説明

紫外線照射装置

【課題】マイクロ波と無電極ランプとのインピーダンスの整合を行いマグネトロンの長寿命化を図るとともに設置場所の自由度の向上を図る。
【解決手段】マグネトロン13を駆動させる高圧電源12から構成する点灯装置11が収納される筐体14および放電媒体が封入されている無電極ランプ27を収納し、下面から無電極ランプ27から照射される紫外線が照射可能な構成としたランプハウス20とを導波管16を用いて電磁的、機械的に接合する。導波管16には、この導波管16を出し入れする調整軸31a〜31cから構成されるマイクロ波のインピーダンス整合の調整を行うためのスタブ31が設けられている。これにより、マイクロ波と無電極ランプとのインピーダンスの整合を行ってマグネトロン13の長寿命化を図るとともに、筐体14とランプハウス20の外にある導波管16の長さを変えることができることから筐体14の設置場所の自由度の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に印刷関連のインク乾燥、半導体関連の微細露光、液晶関連の接着剤硬化等の用途に用いられるマイクロ波給電により無電極ランプから紫外線を照射する紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を生成させる放電ランプとして、マイクロ波による放電を利用したマイクロ波給電方式による無電極放電ランプが考えられている。紫外線発光金属である鉄が封入されたメタルハライドランプは、波長360〜380nmの紫外線を発光でき、ペンキ、インク、樹脂、塗装などが塗布された面の表面硬化処理や光化学反応による化学物質の合成および処理等の工程のある半導体や液晶パネルの製造、さらには紫外線を用いて殺菌を行う水処理等に用いられている。このような紫外線照射装置では、同一筐体内にマグネトロンを配置させ、これのマグネトロンから無電極ランプに放射させている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特表2003−510773公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、マグネトロンと無電極ランプを同一筐体内に収め、マグネトロン駆動用の高圧電源が異なる位置に配置されている。このため、マグネトロンから放射されるマイクロ波と、無電極ランプを収めるキャビティとの整合が困難であり、マグネトロンは反射波に曝され短寿命化する、という問題があった。また、マグネトロン駆動用高圧電源とマグネトロンを異なる位置に配置した場合、高耐圧ケーブルのロスを考慮し、容量の大きな電源を必要としていた。
【0004】
この発明の目的は、マグネトロンおよびこれを駆動させる電源からなる点灯装置が収納された筐体の設置場所の自由度を向上させることのできる紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の紫外線照射装置は、マイクロ波を発生させるマグネトロンおよび該マグネトロンを駆動させる高圧電源から構成する点灯装置が収納される筐体と、放電媒体が封入されている無電極ランプを収納し、少なくとも一面から前記マイクロ波に基づき、前記無電極ランプから照射される紫外線が照射可能な構成としたランプハウスと、前記筐体および前記ランプハウスを電磁的に結合させるとともに機械的に結合させ、前記マグネトロンで発生させたマイクロ波を前記無電極ランプに供給し、該無電極ランプを点灯させる導波管と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、ランプハウスと点灯装置の筐体を導波管で接続したことにより、点灯装置の筐体の設置に自由度を持たせることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1〜図3は、この発明の紫外線照射装置に関する第1の実施形態について説明するための、図1は概念について説明するための構成図、図2は一部が分解された状態の斜視図、図3は図2要部の側断面図、図4は図1で用いる無電極ランプの一例について説明するための説明図である。
【0009】
図1、図2において、11は、高圧電源12およびこの高圧電源12で駆動され、マイクロ波を発生するマグネトロン13とから構成される点灯装置である。点灯装置11は電磁的にシールド可能な材料で形成された筐体14に収納される。マグネトロン13は、高圧電源12から供給される電圧に基づき、アンテナ15から発生するマイクロ波を、点灯装置11の出力として電磁的なシールドが可能な材料で筒状に形成された導波管16の入力側に送出する。
【0010】
筐体14にはアンテナ15から発生したマイクロ波を送出するための導波管16の入力側の内側形状と同形状の出力孔17が形成される。導波管16の両開口部16a,16bには取り付け用の鍔18a,18bが一体的にそれぞれ形成されている。導波管16の出力側は、導波管16の内側形状と同形状の入力孔19が形成されたランプハウス20に接合される。
【0011】
鍔18aには複数の取付孔21が、鍔18bには複数の取付孔22がそれぞれ形成され、取付孔21と対向する筐体14にも取付孔23が、取付孔22と対向する筐体にも取付孔24がそれぞれ形成される。そして、取付孔21と取付孔23を合わせてネジとナットからなる取付手段25で締め付け取り付けることにより、導波管16を筐体14に取り付けることができる。
【0012】
同様に、取付孔23と取付孔24を合わせてネジとナットからなる取付手段26で締め付け取り付けることにより、ランプハウス20を導波管16に取り付けることができる。この機械的な結合と同時に、筐体14とランプハウス20は電磁的に連なった状態を実現できる。
【0013】
ランプハウス20内には、無電極ランプ27が所定位置に収容される。ランプハウス20の上面部には、図示しない冷却用のファンが取着され、無電極ランプ27から発せられる熱が放出される。ランプハウス20の下面部に形成された照射窓28からは、無電極ランプ27から発光された紫外線を、非照射面側に配置した図示しないリフレクタに反射させて照射する。
【0014】
無電極ランプ27は、例えば図4に示す構成となっている。すなわち、271は紫外光を透過させる石英ガラス製の長さが240mm程度の円筒形状のバルブである。バルブ271は、中央部272をその両端部273,274よりも細くなるようにテ―パをつけたもので、両端部273,274の外径は例えば17mm程度、中央部272の外径は10mm程度である。
【0015】
バルブ271の発光空間275内には、不活性ガスとそれに水銀と紫外線の発光金属である鉄を主成分とするマイクロ波で放電させる放電媒体を封入する。バルブ271の両端には、バルブ271を支持する支持部276,277がバルブ271と一体的に形成される。
【0016】
照射窓28には、例えば金属線をメッシュ状に編み込んで形成したり、金属板にパンチング加工で形成したりすることで、マイクロ波はシールドさせ、紫外光は透光させるスクリーン29が配置される。30は、無電極ランプ27とリフレクタそれにスクリーン29で構成されるマイクロ波空洞部である。
【0017】
これにより、マグネトロン13で生成し、アンテナ14を介して送信されたマイクロ波は、導波管16を介してランプハウス20に供給され、無電極ランプ27から紫外線を照射させることができる。
【0018】
このように、点灯装置11を収納した筐体14とランプハウス20とを別筐体でそれぞれ収納し、筐体14の側面とランプハウス20側面間を導波管16で電磁的、機械的に接続したことにより、それぞれの筐体を小さくすることが可能となる。また、導波管16の長さを変更することにより、ランプハウス20と点灯装置11との場所に制約を軽減することができる。つまり、筐体14は、導波管16の長さを変えるだけで、設置場所を変更することができ、設置場所の自由度を向上させることができる。
【0019】
なお、マイクロ波のインピーダンス不整合は、設計段階で導波管16の長さを予めインピーダンスを整合するような設計を行うことで、組立後におけるインピーダンスの整合作業を解消することができる。
【0020】
ランプハウス20内には、無電極ランプ27やリフレクタ程度しか収納されていないことから、無電極ランプ27を冷却させる機構についても簡略化することが可能である。冷却機構としてはファンを用いても構わないが、ランプハウス20の上面に開口を形成し、この開口部に電磁シールドを施す程度でも所望の温度設定の実現が可能であることから、必ずしも冷却ファンは必要としない。
【0021】
以下、この発明の紫外線照射装置に関する他の実施形態について説明するが、上記した第1の実施形態と同一の機能部分には同一の符号を付して説明する。
【0022】
図5、図6は、この発明の紫外線照射装置に関する第2の実施形態について説明するための図5は斜視図、図6は図5の要部の側断面図である。
【0023】
この実施形態は、導波管16のランプハウス20側の鍔18bを無くし、導波管16の開放端とランプハウス20を溶接等の接合手段で一体的に結合したものである。この際、導波管16の開口部16bとランプハウス20の入力孔19を位置合わせした状態で接合するものとする。
【0024】
この実施形態は、上記した効果に加え、ランプハウス20と導波管16が予め溶接等の固着手段により、一体形成されていることから、組み立て作業の手間を軽減することができる。
【0025】
図7〜図9は、この発明の紫外線照射装置に関する第3の実施形態について説明するための、図7は概念について説明するための構成図、図8は一部が分解された状態の斜視図、図9は図8要部の側断面図である。
【0026】
この実施形態は、導波管16の上部に、マイクロ波のインピーダンス整合の調整を行うためのスタブ31を設けた構成部分が第1の実施形態と異なる。
【0027】
すなわち、スタブ31は、導電性の複数の調整軸31a〜31cを導波管16内に適宜出し入れすることにより、無電極ランプ27に適用したインピーダンス整合を行うことが可能となる。調整軸31a〜31cは、例えば調整軸31a〜31cの外周にネジ溝を形成し、導波管16の上面に開けた調整孔の内周にネジ山を形成し、調整軸31a〜31cを回すことで導波管16内外に出し入れ可能にすることができる。
【0028】
従って、無電極ランプ27の種類や形状の変更に基づき、調整軸31a〜31cを調整してマイクロ波のインピーダンスの不整合の調整を行うことにより、無電極ランプ27の種類や形状の変更に整合したマイクロ波の照射を実現できる。
【0029】
この実施形態では、導波管16の一部にインピーダンスの整合調整を行うための簡単な構成のスタブ31を形成するだけで、無電極ランプ18の種類や形状の変更に基づき調整することで、無電極ランプ18の種類や形状の変更に整合したマイクロ波の照射を実現できる。
【0030】
さらに、点灯装置11が収納された筐体14とランプハウス20とを別筐体でそれぞれ収納し、筐体14の側面とランプハウス20側面間を導波管16で電磁的、機械的に接続したことにより、それぞれの筐体を小さくすることが可能となる。また、導波管16の長さを変更することにより、ランプハウス20と点灯装置11との場所に制約を軽減することができる。
【0031】
マイクロ波のインピーダンス整合の調整を行うためのスタブ31は、導波管16の上面に調整軸31a〜31cを出し入れする程度の構成で実現できることから、インピーダンス整合手段のためのスペースも最小限に抑えられる。さらに、無電極ランプ27を交換した場合におけるインピーダンス整合の調整も、調整軸31a〜31cの操作により簡単に行うことができる。
【0032】
図10、図11は、この発明の紫外線照射装置に関する第4の実施形態について説明するための、図10は一部が分解された状態の斜視図、図11は図10の要部の側断面図である。
【0033】
この実施形態は、導波管16のランプハウス20側の鍔18bを無くし、導波管16の開放端とランプハウス20を溶接等の接合手段で一体的に結合したものである。この際、導波管16の開口部16bとランプハウス20の入力孔19を位置合わせした状態で接合するものとする。
【0034】
この実施形態は、ランプハウス20と導波管16が予め溶接等の固着手段により、一体形成されていることから、導波管16とランプハウス20との取付手段26の取り付けが不要となることから、組み立て作業の手間を軽減することができる。
【0035】
図12は、この発明の紫外線照射装置に関する第5の実施形態について説明するための一部が分解された状態の斜視図である。
【0036】
この実施形態は、図10に説明した実施形態の照射窓28を、導波管16の延長線上のマイクロ波入力孔19と対向位置のランプハウス20の側面に形成したものである。
【0037】
同様に、スタブ31を設けない図1〜図3の実施形態、図5、図6の実施形態でも照射窓28を導波管16の延長線上のマイクロ波入力孔19と対向位置のランプハウス20の側面に形成しても構わない。
【0038】
この実施形態では、無電極ランプ27を点灯させる点灯装置11が収納された筐体14とランプハウス20を別筐体とした効果に加え、無電極ランプ27から照射される紫外線の照射方向の多様性を図ることができる。
【0039】
図13は、この発明の紫外線照射装置に関する第6の実施形態について説明するための一部が分解された状態の斜視図である。
【0040】
この実施形態は、導波管16のマイクロ波出力用の開口部16bを下方に形成し、この開口部16bに、ランプハウス20の上面に形成したマイクロ波を入射させる入力孔19を合わせるように形成したものである。
【0041】
この場合も、無電極ランプ27を点灯させる点灯装置11が収納された筐体14とランプハウス20を別筐体とした効果に加え、スタブ31によるインピーダンスの整合を行う前に、ランプハウス20の取り付け位置を、導波管16の長手方向に沿って大まかなインピーダンス整合を行い、ついで測定器で値を観察しながらスタブ31の調整軸31a〜31cを調整して確実を整合を図ることにより、インピーダンス整合の作業性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の紫外線照射装置に関する第1の実施形態の概念について説明するための構成図。
【図2】この発明の紫外線照射装置に関する第1の実施形態について説明するための分解斜視図。
【図3】図2の要部の側断面図。
【図4】図1で用いる無電極ランプの一例について説明するための説明図
【図5】この発明の紫外線照射装置に関する第2の実施形態について説明するための一部が分解された状態の斜視図。
【図6】図5の要部の側断面図。
【図7】この発明の紫外線照射装置に関する第3の実施形態の概念について説明するための構成図。
【図8】この発明の紫外線照射装置に関する第3の実施形態について説明するための一部が分解された状態の斜視図。
【図9】図8の要部の側断面図。
【図10】この発明の紫外線照射装置に関する第4の実施形態について説明するための一部が分解された状態の斜視図。
【図11】図10の要部の側断面図。
【図12】この発明の紫外線照射装置に関する第5の実施形態について説明するための一部が分解された状態の斜視図。
【図13】この発明の紫外線照射装置に関する第6の実施形態について説明するための一部が分解された状態の斜視図。
【符号の説明】
【0043】
11 点灯装置
12 高圧電源
13 マグネトロン
14 筐体
15 アンテナ
16 導波管
16a,16b 開口部
17 出力孔
18a,18b 鍔
19 入力孔
20 ランプハウス
21,22,23,24 取付孔
25,26 取付手段
27 無電極ランプ
28 照射窓
29 スクリーン
30 マイクロ波空洞部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を発生させるマグネトロンおよび該マグネトロンを駆動させる高圧電源から構成する点灯装置が収納される筐体と、
放電媒体が封入されている無電極ランプを収納し、少なくとも一面から前記マイクロ波に基づき、前記無電極ランプから照射される紫外線が照射可能な構成としたランプハウスと、
前記筐体および前記ランプハウスを電磁的に結合させるとともに機械的に結合させ、前記マグネトロンで発生させたマイクロ波を前記無電極ランプに供給し、該無電極ランプを点灯させる導波管と、を具備したことを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記導波管には、前記点灯装置および前記ランプハウスとのインピーダンスの整合を図るインピーダンス整合手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記導波管は、前記筐体の側面と前記ランプハウスの側面との間に取り付け、前記筐体と前記ランプハウスを水平方向に結合させたことを特徴とする請求項1または2記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記導波管と前記ランプハウスは、一体的に接合したことを特徴とする請求項1〜3のいずれに記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記ランプハウスから照射される紫外線は、前記導波管を通過するマイクロ波の進行方向に照射するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記ランプハウスから照射される紫外線は、前記導波管を通過するマイクロ波の進行方向と直交する方向に照射するようにしたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
前記インピーダンス整合手段は、前記導波管に導電性の調整軸を出し入れすることによりマイクロ波のインピーダンス整合を行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−129441(P2010−129441A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304281(P2008−304281)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】