説明

細胞を培養するためのシステムおよび方法

本発明は、多層細胞工場に物質を取り込む方法に関する。物質は、その層が実質的に垂直に広がって配置されている細胞工場に物質をじかに移す、漏斗と、該細胞工場に連結されている管等の物質移送装置に注ぎ込まれる。本発明は細胞培養システムにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層細胞工場(factory)に物質を取り込む方法に関する。該方法は、多層細胞工場を備える細胞培養システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
多層細胞工場(ファクトリ)は、実験室内の細胞研究の一部として広く使用されている。細胞工場は、Nunc A/S(ロスキレ、デンマーク)およびコーニング・ライフサイエンス(アクトン、マサチューセッツ州01720、アメリカ)等のさまざまな供給業者から入手できる。細胞工場は、さまざまな用途に適した、異なる数の層を備え、さまざまなサイズで入手できる。例えば、これらの工場の10スタック(10層)バージョンは、相対的に少ない余分な作業、装置または空間で多数の細胞を生産できるため、特に有用であることが判明している。しかしながら、時間と作業で高いコストを生じさせ、および/またはそうでなければ可能であったかもしれない細胞の収率より低い収率を意味する、満足の行かない充填および収穫に終わりこれらの細胞工場を充填するための現在の標準的な方法にまつわるいくつかの問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
現在の標準的な方法は異なる数の層を有する細胞工場について改善できるであろうが、ここでは簡単にするために10層の細胞工場についてだけ基本的な播種手順と収穫手順が説明される。既定の数は適切な例と見なされる必要がある。
【0004】
10層の細胞工場に細胞を播種するため、所望する濃度(細胞数/ml)の適切な培養液を用いて、1500mlの細胞懸濁液を細胞工場に取り込む。細胞は、異なる層において細胞の数が異なることを避けるために、完全な均質懸濁の状態であり、おおよそ同時に全層に均等に行き渡る。
【0005】
細胞工場で播種される細胞は、当初組織培養フラスコ内で培養される。細胞は組織培養フラスコから収穫され、適切な培養液で懸濁される。該細胞と培養液(該細胞懸濁液)を小型の瓶に移す。10層の細胞工場の場合、通常、組織培養フラスコから、各瓶の中に500mlの細胞懸濁液が入った3本の瓶が調製される。3本の瓶には、それぞれ実質的に同じ数の細胞が入ることになる。細胞を播種するための細胞工場に細胞懸濁液が取り込まれるまで、該3本の瓶から保存される中間容器に細胞懸濁液を移す。中間容器は従来技術の方法に従って大瓶の形をとってよい、またはさらに詳細に後述される別の従来技術の方法に従ってピペットの形をとってよい。
【0006】
細胞を収穫するために、細胞が各層の下側シートに付着して残ったまま、培養液が最初に細胞工場から除去される。次に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の200から500mlの洗浄物質が、細胞から残留培養液を洗浄するために細胞工場に取り込まれる。次に該洗浄物質が除去され、Accutase(登録商標)またはTrypsin等の解離酵素100から150mlが細胞工場の層に取り込まれ、細胞工場は37℃で数分間インキュベートされる。細胞が脱離すると、酵素作用を停止するために、200から400mlの培養液が細胞工場に取り込まれなければならない。酵素反応を停止する機能は、残留培養液から細胞を洗浄するための洗浄物質の前述された使用の1つの理由である。洗浄物質が使用されないと、解離酵素は効果的に作用しない可能性がある。
【0007】
10スタックの細胞工場を播種し、収穫するために現在使用されている従来技術による方法が2つある。第1の方法は図面の添付図1に説明される。この第1の方法によると、大瓶2に、多層(例えば10層の)細胞工場4に取り込まれるすべての細胞懸濁液が入っている。細胞懸濁液は、大瓶2の底部に連結されている管6を介して細胞工場4に取り込まれる。クランプ7は、細胞懸濁液の流量を制御する。管6を通る細胞懸濁液の有効流量を有するために、大瓶2は、クランプが開いているときに、重力により細胞懸濁液が大瓶から細胞工場4に流れるように大きな作業台8の上に配置される。細胞工場4の10層10aから10jは、流路によって相互接続されている。この従来技術の方法の優位点は、細胞工場4が、図1に示されるように層10aから10jが直立している状態で配置されてよいという点である。相互接続流路は、ある直立する層から別の直立する隣接の層に細胞懸濁液を迅速に拡散するので、層10aから10jを実質的に同時に充填できる。しかしながら、この方法にはいくつかの欠点がある。細胞は注意して扱わなければならない。無菌性の理由から、大瓶2を細胞懸濁液で充填するとき、層流(LAF)ベンチ内に、その大瓶2を入れておかなければならない。また、大きく重い瓶2は細胞懸濁液の入った大瓶を保持するための作業台8を必要とするので、細胞工場4に関する大瓶2の高さを調節することはできない。このようにして、一方では大瓶2はその底部が重力の助けを借りて細胞工場4を充填するために十分な高さに配置されるほど高く持ち上げられなければならず、他方では大瓶2の配置が高いほど、大瓶2に細胞懸濁液を取り込むことができるようにするためにLAFベンチのフードの下に自分の腕を入れようと努力しなければならない操作者にとって、瓶の充填がさらに扱いにくくなる。作業台8の上に大瓶2を配置する前にそれを充填することも、操作者にとって、きわめて困難且つ骨が折れる。さらに、大きな作業台8と大瓶2は、それらのかさ高性に起因して、LAFベンチ内の風量を損なわないこともある。また、均質性を得るために大瓶2中の細胞懸濁液を旋回させることもきわめて困難である。該方法にまつわる別の欠点は、管6を備える大瓶2全体を加圧減菌することを必要とするという点である。この方法にまつわるさらに別の欠点は、それが洗浄物質つまり酵素の後の添加を容易に可能にしないという点である。
【0008】
一般的になってきた第2の方法は、細胞工場に細胞懸濁液を取り込むためのピペットを使用することである。大瓶よりも比較的に小さなピペットを扱う方が容易である場合があるが、この第2の方法にもいくつかの欠点がある。10層の細胞工場に1500mlの細胞懸濁液を充填するには、50mlのピペットを30回、または100mlのピペットを15回、充填し、空にすることが必要になる(より大きなピペットは取り扱いが困難である)。このようなピペット操作は多大な時間を必要とするだけではなく、物理的にも心身を疲れさせる。充填は、通常最大20分を要する。細胞工場が機能する方法のため、細胞工場を播種するためにそれほど多くの時間がかかると、細胞の層へ非常に不均等に分布されることになる場合がある。これは細胞懸濁液にピペットで取るため、細胞工場が、充填穴を上にして仰向けに平ら、つまり図1に示されている第1の方法の配向に垂直でなければならない。第2の方法に従って層が水平に配列されている細胞工場にピペットで取ると、細胞懸濁液が最下層に直行し、しばらくしてから非常にゆっくりと他の層を充填し始め、最上層は、あるとしてもほとんど細胞を受け取らないことになる。細胞懸濁液全体(細胞と培養液)をピペットで取るのに要する時間内に、細胞はすでに底部に沈殿し始め、したがって工場内の細胞の不均等な層化を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の方法の欠点を軽減することである。本発明の別の目的は、多層細胞工場において容易且つ迅速な播種手順と収穫手順を達成することである。以下で明らかになるこれらの目的および他の目的は、独立請求項によって明示されるような方法、細胞培養システム、および用途によって達成される。
【0010】
本発明は、多層細胞構造への物質のさらに効率的な扱いおよび取り込みが、例えば、説明された従来技術の第1の方法による大瓶、または説明された従来技術の第2の方法によるピペット等の中間容器の排除を可能にすることによって達成できるという識見に基づいている。言い換えると、本発明は、物質が多層細胞工場に送達されるまで物質を保持するために中間容器を必要とせず、該細胞工場に物質がじかに取り込まれることを可能にする。
【0011】
また、本発明は、その層が直立している多層細胞工場の流体連通入口界面を向け直すことによって、細胞工場の層の迅速且つ均等な充填を達成できるという識見に基づいている。したがって、細胞工場が直立位置にあるときに多層細胞工場の流体連通入口界面を上方に向くように向け直すことによって、細胞懸濁液または他の物質を細胞工場に注ぐことを可能にする。注ぐ行為は、従来技術の方法と反対に、さらに迅速となり、さらに容易な取り扱いを可能にすることがある。
【0012】
本発明の第1の態様に従って、物質を多層細胞工場に取り込む方法が提供される。該方法は、物質移送装置を細胞工場の入口に連結することと、細胞工場の層が実質的に垂直に広がるように細胞工場を配置し、前記配置が細胞工場の入口に物質移送装置を連結する前に、後に、または連結と同時に実行されることと、物質を細胞工場にじかに移す物質移送装置を通して独立した容器から物質を注ぐこととを備える。
【0013】
このようにして、該方法の第1の態様は層の均等な充填のために垂直に広がる層を利用することを可能にし、それを、物質移送装置を介して細胞工場にじかに物質を注ぎ込むことと組み合わせる。言い換えると、物質は独立した容器から細胞工場に連続した流れで停止されることなく送達されてよい。それにより従来技術の中間物質保持容器が回避され、迅速な充填が可能になる。独立した容器は、細胞工場または物質移送装置に構造上連結される必要はないが、所望される場合には他のシステム構成要素のいずれかとの接触から外されたままでよい。これは、取り扱いおよび無菌性の観点から有利である。
【0014】
独立した容器は、任意の種類の容器、フラスコ、瓶または物質がそこから注がれる他の手段であってよい。例えば、物質が細胞工場で播種される細胞を含有する細胞懸濁液である場合では、独立した容器は、収穫された細胞が、見出し「発明の背景」で前記に例証されたように組織培養フラスコから移される小さな瓶であってよい。該物質が洗浄物質または懸濁された解離酵素である場合では、独立した容器は、溶液または懸濁液が供給業者によって提供される瓶であってよい。
【0015】
注ぐ行為は、さらに迅速な充填を可能にするだけではなく、操作者にとって物理的にあまり心身を疲れさせるものではない。管に連結されている、扱いにくい大瓶よりも小瓶を扱う方が便利である。また、繰り返されるピペット操作に起因する汚染の危険をもたらす、物理的に心身を疲れさせる、繰り返される瓶からのピペット操作よりむしろ、このような瓶から注ぐ単一の行為の方が心身を疲れさせず、無菌性の観点からより安全である可能性がある。また、工場に細胞を播種する、または工場から細胞を収穫する、のどちらかのために必要とされる総合的な時間は全体的な細胞の衛生に影響を及ぼすことがある。多くの場合、良好な細胞生存性は、細胞が可能な限り迅速にその住環境(例えば、加湿された37℃のインキュベータ)に戻されることに依存している。本発明により、前述された従来技術よりも大幅に速く工場内の細胞を扱うことが可能になる。
【0016】
本願では、疑わしい場合、層を垂直に広げることによっては、これにより、すべての層が、細胞工場が配置される「地表面」に対して実質的に同じ距離を有した状態で、層が互いに隣接して立っていることを意味している。垂直に広がる層と対照的に、水平に広がる層は、それぞれの層が地表面に対して違う間隔で互いの上に配置されるであろう。
【0017】
前述されたように、本発明は、多層細胞工場の流体連通入口界面を向け直す可能性に関する識見に基づいている。これは、本発明の第2の態様で予想されている。本発明の第2の態様に従って、物質を受け入れるための入口を有する多層細胞工場に物質を取り込むための方法が提供される。該方法は、物質を受け取り、物質を細胞工場の入口にじかに移すための専用の入口を備える物質移送装置を、細胞工場の入口に連結することを備える。また該方法は、物質移送装置の入口の開口領域が細胞工場の入口の開口領域とは別の方向に向いているときに物質移送装置の入口に物質を注ぎ込むことも備える。有利なことに、物質移送装置の入口は、細胞工場の入口に対して可動であってよい。言い換えると、物質移送装置が細胞工場の入口に連結される第1の端部と、物質移送装置の入口に相当する第2の端部とを有する場合、第2の端部は、第1の端部を、第2の端部に対してゼロ以外の角度で配置できるようにするために、第1の端部に対して可動であってよい。
【0018】
本態様による方法は、本発明の第1の態様に従って物質を垂直に広がる層に取り込むことにも適しており、本発明の第1の態様に従って物質を垂直に広がる層に取り込むという考えを包含している。また、本発明の第2の態様に従って実行される物質の注入は、前述されたように独立の容器から適切に実行されてよい。
【0019】
本発明の第1の態様と第2の態様の両方にとって、物質を注ぐ行為は物質移送装置の適切な寸法取りによってさらに安全に且つさらに迅速に行われてよい。したがって、本発明の少なくとも1つの実施形態に従って、物質は、細胞工場の入口よりも大きな開口領域を有する物質移送装置の入口に注がれる。
【0020】
流体連通入口界面の拡大は、本発明の別個の第3の態様にも表される。本発明の第3の態様に従って、物質を受け入れるための入口を有する多層細胞工場に該物質を取り込み、上記入口が第1の開口領域を有する方法が提供される。該方法は、上記第1の開口領域よりも大きい第2の開口領域を有する入口を備える物質移送装置を細胞工場の入口に連結することと、細胞工場の層が実質的に垂直に広がるように細胞工場を配置し、上記配置が細胞工場の入口に物質移送装置を連結する前に、後に、あるいは連結と同時に実行されることと、物質移送装置の入口を介して細胞工場に物質を注ぎ込むこととを備える。
【0021】
細胞工場の入口よりも大きい受け入れ口を有する物質移送装置を、開口部を拡大し、それによって拡大された開口への物質の注入を容易にするアダプタと見なしてよい。上記態様と同様に、第3の態様による注入は、独立した容器から適切に実行される。
【0022】
さらに、物質の注入をさらに容易にするために、物質移送装置の寸法取りは細胞工場に関してだけではなく、注入の元に関連しても適切に検討される。したがって、前述された態様のすべての範囲内で、本発明の少なくとも1つの実施形態に従って、独立した容器からの注入の場合では、物質を注ぐ行為は、独立した容器の出口から、上記出口の開口領域より大きい開口領域を有する物質移動装置の入口に物質を注ぎ込むことを備える。
【0023】
適切には、上記独立した容器は瓶であり、物質は瓶の上部から注ぎ出されてよい。瓶の上部から注ぐことが、通常瓶の首の上部から注ぐことを意味することが留意される必要がある。しかしながら、開口部は独立した容器の上部の他の場所に配置されてよい。開口部を、例えば瓶の首の上部に等、容器の上部に有することの優位点は、容器に含有される物質が流出するのを防ぐためのバルブまたはシールを、容器が備える必要がないという点である。これは、物質を出すためには、本発明による単純な注入の代わりにバルブが開かれなければならない、図1に示されている従来の技術の大きな中間の瓶に比較されてよい。瓶だけではなく、物質がその中から注がれてよい上部を有する任意の他の種類の容器が考えられる代替策を提示することもさらに留意される必要がある。
【0024】
細胞工場の入口よりも大きい開口領域を有する物質移送装置の上記入口を達成するために漏斗を使用することが有利であると判明している。独立した容器の出口よりも大きい開口領域を有する物質移送装置の上記出口を達成するために漏斗を使用することも有利であると判明している。漏斗は、両方の関係を満たすことも可能にする。つまりそれは細胞工場の入口と独立した容器の出口の両方よりも大きい開口領域を提供できる。このようにして、上記態様のすべてについて考えられる本発明の少なくとも1つの実施形態に従って、物質移送装置が漏斗、または中空であり、その出口開口よりも大きいまたは幅広い入口開口を有する類似した用具を備え、そこでは物質を注ぐ、または取り込む行為は漏斗に物質を注ぐことを備える。
【0025】
漏斗の出口側は、細胞工場の入口に物質を向けるために使用できる、例えば管等の何らかの種類の導管に適切に連結できる。位置の可変性を達成し、細胞工場の直立する層が細胞工場の入口の水平に面する入口を通して物質を受け入れることができるようにするために、導管または少なくともその一部が細胞工場の入口に対して適切に可動である。これにより、漏斗入口は注がれる物質を受け入れるために実質的に上方に向くことができる。代わりに、漏斗は導管に対して可動、例えば枢動可能であってよい。したがって、最初は細胞工場の入口によって表される、細胞工場の流体連通入口界面は、いったん漏斗と導管が入口に連結され、それによって漏斗の入口が上記界面の機能を取得すると、実質的に水平に向くから、実質的に垂直に向くに多様な方法で向き直されてよい。しかしながら、現在では、その端部の1つで漏斗に連結され、その他方の端部は細胞工場に連結される撓みやすく、曲げやすい管を使用することは有利且つ簡単であると見なされている。細胞工場に連結される管の端部は、必要とされる場合、細胞工場の入口に適合するアダプタを含んでよい、またはアダプタに取り付けられてよい。
【0026】
実際の播種および/または収穫の手順の間のその利点は別にして、撓みやすい管を使用する優位点は、それが加圧減菌器で処理されているときにほんの少しの空間しか必要としないように折り畳まれてよいことである。折り畳まれた管は、その両方ともが加圧減菌器で処理される前に漏斗に適切に連結されてよい。
【0027】
漏斗に連結される、撓みやすい管等の別個の導管を使用することの代替策として、漏斗と導管は一体で形成されてよいことが理解される必要がある。このような場合では、漏斗と導管は、例えばプラスチック材等の同じ材料から適切に作られている。漏斗および導管が別々の部品として作られる場合、それらは、例えばプラスチックまたはシリコーン導管に連結可能なガラス漏斗のように異なる材料から形成されてよい。
【0028】
上記から、それらの少なくとも1つが多層細胞工場の入口に対して可動である、拡大された受け入れ開口と導管の本発明の組み合わせによって、操作者が、上記拡大された受け入れ開口と導管を介して細胞工場に物質を容易に注ぐことができることが明らかでなければならない。撓みやすい管に連結される漏斗の場合では、追加の優位点が取得できる。優位点は、その可撓性とコンパクトさに起因して、それが細胞工場付きの装置として実装されてよいという点である。
【0029】
細胞工場から細胞を収穫することは、細胞工場の中に細胞を入れることよりも複雑である。したがって、本発明によって包含されるすべての種類の物質移送装置に適用可能である別の利点は、同時にフード内で大瓶を操作する必要なく、大量の異なる種類の液体を注ぐことが容易であるという点である。したがって、細胞懸濁液を細胞工場に注いだ後、細胞懸濁液を除去することなく、または試薬を大瓶に添加する必要なく、同じ物質移送装置を使用して他の試薬が添加されてよい。さらなる優位点は、例えば管に取り付けられる漏斗等の物質移送装置の相対的に小さいサイズがLAFベンチ内の風量を損なわないという点である。
【0030】
本発明の少なくとも1つの実施形態に従って、漏斗を備える物質移送装置の場合では、保持器装置が漏斗を保持するために提供される。漏斗は、漏斗が取り付け可能である保持器装置を調整することによって細胞工場の入口を越える所望される高さに配置されてよい。保持器装置は、アームが上下に置き換え可能である垂直スタンド等の任意の適切な高さ調節可能機構を備えてよい。アームは、爪またはリング、または漏斗を保持するための他の手段を備えてよい。垂直スタンドを使用する代わりに、所望される高さのLAFベンチの側面に対して漏斗を取り付けることが考えられるであろう。高さ調節可能な保持器装置の使用は、漏斗を保持することに限定されないが、本発明によって包括される任意の物質移送装置にも適用でき、それにより物質移送装置の物質受け入れ口の高さ、つまり垂直高さを調整できるようにする。
【0031】
標準的な細胞工場は、完全に同じように機能できる概して2つの開口を含む。物質移送装置がしっかり掴まれる場合、それは収穫手順全体を通して細胞工場の開口の一方に連結されたままとなることがある。連結されている物質移送装置との開口が新しい試薬を添加するためにも使用されてよいが、細胞工場の他の開口は物質を捨てるために使用することもできる。
【0032】
一方を入口として、他方を出口として細胞工場の上で2つの開口、つまり連通口を使用することにより、播種と収穫の手順全体の効果的且つ迅速な取り扱いが可能になる。したがって、漏斗および管の実施形態に限定されていない、本発明の少なくとも1つの実施形態に従って、任意の物質が細胞工場に取り込まれる前に、細胞工場に含有される物質は、細胞工場の入口とは別個である細胞工場の出口を通して除去することができる。この場合では、上記物質は、例えば、細胞工場に播種されるときに細胞が懸濁された培養液、細胞を洗浄するための洗浄物質、細胞を脱離するための酵素等であってよい。物質移送装置が細胞工場に撓みやすく連結されている有利な場合では、物質移送装置の開口と工場の間の連結部の撓みやすさが、物質移送装置の開口を阻害することなく物質の除去を可能にする。
【0033】
上記から、ここで本発明の任意の態様による物質移送装置が、細胞工場に細胞を播種するためと、例えば洗浄溶液または解離酵素等の他の試薬を、細胞工場から細胞を収穫することの一部として挿入するための両方のために適切に使用されてよいことが明確でなければならない。
【0034】
本発明の少なくとも1つの実施形態に従って、物質は、細胞工場内で細胞を播種するための細胞懸濁液を含む。細胞懸濁液は培養液中に懸濁される細胞を含む。市販されている培養液の例として、とりわけDMEMとMEMが挙げられる。一般的に、哺乳類細胞が細胞工場で培養されるが、細胞工場内で他のタイプの細胞を培養することも可能であり得る。
【0035】
適切には、物質移送装置の内部体積は、細胞工場で播種される細胞懸濁液の総体積より小さい。これは、物質移送装置は物質を保持する必要はないが、逆に細胞工場にじかに細胞を入れる必要があるために可能である。例えば組み合わされた漏斗と管等の物質移送装置は、このようにして細胞工場の入口の拡張部分と見なされてよい。細胞懸濁液は通常、物質移送装置を通して細胞工場に注ぎ込まれてよい他の物質よりも著しく大きな体積を有するので、特に、上記小さな内部体積は、細胞懸濁液の量に関して重要である。しかしながら、所望される場合、物質移送装置は、その内部体積が播種手順と収穫手順で使用される他の物質のいずれかより小さくなるように選択されてよい。
【0036】
すでに言及されたように、物質移送装置を通して注がれてよい他の物質は、洗浄物質、解離物質、および播種された細胞、濯がれた細胞、または切り離された細胞を懸濁するための追加の培養液、つまり細胞を培養する際に必要とされる任意の液体を備える。したがって、本発明の少なくとも1つの実施形態に従って、上記物質は、細胞向上に播種された細胞を濯ぐためのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の洗浄物質、あるいは接着した細胞を緩めるための、例えば解離Accutase(登録商標)またはTrypsin等の酵素、あるいは緩められた細胞を供給し、解離酵素のあらゆる酵素作用を停止するための培養液を含む。所望される場合、解離酵素を取り込んだ後、細胞と解離酵素を有する細胞工場はインキュベータ内で培養されてよい。適切には、物質移送装置は、培養液を注ぎ込むことを可能にするために、培養の前に細胞工場から切り離され、培養後に連結し直される。例えば管の端部等の物質移送装置の切り離された部分は、汚染を回避するためにLAFベンチ内で接触しない様式で適切に保持され、それにより再連結を可能にする。管の場合では、管の端部が上記構造または任意の他の近傍の構造に接触しないようにする一方、管の一部が、前述された保持器装置内に含まれる垂直スタンドまたはアーム等の隣接構造にテープで貼られる等、付着されてよい。代替策として、培養後に別の物質移送装置が使用されてよい。
【0037】
本発明のすべての態様が多層細胞工場に物質を取り込むことに適用できることが留意される必要がある。簡単にするために、背景の説明は10層の細胞工場に従われてきたが、本発明は他の層の数を有する多層細胞工場にも適用できる。例えば、現在1層、2層、4層、10層または40層を有する工場が市販されている。本発明は、その範囲内の、あるいは例えば50層等の、その範囲も超えた将来の層数だけではなく、これらの代替策のいずれか1つにも適用できるであろう。
【0038】
多層細胞工場に物質を取り込む方法は、本発明の少なくとも3つの態様に従って説明されてきた。加えて、細胞培養システムに関連する本発明の第4の態様もある。したがって、本発明の第4の態様に従って、細胞培養システムが提供される。該システムは、物質を受け入れるための入口を有する多層細胞工場を備える。該システムは、細胞工場の入口に連結できる第1の端部と、物質を受け入れるための入口を有する第2の端部とを有する物質移送装置も備える。物質移送装置の入口は、細胞工場の入口より大きい開口領域を有し、上記第2の端部は、上記第1の端部が上記第2の端部に対してゼロ以外の角度で配置できるようにするための上記第1の端部に対して可動である。
【0039】
前述されたように、細胞工場に対する入口は水平に(側面方向に)向いてよいが、物質移送装置の入口は適切に垂直に(上方に)面してよい。したがって、上記ゼロ以外の角度は、物質が物質移送装置を介して細胞工場に取り込まれるときに約90°となってよい。しかしながら、他のゼロ以外の角度も考えられる。
【0040】
細胞培養システムは、適切に、物質が注がれてよい独立した容器も備えてよい。細胞培養システムは高さ調節可能な保持器装置も備えてよい。独立した容器、物質移送装置および保持器装置は、前述された特長のいずれか1つを有してよい。したがって、本発明の第4の態様は、これらの態様または特長が上記細胞培養システムと互換性がある限り、本発明の前述された態様に関連して説明されているあらゆる実施形態またはあらゆる特長を包含する。
【0041】
本発明の第5の態様に従って、多層細胞工場内で細部を培養する方法が提供される。第5の態様による該方法は、前述された態様に類似する方法で物質を取り込むことを含むため、それらの実施形態または特長がこの方法と矛盾していない限り、本発明の前述された態様に関連して説明されるあらゆる実施形態またはあらゆる特長を包含すると理解されるべきである。第5の態様による該方法は、
−細胞工場の入口に物質移送装置を連結することと、
−細胞工場の層が実質的に垂直に広がるように細胞工場を配置し、連結し、配置することがどちらの順序で実行されてよいことと、
−培養液と細胞を細胞工場にじかに移す物質移送装置を通して細胞懸濁液を注ぐことと、
−適切に細胞移送装置が細胞工場の入口に連結されたままの状態で細胞工場から培養液を捨てることと、
を備える。
【0042】
この方法は、培養液の解析が重要である状況を包含し、細胞は捨てられることを必要とされていない。しかしながら、この方法は、細胞が捨てられた培養液内で懸濁される状況も包含する。該方法は、後述されるように、例えば洗浄物質等の任意の他の物質、または解離物質の使用も包含する。
【0043】
したがって、第5の態様による該方法は、
−層を濯ぐために物質移送装置を介して細胞工場に、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の洗浄物質を注ぎ込むことと、
−細胞工場から洗浄物質を捨てることと、
をさらに随意に備えてよい。
【0044】
一般的には、細胞から残留培養液を洗浄することが望ましいが、それが必要とされない場合もあるため、洗浄物質を使用する上記工程は任意である。
【0045】
さらに、第5の態様による該方法は、
−層の壁から細胞を緩めるために物質移送装置を介して細胞工場に、例えばAccutase(登録商標)またはTrypsin等の解離酵素を注ぎ込むことと、
−物質移送装置を切り離すことと、
−インキュベータにおいて細胞と解離酵素で該工場をインキュベートすることと、
−物質移送装置を連結し直すこと、あるいは代わりに細胞工場の入口に別の物質移送装置を連結することと、
−酵素反応を停止し、細胞を培養するために、物質移送装置を介して細胞工場に培養液を注ぎ込むことと、
−適切に、懸濁された細胞を含む培養液を細胞工場から捨てることと、
を随意に備える。
【0046】
一般的には、細胞を酵素で解離することが望ましい。しかしながら、解離酵素を使用しなくても脱離されてよい細胞があるため、解離酵素を使用する上記工程は任意である。
【0047】
上記から、ここで、本発明によって、操作者が、中間物質保持容器を必要とすることなく、その層が直立している状態で配置される物質移送装置を介して物質を多層細胞工場にじかに注ぎ込むことができるようになることが明らかでなければならない。有利な実施形態は、漏斗との管の組み合わせであるが、前述されたように他の代替策も考えられ、本発明によって考えられ、予想される。大まかに言えば、物質移送装置は少なくとも2つの部分を有すると見なされてよい。1つの部分は、他の部分を基準にして可動または枢動可能である。これにより、直立している層に実質的に水平に向く入口が、物質が注ぎ込まれてよい物質移送装置の実質的に上方を向く入口に変形または拡大できる。
【0048】
管と漏斗の組み合わせに関して、これは本発明の第6の態様に組み込まれている。この第6の態様に従って、漏斗の使用、特に管の他方の端部にある多層細胞工場に物質を取り込むために管の一方の端部に連結される漏斗の使用が提供される。本発明の第6の態様は、それらの実施形態または特長が管に連結されている漏斗を使用することと矛盾しない限り、本発明の前述された態様と関連して説明されているあらゆる実施形態またはあらゆる特長を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1に示される従来技術の方法は、さらにここで説明することなく参照される、見出し「発明の背景」で上記に説明された。
【0050】
図2および図3に関して、本発明の少なくとも1つの実施形態による細胞培養システム20が概略で示される。細胞培養システム20は、多層細胞工場22と、管46に連結されている漏斗44として本書に示される物質移送装置42と、物質移送装置42を保持するための保持器装置を備える。
【0051】
多層細胞工場22は、10層24aから24jを有するように、本書に説明されるが、他の層数も考えられる。各層24aから24jは、2つの対向する、相対的に幅広くプレート状の矩形壁側面25と、上記対向する矩形壁側面の端縁部分を相互接続する4つの比較的に狭いストリップ状の壁側面26とによって形成される流体受け入れ体積を有する。矩形形状は例に過ぎず、他の形状も考えられるであろう。1つまたは複数の流路(不図示)が、層が互いと流体連通できるようにする。
【0052】
多層細胞工場には、それぞれ、第1の流体連通口28と第2の流体連通口30とが備えられ、両方とも入口または出口のどちらかとして使用されてよい。示される例では、第1の流体連通口28だけが入口として使用されている。第2の連通口30にはそれを出口として使用するために取り除くことができる栓32が備えられている。両方の口28、30とも、同様に層24aから24jと流体連通している上記1つまたは複数の流路と流体連通している。図に示されるように、細胞工場22の層24aから24jは直立しており、上記比較的に幅広い板状の矩形壁側面25の各側面によって画定される幾何学的な平面が、細胞工場が載る水平地面に対して垂直であることを意味している。多層細胞工場22のこの位置では、流体連通口28、30の開口は水平に向いている。つまりそれらは細胞工場22から、水平地面に平行である線に沿って細胞工場22から伸張する。したがって、入口として機能している第1の連通口を通る流れの方向は、細胞工場22への実質的に水平の流れとなる。
【0053】
物質移送装置42は、本書では物質が注ぎ込まれることになる漏斗44に連結している管46として示されるが、他の代替策も考えられる。例えば、漏斗の代わりに、代替策は、例えばU字形またはV字形の断面を有するシースまたはスライドを使用することであり、スライドは細胞工場に向かって、あるいは連結されている管に向かって傾斜し、物質はUまたはVの開口に注ぎ込まれ、スライドを、管を介してまたは直接的にのどちらかで細胞工場に流れ落ちてよい。別の代替策は、一方の端部が細胞工場の入口に連結され、他方の端部に管の端部を割って開き、それにより注がれる物質を受け入れるために十分な大きさの領域を提供する管を単に使用することであろう。
【0054】
ここで図2および図3、特に図2に戻ると、管の端部の一方に、細胞工場22への入口として使用される第1の連通口28に管を連結するためのアダプタ48が備えられている。管46の長さは、一方で、物質の効果的な流れが達成できるように、他方では、(例えば、細胞懸濁液からの細胞が付着し、すべての内壁側面に沿って実質的に均等に分布するようになることを確実にするために等)取り込まれた物質が層24aから24jのすべての内壁の側面に到達したことを確実にするためにそれが回される、つまり回転されるときに細胞工場22の容易な取り扱いが許容できるように選ばれる必要がある。漏斗44は管46の他方の端部に連結されている。この例では、漏斗44はパイプ部分が小さい方の端部から管に伸張する中空の円環の形を取っている。漏斗44は注ぎ込まれる物質を捕らえ、物質を管46に下方に向けるような寸法で作られ、構成されている。図からわかるように、漏斗44の大きい流体受け入れ口、つまり反転した錐体形状の幾何学上の基部は、上方に、水平基平面に垂直に向いているため、層24aから24jが直立している状態で細胞工場22が配置されるときに、流体連通口28、30が向く方向に対しても垂直に向いている。漏斗44の開口領域、つまり反転した錐体の幾何学上の基部の領域が流体連通口28、30の開口領域より大幅に大きいことも留意されてよい。
【0055】
漏斗44は保持器装置62によって細胞工場22の入口28を越えた垂直高さに維持され、それによって重力が、漏斗44からの、管46を介して細胞工場22への物質の流れに好意的に影響を及ぼすことができるようにする。保持器装置62は、本書では、垂直のガイドロッド66がそこから伸張する安定化ベースプレートを備えるスタンドとして示される。グリップエンド70を備える水平に伸張するアーム68は、垂直なガイドロッド66で上下に置き換え可能であり、それによりグリップエンド70の垂直高さが調節できる。漏斗44はアーム68のグリップエンド70によって保持され、それにより細胞工場22の入口28に対して漏斗44の高さは調節できる。
【0056】
図3は、例えば細胞工場22とその内容物が培養された後、細胞工場22に連結し直される管の汚染を危険にさらすことなく、保持器装置62に適切に取り付けられてよい。この図では、管46が、グリップエンド70側面に対向するガイドロッド66の他方の側面に配置されるアーム68の一部72に対して先細になっていることが示される。管の端部が、それが細胞工場22に連結し直されるまであらゆる接触から逃れることができるように、管46の取り付け点が管の端部からいく分離間されていることに留意する。
【0057】
図4は、操作者が本発明の少なくとも1つの実施形態による多層細胞工場22に物質を取り込む方法を概略で示される。図2および図3に示される細胞培養システムはここで、標準的なLAFベンチ80の内部に配置されている。細胞培養システムをセットアップするには約5分を要することがあり、例えば1500mlの細胞懸濁液を、漏斗44と管46を介して注ぐにはやはり約5分間要する。これは、通常、同量を細胞工場22に取り込むために少なくとも20分を要する従来の技術の方法に比較されてよい。図に示されているように、操作者は、独立した瓶84から漏斗44に物質を注ぐためにLAFベンチ80のフード82の下で自分の腕を容易に押し付けることができる。細胞工場22に取り込まれる物質の体積に応じて、異なる数の瓶が使用されてよい。例えば、1500mlの細胞懸濁液は、最初にレギュラーサイズの組織培養フラスコから細胞を収穫するときに習慣的であるように3本の瓶に適切に分けられる。操作者が第1の瓶を空にすると、操作者は次の瓶を取り、その内容物を漏斗に流し込む等である。洗浄物質又は解離物質の場合、通常、ただ1本の瓶等を使用するので十分である。漏斗が、細胞工場に取り込まれる物質の体積よりも著しく小さくなってよいことが留意される必要がある。これは、漏斗が物質を入れる代わりに、単に注がれる物質を捕らえ、向けるために機能するためである。したがって、漏斗は、有効な流れを示し、LAFベンチの遮蔽フードにも関わらず操作者が注ぐために依然として便利である高さに配置できる。
【0058】
上記から、本発明が、すべての層の上での物質の効果的且つ均等な分布に終わる、多層細胞工場への物質の迅速な取り込みを実現することが明らかでなければならない。細胞は好ましくはすべての層で均等に付着、分布されなければならないため、これは特に、それが細胞に播種することになると有利である。同じ物質移送装置が多層細胞工場に取り込まれるすべての物質に対して使用できるため、手順全体が容易になったことも明らかでなければならない。事実上、物質移送装置は、新しい物質が貴重な時間を失うことなく、その後取り込まれるのを可能にするために物質が細胞工場から除去される間、細胞工場に連結されたままであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】従来技術による多層細胞工場に細胞を播種するための方法を概略で示す図である。
【図2】本発明の少なくとも1つの実施形態による細胞培養システムを概略で示す図である。
【図3】本発明の少なくとも1つの実施形態による細胞培養システムを概略で示す図である。
【図4】操作者が本発明の少なくとも1つの実施形態による多層細胞工場に物質を取り込む方法を概略で示す図である。
【符号の説明】
【0060】
20 細胞培養システム、22 多細胞工場、25 矩形壁側面、26 壁側面、28 第1の流体連通口、30 第2の流体連通口、32 栓、42 物質移送装置、44 漏斗、46 管、48 アダプタ、62 保持器装置、66 ガイドロッド、68 アーム、70 グリップエンド、80 LAFベンチ、82 フード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層細胞工場に物質を取り込む方法であって、
該細胞工場の入口に物質移送装置を連結することと、
該細胞工場の層が実質的に垂直に広がるように該細胞工場を配置し、前記配置が、該物質移送装置を該細胞工場の該入口に連結する前に、後に、または連結と同時に実行されることと、
該細胞工場に該物質をじかに移す該物質移送装置を介して独立した容器から該細胞工場に該物質を注ぎ込むことと、
を含む方法。
【請求項2】
物質を受け入れるための入口を有する多層細胞工場に該物質を取り込む方法であって、
該物質を受け入れるための専用入口を備える物質移送装置を該細胞工場の入口に連結し、該物質を該細胞工場の該入口に直接的に移すことと、
該物質移送装置の該入口の開口領域が該細胞工場の該入口の該開口領域とは別の方向を向くときに、該物質移送装置の該入口に該物質を注ぎ込むことと、
を含む方法。
【請求項3】
該物質を注ぐ行為が、該細胞工場の該入口よりも大きい開口領域を有する該物質移送装置の入口に該物質を注ぎ込むことを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の開口領域を有する、該物質を受け入れるための入口を有する多層細胞工場に物質を取り込む方法であって、
前記第1の開口領域より大きい第2の開口領域を有する入口を備える物質移送装置を、該細胞工場の該入口に連結することと、
該細胞工場の該層が実質的に垂直に伸張するように該細胞工場を配置し、前記配置することが、該細胞工場の該入口に該物質移送装置を連結する前に、後に、または連結と同時に実行されることと、
該物質移送装置の該入口を介して細胞工場に該物質を注ぎ込むことと、
を含む方法。
【請求項5】
該物質を注ぐ行為が、独立した容器から、該物質を該細胞工場にじかに移す該物質移送装置に該物質を注ぎ込むことを含む、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
独立した容器から該物質を注ぐ行為が、該独立した容器の出口から、前記出口の該か以降領域より大きい開口領域を有する該物質移送装置の入口に該物質を注ぐことを含む、請求項1または5に記載の方法。
【請求項7】
前記独立した容器が瓶であり、該独立した容器の該出口から該物質を注ぐ行為が、該瓶の上部から物質を注ぐことを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記物質移送装置が漏斗を備え、該物質を注ぐまたは取り込むという該行為が該物質を該漏斗に注ぎ込むことを含む、請求項1から7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記物質移送装置が、その端部の一方で該漏斗に連結される管を備え、該物質移送装置を連結する行為が、該細胞工場の該入口に該管の他方の端部を連結することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該漏斗を、該細胞工場の該入口を越えた選択された高さに保持するための保持器装置を調節することと、該漏斗が該選択された高さに配置されるように、該保持器装置に該漏斗を取り付けることとを供え、調節する行為と、取り付ける行為がどちらの順序でも実行できる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記物質が該細胞工場内での細胞の該播種のための細胞懸濁液を含む、請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
該物質移送装置に内部体積が該細胞工場で播種される該細胞懸濁液の総体積より小さい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記物質が、細胞工場に播種された細胞を洗浄するための、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の注入物質を含む、請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記物質が、播種された細胞を層の壁から緩めるためにAccutase(登録商標またはTrypsin等の解離酵素を含む、請求項1から10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
該細胞工場に前記物質を取り込む前に、該細胞工場の該入口とは別個である該細胞工場の出口を通って、該細胞工場に含まれる他の材料を除去することとを含む、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記物質移送装置が、前記他の材料を除去する行為の間、該細胞工場の入口に連結されたままである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
物質を受け入れるための入口を有する多層細胞工場と、
該細胞工場の該入口に連結できる第1の端部と、
該物質を受け入れるための入口を有し、それにより該受け入れられた物質を該細胞工場にじかに移すことができる第2の端部と、
を有する物質移送装置と、
を備え、
該物質移送装置の該入口が該細胞工場の入口よりも大きい開放領域を有し、前記第2の端部が、前記第1の端部を前記第2の端部に対してゼロ以外の角度で配置できるようにするための前記第1の端部に対して可動である細胞培養システム。
【請求項18】
前記物質移送装置が漏斗を備え、該物質移動装置の該入口が該漏斗の幅広い方の開口である請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記物質移送装置が、その端部の一方で該漏斗に連結可能である管を備え、該管の他方端部が該細胞工場の該入口に連結可能である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
該細胞工場の該入口を越えた選択された高さで該漏斗を保持するための高さ調節可能保持装置を含む、請求項18または19に記載のシステム。
【請求項21】
該物質が、該細胞工場への直接的な移送のために、そこから該物質移送装置に注ぐことのできる出口を有する独立した容器を含む、請求項17から20のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項22】
該物質移送装置が、該独立した容器の前記出口の該開口領域よりも大きな開口領域を有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記独立した容器が瓶であり、該独立した容器の該出口が該瓶の上部に位置する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記細胞工場が、該物質移送装置が該細胞工場の該入口に連結している間に物質を該細胞工場から除去できるようにするための、該細胞工場の該入口とは別である出口を備える、請求項17から23のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項25】
多層細胞工場で細胞を培養する方法であって、
該細胞工場の入口に物質移送装置を連結することと、
該細胞工場の該層が実質的に垂直に広がるように該細胞工場を配置し、該連結することと配置することとがどちらの順序でも実行可能であることと、
細胞懸濁液を、該培養液と細胞を該細胞工場にじかに移す該物質移送装置を通して注ぐことと、
該細胞工場から該培養液を捨てることと、
を含む方法。
【請求項26】
リン酸緩衝生理食塩水(PBS)等の洗浄物質を、該層を濯ぐために該物質移送装置を介して該細胞工場に注ぎ込むことと、
該細胞工場から該洗浄物質を捨てることと、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該層の壁から該細胞を緩めるために該物質移送装置を介して該細胞工場にAccutase(登録商標)またはTrypsin等の解離酵素を注ぎ込むことと、
該物質移送装置を切り離すことと、
インキュベータにおいて該細胞と解離酵素を用いて該工場をインキュベートすることと、
該物質移送装置を連結し直す、または代わりに別の物質移送装置を該細胞工場の該入口に連結することと、
該酵素作用を停止し、該細胞を培養するために、該物質移送装置を介して該細胞工場に培養液を注ぎ込むことと、
懸濁された細胞を適切に含む、該細胞工場から該培養液を捨てることと、
を含む、請求項25または請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記物質移送装置が、該細胞工場から該洗浄物質または培養液を捨てる行為の間に、前記物質移送装置が該細胞工場の該入口に連結されたままである、請求項25から27のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
管の該他方の端部にある多層細胞工場に物質を取り込むための該管の一方の端部に連結されている漏斗の使用方法。
【請求項30】
請求項1から16または25から28のいずれか1つによる該方法で明示されている該行為を実行することを含む、請求項29に記載の使用方法。
【請求項31】
前記漏斗、管、および多層細胞工場が、請求項17から24のいずれか1つによる細胞培養システムの一部を形成する、請求項29に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−535516(P2008−535516A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506404(P2008−506404)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000424
【国際公開番号】WO2006/110081
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】