説明

細胞培養容器及びその製造方法

【課題】本発明は容器内底面の、周側壁部の下端近傍も含めた全面に機能性有機化合物層が設けられた細胞培養容器及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】表面上に機能性有機化合物層411が固定された底部402を用意し、底部402の周縁に、周側壁部403を、その下端面430の少なくとも内周寄りの部分が、機能性有機化合物層411の周縁部に載るように接合することにより、底面の全面に機能性有機化合物層411が設けられた細胞培養容器420を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞培養容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面に細胞培養される機能性ポリマー(温度応答性ポリマー)の層を被覆した細胞培養支持体(シャーレなどの細胞培養容器)が特許文献1に記載されている。
この細胞培養支持体を用いることにより、温度を変化させるだけで培養・増殖後の細胞を破壊することなく細胞支持体から容易に剥離して回収することができる。
特許文献1では細胞培養容器を個別にバッチ処理して機能性有機化合物層を設ける方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−211865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機能性有機化合物層を備える細胞培養容器の効率的な製造方法として、基材層上に機能性有機化合物層を形成した、フィルム状、板状等の機能性基体を予め製造しておき、細胞培養容器の底面に固定する方法がある。図1には従来技術の一例として、底部101と周側壁部102とを有し、上面に開放された皿形状の細胞培養容器100の容器底面に、基材層112と機能性有機化合物層111を備えた機能性基体110を固定する場合を示す。このとき、機能性基体110の外周は、周側壁部102の内周よりも若干小さくする必要がある。このため、底部101の容器内側の面上の全面に機能性有機化合物層111を形成することは困難であり、底部101の容器内側の面上の、周側壁部の下端と接する部分の少なくとも一部は、機能性有機化合物層が形成されていない部分となる。この結果、細胞接着性、細胞易剥離性等の所望の機能が十分に発揮されないという問題がある。例えば、温度応答性ポリマー層上で細胞培養を行って細胞シートを形成し、温度変化により細胞シートを剥離させ回収する場合において、温度応答性ポリマー層が存在しない容器底面上に細胞シートが接着してしまい、細胞シートの剥離回収が困難となる問題がある。
そこで本発明は、底面の全面に機能性有機化合物層が設けられた細胞培養容器及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、表面上に機能性有機化合物層が固定された底部を用意し、当該底部の周縁に、周側壁部を、その下端面の少なくとも内周寄りの部分が、機能性有機化合物層の周縁部に載るように設けることにより、底面の全面に機能性有機化合物層が設けられた細胞培養容器を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)細胞培養容器であって、
容器内底面の方向に沿って広がる機能性有機化合物層を備える底部と、
前記底部の周縁に立設された、その下端面のうち少なくとも内周寄りの部分が、前記機能性有機化合物層の周縁部に載っている周側壁部と
を備える細胞培養容器。
【0007】
(2)前記底部が、
底板部材と、
基材層、及び、該基材層の表面に積層された機能性有機化合物層を備える、前記底板部材の容器内側の表面に、機能性有機化合物層が容器内側に向くように配置された機能性基体と
の組み合わせである、
(1)の細胞培養容器。
【0008】
(3)前記底部が、容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える底板部材である、(1)の細胞培養容器。
【0009】
(4)前記底部が、フィルム基材層、及び、該フィルム基材層の容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える機能性フィルムである、(1)の細胞培養容器。
【0010】
(5)周側壁部の下端面に対向する上端面を備える枠状支持部を更に備え、
周側壁部の下端面の内周寄りの部分が、機能性フィルムの、機能性有機化合物層側の面の周縁部に載っており、
機能性フィルムの、フィルム基材層側の面の周縁部が、枠状支持部の上端面の内周寄りの部分に載っており、
前記機能性フィルムの周縁部が、周側壁部の下端面の内周寄りの部分と、該部分に対向する、枠状支持部の上端面の内周寄りの部分とによって把持されるように、周側壁部の下端面の外周寄りの部分と、該部分に対向する、枠状支持部の上端面の外周寄りの部分とが接合されている、(4)の細胞培養容器。
【0011】
(6)周側壁部の下端面の内周寄りの、機能性フィルムの機能性有機化合物層側の面と接する部分が、弾性材料を含んでおり、
枠状支持部の上端面の内周寄りの、機能性フィルムのフィルム基材層側の面と接する部分が、弾性材料を含んでいる、
(5)の細胞培養容器。
【0012】
(7)細胞培養容器の製造方法であって、
底板部材の表面に、基材層、及び、該基材層の表面に積層された機能性有機化合物層を備える機能性基体を、機能性有機化合物層が容器内側に向くように配置する工程と、
周側壁部を、その下端面のうち少なくとも内周寄りの部分が、前記機能性有機化合物層の周縁部に載るように配置し、前記底板部材及び/又は前記機能性基体に接合する工程と、
を含む方法。
【0013】
(8)細胞培養容器の製造方法であって、
容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える底板部材の表面に、周側壁部を、その下端面のうち少なくとも内周寄りの部分が、前記機能性有機化合物層の周縁部に載るように配置し、前記周側壁部と前記底板部材とを接合する工程と、
を含む方法。
【0014】
(9)細胞培養容器の製造方法であって、
フィルム基材層及び該フィルム基材層の上に積層された機能性有機化合物層を含む機能性フィルム、周側壁部、並びに、周側壁部の下端面と対向する上端面を備える枠状支持部を準備する工程と、
機能性フィルムの、機能性有機化合物層側の面の周縁部に、周側壁部の下端面の内周寄りの部分が接触し、フィルム基材層側の面の周縁部に、枠状支持部の上端面の内周寄りの部分が接触し、周側壁部の下端面の外周寄りの部分と枠状支持部の上端面の外周寄りの部分とが機能性フィルムの外周よりも外側位置において対向するように配置する工程と、
機能性フィルムの周縁部を、周側壁部の下端面の内周寄りの部分と枠状支持部の上端面の内周寄りの部分とにより把持しながら、周側壁部の下端面の外周寄りの部分と枠状支持部の上端面の外周寄りの部分とを接合する工程と
を含む方法。
【0015】
(10)周側壁部の下端面の内周寄りの、機能性フィルムの機能性有機化合物層側の面と接する部分が、弾性材料を含んでおり、
枠状支持部の上端面の内周寄りの、機能性フィルムのフィルム基材層側の面と接する部分が、弾性材料を含んでいる、
(9)の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、容器内底面の全面に機能性有機化合物層が設けられた細胞培養容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、上面に開放された皿形状の細胞培養容器(シャーレ)の容器底面に機能性基体を固定する従来技術の一例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の細胞培養容器の全体形状の一例(皿形状)を示す図である。
【図3】本発明の細胞培養容器の全体形状の一例(フラスコ形状)を示す図である。
【図4】底板部材と、基材層及び機能性有機化合物層を備える機能性基体との組み合わせを底部とする、本発明の第1実施形態に係る細胞培養容器の製造方法の一例を示す。
【図5】底板部材と、基材層及び機能性有機化合物層を備える機能性基体との組み合わせを底部とする、本発明の第1実施形態に係る細胞培養容器の製造方法の他の一例を示す。
【図6】底板部材と、基材層及び機能性有機化合物層を備える機能性基体との組み合わせを底部とする、本発明の第1実施形態に係る細胞培養容器の製造方法の他の一例を示す。
【図7】容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える底板部材を底部とする、本発明の第2実施形態に係る細胞培養容器の製造方法の一例を示す。
【図8】容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える底板部材を底部とする、本発明の第2実施形態に係る細胞培養容器の製造方法の他の一例を示す。
【図9】フィルム基材層及び機能性有機化合物層を備える機能性フィルムを底部とする、本発明の第3実施形態に係る細胞培養容器の製造方法の一例を示す。
【図10】フィルム基材層及び機能性有機化合物層を備える機能性フィルムを底部とする、本発明の第3実施形態に係る細胞培養容器の製造方法の他の一例を示す。
【図11】フィルム基材層及び機能性有機化合物層を備える機能性フィルムを底部とする、本発明の第3実施形態に係る細胞培養容器の製造方法の、フラスコ型容器への適用例を示す。
【図12】フィルム基材層及び機能性有機化合物層を備える機能性フィルムを底部とする、本発明の第3実施形態に係る細胞培養容器の製造方法の、フラスコ型容器への適用例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明では必要に応じて図面を参照し本発明の特徴を説明するが、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさ、形状は理解を容易にするために適宜誇張して示している。
【0019】
<細胞培養容器の形状>
本発明の細胞培養容器の全体の形状について説明する。
本発明により製造される細胞培養容器は、底部と周側壁部とを備えるものである限り全体の形状は特に限定されない。
【0020】
本発明の細胞培養容器の一例は、図2に示すように、底部201と周側壁部202とを備え、周側壁部202の上端方向に開放された皿形状の細胞培養容器200である。底部201の容器内底面には機能性有機化合物層210が設けられる。
【0021】
本発明の細胞培養容器の他の一例は、図3に示すように、底部301と、底部301の周縁に立設された周側壁部302と、周側壁部302の上端部に接合された、底部301に対向配置される天面部303と、周側壁部302の一部に通孔304が穿設されており、通孔304の周縁から容器部外側に延びる首部305を備える、「フラスコ型」と呼ばれる形状の容器部300と、首部305に形成された係止部306を介して着脱可能に装着される蓋310とを備えるフラスコ型細胞培養容器320である。図3Bは容器部300のI−I’断面図を示し、図3CはII−II’断面図を示す。図示していないが、底部301の容器内底面に機能性有機化合物層330が設けられる。
【0022】
本発明において「周側壁部」とは周側壁部のみからなるものであってもよいし、一部に通孔が穿設されており且つ首部を備えた周側壁部であってもよいし、その上端が天面部等により閉じられた形状の周側壁部であってもよい。
【0023】
以下の説明では、最も簡易な構造の実施形態である、皿形状の細胞培養容器200において容器内底面に機能性有機化合物層を形成する実施形態を中心に説明するが、本発明はこの形態には限定されない。
【0024】
<細胞培養容器の材料>
底板部材、周側壁部、枠状支持部、蓋などの他の細胞培養容器の部材を形成する材料は特に限定されず、細胞培養において一般的に用いられる材料を用いることができる。例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等の樹脂材料、表面親水化処理を施した上記の少なくとも1種を含む樹脂材料、及びガラスや石英等の無機材料であることができるが、好ましくは樹脂材料である。樹脂材料としては、ポリスチレン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
【0025】
<機能性有機化合物層>
本発明では、底板部材の容器内側の表面又は機能性基体の表面に、機能性有機化合物層が設けられる。
【0026】
機能性有機化合物層を構成する有機化合物としては、所望の機能を有する層であれば特に限定されないが、より好ましくは、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化することが可能な表面を有する刺激応答性ポリマーや、1つ以上のエチレングリコール単位(CH−CH−O)からなるエチレングリコール鎖等の親水性化合物が挙げられる。
【0027】
機能性有機化合物層の膜厚は、例えば、0.5nm〜300nmの範囲内とするよく、なかでも1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
【0028】
以下「刺激応答性ポリマー層」及び「親水性化合物層」の好適な実施形態について説明する。
【0029】
<刺激応答性ポリマー層>
機能性有機化合物層は、刺激応答性ポリマー層であることが特に好ましい。刺激応答性ポリマー層とは、所定の刺激によって表面の細胞の接着度合いが変化するポリマーを含む層である。刺激応答性ポリマーとしては、温度応答性ポリマー、pH応答性ポリマー、イオン応答性ポリマー、光応答性ポリマーなどを挙げることができる。なかでも温度応答性ポリマーが、刺激の付与が容易であることから好ましい。
【0030】
温度応答性ポリマーとして、例えば、細胞を培養する温度では細胞接着性を示し、作製した細胞シートを剥離する時の温度では細胞非接着性を示すものを用いるとよい。例えば、温度応答性ポリマーは、臨界溶解温度未満の温度では周囲の水に対する親和性が向上し、ポリマーが水を取り込んで膨潤して表面に細胞を接着しにくくする性質(細胞非接着性)を示し、同温度以上の温度ではポリマーから水が脱離することでポリマーが収縮して表面に細胞を接着しやすくする性質(細胞接着性)を示すものを用いるとよい。このような臨界溶解温度は、下限臨界溶解温度と呼ばれる。下限臨界溶解温度Tが0℃〜80℃、さらに好ましくは0℃〜50℃である温度応答性ポリマーを用いるとよい。Tが0℃〜80℃であると、細胞を安定的に培養できるからである。
【0031】
好適な温度応答性ポリマーとしてはアクリル系ポリマー又はメタクリル系ポリマーが挙げられる。具体的に好適な温度応答性ポリマーとしては、例えばポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35℃)、及びポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=32℃)等が挙げられる。
【0032】
これらのポリマーを形成するためのモノマーとしては、放射線照射によって重合し得るモノマーを用いることができる。モノマーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、及びビニルエーテル誘導体等が挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。モノマーが一種類単独で使用された場合、基材上に形成されるポリマーはホモポリマーとなり、モノマーが複数種一緒に使用された場合、基材上に形成されるポリマーはヘテロポリマーとなるが、どちらの形態も本発明に包含される。
【0033】
また、増殖細胞の種類によってTを調節する必要がある場合や、被覆物質と細胞培養支持体との相互作用を高める必要が生じた場合や、細胞支持体の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとその他のポリマーとのグラフト又はブロック共重合体、あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質が損なわれない範囲で架橋することも可能である。
【0034】
pH応答性ポリマー及びイオン応答性ポリマーは作製しようとする細胞シートに適したものを適宜選択することができる。
【0035】
刺激応答性ポリマー層は、重合して目的の刺激応答性ポリマーを形成するモノマーと、該モノマーを溶解しうる有機溶媒と含む塗布用組成物を調製し、これを慣用の塗布方法に従って、底板部材又は基材層の表面に塗布して塗膜を形成し、次に、該塗膜に放射線照射等の適当な手段により塗膜中のモノマーを重合してポリマーを形成するとともに、底板部材又は基材層の表面とポリマーとの間にグラフト化反応を生じさせることにより形成することができる。
【0036】
<親水性化合物層>
機能性有機化合物層の他の実施形態として、1つ以上のエチレングリコール単位からなるエチレングリコール鎖(複数のエチレングリコール単位からなるエチレングリコール鎖は、「ポリエチレングリコール鎖」ということができる)等の親水性化合物の層が挙げられる。
【0037】
エチレングリコール鎖の末端は水酸基により封鎖された形態であってもよいし、エチレングリコール鎖の末端に生体関連物質等の他の物質が共有結合により連結された形態であってもよい。
【0038】
末端が水酸基により封鎖されたエチレングリコール鎖を含む層は、細胞が接着し難い親水性の表面を提供することができる。
【0039】
エチレングリコール鎖の末端に共有結合されうる生体関連物質としては、抗原、抗体、DNA、RNA、ペプチド、ホルモン、酵素、サイトカイン、糖鎖、脂質、補酵素、酵素阻害剤、細胞、その他の機能を有するタンパク質が含まれる。更に、このような生体関連物質と親和性を有する低分子化合物、及び高分子化合物も生体関連物質の範囲に含まれる。
【0040】
エチレングリコール鎖等の親水性化合物の層を、樹脂製の底板部材又は基材層の表面に固定化するためには、予め、底板部材又は基材層の表面に、該表面に物理的に吸着可能であって、エチレングリコール鎖の末端の水酸基と反応して共有結合を形成可能な官能基を側鎖に含むポリシロキサンを含むプライマー層を設ける。ポリシロキサンの側鎖上の官能基としては、グリシジル基又はエポキシ基が好ましい。プライマー層は、基材層の表面に、所望の側鎖を有するシラノール化合物を適用し、該表面上で縮合重合してポリシロキサンに変換することにより形成することができる。
【0041】
次いで、プライマー層の官能基と、エチレングリコール又はエチレングリコール単位が2以上繰り返されたポリエチレングリコールの水酸基とを反応させて共有結合を形成し、エチレングリコール鎖を固定化する。このとき、触媒量の濃硫酸を含むエチレングリコール又はポリエチレングリコールをプライマー層に接触させる。
末端が水酸基により封鎖されたエチレングリコール鎖を含む層はこのようにして形成される。
【0042】
更に、必要に応じて、エチレングリコール鎖の一端に、他の物質との共有結合を形成することが可能な、少なくとも1つの官能基を直接的又は間接的に連結させる。官能基の導入方法は特に限定されない。
【0043】
<機能性基体>
本発明の第1実施形態では、基材層及び機能性有機化合物層を備える機能性基体を用いる。
本発明において「基体」とは、所定の構造を有している限り、フィルムであってもよいし、板状体であってもよい。
【0044】
フィルム状の機能性基体(以下「機能性フィルム」と呼ぶことがある)は、好ましくはロール状に巻き取り可能な可撓性を有するものである。可撓性の機能性フィルムは、ロール・ツー・ロール法による大量生産が容易であるため好ましい。機能性フィルムは本発明の第3実施形態において好適に用いられる。
【0045】
機能性基体は、樹脂製の基材層に機能性有機化合物層を適当な方法により形成することにより製造することができる。樹脂製の基材層と機能性有機化合物層との間には必要に応じて1つ以上の他の層(例えば親水性化合物層を樹脂製基材層に固定するための上記プライマー層)が存在していてもよい。
【0046】
機能性基体の平面形状は、固定される領域の形状に応じた任意の形状であることができる。例えば、三角形、四角形(長方形、正方形、平行四辺形、菱形等)、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形や、円形、楕円形等の形状であることができる。
【0047】
基材層は、最終的な機能性基体に応じて適宜選択される。機能性基体が板状であれば板状の樹脂製基材層が用いられ、機能性基体がフィルム状であればフィルム状の樹脂製基材層(以下「フィルム基材層」という)が用いられる。
【0048】
基材層は、一方の表面に上述の機能性有機化合物層を形成することが可能な樹脂材料を含むものであればよく、材料の種類は特に限定されない。典型的には、基材層の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリル等が挙げられる。
【0049】
基材層の、機能性有機化合物層が形成される側の表面は、易接着処理された表面であることができる。「易接着処理」とは、例えば、ポリエステル、アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、シランカップリング剤、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)等の易接着剤による処理を指す。
【0050】
基材層の厚さは適宜選択することができる。基材層がフィルム基材層である場合、その厚さ(フィルム基材層が基材の層に加えて易接着層を備える場合は、易接着層を含むフィルム基材層の全体の厚さを指す)は、特に制限は無いが可撓性を付与する厚さであることが好ましく、例えば5〜500μm、より好ましくは20〜500μm、特に好ましくは50〜250μmである。
【0051】
機能性基体が備える機能性有機化合物層の機能及び構造は既に述べたとおりである。
基材層の表面での機能性有機化合物層の形成は、刺激応答性ポリマー層及び親水性化合物層に関して詳述した方法等の適当な方法により行うことができる。基材層と機能性有機化合物層との間にはプライマー層等の、機能性有機化合物層の積層に必要な層が介在していてもよい。
【0052】
<機能性有機化合物層が積層された底板部材>
本発明の第2実施形態では、容器内側の表面に機能性有機化合物層が形成された底板部材を用いる。
【0053】
この場合、底板部材は一方の表面に上述の機能性有機化合物層を形成することが可能な樹脂材料を含むものであればよく、細胞培養容器の材料に関して説明した材料のうち樹脂材料により形成されていることが特に好ましい。
【0054】
底板部材上の機能性有機化合物層の機能及び構造は既に述べたとおりである。
底板部材の表面での機能性有機化合物層の形成は、刺激応答性ポリマー層及び親水性化合物層に関して詳述した方法等の適当な方法により行うことができる。底板部材表面と機能性有機化合物層との間にはプライマー層等の、機能性有機化合物層の積層に必要な層が介在していてもよい。
【0055】
<本発明の細胞培養容器の特徴>
本発明の細胞培養容器は、
容器内底面の方向に沿って広がる機能性有機化合物層を備える底部と、
前記底部の周縁に立設された、その下端面のうち少なくとも内周寄りの部分が、前記機能性有機化合物層の周縁部に載っている周側壁部と
を備えることを特徴とする。
【0056】
この特徴を備える細胞培養容器は、容器内底面の全面、すなわち、容器内底面の中央部だけでなく、周側壁部の下端と接する部分にまで、隙間なく機能性有機化合物層を有する。容器内底面の周側壁部の下端と接する部分にまで機能性有機化合物層を設けることが困難であった図1に示すような従来技術とは異なり、細胞接着性、細胞易剥離性等の所望の機能が十分に発揮させることが可能である。
【0057】
本発明の細胞培養容器は底部の形態に応じて3つの実施形態に大別される。
本発明の細胞培養容器の第1実施形態では、底部が、底板部材と機能性基体との組み合わせである。
本発明の細胞培養容器の第2実施形態では、底部が、容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える底板部材である。
本発明の細胞培養容器の第3実施形態では、底部が、機能性フィルムである。
以下、各実施形態について、その構造及び製造方法を具体的に説明する。
【0058】
<第1実施形態>
本発明の第1の実施形態を図4〜6を参照して説明する。
図4〜6に断面図を示す例において製造される細胞培養容器420、520、620は図2に示すような皿形状の細胞培養容器200である。
【0059】
図4の実施形態では、底板部材401と機能性基体402とを組み合わせて細胞培養容器の底部を構成する。
機能性基体402は、基材層412及び機能性有機化合物層411を少なくとも備える。
【0060】
細胞培養容器420は、底板部材401の容器内側の表面に、機能性基体402を配置して固定する工程(図4A及びB)と、周側壁部403を、その下端面430が、好ましくはその全周にわたり、機能性有機化合物層411の周縁部に載るように配置し、機能性有機化合物層411を介して機能性基体402に接合する。
【0061】
図4に示す形態では、底板部材401と機能性基体402とが固定され、機能性基体402の機能性有機化合物層411の周縁部と周側壁部403の下端面430とが固定される。
【0062】
底板部材401と機能性基体402とを固定する方法は特に限定されない。例えば、両者を接着剤、粘着剤、ヒートシール性樹脂等を介して固定する方法や、樹脂製の底板部材401と樹脂製の基材層412とを、超音波溶着や、レーザー溶着等の樹脂接合技術を用いて接合する方法等が挙げられる。図示していないが、接着剤、粘着剤、ヒートシール性樹脂等を介して部材同士を固定する場合には、固定される部材間に接着剤層、粘着剤層、ヒートシール性樹脂層等が適宜存在する。
【0063】
機能性基体402の機能性有機化合物層411の周縁部と周側壁部403の下端面430とを接合する方法もまた特に限定されない。例えば、両者を接着剤、粘着剤、ヒートシール性樹脂等を介して固定する方法や、機能性有機化合物層411を介して、樹脂製の基材層412と樹脂製の周側壁部403とを、超音波溶着や、レーザー溶着等の樹脂接合技術を用いて接合する方法等が挙げられる。
【0064】
図4の例では、周側壁部403の下端面430の全体が機能性有機化合物層411の周縁部に接しているが、これには限定されず、周側壁部403の下端面430の少なくとも内周寄りの部分が、機能性有機化合物層411の周縁部に接していればよい。
【0065】
図5及び図6には、周側壁部の下端面の内周寄りの部分だけが機能性有機化合物層の周縁部に載り、周側壁部の下端面の外周寄りの部分が底板部材と接合される例を示す。
【0066】
図5に示す例では、底板部材401と、機能性基体502と、周側壁部403とを図5Dの順に重ねた場合の平面視において、底板部材401の外周と、周側壁部403の下端面430の外周が、それぞれ、機能性有機化合物層511と基材層512を備える機能性基体502の外周よりも外側に位置し、且つ、周側壁部403の下端面430の内周は、機能性基体502の外周よりも内側に位置する。
【0067】
図5に示す例では、はじめに底板部材401と機能性基体502とを、底板部材401の周縁が機能性基体502の周縁よりも外側に位置するように配置する(図5B)。続いて周側壁部403を、その下端面430の内周寄りの部分が機能性基体502の機能性有機化合物層511の周縁部に載り、下端面430の外周寄りの部分が、機能性基体502の周縁よりも外側に位置するように配置する(図5D)。このとき、周側壁部403の下端面430の外周寄りの部分は、底板部材401の容器内側表面の周縁部分と対向する(図5D)。周側壁部403の下端面430の外周寄りの部分と、底板部材401の容器内側表面の周縁部分とを、接着剤、粘着剤、ヒートシール性樹脂等により接合するか、周側壁部403と底板部材401が共に樹脂製である場合は超音波溶着、レーザー溶着等の手段により接合することにより、細胞培養容器520を完成させる(図5E)。
【0068】
底板部材と周側壁部下端面の外周寄りの部分とを接合する図5の例の変形例を図6に示す。図6の例では、周側壁部603において下端面の内周寄りの部分631と、外周寄りの部分632との高さ位置が異なり、後者632が前者631よりも底部方向に突出しており、前者631が機能性基体502の機能性有機化合物層511の周縁部に載った状態で、後者632が底板部材401の容器内側表面の周縁部分と当接するように形成されている。
【0069】
図6に示す例では、先ず底板部材401と機能性基体502とを、底板部材401の周縁が機能性基体502の周縁よりも外側に位置するように配置する(図6B)。続いて周側壁部603を、その下端面の内周寄りの部分631が機能性基体502の機能性有機化合物層511の周縁部に載り、下端面の外周寄りの部分632が、底板部材401の容器内側表面の周縁部分と当接するように配置する(図6D)。次に周側壁部603の下端面の外周寄りの部分632と底板部材401の容器内側表面の周縁部分とを、接着剤、粘着剤、ヒートシール性樹脂等により接合するか、周側壁部603と底板部材401が共に樹脂製である場合は超音波溶着、レーザー溶着等の手段により接合することにより、細胞培養容器620を完成させる(図6E)。
【0070】
図5及び6に示す例では、機能性基体502の周縁が、周側壁部の下端面の内周寄りの部分と、底板部材401の表面とにより把持されており、この把持状態は周側壁部と底板部材との接合により保持されるため、底板部材401と機能性基体502とが相互に接合されていることは必須ではない。
【0071】
<第2実施形態>
本発明の第2の実施形態を図7〜8を参照して説明する。
図7〜8に横断面を示す例において製造される細胞培養容器720、820は図2に示すような皿形状の細胞培養容器200である。
【0072】
図7の実施形態では、容器内側の表面上の積層された機能性有機化合物層711を備える底板部材701を用意する(図7B)。機能性有機化合物層711は底板部材701の容器内側の表面の全体に形成されている。周側壁部403を、その下端面430が機能性有機化合物層711の周縁部に載るように配置し、機能性有機化合物層711を介して周側壁部403と底板部材701とを、第1実施形態について説明したのと同様の手段により接合して、細胞培養容器720を完成させる(図7D)。
機能性有機化合物層711の機能及び構造は既に述べたとおりである。
【0073】
図7の例では、周側壁部403の下端面430の全体が機能性有機化合物層711の周縁部に接した状態で接合されているが、これには限定されず、周側壁部403の下端面430の少なくとも内周寄りの部分が、機能性有機化合物層711の周縁部に接していればよい。
【0074】
図8には、周側壁部の下端面の内周寄りの部分が機能性有機化合物層の周縁部に載り、周側壁部の下端面の外周寄りの部分が底板部材と接合される例を示す。図8に示す例では、底板部材701と周側壁部403とが図8Dに示すように重ねられた場合の平面視において、底板部材701の外周と、周側壁部403の下端面430の外周は、それぞれ、機能性有機化合物層811の外周よりも外側に位置する。そして、周側壁部403の下端面430の内周は、機能性有機化合物層811の外周よりも内側に位置する。この実施形態では、まず底板部材701の容器内側の表面に、機能性有機化合物層811を、底板部材701の周縁が機能性有機化合物層811の周縁よりも外側に位置するように形成する(図8B)。続いて周側壁部403を、その下端面430の内周寄りの部分が機能性有機化合物層811の周縁部に載り、下端面430の外周寄りの部分が、機能性有機化合物層811の周縁よりも外側に位置するように配置する(図8D)。このとき、周側壁部403の下端面430の外周寄りの部分は、底板部材701の容器内側表面の周縁部分と対向する(図8D)。周側壁部403の下端面430の外周寄りの部分と、底板部材701の容器内側表面の周縁部分とを第1実施形態について説明したのと同様の手段により接合することにより、細胞培養容器820を完成させる(図8E)。
【0075】
<第3実施形態>
本発明の第3の実施形態を図9〜10を参照して説明する。
図9〜10に横断面を示す例において製造される細胞培養容器920、1020は図2に示すような皿形状の細胞培養容器200である。
【0076】
第3実施形態では、細胞培養容器の底部として、フィルム基材層、及び、該フィルム基材層の容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える機能性フィルムを用いることを特徴とする。機能性フィルムの特徴については上述したとおりである。
【0077】
機能性フィルムを細胞培養容器の底部とする場合には、機能性フィルムが脱落しないよう、図9に示す方式で機能性フィルムを固定することが好ましい。まず、フィルム基材層912及び該フィルム基材層の上に積層された機能性有機化合物層911を含む機能性フィルム901と、周側壁部403と、周側壁部403の下端面430と対向する上端面930を備える枠状支持部940を準備する(図9A)。ここで、図9Bのように重ね合わせたときに平面視において、機能性フィルム901の外周は、周側壁部403の下端面430及び枠状支持部940の上端面930の内周よりも外側にあり、外周よりも内側にあるように構成されている。本発明において「枠状支持部」とは、周側壁部の下端面と対向する上端面を備えた枠状の形状を有したものである。
【0078】
機能性フィルム901、周側壁部403、及び、枠状支持部940を、機能性フィルム901の、機能性有機化合物層911側の面の周縁部に、周側壁部403の下端面430の内周寄りの部分が接触し、フィルム基材層912側の面の周縁部に、枠状支持部940の上端面930の内周寄りの部分が接触し、周側壁部403の下端面430の外周寄りの部分と枠状支持部940の上端面930の外周寄りの部分とが機能性フィルム901の外周よりも外側位置において対向するように配置する(図9B)。
【0079】
続いて、機能性フィルム901の周縁部を、周側壁部403の下端面430の内周寄りの部分と枠状支持部940の上端面930の内周寄りの部分とにより把持しながら、周側壁部403の下端面430の外周寄りの部分と、枠状支持部940の上端面930の外周寄りの部分とを第1実施形態と同様の手段により接合することにより、細胞培養容器920を完成させる(図9C)。周側壁部403の下端面430の内周寄りの部分と枠状支持部940の上端面930の内周寄りの部分とにより、好ましくは全周縁が、把持されていることにより、機能性フィルム901の脱落が防止される。
【0080】
図示していないが、周側壁部403の下端面430の外周寄りの部分と、枠状支持部940の上端面930の外周寄りの部分との接合を容易にするために、図6のように、周側壁部403の下端面430の外周寄りの部分がその内周寄りの部分よりも底部方向に突出している構成、及び/又は、枠状支持部940の上端面930の外周寄りの部分がその内周寄りの部分よりも周側壁部方向に突出している構成とすることにより、周側壁部403の下端面430の外周寄りの部分と、枠状支持部940の上端面930の外周寄りの部分とが当接するようにしてもよい。
【0081】
更に、周側壁部の下端面と枠状支持部の上端面とによる機能性フィルム周縁部の把持をより強固にするための変形例を図10に示す。この変形例では、周側壁部1003の下端面1030の内周寄りの部分が、好ましくは全周にわたり、機能性フィルム901の機能性有機化合物層911側の面と密着する弾性材料1031を含んでおり、枠状支持部1004の上端面1040の内周寄りの部分が、好ましくは全周にわたり、フィルム基材層912側の面と密着する弾性材料1041を含んでいる。弾性材料1031、1041としては、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系ゴム材料が挙げられる。弾性材料1031、1041による密着により、機能性フィルム周縁部の把持がより強固になるとともに、機能性フィルム周縁部からの液漏れを防ぐことができる。
【0082】
<フラスコ型細胞培養容器>
図4〜10では、皿形状の細胞培養容器を製造する例を示すが、これには限定されない。フラスコ型細胞培養容器などの他の細胞培養容器についても同様に製造できることは当業者にとり自明である。例えば、図4〜10に示す方法で、容器内底面の方向に沿って広がる機能性有機化合物層を備える底部301と、通孔104が穿設されており且つ首部105を備えた、上方に開放された周側壁部302とを組み合わせ、続いて、周側壁部302の上方の開放端に、天面部303を接合して該開放端を閉じることによりフラスコ型容器部300を完成させることができる。
【0083】
或いは、図4〜10に示す方法で、容器内底面の方向に沿って広がる機能性有機化合物層を備える底部301と、通孔104が穿設されており且つ首部105を備えた、上方が天面部303により閉塞された周側壁部302とを組み合わせることによりフラスコ型容器部300を完成させることができる。例えば枠状支持部を用いて機能性フィルムを周側壁部の下端面に固定する本発明の第3実施形態では、図11及び図12に示すように、通孔及び首部を備えた天面部により閉塞された周側壁部1101と、機能性フィルム1102と、周側壁部1101の下端面に対向する上端面を有する枠状支持部1103とを配置し、機能性フィルム1102の周縁部を、周側壁部1101の下端面1230の内周寄りの部分と枠状支持部1103の上端面1240の内周寄りの部分とにより把持しながら、周側壁部1101の下端面1230の外周寄りの部分と枠状支持部1103の上端面1240の外周寄りの部分とを上述の手段により接合して、フラスコ型容器部1220を製造することができる。
【符号の説明】
【0084】
200,320・・・細胞培養容器
201,301・・・底部
202,302,403,603,1003,1101・・・周側壁部
401,701・・・底板部材
402,502・・・機能性基体
901、1102・・・機能性フィルム
940,1004,1103・・・枠状支持部
210,330,411,511,711,811,911・・・機能性有機化合物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養容器であって、
容器内底面の方向に沿って広がる機能性有機化合物層を備える底部と、
前記底部の周縁に立設された、その下端面のうち少なくとも内周寄りの部分が、前記機能性有機化合物層の周縁部に載っている周側壁部と
を備える細胞培養容器。
【請求項2】
前記底部が、
底板部材と、
基材層、及び、該基材層の表面に積層された機能性有機化合物層を備える、前記底板部材の容器内側の表面に、機能性有機化合物層が容器内側に向くように配置された機能性基体と
の組み合わせである、
請求項1の細胞培養容器。
【請求項3】
前記底部が、容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える底板部材である、請求項1の細胞培養容器。
【請求項4】
前記底部が、フィルム基材層、及び、該フィルム基材層の容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える機能性フィルムである、請求項1の細胞培養容器。
【請求項5】
周側壁部の下端面に対向する上端面を備える枠状支持部を更に備え、
周側壁部の下端面の内周寄りの部分が、機能性フィルムの、機能性有機化合物層側の面の周縁部に載っており、
機能性フィルムの、フィルム基材層側の面の周縁部が、枠状支持部の上端面の内周寄りの部分に載っており、
前記機能性フィルムの周縁部が、周側壁部の下端面の内周寄りの部分と、該部分に対向する、枠状支持部の上端面の内周寄りの部分とによって把持されるように、周側壁部の下端面の外周寄りの部分と、該部分に対向する、枠状支持部の上端面の外周寄りの部分とが接合されている、請求項4の細胞培養容器。
【請求項6】
周側壁部の下端面の内周寄りの、機能性フィルムの機能性有機化合物層側の面と接する部分が、弾性材料を含んでおり、
枠状支持部の上端面の内周寄りの、機能性フィルムのフィルム基材層側の面と接する部分が、弾性材料を含んでいる、
請求項5の細胞培養容器。
【請求項7】
細胞培養容器の製造方法であって、
底板部材の表面に、基材層、及び、該基材層の表面に積層された機能性有機化合物層を備える機能性基体を、機能性有機化合物層が容器内側に向くように配置する工程と、
周側壁部を、その下端面のうち少なくとも内周寄りの部分が、前記機能性有機化合物層の周縁部に載るように配置し、前記底板部材及び/又は前記機能性基体に接合する工程と、
を含む方法。
【請求項8】
細胞培養容器の製造方法であって、
容器内側の表面上に積層された機能性有機化合物層を備える底板部材の表面に、周側壁部を、その下端面のうち少なくとも内周寄りの部分が、前記機能性有機化合物層の周縁部に載るように配置し、前記周側壁部と前記底板部材とを接合する工程と、
を含む方法。
【請求項9】
細胞培養容器の製造方法であって、
フィルム基材層及び該フィルム基材層の上に積層された機能性有機化合物層を含む機能性フィルム、周側壁部、並びに、周側壁部の下端面と対向する上端面を備える枠状支持部を準備する工程と、
機能性フィルムの、機能性有機化合物層側の面の周縁部に、周側壁部の下端面の内周寄りの部分が接触し、フィルム基材層側の面の周縁部に、枠状支持部の上端面の内周寄りの部分が接触し、周側壁部の下端面の外周寄りの部分と枠状支持部の上端面の外周寄りの部分とが機能性フィルムの外周よりも外側位置において対向するように配置する工程と、
機能性フィルムの周縁部を、周側壁部の下端面の内周寄りの部分と枠状支持部の上端面の内周寄りの部分とにより把持しながら、周側壁部の下端面の外周寄りの部分と枠状支持部の上端面の外周寄りの部分とを接合する工程と
を含む方法。
【請求項10】
周側壁部の下端面の内周寄りの、機能性フィルムの機能性有機化合物層側の面と接する部分が、弾性材料を含んでおり、
枠状支持部の上端面の内周寄りの、機能性フィルムのフィルム基材層側の面と接する部分が、弾性材料を含んでいる、
請求項9の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−99280(P2013−99280A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244838(P2011−244838)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】