説明

紫外線照射装置

【課題】紫外線ランプが切れたときのリスクを低減でき、かつ紫外線照射性能を向上する。
【解決手段】円筒状の容器1と、前記容器1の軸に直交する方向に対象流体を流通させるべく前記容器1の筒壁に対向して設けられた前記対象流体の流入口6及び流出口7と、前記容器1内に容器軸に平行に、かつ前記容器軸を中心軸とする仮想円筒18の周方向に分散して配置された透明な複数のランプ保護管13と、前記各ランプ保護管13内に収容された紫外線ランプ14とを備え、前記対象流体に紫外線を照射する紫外線照射装置において、各ランプ保護管13には、それぞれ1本の紫外線ランプ14が収容され、仮想円筒18の周方向の隣り合う各ランプ保護管に収容される紫外線ランプ14は、流入口6と流出口7の中心を通り、かつ容器軸に直交する流路中心面19を基準として、保護管軸方向に互いに対称に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象流体に紫外線を照射して種々の処理を行う紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線照射装置は、紫外線ランプを収容した槽あるいは容器内に対象流体を流通させて紫外線を照射し、例えば上水、飲料、食品などの対象流体に含まれる菌などの微生物の死滅化あるいは不活化の処理を行うために用いられる。その他、紫外線照射装置は、下水などの対象流体の脱色、微生物の死滅化あるいは不活化、有機物などの化学物質の分解又は合成、あるいは、対象流体に含まれる物質の酸化促進、TOCの分解、半導体の洗浄水の製造に用いられる。
【0003】
例えば、微生物の不活化などに用いる紫外線ランプは、表1に示すように、低圧水銀ランプ又は中圧水銀ランプが用いられる。低圧水銀ランプは水銀封入圧が2Pa以下(通常は、0.2〜1.6Pa程度)であり、微生物の不活化に適している波長が253.7nmの紫外線の放射効率が高い。一方、中圧水銀ランプは水銀封入圧が4×10〜4×10Paであり、低圧水銀ランプよりも253.7nmの波長の放射効率は低い。しかし、中圧水銀ランプは大電力化(高出力化)できるから、253.7nmの波長成分の照射量を十分確保できるので、微生物の不活化に適用することが行われている(特許文献1又は非特許文献1)。また、低圧水銀ランプの場合は、外周面にフッ素樹脂被膜が施された石英ガラス管などの透明なランプ保護管内に収容して用いられるが、中圧水銀ランプはランプ表面温度が高いため、耐熱性が低いフッ素樹脂被膜を施さない。
【0004】
【表1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−50830号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】UV Disinfection Guidance Manual For the Final LT2ESWTR, US EPA,November 2006, P(2-17), Table2.1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来技術では、紫外線照射装置の照射性能を向上させる場合の問題点について配慮されていない。すなわち、紫外線照射装置の照射性能は、紫外線ランプを収容した槽あるいは容器内に形成される紫外線照射領域において、必要な紫外線の照射量を確保するとともに、紫外線照射の密度を高く、かつ均等化することにより向上する。
【0008】
紫外線照射領域における必要な紫外線照射量を確保するためには、低圧あるいは中圧に拘わらず、紫外線ランプの1本あたりの出力を大きくすること、及び紫外線ランプの本数を多くすることなどで対応することになる。しかし、紫外線ランプの1本あたりの出力を大きくするには、一般に有効な発光部の長さ(以下、発光長という。)を長くする必要があるが、製造上の制約から発光長を長くすることには限界がある。特に、対象流体を紫外線ランプ軸に直交させて流通する、いわゆる直交流型の紫外線照射装置の場合は、紫外線ランプ軸方向の対象流体の流路断面の縦又は横の幅に制約されて、紫外線ランプの発光長が制限されることがある。
【0009】
また、1本あたりの紫外線ランプの出力を大きくすると、紫外線ランプが切れた場合に装置全体の紫外線照射量の減少が大きくなるという問題がある。つまり、大出力の紫外線ランプを例えば6本設けた場合、1本の紫外線ランプが切れると全体の照射能力は、水の偏流のために切れたランプの場所によって違いが生じるが、概ね5/6(約83%)に低下する。このリスクを補償するとともに、紫外線ランプの経時劣化(例えば、約20%)を考慮して装置性能を保証するために、紫外線ランプを1本余分に設置して、調光器を設けて初期の紫外線照射量を低減して運用することが考えられるが、紫外線ランプの利用率が低下するという問題がある。
【0010】
一方、紫外線ランプ数を多くすると、ランプ配置及び付帯装置に問題が発生する。例えば、従来は、特許文献1に記載のように、複数の紫外線ランプは円筒状の容器と同軸の仮想円筒の周方向に等間隔で配置される。また、紫外線ランプのランプ保護管には、外表面の汚れを除去するワイパーを摺動させる洗浄機構が設けられる。したがって、ワイパーの摺動を妨げないように、紫外線ランプ相互間の間隔を空けなければならないため、仮想円筒上に配置可能な紫外線ランプの本数は、仮想円筒の径に応じて制約を受ける。そこで、紫外線ランプを複数の同心仮想円筒上に多重に配置することが考えられる。しかし、紫外線強度計を仮想円筒の中心軸に配置して、多重の仮想円筒上に配置された複数の紫外線ランプの照射量を計測する場合、紫外線強度計から見て陰になる紫外線ランプが生ずることがあり、照射量を精度よく計測できない場合がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線ランプが切れたときのリスクを低減でき、かつ紫外線照射性能を向上することができる紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、円筒状の容器と、前記容器の軸に直交する方向に対象流体を流通させるべく前記容器の筒壁に対向して設けられた前記対象流体の流入口及び流出口と、前記容器内に容器軸に平行に、かつ前記容器軸を中心軸とする仮想円筒の周方向に分散して配置された透明な複数のランプ保護管と、前記各ランプ保護管内に収容された紫外線ランプとを備え、前記対象流体に紫外線を照射する紫外線照射装置において、各ランプ保護管には、それぞれ1本の紫外線ランプが収容され、仮想円筒の周方向の隣り合う各ランプ保護管に収容される紫外線ランプは、流入口と流出口の中心を通り、かつ容器軸に直交する流路中心面を基準として、保護管軸方向に互いに対称に配置することを特徴とする。
【0013】
第1の態様は、比較的小型(例えば、流路断面の流路径が600mm以下)の紫外線照射装置の場合において、1本のランプ保護管に収容する紫外線ランプを複数本にしなくても、要求される照射量を満たすことができる場合に好適である。
【0014】
また、第1の態様によれば、紫外線ランプを流路断面の中心に対して保護管軸方向に互いに対称に配置したことから、対象流体の流れ方向における紫外線ランプの重なりを少なくして、紫外線ランプをランプ軸方向に広く分散できるから、対象流体が受ける紫外線の照射性能を上げることができる。なお、第1の態様において、ランプ保護管が偶数本のときは、円筒形の容器1の中心に対して点対称に配置することができるが、ランプ保護管が奇数本のときは点対称に配置することができない。しかし、周方向の任意位置を基準として、時計回り及び反時計回りに振り分けて、例えば等間隔に配置することが好ましい。特に、図2に示した「0°」位置に対して、「±90°」位置を基準に配置すると、紫外線の照射性能を大きく向上させることができる。つまり、対象流体の流れは図2の矢印3の方向に流れる乱流であり、周知のとおり、流路断面の中心が最も速く、流路の壁面に近づくほど遅くなっている。したがって、ランプ保護管が奇数本のときは、図2のランプ保護管の配置を「±90°」回転すると、図2の流路断面において上下の紫外線ランプの数が均等になり、紫外線照射効率を高めることができる。このことから、設計上必要な紫外線の照射強度が奇数本のランプ保護管で賄えるときは、1本増やして偶数本にする必要はなく、図2の「0°」位置に対して、「±90°」位置を基準に等間隔で振り分け配置することができる。
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明の第2の態様は、円筒状の容器と、前記容器の軸に直交する方向に対象流体を流通させるべく前記容器の筒壁に対向して設けられた前記対象流体の流入口及び流出口と、前記容器内に容器軸に平行に、かつ前記容器軸を中心軸とする仮想円筒の周方向に分散して配置された透明な複数のランプ保護管と、前記各ランプ保護管内に収容された紫外線ランプとを備え、前記対象流体に紫外線を照射する紫外線照射装置において、前記ランプ保護管は、1本の前記紫外線ランプが収容された第1のランプ保護管と、複数本の前記紫外線ランプが収容された第2のランプ保護管とを有し、前記第2のランプ保護管内の前記複数本の紫外線ランプは、保護管軸方向に位置をずらして収容されていることを特徴とする。
【0016】
すなわち、第2の態様は、紫外線照射装置の紫外線の総出力が同じ場合、1本のランプ保護管内に発光長の短い紫外線ランプを複数本収容して、紫外線ランプの本数を多くすることを1つの特徴とする。これにより、紫外線ランプが切れたときのリスクを低減することができる。
【0017】
一方、対象流体の流路を円筒状の管路で形成し、紫外線ランプのランプ軸に直交流で対象流体を流通する場合、仮想円筒上に配置された複数の紫外線ランプから紫外線の照射を受けることになる。ところが、円形の流路断面に比して紫外線ランプの発光長が短いと、発光長から外れた流路断面を流通する対象流体に照射される紫外線量が少なくなる。その結果、発光長が短い紫外線ランプの本数を多くして、装置全体の紫外線照射量が要求を満たすようにしても、紫外線照射性能が低下してしまうことが考えられる。
【0018】
そこで、本発明では、複数本の紫外線ランプが収容される第2のランプ保護管を設け、第2のランプ保護管内の紫外線ランプを保護管軸方向に位置をずらして収容することを他の特徴とする。その結果、第2のランプ保護管が配設された円形の流路断面の部分では、紫外線ランプの発光長から外れる流路断面を低減できるから、全体としての紫外線の照射性能を向上させることができる。
【0019】
また、第2の態様において、前記第1と第2のランプ保護管内に収容された1本又は複数本の前記紫外線ランプは、前記流入口と前記流出口の中心を通り、かつ前記容器軸に直交する流路中心面を基準として保護管軸方向に対称に配置することが好ましい。これによれば、第2のランプ保護管内に2本又は3本などの適宜数の紫外線ランプを収容することにより、大口径の対象流体管路に用いる紫外線照射装置の場合でも、容器内に形成される紫外線照射領域における紫外線の照射密度が均等化させることができ、照射性能を向上することができる。
【0020】
さらに、上記の課題を解決する本発明の第3の態様は、第2の態様に代えて、第1と第2の保護管の区分けをなくし、各ランプ保護管には、複数本の紫外線ランプが保護管軸方向に位置をずらして収容されていることを特徴とする。この場合も、各ランプ保護管内に収容された複数本の紫外線ランプは、流入口と流出口の中心を通り、かつ容器軸に直交する流路中心面を基準として保護管軸方向に対称に分散して収容することが好ましい。すなわち、ランプ保護管内に2本又は3本などの適宜数の紫外線ランプを収容することにより、さらに大口径の対象流体管路に用いる紫外線照射装置の場合でも、容器内に形成される紫外線照射領域における紫外線の照射密度が均等化させることができ、照射性能を向上することができる。
【0021】
本発明の第1〜第3の態様において、紫外線ランプには、低圧水銀ランプを用いて構成することができる。しかし、出力が大きい中圧水銀ランプ(例えば、電気入力120W/cm、発光長25cm)を用いて構成することにより、一層、優れた効果を奏することができる。また、紫外線ランプは、全て同一の公称出力を有するものを用いることができる。しかし、これに限らず、紫外線照射領域における照射性能を考慮して、適宜、公称出力が異なる紫外線ランプを組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、紫外線ランプが切れたときのリスクを低減でき、かつ紫外線照射性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1の紫外線照射装置を模式的に示した正面断面図である。
【図2】図1の実施形態の線II−IIから見た断面図である。
【図3】本発明の実施形態2の紫外線照射装置の紫外線ランプの配置を模式的に示した図であり、(a)は図1と同様に対象流体の流入方向から見た正面図、(b)は断面図である。
【図4】本発明の実施形態3の紫外線照射装置の紫外線ランプの配置を模式的に示した図であり、(a)は図1と同様に対象流体の流入方向から見た正面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の紫外線照射装置を実施形態に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1、図2を参照して、本発明の第1の態様に係る実施形態1の構成を説明する。本実施形態の紫外線照射装置は、紫外線ランプ14が収容される円筒状の容器1と、容器1の管体10に対象流体の管路2を互いの軸を直交させて連結して形成されている。管路2には容器1を挟んでフランジ4,5を備えた対象流体の流入口6及び流出口7が設けられている。フランジ4,5には、対象流体を容器1に流入あるいは容器1から排出する図示していない外部管路が連結されるようになっている。これにより、図2に示す矢印3のように、対象流体が容器1の軸に直交する方向に流通されるようになっている。
【0025】
容器1内には、容器軸に平行に延在させて配置された透明な複数のランプ保護管13が収容され、各ランプ保護管13内にはそれぞれ紫外線ランプ14が挿入されている。ランプ保護管13の両端は、容器1の管体10の両端近傍に設けられた一対の円板状のエンドプレート11に形成された貫通孔15に挿入して支持されている。また、容器1の図において左右の両端のフランジ12には、図示していないカバープレートが装着されるようになっている。カバープレートには、各ランプ保護管13を挿入可能な貫通孔が形成され、貫通孔に挿入された各ランプ保護管13はグランドパッキンなどのシール機構によって水密にシールされるようになっている。また、各紫外線ランプ14は、両端に形成された口金部16に装着された例えばセラミック製の鍔17を介してランプ保護管13の内面に支持されている。
【0026】
また、各紫外線ランプ14には、図示していない耐熱性のPTFE被膜ケーブルを介して、ランプ保護管13の端部又は外部に設けられた安定器及び調光器から電気入力が供給されるようになっている。本実施形態の紫外線ランプ14は、両端の口金部16に電気入力を供給する例を示したが、本発明は、これに限らず、紫外線ランプ14の片側から電気入力を供給する形式の紫外線ランプにも適用できる。
【0027】
本実施形態では、容器軸に平行に延在させて複数(n=9本)のランプ保護管13が配置されている。複数のランプ保護管13は、図2に示すように、容器軸を軸心とする仮想円筒18の周方向に沿って等間隔に配置されている。各ランプ保護管13には、同一の公称出力(例えば、電気入力120W/cm、発光長25cmの中圧水銀ランプ)を有する紫外線ランプ14が、1本ずつ収容されている。
【0028】
本実施形態では、複数の紫外線ランプ14をA群(14(A))とB群(14(B))とに分け、周方向の任意位置(例えば、図2の「0°」位置)を基準として、時計回り及び反時計回りに交互に、容器軸方向に紫外線ランプ14の発光長の中心位置をA位置とB位置に振り分けて配置している。ここで、説明のため、9本の紫外線ランプ14に、図2に示すように、基準位置(0°)から時計回りに、紫外線ランプ14‐1、14‐2、14‐3、・・・、14‐9の識別符号を付して示す。本実施形態では、紫外線ランプ14‐1、14‐3、14‐5、14‐6、14‐8がA位置の紫外線ランプ14(A)に分けられ、紫外線ランプ14‐2、14‐4、14‐7、14‐9がB位置の紫外線ランプ14(B)に振り分けられている。
【0029】
紫外線ランプ14(A)と14(B)は、図1に示すように、流入口6と流出口7の中心を通り、かつランプ軸(容器軸)に直交する面(以下、基準面という。)19に対して、発光長の中心を対称にずらして配置されている。なお、図1では、図2に示す仮想円筒18の流入口6側に配置された紫外線ランプ14‐1、14‐6、14‐7、14‐8、14‐9のみが図に表れているが、流出口7側に配置された紫外線ランプ14‐2、14‐3、14‐4、14‐5は図に表れていない。また、図からわかるように、紫外線ランプ14‐1〜9は、仮想円筒18の周方向に沿って、ランプ軸方向に位置をずらしてジグザグに配置されている。なお、紫外線ランプ14の発光長は、紫外線を放射する有効長であり、発光長の中心は、通常は紫外線ランプ14の中心と看做すことができる。
【0030】
このように構成される本実施形態1の紫外線照射装置の動作について説明する。対象流体は、図2に示す流入口6から矢印3の方向から容器1内に流入され、複数本のランプ保護管13が並べられた紫外線照射領域を流通して、流出口7から排出される。対象流体は、紫外線照射領域を流通する際に、ランプ保護管13内に収容された紫外線ランプ14から放射される紫外線の照射を受けて処理される。例えば、対象流体が上水、飲料、食品などの場合は、それらの流体中に含まれる菌などの微生物が死滅化あるいは不活化される。また、対象流体が、下水などの排水の場合は、流体の脱色、微生物の死滅化あるいは不活化、有機物などの化学物質の分解又は合成、あるいは、対象流体に含まれる物質の酸化促進、TOCの分解処理を行う。さらに、純水などを流通させて半導体の洗浄水を製造することができる。
【0031】
本実施形態によれば、流入口6と流出口7の中心を通り、かつランプ軸(容器軸)に直交する基準面19に対して、紫外線ランプ14の発光長の中心を、保護管軸方向に互いに対称に配置したことから、対象流体の流れ方向における紫外線ランプの重なりを少なくすることができる。そして、紫外線ランプ14をランプ軸方向に広く分散できるから、紫外線照射領域を流通する対象流体が受ける紫外線の密度を均等化して、照射性能を上げることができる。
【0032】
また、本実施形態の図示例では、紫外線出力の総量の要求値を満たすように、同一の公称出力(電気入力120W/cm、発光長25cm)の中圧水銀ランプを9本用いた例を示したが、本発明はこれに限られるものではない。紫外線出力の総量の要求値に合わせ、紫外線照射領域における照射性能を考慮して、適宜、公称出力が異なる紫外線ランプを適宜組み合わせて構成することができる。また、複数の紫外線ランプ14を仮想円筒18上に等間隔で配置する例を示したが、本発明はこれに限らず、紫外線照射領域を流通する対象流体が受ける紫外線の照射密度を均等化することを満たすために、仮想円筒18上に不等間隔で配置することを妨げるものではない。
【0033】
なお、本実施形態において、ランプ保護管13が偶数本のときは、円筒形の容器1の中心に対して点対称に配置することができるが、ランプ保護管13が奇数本のときは点対称に配置することができない。しかし、周方向の任意位置を基準として、時計回り及び反時計回りに振り分けて、例えば等間隔に配置することが好ましい。特に、図2に示した「0°」位置に対して、「±90°」位置を基準に配置すると、紫外線の照射性能を大きく向上させることができる。つまり、対象流体の流れは図2の矢印3の方向に流れる乱流であり、周知のとおり、流路断面の中心が最も速く、流路の壁面に近づくほど遅くなっている。したがって、ランプ保護管13が奇数本のときは、図2のランプ保護管13の配置を「±90°」回転すると、図2の流路断面において上下の紫外線ランプ14の数が均等になり、紫外線照射効率を高めることができる。このことから、設計上必要な紫外線の照射強度が奇数本のランプ保護管で賄えるときは、1本増やして偶数本にする必要はなく、図2の「0°」位置に対して、「±90°」位置を基準に等間隔で振り分け配置することができる。
【0034】
なお、本実施形態では記載していないが、ランプ保護管13に付着する汚れを掻き落とす洗浄装置を設ける場合がある。洗浄装置は、各ランプ保護管13にリング状のワイパーを摺動可能に設け、それらのワイパーを放射状の支持部材で保持するとともに、放射状の支持部材をランプ保護管13の軸方向に移動させて、汚れを掻き落とすようになっている。この場合、仮想円筒18の軸周りのワイパー及び支持部材の荷重が、重力方向に対して不均等になると洗浄装置の動作が不安定になることがある。そのときは、本実施例のように、図2の「0°」位置を基準に等間隔で振り分け配置することにより、洗浄装置の動作が安定するので好ましい。また、例えば、紫外線ランプの本数が3本のときは、洗浄装置を犠牲にしても「±90°」位置を基準に等間隔で振り分け配置することにより、紫外線照射効率を高めることができる。洗浄装置の動作の安定性は、紫外線ランプの本数が少ないので、支持部材などを補強することが対応できる。
【0035】
特に、本実施形態の紫外線ランプの配置は、比較的小型(例えば、対象流体の管路2の管径が600mm以下)の紫外線照射装置の場合に適する。つまり、1本のランプ保護管13に収容する紫外線ランプ14を複数本にしなくても、要求される照射量を満たすことができる小型の紫外線照射装置の場合に好適である。
【0036】
さらに、本実施形態では、紫外線ランプ14を出力が大きい中圧水銀ランプを用いて構成することにより、優れた効果を奏することができるが、本発明は、これに限らず低圧水銀ランプを用いて構成することができる。また、中圧水銀ランプには、入力電力80〜200W、発光長15〜50cmの範囲のものを適用することが好ましい。
【0037】
(実施形態2)
図3に、本発明の第2の態様に係る紫外線照射装置の実施形態2の紫外線ランプ配置構成を示す。本実施形態2が実施形態1と異なる点は、ランプ保護管と紫外線ランプの配置構成にあり、その他の構成は実施形態1と同一であるから記載を適宜省略して示している。同図(a)は、本実施形態の紫外線ランプ配置構成を、対象流体の管路2の流入口6側から見た図であり、同図(b)は実施形態1の図2と同様にランプ軸に直交する断面図である。本実施形態の紫外線ランプ配置構成は、対象流体の管路2の管径が実施形態1よりも大きい(例えば600〜1000mm)、比較的中型の紫外線照射装置に適する例である。
【0038】
図3に示すように、本実施形態の複数(図示例では、6本)のランプ保護管13は、1本の紫外線ランプ14が収容された第1のランプ保護管13I(図示例では、2本)と、複数本(図示例は、2本)の紫外線ランプ14が収容された第2のランプ保護管13II(図示例では、4本)が備えられている。第1のランプ保護管13I内の紫外線ランプ14は、紫外線ランプ14の軸方向中心、つまり発光長の中心を実施形態1で説明した基準面19に位置させて対称に配置している。第2のランプ保護管13II内の複数本(図示例は、2本)の紫外線ランプ14a,14bは、同様に基準面19に対して対称にずらして配置されている。
【0039】
このように、本実施形態によれば、第2のランプ保護管13Iに収容する複数本(図示例は、2本)の紫外線ランプ14a,bを基準面19に対して、保護管軸方向に互いに対称に配置したことから、管路2の紫外線照射領域に流れる対象流体に対する紫外線照射量を均等化できる。また、流路断面における紫外線ランプ14a,bをランプ軸方向に広く分散できるから照射密度を向上でき、管路2に流れる対象流体が受ける紫外線の照射性能を高めることができる。
【0040】
本実施形態では、第2のランプ保護管13IIに収容される複数本の紫外線ランプ14a,bを基準面19に対して対称にずらして配置したが、本発明はこれに限られるものではない。要は、第2のランプ保護管13IIに収容する複数本の紫外線ランプ14a,bを保護管軸方向(ランプ軸方向)に分散して配置すればよい。例えば、図3(b)の流れ方向の前後に重なって配置される複数本のランプ保護管13IIに収容される紫外線ランプ14a,bは、互いに保護管軸方向の発光長の重なりを少なくするように、保護管軸方向に位置をずらして収容することが好ましい。
【0041】
また、本実施形態では、ランプ保護管13の本数が6本の例を示したが、本発明はこれに限らず、本数を増やすことにより、あるいは1本の保護管に収容する紫外線ランプ4の本数を減らすことにより、装置の全体の紫外線照射量を増減調整することができ、設計の自由度を向上することができる。例えば、1本の保護管に収容する紫外線ランプ4の本数を実施形態1のように適宜減らすことにより、装置の全体の紫外線照射量を満たし、かつ、紫外線の照射密度を適宜調整することができる。さらに、ランプ保護管13の本数を増やす一方で、1本の保護管に収容する紫外線ランプ4の本数を適宜減らすことができる。
【0042】
(実施形態3)
図4に、本発明の第3の態様に係る紫外線照射装置の実施形態3の紫外線ランプ配置構成を示す。本実施形態3が実施形態1,2と異なる点は、ランプ保護管と紫外線ランプの配置構成にあり、その他の構成は実施形態1,2と同一であるから記載を適宜省略して示している。同図(a)は、本実施形態の紫外線ランプ配置構成を、対象流体の管路2の流入口6側から見た図であり、同図(b)は実施形態1の図2と同様にランプ軸に直交する断面図である。本実施形態の紫外線ランプ配置構成は、対象流体の管路2の管径が実施形態1,2よりも大きい(例えば1000mm以上)の比較的大型の紫外線照射装置に適する。
【0043】
図4に示すように、本実施形態の複数(図示例では、8本)のランプ保護管13は、複数本(図示例では、2本)の紫外線ランプ14が収容された第1のランプ保護管13I(図示例では、2本)と、複数本(図示例は、3本)の紫外線ランプ14が収容された第2のランプ保護管13II(図示例では、6本)が備えられている。第1のランプ保護管13I内の紫外線ランプ14は、紫外線ランプ14の発光長の中心を実施形態1で説明した基準面19に対して対称に配置されている。第2のランプ保護管13II内の複数本(図示例は、3本)の紫外線ランプ14a,14b,14cは、同様に基準面19に対して対称にずらして配置されている。
【0044】
このように、本実施形態によれば、第2のランプ保護管13Iに収容する複数本(図示例は、3本)の紫外線ランプ14a,b,cを基準面19に対して、保護管軸方向に互いに対称に配置したことから、対象流体の管路2に流れる対象流体に対する紫外線照射量を均等化できる。また、流路断面における紫外線ランプ14a,b,cをランプ軸方向に広く分散できるから照射密度を向上でき、管路2に流れる対象流体が受ける紫外線の照射性能を上げることができる。
【0045】
本実施形態では、第2のランプ保護管13IIに収容される複数本の紫外線ランプ14a,b,cを基準面19に対して対称にずらして配置したが、本発明はこれに限られるものではない。要は、第2のランプ保護管13IIに収容する複数本の紫外線ランプ14a,b,cを保護管軸方向(ランプ軸方向)に分散して配置すればよい。例えば、図4(b)の流れ方向の前後に重なって配置される複数本のランプ保護管13IIに収容される紫外線ランプ14a,b,cは、互いに保護管軸方向の発光長の重なりを少なくするように、保護管軸方向に位置をずらして収容することが好ましい。
【0046】
なお、実施形態1〜3において、紫外線照射装置の容器1の軸を横向きに配置し、これに対して対象流体の管路2を横向きに配置する例を示したが、本発明はこれに限らず、いずれか一方を縦向きに配置してもよい。
【0047】
また、実施形態1〜3の紫外線照射装置において、図示を省略したが、各紫外線ランプ14の個々の紫外線強度又は全体の紫外線強度を測定する紫外線強度計を必要に応じて設けることができる。また、ランプ保護管13の外表面に付着する汚れを除去するための洗浄装置を必要に応じて設けることができる。
【0048】
さらに、各紫外線ランプ14は、通常、両端にフィラメントを備えて形成され、それらのフィラメントに電気を供給するケーブルが、紫外線ランプ14の両端から引き出された電極端子に接続される。しかし、両端のフィラメントに接続される電極端子を紫外線ランプ14の片側から引き出した形式のものを用いてもよい。後者の形式の紫外線ランプ14は、1本のランプ保護管13に2本の紫外線ランプ14を収容する場合、紫外線ランプ14に電力を供給するケーブルが高温の紫外線ランプ14に接触することがないので好ましい。なお、1本のランプ保護管13に3本以上の紫外線ランプ14を収容する場合は、ケーブルが高温の紫外線ランプ14に接触することがあるので、耐熱性が高いガラス繊維被覆ケーブルや金属被覆ケーブルを用いればよい。
【符号の説明】
【0049】
1 容器
2 管路
6 流入口
7 流出口
10 管体
11 エンドプレート
13 ランプ保護管
14 紫外線ランプ
15 貫通孔
16 口金部
17 鍔
18 仮想円筒
19 基準面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の容器と、前記容器の軸に直交する方向に対象流体を流通させるべく前記容器の筒壁に対向して設けられた前記対象流体の流入口及び流出口と、前記容器内に容器軸に平行に、かつ前記容器軸を中心軸とする仮想円筒の周方向に分散して配置された透明な複数のランプ保護管と、前記各ランプ保護管内に収容された紫外線ランプとを備え、前記対象流体に紫外線を照射する紫外線照射装置において、
前記各ランプ保護管には、それぞれ1本の前記紫外線ランプが収容され、
前記仮想円筒の周方向の隣り合う前記各ランプ保護管に収容される前記紫外線ランプは、前記流入口と前記流出口の中心を通り、かつ前記容器軸に直交する流路中心面を基準として保護管軸方向に、互いに対称に配置されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
円筒状の容器と、前記容器の軸に直交する方向に対象流体を流通させるべく前記容器の筒壁に対向して設けられた前記対象流体の流入口及び流出口と、前記容器内に容器軸に平行に、かつ前記容器軸を中心軸とする仮想円筒の周方向に分散して配置された透明な複数のランプ保護管と、前記各ランプ保護管内に収容された紫外線ランプとを備え、前記対象流体に紫外線を照射する紫外線照射装置において、
前記ランプ保護管は、1本の前記紫外線ランプが収容された第1のランプ保護管と、複数本の前記紫外線ランプが収容された第2のランプ保護管とを有し、
前記第2のランプ保護管内の前記複数本の紫外線ランプは、保護管軸方向に位置をずらして収容されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項3】
前記第1と第2のランプ保護管内に収容された1本又は複数本の前記紫外線ランプは、前記流入口と前記流出口の中心を通り、かつ前記容器軸に直交する流路中心面を基準として保護管軸方向に対称に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
円筒状の容器と、前記容器の軸に直交する方向に対象流体を流通させるべく前記容器の筒壁に対向して設けられた前記対象流体の流入口及び流出口と、前記容器内に容器軸に平行に、かつ前記容器軸を中心軸とする仮想円筒の周方向に分散して配置された透明な複数のランプ保護管と、前記各ランプ保護管内に収容された紫外線ランプとを備え、前記対象流体に紫外線を照射する紫外線照射装置において、
前記各ランプ保護管には、複数本の前記紫外線ランプが保護管軸方向に位置をずらして収容されていることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項5】
前記各ランプ保護管には、複数本の前記紫外線ランプが、前記流入口と前記流出口の中心を通り、かつ前記容器軸に直交する流路中心面を基準として保護管軸方向に対称に分散して収容されていることを特徴とする請求項4に記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記各紫外線ランプは、全て同一の公称出力であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−91030(P2013−91030A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234556(P2011−234556)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(591023985)千代田工販株式会社 (15)
【Fターム(参考)】