説明

紫外線遮蔽性板状複合微粒子、及びその製造方法

【構成】一次粒子がその形状を保持したまま凝集してなる母粒子と、該母粒子内に分散・固定化された子粒子よりなる複合微粒子であって、該子粒子が該母粒子を構成する粒子よりも小さなバンドギャップエネルギーを有しかつ紫外線吸収能を有するものであり、母粒子を構成する粒子がフッ素化合物又はフッ素化合物と金属酸化物の混合物であることを特徴とする、可視光線域における透明性を有する紫外線遮蔽性板状複合微粒子、及びその製造方法。
【効果】本発明の板状複合微粒子は、紫外線遮蔽能を有する超微粒子を複合微粒子化することにより、可視光線域においては高透明性で、かつ紫外線域においては高遮蔽性である超微粒子の光学的性質を、ハンドリングの容易な微粒子サイズにて安定して発現するという特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は可視光線域での高透明性、かつ紫外線域での高遮蔽性を有する板状複合微粒子、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】地球上に届く太陽光(赤外線、可視光線、紫外線)のうち、5〜6%が紫外線である。紫外線は波長が短く、従ってエネルギーの高い電磁波であり、多くの物質に対して分解性をもち、広く生体に障害を及ぼすことが知られている。従って、紫外線遮蔽剤は、例えば化粧品中に配合して皮膚を紫外線による炎症や皮膚癌から守ったり、塗料に混ぜて顔料が紫外線で分解して退色するのを防いだりする用途等に用いられている。このとき可視光線域での透明性を高めることによって、化粧品の場合では白浮きになるのを防ぎ、また塗料の場合では顔料による色彩を損なうことを防ぐことができるため、可視光線域での透明性を維持しつつ、紫外線防御を行うことが望ましい。
【0003】有機化合物を有効成分として用いる紫外線遮蔽剤は、組成物の紫外線に対する特性吸収によりその透過を防ぐものであり、例えば置換されたN,N’−ビス−芳香族ホルムアミジン類から成る紫外線吸収性組成物(特公昭61−09993号公報)等がある。しかしながら、有機系の紫外線遮蔽剤は、紫外光を吸収すると同時にその作用を受けて分解するという難点があり、このため経時的に遮蔽能が減衰する欠点をもつ。また化粧品への応用においては、人体への影響の点から配合できる種類、配合量にも規制があり、規制内で高い機能を発現させることが困難である。
【0004】一方、無機化合物を用いる紫外線遮蔽剤は、無機微粒子を組成物として配合し、組成物の紫外線に対する吸収能及び散乱能によってその透過を防ぐものである。このような無機系の紫外線遮蔽剤は、組成物が経時的に劣化していくことがなく、また人体への影響が少ないという点で有機系遮蔽剤よりも優れている。しかし、有機系の紫外線遮蔽剤に対して、無機系は粒子形態であるので、従来から無機系は可視光域での高透明性を維持しつつ、紫外線防御を行うのは困難とされてきた。
【0005】可視光線域(光波長400〜800nm)での高透明性を維持しながら紫外線域での遮蔽能を有効に発現させるためには、組成物を超微粒子化して高分散状態にし、紫外線散乱能を高める必要がある。しかし、超微粒子を用いる場合にはその凝集性に起因する超微粒子の分散安定性が問題となる。分散性を高めるために超微粒子表面を他の物質で被覆して改質する方法もあり、例えば疎水性化した酸化チタン粉末を油性化粧料基剤に配合した皮膚化粧料(特公昭59−15885号公報)等があるが、表面の被覆層の性質に応じて分散させる溶媒を選ぶ必要があり、また表面改質を行っても超微粒子という形態は変わらないので凝集力を低下させるのにも限界がある。
【0006】そこで、無機超微粒子が凝集して紫外線散乱能を失わないように、他の比較的大きな担体としての粒子と複合化する例があり、例えば微粒金属化合物を分散含有してなる薄片状物質(特開昭63−126818号公報)等があるが、紫外線遮蔽能及び可視光における透明能、両方の性能を向上させるための微粒子の具体的構成については全く開示されていない。
【0007】また、特開平1−143821号公報にはSiO2 等の金属酸化物の板状粒子中にTiO2 等の微粒子粉末を均一に分散した複合化粉末について、特開平6−116119号公報には、チタニアを5〜80重量%、シリカを20〜95重量%それぞれ含有し、チタニアとシリカの含有量合計は少なくとも80重量%であるチタニア−シリカ系ガラスからなるフレーク状ガラスを配合した紫外線吸収効果の高い化粧料について開示されている。しかし、これらの公報で記載されている紫外線吸収材では、表皮および真皮上層の比較的浅いところまでしか透過せず、サンバーンや皮膚ガンの原因とされる紫外線B(光波長280〜320nm)については、フレーク状粒子内のチタニアによる吸収効果があると考えられるが、真皮下層の皮膚深部まで到達してサンターンや真皮内繊維変性の原因とされる紫外線A(光波長320〜400nm)のうち、特に可視光に近い光波長350〜400nmの吸収効果は全くない。すなわち、これらの公報で記載されている紫外線吸収剤は、チタニアによる主に紫外線Bの吸収効果を発現し、アナターゼ型では光波長300nm程度、またルチル型では光波長320nm程度の紫外線吸収効果を発現することに限定される。
【0008】地表に届く紫外線のうち紫外線Aは、エネルギー割合では紫外線Bの約15倍程度もあり、従って、紫外線のエネルギー割合を考えた場合、紫外線Bよりも、あるいは紫外線Bのみならず、紫外線Aを遮蔽することが重要である。しかも、可視光線域における高透明性を維持しつつ、紫外線B及びAを遮蔽することが大きな課題となっている。特に、紫外線Aを遮蔽する際、可視光に近い光波長350〜400nmの紫外線を遮蔽することが重要である。また、可視光線域における透明性を向上させる為には、紫外線吸収剤とそのまわりの分散媒とで屈折率の差を小さくすることが重要であるが、特開平1−143821号公報及び特開平6−116119号公報記載のチタニアを含有した複合粉末では、その複合粉末の屈折率はそれらの構成物の組成割合でおおよそ決まるので、ある屈折率値を有する分散媒にその複合粉末の屈折率を合わせるのに自ずと限界が生じ、複合粉末の屈折率を分散媒の屈折率に合うように制御することが大きな課題となっていた。以上の解決すべき課題について、有効な解決手段が求められていた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の紫外線遮蔽剤における課題を解決するものであり、可視光の高透明性を有し、かつ紫外線の高遮蔽性を有する板状複合微粒子、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、無機系紫外線遮蔽剤の性能を高く発現させるために、紫外線B及び/又はAの遮蔽能を有する微粒子(子粒子)と子粒子を分散含有させる母体としての微粒子凝集体(母粒子)を複合化し、前者による紫外線散乱及び吸収能と後者による子粒子の高分散性とを合わせ持つような板状複合微粒子を考案した。そして、両者のバンドギャップエネルギーに着目し、その大小関係に基づいて組み合わせを決定することで、超微粒子の効果を最大限に発揮させることができることを見い出した。
【0011】更に、本発明者らは複合微粒子の屈折率制御において、母粒子を構成する粒子として金属酸化物や屈折率の低いフッ素化合物を用い、子粒子と母粒子の組成制御を行うことで、複合微粒子の屈折率を媒質の屈折率と等しくなるように制御した。その結果、複合微粒子と媒質との界面での光の散乱が抑制されて複合微粒子の表面粗さにかかわらず、複合微粒子の内部に光が良く侵入し、可視光線域での透明性が飛躍的に向上すると同時に、内部に分散させた超微粒子の機能が効果的に発現して高い紫外線遮蔽性を発現させることができることを見い出した。また低屈折率の物質を0.3μm以下の微粒子の形態で用いた場合、複合微粒子内で微粒子単位のドメインを形成しても可視光線の散乱が起きずに、粒子全体として屈折率を下げることが可能であることを見い出した。
【0012】さらに、複合微粒子の構成要素となる母粒子原料と子粒子原料との混合物、即ち一次粒子の平均粒子径が0.001〜0.3μmの母粒子を構成する粒子を含有するゾル及び/又はそのような粒子を熱分解により生成させ得る溶液からなるフッ素化合物を少なくとも含有する母粒子原料と、平均粒子径が0.001〜0.1μmの子粒子を含有するゾル、子粒子粉末、及びそのような子粒子を熱分解により生成させ得る溶液からなる群より選ばれる一種又は二種以上からなる子粒子原料との混合物を含有する混合液を液膜化した後、乾燥及び/又は焼成させて、又は乾燥後に熱分解及び/又は焼成させて固体膜を得、その後この固体膜を粉砕することにより、内部で子粒子が均一に分散・固定化した、高い可視光透明性及び紫外線遮蔽性を有する板状複合微粒子を連続生成することができることを見い出した。
【0013】即ち、本発明の要旨は、(1) 一次粒子の平均粒子径が0.001〜0.3μmである粒子がその形状を保持したまま凝集してなる母粒子と、該母粒子内に分散・固定化された平均粒子径が0.001〜0.1μmの子粒子よりなる複合微粒子であって、該子粒子が該母粒子を構成する粒子よりも小さなバンドギャップエネルギーを有しかつ紫外線吸収能を有するものであり、母粒子を構成する粒子がフッ素化合物又はフッ素化合物と金属酸化物の混合物であることを特徴とする、可視光線域における透明性を有する紫外線遮蔽性板状複合微粒子、(2) 金属酸化物がSiO2 及び/又はAl2 3 から選択される前記(1)記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子、(3) フッ素化合物がMgF2 及び/又はポリテトラフルオロエチレンである前記(1)又は(2)記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子、(4) 母粒子を構成する粒子が、常温で固体のフッ素化合物、金属酸化物、又は該金属酸化物と該フッ素化合物の混合物に、さらにパーフルオロポリエーテルを加えたものである、前記(1)〜(3)いずれか記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子、(5) 子粒子がTiO2 、ZnO、CeO2 、BaTiO3 、CaTiO3 、SrTiO3 及びSiCよりなる群から選択される1種以上である、前記(1)〜(4)いずれか記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子、(6) 板状複合微粒子の屈折率と実質的に同程度(ただし、±0.1以内の屈折率の差は同程度とみなす)の屈折率を有する媒質中に懸濁し、光路長1mmの光学セルを用いて紫外可視分光光度計により光透過率を測定したとき、波長800nmにおいて透過率90%以上、波長400nmにおいて透過率40%以上で、かつ波長350nm、320nm、及び300nmの少なくともいずれかにおいて透過率5%以下である前記(1)〜(5)いずれか記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子、並びに(7) 以下の工程よりなる、可視光線域における透明性を有する紫外線遮蔽性板状複合微粒子の製造方法、(a)一次粒子の平均粒子径が0.001〜0.3μmの母粒子を構成する粒子を含有するゾル及び/又はそのような粒子を熱分解により生成させ得る溶液からなるフッ素化合物を少なくとも含有する母粒子原料と、平均粒子径が0.001〜0.1μmの子粒子を含有するゾル、子粒子粉末、及びそのような子粒子を熱分解により生成させ得る溶液からなる群より選ばれる一種又は二種以上からなる子粒子原料との混合物を含有する混合液を調製する工程、(b)該混合液を平均液膜厚が0.1〜1000μmの範囲に液膜化する工程、(c)得られる液膜を100〜1500℃雰囲気中にて乾燥及び/又は焼成させて、又は該雰囲気温度にて乾燥後、熱分解及び/又は焼成させて固体膜を得る工程、(d)該固体膜を粉砕し、板状微粒子化する工程、に関する。以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】紫外線に対して高い遮蔽能をもつ粒子径の比較的小さい微粒子は、凝集しやすい性質があるので、媒質中に分散させてその機能をうまく発現させることが難しい。そこでこのような微粒子を比較的大きな粒子と複合化すること、すなわち担体としての母粒子中に子粒子として固定化することにより、その分散状態が維持でき、紫外線遮蔽能を保持することができる。また一般に高い表面活性をもつ小さい微粒子を母粒子中に内包することで、複合化した微粒子を媒質中に懸濁した時に表面活性の悪い影響が媒質に及ぶことを抑制することができる。本明細書において、複合微粒子の母粒子とは子粒子を分散含有してなる母体をいい、母粒子はそれを構成する粒子がその形状を保持したまま凝集した凝集体として形成される。子粒子とは母粒子以外の紫外線遮蔽能を有する粒子をいう。また、「板状」とは、特にその大きさ、アスペクト比は限定されないが、偏平状、フレーク状等と同様の形状をいう。
【0015】以下に、本発明の板状複合微粒子の好適な態様について、粒子のバンドギャップエネルギー、複合微粒子の屈折率、粒子の粒界の点から詳細に説明する。
【0016】(1)粒子のバンドギャップエネルギー本発明の板状複合微粒子において、子粒子として用いられる微粒子は紫外線域における遮蔽性を有することが必要で、これは紫外線吸収性及び紫外線散乱性に分けられる。紫外線吸収性は、無機化合物に関しては主に半導体化合物の励起子吸収によるもので、バンドギャップエネルギーが3.0〜4.0eVの化合物が有効にその性質を示す。紫外線散乱性は、Mie散乱によって強く現れ、これは高屈折率物質の場合、粒子径が紫外線の波長の約1/2すなわち0.2μm以下で顕著となる。
【0017】一般に、半導性を有するセラミックスは、価電子帯と伝導帯が連続でないため、両準位間のエネルギー差であるバンドギャップエネルギー以上のエネルギーに相当する波長の光を吸収することが知られている。例えばZnOはバンドギャップエネルギーが3.2eVであり、390nm以下の波長の光、すなわち紫外線Aを吸収する。無機系の紫外線遮蔽剤が紫外線を吸収する性質は、そのバンドギャップエネルギーが紫外線の波長領域にあるためである。
【0018】従って、本発明の板状複合微粒子において、子粒子による紫外線の散乱及び吸収能を効果的に発現させるためには、母粒子を構成する粒子のバンドギャップエネルギーが子粒子よりも大きいことが必要である。例えば母粒子としてSiO2粒子の凝集体を用いる場合、SiO2 よりもバンドギャップエネルギーの小さいZnO微粒子を子粒子として含有させれば、波長200nm以下の紫外線が母粒子を構成する粒子(SiO2 )のバンドギャップエネルギーに対応する励起子吸収によって吸収され、母粒子に吸収されずに透過する波長200〜390nm付近の紫外線が子粒子によって多重に散乱されながら子粒子のバンドギャップエネルギーに基づく励起子吸収によって効率良く吸収される。この場合、SiO2 は可視光に対して高透明性であるので、この複合微粒子は、高い可視光透明性を有し、かつ390nm以下の波長領域の紫外線を遮蔽することができる。
【0019】これに対して、母粒子を構成する粒子としてZnOを用い、これよりもバンドギャップエネルギーの大きいSiO2 微粒子を子粒子とすれば、波長390nm以下の紫外線はZnOのバンドギャップエネルギーに対応する励起子吸収によって母粒子に吸収されるが、この場合、子粒子であるSiO2 に紫外線は届かず、子粒子は紫外線に対して吸収効果の役割を果たさない。又、母粒子が可視光に認識される大きさ(粒子径0.2μm 程度以上)であれば、可視光透明性も悪くなる。
【0020】これらの点から本発明の板状複合微粒子において、母粒子を構成する粒子のバンドギャップエネルギーは、3〜9eVであるのが好ましく、5〜9eVが更に好ましい。また、子粒子による吸収及び散乱が期待される波長領域の紫外線を、より確実に子粒子まで到達させるためには、最小のバンドギャップエネルギーを有する子粒子のバンドギャップエネルギーが、母粒子を構成する粒子のバンドギャップエネルギーよりも0.2eV以上小さいことが好ましい。
【0021】(2)複合微粒子の屈折率紫外線遮蔽性微粒子を実際に使用する場合、紫外線域における高遮蔽性を維持したまま可視光線域において高透明性を発現する必要がある。ここで、(i)高遮蔽性を維持するには、母粒子と子粒子とで屈折率の差が大きくなると子粒子における紫外線遮蔽能が向上することから両者の屈折率の差が大きいことが必要であり、本発明においては0.1以上であることが好ましい。そこで、本発明では、屈折率の比較的に高い子粒子に対し、母粒子の構成物質として金属酸化物や屈折率の比較的に低いフッ素化合物を使用している。また、(ii)高透明性を発現するために、その複合微粒子のまわりの物質(媒質)との屈折率の違いを考慮して、なるべく複合微粒子と媒質との屈折率の差を小さくする必要があり、その為には複合微粒子の屈折率を制御しなければならない。本発明では、この屈折率の制御に低屈折率物質であるフッ素化合物を用いている点等に本発明の特徴を有する。
【0022】即ち、複合微粒子の懸濁系(即ち、化粧品等に使用した時の状態)において、複合微粒子と媒質で屈折率が異なると、両者の界面において可視光線の屈折や反射が起こって透明性が損なわれる。ここで屈折率は、一般に液侵法により測定され(例えば田幸敏治ら「光学的測定ハンドブック」P.475、1981年、朝倉書店刊)、波長589.3nmの光の透過率が最も高くなる媒質の屈折率を試料の屈折率とするものである。しかしながら、液浸法は操作が煩雑であり、時間を要するため、簡易的には子粒子と母粒子の一次粒子の屈折率と体積比から計算上求めることができる。この計算上の屈折率は、液浸法により得られるデータに極めて近似している場合があるので、そのような場合には本発明において複合微粒子の屈折率はこのような簡易的な方法を用いて得られる値をもいう。
【0023】一般に用いられる媒質の屈折率nD 20が1.3〜1.8であるのに対して、高い紫外線遮蔽性を有するTiO2 やZnO等の金属酸化物の多くは屈折率nD 20が2.0以上であるので、これらを子粒子とするときの母粒子に低屈折率物質を用いて、複合微粒子の屈折率を媒質の値に近づける必要がある。すなわち複合微粒子の屈折率を1.3〜1.8、好ましくは1.3〜1.7であり、1.4〜1.5とすることがより好ましい。また、本発明の板状複合微粒子における母粒子と子粒子との屈折率の差は、0.1以上であることが好ましい。これにより母、子粒子界面における紫外線散乱能が向上するからである。
【0024】(3)粒子の粒界母粒子の一次粒子について、粒界の観点からは、粒径が小さいほど、すなわち母粒子内部の粒界が小さいほど、可視光線がその微小粒界を認識できず、母粒子の一次粒子の結晶性に関わらずにその母粒子は透明性を有することになり、また、超微粒子である子粒子も透明性を有しているので、結果として複合微粒子も透明性を有すると説明できる。
【0025】次に、本発明の紫外線遮蔽性板状複合微粒子の製造方法について各工程別に説明する。本発明の製造工程には、大別して次のような4つの工程がある。即ち、(a)一次粒子の平均粒子径が0.001〜0.3μmの母粒子を構成する粒子を含有するゾル及び/又はそのような粒子を熱分解により生成させ得る溶液からなるフッ素化合物を少なくとも含有する母粒子原料と、平均粒子径が0.001〜0.1μmの子粒子を含有するゾル、子粒子粉末、及びそのような子粒子を熱分解により生成させ得る溶液からなる群より選ばれる一種又は二種以上からなる子粒子原料との混合物を含有する混合液を調製する工程、(b)該混合液を平均液膜厚が0.1〜1000μmの範囲に液膜化する工程、(c)得られる液膜を100〜1500℃雰囲気中にて乾燥及び/又は焼成させて、又は該雰囲気温度にて乾燥後、熱分解及び/又は焼成させて固体膜を得る工程、(d)該固体膜を粉砕し、板状微粒子化する工程、である。
【0026】ここで、前記の工程(a)である混合液の調製工程においては、子粒子に平均粒子径が0.001〜0.1μmの超微粒子粉末を用いる場合には、子粒子粉末をミル、高圧分散等の処理により解砕又は粉砕させて、混合液中で子粒子の分散状態を保持することが好ましい。
【0027】次に、本発明の製造方法に用いる各原料について説明する。
(1)複合微粒子を構成する子粒子は、可視光線域における透明性及び紫外線域における遮蔽性を有するものである。すなわち子粒子は可視光線域において吸収がなく、かつ可視光線を散乱することのない程度の大きさの粒子であることが必要である。
【0028】子粒子を構成する物質としては、可視光線域において吸収がなく、かつ紫外線の吸収性を有するという要件から、バンドギャップエネルギーに基づく励起子吸収端が紫外線の波長領域に存在するような物質、即ち、バンドギャップエネルギーが3.0〜4.0eVの半導体化合物が好ましく、例えばTiO2 、ZnO、CeO2 、SiC、SnO2 、WO3 、SrTiO3 、BaTiO3 、CaTiO3 等がその性質を強く示し、それらの中でもTiO2 、ZnO及びCeO2 が一般的に紫外線遮蔽剤としてよく用いられており、これらからなる群より選ばれた一種以上のものが特に好ましい。特に紫外線A領域(320〜400nm)まで遮蔽するためにはZnO、CeO2 等が有効であり、紫外線B領域(280〜320nm)の遮蔽にはTiO2 が有効である。なお、紫外線B及びA領域を遮蔽するには、子粒子がZnO、CeO2 、BaTiO3 、CaTiO3 、SrTiO3 及びSiCよりなる群から選択される1種以上であるものとTiO2 を組み合わせて使用することが好ましい。
【0029】子粒子の形状は球状、板状あるいは針状等、特に限定されない。子粒子の粒子径は、母粒子の一次粒子と比較した場合、ほぼ同程度であることが、子粒子の分散状態を良好にする上で好ましい。一方、紫外線散乱性は、Mie散乱によって強く現れ、これは粒子径が紫外線の波長の約1/2すなわち0.2μm以下で顕著となるので、平均粒子径は、具体的には可視光線域における透明性及び紫外線域における遮蔽性を満足する為に、0.2μm以下が好ましく、0.1μm以下、なかでも0.001〜0.1μmがより好ましく、特に0.05μm以下が更に好ましい。なお、本発明における子粒子とは、その一次粒子が単独で分散・固定化しているもの及び/又は一次粒子が凝集してなる凝集体のことをいう。したがって、子粒子の平均粒子径とは、上記凝集体の粒径をも意味する。
【0030】本発明では、複合微粒子内部で子粒子が分散した状態で存在していることが好ましいので、ゾル中での子粒子の分散性や安定性を高めることが好ましく、そのためには子粒子の表面を他の物質で被覆したり、あるいはゾルの安定化剤を混合してもよい。例えばTiO2 超微粒子を子粒子に用いる場合、超微粒子の表面をSiO2 やAl2 3 等で被覆して分散性を高めたり、塩基性の安定化剤(例えば、NH3 等)を混合してTiO2 のゾル状態を安定化させたりするのもよい。また超微粒子粉末を表面改質して良好に分散できる場合には、子粒子原料として供することもできる。本発明で用いられるゾルとは、一般に、普通の顕微鏡では認められないが、原子あるいは低分子よりは大きい粒子として物質が液体中に分散しているもの(理化学辞典第3版:岩波書店)を言う。例えばシリカのヒドロゾル、TiO2 超微粒子懸濁液等があげられる。
【0031】このような子粒子は熱分解により粒子生成が行われる原料(熱分解用の原料)を用いて熱分解反応により得ることもでき、その金属元素を含む塩の溶液を子粒子原料(熱分解用の原料)として用いることもできる。金属塩の種類としては、Ti(SO4 2 、TiCl4 、ZnSO4 、Zn(NO3 2 、Ce(NO33 等であり、例えば、ZnOを子粒子とする場合、Zn(NO3 2 の水溶液を熱分解することによりZnOが生成される。
【0032】(2)複合微粒子を構成する母粒子は、複合微粒子懸濁系の透明性を発現させるために、子粒子と同様に可視光線域における透明性を満足する必要がある。すなわち可視光線を吸収しない物質で構成され、かつ0.3μmを超えるような一次粒子を持たないことが望ましい。例えば平均粒子径が0.01μmの超微粒子の凝集体等が好ましい。
【0033】母粒子を構成する物質としては、フッ素化合物、又はフッ素化合物と透明性が高いセラミックスの混合物からなる物質であり、そのようなセラミックスとしては例えば金属酸化物等が挙げられる。前記のように微粒子の凝集体が通常母粒子を構成することになるので、母粒子の要件を満たす為には凝集体を構成する微粒子(即ち、一次粒子)の平均粒子径が0.3μm以下、即ち、0.001〜0.3μmであり、なかでも好ましくは0.2μm以下、さらに好ましくは0.1μm以下であり、特に好ましくは0.05μm以下であることが望ましい。また子粒子の場合と同じ理由で、母粒子を構成する微粒子の表面を他の物質で被覆したり、あるいはゾルの安定化剤を混合してもよい。ここで用いられる被覆用の物質や安定化剤としては、子粒子の場合と同様のものが挙げられる。
【0034】金属酸化物は化学的に安定な固体が多く、母粒子を構成する物質として適当である。母粒子に含有される金属酸化物としては、例えばTiO2 、CuO、ZnO、MgO、CeO2 、SnO2 、SiO2 、Fe2 3 、Al2 3 、NiO2 、MnO2 等が挙げられ、SiO2 が、前述の屈折率や透明性等の点から、特に好ましい。また、バンドギャップエネルギーの大きいセラミックスの微粒子という点からは、例えばSnO2 、In2 3 、SiO2 、ZnO等の微粒子が好ましい。
【0035】このような金属酸化物は、熱分解により粒子生成が行われる原料(熱分解用の原料)を用いて熱分解反応により母粒子に含有させることもでき、その場合には原料として金属塩が用いられる。当該金属塩の金属元素としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属等が挙げられる。具体的には、アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、アルカリ土類金属としてはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、遷移金属としては周期表第4周期のSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ge、Ga、As、第5周期のY、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、第6周期のLa、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Bi等の他に、Al、Si等が挙げられる。
【0036】また、金属塩の種類としては、塩酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酢酸塩、また2種類以上の塩で構成されている複塩、錯イオンを含む錯塩等で、無水塩及び含水塩のどちらでも良い。
【0037】金属塩の具体例として、Al(NO3 3 9H2 O、Ti(SO4 2 、CuSO4 5H2 O、Zn(NO3 2 6H2 O、Ca(NO3 2 4H2O、CaCl2 、MgCO3 、Fe3 (PO4 2 、Cu(CH3 COO)2 、複塩ではKMgCl3 、AlK(SO4 2 等で、錯塩では、K3 〔Fe(CN)6 〕、〔CoCl(NH3 5 〕Cl2 等が挙げられる。
【0038】これらの金属塩は単独又は混合物で用いられる。混合物として、例えば、チタン塩と亜鉛塩の混合物を用いた場合は温度条件によっては、酸化亜鉛と酸化チタンの混合物又は複合物であるチタン酸亜鉛(Zn2 TiO4 )が母粒子又は子粒子として得られ、用いられる。
【0039】金属塩溶液の溶媒としては、水あるいは有機溶媒を用いられるが、原料液滴の乾燥や熱分解を妨げないものが好ましい。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール等のアルコールや、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等の極性溶媒が挙げられる。
【0040】母粒子に含有されるフッ素化合物は、化学的に安定でしかも屈折率の低い化合物が多く、得られる複合微粒子の屈折率制御に有用である。フッ素化合物としては、常温で固体のものあるいは液体のものが挙げられる。常温で固体の無機フッ素化合物としては例えばMgF2 、CaF2 、AlF3 、LiF、NiF2 、BaF2 等があり、有機フッ素化合物としては例えばポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと略す)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル等のフッ素系樹脂等が挙げられる。なかでもフッ素化合物がMgF2 及び/又はポリテトラフルオロエチレンである場合に、屈折率や透明性等の点から好適である。
【0041】このような常温で固体のフッ素化合物の平均粒子径は、0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下がさらに好ましい。これは、平均粒子径が0.3μmを超える大きさになると、粒子同士の凝集力が弱くなり、複合微粒子の強度が低下するからである。
【0042】常温で液体のフッ素化合物としては、パーフルオロポリエーテル(以下、PFPEと略す)等が挙げられる。PFPEとしては、例えばパーフルオロポリメチルイソプロピルエーテル(日光ケミカルズ(株)製FOMBLIN HC等)が挙げられる。このようなPFPEは複合微粒子の屈折率を低下させるだけでなく、湿潤性のある肌触り感を付与する効果があり、化粧品用微粒子等に好適に用いることができる。このような液体のフッ素化合物を用いる場合、子粒子原料及び母粒子原料が溶媒中で相分離しないような溶媒を選ばなくてはならないが、溶媒が水の場合には、種々の界面活性剤を用いて常温で液体のフッ素化合物をエマルジョン化したものを用いることが好ましい。例えば、パーフルオロポリエーテルのエマルジョン(O/W型)が挙げられる。エマルジョン径は、液膜の厚さの0.1倍以下が好ましい。エマルジョン径が、液膜の厚さの0.1倍を超えると生成板状粒子の厚さよりもエマルジョンが大きくなり、板状粒子生成が困難となる。
【0043】このように本発明では、母粒子中に含有させる屈折率の低い物質として、常温で液体のフッ素化合物を用いることができるが、この場合、屈折率制御の自由度を増やすために、前記のような金属酸化物及び/又は常温で固体のフッ素化合物に加えて併用して用いられる。
【0044】以上のような本発明における子粒子と母粒子の組み合わせとしては、子粒子がTiO2 及び/又はZnOであり、母粒子がMgF2 及び/又はパーフルオロポリエーテルとSiO2 より組み合わされる場合が、紫外線遮蔽剤としての安全性、安定性の点より好ましい。
【0045】本発明では、子粒子と母粒子中に前記のような金属酸化物及びフッ素化合物に該当しない物質が含まれていても良い。例えばゾル液膜の乾燥、及び/又は焼成により複合微粒子を製造する場合、原料ゾルの安定化剤、あるいはゾル粒子の被覆剤等が母粒子中に混入することがあるが、複合微粒子の光学特性の発現を妨げなければそれらが混入していてもかまわない。
【0046】次に、前記のような原料を用いての原料液の調製と板状複合微粒子の製造方法について具体的に述べる。原料液を調製するに際し、前述の子粒子原料及び母粒子原料を含む混合液は、製造した複合微粒子表面及び/又は内部で子粒子が分散した状態で存在できるように、子粒子原料と母粒子原料がよく混和して、母粒子中で子粒子が分散しやすいように混合液を均一混合させることが重要である。
【0047】前述の子粒子原料及び母粒子原料用の溶媒としては、水あるいは有機溶媒が用いられるが、原料液膜の乾燥、焼成、又は金属塩の熱分解を妨げないものが好ましい。有機溶媒の例としては、メタノール、エタノール等のアルコールや、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド等の極性溶媒が挙げられ、紫外線遮蔽性板状複合微粒子の生成に悪影響を及ぼさなければ、前述の金属塩溶液の溶媒と同じもしくは異なってもよい。
【0048】原料液である子粒子原料及び母粒子原料を含む混合液中の子粒子原料の濃度は、10-5〜10mol/Lの範囲が好ましく、望ましくは10-4〜1mol/Lの範囲が良い。その理由は、濃度が10-5mol/Lより低い場合、板状複合微粒子中での子粒子量が極端に少なく子粒子の光学特性の発現が困難であり、また10mol/Lより高い場合、液中の原料分散が困難であり、液膜化の際、均一組成液膜の生成が困難となるからである。
【0049】原料液である子粒子原料及び母粒子原料を含む混合液中の母粒子原料の濃度は、10-5〜20mol/Lの範囲が好ましく、望ましくは10-4〜10mol/Lの範囲が良い。その理由は、濃度が10-5mol/Lより低い場合、金属酸化物微粒子又はフッ素化合物微粒子の生成量が極端に少なくなり、また20mol/Lより高い場合、上記のフッ素化合物、又は金属塩等の溶解限度に達しているからである。
【0050】これらの原料液(混合液)から得られる液膜の平均液膜厚は、0.1〜1000μm、好ましくは0.1〜500μm、特に好ましくは0.1〜100μmの範囲で、液膜厚分布はなるべく狭いものが好ましい。平均液膜厚が0.1μmより小さい場合、そのような液膜を作成するのは困難であり、1000μmより大きい場合、そのような液膜を乾燥、焼成すること等により得られる粒子の厚みが大きくなりすぎるからである。尚、液膜厚は、液膜重量を測定し、液膜重量値とその粒子混合物濃度より、液膜中の粒子混合物重量を算出し、その算出値と粒子混合物の密度(重み平均)値から粒子混合物体積を求め、その体積値と基板面積との比を平均液膜厚とすることにより求めることができる。
【0051】液膜の作成法としては、特に限定されないが、例えば、1)スピンコート法、2)枠状の基板に原料液をある体積量流し込む方法、3)原料液中への基板の浸漬、引き上げによる方法(ディップ法)、4)スプレー塗布法、等があげられる。このうち、比較的薄い膜を安定に得るには1)又は3)を用いることが望ましい。
【0052】基板の材質としては、特に限定はされないが、例えば銅、ステンレス、ハステロイ等の金属等が好ましく、耐熱性、耐腐食性、表面平滑性等の高いものが望ましい。
【0053】得られた液膜を乾燥、焼成又は熱分解する温度としては、原料の種類及び溶媒の種類によって適当に設定すれば良く、特に限定されるものではないが、100〜1500℃の範囲が好ましく、100〜1000℃の範囲がより好ましい。この範囲未満では乾燥速度、焼成速度又は熱分解反応速度が極端に低くなるために均質な固体膜生成が困難となる傾向があり、またこの範囲を越えると溶媒の急激な蒸発などにより、固体膜厚さの制御が困難となる傾向があり好ましくない。尚、乾燥及び/又は焼成では、必要に応じてそれらの温度を上述の範囲で任意に設定し多段階に分けて行っても良い。ここで得られる固体膜の平均膜厚は、おおよそ0.001〜100μm程度である。なお、乾燥、焼成後の固体膜厚は、例えば、光散乱式膜厚計測機、電子顕微鏡等で測定できる。
【0054】液膜の熱処理雰囲気としては、特に限定されないが、空気、窒素等、液膜の乾燥及び/又は焼成、或いは熱分解反応を阻害しないようなガスであれば良い。
【0055】上述の方法で得られた固体膜を粉砕する方法としては、特に限定されないが、例えば、ミル等の乾式粉砕法等が望ましく、粉砕後の粒径を効率良く均一にできるものが好ましい。得られた板状微粒子は、粉砕後分級して粒子径を揃えて使用しても良い。尚、生成した粒子の粒子径、形状を把握するには、電子顕微鏡を使用できる。
【0056】本発明の紫外線遮蔽性板状複合微粒子は、以上のような製造方法により得られるものであるが、その構造は母粒子については、一次粒子がその形状を保持したまま近密に凝集してなる凝集体であり、子粒子が母粒子表面及び母粒子内部に分散して存在するものである。もし、子粒子の分散性が悪ければ、子粒子の光学特性が発現しなくなる。母粒子の表面に存在する子粒子に当たった紫外線は、一部が吸収され残りが複合微粒子の外に散乱されるが、子粒子に当たらずに母粒子の内部に侵入した紫外線は、母粒子内部に存在する子粒子により紫外線の吸収・散乱が起き、紫外線が効果的に遮蔽される。
【0057】本発明の板状複合微粒子の大きさは特に限定されない。使用場面に応じて様々な大きさのものが用いられる。例えば化粧品用の粉体としては平均粒子径がサブμm〜100μmの板状粒子が皮膚への付き具合、皮膚上での伸びの良さ、ハンドリング等の面で好ましい。また、粒子の平均厚みは0.001〜100μm、好ましくは0.01〜10μmである。また、本発明において複合微粒子を板状とすることにより、皮膚への付き具合、皮膚上での伸びの良さ、ハンドリング等の面を向上させることができる。
【0058】板状複合微粒子中の子粒子の割合は、子粒子が複合微粒子内で著しい凝集を起こすことなく分散する程度であればよく、通常0.1〜50体積%、好ましくは0.1〜30体積%で、更に好ましくは0.5〜20体積%である。また、板状複合微粒子中のフッ素化合物の割合は、少なくとも1重量%以上である。
【0059】本発明の紫外線遮蔽性板状複合微粒子の光学特性は、例えば、紫外線・可視光分光分析による光透過率の測定により、その定量化が可能である。本発明の板状複合微粒子の好ましい紫外線遮蔽能としては、複合微粒子の屈折率と同程度の屈折率を有する媒質中に懸濁し、光路長1mmの光学セルを用いて紫外可視分光分析により光透過率を測定したとき、波長800nmにおいて透過率90%以上、波長400nmにおいて透過率40%以上で、かつ波長、350nm、320nm、及び300nmの少なくともいずれかにおいて透過率5%以下である。この性能により、特に可視光線域での高透明性を満足させるとともに紫外域での高遮蔽性を満足させることができる。なお、複合微粒子の屈折率と同程度とは、複合微粒子と媒質との屈折率の差が±0.1以内、好ましくは±0.05以内を意味する。
【0060】このような紫外線・可視光分光分析による評価は、具体的には以下のようにして行われる。本発明の板状複合微粒子の屈折率と同程度の屈折率を有する媒質に複合微粒子を加えて懸濁し、任意の濃度の複合微粒子懸濁液を調製する。懸濁液が均一になるように、攪拌するとともに超音波分散器等を用いて複合微粒子をよく分散させる。光路長1mmの光学セルを用意し、この中に懸濁液を満たす。光学セルは紫外及び可視光線域で吸収や散乱のないもので、例えば石英セル等が用いられる。紫外可視分光光度計を用いてこの光学セルを透過する光の透過率を測定する。このとき同等の光学セルに複合微粒子懸濁前の媒質のみ満たしたものを対照として用い、バックグラウンドの除去を行う。
【0061】
【実施例】以下に本発明の実施例及び比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
【0062】実施例1シリカゾル(日産化学工業(株)製ST−C、SiO2 濃度20.5重量%)73.3g、酸化チタンゾル(多木化学工業(株)製チタニアゾル、アナターゼ型、TiO2 濃度4重量%)50g、PFPE(パーフルオロポリエーテル)のO/Wエマルジョン(日光ケミカルズ(株)製FOMBLIN HC/04水溶化ベース、平均エマルジョン径約0.26μm、エマルジョン濃度65重量%)2.31g及び水を混合して1Lとし、原料液とした。(即ち、SiO2 、TiO2 及びPFPEの濃度はそれぞれ0.25mol/L、0.025mol/L及び0.001mol/Lであり、当該原料液は粒子混合物を1.85重量%含有するものである。)
【0063】上記の原料液中の微粒子の分散性及び均一混合性の向上を促すために、原料液を適当に撹拌後、超音波分散処理(約30分間)を行った。
【0064】この超音波分散処理された原料液に、表面研磨されたステンレス製基板(SUS316:厚さ2mm)を浸漬した後、引き上げ(引き上げ速度:50cm/min)て液膜(厚さ約30μm)を作成した。本実施例及び以降の実施例等において、液膜の厚さは液膜重量を測定し、液膜重量値とその粒子混合物濃度より、液膜中の粒子混合物重量を算出し、その算出値と粒子混合物の密度(重み平均)値から粒子混合物体積を求め、その体積値と基板面積との比を平均液膜厚とした。この液膜を空気雰囲気炉内にて50℃で一次乾燥(5分間)した後、別の空気雰囲気炉に移し炉内温度100℃にて二次乾燥(5分間)を行った。得られた固体膜をステンレス基板から削り落とした後、その剥離膜をアルミナ坩堝に入れて、炉内温度250℃にて焼成(1時間)した。
【0065】焼成後得られた剥離膜を粉砕機(IKA社製A10型)にて粉砕処理(カッター回転数20000rpm)を行い、その後、粉砕処理粉を乾式気流分級機(セイシン企業製SPEDIC CLASSIFIER )により分級して微粒子を得た。
【0066】得られた粒子は白色で、皮膚上でのびるような肌触りを示した。この複合微粒子をX線回折法により結晶相の同定を行うと、アモルファスに近いアナターゼ型TiO2 (子粒子)及びアモルファスに近いクリストバライト型SiO2 (母粒子)であることが判明し、従って、この微粒子はTiO2 /(SiO2 、PFPE)複合微粒子であることがわかった。走査型電子顕微鏡により観察した結果、平均粒径1.7μm、平均厚さ0.46μmの板状微粒子であることがわかった。また、透過型電子顕微鏡を用いた超薄切片法によりその断面を観察した結果、SiO2 超微粒子(平均粒子径約0.01μm)及びPFPEの混合物を材料とする母粒子中にTiO2 超微粒子(平均粒子径約0.01μm)が分散・固定化されて存在していることがわかった。
【0067】すなわちこの粒子は、SiO2 (バンドギャップエネルギーが約6.2eV、屈折率が約1.46)及びPFPE(屈折率が約1.29)の凝集体が母粒子であり、TiO2 (バンドギャップエネルギーが約3.4eV、屈折率が約2.52(アナターゼ型))が子粒子であるTiO2 /(SiO2 、PFPE)板状複合微粒子であった。上記複合微粒子中での子粒子の割合は、SiO2 、TiO2及びPFPEの粒子密度をそれぞれ2.27g/cm3 、3.84g/cm3 、1.87g/cm3 とし、原料液の組成比から計算して、約6.6体積%であると推算される。
【0068】母/子粒子の体積比より計算した複合微粒子の屈折率は約1.51であるので、複合微粒子の分散媒として、グリセリン(屈折率=1.47)を用い、グリセリン中にこの粒子60mgを懸濁させ、粒子が3重量%懸濁したグリセリン懸濁液2gを調製した。これについて紫外可視分光光度計(島津製作所製UV−160A)により光透過率を測定した。光路長1mmの石英セルを用いて波長域200〜800nmでの光透過率を測定した結果を図1に示す。
【0069】この図では、波長300nm以下の紫外線B及びC領域において光透過率がほぼ0%になっていると同時に、400nmで80%、800nmでほぼ97%と波長400〜800nmの可視光全域において光透過率が極めて高い値になっており、生成複合粒子は可視光線域における高透明性及び紫外線B域における高遮蔽性を有していることがわかった。
【0070】比較例1シリカゾル(日産化学工業(株)製ST−C、SiO2 濃度20.5重量%)73.3g、酸化チタンゾル(多木化学工業(株)製チタニアゾル、アナターゼ型、TiO2 濃度4重量%)50g及び水を混合して1Lとし、原料液とした(即ち、SiO2 、TiO2 の濃度はそれぞれ0.25mol/L、0.025mol/Lであり、当該原料液は粒子混合物を1.7重量%含有するものである。)。
【0071】この原料液を実施例1と同様にして分散処理を行った。この超音波分散処理された原料液を実施例1と同様に、液膜化(厚さ約30μm)、乾燥及び焼成処理を行った。焼成後得られた剥離膜を、実施例1と同様に粉砕及び分級処理を行い、微粒子を得た。
【0072】得られた粒子は白色で、皮膚上でのびるような肌触りを示した。この複合微粒子をX線回折法により結晶相の同定を行うと、アモルファスに近いアナターゼ型TiO2 (子粒子)及びアモルファスに近いクリストバライト型SiO2 (母粒子)であることが判明し、従って、この微粒子はTiO2 /SiO2 複合微粒子であることがわかった。走査型電子顕微鏡により観察した結果、平均粒径1.7μm、平均厚さ0.45μmの板状微粒子であることがわかった。また透過型電子顕微鏡を用いた超薄切片法によりその断面を観察した結果、SiO2 超微粒子(平均粒子径約0.01μm)の凝集体である母粒子中にTiO2 超微粒子(平均粒子径約0.01μm)が分散・固定化されて存在していることがわかった。
【0073】すなわちこの粒子は、SiO2 (バンドギャップエネルギーが約6.2eV、屈折率が約1.46)の凝集体が母粒子であり、TiO2 (バンドギャップエネルギーが約3.4eV、屈折率が約2.52(アナターゼ型))が子粒子であるTiO2 /SiO2 板状複合微粒子であった。上記複合微粒子中での子粒子の割合は、SiO2 、TiO2 の粒子密度をそれぞれ2.27g/cm3 、3.84g/cm3 とし、原料液の組成比から計算して、約7.3体積%であると推算される。
【0074】母/子粒子の体積比より計算した複合微粒子の屈折率は約1.53であるので、複合微粒子の分散媒として、グリセリン(屈折率=1.47)を用い、グリセリン中にこの粒子60mgを懸濁させ、粒子が3重量%懸濁したグリセリン懸濁液2gを調製した。これについて実施例1と同様の方法により光透過率を測定した。光路長1mmの石英セルを用いて波長域200〜800nmでの光透過率を測定した結果を図1に示す。
【0075】この図では、波長300nm以下の紫外線B及びC領域において光透過率がほぼ0%、400nmで53%、800nmでほぼ88%となっているが、実施例1と比較した場合、複合微粒子に低屈折率物質であるPFPEが含まれていないので、複合微粒子と分散媒との屈折率差が大きく、可視光域(特に光波長800nm)での透明性が悪くなっていることがわかる。
【0076】実施例2フッ化マグネシウムゾル(日産化学工業(株)製MFS−10、MgF2 濃度10.5重量%)148g、酸化亜鉛超微粒子(堺化学工業(株)製FINEX75)0.814g、酸化チタンゾル(多木化学工業(株)製チタニアゾル、アナターゼ型TiO2 濃度4重量%)25.0g及び水を混合して1Lとし、原料液とした(即ち、MgF2 、ZnO及びTiO2 の濃度はそれぞれ0.25mol/L、0.01mol/L及び0.0125mol/Lであり、当該原料液は粒子混合物を1.74重量%含有するものである。)。
【0077】この原料液とガラスビーズ(平均粒子径0.1mm)を重量比で325:175になるように混合した溶液を、ビーズミル(IGARASHIKIKAI製TSG−6H)を用いて、翼回転数2000r.p.m.、6時間の分散処理を行った。このミル分散処理された原料液を用いて、実施例1と同様の方法にて、液膜作成(厚さ約30μm)及びその乾燥を行った。得られた固体膜をステンレス基板から削り落とした後、その剥離膜をアルミナ坩堝に入れて、炉内温度800℃にて焼成(1時間)した。その後、実施例1と同様に、粉砕、分級処理を行い、微粒子を得た。
【0078】得られた粒子は白色で、皮膚上でのびるような肌触りを示した。この複合微粒子をX線回折法により結晶相の同定を行うと、ウルツ鉱型ZnO(子粒子)、アモルファスに近いアナターゼ型TiO2 (子粒子)及びアモルファスに近いアナターゼ型MgF2 (母粒子)であることが判明し、この微粒子は(ZnO、TiO2 )/MgF2 複合微粒子であることがわかった。走査型電子顕微鏡により観察した結果、平均粒径1.9μm、平均厚さ0.52μmの板状微粒子であることがわかった。また、透過型電子顕微鏡を用いた超薄切片法によりその断面を観察した結果、MgF2 超微粒子(平均粒子径約0.02μm)の凝集体の中にZnO超微粒子(平均粒子径約0.01μm)及びTiO2 超微粒子(平均粒子径約0.01μm)が分散・固定化されて存在していることがわかった。
【0079】すなわちこの粒子は、MgF2 (バンドギャップエネルギーが約6eV、屈折率が約1.38)の凝集体が母粒子であり、ZnO(バンドギャップエネルギーが約3.2eV、屈折率が約1.99)及びTiO2 (バンドギャップエネルギーが約3.4eV、屈折率が約2.52)が子粒子である(ZnO、TiO2 )/MgF2 板状複合微粒子であった。上記複合微粒子中での子粒子の割合は、MgF2 、ZnO及びTiO2 の粒子密度をそれぞれ3.15g/cm3 、5.78g/cm3 、3.84g/cm3 とし、原料液の組成比から計算して、約7.52体積%であると推算される。
【0080】母/子粒子の体積比より計算した複合微粒子の屈折率は約1.45であるので、複合微粒子の分散媒として、グリセリン(屈折率=1.47)を用い、グリセリン中にこの粒子120mgを懸濁させ、粒子が6重量%懸濁したグリセリン懸濁液2gを調製した。これについて実施例1と同様の方法により光透過率を測定し、その結果を図2に示す。
【0081】この図では、波長325nm以下の紫外線A、B及びC領域において光透過率がほぼ0%になっていると同時に、400nmで90%、800nmでほぼ98%と波長400〜800nmの可視光全域において光透過率が極めて高い値になっており、生成複合粒子は可視光線域における高透明性及び紫外線B、A域における高遮蔽性を有していることがわかった。
【0082】実施例3硝酸アルミニウム水溶液(和光純薬工業(株)製Al(NO3 3 ・9H2 O(特級試薬)を水に溶解させて溶液濃度を1.0mol/Lとしたもの)500g、フッ化マグネシウムゾル(日産化学工業(株)製MFS−10、MgF2 濃度10.5重量%)5.92g、酸化セリウムゾル(多木化学(株)製、ニードラールW−15、CeO2 濃度15重量%)11.5g及び水を混合して1Lとし、原料液とした(即ち、Al2 3 、MgF2 及びCeO2 の濃度はそれぞれ0.25mol/L、0.01mol/L、及び0.01mol/Lであり、当該原料液は粒子混合物を2.78重量%含有するものである。)。
【0083】原料液中の微粒子の分散性及び均一混合性の向上を促すために、原料液を適当に撹拌後、超音波分散処理(約30分間)を行った。その超音波分散処理された原料液を用いて、実施例1と同様の方法にて、液膜作成(厚さ約30μm)及びその乾燥を行った。得られた固体膜をステンレス基板から削り落とした後、その剥離膜をアルミナ坩堝に入れて、炉内温度1100℃にて、硝酸アルミニウムの熱分解(1時間)及び焼成(1時間)を行った。尚、この硝酸アルミニウムの熱分解により、母粒子としてAl2 3 が得られる。その熱分解及び焼成後得られた剥離膜を実施例1と同様の方法にて粉砕、分級処理を行い、微粒子を得た。
【0084】得られた粒子は若干黄色味を呈した白色で、皮膚上でのびるような肌触りを示した。この複合微粒子をX線回折法により結晶相の同定を行うと、アモルファスに近いホタル石型CeO2 (子粒子)、アモルファスに近いα型Al2 3 (母粒子)、及びアモルファスに近いルチル型MgF2 (母粒子)であることが判明し、この微粒子はCeO2 /(Al2 3 、MgF2 )複合微粒子であることがわかった。走査型電子顕微鏡により観察した結果、平均粒径1.8μm、平均厚さ0.51μmの板状微粒子であることがわかった。また、透過型電子顕微鏡を用いた超薄切片法によりその断面を観察した結果、Al2 3 超微粒子(平均粒子径約0.01μm)及びMgF2 超微粒子(平均粒子径約0.02μm)の凝集体の中にCeO2 超微粒子(平均粒子径約0.01μm)が分散・固定化されて存在していることがわかった。
【0085】すなわちこの粒子は、Al2 3 (バンドギャップエネルギーが約8.3eV、屈折率が約1.73)及びMgF2 (バンドギャップエネルギーが約6eV、屈折率が約1.38)の凝集体が母粒子であり、CeO2 (バンドギャップエネルギーが約3eV、屈折率が約2)が子粒子であるCeO2 /(Al2 3 、MgF2 )板状複合微粒子であった。上記複合微粒子中での子粒子の割合は、Al2 3 、MgF2 及びCeO2 の粒子密度をそれぞれ3.99g/cm3 、3.15g/cm3 、7.13g/cm3 とし、原料液の組成比から計算して、約3.5体積%であると推算される。
【0086】母/子粒子の体積比より計算した複合微粒子の屈折率は約1.73であるので、複合微粒子の分散媒として、ジヨードメタン(屈折率=1.74)を用い、ジヨードメタン中にこの粒子120mgを懸濁させ、粒子が6重量%懸濁したジヨードメタン懸濁液2gを調製した。これについて実施例1と同様の方法により光透過率を測定し、その結果を図3に示す。
【0087】この図では、波長325nm以下の紫外線A、B及びC領域において光透過率がほぼ0%になっていると同時に、400nmで87%、800nmで光透過率が99%となり、生成粒子は若干黄色味を呈しているものの、生成複合粒子は可視光線域における高透明性及び紫外線B、A域における高遮蔽性を有していることがわかった。
【0088】
【発明の効果】本発明の紫外線遮蔽性板状複合微粒子は、適当な屈折率を有する液体または固体の媒質中に分散する際、その屈折率に合うように複合微粒子の屈折率を制御することにより、可視光線域においては高い光透過率を示し、紫外線域においては子粒子による散乱及び吸収能が現れて高い遮蔽性を発現する。また触媒活性能の高い子粒子が母粒子内部にそのほとんどが封入されているので、子粒子の有する触媒活性が周りの媒質等に悪い影響を与えることが少ない。すなわち、本発明の板状複合微粒子は、紫外線遮蔽能を有する超微粒子を複合微粒子化することにより、可視光線域においては高透明性で、かつ紫外線域においては高遮蔽性である超微粒子の光学的性質を、ハンドリングの容易な微粒子サイズにて安定して発現するという特徴を有するものである。また、例えば、本発明の板状複合微粒子を化粧品に使用する場合、すべりが良く、肌上での伸展性に優れ、むらづきしないとともに、透明性に優れ、不自然な白浮きがなく、高い紫外線遮蔽効果を有する化粧料となり、また、本発明の板状複合微粒子を塗料に使用する場合、透明性に優れているので、塗料の色彩を損なうことなく、しかも塗料への配合量の自由度が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1及び比較例1で得られた紫外線遮蔽性板状複合微粒子の紫外可視分光光度計による光透過率の測定結果を示すチャート図である。
【図2】図2は、実施例2で得られた紫外線遮蔽性板状複合微粒子の紫外可視分光光度計による光透過率の測定結果を示すチャート図である。
【図3】図3は、実施例3で得られた紫外線遮蔽性板状複合微粒子の紫外可視分光光度計による光透過率の測定結果を示すチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一次粒子の平均粒子径が0.001〜0.3μmである粒子がその形状を保持したまま凝集してなる母粒子と、該母粒子内に分散・固定化された平均粒子径が0.001〜0.1μmの子粒子よりなる複合微粒子であって、該子粒子が該母粒子を構成する粒子よりも小さなバンドギャップエネルギーを有しかつ紫外線吸収能を有するものであり、母粒子を構成する粒子がフッ素化合物又はフッ素化合物と金属酸化物の混合物であることを特徴とする、可視光線域における透明性を有する紫外線遮蔽性板状複合微粒子。
【請求項2】 金属酸化物がSiO2 及び/又はAl2 3 から選択される請求項1記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子。
【請求項3】 フッ素化合物がMgF2 及び/又はポリテトラフルオロエチレンである請求項1又は2記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子。
【請求項4】 母粒子を構成する粒子が、常温で固体のフッ素化合物、金属酸化物、又は該金属酸化物と該フッ素化合物の混合物に、さらにパーフルオロポリエーテルを加えたものである、請求項1〜3いずれか記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子。
【請求項5】 子粒子がTiO2 、ZnO、CeO2 、BaTiO3 、CaTiO3 、SrTiO3 及びSiCよりなる群から選択される1種以上である、請求項1〜4いずれか記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子。
【請求項6】 板状複合微粒子の屈折率と実質的に同程度(ただし、±0.1以内の屈折率の差は同程度とみなす)の屈折率を有する媒質中に懸濁し、光路長1mmの光学セルを用いて紫外可視分光光度計により光透過率を測定したとき、波長800nmにおいて透過率90%以上、波長400nmにおいて透過率40%以上で、かつ波長350nm、320nm、及び300nmの少なくともいずれかにおいて透過率5%以下である請求項1〜5いずれか記載の紫外線遮蔽性板状複合微粒子。
【請求項7】 以下の工程よりなる、可視光線域における透明性を有する紫外線遮蔽性板状複合微粒子の製造方法。
(a)一次粒子の平均粒子径が0.001〜0.3μmの母粒子を構成する粒子を含有するゾル及び/又はそのような粒子を熱分解により生成させ得る溶液からなるフッ素化合物を少なくとも含有する母粒子原料と、平均粒子径が0.001〜0.1μmの子粒子を含有するゾル、子粒子粉末、及びそのような子粒子を熱分解により生成させ得る溶液からなる群より選ばれる一種又は二種以上からなる子粒子原料との混合物を含有する混合液を調製する工程、(b)該混合液を平均液膜厚が0.1〜1000μmの範囲に液膜化する工程、(c)得られる液膜を100〜1500℃雰囲気中にて乾燥及び/又は焼成させて、又は該雰囲気温度にて乾燥後、熱分解及び/又は焼成させて固体膜を得る工程、(d)該固体膜を粉砕し、板状微粒子化する工程、

【図1】
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【図2】
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【図3】
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