説明

細胞において多能性を誘導する方法

本願は、細胞を、MUC1活性を増大させる生物種又は化学種と接触させることによって、細胞において多能性を誘導又は維持する方法を説明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、細胞における多能性誘導の分野に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、2008年10月9日付けで出願された米国仮特許出願第61/104,231号(その内容全体が参照により援用される)の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0003】
転写因子の異所性発現によって体細胞をリプログラムし、多能性にすることができることがマウス及びヒトにおいて実証されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)。疾患又は老化によって引き起こされる損傷を修復するために、患者自身の皮膚細胞に由来する幹細胞を使用して細胞及び組織を生成することができるため、人工多能性幹(iPS)細胞の生成は、完全に個人化された再生医療の実現に大いに有望である(非特許文献10、非特許文献11)。転写因子Oct4、Sox2、Klf4及びc−Mycの組み合わせ、又はOct4、Sox2、Nanog及びLin28の組み合わせの強制発現が成熟細胞を多能性状態へと戻すことが示されている。
【0004】
以前の研究では、これらの転写因子は複数のウイルスベクターを用いて発現させていた(非特許文献7、非特許文献4、非特許文献2、非特許文献8、非特許文献6、非特許文献9、非特許文献5)。この複数のベクターの使用は、複数の組込みイベントのために問題を生じ、これは発癌性リスクの増大につながるおそれがある(非特許文献7、非特許文献12)。研究者らは、単一のベクター系(非特許文献13)、摘出可能なベクター(非特許文献14、非特許文献15、非特許文献16)、非組込み型(non-integrating)ベクター(非特許文献17、非特許文献18)及び一時的トランスフェクション(非特許文献19)を用いることによってこの問題を克服しようと試みてきた。しかしながら、これらの方法はエピジェネティックリプログラミングを達成する上で極めて非効率的である。
【0005】
多能性を誘導する方法には、癌遺伝子c−Mycのトランスフェクションが含まれるが、これは癌を引き起こす可能性があるため望ましくない。iPS細胞は、c−Mycをトランスフェクトすることなく生成することができる(非特許文献3、非特許文献20)。しかしながら、そのリプログラミングの効率は大幅に低下している。同様に、Klf4は異形成を誘導するおそれがある(非特許文献21)。
【0006】
複数のウイルスベクターの組込み、及び多能性を誘導する遺伝子の一部の望ましくない副作用に関連する問題から、多能性誘導遺伝子の一部又は全ての使用を、その発現を調節するか、若しくは多能性誘導遺伝子によって発現が調節されるタンパク質遺伝子産物及びタンパク質、又は多能性を誘導する遺伝子若しくはタンパク質の発現を調節する小分子の使用に置き換える必要がある。この目的で、遺伝子ではなく、遺伝子産物の導入によっても多能性が誘導されたことが報告されている(非特許文献22)。細胞への侵入を容易にするためにポリアルギニンでタグ付けされた組み換えOct4、Sox2、Klf4及びc−Mycによって、マウス体細胞がリプログラムされた。小分子を用いて中核となる(core set)遺伝子のうち1つの必要性をなくした例もある。Nanogを上方調節する小分子によって、同様にNanogを上方調節するKlf4遺伝子が不要となっている(非特許文献23)。別の研究では、小分子HDAC阻害剤によってKlf4及びc−Mycの両方が不要とされている(非特許文献24)。これらの研究から以下のことが示される:1)タンパク質遺伝子産物によって上記遺伝子の必要性をなくすことができる;2)遺伝子を上方調節する小分子によって上記遺伝子の必要性をなくすことができる;及び3)同じ調節経路の遺伝子(又は遺伝子産物)は相互に代用することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Lowry et al., 2008
【非特許文献2】Maherali et al., 2007
【非特許文献3】Nakagawa et al., 2008
【非特許文献4】Okita et al., 2007
【非特許文献5】Park et al., 2008
【非特許文献6】Takahashi et al., 2006
【非特許文献7】Takahashi and Yamanaka, 2006
【非特許文献8】Wernig et al., 2007
【非特許文献9】Yu et al., 2006
【非特許文献10】Yamanaka, 2007
【非特許文献11】Jaenish and Young, 2008
【非特許文献12】Aoi et al., 2008
【非特許文献13】Sommer et al., 2009
【非特許文献14】Kaji et al., 2009
【非特許文献15】Soldner et al., 2009
【非特許文献16】Woltjen et al., 2009
【非特許文献17】Stadtfeld et al., 2009
【非特許文献18】Yu et al., 2009
【非特許文献19】Okita et al., 2009
【非特許文献20】Wernig et al., 2008
【非特許文献21】Foster et al., 2005
【非特許文献22】Zhou et al., 2009
【非特許文献23】Lyssiotis et al., 2009
【非特許文献24】Huangfu et al., 2008, a&b
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの成果にもかかわらず、これらの方法にはリプログラミングの効率が低いとの欠点があるという大きな問題が残っている。現在の体細胞における多能性の誘導率は低過ぎるため、iPS細胞の治療的使用は非実用的である。したがって、単独で、又は既に同定されたものに加えて、細胞において多能性を誘導するか、又は多能性誘導の効率を向上させるタンパク質及び小分子を同定する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は、細胞において多能性を誘導又は維持する方法であって、細胞を、MUC1活性を増大させる生物種又は化学種と接触させることを含む、方法に関する。生物種は遺伝子又はタンパク質であり得る。タンパク質は、好ましくはMUC1リガンドであり得る。リガンドは好ましくはNM23である。タンパク質は抗体、好ましくはMUC1のPSMGFR配列を特異的に認識する二価抗体であってもよい。別の態様では、化学種は小分子であり得る。好ましくは、小分子はMUC1、その切断酵素又はNM23の転写を増進し得る。好ましくは、切断酵素はMMP−16、MMP−14又はADAM−17であり得る。さらに、小分子はMUC1の切断を増進し得る。小分子はホルボールエステルであってもよい。
【0010】
別の態様では、上記遺伝子はMUC1又はMUC1、又はその有効フラグメント、又はMUC1抗体若しくはNM23等(これらに限定されない)といったMUC1のリガンドをコードし得る。好ましくは、フラグメントはMUC1又はMUC1の細胞質尾部であり得る。
【0011】
さらに他の態様では、本発明は細胞を、OCT4、SOX2、NANOG、KLF4又はLIN28、好ましくはOCT4及びSOX2の発現を増大させる分子等(これらに限定されない)といった多能性を誘導する遺伝子産物の発現を増大させるさらなる分子と接触させることに関する。
【0012】
本発明のこれら及び他の目的は、以下の本発明の説明、添付の参考図面及び添付の特許請求の範囲から、より完全に理解される。
【0013】
本発明は、本明細書中で下記に与えられる詳細な説明、及び例示目的のみで与えられ、したがって本発明を限定するものでない添付の図面からより完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1A:MUC1が成長速度を増大させることを示す図である。クローン原性アッセイから、ラット線維芽細胞(3Y1)にMUC1をトランスフェクトすることによって成長速度が増大するが、MUC1(完全長)では増大しないことが示される。図1B:MUC1が成長速度を増大させることを示す図である。MUC1活性は生存を増大させる。TAXOL(登録商標)に対する抵抗性を獲得した乳癌細胞では、MUC1発現を増大させることによって生存が増大する。抗MUC1 Fabでの処理によって、獲得されたTAXOL(登録商標)誘導性細胞死に対する抵抗性が取り消される(reverses)。図1C:MUC1が成長速度を増大させることを示す図である。MUC1細胞外ドメインのリガンド誘導性二量化は成長を刺激する。二価抗MUC1抗体の添加によって、MUC1陽性細胞の成長が刺激される。抗MUC1(mv)Fabでの遮断によって細胞成長が阻害される。この釣鐘型の成長曲線は受容体二量化に特徴的である。対照のMUC1陰性HEK 293細胞の成長は影響を受けなかった。図1D:MUC1が成長速度を増大させることを示す図である。特異的siRNAを用いたMUC1の抑制によって、MUC1を二量化するリガンドの添加の成長刺激効果が無効となる。図1E:MUC1が成長速度を増大させることを示す図である。NM23は天然のMUC1活性化リガンドである。NM23はMUC1陽性癌細胞の成長を刺激し、受容体二量化を示唆する釣鐘型曲線を示す。siRNAによるMUC1の抑制によって効果は無効となる。図1F:MUC1が成長速度を増大させることを示す図である。NM23のMUC1ペプチドへの直接結合はSPRによって検出される。15nM NM23はMUC1細胞外ドメインペプチドには結合するが、無関係のペプチドには結合しない。SPR(表面プラズモン共鳴)及びNTA−Ni−SAMでコートしたAuチップを用いて測定を行った。 図1Bの縦軸は、細胞死率(%)、non FabはFabなし、Con Fabは対照Fab、No TaxolはTaxolなしを意味する。図1Cの縦軸は正規化細胞成長率(%)、横軸は抗MUC1抗体濃度を意味する。図1Dの縦軸は成長率(%)、横軸は抗MUC1*、controlは対照を意味する。図1Eの縦軸は成長率(%)、NM23conc.はNM23濃度、Controlは対照を意味する。図1Fの縦軸は共鳴単位、横軸は時間(秒)、NM23injectionはNM23注入、MUC1surfaceはMUC1細胞外ドメイン表面、contro; peptide surfaceは対照ペプチド表面を意味する。
【図2】MUC1が未分化hESC上で切断されるが、分化hESC上では切断されないことを示す図である。免疫細胞化学から、未分化(多能性)幹細胞はMUC1を発現するが、完全長タンパク質は発現しないことが示される。OCT4は多能性の最も基準となる(gold standard)マーカーである。全ての多能性幹細胞はMUC1陽性である。しかしながら、分化が始まると(OCT4発現の消失)、直ぐに切断が停止し、完全長MUC1(MUC1−FL)のみが検出される。パネルA〜パネルCは同じ未分化幹細胞コロニーの写真であり、AはPSMGFRペプチドを認識する抗MUC1抗体、Bは抗OCT4、Cは抗MUC1完全長VU4H5で染色している。パネルD〜パネルFは同じ分化したばかりの幹細胞コロニーの写真であり、DはPSMGFRペプチドを認識する抗MUC1抗体、Eは抗OCT4、Fは抗MUC1完全長VU4H5で染色している。 UNDIFFERENTIATED:未分化、DIFFERENTIATED:分化を意味する。
【図3】NM23(MUC1リガンド)が未分化hESC上ではMUC1及びOCT4と共局在化するが、分化細胞上では共局在化しないことを示す図である。免疫細胞化学から、未分化(多能性)幹細胞が、MUC1及びその活性化リガンドであるNM23を発現することが示される。しかしながら、幹細胞が分化し始めると(OCT4発現の消失)、MUC1は完全長タンパク質として発現され、NM23は分泌されなくなる。点線は、未分化の部分と分化したばかりの部分との間の境界を示す。パネルA〜パネルCは同じ未分化幹細胞コロニーの写真であり、AはNM23を認識する抗体、BはPSMGFRペプチドを認識する抗MUC1抗体で染色している。CはAとBとを重ね合わせたものであり、核を染色するために同じ細胞をDAPIで染色している。パネルD〜パネルFは同じ未分化幹細胞コロニーの写真であり、DはNM23を認識する抗体、EはOCT4を認識する抗体で染色している。FはDとEとを重ね合わせたものであり、核を染色するために同じ細胞をDAPIで染色している。
【図4】bFGF及び馴化培地の非存在下において、MUC1を刺激することによってhESCの成長が促進され、分化が阻害されることを示す図である。二価抗MUC1抗体を用いたMUC1細胞外ドメインのリガンド誘導性二量化によって、bFGF又は馴化培地を添加していない最小培地での5週間の増殖の後、ほぼ100%の多能性コロニーが産生された。コロニーはマトリゲル上で増殖させた。NM23又はNM23 S120G突然変異体をMUC1を活性化するのに用いた場合も同じ結果が得られた。パネルA〜パネルDは、細胞増殖培地に線維芽細胞フィーダー細胞からの馴化培地、加えて抗MUC1又はbFGFのいずれかを添加したウェルの写真である。パネルE〜パネルHは、幹細胞を抗MUC1又はbFGFのいずれかを加えた最小培地において培養したウェルの写真である。画像は、AではOCT4を認識する抗体で染色した細胞、BではAの細胞のDAPI染色、Cでは抗MUC1で染色した細胞、DではCの細胞のDAPI染色、EではOCT4を認識する抗体で染色した細胞、FではEの細胞のDAPI染色、Gでは抗MUC1で染色した細胞、HではGの細胞のDAPI染色である。 Conditioned Medium:馴化培地、Feeder Free:フィーダー細胞なし、Anti-MUC1*:抗MUC1を意味する。
【図5】MUC1活性が多能性幹細胞の成長に必要とされることを示す棒グラフを示す図である。抗MUC1 FabでMUC1を遮断することによって、bFGF及び馴化培地(CM)が存在する場合であっても、8時間〜12時間以内に全幹細胞死が引き起こされた。二価抗MUC1は成長を刺激した。細胞を25時間培養し、生細胞をカルセイン蛍光アッセイにおいて測定した。 H9 hESCs on Matrigel+CM+bF :マトリゲル+CM+bFGF上でのH9 hESC、Bivalent Anti-MUC1*:二価抗MUC1*、Fab Amti-MUC1*(monovalent):Fab抗MUC1(一価)、Control Fab:対照Fab、No Antibody:抗体なしを意味する。
【図6】MUC1が細胞の核に移行することの証拠となる写真を示す図である。MUC1 Fabを蛍光標識し(赤色)、次いでMUC1陽性細胞と共にインキュベートした。写真から、MUC1が最初は細胞表面上に均一に分散していることが示される。しかしながら、40分後にはMUC1は核内に集中している。比較のため、細胞をEEA1を認識する蛍光標識した抗体でも染色したが(緑色)、これは実験全体を通して細胞質中に均一に分散したままである。Aは0時点(time zero)で撮影した細胞の写真であり、Bは抗MUC1 Fabの添加の40分後に撮影した細胞の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願において、「a」及び「an」は、単一及び複数の対象の両方を指すように使用される。
【0016】
本明細書中で使用される場合、「MUC1活性を増大させる」とは、MUC1シグナル伝達を直接的又は間接的に増大させることを指し、MUC1受容体の二量化、さらにMUC1受容体の切断によるMUC1の産生の増大を含むが、これらに限定されない。MUC1活性は、MUC1受容体(さらに切断され、二量化される)の転写発現の増加によっても増大し得る。したがって、一態様では、MUC1活性はMUC1を二量化するエフェクター分子の活性の増大、又はMUC1を切断してMUC1を形成する切断分子の活性の増大、又はMUC1の発現の増加によって増大し得る。したがって、MUC1を二量化するリガンドの活性を増大させることが可能な任意の化学種又は生物種、MUC1を形成するMUC1切断酵素、又はMUC1の発現を増進する任意の転写活性化因子が、「MUC1活性を増大させる」種として包含される。
【0017】
本明細書中で使用される場合、「MUC1成長因子受容体」(MGFR)は、成長因子等の活性化リガンド、又は切断酵素等の修飾酵素と相互作用するMUC1受容体の部分を意味する機能定義である。MUC1のMGFR領域は、細胞表面に最も近い細胞外部分であり、下記に定義されるように、PSMGFRの大部分又は全てによって規定される。MGFRは、未修飾ペプチド、及び例えばリン酸化、グリコシル化等の酵素修飾を受けたペプチドの両方を含む。
【0018】
本明細書中で使用される場合、「MUC1成長因子受容体の一次配列」(PSMGFR)とは、場合によってはMGFRの大部分又は全て、並びにそのペプチド配列の機能的変異体及び断片を規定するペプチド配列を指す。PSMGFRは、配列番号6、並びに20個までの任意の整数値(すなわち1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個又は20個)のアミノ酸置換、及び/又は20個までの任意の整数値のアミノ酸付加若しくは欠失を、そのN末端及び/又はC末端に有する、その全ての機能的変異体及び断片として定義される。上記の文脈における「機能的変異体又は断片」とは、配列番号6のペプチドと特異的に結合するか、又は別の形で特異的に相互作用するリガンドと特異的に結合するか、又は別の形で(otherways)特異的に相互作用する能力を有するが、ペプチド分子が他の同一なペプチド分子と会合する(すなわち自己会合する)能力を有するほど、それら自身と同一な他のペプチド分子の同一な領域とは強く結合しない変異体又は断片を指す。配列番号(SEQ NO:)6のPSMGFRペプチドの機能的変異体であるPSMGFRの一例は配列番号8であり、-SRY-の代わりに-SPY-配列を含むことによって配列番号6とは異なる。
【0019】
本明細書中で使用される場合、「MUC1」とは、細胞外ドメインが本質的にPSMGFR(配列番号5)を含むようにN末端が切断されたMUC1タンパク質を指す。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「MUC1関連因子」とは、MUC1を修飾する、活性化する、その活性を調節する、又はその発現を調節する作用物質を指す。MUC1関連因子としては、MUC1受容体の二量化に影響を及ぼす、MUC1の産生を増大させる、MUC1受容体の切断を誘導する作用物質、MUC1受容体(さらに切断され、二量化される)の転写発現の増加によってMUC1の活性を増大させる作用物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「有効量」とは、有益な又は所望される臨床的又は生化学的な結果をもたらすのに十分な量である。有効量は一回又は複数回投与することができる。本発明の目的上、阻害剤化合物の有効量とは、細胞の多能性を誘導若しくは維持するか、又はMUC1を活性化するのに十分な量である。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「断片」又は「機能的誘導体」とは、天然のリガンド又は本発明の受容体の生物学的に活性なアミノ酸配列変異体及び断片、並びに有機誘導体化剤との反応によって得られた誘導体を含む共有結合修飾、翻訳後修飾、非タンパク性ポリマーを有する誘導体、及びイムノアドヘシンを指す。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「リガンド」とは、ポリペプチド等の分子に共有結合的又は一時的に、特異的に結合する任意の分子又は作用物質又は化合物を指す。或る特定の文脈で使用される場合、リガンドは抗体を含み得る。他の文脈では、「リガンド」は、MUC1に対する天然若しくは非天然のリガンド、又はMUC1若しくはMUC1に結合する切断酵素、又はMUC1に対する二量化リガンド等(これらに限定されない)といった別の分子によって高親和性で結合される分子を指す場合もある。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「特異的に結合する」という用語は、例えば抗原と免疫反応する抗体分子、又はMUC1と特異的に結合するNM23、又はMUC1に結合する抗体、又はMUC1若しくはMUC1に結合する切断酵素等の別のポリペプチドと反応する非抗体リガンドの間のような2つの分子間の選択的結合反応を指す。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」、「ポリヌクレオチドベクター」、「構築物」及び「ポリヌクレオチド構築物」は本明細書中で区別なく使用される。本発明のポリヌクレオチドベクターは、RNA、DNA、レトロウイルス外被に封入されたRNA、アデノウイルス外被に封入されたDNA、別のウイルス形態若しくはウイルス様形態(単純ヘルペス及びアデノ随伴ウイルス(AAV)等)に包まれたDNA、リポソームに封入されたDNA、ポリリシンと複合したDNA、合成ポリカチオン性分子と複合したDNA、ポリエチレングリコール(PEG)等の化合物と複合して分子を免疫学的に「遮蔽した」、及び/又は半減期を増大させたDNA、又は非ウイルスタンパク質に結合したDNAを含む(これらに限定されない)、幾つかの形態のいずれかであり得る。好ましくは、ポリヌクレオチドはDNAである。本明細書中で使用される場合、「DNA」は塩基A、T、C及びGだけでなく、メチル化ヌクレオチド、非荷電結合及びチオエート等のヌクレオチド間修飾、糖類似体の使用、並びにポリアミド等の修飾された及び/又は代替的な骨格構造等といった、それらの類似体又はそれらの塩基の修飾形態のいずれかも含む。
【配列表フリーテキスト】
【0026】
a、g、c、t以外のヌクレオチド記号の使用については、WIPO標準ST.25(付録2、表1)に記載される規則に従うが、ここでは、kはt又はgを表し、nはa、c、t又はgを表し、mはa又はcを表し、rはa又はgを表し、sはc又はgを表し、wはa又はtを表し、yはc又はtを表す。
MTPGTQSPFFLLLLLTVLTV VTGSGHASST PGGEKETSAT QRSSVPSSTE KNAVSMTSSV
LSSHSPGSGSSTTQGQDVTL APATEPASGS AATWGQDVTS VPVTRPALGS TTPPAHDVTS
APDNKPAPGSTAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS APDTRPAPGS TAPPAHGVTS
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ASGSASGSASTLVHNGTSAR ATTTPASKST PFSIPSHHSD TPTTLASHST KTDASSTHHS
SVPPLTSSNHSTSPQLSTGV SFFFLSFHIS NLQFNSSLED PSTDYYQELQ RDISEMFLQI
YKQGGFLGLSNIKFRPGSVV VQLTLAFREG TINVHDVETQ FNQYKTEAAS RYNLTISDVS
VSDVPFPFSAQSGAGVPGWG IALLVLVCVL VALAIVYLIA LAVCQCRRKN YGQLDIFPAR
DTYHPMSEYPTYHTHGRYVP PSSTDRSPYE KVSAGNGGSS LSYTNPAVAA ASANL(配列番号1)は、完全長MUC1受容体(ムチン1前駆体、Genbankアクセッション番号:P15941)を表す。
MTPGTQSPFFLLLLLTVLT(配列番号2)
MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVVTA(配列番号3)
MTPGTQSPFFLLLLLTVLTVVTG(配列番号4)
配列番号2、配列番号3及び配列番号4は、MUC1受容体及び短縮アイソフォームを細胞膜表面に対して指向付ける(directing)N末端MUC−1シグナル伝達配列を表す。配列番号2、配列番号3及び配列番号4の変異体によって示されるように、C末端で最大3個のアミノ酸残基が欠けている場合がある。
GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGAGVPGWGIALLVLVCVLVALAIVYLIALAVCQCRRKNYGQLDIFPARDTYHPMSEYPTYHTHGRYVPPSSTDRSPYEKVSAGNGGSSLSYTNPAVAAASANL(配列番号5)は、そのN末端にnat−PSMGFRを有し、完全長MUC1受容体の膜貫通配列及び細胞質配列を含む短縮MUC1受容体アイソフォームを表す。
GTINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号6)は、MUC1成長因子受容体の天然一次配列(「PSMGFR」の一例であるnat−PSMGFR)を表す。
TINVHDVETQFNQYKTEAASRYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号7)は、配列番号6のN末端に単一のアミノ酸欠失を有する、MUC1成長因子受容体の天然一次配列(「PSMGFR」の一例であるnat−PSMGFR)を表す)。
GTINVHDVETQFNQYKTEAASPYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号8)は、増進された安定性を有するMUC1成長因子受容体の天然一次配列の「SPY」機能的変異体(「PSMGFR」の一例であるvar−PSMGFR)を表す。
TINVHDVETQFNQYKTEAASPYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGA(配列番号9)は、配列番号8のC末端に単一のアミノ酸欠失を有する、増進された安定性を有するMUC1成長因子受容体の天然一次配列の「SPY」機能的変異体(「PSMGFR」の一例であるvar−PSMGFR)を表す)。
tgtcagtgccgccgaaagaactacgggcagctggacatctttccagcccgggatacctaccatcctatgagcgagtaccccacctaccacacccatgggcgctatgtgccccctagcagtaccgatcgtagcccctatgagaaggtttctgcaggtaacggtggcagcagcctctcttacacaaacccagcagtggcagccgcttctgccaacttg(配列番号10)は、MUC1細胞質ドメインのヌクレオチド配列を表す。
CQCRRKNYGQLDIFPARDTYHPMSEYPTYHTHGRYVPPSSTDRSPYEKVSAGNGGSSLSYTNPAVAAASANL(配列番号11)は、MUC1細胞質ドメインのアミノ酸配列を表す。
gagatcctgagacaatgaatcatagtgaaagattcgttttcattgcagagtggtatgatccaaatgcttcacttcttcgacgttatgagcttttattttacccaggggatggatctgttgaaatgcatgatgtaaagaatcatcgcacctttttaaagcggaccaaatatgataacctgcacttggaagatttatttataggcaacaaagtgaatgtcttttctcgacaactggtattaattgactatggggatcaatatacagctcgccagctgggcagtaggaaagaaaaaacgctagccctaattaaaccagatgcaatatcaaaggctggagaaataattgaaataataaacaaagctggatttactataaccaaactcaaaatgatgatgctttcaaggaaagaagcattggattttcatgtagatcaccagtcaagaccctttttcaatgagctgatccagtttattacaactggtcctattattgccatggagattttaagagatgatgctatatgtgaatggaaaagactgctgggacctgcaaactctggagtggcacgcacagatgcttctgaaagcattagagccctctttggaacagatggcataagaaatgcagcgcatggccctgattcttttgcttctgcggccagagaaatggagttgttttttccttcaagtggaggttgtgggccggcaaacactgctaaatttactaattgtacctgttgcattgttaaaccccatgctgtcagtgaaggtatgttgaatacactatattcagtacattttgttaataggagagcaatgtttattttcttgatgtactttatgtatagaaaataa(配列番号12)は、NME7のヌクレオチド配列(NME7:GENBANKアクセッション番号:AB209049)を表す。
IGNKVNVFSRQLVLIDYGDQYTARQLGSRKEKTLALIKPDAISKAGEIIEIINKAGFTITKLKMMMLSRKEALDFHVDHQSRPFFNELIQFITTGPIIAMEILRDDAICEWKRLLGPANSGVARTDASESLYSVHFVNRRAMFIFLMYFMY(配列番号13)は、NME7のアミノ酸配列(NME7:GENBANKアクセッション番号:AB209049)を表す。
atggtgctactgtctactttagggatcgtctttcaaggcgaggggcctcctatctcaagctgtgatacaggaaccatggccaactgtgagcgtaccttcattgcgatcaaaccagatggggtccagcggggtcttgtgggagagattatcaagcgttttgagcagaaaggattccgccttgttggtctgaaattcatgcaagcttccgaagatcttctcaaggaacactacgttgacctgaaggaccgtccattctttgccggcctggtgaaatacatgcactcagggccggtagttgccatggtctgggaggggctgaatgtggtgaagacgggccgagtcatgctcggggagaccaaccctgcagactccaagcctgggaccatccgtggagacttctgcatacaagttggcaggaacattatacatggcagtgattctgtggagagtgcagagaaggagatcggcttgtggtttcaccctgaggaactggtagattacacgagctgtgctcagaactggatctatgaatga(配列番号14)は、NM23−H1のヌクレオチド配列(NM23−H1:GENBANKアクセッション番号:AF487339)を表す。
MVLLSTLGIVFQGEGPPISSCDTGTMANCERTFIAIKPDGVQRGLVGEIIKRFEQKGFRLVGLKFMQASEDLLKEHYVDLKDRPFFAGLVKYMHSGPVVAMVWEGLNVVKTGRVMLGETNPADSKPGTIRGDFCIQVGRNIIHGSDSVESAEKEIGLWFHPEELVDYTSCAQNWIYE(配列番号15)は、NM23−H1のアミノ酸配列(NM23−H1:GENBANKアクセッション番号:AF487339)を表す。
atggtgctactgtctactttagggatcgtctttcaaggcgaggggcctcctatctcaagctgtgatacaggaaccatggccaactgtgagcgtaccttcattgcgatcaaaccagatggggtccagcggggtcttgtgggagagattatcaagcgttttgagcagaaaggattccgccttgttggtctgaaattcatgcaagcttccgaagatcttctcaaggaacactacgttgacctgaaggaccgtccattctttgccggcctggtgaaatacatgcactcagggccggtagttgccatggtctgggaggggctgaatgtggtgaagacgggccgagtcatgctcggggagaccaaccctgcagactccaagcctgggaccatccgtggagacttctgcatacaagttggcaggaacattatacatggcggtgattctgtggagagtgcagagaaggagatcggcttgtggtttcaccctgaggaactggtagattacacgagctgtgctcagaactggatctatgaatga(配列番号16)は、NM23−H1 S120G突然変異体のヌクレオチド配列(NM23−H1:GENBANKアクセッション番号:AF487339)を表す。
MVLLSTLGIVFQGEGPPISSCDTGTMANCERTFIAIKPDGVQRGLVGEIIKRFEQKGFRLVGLKFMQASEDLLKEHYVDLKDRPFFAGLVKYMHSGPVVAMVWEGLNVVKTGRVMLGETNPADSKPGTIRGDFCIQVGRNIIHGGDSVESAEKEIGLWFHPEELVDYTSCAQNWIYE(配列番号17)は、NM23−H1 S120G突然変異体のアミノ酸配列(NM23−H1:GENBANKアクセッション番号:AF487339)を表す。
atgtacaacatga tggagacgga gctgaagccg ccgggcccgc agcaaacttc
ggggggcggcggcggcaact ccaccgcggc ggcggccggc ggcaaccaga aaaacagccc
ggaccgcgtcaagcggccca tgaatgcctt catggtgtgg tcccgcgggc agcggcgcaa
gatggcccaggagaacccca agatgcacaa ctcggagatc agcaagcgcc tgggcgccga
gtggaaacttttgtcggaga cggagaagcg gccgttcatc gacgaggcta agcggctgcg
agcgctgcacatgaaggagc acccggatta taaataccgg ccccggcgga aaaccaagac
gctcatgaagaaggataagt acacgctgcc cggcgggctg ctggcccccg gcggcaatag
catggcgagcggggtcgggg tgggcgccgg cctgggcgcg ggcgtgaacc agcgcatgga
cagttacgcgcacatgaacg gctggagcaa cggcagctac agcatgatgc aggaccagct
gggctacccgcagcacccgg gcctcaatgc gcacggcgca gcgcagatgc agcccatgca
ccgctacgacgtgagcgccc tgcagtacaa ctccatgacc agctcgcaga cctacatgaa
cggctcgcccacctacagca tgtcctactc gcagcagggc acccctggca tggctcttgg
ctccatgggttcggtggtca agtccgaggc cagctccagc ccccctgtgg ttacctcttc
ctcccactccagggcgccct gccaggccgg ggacctccgg gacatgatca gcatgtatct
ccccggcgccgaggtgccgg aacccgccgc ccccagcaga cttcacatgt cccagcacta
ccagagcggcccggtgcccg gcacggccat taacggcaca ctgcccctct cacacatgtg
a(配列番号18)は、配列番号1ヒトSOX2のヌクレオチド配列(SOX2:GENBANKアクセッション番号:NM_003106)を表す。
MYNMMETELKPPGPQQTSGGGGGNSTAAAAGGNQKNSPDRVKRPMNAFMVWSRGQRRKMAQENPK
MHNSEISKRLGAEWKLLSETEKRPFIDEAKRLRALHMKEHPDYKYRPRRKTKTLMKKDKYTLPGG
LLAPGGNSMASGVGVGAGLGAGVNQRMDSYAHMNGWSNGSYSMMQDQLGYPQHPGLNAHGAAQMQ
PMHRYDVSALQYNSMTSSQTYMNGSPTYSMSYSQQGTPGMALGSMGSVVKSEASSSPPVVTSSSH
SRAPCQAGDLRDMISMYLPGAEVPEPAAPSRLHMSQHYQSGPVPGTAINGTLPLSHM(配列番号19)は、ヒトSOX2のアミノ酸配列(SOX2:GENBANKアクセッション番号:NM_003106)を表す。
atggcgggacacctggcttcagattttgccttctcgccccctccaggtggtggaggtgatgggccaggggggccggagccgggctgggttgatcctcggacctggctaagcttccaaggccctcctggagggccaggaatcgggccgggggttgggccaggctctgaggtgtgggggattcccccatgccccccgccgtatgagttctgtggggggatggcgtactgtgggccccaggttggagtggggctagtgccccaaggcggcttggagacctctcagcctgagggcgaagcaggagtcggggtggagagcaactccgatggggcctccccggagccctgcaccgtcacccctggtgccgtgaagctggagaaggagaagctggagcaaaacccggaggagtcccaggacatcaaagctctgcagaaagaactcgagcaatttgccaagctcctgaagcagaagaggatcaccctgggatatacacaggccgatgtggggctcaccctgggggttctatttgggaaggtattcagccaaacgaccatctgccgctttgaggctctgcagcttagcttcaagaacatgtgtaagctgcggcccttgctgcagaagtgggtggaggaagctgacaacaatgaaaatcttcaggagatatgcaaagcagaaaccctcgtgcaggcccgaaagagaaagcgaaccagtatcgagaaccgagtgagaggcaacctggagaatttgttcctgcagtgcccgaaacccacactgcagcagatcagccacatcgcccagcagcttgggctcgagaaggatgtggtccgagtgtggttctgtaaccggcgccagaagggcaagcgatcaagcagcgactatgcacaacgagaggattttgaggctgctgggtctcctttctcagggggaccagtgtcctttcctctggccccagggccccattttggtaccccaggctatgggagccctcacttcactgcactgtactcctcggtccctttccctgagggggaagcctttccccctgtctctgtcaccactctgggctctcccatgcattcaaactga(配列番号20)は、ヒトOCT4のヌクレオチド配列を表す。
MAGHLASDFAFSPPPGGGGDGPGGPEPGWVDPRTWLSFQGPPGGPGIGPGVGPGSEVWGIPPCPPPYEFCGGMAYCGPQVGVGLVPQGGLETSQPEGEAGVGVESNSDGASPEPCTVTPGAVKLEKEKLEQNPEESQDIKALQKELEQFAKLLKQKRITLGYTQADVGLTLGVLFGKVFSQTTICRFEALQLSFKNMCKLRPLLQKWVEEADNNENLQEICKAETLVQARKRKRTSIENRVRGNLENLFLQCPKPTLQQISHIAQQLGLEKDVVRVWFCNRRQKGKRSSSDYAQREDFEAAGSPFSGGPVSFPLAPGPHFGTPGYGSPHFTALYSSVPFPEGEAFPPVSVTTLGSPMHSN(配列番号21)は、ヒトOCT4のアミノ酸配列を表す。
atggccaacctggagcgcaccttcatcgccatcaagccggacggcgtgcagcgcggcctggtgggcgagatcatcaagcgcttcgagcagaagggattccgcctcgtggccatgaagttcctccgggcctctgaagaacacctgaagcagcactacattgacctgaaagaccgaccattcttccctgggctggtgaagtacatgaactcagggccggttgtggccatggtctgggaggggctgaacgtggtgaagacaggccgagtgatgcttggggagaccaatccagcagattcaaagccaggcaccattcgtggggacttctgcattcaggttggcaggaacatcattcatggcagtgattcagtaaaaagtgctgaaaaagaaatcagcctatggtttaagcctgaagaactggttgactacaagtcttgtgctcatgactgggtctatgaataa(配列番号22)は、NM23−H2のヌクレオチド配列(NM23−H2:GENBANKアクセッション番号:AK313448)を表す。
MANLERTFIAIKPDGVQRGLVGEIIKRFEQKGFRLVAMKFLRASEEHLKQHYIDLKDRPFFPGLVKYMNSGPVVAMVWEGLNVVKTGRVMLGETNPADSKPGTIRGDFCIQVGRNIIHGSDSVKSAEKEISLWFKPEELVDYKSCAHDWVYE(配列番号23)は、NM23−H2のアミノ酸配列(NM23−H2:GENBANKアクセッション番号:AK313448)を表す。
atggctgtcagcgacgcgctgctcccatctttctccacgttcgcgtctggcccggcgggaagggagaagacactgcgtcaagcaggtgccccgaataaccgctggcgggaggagctctcccacatgaagcgacttcccccagtgcttcccgccggcccctatgacctggcggcggcgaccgtggccacagacctggagagcgccggagccggtgcggcttgcggcggtagcaacctggcgcccctacctcggagagagaccgaggagttcaacgatctcctggacctggactttattctctccaattcgctgacccatcctccggagtcagtggccgccaccgtgtcctcgtcagcgtcagcctcctcttcgtcgtcgccgtcgagcagcggccctgccagcgcgccctccacctgcagcttcacctatccgatccgggccgggaacgacccgggcgtggcgccgggcggcacgggcggaggcctcctctatggcagggagtccgctccccctccgacggctcccttcaacctggcggacatcaacgacgtgagcccctcgggcggcttcgtggccgagctcctgcggccagaattggacccggtgtacattccgccgcagcagccgcagccgccaggtggcgggctgatgggcaagttcgtgctgaaggcgtcgctgagcgcccctggcagcgagtacggcagcccgtcggtcatcagcgtcacgaaaggcagccctgacggcagccacccggtggtggtggcgccctacaacggcgggccgccgcgcacgtgccccaagatcaagcaggaggcggtctcttcgtgcacccacttgggcgctggaccccctctcagcaatggccaccggccggctgcacacgacttccccctggggcggcagctccccagcaggactaccccgaccctgggtcttgaggaagtgctgagcagcagggactgtcaccctgccctgccgcttcctcccggcttccatccccacccggggcccaattacccatccttcctgcccgatcagatgcagccgcaagtcccgccgctccattaccaagagctcatgccacccggttcctgcatgccagaggagcccaagccaaagaggggaagacgatcgtggccccggaaaaggaccgccacccacacttgtgattacgcgggctgcggcaaaacctacacaaagagttcccatctcaaggcacacctgcgaacccacacaggtgagaaaccttaccactgtgactgggacggctgtggatggaaattcgcccgctcagatgaactgaccaggcactaccgtaaacacacggggcaccgcccgttccagtgccaaaaatgcgaccgagcattttccaggtcggaccacctcgccttacacatgaagaggcatttt(配列番号24)は、KLF4のヌクレオチド配列(KLF4:GENBANKアクセッション番号:AF022184)を表す。
MAVSDALLPSFSTFASGPAGREKTLRQAGAPNNRWREELSHMKRLPPVLPAGPYDLAAATVATDLESAGAGAACGGSNLAPLPRRETEEFNDLLDLDFILSNSLTHPPESVAATVSSSASASSSSSPSSSGPASAPSTCSFTYPIRAGNDPGVAPGGTGGGLLYGRESAPPPTAPFNLADINDVSPSGGFVAELLRPELDPVYIPPQQPQPPGGGLMGKFVLKASLSAPGSEYGSPSVISVTKGSPDGSHPVVVAPYNGGPPRTCPKIKQEAVSSCTHLGAGPPLSNGHRPAAHDFPLGRQLPSRTTPTLGLEEVLSSRDCHPALPLPPGFHPHPGPNYPSFLPDQMQPQVPPLHYQELMPPGSCMPEEPKPKRGRRSWPRKRTATHTCDYAGCGKTYTKSSHLKAHLRTHTGEKPYHCDWDGCGWKFARSDELTRHYRKHTGHRPFQCQKCDRAFSRSDHLALHMKR(配列番号25)は、KLF4のアミノ酸配列(KLF4:GENBANKアクセッション番号:AF022184)を表す。
atggatttttttcgggtagtggaaaaccagcagcctcccgcgacgatgcccctcaacgttagcttcaccaacaggaactatgacctcgactacgactcggtgcagccgtatttctactgcgacgaggaggagaacttctaccagcagcagcagcagagcgagctgcagcccccggcgcccagcgaggatatctggaagaaattcgagctgetgcccaccccgcccctgtcccctagccgccgctccgggctctgetcgccctcctacgttgcggtcacacccttctcccttcggggagacaacgacggcggtggcgggagcttctccacggccgaccagctggagatggtgaccgagctgctgggaggagacatggtgaaccagagtttcatctgcgacccggacgacgagaccttcatcaaaaacatcatcatccaggactgtatgtggagcggcttctcggccgccgccaagctcgtctcagagaagctggcctcctaccaggctgcgcgcaaagacagcggcagcccgaaccccgcccgcggccacagcgtctgctccacctccagcttgtacctgcaggatctgagcgccgccgcctcagagtgcatcgacccctcggtggtcttcccctaccctctcaacgacagcagctcgcccaagtcctgcgcctcgcaagactccagcgccttctctccgtcctcggattctctgctctcctcgacggagtcctccccgcagggcagccccgagcccctggtgctccatgaggagacaccgcccaccaccagcagcgactctgaggaggaacaagaagatgaggaagaaatcgatgttgtttctgtggaaaagaggcaggctcctggcaaaaggtcagagtctggatcaccttctgctggaggccacagcaaacctcctcacagcccactggtcctcaagaggtgccacgtctccacacatcagcacaactacgcagcgcctccctccactcggaaggactatcctgctgccaagagggtcaagttggacagtgtcagagtcctgagacagatcagcaacaaccgaaaatgcaccagccccaggtcctcggacaccgaggagaatgtcaagaggcgaacacacaacgtcttggagcgccagaggaggaacgagctaaaacggagcttttttgccctgcgtgaccagatcccggagttggaaaacaatgaaaaggcccccaaggtagttatccttaaaaaagccacagcatacatcctgtccgtccaagcagaggagcaaaagctcatttctgaagaggacttgttgcggaaacgacgagaacagttgaaacacaaacttgaacagctacggaactcttgtgcg(配列番号26)は、c−Mycのヌクレオチド配列(c−Myc:GENBANKアクセッション番号:BC000917)を表す。
MDFFRVVENQQPPATMPLNVSFTNRNYDLDYDSVQPYFYCDEEENFYQQQQQSELQPPAPSEDIWKKFELLPTPPLSPSRRSGLCSPSYVAVTPFSLRGDNDGGGGSFSTADQLEMVTELLGGDMVNQSFICDPDDETFIKNIIIQDCMWSGFSAAAKLVSEKLASYQAARKDSGSPNPARGHSVCSTSSLYLQDLSAAASECIDPSVVFPYPLNDSSSPKSCASQDSSAFSPSSDSLLSSTESSPQGSPEPLVLHEETPPTTSSDSEEEQEDEEEIDVVSVEKRQAPGKRSESGSPSAGGHSKPPHSPLVLKRCHVSTHQHNYAAPPSTRKDYPAAKRVKLDSVRVLRQISNNRKCTSPRSSDTEENVKRRTHNVLERQRRNELKRSFFALRDQIPELENNEKAPKVVILKKATAYILSVQAEEQKLISEEDLLRKRREQLKHKLEQLRNSCA(配列番号27)は、c−Mycのアミノ酸配列(c−Myc:GENBANKアクセッション番号:BC000917)を表す。
atgggctccgtgtccaaccagcagtttgcaggtggctgcgccaaggcggcagaagaggcgcccgaggaggcgccggaggacgcggcccgggcggcggacgagcctcagctgctgcacggtgcgggcatctgtaagtggttcaacgtgcgcatggggttcggcttcctgtccatgaccgcccgcgccggggtcgcgctcgaccccccagtggatgtctttgtgcaccagagtaagctgcacatggaagggttccggagcttgaaggagggtgaggcagtggagttcacctttaagaagtcagccaagggtctggaatccatccgtgtcaccggacctggtggagtattctgtattgggagtgagaggcggccaaaaggaaagagcatgcagaagcgcagatcaaaaggagacaggtgctacaactgtggaggtctagatcatcatgccaaggaatgcaagctgccaccccagcccaagaagtgccacttctgccagagcatcagccatatggtagcctcatgtccgctgaaggcccagcagggccctagtgcacagggaaagccaacctactttcgagaggaagaagaagaaatccacagccctaccctgctcccggaggcacagaa(配列番号28)は、LIN28のヌクレオチド配列(LIN28:GENBANKアクセッション番号:AF521099)を表す。
MGSVSNQQFAGGCAKAAEEAPEEAPEDAARAADEPQLLHGAGICKWFNVRMGFGFLSMTARAGVALDPPVDVFVHQSKLHMEGFRSLKEGEAVEFTFKKSAKGLESIRVTGPGGVFCIGSERRPKGKSMQKRRSKGDRCYNCGGLDHHAKECKLPPQPKKCHFCQSISHMVASCPLKAQQGPSAQGKPTYFREEEEEIHSPTLLPEAQN(配列番号29)は、LIN28のアミノ酸配列(LIN28:GENBANKアクセッション番号:AF521099)を表す。
atgtctcccgccccaagaccctcccgttgtctcctgctccccctgctcacgctcggcaccgcgctcgcctccctcggctcggcccaaagcagcagcttcagccccgaagcctggctacagcaatatggctacctgcctcccggggacctacgtacccacacacagcgctcaccccagtcactctcagcggccatcgctgccatgcagaagttttacggcttgcaagtaacaggcaaagctgatgcagacaccatgaaggccatgaggcgcccccgatgtggtgttccagacaagtttggggctgagatcaaggccaatgttcgaaggaagcgctacgccatccagggtctcaaatggcaacataatgaaatcactttctgcatccagaattacacccccaaggtgggcgagtatgccacatacgaggccattcgcaaggcgttccgcgtgtgggagagtgccacaccactgcgcttccgcgaggtgccctatgcctacatccgtgagggccatgagaagcaggccgacatcatgatcttctttgccgagggcttccatggcgacagcacgcccttcgatggtgagggcggcttcctggcccatgcctacttcccaggccccaacattggaggagacacccactttgactctgccgagccttggactgtcaggaatgaggatctgaatggaaatgacatcttcctggtggctgtgcacgagctgggccatgccctggggctcgagcattccagtgacccctcggccatcatggcacccttttaccagtggatggacacggagaattttgtgctgcccgatgatgaccgccggggcatccagcaactttatgggggtgagtcagggttccccaccaagatgccccctcaacccaggactacctcccggccttctgttcctgataaacccaaaaaccccacctatgggcccaacatctgtgacgggaactttgacaccgtggccatgctccgaggggagatgtttgtcttcaaggagcgctggttctggcgggtgaggaataaccaagtgatggatggatacccaatgcccattggccagttctggcggggcctgcctgcgtccatcaacactgcctacgagaggaaggatggcaaattcgtcttcttcaaaggagacaagcattgggtgtttgatgaggcgtccctggaacctggctaccccaagcacattaaggagctgggccgagggctgcctaccgacaagattgatgctgctctcttctggatgcccaatggaaagacctacttcttccgtggaaacaagtactaccgtttcaacgaagagctcagggcagtggatagcgagtaccccaagaacatcaaagtctgggaagggatccctgagtctcccagagggtcattcatgggcagcgatgaagtcttcacttacttctacaaggggaacaaatactggaaattcaacaaccagaagctgaaggtagaaccgggctaccccaagtcagccctgagggactggatgggctgcccatcgggaggccggccggatgaggggactgaggaggagacggaggtgatcatcattgaggtggacgaggagggcggcggggcggtgagcgcggctgccgtggtgctgcccgtgctgctgctgctcctggtgctggcggtgggccttgcagtcttcttcttcagacgccatgggacccccaggcgactgctctactgccagcgttccctgctggacaaggtc(配列番号30)は、MMP14のヌクレオチド配列(MMP14:GENBANKアクセッション番号:BC064803)を表す。
MSPAPRPSRCLLLPLLTLGTALASLGSAQSSSFSPEAWLQQYGYLPPGDLRTHTQRSPQSLSAAIAAMQKFYGLQVTGKADADTMKAMRRPRCGVPDKFGAEIKANVRRKRYAIQGLKWQHNEITFCIQNYTPKVGEYATYEAIRKAFRVWESATPLRFREVPYAYIREGHEKQADIMIFFAEGFHGDSTPFDGEYQWMDTENFVLPDDDRRGIQQLYGGESGFPTKMPPQPRTTSRPSVPDKPKNPTYGPNICDGNFDTVAMLRGEMFVFKERWFWRVRNNQVMDGYPMPIGQFWRGLPASINTAYERKDGKFVFFKGDKHWVFWEGIPESPRGSFMGSDEVFTYFYKGNKYWKFNNQKLKVEPGYPKSALRDWMGCPSGGRPDEGTEEETEVIIIEVDEEGGGAVSAAAVVLPVLLLLLVLAVGLAVFFFRRHGTPRRLLYCQRSLLDKV(配列番号31)は、MMP14のアミノ酸配列(MMP14:GENBANKアクセッション番号:BC064803)を表す。
atgatcttactcacattcagcactggaagacggttggatttcgtgcatcattcgggggtgtttttcttgcaaaccttgctttggattttatgtgctacagtctgcggaacggagcagtatttcaatgtggaggtttggttacaaaagtacggctaccttccaccgactgaccccagaatgtcagtgctgcgctctgcagagaccatgcagtctgccctagctgccatgcagcagttctatggcattaacatgacaggaaaagtggacagaaacacaattgactggatgaagaagccccgatgcggtgtacctgaccagacaagaggtagctccaaatttcatattcgtcgaaagcgatatgcattgacaggacagaaatggcagcacaagcacatcacttacagtataaagaacgtaactccaaaagtaggagaccctgagactcgtaaagctattcgccgtgcctttgatgtgtggcagaatgtaactcctctgacatttgaagaagttccctacagtgaattagaaaatggcaaacgtgatgtggatataaccattatttttgcatctggtttccatggggacagctctccctttgatggagagggaggatttttggcacatgcctacttccctggaccaggaattggaggagatacccattttgactcagatgagccatggacactaggaaatcctaatcatgatggaaatgacttatttcttgtagcagtccatgaactgggacatgctctgggattggagcattccaatgaccccactgccatcatggctccattttaccagtacatggaaacagacaacttcaaactacctaatgatgatttacagggcatccagaaaatatatggtccacctgacaagattcctccacctacaagacctctaccgacagtgcccccacaccgctctattcctccggctgacccaaggaaaaatgacaggccaaaacctcctcggcctccaaccggcagaccctcctatcccggagccaaacccaacatctgtgatgggaactttaacactctagctattcttcgtcgtgagatgtttgttttcaaggaccagtggttttggcgagtgagaaacaacagggtgatggatggatacccaatgcaaattacttacttctggcggggcttgcctcctagtatcgatgcagtttatgaaaatagcgacgggaattttgtgttctttaaaggtaacaaatattgggtgttcaaggatacaactcttcaacctggttaccctcatgacttgataacccttggaagtggaattccccctcatggtattgattcagccatttggtgggaggacgtcgggaaaacctatttcttcaagggagacagatattggagatatagtgaagaaatgaaaacaatggaccctggctatcccaagccaatcacagtctggaaagggatccctgaatctcctcagggagcatttgtacacaaagaaaatggctttacgtatttctacaaaggaaaggagtattggaaattcaacaaccagatactcaaggtagaacctggacatccaagatccatcctcaaggattttatgggctgtgatggaccaacagacagagttaaagaaggacacagcccaccagatgatgtagacattgtcatcaaactggacaacacagccagcactgtgaaagccatagctattgtcattccctgcatcttggccttatgcctccttgtattggtttacactgtgttccagttcaagaggaaaggaacaccccgccacatactgtactgtaaacgctctatgcaagagtgggtg(配列番号32)は、MMP16のヌクレオチド配列(MMP16:GENBANKアクセッション番号:AB009303)を表す。
MILLTFSTGRRLDFVHHSGVFFLQTLLWILCATVCGTEQYFNVEVWLQKYGYLPPTDPRMSVLRSAETMQSALAAMQQFYGINMTGKVDRNTIDWMKKPRCGVPDQTRGSSKFHIRRKRYALTGQKWQHKHITYSIKNVTPKVGDPETRKAIRRAFDVWQNVTPLTFEEVPYSELENGKRDVDITIIFASGFHGDSSPFDGEGGFLAHAYFPGPGIGGDTHFDSDEPWTLGNPNHDGNDLFLVAVHELGHALGLEHSNDPTAIMAPFYQYMETDNFKLPNDDLQGIQKIYGPPDKIPPPTRPLPTVPPHRSIPPADPRKNDRPKPPRPPTGRPSYPGAKPNICDGNFNTLAILRREMFVFKDQWFWRVRNNRVMDGYPMQITYFWRGLPPSIDAVYENSDGNFVFFKGNKYWVFKDTTLQPGYPHDLITLGSGIPPHGIDSAIWWEDVGKTYFFKGDRYWRYSEEMKTMDPGYPKPITVWKGIPESPQGAFVHKENGFTYFYKGKEYWKFNNQILKVEPGHPRSILKDFMGCDGPTDRVKEGHSPPDDVDIVIKLDNTASTVKAIAIVIPCILALCLLVLVYTVFQFKRKGTPRHILYCKRSMQEWV(配列番号33)は、MMP16のアミノ酸配列(MMP16:GENBANKアクセッション番号:AB009303)を表す。
【0027】
多能性の誘導
体細胞をリプログラムして、多能性状態へと戻すことができることが最近発見された。転写因子OCT4、SOX2、KLF4、NANOG、c−MYC及びLIN28をコードする遺伝子、又はタンパク質自体を体細胞に導入し、多能性状態へと戻すことができる。これらの多能性因子の多くは、以前は癌遺伝子であると考えられていた。c−Mycはよく知られた癌遺伝子であり、同様にKlf4は異形成を誘導することが示されている(非特許文献21)。OCT4は多能性幹細胞を同定する上で最も基準となるものとして同定されている。核内のOCT4の存在は細胞が多能性であることを示唆し、その欠如は細胞が分化過程に入っており、もはや任意の細胞型に分化可能でないことを示唆する。最近では、OCT4も同様に多くの癌細胞の核内に存在するが、正常な成熟細胞には存在しないことが知られるようになっている。本発明者らは、MUC1膜貫通タンパク質(配列番号1)の切断形態であるMUC1が、固形腫瘍癌のおよそ75%で発現される強力な成長因子受容体であり(Raina et al., 2009)、多能性幹細胞上でもこの「腫瘍形成」形態で発現される(Hikita et al., 2008)ことを最近発見した。本発明は、MUC1及びMUC1関連因子、並びにそれらを多能性の誘導若しくは維持のため、又は多能性誘導の効率を増進するために利用する方法に関する。
【0028】
本発明は、iPS細胞の生成を誘導するか、又はその効率を向上させるために、タンパク質因子、それらをコードする遺伝子、又はそれらの発現に影響を及ぼす小分子を含むMUC1関連因子を使用することを包含する。本発明者らは、MUC1膜貫通タンパク質の切断形態であるMUC1が、癌細胞及び多能性幹細胞の両方の成長を媒介する主要な成長因子受容体であることを示した。MUC1細胞外ドメインと、その活性化リガンドNM23との間の相互作用が中断されることは、多能性幹細胞にとって致死的であり(Hikita et al., 2008)、この経路が多能性にとって重要であることを示唆している。NM23はMUC1を活性化するリガンドである(Mahanta et al., 2008)(配列番号12〜配列番号17及び配列番号22〜配列番号23)。NM23は、分化を阻害する一方で多能性幹細胞の成長を刺激するその能力に加えて、c−Mycの転写を誘導することが示されている(Dexheimer atal., 2009)。したがって、NM23を多能性状態への変換が起きている細胞に添加することによって、c−Myc癌遺伝子をトランスフェクトし、関連する健康上のリスクを緩和するという利益がもたらされる。加えて、NM23又は二価抗MUC1抗体によってMUC1を刺激することで、MAPキナーゼ増殖経路が活性化され、それにより細胞生存が増大する(Mahanta et al., 2008)。NANOG発現は多能性を誘導し、腫瘍抑制遺伝子p53はNanog発現を抑制する(Lin et al., 2007)。したがって、p53を抑制することによって、多能性の誘導に対するNANOGの必要性が低減又は排除される。MUC1細胞質尾部(MUC10−CT)の異所的に発現される72アミノ酸の断片は、癌細胞の核内に存在し、そこでp53プロモーターに結合することが示されている(Wei et al., 2007)。配列番号11に示されるようなMUC1−CDのおよそ72アミノ酸の断片は、iPS細胞生成を誘導又は増進するために他の多能性誘導因子と組み合わせて使用することができる。しかしながら、このペプチドは天然のMUC1種とは一致せず、したがって望ましくない影響をもたらすおそれがある。本発明者らは、MUC1が核に移行し(実施例1及び実施例9、並びに図6)、したがってiPS細胞生成を誘導若しくは増進するために、単独で、又は他の多能性誘導因子と組み合わせて使用されることを開示する。このアプローチの裏付けとして、中核となる多能性遺伝子からの幾つかの遺伝子が、MUC1、その切断酵素及び/又はその活性化リガンドNM23の転写を調節することが報告されている(Boyer et al., 2005)。OCT4及びSOX2はMUC1プロモーターに結合し、その切断酵素MMP−14のプロモーターにも結合する。SOX2及びNANOGはNM23プロモーターに結合する。MUC1がhESCの維持にとって重要であり、重要な多能性遺伝子の標的であると仮定して、本発明者らはMUC1、又はMUC1のMUC1形態への切断を増大させる作用物質を、その活性化リガンドNM23と共に導入することを用いて、iPS細胞の生成を誘導又は増進するために以前に同定された多能性誘導因子の一部又は全てを置き換えることができることを開示する。
【0029】
本発明は、細胞において多能性を誘導するための、MUC1に関与する新規の試薬及び方法を開示する。これらの試薬及び方法は、体細胞又は成熟細胞において多能性を誘導するために使用される。本発明の別の態様では、これらの試薬及び方法は、成熟細胞における多能性誘導の効率を増大させるために使用される。本発明のさらに別の態様では、これらの試薬及び方法は、未熟細胞を未熟状態に維持するために使用される。本発明の別の態様では、これらの試薬及び方法は分化を阻害するために使用される。本発明の別の態様では、これらの試薬及び方法は、幹細胞を多能性状態に維持するために使用される。
【0030】
本発明は、成熟細胞、又は幾らか分化した細胞に、MUC1及びその関連因子の発現に影響を及ぼす遺伝子又は遺伝子産物を導入することによって、分化を元に戻すか、又は幹様特性を維持することを含む。MUC1は膜貫通タンパク質MUC1の切断形態である。MUC1関連因子としては、完全長MUC1、MUC1を切断する酵素、MUC1活性化リガンド、さらにはMUC1又はMUC1の発現に影響を及ぼす転写因子が挙げられるが、これらに限定されない。本発明は、MUC1又はMUC1関連因子の遺伝子又は遺伝子産物の成熟細胞又は幾らか分化した細胞への導入が、これらの細胞又はそれらの子孫において多能性又は幹細胞性を誘導することにも関する(drawn to)。本願は、幹細胞において多能性を維持するためのそれらの使用を説明する。MUC1又はMUC1関連因子の発現に影響を及ぼす作用物質は、OCT4、SOX2、KLF4、NANOG、c−myc及びLIN28等の多能性を誘導することが既に知られている1つ又は複数の遺伝子若しくは遺伝子産物と組み合わせて、又は置き換えて添加することができる。
【0031】
転写因子Oct4、Sox2、Klf4及びc−Mycの組み合わせ、又はOct4、Sox2、Nanog及びLin28の組み合わせの強制発現が、成熟細胞を多能性状態へと戻すことが示されている(非特許文献7)。多能性を誘導する転写因子は各々、十数個の遺伝子の転写を調節している。本発明者は、これらのうち幾つかをMUC1関連因子であると同定した。OCT4及びSOX2は、MUC1プロモーター自体に結合する。SOX2及びNANOGは、NM23(NME7)プロモーターに結合する。NM23(NMEとしても知られる)は以前、本発明者によってMUC1の活性化リガンドとして同定された(Mahanta et al., 2008)。NME7はMUC1の活性化リガンドである。OCT4及びSOX2はどちらも、本明細書中でMUC1の切断酵素であるとして開示しているMMP16のプロモーターに結合する。OCT4、SOX2又はNANOGは、切断酵素MMP2、MMP9、MMP10、ADAM TSL−1、ADAM TS−4、ADAM−17(MUC1切断酵素)、ADAM−TS16、ADAM−19及びADAM−28のプロモーター部位にも結合する。これらの切断酵素の一部又は全てを、多能性を誘導するか、又はそれを維持するために、MUC1のMUC1形態への切断を増進するように上方調節することができる(Boyer et al, 2005)。
【0032】
胚性幹細胞(MUC1の切断形態であるMUC1のみを発現する)を用いた本発明者らの以前の研究では、その細胞外ドメインの二量化によって、成長が刺激され、分化が阻害されることが示された(Hikita et al., 2008)。これらの効果は、MUC1細胞外ドメインを、二価抗MUC1抗体、組み換えNM23、又は優先的に二量体を形成する突然変異体NM23(S120G)のいずれかを用いて二量化することによって達成された(Kim et al., 2003)。一価抗MUC1 Fabを用いたMUC1細胞外ドメインの阻害は、数時間以内に死をもたらした。これらの発見から、MUC1が重要な「幹細胞性」因子であることが示唆される。また、OCT4及びSOX2は、MUC1遺伝子プロモーター、さらにはその切断酵素のプロモーターに結合する。SOX2及びNANOGは、NM23(NME7)プロモーターに結合する。MUC1の細胞外ドメインを遮断することはhESCにとって致死的であるため、多能性遺伝子OCT4、SOX2及びNANOGは、MUC1、その切断酵素及びその活性化リガンドの発現を誘導するということになる。既に多能性を誘導することが示されている遺伝子又は遺伝子産物の1つ又は複数は、単独で、又はその切断酵素及び/又は活性化リガンドNME7、NME−H1、NME−H2、又はMUC1若しくはMUC1のPSMGFRエピトープを二量化する抗体に加えて、MUC1の遺伝子をトランスフェクトするか、又はその遺伝子産物を導入することによって置き換えることができる。
【0033】
当業者にはよく知られているように、トランスフェクトされた遺伝子産物の局所化を指示するシグナル配列を、遺伝子に付加させることができる。シグナル配列の例は配列番号2〜配列番号4として与えられる。本発明は、MUC1のN末端ドメインを、これらの遺伝子又は遺伝子産物の効果を実質的に変化させることなく短縮するか、又は最大で9アミノ酸まで伸長させることができることを意図する。配列番号5として例示されるMUC1、及び細胞外ドメインが基本的に配列番号6、配列番号7、配列番号8及び配列番号9で与えられる配列から構成される変異体が好ましい。
【0034】
MUC1、MUC1又は上記で挙げたものを含む関連因子によって、多能性を誘導し、多能性を誘導するため又は多能性を維持するために使用される1つ又は複数の遺伝子又は遺伝子産物を置き換えることができる。
【0035】
線維芽細胞及び皮膚線維芽細胞等の体細胞に、幹細胞様特徴の誘導(場合によっては子孫が多能性幹細胞になるよう誘導する)を助けるMUC1タンパク質をコードする遺伝子をトランスフェクトする場合がある。本発明の別の態様では、MUC1の遺伝子を細胞にトランスフェクトして、幹細胞様状態への復帰を誘導する(場合によっては実際の多能性幹細胞を誘導する)。MUC1遺伝子又はMUC1遺伝子の各々を、細胞に単独で、又は多能性若しくは幹細胞様特性の誘導を助ける他の遺伝子と組み合わせて導入してもよい。例えば、MUC1、又は優先的にはMUC1をコードするDNAを、細胞にOCT4、SOX2、NANOG、LIN28、KLF4及び/又はc−Mycをコードする1つ又は複数の遺伝子と共に導入する。MUC1の短縮形態、優先的にはMUC1をコードするDNAを線維芽細胞に、OCT4、SOX2、NANOG及びLIN28をコードする遺伝子と共にトランスフェクトする(Yu et al., 2007)。別の実施形態では、MUC1の短縮形態、優先的にはMUC1をコードするDNAを体細胞、線維芽細胞又は他の細胞に、OCT4、SOX2、KLF4及びc−Mycをコードする遺伝子と共にトランスフェクトする(Takahashi et al., 2007)。同様に、MUC1及び/又はその活性化リガンドであるNM23、又はNM23のS120G突然変異体をコードするDNAを細胞にトランスフェクトして多能性を誘導する。MUC1及び/又はNM23は、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28、KLF4及び/又はc−Myc等の他の遺伝子と共にトランスフェクトして、多能性又は幹細胞様特性を誘導してもよい。MUC1又はMUC1を認識する抗体をコードするDNAを細胞に単独で、又は他の遺伝子と共にトランスフェクトして、細胞又はその子孫において幹細胞特性を誘導することもできる。抗MUC1抗体は分泌されると二量化し、それによりMUC1受容体、及び幹様特性を促進又は維持するその機能を活性化する。
【0036】
同様に、MUC1、MUC1又はそれらの関連因子の発現に影響を及ぼす核酸、タンパク質、修飾タンパク質又は小分子等の因子を細胞に導入して、幹細胞の特性を誘導するか、又は多能性への復帰を誘導する。例えば、MUC1切断酵素MMP14、MMp16、MMP2、MMP9、MMP10、ADAM TSL−1、ADAM TS−4、ADAM−17(MUC1切断酵素)、ADAM−TS16、ADAM−19及びADAM−28の遺伝子又は遺伝子産物を細胞に導入して、多能性又は同様の特性を誘導する。
【0037】
別の実施形態では、非タンパク質作用物質を細胞に添加して、多能性を誘導するか、又はその誘導を増進する。例えば、ホルボールエステルであるホルボール12−ミリステート13−アセテート(PMA)は、MUC1のMUC1への切断を増大させる小分子である(Thathiah et al., 2003)。本発明の一態様では、ホルボールエステルを多能性への変換が起きている細胞に添加して、iPS生成を誘導するか、又はその効率を増大させる。
【0038】
別の例では、MUC1又はMUC1と相互作用するリガンドを体細胞、皮膚線維芽細胞、線維芽細胞又は幾らか分化した細胞に、単独で、又は多能性を誘導若しくは維持する他の遺伝子と組み合わせて添加して多能性を誘導する。例えば、OCT4、SOX2、NANOG、LIN28、KLF4及び/又はc−Mycをコードする遺伝子の1つ又は複数を、線維芽細胞又は他の細胞にトランスフェクトした後、MUC1又はMUC1を活性化するリガンドの存在下で培養する。MUC1の二量体タンパク質リガンドが好ましい。好ましい実施形態では、二価抗MUC1抗体を、細胞又はその子孫が多能性幹細胞となるようにする遺伝子をトランスフェクトした細胞に添加する。
【0039】
好ましい実施形態では、NM23(NM23−H1、NM23−H2又はNME7)を、それをコードする遺伝子として、タンパク質自体として、又は細胞への侵入を容易にし、多能性の誘導若しくは維持を助けるポリアルギニントラクト等のリーダー配列を保有するタンパク質として細胞に導入する。本発明者らは、NM23が多能性幹細胞(及び癌細胞)によって分泌される場合、MUC1の切断形態(MUC1)の活性化リガンドであり、MAPキナーゼ増殖経路を誘発することを最近示した。NM23によるMUC1の刺激は、多能性hESCの成長を促進し、その分化を阻害することが示されてる(Hikita et al., 2008)。NM23はc−MYCの転写も誘導し(Dexheimerat al., 2009)、c−MYCの必要性をなくす。NM23は、MUC1成長因子受容体を活性化するその天然状態で、又は細胞及び核(そこでNM23はC−MYC発現を誘導する)への侵入を容易にするポリアルギニントラクトを有する状態で外部から添加する。NM23(NME)は、それをコードする核酸として、又は細胞への侵入を容易にする修飾を有するか、若しくは有しない発現されたタンパク質として添加してもよい。NME−H1、NME−H2又はNME−7は、その天然状態又は突然変異体形態(S120G突然変異等の二量体状態が好ましい)で使用することができる。
【0040】
本発明の別の態様では、MUC1の細胞外ドメイン(PSMGFR)に結合する二価抗体、又はNM23等の二量体MUC1リガンド、又はそれらをコードする遺伝子を、MUC1発現細胞に添加して、多能性を誘導するか、多能性誘導の効率を増大させるか、多能性を維持するか、又は分化を阻害する。これらのMUC1又はMUC1と相互作用するタンパク質が添加される細胞は、天然の細胞、又は幹細胞様特性を誘導する遺伝子を添加した細胞、又は既に分化過程に入った細胞であっても、又は幹細胞であってもよい。
【0041】
多能性を誘導する遺伝子を、同じか又は異なるプラスミド(レンチウイルスベクター、又はアデノウイルスベクター、又は任意の組込み型若しくは非組込み型ウイルスベクター又は非ウイルスベクター、又はこれらの遺伝子の所望の細胞への導入を容易にする他の任意の系であり得る)に導入してもよい。
【0042】
多くの場合、優先的には、多能性誘導タンパク質の効果を、それらをコードする核酸又は遺伝子ではなくタンパク質自体を導入することによって達成する。本発明は、遺伝子産物、タンパク質(天然状態であるか、又は細胞への侵入を可能にするポリアルギニントラクト等のリーダー配列によって修飾されている)によって置き換えることのできる、幹様特性又は多能性の誘導に関してここで開示される遺伝子を包含する。これらの遺伝子の産物、すなわちタンパク質、又はトランスフェクトされた遺伝子の産物の1つ又は複数と相互作用する他のタンパク質を細胞に導入して、多能性又は他の幹細胞様特性を誘導又は維持する。
【0043】
他の場合では、成熟細胞又は分化細胞において、小分子等の合成作用物質を導入して、幹細胞性を誘導することが有益であり得る(非特許文献23)。本発明の一態様では、小分子を細胞に添加して、多能性を誘導する遺伝子の転写を直接的又は間接的に誘導する。他の場合では、MUC1の産生を直接的又は間接的に増大させる小分子を添加する。一例では、これらの小分子は、幹細胞に特徴的なMUC1のMUC1形態への切断を増大させる。例えば、ホルボールエステルは、MUC1のMUC1への切断を増大させる小分子であるため、細胞に添加されると、MUC1を生成することによって多能性状態の誘導又は維持を促進する。
【0044】
腫瘍抑制遺伝子としても知られるp53は、アポトーシスを促進する。したがって、幹細胞を培養するか、又は体細胞若しくは他の細胞において多能性を誘導する場合、p53を阻害することが有利であり得る。本発明では、幹細胞性を維持するか、又は幹様特性若しくは多能性特性を誘導するために、p53抑制遺伝子を本発明の他の試薬及び方法と共に用いることが予想される。p53は多数の方法によって抑制することができる。ピフィスリン−μ等の小分子は、p53のアポトーシス促進効果を阻害するため(Strom, et al., 2006 Sep、Komarov, et al.,1999)、多能性誘導の効率を増大させるか、又は幹細胞性を維持するために細胞に任意で添加される。好ましい実施形態では、p53阻害剤は、MUC1又はMUC1を上方調節する遺伝子又は遺伝子産物(MUC1又はMUC1遺伝子又は遺伝子産物、それらの活性化リガンド及びそれらの切断酵素を含むが、これらに限定されない)と共に使用される。
【0045】
多能性の誘導又は幹細胞性の維持の効率を増大させるためにp53活性を抑制する別の方法は、MUC1タンパク質を細胞培養物に導入することである。MUC1タンパク質は、細胞への侵入を容易にするポリアルギニントラクトを追加することによって修飾することができる。MUC1の細胞質尾部(MUC1−CD)の過剰発現は単独で、核へのその移行(そこでp53プロモーターと結合することが分かった)をもたらすことが報告されている。これらの研究では、MUC1−CDがp53を下方制御するか、又は上方調節するかは決定することができなかった。本発明は、多能性又は他の幹様特性の誘導の効率を増大させるためのMUC1の異所性発現によるp53の抑制にも関する。MUC1は、遺伝子を細胞に挿入するか、タンパク質自体を外から添加するか、又はポリアルギニントラクトによって任意で修飾されたMUC1タンパク質を添加することによって導入することができる。
【0046】
本発明は、本明細書中に記載される具体的な実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際、本明細書中に記載される実施形態に加えて、本発明の様々な変更形態が、以上の記載及び添付の図面から当業者に明らかとなる。かかる変更形態は、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。以下の実施例は限定としてではなく、本発明の例示として与えられる。
【実施例】
【0047】
実施例1.MUC1は成長及び細胞死抵抗性を促進する。
MUC1は、線維芽細胞のクローン性成長(コロニー拡大)を促進する。完全長MUC1(配列番号1)、MUC11110(配列番号5)又は空ベクターをトランスフェクトした3Y1細胞の単一細胞クローンを、10%ウシ胎仔血清、ペニシリン/ストレプトマイシン及びG418(600μg/ml)を含有するDMEM培地中に、60mm皿当たり1000個の細胞でプレーティングした。細胞を9日間増殖させた後、4%パラホルムアルデヒドで室温で15分間固定した。皿を水で洗浄した後、70%メタノール中1%クリスタルバイオレットで室温で20分間染色した。皿を水で3回洗浄し、室温で一晩乾燥させて、写真に撮った。図1Aから、吸収されるクリスタルバイオレットの量(細胞数の指標)は、MUC1単一細胞クローン#3及び#44を増殖させる場合にはるかに高いことが示される。対照的に、完全長MUC1をトランスフェクトした細胞(単一細胞クローン#8及び#17)は、空ベクターをトランスフェクトした細胞に対して成長速度の増大を示さなかった。このことから、切断形態のMUC1は成長及び/又は生存の利点を有するが、完全長タンパク質は有しないことが示される。
【0048】
実施例2.抗MUC1 Fabは、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))抵抗性細胞(1ug/mlのHERCEPTIN(登録商標)中での培養によって抵抗性にされた)において、TAXOL(登録商標)による細胞死に対する抵抗性を遮断する。
Fessler et al., 2009は、HERCEPTIN(登録商標)抵抗性細胞がTAXOL(登録商標)、ドキソルビシン及びシクロホスファミドに対しても抵抗性であることを報告している。報告されているように、これらの薬物抵抗性癌細胞はMUC1を過剰発現することによって抵抗性を得る。以下の実験から、MUC1細胞外ドメインのPSMGFR部分を遮断することによって、癌細胞において獲得された薬物抵抗性が取り消されることが示された。親細胞(BT474)又は抵抗性細胞(BTRes1)を、96ウェルプレート(4ウェル/条件)において、10000細胞/ウェルの密度でプレーティングした。翌日、TAXOL(登録商標)(パクリタキセル、Sigma、T7191)の存在下又は非存在下で、細胞に抗MUC1 Fab、対照Fabを添加したか、又はFabを添加しなかった。2日後、細胞を50μlのトリプシン中に再懸濁し、トリパンブルーの存在下で計数した。細胞死率をトリパンブルー取り込み率として算出した。BT474細胞は、各々の条件下でTAXOL(登録商標)に応答して細胞死を起こし、BTRes1細胞はMUC1抗体の存在下でのみ細胞死を起こした(図1B)。
【0049】
実施例3.MUC1は成長因子受容体として働き、人工抗体(抗MUC1抗体)又はその天然リガンドであるNM23(NME)を用いたその細胞外ドメインの二量化によって活性化される。
MUC1陽性ZR−75−30細胞(6000個/ウェル)、又は対照(MUC1陰性)HEK293細胞(4000個/ウェル)を、96ウェルプレートにプレーティングした。翌日、0時間の細胞数を数え、24時間又は48時間毎に種々の濃度の抗MUC1抗体又はFabを低(0.1%)血清培地に添加した。数日間のインキュベーションの後、細胞をトリプシン中に再懸濁し、計数して、正規化成長率を算出した。ZR−75−30細胞の刺激は、リガンド誘導性成長刺激について実証されているように、釣鐘型曲線を示したが、HEK293細胞は示さなかった(図1C)。MUC1を標的とするsiRNA、又は対照siRNAを安定にトランスフェクトしたMUC1陽性T47D乳癌細胞を用いた同様の実験では、成長の刺激は対照をトランスフェクトした細胞でしか起こらず、抗体の特異性がさらに実証される(図1D)。同一の結果が、MUC1の天然リガンドであるNM23についても実証されている(図1E)。
【0050】
実施例4.NM23は、基本的にMUC1の細胞外ドメインから構成されるPSMGFRペプチドに特異的に結合する。
結合を、Biacore3000装置及びBiaEvaluationソフトウェアを用いて、表面プラズモン共鳴によって測定した。ヒスチジンタグ付きMUC11110−ecd(配列番号5)又は無関係のペプチド(HHHHHH-SSSSGSSSSGSSSSGGRGDSGRGDS(配列番号34))を、Mahantaet al. 2008に記載されるように、本発明者らの研究室で作製した5.7%NTA−Ni++ SAMでコートしたSPRチップの別個のフローチャネルに固定化した。精製したウシ又は組み換えヒトNM23の35μLのプラグを5uL/分という一定流量(flow stream)で注入し、センサーグラム(sensograms)を記録した。ウシ肝臓から精製したNM23(Sigma、N−2635)を、PBS単独で希釈した。親和性を、1:1ラングミュアモデルを用いて広範囲の濃度にわたって測定した。一次速度式ではこの系を適切に表すことができないため、実際の親和性は変わることがある(図1F)。
【0051】
実施例5.MUC1成長因子受容体及びそのリガンドNM23は、未分化hESC上に存在するが、分化hESC上には存在しない。
未分化(多能性)状態又は分化したばかりの状態のヒト胚性幹細胞を、免疫細胞化学(ICC)によって分析した。ヒト胚性幹細胞(hESC)を手で解離させ(dissected)、マトリゲルでプレコートした8ウェルチャンバースライド(Nunc)にプレーティングした。未分化細胞については、細胞をプレーティングの5日後〜7日後に固定した。分化細胞については、プレーティングの5日後〜7日後にbFGFを培養培地から除去して、細胞を14日間分化させた後、固定した。細胞はPBSで洗浄してから、0.1Mカコジル酸緩衝液中4%パラホルムアルデヒドで、4℃で15分間固定した。細胞を、PBS中1%BSA及び1%ロバ又はヤギ血清で1時間ブロッキングした。0.1%NP−40を細胞内抗原に対する抗体として使用した。一次抗体をブロッキングバッファー(block)で希釈し、細胞と共に4℃で1時間インキュベートした。以下のタンパク質に対する一次抗体を使用した:OCT4(Santa Cruz、Clone Clones H−134及びC−10、100倍希釈)、完全長MUC1(VU4H5、Santa Cruz Biotechnology、50倍希釈)、MUC1(Minerva、250倍希釈)又はNM23(Santa Cruz、Clone NM301、100倍希釈))。細胞をPBSで5分間、3回洗浄した後、以下の二次抗体と共に30分間インキュベートした:AlexaFluor 488ヤギ抗ウサギIgG、AlexaFluor 555ヤギ抗マウスIgG、AlexaFluor 350ヤギ抗ウサギIgG(Invitrogen、200倍);ヤギ抗マウスIgM−TR(Santa Cruz、100倍)。細胞をPBSで5分間、3回洗浄した後、退色防止封入剤(anti-fade mounting medium)(Biomeda)を用いてカバースリップを載せた。5分間のDAPI染色(1μg/ml)によって核を可視化した。免疫染色した細胞を、OlympusのBX−51落射蛍光顕微鏡上で可視化した。これらの実験の結果から、MUC1は未分化細胞(多能性幹細胞)の表面上に存在するが(図2A、図3B、図3C)、分化hESC上には存在しない(図2D)ことが示される。図3から、MUC1のリガンドであるNM23はMUC1と共局在化することが示される(図3A〜図3C)。MUC1及びそのリガンドであるNM23は、多能性幹細胞(OCT4陽性細胞)上でしか発現されず、分化した細胞上では発現されない(図3C及び図3F)(DAPIによってOCT4陰性細胞の核が染色される)。
【0052】
実施例6.MUC1は多能性幹細胞の成長を媒介する。
二価抗MUC1を用いたMUC1の刺激の多能性幹細胞に対する効果を決定するために、以下の実験を行った。結果から、MUC1を二量化するリガンドの添加によって、多能性(OCT4陽性)幹細胞の成長が刺激され、フィーダー細胞、その抽出物又はbFGFの非存在下でのその成長も可能となることが示される。
【0053】
多能性(OCT4陽性)hESCの長期的成長は、MUC1の刺激によって媒介される。hESCをトリプシン解離して、マトリゲルでプレコートした8ウェルチャンバースライドに4×10細胞/ウェルで播種した。培地を交換し、個々のコロニーが見えるようになるまで、抗体を二価抗MUC1に対する最終濃度1μg/mlで一日おきに添加した。培養条件には、bFGFを添加した及びbFGFを添加していない、「最小幹細胞培地」(フィーダー馴化培地を含まないhESC培地)及びHs27馴化培地が含まれる。各々の条件について細胞を4連で(in quadruplicate)増殖させた。細胞をPBSで洗浄し、固定して、上記のようにOCT4免疫染色を行った。図4のパネルA〜パネルDは、線維芽細胞フィーダー細胞からの馴化培地を添加したマトリゲル上で増殖させた細胞の写真である。パネルE〜パネルHは、線維芽細胞フィーダー細胞からの馴化培地を添加しなかったマトリゲル上で増殖させた細胞の写真である。抗MUC1抗体の細胞培養物への添加(図4C、図4D)は、bFGFを添加したものの成長(図4A、図4B)と比べて、より多くの多能性幹細胞を生じた。線維芽細胞フィーダー細胞からの馴化培地の非存在下で培養した細胞への抗MUC1抗体の添加(図4G、図4H)は、多能性細胞を生じなかった(OCT4の非存在)bFGFを添加して増殖させた細胞(図4E、図4F)とは全く対照的に、豊富な多能性幹細胞を生じた。
【0054】
実施例7.MUC1刺激の多能性幹細胞の成長を増進する効果を、定量的カルセインアッセイにおいて直接測定した。
ヒト胚性幹細胞(hESC)を手で解離させ、96ウェルプレートのマトリゲルコートウェル上で1.9×10細胞/ウェルの密度で増殖させた。培養培地は、30%Hs27馴化培地を添加したhESC培地及び4ng/mlのbFGFを含有していた。抗体を、二価抗MUC1については1μg/ml、一価抗MUC1については100μg/mlの最終濃度で添加した。実験は3連で(in triplicate)行った。抗体処理の41時間後、LIVE/DEAD生存率/細胞毒性キット(Molecular Probes)を用いて、製造業者の使用説明書に従って、生細胞及び死細胞を定量化した。Victor3Vプレートリーダー(Perkin Elmer)を用いて蛍光を測定した。図5の棒グラフから、二量化リガンド(抗MUC1)を用いたMUC1*の刺激は、幹細胞成長を増進し、一方で抗MUC1 FabによりMUC1の細胞外ドメインを遮断し、全幹細胞死をもたらすことが示される。
【0055】
実施例8.二価抗MUC1抗体、NM23、NM23突然変異体又はbFGFを用いた幹細胞成長の刺激の効果を比較するために、長期的幹細胞成長実験を行った。
hESCをトリプシンで解離させ、マトリゲルでプレコートした8ウェルチャンバースライドに、8.2×10細胞/ウェルの細胞密度で播種した。培地を交換し、抗体又は野生型若しくは突然変異体NM23タンパク質を、抗MUC1抗体については80ng/ml、野生型組み換えNM23若しくは突然変異体(S120G)NM23については1nMの最終濃度で、又は組み換えbFGFを「最小幹細胞培地」(フィーダー馴化培地を含まないhESC培地)中4ng/mlの最終濃度で一日おきに添加した。対照として、Hs27線維芽細胞からの30%馴化培地及び4ng/mlの組み換えbFGF(Peprotech、#100−18B)を含む最小幹細胞培地において、細胞を同様に増殖させた。この実験の結果から、MUC1リガンドが、マトリゲル上のこれらの細胞の「正常」増殖培地である馴化培地+bFGFと比べて、最小培地における多能性コロニーの成長をより良く刺激することが示される。表1に結果を詳述する。
【0056】
表1.最小培地において4週間培養したhESC

増殖条件 最初にコロニーが コロニー数 形態
現れた週
最小幹細胞増殖培地
NM23
1nM 2週目 2つのコロニー 説明A参照

NM23−
S120G
突然変異体
1nM 2週目 7つのコロニー 説明B参照

抗MUC1
80ng/ml 2週目 5つのコロニー 説明C参照

bFGF
4ng/ml − 0 説明D参照

なし 2週目 2つのコロニー 説明E参照

対照 Hs27線維芽フィーダー細胞からの30%馴化培地
bFGF
4ng/ml 2週目 5 説明F参照

説明A:2つのウェルの一方において2つの大きな未分化のコロニー;3週目にコロニーの中心が分化し始めるように見える;4週目の終わりには、各コロニーの大部分が未分化のままである
説明B:2つのウェルの一方において7つの大きな未分化のコロニー;3週目にコロニーの中心が分化し始めるように見える;4週目の終わりには、各コロニーの大部分が未分化のままである
説明C:2つのウェルの一方において5つの大きな未分化のコロニー;3週目にコロニーの中心が分化し始めるように見える;4週目の終わりには、各コロニーの大部分が未分化のままである
説明D:コロニーなし
説明E:2つの非常に小さな分化したコロニー
説明F:5つのほとんど分化したコロニー
【0057】
実施例9.MUC1は細胞の核に移行する。
抗MUC1モノクローナルAbを、Alexa 555色素によってin vitroで標識し、MUC1をトランスフェクトしたHCT−116細胞(MUC1陰性)(冷PBSで4℃で洗浄した)に4℃で結合させた。20分後、細胞を冷PBSで2回洗浄し、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定するか、又は予熱した(pre-warmed)増殖培地を用いてインキュベートした。40分後、細胞を洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで5分間固定した後、ブロッキングし、PBS中2.5%BSA、2.5%FBS及び0.1%NP−40で透過化処理した。抗EEA1抗体(Cell Signaling Technologies、2411S)及びAlexa 488(Invitrogen、200倍)を用いてエンドソームを染色した(図6)。
【0058】
実施例10.MUC1は核に移行し、そこで転写因子又は補因子として機能する。
MUC1の細胞質ドメイン(MUC1−CD)に相当する、人工的に発現させたペプチドが核に移行することが科学文献において以前に報告されている(Huang, et al. 2005)。別の研究では、MUC1−CDがp53のプロモーター部位に結合することが報告されている(Wei, et al. 2007)。しかしながら、Wei, et al., 2007の報告では、この能力に関して、MUC1−CDがp53の転写を上方調節するか、又は下方制御するかは決定されていない。幹細胞性又は多能性を誘導又は維持するためには、p53を抑制するのが望ましい(Maimets, et al., 2008)。さらに、MUC1の細胞質ドメイン単独の強制発現は、MUC1のいかなる天然状態又は切断状態にも一致しない。したがって、本発明者らは、これが実際に核に移行する多能性のマーカーであるMUC1であるか否かを決定しようとした。
【0059】
MUC1上のPSMGFRエピトープを認識するが、MUC1が完全長である場合には同じエピトープを認識しない(Mahanta et al 2008)ポリクローナル抗体である抗MUC1を使用して、ヒト胚性幹細胞をHikita et al (2008)の方法に従って染色した。胚性幹細胞は、MUC1を排他的に発現し、完全長MUC1を発現しない。免疫細胞化学によって、MUC1が胚性幹細胞の核内で検出されることが多いことが示された。蛍光標識した(tagged)抗MUC1 Fabフラグメントを、MUC1又は空ベクターをトランスフェクトした細胞と共にインキュベートした。過剰のFabを除去し、細胞をPBSで4℃で洗浄してパラホルムアルデヒドで固定するか、又は受容体内在化を促すために予熱した培地を用いて37℃で10分間、25分間若しくは40分間インキュベートした後、パラホルムアルデヒド固定した。様々な時点で細胞を4℃にし、受容体内在化を停止させた。FabはMUC1をトランスフェクトした細胞に特異的に結合したが、ベクターをトランスフェクトした細胞には結合しなかった(データは示さない)。図6では、40分後にMUC1が細胞の核に移行したことが示される。
【0060】
実施例11.MUC1関連因子を用いて、p53並びにそのアポトーシス促進効果及び成長阻害効果を阻害し、iPS(人工多能性幹)細胞を生成する効率を増大させる。
小分子Nutlinは、p53とその天然阻害剤hDM2との間の相互作用を妨げることによってp53の活性を増大させる(Vassilev et al., 2004)。Nutlinによるp53活性の誘導は、ヒト胚性幹細胞の分化を推進する(Maimets, et al., 2008)。同様に、胚性幹細胞におけるp53の過剰発現は、おそらくはアポトーシスの誘導によってhESCの成長を阻害する(Maimets, et al., 2008)。p53欠損マウスでは、原発腫瘍の形成(establishment)が増進された(Zhou et al., 2000)。このため、p53活性を妨げることによって、iPS細胞株を樹立する効率が増大する。
【0061】
「中核となる」多能性遺伝子OCT4、SOX2及びKLF4を用いた新規のiPS株の樹立において、多能性の誘導は、初めにp53を小分子Nutlinによって阻害し、次いでMUC1を導入することで増進される。MUC1は、1)MUC1をコードするDNAをトランスフェクトすること、及びb)効率的に細胞に侵入するようポリアルギニントラクトによって修飾された組み換えMUC1タンパク質を添加することによって、多能性の誘導が起きている細胞に導入する。
【0062】
中核となる多能性遺伝子を皮膚線維芽細胞にトランスフェクトした。しかしながら、皮膚線維芽細胞又は他の成熟細胞への直接的又は間接的な遺伝子産物の外因性発現も予想される。本発明では、MUC1、MUC1又は関連因子の添加によって、中核となる多能性因子の一部又は全部が除外され得ることも予想される。
【0063】
多能性の誘導は、MUC1の細胞質尾部に相当するペプチドを、多能性への変換が起きている細胞に外部から添加した場合にも増進される。任意で、MUC1−CDを、ペプチドが細胞に侵入することを可能にするポリアルギニントラクト等のリーダー配列で修飾する。
【0064】
実施例12.MUC1関連タンパク質の導入は、c−mycの転写を誘導すること及びMUC1を活性化することによって多能性を増進する。
c−Mycは多能性の誘導を増進することが示されている。NM23はc−mycの転写を誘導し(Dexheimer et al., 2009)、c−mycの必要性をなくす。NM23を、それをコードする核酸のトランスフェクションによって、又はタンパク質自体(細胞侵入を助けるポリアルギニントラクト等の配列で修飾してもよい)を外部から添加することによって、iPSへの変換が起きている細胞に導入する。NM23の野生型又は突然変異体(S120G)(二量体形態が好ましい)を、OCT4、SOX2及びKLF4をトランスフェクトした皮膚線維芽細胞に添加する。iPS細胞生成の効率が増進される。
【0065】
NM23(NME−H1、NME−H2又はNME−7)は、多能性の誘導又は維持を増進する。NM23は、以前に同定された多能性因子(OCT4、SOX2、KLF4を含むが、これらに限定されない)、及び本明細書中で開示される他の因子と共に導入される。
【0066】
実施例13.MUC1関連因子を含む、新たな中核となる多能性因子の同定
多能性を誘導若しくは維持するか、又はiPSc形成の効率を向上させるか、又はOCT4、SOX2、KLF4から構成される多能性遺伝子セットの1つ又は複数を置き換えるために、MUC1を細胞に導入する。MUC1をコードする核酸を含有するDNA構築物を、上述の多能性遺伝子セット(又はそれらの遺伝子産物)の組み合わせと共に皮膚線維芽細胞にトランスフェクトする。iPSコロニー形成の効率を、生成された幹細胞の数を計数することによって決定する。さらに、細胞をOCT4、SSEA1、SSEA3、SSEA4、TRA 1−60、TRA 1−81、TRA 2−49/6E(アルカリホスファターゼ)及びNANOG等の多能性マーカーの免疫蛍光検出によって分析する。得られた細胞を核型安定性、及び3つの異なる生殖細胞系列(中胚葉、内胚葉及び外胚葉)に沿って分化する能力について評価する。これは、中胚葉検出についてはCD34又は平滑筋アクチン、内胚葉検出についてはGATA−4又はサイトケラチン19、外胚葉検出についてはネスチン又はβIIIチューブリン等といった生殖細胞系列特異的マーカーに対する抗体を用いた免疫蛍光検出によって決定する。MUC1活性化リガンド、好ましくは抗MUC1抗体又はNM23(NME)を任意で添加して、多能性の誘導又は維持をさらに増進する。
【0067】
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Zhou et al. Cell Stem Cell 4, 381-384 (2009)
【0068】
本明細書において引用されている引用文献は全て、その全体が参照により援用される。
【0069】
当業者であれば、日常的な実験しか用いなくても、本明細書において具体的に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又は確かめることができる。かかる均等物は特許請求の範囲内に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞において多能性を誘導又は維持する方法であって、前記細胞を、MUC1活性を増大させる生物種又は化学種と接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記生物種が遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物種がタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記タンパク質がMUC1リガンドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記リガンドがNM23である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記タンパク質がMUC1のPSMGFR配列を認識する抗体である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記化学種が小分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記小分子がMUC1、その切断酵素又はNM23の転写を増進する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記切断酵素がMMP−16、MMP−14又はADAM−17である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記小分子がMUC1の切断を増進する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記小分子がホルボールエステルである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子がMUC1をコードする、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子がMUC1をコードする、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子がMUC1のリガンドをコードする、請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記リガンドがMUC1抗体又はNM23である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質がMUC1又はその有効フラグメントである、請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記フラグメントが細胞質尾部である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞を、多能性を誘導する遺伝子産物の発現を増大させる分子と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記分子がOCT4、SOX2、NANOG、KLF4又はLIN28の発現を増大させる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記分子がOCT4及びSOX2の発現を増大させる、請求項19に記載の方法。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−505636(P2012−505636A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531235(P2011−531235)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060272
【国際公開番号】WO2010/042891
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(507081094)ミネルバ バイオテクノロジーズ コーポレーション (4)
【出願人】(311017935)
【Fターム(参考)】