さをさらに細くすることもできる。
【0020】また、本実施形態では、隣接する紫外線照射モジュール27の各々の透過管31に装着されたワイパ33が交互に位置がずれた状態に配置されているため、被処理水の流れが交互に配置されたワイパ33にぶつかることで、全てのワイパ33が同じ位置に配置されているときよりも大きく流れが乱され、紫外線照射域における流れに直角な方向の混合が促進され、流れの短絡が抑制される。前述のように、紫外線の照射量は、紫外線照度と照射時間の積であり、流れの短絡が抑制されれば平均照射時間が長くなるため、紫外線処理の効率を向上できる。
【0021】また、本実施形態は、紫外線照射モジュール8を設置した紫外線処理槽3、流入槽5、流出槽7で構成される紫外線照射装置1であるが、本発明はこれに限らず、様々な構成の紫外線照射装置に適用できる。
【0022】
【発明の効果】本発明によれば、ワイパの動きを滑らかにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用してなる紫外線照射装置の一実施形態の概略側面図である。
【図2】(a)は、図1の破線で囲んだAの部分を拡大した側面図、(b)は、断面図である。
【図3】(a)、(b)は、各々、ワイパの停止位置の一例を示す上面図である。
【符号の説明】
1 紫外線照射装置
29 フレーム
31 透過管
33 ワイパ
35 ワイパロッド
37 駆動シリンダ
39 継手部材
51 係合部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 紫外線ランプが内装され、並列にフレームに支持された複数の紫外線の透過管と、各々の該透過管の外側に長手方向に移動自由に装着されたワイパと、複数の前記透過管の間に平行に延在させて設けられた移動部材と、該移動部材を延在方向に移動させる駆動手段と、前記移動部材に前記ワイパを係合させる係合部材とを備えてなる紫外線照射装置。
【請求項2】 前記ワイパは、前記透過管の外側表面に長手方向に複数配置され、隣り合う2本の前記透過管の前記ワイパは、長手方向に位置をずらして配置されてなることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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