説明

細胞処理装置

【課題】外気中の異物や菌が混入するリスクを高めることなく、必要な量の細胞を得ることができる細胞処理装置を提供する。
【解決手段】消化容器内において生体組織を消化して細胞懸濁液を生成する組織消化部11と、組織消化部11で生成された細胞懸濁液を収容して回転させ、細胞懸濁液を上清と細胞群とに遠心分離する遠心分離容器2a,2bと、遠心分離容器2a,2b内の細胞群を保温するシートヒータ22とを備える細胞処理装置1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、患者から吸引した脂肪組織内に存在する脂肪組織由来細胞を分離、濃縮する細胞処理装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。この細胞処理装置を用いて分離された細胞を患者の疾患部位に移植することにより、細胞治療を実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−519883号公報
【特許文献2】特開平9−187269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、患者から吸引した脂肪組織が少量であった場合、細胞治療に必要な細胞数に満たない場合がある。また、免疫治療に細胞を使用する場合、細胞が大量に必要となり、かつ数回に分けて投与することもあるが、細胞分離は吸引手術を伴うので、回数が少ない方が患者の負担を低減することができるため好ましい。
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1および2に開示されている細胞処理装置によれば、最終生成物である細胞の量は患者から吸引した脂肪組織の量に依存するため、吸引手術の回数が多くなり、患者の負担を増大させてしまうという不都合があった。
また、細胞を培養装置で増殖させる場合には、最終生成物である細胞を遠心分離容器から取り出して培養装置に入れ替えなければならず、作業者の手間がかかる上、外気中の異物や菌が混入するリスクが高くなるという不都合があった。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、外気中の異物や菌が混入するリスクを高めることなく、必要な量の細胞を得ることができる細胞処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、生体組織を消化して細胞懸濁液を生成する消化容器と、該消化容器で生成された細胞懸濁液を収容して回転させ、細胞懸濁液を上清と細胞群とに遠心分離する遠心分離容器と、該遠心分離容器内の細胞群を保温する保温手段とを備える細胞処理装置を採用する。
【0008】
本発明によれば、消化容器内において生体組織が消化されて生成された細胞懸濁液を、遠心分離容器内に収容して回転することで、比重の違いにより細胞懸濁液の各成分が遠心分離される。具体的には、遠心分離容器の底部最下層には比重の大きな細胞群が集められ、その上層には脂質や血漿等の上清が集められる。そして、このように分離された細胞群を、遠心分離容器内において保温手段により保温して培養することができる。
【0009】
このようにすることで、生体組織から取り出した細胞群を培養して増やすことができ、患者から採取する生体組織量を少なく済ませて、組織採取時の患者の負担を軽減することができる。さらに、遠心分離容器内において細胞群の培養を行うことができるため、一連の処理を閉鎖系により行うことができ、コンタミネーションの危険性を低減するとともに、作業者の手間を省くことができる。
【0010】
上記発明において、洗浄水を貯留する洗浄液容器と、培地を貯留する培地容器と、前記遠心分離容器内へ液体を供給する給液手段と、前記洗浄液容器と前記培地容器と前記給液手段とを接続する配管と、該配管に設けられ、前記遠心分離容器への給液を洗浄水と培地とで切り替える給液切替手段とを備えることとしてもよい。
【0011】
このようにすることで、給液切替手段により、遠心分離容器への給液を洗浄水と培地とで切り替えることができる。これにより、遠心分離容器内に洗浄水を供給することで、細胞群の洗浄を行うことができる。また、遠心分離容器内に培地を供給することで、細胞群の培養を促進することができる。
【0012】
上記発明において、前記遠心分離容器内の液体を排出する排液手段と、該排液手段より排出された液体を貯留する排液容器とを備えることとしてもよい。
このようにすることで、排液手段より、遠心分離容器内の液体を排液容器に排出することができる。これにより、遠心分離容器内の洗浄液を入れ替えて細胞群の洗浄性を向上するとともに、遠心分離容器内の培地を入れ替えて細胞群の培養を促進することができる。
【0013】
上記発明において、前記遠心分離容器内にスキャホールドを供給するスキャホールド供給手段を備えることとしてもよい。
遠心分離容器内にスキャホールドを供給することで、遠心分離容器の内壁ではなく、スキャホールド表面に細胞を培養させることができる。これにより、遠心分離容器の内壁から細胞群を剥離する必要性を排除することができ、細胞群を容易に回収することができる。なお、スキャホールドは、培地に混入させて遠心分離容器内に供給することとしてもよく、培地とは別系統で遠心分離容器内に供給することとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外気中の異物や菌が混入するリスクを高めることなく、必要な量の細胞を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る細胞処理装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の細胞処理装置により実行される処理を示すフローチャートである。
【図3】図1の遠心処理容器の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る細胞処理装置について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る細胞処理装置1は、図1に示されるように、生体組織を消化して細胞懸濁液を生成する組織消化部(消化容器)11と、細胞懸濁液を遠心分離する遠心分離機5と、洗浄液を貯留する洗浄液バッグ(洗浄液容器)6a,6bと、排液を貯留する排液バッグ(排液容器)25と、培地を貯留する培地バッグ(培地容器)20と、これらを接続するチューブ(配管)7,15と、チューブ7,15に設けられたチューブポンプ(給液手段、排液手段)8と、チューブ7に設けられたバルブV1〜V7と、これらを制御する制御部(給液切替手段)10とを備えている。
【0017】
組織消化部11は、図1に示されるように、脂肪組織等の生体組織を消化処理するための装置であり、脂肪組織Aを収容する処理容器12と、処理容器12内に配置されたフィルタ13と、処理容器12が載置された振とう機14と、処理容器12に接続されたチューブ15と、チューブ15の途中位置に設けられたバルブV6とを備えている。
【0018】
処理容器12は、円筒状の容器であり、生体から採取された脂肪組織Aと該脂肪組織Aを消化する消化酵素液Bとの混合液を収容するようになっている。処理容器12は、底面12aが一方向に傾斜し、底面12aの最も低い位置に、チューブ15に接続される排出口12bが開口している。また、処理容器12は、上部が蓋12cにより塞がれており、蓋12cには、処理容器12内に消化酵素を投入するための投入口12dと、処理容器12内に脂肪組織Aを注入するための脂肪注入ポート12eとが設けられている。処理容器12内では、消化酵素液Bによる細胞処理の進行とともに、脂肪組織Aを構成する脂肪由来細胞等(細胞群)が単離されて浮遊し、細胞懸濁液Cが生成される。
【0019】
フィルタ13は、脂肪組織Aよりも小さい径の孔を多数有しており、底面12aの上方に略水平に配置されて、排出口12bを覆っている。これにより、脂肪組織Aは、体内から採取されたままの状態では排出口12bからの排出が制限され、消化酵素液Bにより細胞群が単離された状態でフィルタ13の孔を通過して排出口12bから排出されるようになっている。
【0020】
振とう機14は、処理容器12を所定の円周軌道に沿って水平回転させるようになっている。また、処理容器12と振とう機14との間(処理容器12の底面)には、シートヒータ16が設けられ、処理容器12内を約37℃に保温するようになっている。
【0021】
振とう機14を作動させると、振とう機14に載置された処理容器12が所定の円周軌道に沿って水平回転させられる。これにより、脂肪組織Aが消化酵素液B内において撹拌させられて、消化が促進される。そして、振とう機14を停止して処理容器12を静置すると、比重の差により、消化された脂肪組織Aが上層に、脂肪組織Aから分離された細胞群を含む消化酵素液B、すなわち細胞懸濁液Cが下層に層分離させられる。このように生成された細胞懸濁液Cは、チューブポンプ8を作動させることにより、チューブ7,15を通って遠心分離機5の遠心分離容器2a,2b内に送られる。
【0022】
遠心分離機5は、2つの遠心分離容器2a,2bと、これら遠心分離容器2a,2bに接続されたロータ3と、ロータ3を回転駆動させるモータ4とを備えている。
遠心分離容器2a,2b内には、組織消化部11により生成され、チューブポンプ8によりチューブ7,15を介して送られた細胞懸濁液Cが収容されている。また、各遠心分離容器2a,2b内には、チューブ7の一端が挿入されている。
【0023】
ロータ3は、モータ4により鉛直方向の軸線回りに回転駆動させられる支柱3aと、支柱3aから半径方向外方に延びた2本のアーム3bと備えている。
アーム3bの両端の間には、遠心分離容器2a,2bを収納するバケット3cが1つずつ設けられ、水平方向の軸線回りに揺動可能に支持されている。
【0024】
上記構成を有することで、モータ4によりロータ3を回転駆動させると、バケット3cおよび遠心分離容器2a,2bが、鉛直方向の軸線回りに一体的に回転させられる。そして、遠心力により、バケット3cおよび遠心分離容器2a,2bの底部が支柱3aから離間する方向へ揺動し、底部を半径方向外方に向けて回転させられる。これにより、遠心分離容器2a,2b内の細胞懸濁液Cは、比重の違いによりその成分が遠心分離される。具体的には、遠心分離容器2a,2bの底部最下層には比重の大きな細胞群が集められ、その上層には脂質や血漿等の上清が集められる。
【0025】
各遠心分離容器2a,2bに接続されたチューブ7の他端は、支柱3a内の管路を介して遠心分離機5の外部に接続されている。支柱3aのチューブ7接続部には、例えばロータリージョイントが採用されており、支柱3aが回転しても、外部に接続されたチューブ7が捩じれることなく給排液可能になっている。
【0026】
チューブポンプ8は、複数のローラ(図示略)によりチューブ7を押しつぶしながら回転させることで、チューブ7内の液体を送るようになっている。チューブポンプ8は、正逆運転が可能であり、回転方向を変えることで遠心分離容器2a,2bへ給液および排液を行うことができる。
【0027】
遠心分離機5は筐体21内に収容されており、筐体21の周囲にはシートヒータ(保温手段)22が設けられ、筐体21内を約37℃に保温するようになっている。これにより、遠心分離容器2a,2b内の細胞懸濁液C(細胞群)を約37℃に保温して培養するようになっている。
【0028】
制御部10は、バルブV1〜V7の開閉動作およびチューブポンプ8の回転方向を制御するようになっている。
具体的には、組織消化部11から遠心分離容器2a,2b内に細胞懸濁液Cを送る場合には、制御部10は、バルブV1,V2,V6を開くとともに、チューブポンプ8を正回転させる。
【0029】
また、洗浄液バッグ6aから遠心分離容器2a,2b内に洗浄液を供給する場合には、制御部10は、バルブV1,V2,V3を開くとともに、チューブポンプ8を正回転させる。また、洗浄液バッグ6bから遠心分離容器2a,2b内に洗浄液を供給する場合には、制御部10は、バルブV1,V2,V4を開くとともに、チューブポンプ8を正回転させる。
【0030】
また、培地バッグ20から遠心分離容器2a,2b内に培地を供給する場合には、制御部10は、バルブV1,V2,V5を開くとともに、チューブポンプ8を正回転させる。また、遠心分離容器2a,2b内の液体を排液バッグ25に排出する場合には、制御部10は、バルブV1,V2,V7を開くとともに、チューブポンプ8を逆回転させる。
【0031】
このように構成された細胞処理装置1の作用について、図2に示すフローチャートを用いて以下に説明する。
まず、カニューレ等を患者の体内に挿入して、生体内の脂肪組織Aを吸引する(ステップS1)。以下、このように吸引した脂肪組織Aを消化して細胞群を取り出す細胞処理工程(ステップS10)と、細胞処理工程により得られた細胞群を培養する培養工程(ステップS20)とに分けて説明する。
【0032】
ステップS10に示す細胞処理工程では、まず、処理容器12の蓋12cに設けられた脂肪注入ポート12eから、処理容器12内に脂肪組織A(チューメセント液入り)を注入する(ステップS2)。
【0033】
次に、処理容器12内の脂肪組織Aの洗浄を行う(ステップS3)。
具体的には、処理容器12内のチューメッセント液を排出した後に、処理容器12内に洗浄液を供給し、脂肪組織A内の赤血球を洗浄液中に浮遊させ、この洗浄液を処理容器12から排出する。この動作を数回繰り返すことで、脂肪組織Aの洗浄を行う。
【0034】
次に、処理容器12内の脂肪組織Aの消化を行う(ステップS4)。
具体的には、処理容器12内に消化酵素液Bを投入し、振とう機14を作動させて、処理容器12内で脂肪組織Aと消化酵素液Bとを攪拌させて、消化酵素による脂肪組織Aの消化を促進する。そして、振とう機14を停止して放置することにより、処理容器12内の脂肪組織Aを2層(上層は成熟脂肪組織A、下層は消化後の細胞懸濁液C)に分離する。
【0035】
次に、バルブV1,V2,V6を開くとともに、チューブポンプ8を正回転させることで、組織消化部11から遠心分離容器2a,2b内へ細胞懸濁液Cを移送する(ステップS5)。
【0036】
次に、遠心分離容器2a,2bの細胞懸濁液Cの洗浄を行う(ステップS6)。
具体的には、まず、モータ4を作動させ、遠心分離容器2a,2bを底部が半径方向外方に向かうように回転させる。これにより、遠心分離容器2a,2b内の細胞懸濁液Cは、その成分の比重の差によって細胞群と上澄み液とに遠心分離される。
【0037】
次に、モータ4を停止して遠心回転を止めた後、バルブV1,V2,V7を開くとともに、チューブポンプ8を逆回転させることで、遠心分離容器2a,2b内の上澄み液を排液バッグ25に排出する。
そして、バルブV1,V2,V3(V4)を開くとともに、チューブポンプ8を正回転させることで、洗浄液バッグ6a(洗浄液バッグ6b)から遠心分離容器2a,2b内に洗浄液を供給し、再びモータ4を作動させて遠心分離を行う。
上記の動作を複数回繰り返すことで、遠心分離容器2a,2bの細胞懸濁液Cの洗浄が行われる。
【0038】
次に、遠心分離容器2a,2bの細胞懸濁液Cの濃縮を行う(ステップS7)。
具体的には、ステップS6の洗浄工程と同様に、まず、モータ4を作動させ、遠心分離容器2a,2bを底部が半径方向外方に向かうように回転させる。これにより、遠心分離容器2a,2b内の細胞懸濁液Cは、その成分の比重の差によって細胞群と上澄み液とに遠心分離される。
【0039】
次に、モータ4を停止して遠心回転を止めた後、バルブV1,V2,V7を開くとともに、チューブポンプ8を逆回転させることで、遠心分離容器2a,2b内の上澄み液を排液バッグ25に排出する。
これにより、遠心分離容器2a,2bの細胞懸濁液C(細胞群)の濃縮が行われる。
【0040】
次に、遠心分離容器2a,2b内において遠心分離された細胞群(最終生成物)を取り出す(ステップS8)。
この場合において、最終生成物として得られた細胞群の量が必要量よりも少ない場合には、ステップS20に示す培養工程において、この細胞群の培養を行う。
【0041】
ステップS20に示す培養工程では、まず、バルブV1,V2,V5を開くとともに、チューブポンプ8を正回転させることで、培地バッグ20から遠心分離容器2a,2b内に培地を供給し、細胞群を洗浄液から培地に付け替える(ステップS11)。
【0042】
次に、モータ4を作動させ、遠心分離容器2a,2bを回転させることで、細胞群の再懸濁が行われる(ステップS12)。
次に、図3に示すように、細胞培養の足場材Cを、例えばシリンジ(スキャホールド供給手段)26を使用して、遠心分離容器2a,2b内に注入する(ステップS13)。この足場材Cは、マイクロキャリア、コラーゲン、アルギン酸ビーズ等で一般的にスキャホールドとして機能するものであればよく、治療の目的により変更してもよい。具体的には、骨再生にはリン酸三カルシウムもしくはハイドロキシアパタイトの顆粒体(いずれも例えばオリンパステルモバイオマテリアル社製)、軟骨再生にはコラーゲン(例えばコラーゲン社製)、アルギン酸(例えば共成製薬社製)をゲル状もしくはビーズ状にして足場材Cとして用いる。
【0043】
次に、モータ4を作動させ、遠心分離容器2a,2bを回転させることで、足場材Cに細胞群が均一に播種される(ステップS14)。
なお、上記のステップS13〜ステップS14は必須の工程ではなく、これらの工程を行うことなく細胞群を培養することとしてもよい。
【0044】
次に、シートヒータ22を作動させ、遠心分離容器2a,2b内の細胞群を約37℃に保温して培養する(ステップS15)。
この際、細胞群の培養を促進するために、遠心分離容器2a,2b内の培地の交換を行うことが好ましい。
【0045】
培地を交換する場合(ステップS21)には、まず、モータ4を作動させ、遠心分離容器2a,2bを底部が半径方向外方に向かうように回転させる。これにより、遠心分離容器2a,2b内の細胞懸濁液Cは、その成分の比重の差によって細胞群(足場Dを含む)と上澄み液(培地を含む)とに遠心分離される。
【0046】
この培地を含む上澄み液を排出することで、遠心分離容器2a,2bから古い培地が除去される(ステップS16)。
そして、古い培地を取り除いた後に、新しい培地を遠心分離容器2a,2b内に再度供給することで、細胞群の培養を効果的に行うことができる(ステップS17)。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る細胞処理装置1によれば、組織消化部11内において生体組織が消化されて生成された細胞懸濁液Cを、遠心分離容器2a,2b内に収容して回転することで、比重の違いにより細胞懸濁液Cの各成分が遠心分離される。具体的には、遠心分離容器2a,2bの底部最下層には比重の大きな細胞群が集められ、その上層には脂質や血漿等の上清が集められる。そして、このように分離された細胞群を、遠心分離容器2a,2b内においてシートヒータ22により保温して培養することができる。
【0048】
このようにすることで、生体組織から取り出した細胞群を培養して増やすことができ、患者から採取する生体組織量を少なく済ませて、組織採取時の患者の負担を軽減することができる。さらに、遠心分離容器2a,2b内において細胞群の培養を行うことができるため、一連の処理を閉鎖系により行うことができ、コンタミネーションの危険性を低減するとともに、作業者の手間を省くことができる。
【0049】
また、制御部10によりバルブV1〜V7の開閉動作およびチューブポンプ8の回転方向を制御することで、遠心分離容器2a,2bへの給液を洗浄水と培地とで切り替えることができる。これにより、遠心分離容器2a,2b内に洗浄水を供給することで、細胞群の洗浄を行うことができる。また、遠心分離容器2a,2b内に培地を供給することで、細胞群の培養を促進することができる。
【0050】
また、チューブポンプ8より、遠心分離容器2a,2b内の液体を排液容器に排出することができる。これにより、遠心分離容器2a,2b内の洗浄液を入れ替えて細胞群の洗浄性を向上するとともに、遠心分離容器2a,2b内の培地を入れ替えて細胞群の培養を促進することができる。
【0051】
また、遠心分離容器2a,2b内に足場Dを供給することで、遠心分離容器2a,2bの内壁ではなく、足場D表面に細胞を培養させることができる。これにより、遠心分離容器2a,2bの内壁から細胞群を剥離する必要性を排除することができ、細胞群を容易に回収することができる。なお、足場Dは、培地に混入させて遠心分離容器2a,2b内に供給することとしてもよく、培地とは別系統で遠心分離容器2a,2b内に供給することとしてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、遠心分離容器2a,2b内の細胞群を培養するための保温手段として、遠心分離機5全体を収容する筐体にシートヒータ22を設けることとしたが、これに代えて、遠心分離容器のそれぞれに保温手段を設けることとしてもよい。
【0053】
また、本実施形態において、2つの洗浄液バッグと1つの培地バッグとを備えた構成を例示したが、本発明はこれらバッグの数に限定されるものではない。例えば、洗浄液バッグを1つあるいは3つ以上設けることとしてもよく、2つ以上の培地バッグを設けることとしてもよい。また、培地バッグ20を設けない構成として、培地を供給することなく保温のみで細胞群を培養することとしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 細胞処理装置
2a,2b 遠心分離容器
3 ロータ
3a 支柱
3b アーム
3c バケット
4 モータ
5 遠心分離機
6a,6b 洗浄液バッグ(洗浄液容器)
7 チューブ(配管)
8 チューブポンプ(給液手段、排液手段)
10 制御部(給液切替手段)
11 組織消化部(消化容器)
12 処理容器
13 フィルタ
14 振とう機
15 チューブ(配管)
16 シートヒータ
20 培地バッグ(培地容器)
21 筐体
22 シートヒータ(保温手段)
25 排液バッグ(排液容器)
26 シリンジ(スキャホールド供給手段)
A 脂肪組織
B 消化酵素液
C 細胞懸濁液
D 足場(スキャホールド)
V1〜V7 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を消化して細胞懸濁液を生成する消化容器と、
該消化容器で生成された細胞懸濁液を収容して回転させ、細胞懸濁液を上清と細胞群とに遠心分離する遠心分離容器と、
該遠心分離容器内の細胞群を保温する保温手段とを備える細胞処理装置。
【請求項2】
洗浄水を貯留する洗浄液容器と、
培地を貯留する培地容器と、
前記遠心分離容器内へ液体を供給する給液手段と、
前記洗浄液容器と前記培地容器と前記給液手段とを接続する配管と、
該配管に設けられ、前記遠心分離容器への給液を洗浄水と培地とで切り替える給液切替手段とを備える請求項1に記載の細胞処理装置。
【請求項3】
前記遠心分離容器内の液体を排出する排液手段と、
該排液手段より排出された液体を貯留する排液容器とを備える請求項2に記載の細胞処理装置。
【請求項4】
前記遠心分離容器内にスキャホールドを供給するスキャホールド供給手段を備える請求項1に記載の細胞処理装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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