説明

細胞培養容器及び培養細胞回収方法

【課題】培養細胞をシート状の細胞集合体として、容易に回収することが可能な細胞培養容器及び回収方法を提供すること。
【解決手段】本発明の細胞培養容器は、細胞支持体を備え、当該細胞支持体は、基材上に、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化可能な表面を有する刺激応答性ポリマー層を少なくとも備え、前記細胞支持体を、前記刺激応答性ポリマー層が容器内面側となるように、細胞を培養する際に底部となる領域に、易剥離接着層を介して分離可能に固定してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養容器及び培養細胞回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生医療分野において患者から採取した細胞を生体外で培養してシート状の細胞集合体(以下、細胞シートという。)を作製し、この細胞シートを生体内へ移植することで医療効果を高める試みがなされている。さらに細胞シートを発展させ、生体外で構築した細胞構造体を患者へと移植することが提案されている。
【0003】
細胞シートは、シャーレなどの容器の底面上で細胞培養を行うことにより得られる。容器の面を利用して形成された細胞シートは、接着分子などを介して容器の面と強固に結合しているため、細胞−細胞間の結合を壊さずに容器から細胞シートを剥離することは容易ではない。
【0004】
そこで、容器から細胞シートを効率的に剥離する方法がこれまで検討されてきた。細胞−細胞間の結合を壊さず非侵襲的に容器から細胞シートを剥離する技術としては、細胞の接着度合いが環境温度で変化する温度応答性ポリマーを用いた細胞培養支持体が報告されている。例えば、特許文献1では、基材としてペトリディッシュを用い、このペトリディッシュ基材表面に温度応答性ポリマーとなるモノマーを含む溶液を展開し、これに電子線照射してモノマーを重合させることにより作製した、ペトリディッシュ基材表面に温度応答性ポリマーが固定化されている細胞培養支持体が開示されている。この細胞培養支持体上で細胞を培養し、構築された細胞シートは、温度応答性ポリマーの臨界溶解温度以下の環境下に移すことにより剥離可能となる。
【0005】
従来、特許文献1のような細胞培養支持体から細胞シートを回収する方法としては、図9に示す方法がある。まず、刺激応答性ポリマー層22を底部101に備える細胞培養支持体(細胞培養容器)内で細胞培養を行なう。そうすると、培養細胞310は、図9(A)に示すように、刺激応答性ポリマー層22の表面上に細胞外マトリックス320を介して接着する。次に、図9(B)に示すように、培養細胞310の上面に紙400を付着させた後、図9(C)に示すように、刺激応答性ポリマー層22に所定の刺激を与え、刺激応答性ポリマー層22の表面を細胞非接着性へと変化させ、ピンセットPを用いて、細胞外マトリックス320が付いている状態の培養細胞310と紙とが一体となった培養細胞−紙複合体を剥離させ、細胞培養支持体(細胞培養容器)から取り出す。その後、取り出した培養細胞−紙複合体を生体組織上に、細胞マトリックス320側の面が生体組織と接触するように設置する(図9(D)参照)。そうすると、細胞マトリックス320から分泌される接着タンパクの作用により、細胞シート300が生体組織に接着するので、ピンセットPを用いて、紙だけを慎重に剥離させる(図9(E)参照)。しかしながら、このような紙を用いた細胞シートの回収方法は、作業が煩雑であり、効率面で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5―192130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、培養細胞をシート状の細胞集合体として、容易に回収することが可能な細胞培養容器及び回収方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ね、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化可能な表面を有する層を備える細胞支持体を、容器本体と分離可能に固定させた細胞培養容器によれば、上記課題を解決できることを見出し、発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 細胞支持体を備えた細胞培養容器であって、上記細胞支持体は、基材上に、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化可能な表面を有する刺激応答性ポリマー層を少なくとも備え、上記細胞支持体を、上記刺激応答性ポリマー層が容器内面側となるように、細胞を培養する際に底部となる領域に、易剥離接着層を介して分離可能に固定してなる、上記容器。
【0010】
(2) (1)に記載の細胞培養容器で培養された細胞をシート状の細胞集合体として回収する培養細胞回収方法であって、上記細胞支持体の刺激応答性ポリマー層の表面に培養された細胞が接着している培養細胞−支持体複合体を、細胞培養容器から剥離して分離する工程と、上記培養細胞−支持体複合体の培養細胞を、該培養細胞を容易に接着及び脱離可能な細胞付着面を有する冶具の該面に付着させた後、上記刺激応答性ポリマー層に所定の刺激を与えて、該刺激応答性ポリマー層の表面を細胞非接着性へと変化させ、上記培養細胞−支持体複合体を、培養細胞と、細胞支持体とに分離する工程とを含む、上記方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の細胞培養容器によれば、培養細胞をシート状の細胞集合体として容易に回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る細胞培養容器(ディッシュ型)の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る細胞培養容器(フラスコ型)の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る細胞培養容器(ディッシュ型)における細胞支持体の固定状態の一例を摸式的に示すI−I´断面図である。
【図4】本発明に係る細胞培養容器(ディッシュ型)における細胞支持体の固定状態の一例を摸式的に示すI−I´断面図である。
【図5】本発明に係る細胞培養容器(フラスコ型)における細胞支持体の固定状態の一例を摸式的に示すII−II´断面図である。
【図6】本発明に係る細胞培養容器(フラスコ型)における細胞支持体の固定状態の一例を摸式的に示すIII−III´断面図である。
【図7】本発明に係る細胞培養容器(フラスコ型)における細胞支持体の固定状態の一例を摸式的に示すIII−III´断面図である。
【図8】本発明に係る細胞培養容器(ディッシュ型)から細胞シートを回収する手順の一例を摸式的に示す断面図である。
【図9】従来の細胞培養容器(ディッシュ型)から細胞シートを回収する手順の一例を摸式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の特徴を説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されることはなく、技術思想を逸脱しない範囲において、適宜、変更を加えて実施することが可能である。また、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、理解を容易にするために適宜、誇張して示すことがあり、実際のものとは縮尺が異なる場合がある。
【0014】
[細胞培養容器]
本発明の細胞培養容器は、基材上に、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化可能な表面を有する刺激応答性ポリマー層を少なくとも備える細胞支持体を備えている。そして、本発明の細胞培養容器内では、細胞支持体は、刺激応答性ポリマー層が容器内面側となるように、細胞を培養する際に底部となる領域に、易剥離接着層を介して分離可能に固定されている。
【0015】
本発明に係る細胞培養容器の好ましい実施形態の一例を図1に示す。図1に示す細胞培養容器1は、円形の底部101と、該底部101の周縁に立設された側壁部102とを備え、上方向に開放されている、いわゆる「ディッシュ型」と呼ばれる形状を有している。そして、底部101の上面の略全面に、1つの細胞支持体20が易剥離接着層30(図示せず)を介して分離可能に固定されている。なお、図1では、底部101の形状は円形であるが、これに限定されず、方形、楕円形、多角形などいずれの形状であってもよい。
【0016】
本発明に係る細胞培養容器の好ましい実施形態の他の例を図2に示す。図2に示す細胞培養容器2は、底部201と、該底部201の周縁に立設された側壁部202と、側壁部202の上端部に接合された、底部201に対向配置される天部203とを備えている。また、細胞培養容器2には、液体用の通孔204が設けられている。すなわち、細胞培養容器2は、側壁部202の一部に通孔204が穿設され、通孔204の周縁から容器の外側に延びる首部205を備えており、いわゆる「フラスコ型」と呼ばれる形状を有している。底部201には、1つの細胞支持体20が易剥離接着層30(図示せず)を介して分離可能に固定されている。首部205には、蓋210を係止するための係止部(図示せず)が形成されており、該係止部を介して蓋210が着脱可能に装着される。該蓋210により、細胞培養容器2の内側は閉じられた状態となり、安定して細胞培養を行なうことができる。通孔204より細胞や培地を供給したり、底部201から剥離した細胞支持体20を回収したりすることができる。
【0017】
本発明に係る細胞培養容器は、底部及びその周縁に立設された側壁部を少なくとも備え、細胞及び培地を収容できる形状であれば、他の形状であってもよい。具体的には、本発明に係る細胞培養容器は、例えば、ビーカー、ウェルプレート、ボトル、管などの形状であってもよい。なお、詳細は後述するが、細胞を培養する際に底部となる領域の一部又は全部が細胞支持体である細胞培養容器も本発明の細胞培養容器に包含される。すなわち、細胞培養容器は、細胞支持体が、細胞を培養する際に底部となる領域に配置されることで、細胞と培地とを収容できる構造であってもよい。
【0018】
本発明に係る細胞培養容器を形成する材料は、特に限定されず、細胞培養において一般的に用いられる材料を用いることができる。例えは、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂などの樹脂材料、表面親水化処理を施した上記の少なくとも1種を含む樹脂材料、ガラスや石英などの無機材料が挙げられ、これらの中でも樹脂材料が好ましい。樹脂材料としては、ポリスチレン樹脂又はポリエチレンテレフタレート樹脂であることが好ましい。
【0019】
図1及び2では、細胞支持体は、細胞培養容器の底部に1つ配置されているが、細胞支持体は、底部に少なくとも1つ配置されていればよく、例えば、複数の細胞支持体が底部に並設されていてもよい。また、図1及び2では、細胞支持体は、細胞培養容器の底部の上面に配置されており、その大きさは細胞培養容器の底部のものとほぼ同じであるが、細胞培養容器の底部に配置可能な大きさであればよい。好ましくは、配置する細胞培養容器の底部の大きさと略同様である。
【0020】
本発明の細胞培養容器は、細胞支持体を備えている。該細胞支持体は、基材上に、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化可能な表面を有する刺激応答性ポリマー層を少なくとも備えている。本発明に係る細胞培養容器における細胞支持体の構成及び固定状態の好ましい実施形態の一例を図3〜7に示す。
【0021】
図3及び4は、細胞支持体が底部に配置された、本発明の細胞培養容器(ディッシュ型)を模式的に示す断面図である。切断は、図1に示す矢印I−I´に沿って行なっている。図3に示す細胞培養容器3では、基材21上に刺激応答性ポリマー層22が形成された細胞支持体20が、刺激応答性ポリマー層22が容器内面側となるように、該細胞支持体20の底面積と略同等の面積の易剥離接着層30を介して、細胞培養容器3の底部101の上面の一部の領域に固定されている。図4に示す細胞培養容器4では、基材21上に刺激応答性ポリマー層22が形成された細胞支持体20が、刺激応答性ポリマー層が容器内面側となるように、該細胞支持体20の底面積と略同等の面積の、接着剤層31及び離型層32からなる易剥離接着層30を介して、細胞培養容器4の底部101の上面の一部の領域に固定されている。
【0022】
図5は、細胞支持体が底部に配置された、本発明の細胞培養容器(フラスコ型)を模式的に示す断面図である。切断は、図2に示す矢印II−II´に沿って行なっている。図5に示す細胞培養容器5では、基材21上に刺激応答性ポリマー層22が形成された細胞支持体20が、刺激応答性ポリマー層22が容器内面側となるように、該細胞支持体20の底面積と略同等の面積の易剥離接着層30を介して、細胞培養容器5の底部201の上面の一部の領域に固定されている。
【0023】
例えば、図2に示す細胞培養容器のように、通孔の開口面積が細胞支持体の表面積よりも狭い場合、細胞シートの上面に紙を付着させることが困難であるため、従来法では、細胞シートを容器内から回収することは容易ではない。しかしながら、本発明の細胞培養容器では、細胞シートが構築される細胞支持体が易剥離接着層を介して細胞培養容器に固定されているので、細胞シートの上面に紙を付着させて、刺激応答性ポリマー層に刺激を与えるといった煩雑な操作を行なうことなく、容易に細胞シートを容器内から回収することができる。
【0024】
図6は、細胞支持体が容器の底部である、本発明の細胞培養容器(フラスコ型)を模式的に示す断面図である。切断は、図2に示す矢印III−III´に沿って行なっている。図6に示す細胞培養容器6では、基材21上に刺激応答性ポリマー層22が形成された細胞支持体20が、細胞培養容器6の底部を構成している。細胞支持体20は、刺激応答性ポリマー層22が容器内面側となるように、易剥離接着層30を介して固定されている。該易剥離接着層30は、刺激応答性ポリマー層22と、側壁部202とが接する全領域に形成されている。
【0025】
細胞支持体が容器の底部であり、且つ、易剥離接着層を介して容器の外側から他の部材に固定されている、図6のような形態の細胞培養容器によれば、例えば、通孔などの開口部の開口面積が細胞支持体の表面積よりも狭い場合であっても、細胞培養後に容器の外側から細胞支持体を剥離させることで、細胞シートを損傷させることなく、容易に回収することができる。
【0026】
図7は、細胞支持体が容器の底部を構成している、本発明の細胞培養容器(フラスコ型)を模式的に示す断面図である。切断は、図2に示す矢印III−III´に沿って行なっている。図7に示す細胞培養容器では、基材21上に刺激応答性ポリマー層22が形成された細胞支持体20、が細胞培養容器7の底部を構成している。図7に示す細胞培養容器では、底部201の略中央を貫通するように円形の開口部が1つ形成されたフラスコ型部材と、底部201の開口部を塞ぐように配置された細胞支持体20とを備えることによって、細胞と培地とを保持できる構造となっている。細胞支持体20は、刺激応答性ポリマー層22が容器内面側となるように、基材21の刺激応答性ポリマー層22が形成されている面とは反対側の面と、上記フラスコ型部材の開口部を除く底部201の上面(容器を形成した場合に内面側となる面)とが易剥離接着層30を介して、上記フラスコ型部材に固定されている。
【0027】
細胞支持体が容器の底部を構成し、且つ、易剥離接着層を介して容器の内側から他の部材に固定されている、図7のような形態の細胞培養容器によれば、例えば、通孔などの開口部の開口面積が細胞支持体の表面積よりも狭い場合であっても、細胞培養後に細胞支持体を容器内側に向かって押すだけで剥離可能であることから、細胞シートを損傷させることなく、容易に回収することができる。
【0028】
図6及び7に示す細胞培養容器のように、細胞支持体が容器の底部を構成している場合、細胞支持体は、支持性を確保できる厚さであることが好ましく、例えば、50μm以上とするとよい。ただし、長尺状の形態のときにロール巻取り可能な可撓性を有していることが好ましい。
【0029】
<細胞支持体>
本発明における細胞支持体は、基材上に、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化可能な表面を有する刺激応答性ポリマー層を少なくとも備えている。本発明における細胞支持体の形態は、フィルム状であっても、板状であってもよく、特に限定されない。以下、基材及び刺激応答性ポリマー層について、詳細に説明する。
【0030】
(基材)
細胞支持体を構成する基材は、一方の表面に後述する刺激応答性ポリマー層を形成することが可能であり、細胞培養の際に耐え得る耐水性を有していれば、特に限定されず、刺激応答性ポリマーに応じて種々の材料を選択して形成することができる。基材の材料としては、典型的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、TAC(トリアセチルセルロース)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、アクリルなどが挙げられる。また、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクタン、もしくはその共重合体のような生分解性ポリマーであってもよい。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネートである。ポリエチレンテレフタレートは、低価格で入手することができ、量産に適した材料である点において好ましい。ポリスチレンは、細胞毒性が低い材料である点で好ましい。基材の形態も特に限定されず、フィルム状であっても、板状であってもよい。製膜方法は、特に限定されず、例えば、溶液流延法、溶融押出法、カレンダー法などの従来公知の方法を用いることができる。また、上記方法によりあらかじめ製膜された市販の基材を用いてもよい。
【0031】
基材の刺激応答性ポリマー層が形成される側の表面は、易接着処理されていてもよい。易接着処理としては、例えば、ポリエステル、アクリル酸エステル、ポリウレタン、ポリエチレンイミン、シランカップリング剤、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)などの易接着剤による処理が挙げられる。
【0032】
基材は、柔軟性を有することが好ましい。剥離が容易となるからである。基材の厚みは、特に限定されないが、取り扱い性を考慮すると、好ましくは20〜500μm、より好ましくは50〜250μmである。また、この範囲であれば、連続帯状で供給して加工することも可能である。
【0033】
(刺激応答性ポリマー層)
刺激応答性ポリマー層は、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化することが可能な表面を有し、所定の刺激によって表面の細胞の接着度合いが変化するポリマーを含む層である。刺激応答性ポリマーとしては、例えば、温度応答性ポリマー、pH応答性ポリマー、イオン応答性ポリマー、光応答性ポリマーなどを挙げることができる。なかでも温度応答性ポリマーが、刺激の付与が容易である点において好ましい。
【0034】
温度応答性ポリマーとしては、例えば、細胞を培養する温度では細胞接着性を示し、作製した細胞シートを剥離する時の温度では細胞非接着性を示すものを用いるとよい。例えば、温度応答性ポリマーは、臨界溶解温度未満の温度では周囲の水に対する親和性が向上し、ポリマーが水を取り込んで膨潤して表面に細胞を接着し難くする性質(細胞非接着性)を示し、同温度以上の温度ではポリマーから水が脱離することでポリマーが収縮して表面に細胞を接着しやすくする性質(細胞接着性)を示すものがよい。このような臨界溶解温度は、下限臨界溶解温度と呼ばれる。下限臨界溶解温度Tが0℃〜80℃、さらに好ましくは0℃〜50℃である温度応答性ポリマーを用いることが好ましい。
【0035】
本発明において好適に使用できる温度応答性ポリマーとしては、具体的にはアクリル系ポリマー又はメタクリル系ポリマーが挙げられ、より具体的にはポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(T=21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(T=32℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(T=約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(T=約35℃)、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(T=32℃)などが挙げられる。また、これらのポリマーを形成するためのモノマーが2種以上組み合わされて重合された共重合体であってもよい。
【0036】
これらのポリマーを形成するためのモノマーとしては、放射線照射によって重合し得るモノマーを用いることができる。モノマーとしては例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、環状基を有する(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニルエーテル誘導体などが挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。モノマーが一種類単独で使用された場合、基材上に形成されるポリマーはホモポリマーとなり、モノマーを複数種組み合わせて使用した場合、基材上に形成されるポリマーはヘテロポリマーとなるが、どちらの形態も本発明に包含される。
【0037】
また、増殖細胞の種類によって、Tを調節する必要がある場合、被覆物質と細胞培養支持体との相互作用を高める必要が生じる場合、細胞支持体の親水・疎水性のバランスを調整する必要がある場合などには、上記以外の他のモノマー類を更に加えて共重合してよい。更に本発明に使用する上記ポリマーとその他のポリマーとのグラフト又はブロック共重合体、あるいは本発明のポリマーと他のポリマーとの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質が損なわれない範囲で架橋することも可能である。
【0038】
pH応答性ポリマー及びイオン応答性ポリマーは作製しようとする細胞シートに適したものを適宜選択することができる。
【0039】
細胞接着性及び細胞非接着性は、一の領域と他の領域における細胞の接着度合いの相対的な関係を示すものである。細胞接着性とは、細胞が接着しやすいことをいう。細胞接着性は、表面の化学的性質や物理的性質などによって細胞の接着や伸展が起こりやすいか否かで決定される。細胞接着性を判断する指標として、実際に細胞培養した際の細胞接着伸展率を用いることができる。細胞接着性の表面は、細胞接着伸展率が60%以上の表面であることが好ましく、細胞接着伸展率が80%以上の表面であることがより好ましい。細胞接着伸展率が高いと、効率的に細胞を培養することができる。本発明における細胞接着伸展率は、播種密度が4000cells/cm以上30000cells/cm未満の範囲内で培養しようとする細胞を測定対象表面に播種し、37℃、CO濃度5%のインキュベーター内に保管し、14.5時間培養した時点で接着伸展している細胞の割合({(接着している細胞数)/(播種した細胞数)}×100(%))と定義する。細胞の播種は、10%FBS入りDMEM培地に懸濁させて測定対象物上に播種し、その後、細胞ができるだけ均一に分布するよう、細胞が播種された測定対象物をゆっくりと振とうすることにより行うものである。さらに、細胞接着伸展率の測定は、測定直前に培地交換を行って接着していない細胞を除去した後に行う。細胞接着伸展率の測定では、細胞の存在密度が特異的になりやすい箇所(例えば、存在密度が高くなりやすい所定領域の中央、存在密度が低くなりやすい所定領域の周縁)を除いた箇所を測定箇所とする。
【0040】
一方、細胞非接着性とは、細胞が接着しにくい性質をいう。細胞非接着性は、表面の化学的性質や物理的性質などによって細胞の接着や伸展が起こりにくいか否かで決定される。細胞非接着性の表面は、上記で定義した細胞接着伸展率が60%未満の表面であることが好ましく、40%未満の表面であることがより好ましく、5%以下の表面であることが更に好ましく、2%以下の表面であることが最も好ましい。
【0041】
<易剥離接着層>
本発明の細胞培養容器は、上記細胞支持体を、上記刺激応答性ポリマー層が容器内面側となるように、細胞を培養する際に底部となる領域に、易剥離接着層を介して分離可能に固定してなるものである。本発明の細胞培養容器によれば、細胞シートを損傷させることなく、容器から容易に回収することができる。
【0042】
易剥離接着層は、上記細胞支持体を、細胞を培養する際に容器の底部となる領域に、分離可能に固定する役割を有する。易剥離接着層は、細胞培養の際に細胞支持体が剥離しない程度の接着性と、細胞培養後の細胞支持体を容器から分離させる際に接着している細胞シートを破損させることなく、容易に剥離させることができる易剥離性とを有する層である。易剥離接着層は、典型的には、易剥離性を有する接着剤層であるか、接着剤層及び離型層からなる層である。離型層は、典型的には、離型性を有する樹脂の層である。易剥離接着層を形成する材料は、上記特性を有し、且つ、細胞の成長を妨げないものであれば、特に限定されず、従来公知の易剥離性接着剤、接着剤、離型性樹脂を使用することができる。易剥離接着層の厚みは、特に限定されず、通常、10〜100μmである。
【0043】
[細胞培養容器の製造方法]
本発明の細胞培養容器は、細胞支持体が細胞を培養する際に底部となる領域に固定されてなるものであり、細胞培養容器の本体部分(細胞支持体を除く部分)は、所望の大きさや形状を有する市販品を購入して準備してもよいし、射出成型法などにより所望の大きさや形状のものを作製して準備してもよい。典型的には、細胞支持体を容器の底部に固定させる操作に必要な、開放部を有する容器の部材を準備し、細胞支持体を固定した後、必要に応じて、蓋などのその他の部材を接合することにより、本発明の細胞培養容器を製造する。
【0044】
細胞支持体を、細胞を培養する際に底部となる領域に固定するための易剥離接着層を形成させる対象は、細胞支持体側又は該細胞支持体を固定する対象である細胞培養容器の本体側のいずれであってもよい。例えば、細胞培養容器の本体側の細胞支持体を設置する領域の一部又は全部に、易剥離接着層を形成した後、該易剥離接着層を介して細胞支持体と細胞培養容器の本体とを固定してもよいし、細胞支持体の表面の一部又は全部に、易剥離接着層を形成した後、該易剥離接着層を介して細胞支持体と細胞培養容器の本体とを固定してもよい。好ましくは、易剥離接着層を細胞支持体側であって、且つ、基材の刺激応答性ポリマー層が形成されている面とは反対側の面に形成する。
【0045】
本発明の細胞培養容器は、例えば、下記のようにして製造することができる。まず、易剥離接着層を備える細胞支持体を作製する。本発明において、細胞支持体を作製する方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。易剥離性を有する接着剤を、有機溶媒などの溶剤に溶解させて易剥離接着層形成用塗工液を調製する。次に、細胞支持体の基材を準備する。基材は、枚葉状であっても、ロール状であってもよい。準備した基材の一方の面に、慣用の方法にしたがって、易剥離接着層形成用塗工液を塗工して塗膜を形成させる。その後、乾燥により溶剤を除去し、易剥離接着層が形成された基材を得る。必要に応じて、易剥離接着層上に、該易剥離接着層を保護するための剥離層を形成する。次いで、基材の他方の面上に、刺激応答性ポリマー層を形成させる。このようにして、易剥離接着層を備える細胞支持体を作製する。
【0046】
易剥離接着層形成用塗工液を調製する際に使用する溶剤は、特に限定されるものではなく、易剥離接着層を形成する材料が溶解しうるものを適宜、選択するとよい。塗工方法も特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法などの印刷による方法、ロールコート、リバースコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、グラビアコートなどのコーティングによる方法が挙げられる。
【0047】
易剥離接着層上には、剥離層を形成することが好ましい。剥離層とは、剥離性を有する剥離部材からなり、易剥離接着層の表面を保護する機能を有する、いわゆる剥離シートを意味する。剥離部材は、必要な強度と柔軟性を有するものであれば、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂からなるフィルム又はそれらの発泡フィルムに、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメートなどの剥離剤で剥離処理したものを挙げることができる。一般には、シリコーン離型処理した合成樹脂フィルムが用いられる。
【0048】
基材面上に、刺激応答性ポリマー層を形成させる方法としては、以下の方法が挙げられる。まず、重合により刺激応答性ポリマーとなる上述のモノマーを溶媒に溶解させた刺激応答性ポリマー層形成用塗工液を調製する。次に、慣用の方法にしたがって、該塗工液を基材の表面に塗工して塗膜を形成させる。その後、放射線照射などの適当な手段により塗膜中のモノマーを重合させ、ポリマーを形成させるとともに、基材の表面とポリマーとの間にグラフト化反応を生じさせることにより、刺激応答性ポリマー層を形成する。なお、該刺激応答性ポリマー層の表面には、必要に応じて、上記と同様の剥離層を形成してもよい。
【0049】
刺激応答性ポリマー層形成用塗工液を調製する際に使用する溶媒は、モノマーを溶解しうるものであれば特に限定されないが、常庄下において沸点120℃以下、特に60〜110℃のものが好ましい。具体的にはメタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、水などが挙げられ、これらは組み合わせて使用してもよい。その他の溶媒、例えば1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−ブトキシエタノール、及びエチレン(若しくはジエチレン)グリコール又はそのモノエチルエーテルなども使用可能である。必要に応じて、上記溶液にはその他添加剤を配合してもよい。
【0050】
刺激応答性ポリマー層形成用塗工液中のモノマーの含有量は、1〜70重量%であることが好ましい。また、塗布用組成物中には、モノマーに加えて、複数個のモノマーが重合したオリゴマー又はプレポリマーが含まれてもよい。オリゴマー又はプレポリマーが含まれる場合には、その大きさは、ダイマー以上のものであれば特に限定されず、分子量約3,300(典型的には28分子ポリマー)より大きいものが好ましく、分子量5,700以上のものがより好ましい。
【0051】
刺激応答性ポリマー層形成用塗工液を基材の表面に塗工する方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法などの印刷による方法、ロールコート、リバースコート、コンマコート、ナイフコート、ダイコート、グラビアコートなどのコーティングによる方法が挙げられる。
【0052】
刺激応答性ポリマー層の厚みは、例えば、0.5nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、10〜30nmであることが最も好ましい。膜厚を0.5nm〜300nmの範囲とすることで細胞の接着と剥離の両立が容易となる。なお、刺激応答性ポリマー層には、その機能を損なわない範囲で、界面活性剤などの各種添加剤が配合されていてもよい。
【0053】
モノマーを重合させるために使用する放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、紫外線などが挙げられる。所望のグラフトポリマーを作製するために、エネルギー効率が良い点においてγ線と電子線が好ましく、特に、生産性の面では電子線が好ましい。紫外線は、適当な重合開始剤やシランカップリング剤などのアンカー剤と組合せることで使用できる。放射線の線量の範囲は、電子線であれば5Mrad〜50Mradが好ましく、γ線であれば0.5Mrad〜5Mradが好ましい。照射工程前後に、必要に応じて塗膜を乾燥させ、上記溶媒を除去する。
【0054】
このようにして形成された刺激応答性ポリマー層を、必要に応じて洗浄してもよい。グラフト重合後の刺激応答性ポリマー層の表面上には、共有結合により固定化されたポリマー分子だけでなく、固定化されていない遊離のポリマー分子や、未反応のモノマーなどが存在していると考えられる。洗浄によれば、これら遊離ポリマーや未反応物を除去することができるので好ましい。ここで、洗浄方法は特に限定されないが、典型的には浸漬洗浄、揺動洗浄、シャワー洗浄、スプレー洗浄、超音波洗浄などが挙げられる。また洗浄液としては、典型的には各種水系、アルコール系、炭化水素系、塩素系、酸・アルカリ洗浄液が挙げられる。
【0055】
上記方法により作製された細胞支持体は、易剥離接着層上の剥離層を剥離させ、あらかじめ準備しておいた容器の、細胞培養の際に底部となる領域に、接着させて固定する。細胞支持体を固定させた後は、必要に応じて、エタノール滅菌、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌、紫外線照射滅菌、γ線照射滅菌などの滅菌処理を施す。これらのなかでも、γ線照射滅菌は、全生物種を死滅させられるという点で好適である。このようにして、本発明の細胞培養容器を製造することができる。
【0056】
[培養細胞回収方法]
本発明の培養細胞回収方法は、上記細胞培養容器で培養された細胞をシート状の細胞集合体として回収する方法であって、細胞支持体の刺激応答性ポリマー層の表面に培養された細胞が接着している培養細胞−支持体複合体を、細胞培養容器から剥離して分離する工程と、培養細胞−支持体複合体の培養細胞を、当該培養細胞を容易に接着及び脱離可能な細胞付着面を有する冶具の当該面に付着させた後、刺激応答性ポリマー層に所定の刺激を与えて、当該刺激応答性ポリマー層の表面を細胞非接着性へと変化させ、培養細胞−支持体複合体を、培養細胞と、細胞支持体と、に分離する工程とを含むことを特徴とする。以下、図面を参照しながら、本発明の培養細胞回収方法の好ましい実施形態の一例について説明する。
【0057】
図8は、本発明の細胞培養容器を用いた培養細胞回収方法を順次示す図である。まず、基材21上に刺激応答性ポリマー層22を備える細胞支持体20が底部101に配置された細胞培養容器(ディッシュ型)を準備し、細胞培養を行なう。細胞支持体20は、刺激応答性ポリマー層22が容器内面側となるように、該細胞支持体20の底面積と略同等の面積の易剥離接着層30を介して、細胞培養容器の底部101の上面の一部の領域に固定されている。
【0058】
培養細胞310は、図8(A)に示すように、刺激応答性ポリマー層22の表面上に細胞外マトリックス320を介して接着し、培養細胞−支持体複合体を形成する。次に、該培養細胞−支持体複合体を、図8(B)に示すように、ピンセットPを用いて細胞培養容器の底部101から剥離して分離する。培養細胞−支持体複合体と、細胞培養容器の底部101とは、易剥離接着層30を介して固定されているので、容易に分離させることができる。同様の操作を並行して又は繰り返し行ない、複数の培養細胞−支持体複合体を回収した後、培養細胞−支持体複合体の培養細胞310を、培養細胞移動器具であるスタンプSの面に付着させた後、刺激応答性ポリマー層22に所定の刺激を与え、刺激応答性ポリマー層22の表面を細胞非接着性へと変化させる(図8(C)参照)。次いで、図8(D)に示すように、ピンセットPを用いて、細胞支持体20を、シート状の細胞集合体(細胞シート300)の細胞外マトリックス320と刺激応答性ポリマー層22との間で剥離させる。その後、得られた細胞シート300を生体組織に移植する(図8(E)参照)。移植の際には、細胞マトリックス320側の面を生体組織に接触させる。これにより、細胞マトリックス320から分泌される接着タンパクの作用により、細胞シート300が生体組織に接着する。
【0059】
本発明の細胞培養容器によれば、細胞シートを容器内から取り出す際に、培養細胞の表面に紙を付着させて刺激を与えるという煩雑な操作が不要となる。また、紙を使用しないので、細胞シートを損傷させ難い。さらに、本発明の細胞培養容器によれば、培養細胞を培養細胞−支持体複合体として容器の外に取り出すことができるが、培養細胞の表面に紙を付着させていないので、その後の操作において、スタンプなどの冶具を使用することができる。例えば、スタンプなどの冶具を使用すれば、図8に示すように、複数の培養細胞−支持体複合体に対して刺激を与え、複数の細胞シートをまとめて回収することができるので、操作の効率が向上する。また、生体移植の際にも操作性が良い。
【符号の説明】
【0060】
1,2,3,4,5,6,7 細胞培養容器
20 細胞支持体
21 基材
22 刺激応答性ポリマー層
30 易剥離接着層
31 接着剤層
32 離型層
101 底部
102 側壁部
103 開口部
201 底部
202 側壁部
203 天部
204 通孔
210 蓋
300 細胞シート
310 培養細胞
320 細胞外マトリックス
400 紙
P ピンセット
S スタンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞支持体を備えた細胞培養容器であって、
前記細胞支持体は、基材上に、所定の刺激によって細胞接着性から細胞非接着性へと変化可能な表面を有する刺激応答性ポリマー層を少なくとも備え、
前記細胞支持体を、前記刺激応答性ポリマー層が容器内面側となるように、細胞を培養する際に底部となる領域に、易剥離接着層を介して分離可能に固定してなる、前記容器。
【請求項2】
請求項1に記載の細胞培養容器で培養された細胞をシート状の細胞集合体として回収する培養細胞回収方法であって、
前記細胞支持体の刺激応答性ポリマー層の表面に培養された細胞が接着している培養細胞−支持体複合体を、細胞培養容器から剥離して分離する工程と、前記培養細胞−支持体複合体の培養細胞を、当該培養細胞を容易に接着及び脱離可能な細胞付着面を有する冶具の当該面に付着させた後、前記刺激応答性ポリマー層に所定の刺激を与えて、当該刺激応答性ポリマー層の表面を細胞非接着性へと変化させ、前記培養細胞−支持体複合体を、培養細胞と、細胞支持体とに分離する工程とを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−99282(P2013−99282A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244874(P2011−244874)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】