説明

細胞培養担体、細胞培養担体の製造方法および細胞培養方法

【課題】良好な細胞付着性を有するとともに、細胞増殖性に優れ、また、細胞を容易に取り外すことができる細胞培養担体、かかる細胞培養担体を容易かつ確実に製造することができる細胞培養担体の製造方法、および、かかる細胞培養担体を用いた細胞培養方法を提供すること。
【解決手段】細胞培養担体1は、粒状の基材2と、この基材2の表面を覆うように設けられ、主として、Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトで構成される被覆層3とを有するものである。このような細胞培養担体1は、その表面に細胞を付着させ、この細胞を増殖させる細胞培養、特に、三次元高密度培養(浮遊培養)に用いられるものである。Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトにおけるCaの欠損率は、1〜30mol%であるのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養担体、細胞培養担体の製造方法および細胞培養方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞培養技術が、細胞組織工学、医薬品等の安全性試験、治療や診断を目的としたタンパク質の生産等、様々な産業、研究分野で応用されている。
【0003】
現在、この細胞培養には、付着依存性細胞を大量に効率よく培養するために、培養フラスコによる平面培養ではなく、細胞の足場となる担体を用いた三次元高密度培養(浮遊培養)が用いられている。
【0004】
この三次元高密度培養には、ポリスチレン製、DEAEセルロース製、ポリアクリルアミド製等の担体が用いられている。
【0005】
しかし、これらの担体には、細胞の種類や培養条件等によって、細胞がほとんど付着しなかったり、細胞が付着してもほとんど増殖しなかったりする場合がある。
【0006】
そこで、最近、ハイドロキシアパタイトを母材に被覆した細胞培養担体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
この特許文献1に記載の細胞培養担体には、細胞がカルシウムに付着する性質を有するため、細胞が効率よく付着する。
【0008】
しかしながら、この細胞培養担体では、細胞の付着性がよい反面、その表面で増殖した細胞を使用するに際して、この細胞を担体から取り外し難いという問題点や、細胞の増殖効率が低下するという問題点等がある。
【0009】
【特許文献1】特開2003−310256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、良好な細胞付着性を有するとともに、細胞増殖性に優れ、また、細胞を容易に取り外すことができる細胞培養担体、かかる細胞培養担体を容易かつ確実に製造することができる細胞培養担体の製造方法、および、かかる細胞培養担体を用いた細胞培養方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記の(1)〜(20)の本発明により達成される。
(1) 表面に細胞を付着させ、該細胞を増殖させる細胞培養担体であって、
その少なくとも表面付近が、主として、Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトで構成されていることを特徴とする細胞培養担体。
【0012】
これにより、良好な細胞付着性を有するとともに、細胞増殖性に優れ、また、細胞を容易に取り外すことができる細胞培養担体が得られる。
【0013】
(2) 前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトにおけるCaの欠損率は、1〜30mol%である上記(1)に記載の細胞培養担体。
【0014】
これにより、細胞付着性、細胞増殖性、細胞分離性(細胞培養担体からの細胞の取り外し易さ)がより良好なものとなる。
【0015】
(3) 密度が1.01〜1.5g/cmである上記(1)または(2)に記載の細胞培養担体。
【0016】
これにより、細胞培養担体を培養液中でより均一に懸濁させることができ、細胞培養担体により効率よく細胞を付着させることができる。
【0017】
(4) 粒状をなしている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の細胞培養担体。
このような細胞培養担体の表面には、細胞が均一に付着して、細胞がより効率よく増殖する。また、粒状の細胞培養担体は、培養液中へより均一に懸濁させることができる。このため、細胞培養担体は、細胞に接触する機会が増大することから、細胞をより効率よく付着させることができる。
【0018】
(5) 平均粒径が10〜2000μmである上記(4)に記載の細胞培養担体。
このような平均粒径の細胞培養担体は、その表面積を細胞の大きさ(サイズ)に対して十分に大きくすることができるため、細胞が付着、増殖するのがより容易となる。
【0019】
(6) 前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトは、Caの一部が欠損したハイドロキシアパタイトを主成分とするものである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の細胞培養担体。
【0020】
ハイドロキシアパタイトは、それ自体が生体材料として用いられるものであるため、細胞が極めて効率よく付着することができ、かつ、細胞に対するダメージを与える可能性が特に低い。このため、Caの一部が欠損したハイドロキシアパタイトも、前記特性を有するものとなり、Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトとして特に好適である。
【0021】
(7) 基材と、該基材の表面を覆うように設けられ、主として、前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトで構成される被覆層とを有するものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の細胞培養担体。
【0022】
これにより、細胞培養担体の形状、大きさ、物性(密度等)等を、基材の形状、大きさ、物性等を適宜設定することにより調整することができるようになる。
【0023】
(8) 前記基材は、主として樹脂材料で構成されている上記(7)に記載の細胞培養担体。
【0024】
これにより、細胞培養担体の形状、大きさ、物性(比重等)等の調整がより容易となる。
【0025】
(9) 前記樹脂材料は、ポリアミドおよびエポキシ樹脂の少なくとも一方を主成分とするものである上記(8)に記載の細胞培養担体。
【0026】
これらを主材料として基材を構成することにより、次のような効果が得られる。すなわち、前記材料は、それ自体の密度(比重)が水に近いため、細胞培養担体の密度(比重)も水と同程度とすることが容易となる。このように密度が水と同程度の細胞培養担体は、緩やかな攪拌で培養液中に均一に分散させることが可能となる。また、前記材料は、Ca欠損アパタイトとの密着性が高いため、基材の表面をCa欠損アパタイトでより確実に被覆することが可能となる。また、前記材料は、耐熱性に優れるため、高い耐熱性を有する細胞培養担体が得られる。このような細胞培養担体には、細胞培養に先立ってオートクレーブ滅菌を施すことが可能となる。
【0027】
(10) 前記基材は、磁性材料を含有している上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の細胞培養担体。
【0028】
これにより、細胞培養担体は、磁場が与えられることにより培養液中で移動し、細胞培養担体自体で培養液を攪拌することができる。このような細胞培養担体自体による培養液の攪拌は、攪拌子を用いた攪拌より均一かつ緩やか(マイルド)に行うことができるため、細胞が細胞培養担体の表面に付着し易くなるとともに、細胞培養担体同士の衝突により細胞が剥離するのを防止または抑制することができる。また、細胞培養担体に付着した細胞には、均一に栄養が供給されることになり、より効率よく細胞が増殖することとなる。
【0029】
(11) 表面に細胞を付着させ、該細胞を増殖させる細胞培養担体であって、
その少なくとも表面付近が、主として、2価の構成元素の一部が欠損したアパタイトで構成されていることを特徴とする細胞培養担体。
【0030】
これにより、良好な細胞付着性を有するとともに、細胞増殖性に優れ、また、細胞を容易に取り外すことができる細胞培養担体が得られる。
【0031】
(12) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の細胞培養担体を製造する細胞培養担体の製造方法であって、
リン酸カルシウム系アパタイトおよびリン酸を含むスラリーを得る第1の工程と、
該スラリーを乾燥して粉体を得る第2の工程と、
該粉体を焼成して、前記粉体中において前記リン酸カルシウム系アパタイトと前記リン酸とをアパタイト構造を保持しつつ反応させることにより、前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトを生成させて、該Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトを主としてなる焼成粉体を得る第3の工程とを有することを特徴とする細胞培養担体の製造方法。
【0032】
これにより、良好な細胞付着性を有するとともに、細胞増殖性に優れ、また、細胞を容易に取り外すことができる細胞培養担体を、容易かつ確実に製造することができる。
【0033】
(13) 上記(7)ないし(10)のいずれかに記載の細胞培養担体を製造する細胞培養担体の製造方法であって、
リン酸カルシウム系アパタイトおよびリン酸を含むスラリーを得る第1の工程と、
該スラリーを乾燥して粉体を得る第2の工程と、
該粉体を焼成して、前記粉体中において前記リン酸カルシウム系アパタイトと前記リン酸とをアパタイト構造を保持しつつ反応させることにより、前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトを生成させて、該Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトを主としてなる焼成粉体を得る第3の工程と、
前記焼成粉体で、基材の表面を被覆する第4の工程とを有することを特徴とする細胞培養担体の製造方法。
【0034】
これにより、良好な細胞付着性を有するとともに、細胞増殖性に優れ、また、細胞を容易に取り外すことができる細胞培養担体を、容易かつ確実に製造することができる。また、細胞培養担体の形状、大きさ、物性(密度等)等を、基材の形状、大きさ、物性等を適宜設定することにより調整することができるようになる。
【0035】
(14) 前記第1の工程において、前記リン酸カルシウム系アパタイトと前記リン酸との混合比は、モル比で6:1〜1:1である上記(12)または(13)に記載の細胞培養担体の製造方法。
【0036】
これにより、細胞付着性、細胞増殖性、細胞分離性(細胞培養担体からの細胞の取り外し易さ)がより良好なものとなる。
【0037】
(15) 前記第3の工程における焼成温度は、1000℃以下である上記(12)ないし(14)のいずれかに記載の細胞培養担体の製造方法。
【0038】
これにより、Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトをより確実に生成させることができる。
【0039】
(16) 前記第3の工程における焼成時間は、0.1〜10時間である上記(12)ないし(15)のいずれかに記載の細胞培養担体の製造方法。
【0040】
これにより、Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトをより確実に生成させることができる。
【0041】
(17) 前記第3の工程における焼成雰囲気は、大気である上記(12)ないし(16)のいずれかに記載の細胞培養担体の製造方法。
【0042】
これにより、製造コストが増大するのを防止しつつ、Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトを効率よく生成させることができる。
【0043】
(18) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の細胞培養担体を用いて、細胞の培養を行うことを特徴とする細胞培養方法。
これにより、細胞を効率よく増殖させることができる。
【0044】
(19) 上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の細胞培養担体と細胞とを含む培養液中において、前記細胞を前記細胞培養担体に接触させることにより、その表面に付着させ、この状態で前記細胞を増殖させることを特徴とする細胞培養方法。
これにより、細胞を効率よく増殖させることができる。
【0045】
(20) 前記細胞を増殖させた後、該増殖した細胞を前記細胞培養担体から取り外す上記(18)または(19)に記載の細胞培養方法。
これにより、細胞を各種用途へ供与できる。
【発明の効果】
【0046】
本発明の細胞培養担体によれば、良好な細胞付着性が得られるとともに、細胞増殖性に優れ、また、その表面から細胞を容易に取り外すことができる。
【0047】
また、本発明の細胞培養担体の製造方法によれば、このような細胞培養担体を、容易且つ確実に製造することができる。
また、本発明の細胞培養方法によれば、細胞を効率よく増殖させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の細胞培養担体、細胞培養担体の製造方法および細胞培養方法を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0049】
<第1実施形態>
まず、本発明の細胞培養担体の第1実施形態について説明する。
【0050】
図1は、本発明の細胞培養担体の第1実施形態を示す断面図である。
図1に示す細胞培養担体1は、主として樹脂材料で構成された基材2と、この基材2の表面を覆うように設けられた被覆層3とを有している。被覆層3は、主として、Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイト(以下、単に「Ca欠損アパタイト」と言う。)で構成されている。
【0051】
このような細胞培養担体1は、その表面に細胞を付着させ、この細胞を増殖させる細胞培養、特に、三次元高密度培養(浮遊培養)に用いられるものである。
【0052】
三次元高密度培養には、例えばマイクロキャリヤー培養、攪拌培養、回転振とう培養、旋回培養等があるが、これらの中でも、細胞培養担体1は、特に、マイクロキャリヤー培養に好適に使用し得るものである。かかるマイクロキャリヤー培養によれば、細胞を大量に、極めて効率よく培養することができる。
【0053】
細胞培養担体1は、基材2が粒状(図示の構成では、ほぼ球状)とされ、これにより、その全体が粒状(ほぼ球状)をなしている。このような細胞培養担体1の表面には、細胞が均一に付着して、細胞がより効率よく増殖する。また、粒状の細胞培養担体1は、培養液中へより均一に懸濁させることができる。このため、細胞培養担体1は、細胞に接触する機会が増大することから、細胞をより効率よく付着させることができる。
【0054】
また、細胞培養担体1の大きさ(サイズ)は、特に限定されないが、細胞(付着させる細胞)の最大長さをL1[μm]とし、細胞培養担体1の平均粒径をL2[μm]としたとき、L2/L1が2〜100であるのが好ましく、5〜50であるのがより好ましい。
【0055】
具体的には、前記L2は、10〜2000μm程度であるのが好ましく、50〜1000μm程度であるのがより好ましく、100〜300μm程度であるのがさらに好ましい。
【0056】
このような平均粒径の細胞培養担体1は、その表面積を細胞の大きさ(サイズ)に対して十分に大きくすることができるため、細胞が付着、増殖するのがより容易となる。なお、細胞培養担体1の平均粒径が小さ過ぎると、細胞が効率よく付着しないばかりでなく、細胞培養担体1同士の間での凝集が生じ易くなる傾向を示す。一方、細胞培養担体1の平均粒径が大き過ぎると、培養液中での細胞培養担体1の沈降速度が大きくなるので、細胞培養の際の攪拌速度を大きくせざるを得ず、この場合、細胞培養担体1同士が互いに衝突し合い、その結果、細胞培養担体1の表面に付着した細胞が破壊されるおそれがある。
【0057】
また、細胞培養担体1を培養液中でより均一に懸濁させる観点からは、細胞培養担体1の密度は、水の密度に近いのものが好ましい。具体的には、細胞培養担体1の密度を、1.01〜1.5g/cm程度とするのが好ましく、1.02〜1.2g/cm程度とするのがより好ましい。細胞培養担体1の密度を前記範囲とすることにより、細胞培養担体1を培養液中でより均一に懸濁させることができる。これにより、細胞培養担体1により効率よく細胞を付着させることができる。
【0058】
このような細胞培養担体1の形状、大きさ(平均粒径等)、物性(密度等)等は、基材2の形状、大きさ、物性等を適宜設定することにより調整することができる。
【0059】
例えば、細胞培養担体1の密度は、基材2の構成材料、形態(例えば、多孔質や中空構造等)等を適宜設定することにより調整することができる。
【0060】
基材2は、主として樹脂材料で構成されたものである。樹脂材料を主材料として基材2を構成することにより、細胞培養担体1の形状、大きさ、物性(比重等)等の調整がより容易となる。
【0061】
前述したような平均粒径の細胞培養担体1を製造する場合、基材2の平均粒径は、10〜2000μm程度であるのが好ましく、50〜500μm程度であるのがより好ましく、100〜300μm程度であるのがさらに好ましい。
【0062】
また、前述したような密度の細胞培養担体1を製造する場合、基材2の密度は、1.01〜1.5g/cm程度とするのが好ましく、1.02〜1.2g/cm程度であるのがより好ましい。
【0063】
基材2に用いる樹脂材料としては、各種熱硬化性樹脂、各種熱可塑性樹脂を用いることができ、具体的には、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、アクリル樹脂、熱可塑性ポリウレタン等、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、熱硬化性ポリウレタン、エボナイド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
これらの中でも、樹脂材料としては、ポリアミドおよびエポキシ樹脂の少なくとも一方を主成分とするものが好適である。これらを主材料として基材2を構成することにより、次のような効果が得られる。
【0065】
前記材料は、それ自体の密度(比重)が水に近いため、細胞培養担体1の密度(比重)も水と同程度とすることが容易となる。このように密度が水と同程度の細胞培養担体1は、緩やかな攪拌で培養液中に均一に分散させることが可能となる。
【0066】
また、前記材料は、Ca欠損アパタイトとの密着性が高いため、基材2の表面をCa欠損アパタイトでより確実に被覆することが可能となる。
【0067】
また、前記材料は、耐熱性に優れるため、高い耐熱性を有する細胞培養担体1が得られる。このような細胞培養担体1には、細胞培養に先立ってオートクレーブ滅菌を施すことが可能となる。
【0068】
また、樹脂材料は、有機顔料、無機顔料、酸性染料、塩基性染料等で着色されたものであってよい。
【0069】
このような基材2のほぼ全面を覆うように、被覆層3が設けられている。被覆層3は、前述のように、Ca欠損アパタイト(Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイト)を主材料として構成されている。
【0070】
ここで、リン酸カルシウム系アパタイトとは、組成式Ca10(POで表される六方晶系の結晶であり、Ca欠損アパタイトは、前記組成式で表されるリン酸カルシウム系アパタイトに対して、Ca量が少なくなったものである。
【0071】
したがって、Ca欠損アパタイトには、前記組成式で表されるリン酸カルシウム系アパタイトにPOおよびXが付加され、Ca量が相対的に少なくなったもの、および、前記組成式で表されるリン酸カルシウム系アパタイトからCa除去され、Ca量が少なくなったものの双方が含まれる。
【0072】
細胞は、通常、培養液中に存在する細胞の増殖に関与するタンパク質が細胞培養担体1に付着(吸着)し、このタンパク質を介して細胞培養担体1に付着する。また、前記タンパク質は、負の電荷を有しており、正の電荷を有するCaに付着(吸着)する性質を有している。このため、各種リン酸カルシウム系化合物は、前記タンパク質の吸着力が強く、結果として、細胞の付着効率が高い。
【0073】
さらに、本発明者の検討によれば、アパタイト構造を有するリン酸カルシウム系化合物(すなわち、リン酸カルシウム系アパタイト)は、その特徴的な結晶構造から、各種リン酸カルシウム系化合物の中でも、特に、前記タンパク質の吸着力が高いこと、換言すれば、細胞の付着効率が高いことが判っている。
【0074】
本発明では、リン酸カルシウム系アパタイト(以下、単に「アパタイト」と言う。)に対してCa量が少ないCa欠損アパタイトを用いるが、このCa欠損アパタイトは、アパタイト構造を有するものであることから、前記タンパク質に対して高い吸着力を有している。このため、表面付近(本実施形態では被覆層3)が主としてCa欠損アパタイトで構成される細胞培養担体1は、十分に高い細胞の付着効率を維持するものとなる。
【0075】
また、このような細胞培養担体1は、被覆層3がアパタイト(Caが実質的に欠損していないもの)で構成されるものと比較して、表面に付着した細胞がより効率よく増殖するとともに、増殖した細胞が取り外し易いものとなる。これは、次のようなことが要因の一つであると推察される。
【0076】
すなわち、細胞は、細胞培養担体1の表面において、前記タンパク質を指標として増殖する。ところが、表面に存在するCaが多過ぎる場合(アパタイトの場合)、細胞がCaに直接付着(非特異的に付着)する確率が高くなる。そして、細胞がCaに直接付着すると、細胞の増殖が阻害される。これに対して、Ca欠損アパタイトは、アパタイトに対してCa量が減少しており、細胞がCaに直接付着する確率を低減することができ、これにより、細胞の増殖が促進されるものと考えられる。
【0077】
また、細胞のCaに対する結合力(付着力)は、大きなものであるが、Ca欠損アパタイトでは、細胞がCaに直接付着(非特異的に付着)する確率を低減することができることから、細胞を細胞培養担体1から容易に取り外すことができるようになると考えられる。
【0078】
このように、本発明の細胞培養担体1によれば、良好な細胞付着性、細胞増殖性、および、細胞分離性(細胞の取り外し易さ)が得られる。
【0079】
Ca欠損アパタイトにおいて、Caの欠損率は、アパタイトの種類等によっても若干異なり、特に限定されないが、1〜30mol%程度であるのが好ましく、5〜25mol%程度であるのがより好ましく、8〜20mol%程度であるのがさらに好ましい。Caの欠損率が低過ぎると、細胞が細胞培養担体1の表面で増殖する効率(細胞増殖性)や、細胞を細胞培養担体1の表面から取り外す効率(細胞分離性)が低下するおそれがあり、一方、Caの欠損率が高過ぎると、細胞が細胞培養担体1の表面に付着する効率(細胞付着性)が低下するおそれがある。
【0080】
このようなCa欠損アパタイトとしては、例えば、Ca10(PO(OH)、Ca10(PO、Ca10(POCl等の各種アパタイトのCaの一部が欠損したものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
これらの中でも、Ca欠損アパタイトとしては、特に、Caの一部が欠損したハイドロキシアパタイト(Ca10−x−3y(PO6−2y(OH)2−2x ただし、x≦1、y≦3である。)を主成分とするものが好適である。ここで、ハイドロキシアパタイトは、それ自体が生体材料として用いられるものであるため、細胞が極めて効率よく付着することができ、かつ、細胞に対するダメージを与える可能性が特に低い。このため、Caの一部が欠損したハイドロキシアパタイトも、前記特性を有するものとなる。
【0082】
また、Ca欠損アパタイトとして、フッ素アパタイト(Ca10(PO)、塩素アパタイト(Ca10(POCl)のようなハロゲン化アパタイトのCaの一部が欠損したものを用いることもできる。
【0083】
なお、Ca欠損アパタイト中には、その合成の際に残存する物質(原料等)または合成の過程で生じる二次反応生成物等が含まれていてもよい。
【0084】
また、被覆層3は、基材2の表面に、Ca欠損アパタイトを付着させることにより形成されたものであってもよいが、図1に示すように、基材2の表面付近に、Ca欠損アパタイトを主材料として構成された粒子31(以下、単に「粒子31」と言う。)の一部が貫入することにより形成されたものであるのが好ましい。これにより、被覆層3の基材2の表面からの剥離を好適に防止すること、すなわち、細胞培養担体1の強度を優れたものとすることができる。
【0085】
このような被覆層3は、緻密質なものまたは多孔質なもののいずれであってもよい。
また、被覆層3の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましく、0.5〜2μm程度であるのがより好ましい。被覆層3の平均厚さが前記下限値未満である場合、細胞培養担体1では、部分的に基材2が露出してしまうおそれがある。一方、被覆層3の平均厚さが前記上限値を超えた場合、細胞培養担体1の密度の調整が困難となるおそれがある。
【0086】
なお、細胞培養担体1は、その表面により多くの細胞を付着させ、増殖させる観点からは、本実施形態のように、基材2の表面のほぼ全てが被覆層3で覆われているのが好ましいが、付着させる細胞の種類や、基材2の構成材料(樹脂材料)の種類等によっては、その表面の一部が被覆層3から露出するような構成であってもよい。
【0087】
次に、このような細胞培養担体1を用いた細胞培養方法(本発明の細胞培養方法)について説明する。
【0088】
[1] まず、細胞培養担体1に滅菌処理を施す。これにより、細胞培養担体1の表面に存在する微生物やカビ等の数を低減、または、これらを完全に死滅させることができる。このように、細胞培養担体1に滅菌処理を施しておくことにより、微生物やカビ等による細胞へのダメージが低減または除去され、細胞は、より効率よく増殖することができる。
【0089】
この滅菌処理には、例えば、細胞培養担体1と滅菌液とを接触させる方法、オートクレーブ滅菌、ガス滅菌、放射線滅菌等を用いることができるが、これらの中でも、オートクレーブ滅菌が好適である。かかる方法によれば、大量の細胞培養担体1を、より効率よく滅菌することができる。
【0090】
[2] 次に、前記工程[1]終了後の細胞培養担体1と、細胞(付着させる細胞)とを含む培養液を用意する。
【0091】
この細胞としては、例えば、動物細胞、植物細胞、細菌、ウイルス等が挙げられる。
培養液としては、用いる細胞の種類等により適宜選択され、特に限定されないが、例えば、ダルベッコMEM培地、BME培地、MCDB−104培地等が挙げられる。
【0092】
また、これらの培養液中には、必要に応じて、例えば、血清、アルブミン等の血清タンパク質、各種ビタミン類、アミノ酸、塩類等の添加剤を添加するようにしてもよい。
【0093】
次いで、用意した培養液を攪拌する。これにより、細胞は、細胞培養担体1に接触してその表面に付着し、この状態で時間の経過とともに増殖する。すなわち、細胞を培養する。このように、培養液を攪拌しつつ、細胞を培養することにより、細胞の増殖効率を向上させることができる。
【0094】
培養液の攪拌速度は、特に限定されないが、5〜100rpm程度とするのが好ましく、10〜50rpm程度とするのがより好ましい。攪拌速度が遅すぎると、細胞培養担体1の密度、平均粒径(サイズ)等によっては、細胞培養担体1を培養液中で均一に分散することができない場合があり、この場合、細胞培養担体1の表面で細胞が十分に増殖できない。一方、攪拌速度が速すぎると、細胞培養担体1が攪拌され過ぎ、細胞培養担体1同士が激しく衝突し合い、付着した細胞が破壊されてしまうおそれがある。
【0095】
また、培養液の温度(培養温度)は、培養する細胞の種類に応じて適宜設定され、特に限定されないが、通常、4〜40℃程度、好ましくは25〜37℃程度とされる。
【0096】
[3] 次に、細胞培養担体1に付着・増殖した細胞を取り外して回収する。
まず、細胞培養担体1に、その表面から細胞を剥離する剥離液を接触させることにより、細胞培養担体1の表面から剥離液中に遊離させる(取り外す)。
【0097】
この剥離液としては、例えば、トリプシン溶液、EDTA溶液、低張溶液等が挙げられる。
【0098】
このときの剥離液の温度は、特に限定されないが、4〜40℃程度であるのが好ましく、25〜37℃程度であるのがより好ましい。
【0099】
また、細胞培養担体1に剥離液を接触させる時間も、特に限定されないが、1〜30分間程度であるのが好ましく、5〜15分間程度であるのがより好ましい。
【0100】
また、この際、剥離液を、例えば、攪拌、振動、揺動(振とう)等するようにしてもよい。これにより、剥離液中への細胞の収率(回収率)を向上させることができる。
【0101】
剥離液を攪拌する場合、その攪拌速度は、特に限定されないが、5〜100rpm程度とするのが好ましく、10〜50rpm程度とするのがより好ましい。
【0102】
次いで、細胞を含有する剥離液を、例えば、フィルター、カラム等を通過させる。これにより、細胞を回収する。
【0103】
回収された細胞は、各種実験、研究、タンパク質の生産等に供される。
このような細胞培養担体1は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0104】
次に、図1に示す細胞培養担体1の製造方法(本発明の細胞培養担体の製造方法の一例)について説明する。
【0105】
図1に示す細胞培養担体1の製造方法は、アパタイトおよびリン酸を含むスラリーを得る工程と、このスラリーを乾燥して粉体を得る工程と、この粉体を焼成して焼成粉体を得る工程と、焼成粉体で基材の表面を被覆する工程とを有している。以下、各工程について順次説明する。
【0106】
[A]スラリーを得る工程(第1の工程)
まず、アパタイトおよびリン酸を含むスラリーを調整する。
【0107】
これは、例えば、アパタイト分散液(スラリー)中にリン酸を添加する方法、リン酸溶液中にアパタイトを添加する方法、アパタイト分散液とリン酸溶液とを混合する方法、アパタイトとリン酸とを混合した後、液体(分散媒)を添加する方法等により行うことができる。
【0108】
なお、アパタイトは、公知の湿式合成法、乾式合成法などによって合成することができる。
【0109】
アパタイトとリン酸との混合比は、特に限定されないが、モル比で6:1〜1:1程度であるのが好ましく、6:3〜6:5程度であるのがより好ましい。リン酸の混合量(添加量)が少な過ぎると、後工程[C]で得られる焼成粉体においてCaの欠損率が低くなり、製造される細胞培養担体1の細胞増殖性や細胞分離性が不十分となるおそれがある。一方、リン酸の混合量が多過ぎると、得られる焼成粉体においてCaの欠損率が不要に大きくなり、製造される細胞培養担体1の細胞付着性が不十分となるおそれがある。
【0110】
[B]粉体を得る工程(第2の工程)
次に、前記工程[A]で得られたスラリーを乾燥して粉体を得る。
【0111】
スラリーを乾燥する方法としては、例えば、加熱乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥等が挙げられる。
【0112】
スラリーの乾燥に際して加熱する場合、スラリーの加熱温度は、40〜300℃程度であるのが好ましく、80〜250℃程度であるのがより好ましい。
【0113】
なお、例えば、噴霧乾燥のように、スラリーの乾燥物が粉状(粒状)となる場合は、そのまま次工程[C]に供するようにすればよく、ブロック状となる場合は、乾燥物を粉砕するようにすればよい。
【0114】
粉体の平均粒径は、特に限定されないが、30μm以下が好ましく、特に、母粒子(基材2)の直径の1%〜50%程度が好ましく、10%〜25%程度がより好ましい。これにより、被覆層3を所望の厚さに形成するのがより容易になる。
【0115】
[C]粉体を焼成する工程(第3の工程)
次に、前記工程[B]で得られた粉体を焼成(焼結)して、焼成粉体を得る。
【0116】
本発明では、この焼成をアパタイト構造が保持される温度で行う。これにより、粉体中においてアパタイトとリン酸とを反応させることにより、Ca欠損アパタイトを生成して、Ca欠損アパタイトを主としてなる焼成粉体が得られる。
【0117】
ここで、アパタイト構造を保持し得る温度を超えた温度で、粉体を焼成した場合、粉体中では、下記式Iに示す反応が進行する。
【0118】
3Ca10(PO(OH)+2H(PO
→10Ca(PO+6HO ・・・(I)
【0119】
すなわち、アパタイト(Ca10(PO(OH))がリン酸三カルシウム(Ca(PO:TCP)に変化する。
【0120】
その結果、得られる焼成粉体において、Ca欠損アパタイトの含有量が小さくなり、最終的に得られる細胞培養担体1は、その細胞付着性、細胞増殖性等の特性が低下する。
【0121】
なお、前記式Iは、アパタイトがハイドロキシアパタイトの場合について示したが、他のアパタイトを用いた場合も同様である。
【0122】
具体的な焼成温度は、アパタイトの種類等によっても若干異なり、特に限定されないが、1000℃以下であるのが好ましく、400〜750℃程度であるのがより好ましい。これにより、Ca欠損アパタイトをより確実に生成させることができる。
【0123】
また、焼成時間は、0.1〜10時間程度であるのが好ましく、2〜4時間程度であるのがより好ましい。焼成時間が短過ぎると、十分な量のCa欠損アパタイトを生成させるのが困難となるおそれがあり、一方、焼成時間を前記上限値を超えて長くしても、それ以上の反応の進行は見込めず、製造時間が長くなるだけで好ましくない。
【0124】
また、焼成雰囲気は、特に限定されず、例えば、大気や純酸素雰囲気のような酸素含有雰囲気、アルゴン含有雰囲気、窒素含有雰囲気等のいかなるものであってもよいが、特に、大気であるのが好ましい。これにより、製造コストが増大するのを防止しつつ、Ca欠損アパタイトを効率よく生成させることができる。
【0125】
[D]基材の被覆工程(第4の工程)
次に、前記工程[C]で得られた焼成粉体で、基材2の表面を覆って被覆層3を形成する。
【0126】
図1に示すような細胞培養担体1を製造する場合、すなわち、被覆層3を基材2の表面付近に粒子31の一部を貫入させて形成する場合、被覆層3は、例えば、焼成粉体を基材2の表面に衝突させることにより形成することができる。かかる方法によれば、容易かつ確実に、均一な厚さの被覆層3を形成することができる。
【0127】
この基材2と焼成粉体との衝突は、例えば、市販のメカノフュージョン装置を用いて、乾式で行うことができる。このときの条件は、例えば、基材2と焼成粉体との混合比が、重量比で400:1〜10:1程度、装置内の温度が、基材2の主材料として用いた樹脂材料の軟化温度以下(通常、80℃以下)とされる。
【0128】
なお、被覆層3の形成方法は、これに限定されるものではない。
以上のような工程を経て、細胞培養担体1が得られる。
【0129】
なお、前述したような焼成粉体は、そのまま細胞培養担体1として用いることもできる。この場合、前記工程[D]は省略される。
【0130】
<第2実施形態>
次に、本発明の細胞培養担体の第2実施形態について説明する。
【0131】
なお、以下では、第2実施形態の細胞培養担体について、前記第1実施形態の細胞培養担体との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0132】
図2は、本発明の細胞培養担体の第2実施形態を示す断面図である。
図2に示す細胞培養担体1は、基材2の構成が異なる以外は、前記第1実施形態の細胞培養担体1と同様である。
【0133】
図2に示す基材2は、その主材料である樹脂材料21中に磁性材料22を含有し、細胞培養担体1全体として磁性を帯びている。
【0134】
これにより、細胞培養担体1は、磁場が与えられることにより培養液中で移動し、細胞培養担体1自体で培養液を攪拌することができる。このため、例えばスピナーフラスコを用いた培養のように、羽根(攪拌子)と細胞培養担体1とが衝突して生じる激しい衝撃が細胞培養担体1に加わるのを防止することができる。これにより、付着した細胞が細胞培養担体1の表面から脱落することや、細胞が破壊されるのをより確実に防止することができる。
【0135】
また、細胞培養担体1自体による培養液の攪拌は、攪拌子を用いた攪拌より均一かつ緩やか(マイルド)に行うことができる。このため、細胞が細胞培養担体1の表面に付着し易くなるとともに、付着した細胞には、均一に栄養が供給されることになる。したがって、細胞培養担体1の表面では、より効率よく細胞が増殖することとなる。
【0136】
なお、基材2は、その全体が磁性材料で構成されたものであってもよいが、本実施形態のように、樹脂材料21と磁性材料22とを複合化してなる複合化粒子とすることにより、樹脂材料21と磁性材料22との配合比率(混合比率)を設定することで、容易に基材2(細胞培養担体1)の密度(比重)を調整することができる。また、細胞培養担体1の形状、大きさ(平均粒径等)等の調整が容易となるという利点もある。
【0137】
この複合化粒子(磁性粒子)の形態としては、図2に示すように、樹脂材料21中に磁性材料(磁性粉体)22が分散されたものが好適である。かかる基材2は、例えば、磁性材料22を混合した溶融状態の樹脂材料21を粒状に成形(造粒)することにより、比較的容易に製造することができる。なお、複合化粒子は、磁性材料22が樹脂材料21の表面付近にのみ分散されたものであってもよい。
【0138】
この磁性材料22としては、例えば、酸化鉄、Fe、Ni、Co等を主成分とする強磁性合金、フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0139】
以上のような第2実施形態の細胞培養担体においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0140】
また、このような細胞培養担体1も、前記第1実施形態と同様にして製造することができる。
【0141】
なお、前記各実施形態では、いずれも、細胞培養担体1の表面付近(被覆層3)が、主として、Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトで構成されるものについて代表して説明したが、本発明の細胞培養担体は、その表面付近が、主として、2価の構成元素の一部が欠損した各種アパタイトで構成されるものであってもよい。
【0142】
このようなアパタイトとしては、例えば、Mg10(PO(OH)、Cd10(PO(OH)、Sr10(PO(OH)、Pb10(PO(OH)、Ba10(PO(OH)、Mg10(SO(OH)等が挙げられる。
【0143】
以上、本発明の細胞培養担体および細胞培養担体の製造方法について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
例えば、細胞培養担体の形状は、粒状に限らず、ブロック状(塊状)、ペレット状、シート状等の各種形状とすることができる。
【0145】
また、細胞培養担体は、その全体がリン酸カルシウム系化合物で構成されるものであってもよい。
【0146】
また、本発明の細胞培養担体の製造方法は、前述したような工程に、必要に応じて、1または2以上の任意の目的の工程を追加することもできる。
【実施例】
【0147】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.粉体に対する焼成温度の検討
1−1.焼成粉体の製造
【0148】
(実験例1)
<1> まず、湿式合成法によりハイドロキシアパタイトを合成した。
<2> 次に、10wt%のハイドロキシアパタイト水分散液を調整した。
【0149】
<3> 次に、この水分散液1Lに、10wt%のリン酸水溶液15gを添加してスラリーを得た。
【0150】
<4> 次に、このスラリーを、200℃×2時間で乾燥した後、乳鉢で粉砕することにより、平均粒径20μmの粉体を作製した。
【0151】
<5> 次に、得られた粉体を、700℃×2時間で焼成することにより、焼成粉体を得た。
【0152】
(実験例2)
前記工程<5>において、粉体を焼成する際の焼成温度を1100℃とした以外は、前記実験例1と同様にして、細胞培養担体を得た。
【0153】
(実験例3)
前記工程<5>において、粉体を焼成する際の焼成温度を1200℃とした以外は、前記実験例1と同様にして、細胞培養担体を得た。
【0154】
(実験例4)
前記工程<3>において、水分散液に添加するリン酸水溶液の量を45gとした以外は、前記実験例1と同様にして、細胞培養担体を得た。
【0155】
(実験例5)
前記工程<5>において、粉体を焼成する際の焼成温度を1100℃とした以外は、前記実験例4と同様にして、細胞培養担体を得た。
【0156】
(実験例6)
前記工程<5>において、粉体を焼成する際の焼成温度を1200℃とした以外は、前記実験例4と同様にして、細胞培養担体を得た。
【0157】
1−2.焼成粉体の結晶構造解析
各実験例で得られた焼成粉体について、それぞれ、X線回折法により結晶構造解析を行った。
その結果を、図3〜図5に示す。
【0158】
図3に示すように、焼成温度が700℃の場合(実験例1、実験例4)では、TCP(リン酸三カルシウム)に帰属するピークは認められず、アパタイトに帰属する大きなピークが観測された。
【0159】
これに対して、焼成温度が1100℃の場合(実験例2、実験例5)では、図4に示すように、β−TCPに帰属するピークが観測され、焼成温度が1200℃の場合(実験例3、実験例6)では、α−TCPに帰属するピークが観測された。
【0160】
特に、ハイドロキシアパタイトに対して、リン酸の添加量を増加した実験例5、実験例6の焼成粉体では、それぞれ、β−TCPおよびα−TCPに帰属するピークが最も大きくなり、アパタイトに帰属するピークがほとんど観測されなくなった。
【0161】
このことから、Ca欠損ハイドロキシアパタイトを得るためには、適切な焼成温度が存在することが確認された。
【0162】
2.細胞培養担体の評価
2−1.細胞培養担体の製造
【0163】
(実施例1)
まず、前記実験例1と同様にして焼成粉体を得た。なお、X線回折によりCaの欠損率を測定(以下同様)した結果、3mol%であった。
なお、Ca欠損率の測定は、具体的には以下のとおり行った。
【0164】
まず、1100℃で焼成したハイドロキシアパタイト単体、および、1100℃で焼成したリン酸三カルシウム(β−TCP)単体について、基準値を得るため、それぞれX線回折測定によりメインピークの強度を求めた。
【0165】
その結果、ハイドロキシアパタイト単体のカウント数は5000counts、β−TCP単体のカウント数は3500countsであった。
【0166】
次に、実験例1により得たCa欠損ハイドロキシアパタイト(焼成粉体)を1100℃で焼成した後、X線回折測定を行った。
【0167】
その結果、ハイドロキシアパタイトおよびβ−TCPの双方が含まれるX線回折パターンが得られた。ハイドロキシアパタイトのメインピークのカウント数は3500counts、β−TCPのメインピークのカウント数は1050countsであった。
【0168】
なお、1100℃による焼成は、各焼成粉体の結晶性を向上させる目的、および、Ca欠損ハイドロキシアパタイトをβ−TCPに相転移させる目的で行っている。
【0169】
次に、先に求めた基準値と、Ca欠損ハイドロキシアパタイトで計測されたカウント数の値とからCa欠損率を計算した。
【0170】
Ca欠損ハイドロキシアパタイトの構造式(組成式)は、3500/5000(Ca10(PO(OH))=Ca(PO4.2(OH)1.4と、1050/3500(Ca(PO)=Ca2.7(PO1.8とを合計したもの、すなわち、Ca9.7(PO(OH)1.4となる。
【0171】
ここで、本来、ハイドロキシアパタイトにおいて、カルシウムは10mol存在するはずであるが、Ca欠損ハイドロキシアパタイト(焼成粉体)において、カルシウムは9.7molしか存在せず、このことよりCaの欠損率は、3mol%と求まる。
【0172】
なお、β−TCPは、通常、組成式:Ca(POで表されるが、計算上の都合、Ca(POへ置き直している。
【0173】
また、平均粒径150μm、密度1.02g/cmのナイロン粒子(基材)を用意した。
【0174】
次に、焼成粉体3gおよびナイロン粒子300gを、それぞれ、メカノフュージョンシステムAMS−LAB(ホソカワミクロン(株))に投入し、この装置を2650rpm、45℃で70分間稼動させた。これにより、図1に示すような細胞培養担体を得た。
【0175】
なお、得られた細胞培養担体は、平均粒径151μm(被覆層の平均厚さ1μm)、密度1.03g/cmであった。
【0176】
(実施例2)
まず、水分散液に添加するリン酸水溶液の量を30gとした以外は、前記実験例1と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、5mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0177】
(実施例3)
まず、前記実験例4と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、11mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0178】
(実施例4)
まず、水分散液に添加するリン酸水溶液の量を50gとした以外は、前記実験例1と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、15mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0179】
(実施例5)
まず、水分散液に添加するリン酸水溶液の量を55gとした以外は、前記実験例1と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、19mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0180】
(実施例6)
まず、水分散液に添加するリン酸水溶液の量を60gとした以外は、前記実験例1と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、23mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0181】
(実施例7)
まず、水分散液に添加するリン酸水溶液の量を65gとした以外は、前記実験例1と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、29mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0182】
(実施例8)
まず、ハイドロキシアパタイトに代えて、フッ素アパタイトを用いた以外は、前記実験例4と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、12mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0183】
(実施例9)
まず、ハイドロキシアパタイトに代えて、塩素アパタイトを用いた以外は、前記実験例4と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、10mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0184】
(実施例10)
基材としてナイロン粒子に代えて、フェライト複合化ナイロン粒子を用いた以外は、前記実施例1と同様にして、図2に示すような細胞培養担体を得た。
【0185】
なお、得られた細胞培養担体は、平均粒径151μm(被覆層の平均厚さ1μm)、密度1.23g/cmであった。
【0186】
(比較例1)
まず、水分散液に添加するリン酸水溶液の量を0gとした以外は、前記実験例1と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、0mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0187】
(比較例2)
まず、ハイドロキシアパタイトに代えて、フッ素アパタイトを用い、水分散液に添加するリン酸水溶液の量を0gとした以外は、前記実験例1と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、0mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0188】
(比較例3)
まず、ハイドロキシアパタイトに代えて、塩素アパタイトを用い、水分散液に添加するリン酸水溶液の量を0gとした以外は、前記実験例1と同様にして焼成粉体を得た。なお、Caの欠損率は、0mol%であった。
この焼成粉体を用いて、前記実施例1と同様にして細胞培養担体を得た。
【0189】
2−2.細胞培養
<I> 実施例1〜9および比較例1〜3で得られた細胞培養担体を用いて、次のようにして細胞培養を行った。
【0190】
まず、各実施例および各比較例の細胞培養担体に、オートクレーブ滅菌を施した。
次に、各細胞培養担体1gと、2×10個/mLのアフリカミドリザル腎臓由来vero細胞とを、MEM培地(培養液)100mLに添加した。
【0191】
この培地を、スピナーフラスコに収納し、温度37℃、攪拌速度30rpmで攪拌して、3日間、細胞培養を行った。
【0192】
<II> 実施例10で得られた細胞培養担体を用いて、図6に示すような細胞培養装置を用いて、次のようにして細胞培養を行った。
【0193】
ここで、細胞培養装置100の構成について説明する。
図6に示す細胞培養装置100は、培養容器110と、磁場発生装置120と、コントローラ(制御部)130と、加温装置150とを有している。コントローラ130が電源に接続されることにより、細胞培養装置100の各部の作動に必要な電力が供給される。
【0194】
培養容器110は、培養液を収納するものであり、上部に培養液を供給・排出するための開口部111が形成されている。この開口部111は、栓体112によって閉塞されることにより、培養容器110内の気密性が保たれるようになっている。
【0195】
磁場発生装置120は、培養液中で細胞培養担体1を移動させるための磁場を発生するものであり、培養容器110の外周を囲むように設けられた電磁石121を有している。この電磁石121は、金属製の環状の芯材122と、この芯材122の外周部にラセン状に巻回された導線123とで構成され、導線123に通電することにより周辺に磁場を発生する。
【0196】
磁場発生装置120が、磁場を発生させると、細胞培養担体1が磁場発生装置120側に引き寄せられ、培養液中で浮上する。また、この状態から磁場の発生を停止すると、磁場発生装置120側に引き寄せられた細胞培養担体1がその自重によって沈降する。このような細胞培養担体1の上下移動の繰り返しにより培養液には乱流が生じ、均一かつ緩やかに撹拌される。
【0197】
また、コントローラ130には、加温装置150が電気的に接続されている。この加温装置150は、コントローラ130の制御により培養液を加温する。
【0198】
次に、細胞培養の方法について説明する。
まず、実施例10の細胞培養担体に、オートクレーブ滅菌を施した。
【0199】
次に、この細胞培養担体1gと、2×10個/mLのアフリカミドリザル腎臓由来vero細胞とを、MEM培地(培養液)100mLに添加した。
この培地を、培養容器110内に収納し、温度37℃に加温した。
【0200】
この状態で、磁場発生装置120を、所定時間でオン/オフするように作動させ、3日間、細胞培養を行った。なお、発生させる磁場の強度は、0.5Wb/mとした。
【0201】
以上のような細胞培養の操作を、各実施例および各比較例において、それぞれ、10回ずつ行った。
【0202】
そして、10回のうち5回については、細胞培養3日間後、細胞培養担体を培地から取り出し、細胞代謝活性をAlamar blue還元法により測定した。
【0203】
また、残り5回については、細胞培養3日間後、細胞培養担体を培地中から取り出した後、トリプシン溶液(回収液)2mL中に5分間添加して、細胞培養担体から細胞を取り外した。
【0204】
次に、トリプシン溶液(回収液)から細胞培養担体を取り出し、細胞代謝活性をAlamar blue還元法により測定した。
これらの結果を、Caの欠損率と併せて表1に示す。
【0205】
なお、表1中、細胞代謝活性は、比較例1において、細胞培養担体から細胞を取り外す前の細胞代謝活性を100としたときの相対値である。
また、各値は、それぞれ、5回の平均値である。
【0206】
【表1】

【0207】
表1に示すように、各実施例では、いずれも、細胞培養3日間後(細胞取り外し前)において、細胞代謝活性が対応する各比較例に対して明らかに高かった。また、Caの欠損率を適宜設定することにより、細胞培養3日間後(細胞取り外し前)における細胞代謝活性が高くなる傾向を示した。
【0208】
また、各実施例では、いずれも、細胞培養担体から細胞を取り外すことにより、細胞代謝活性が顕著に低下した。これに対して、各比較例の細胞培養担体は、いずれも、細胞培養担体から細胞を取り外した後においても、細胞代謝活性の変動は小さいものであった。
【0209】
このようなことから、各実施例の細胞培養担体(本発明の細胞培養担体)は、良好な細胞付着性を有し、かつ、細胞増殖性に優れ、また、細胞を容易に取り外すことができることが明らかとなった。
【0210】
また、Caの欠損率を適宜設定することにより、細胞の増殖速度(増殖効率)が高くできることや、細胞の取り外し易さが向上することも判った。
【図面の簡単な説明】
【0211】
【図1】本発明の細胞培養担体の第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の細胞培養担体の第2実施形態を示す断面図である。
【図3】700℃で焼成された焼成粉体のX線回折パターンを示す図である。
【図4】1100℃で焼成された焼成粉末のX線回折パターンを示す図である。
【図5】1200℃で焼成された焼成粉末のX線回折パターンを示す図である。
【図6】細胞培養装置の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0212】
1 細胞培養担体
2 基材
21 樹脂材料
22 磁性材料
3 被覆層
31 粒子
100 細胞培養装置
110 培養容器
111 開口部
112 栓体
120 磁場発生装置
121 電磁石
122 芯材
123 導線
130 コントローラ
150 加温装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に細胞を付着させ、該細胞を増殖させる細胞培養担体であって、
その少なくとも表面付近が、主として、Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトで構成されていることを特徴とする細胞培養担体。
【請求項2】
前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトにおけるCaの欠損率は、1〜30mol%である請求項1に記載の細胞培養担体。
【請求項3】
密度が1.01〜1.5g/cmである請求項1または2に記載の細胞培養担体。
【請求項4】
粒状をなしている請求項1ないし3のいずれかに記載の細胞培養担体。
【請求項5】
平均粒径が10〜2000μmである請求項4に記載の細胞培養担体。
【請求項6】
前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトは、Caの一部が欠損したハイドロキシアパタイトを主成分とするものである請求項1ないし5のいずれかに記載の細胞培養担体。
【請求項7】
基材と、該基材の表面を覆うように設けられ、主として、前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトで構成される被覆層とを有するものである請求項1ないし6のいずれかに記載の細胞培養担体。
【請求項8】
前記基材は、主として樹脂材料で構成されている請求項7に記載の細胞培養担体。
【請求項9】
前記樹脂材料は、ポリアミドおよびエポキシ樹脂の少なくとも一方を主成分とするものである請求項8に記載の細胞培養担体。
【請求項10】
前記基材は、磁性材料を含有している請求項7ないし9のいずれかに記載の細胞培養担体。
【請求項11】
表面に細胞を付着させ、該細胞を増殖させる細胞培養担体であって、
その少なくとも表面付近が、主として、2価の構成元素の一部が欠損したアパタイトで構成されていることを特徴とする細胞培養担体。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれかに記載の細胞培養担体を製造する細胞培養担体の製造方法であって、
リン酸カルシウム系アパタイトおよびリン酸を含むスラリーを得る第1の工程と、
該スラリーを乾燥して粉体を得る第2の工程と、
該粉体を焼成して、前記粉体中において前記リン酸カルシウム系アパタイトと前記リン酸とをアパタイト構造を保持しつつ反応させることにより、前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトを生成させて、該Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトを主としてなる焼成粉体を得る第3の工程とを有することを特徴とする細胞培養担体の製造方法。
【請求項13】
請求項7ないし10のいずれかに記載の細胞培養担体を製造する細胞培養担体の製造方法であって、
リン酸カルシウム系アパタイトおよびリン酸を含むスラリーを得る第1の工程と、
該スラリーを乾燥して粉体を得る第2の工程と、
該粉体を焼成して、前記粉体中において前記リン酸カルシウム系アパタイトと前記リン酸とをアパタイト構造を保持しつつ反応させることにより、前記Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトを生成させて、該Caの一部が欠損したリン酸カルシウム系アパタイトを主としてなる焼成粉体を得る第3の工程と、
前記焼成粉体で、基材の表面を被覆する第4の工程とを有することを特徴とする細胞培養担体の製造方法。
【請求項14】
前記第1の工程において、前記リン酸カルシウム系アパタイトと前記リン酸との混合比は、モル比で6:1〜1:1である請求項12または13に記載の細胞培養担体の製造方法。
【請求項15】
前記第3の工程における焼成温度は、1000℃以下である請求項12ないし14のいずれかに記載の細胞培養担体の製造方法。
【請求項16】
前記第3の工程における焼成時間は、0.1〜10時間である請求項12ないし15のいずれかに記載の細胞培養担体の製造方法。
【請求項17】
前記第3の工程における焼成雰囲気は、大気である請求項12ないし16のいずれかに記載の細胞培養担体の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし11のいずれかに記載の細胞培養担体を用いて、細胞の培養を行うことを特徴とする細胞培養方法。
【請求項19】
請求項1ないし11のいずれかに記載の細胞培養担体と細胞とを含む培養液中において、前記細胞を前記細胞培養担体に接触させることにより、その表面に付着させ、この状態で前記細胞を増殖させることを特徴とする細胞培養方法。
【請求項20】
前記細胞を増殖させた後、該増殖した細胞を前記細胞培養担体から取り外す請求項18または19に記載の細胞培養方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−34200(P2006−34200A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220870(P2004−220870)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】