細胞融合装置及びそれを用いた細胞融合方法
【課題】
細胞融合を効率的かつ簡便に行う細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法を提供する。
【解決の手段】
2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し両電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記一対の電極間に交流電圧を印加するための交流電源と、を備える細胞融合装置および、2種類の細胞が入った液滴を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極間の融合領域へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させ細胞を融合する細胞融合方法を用いる。
細胞融合を効率的かつ簡便に行う細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法を提供する。
【解決の手段】
2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し両電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記一対の電極間に交流電圧を印加するための交流電源と、を備える細胞融合装置および、2種類の細胞が入った液滴を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極間の融合領域へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させ細胞を融合する細胞融合方法を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞融合を効率的に行うための細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、異なる細胞同士を融合させ1つの交雑細胞とする細胞融合技術として、主にポリエチレングリコール(PEG)を用いる化学的融合法が用いられているが、この方法では(i)PEGは細胞に対して強い毒性を持っている、(ii)融合するにあたりPEGの重合度、添加量などの最適な諸条件を見出すのに手間がかかる、(iii)融合に際して高度な技術が要求され、特定の技術に習熟した人にしか使えない、(iv)2細胞の接触は偶発的であり、2細胞一対での細胞融合の制御が困難なため細胞融合確率が極めて低い、等の解決すべき課題があった。
【0003】
これに対して、電気的細胞融合法は、高度な技術が不要で、簡単に効率よく融合させることができ、細胞に与える毒性がなく、高活性をもったままの状態で細胞を融合させることができるという利点がある。電気的細胞融合法は、1981年西ドイツのZimmermannが確立したものであり、その原理は次の通りである。すなわち、平行電極間に交流電圧を印加し、そこに細胞を導入すると、細胞は電流密度の高い方へ引き寄せられ数珠状にならぶ。なお、細胞が数珠状にならんだ状態を一般にパールチェーンと呼ぶ。この状態で数μsec〜数十μsec単位の直流パルス電圧を電極間に印加することにより細胞膜の電気伝導度が瞬間的に低下し、脂質二重層により構成される細胞膜の可逆的乱れとその再構成が行われ、その結果細胞融合が起こるものである。電気的融合法には、主に微小電極法と平行電極法が用いられている。
【0004】
微小電極法は、顕微鏡を見ながらマイクロマニュピレーターで手作業により細胞を拾い集めては直流パルス電圧を印加し2細胞一対を融合する方法であり、極めて確実ではあるが、手間のかかる方法であり、その操作は熟練を要す上、大量の細胞を扱う上では実用的とはいえなかった。また、手作業ではなく機械的機構を用いて自動的に2細胞一対を接触させ融合させる微小電極法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された方法は、2つのマイクロギア(歯車)の互いに向かい合うティース(歯車の歯と歯の間にある隙間。特許文献1のマイクロギアのティースのサイズは、融合させる細胞程度の大きさを有している。)間によって形成された空間を融合部とし、2つのマイクロギアを回転させながら、前記ティースに2種の細胞を1個ずつそれぞれ連続的に誘導して接触させ融合させる。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、自動化は可能であるがマイクロギアの製作が非常に難しいため実用的とはいえなかった。
【0005】
平行電極法は、誘電泳動により複数の細胞を数珠状に配列形成させた後、直流パルス電圧を印加することによって融合させる方法であり、その取り扱いは簡単であるが、数珠状になった複数の細胞が融合するため化学的融合法と同様に2細胞の接触は偶発的であり、2細胞一対での細胞融合の確実な制御が難しいという課題があった。
【0006】
また、PEGを用いる化学的融合法と電気的細胞融合法を組み合わせた方法が報告されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載された方法では、細胞を入れたPEGの溶媒を電極間に導入し、電極間に交流電圧を印加し細胞を数珠状に並べることで、細胞を秩序よく配列させることを試みている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された方法においても、細胞が数珠状に連なる際に、細胞の並ぶ順番を制御することができないため、化学的融合法を単独で用いた場合よりは改善されるものの、依然として2細胞の接触は偶発的であり、2細胞一対での細胞融合の確実な制御が難しいという課題があり、さらなる改善が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平3−292881号公報
【特許文献2】特開昭60−9490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、かかる従来の実状に鑑みて提案されたものであり、細胞融合を効率的かつ簡便に行う細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するものとして、2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し両電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記一対の電極間に交流電圧を印加するための交流電源からなる事を特徴とする融合装置、または、前記交流電源及び直流パルス電圧を印加するための直流パルス電源からなることを特徴とする細胞融合装置を用いて、前記2種類の細胞を液滴に入れた液滴を生成し、前記液滴を対向する一対の電極間の融合領域に両電極に接触するように導入し、前記電極間に交流電圧を印加する、または、交流電圧を印加した後直流パルス電圧を印加することで前記2種類の細胞を接触させて融合することを特徴とし、前記液滴を構成する分散相の成分が、細胞膜の流動性を高める物質を含有することを特徴とする細胞融合方法を用いることにより、上記の従来技術の課題を解決することができることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の細胞融合装置は、2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し前記一対の電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記一対の電極間に交流電圧を印加するための交流電源と、を備える細胞融合装置である。
また本発明の細胞融合装置は、2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し前記一対の電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記融合容器に対向する前記一対の電極間に、交流電圧を印加する交流電源及び、直流パルス電圧を印加する直流パルス電源を備えており、かつ前記交流電源と前記直流パルス電源とを切り替える切替機構を備える細胞融合装置である。
【0012】
また本発明の細胞融合装置は、液滴生成装置が、分散相としての細胞含有液を導入する導入口およびこれに連通する分散相導入流路と、連続相を導入する導入口およびこれに連通する連続相導入流路と、細胞含有液からなる液滴を含む連続相を排出する排出流路およびこれに連通する排出口と、を備える微小流路構造体であって、前記分散相導入流路と前記連続相導入流路とは任意の角度で交差部において交差しており、かつ前記導入流路および前記排出流路が微小流路である細胞融合装置である。
【0013】
また本発明の細胞融合装置は、液滴生成装置が、細胞含有液を分散相とし、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第一導入口およびこれに連通する第一分散相導入流路と、もう一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第二導入口およびこれに連通する第二分散相導入流路と、前記第一分散相導入流路と第二分散相導入流路とを合流させた分散相を送液する分散相導入流路と、連続相を導入する導入口およびこれに連通する連続相導入流路と、液滴を含んだ連続相を排出する排出流路およびこれに連通する排出口と、を備える微小流路構造体であって、前記分散相導入流路と前記連続相導入流路とは任意の角度で交差部において交差しており、かつ前記導入流路および前記排出流路が微小流路である細胞融合装置である。
【0014】
また本発明の細胞融合装置は、微小流路構造体が、分散相導入流路と連続相導入流路との交差部より、排出口に至る排出流路中の一部において、排出流路の幅が狭くなっている部位を有する細胞融合装置である。
【0015】
また本発明の細胞融合装置は、排出流路の幅が狭くなっている部位が、前記交差部またはその近傍にある細胞融合装置である。
【0016】
また本発明の細胞融合装置は、排出流路の幅が狭くなっている部位が、前記交差部の分散相導入流路側にある細胞融合装置である。
【0017】
また本発明の細胞融合装置は、融合容器が、対向する内壁に一対の導電部材を配した微小流路である細胞融合装置である。
【0018】
本発明の細胞融合方法は、2種類の細胞が入った液滴を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極間の融合領域へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させ細胞を融合する、または、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させた後、前記一対の電極間に直流パルス電圧を印加して細胞を融合する、前述した細胞融合装置を用いた細胞融合方法である。
【0019】
また本発明の細胞融合方法は、2種類の細胞が入った細胞含有液を分散相として微小流路に送液させ、細胞含有液を含まない連続相を微小流路に送液させ、両者が合流する交差部において、前記分散相を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞が入った液滴を生成する細胞融合方法である。
【0020】
また本発明の細胞融合方法は、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を第一の微小流路に送液させ、もう一方の細胞を含む細胞含有液を第二の微小流路に送液させ、両者を合流させた後に、微小流路に送液させた細胞含有液を含まない連続相と合流する交差部において、前記細胞含有液を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞の一つずつが入った液滴を生成する細胞融合方法である。
【0021】
また本発明の細胞融合方法は、細胞含有液を送液する微小流路と連続相を送液する微小流路とが交差して合流する交差部において、交差する角度により生成する液滴の大きさを変えることができる細胞融合方法である。
【0022】
また本発明の細胞融合方法は、液滴を構成する分散相の成分として、細胞膜の流動性を高める物質を含み、さらに、細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールである細胞融合方法である。
【0023】
以下では、図を用いて本発明の細胞融合装置をさらに詳細に説明する。
【0024】
図1に本発明の細胞融合装置の概念図を示す。本発明の細胞融合装置は大きく分けて、液滴生成装置(1)と融合容器(2)と電源(3)から構成される。液滴生成装置と融合容器は配管(35)などによって連結されていてもよいが、個別に独立していてもよいし、一体化した構造体であってもよい。液滴生成装置と融合容器が各々個別に独立している場合は、液滴生成装置で生成した2種の細胞が入った液滴を回収容器に集めたあと、回収容器から融合容器にスポイトやピペット、シリンジなどを用いて導入すればよい。
【0025】
融合容器(2)は、図1に示すように対向する一対の電極(4)の間に、融合領域(5)を有する容器である。電極の材質は導電部材であって化学的に安定な部材であればとくに制限はなく、白金、金、銅などの金属やステンレスなどの合金などでもよい。また、容器の材質としては前記一対の電極が電気的に通電しないような絶縁性の材料であれば特に制限はなく、ガラスや樹脂、セラミックなどであればよい。
【0026】
融合容器の電極には導電線(6)を介して電源(3)が接続されている。電源(3)は図16に示すように2種の細胞のパールチェーンを形成するための交流電圧を印加する交流電源(8)から構成されていてもよいし、図17に示すように、電源(3)は交流電圧を印加する交流電源(8)と直流パルス電圧を印加する直流パルス電源(9)を備えかつ前記交流電源(8)と前記直流パルス電源(9)とを切り替える切替機構すなわち切替スイッチ(7)から構成されていてもよい。
【0027】
次に、液滴生成装置をさらに詳細に説明する。
【0028】
本発明に用いる液滴生成装置の一例の概念図を図2に示した。液滴生成装置は、2種の細胞を液滴(25)に入れることができる機能を有していればよく、図2に示すように細胞を含んだ細胞液(以下、細胞含有液と略称することがある。)を分散相(23)とし、分散相と連続相(24)を懸濁させて液滴を形成させてもよい(以下、懸濁法と称する)。なお、ここで用いる細胞の大きさに特に制限はないが、一般的に数μm〜数十μm程度の直径を有する細胞を扱う。また生成する液滴の大きさにも特に制限はないが、前記大きさの細胞を入れるため、液滴のサイズは、直径数μm〜数mm程度であることが好ましい。
【0029】
また、分散相としての細胞を含んだ細胞液(細胞含有液)は、一般に電気的細胞融合に用いる細胞液であれば特に制限はなく、例えば、濃度が150mM〜400mM程度のマンニトール、グルコース、シュークロースなどといった糖類の水溶液などを用いればよい。または、分散相としての細胞を含んだ細胞液(細胞含有液)は、細胞膜の流動性を高める物質を含んでいることが好ましい。ここで、細胞膜の流動性を高める物質は、接触した細胞同士に膜融合を起こさせる物質であれば特に制限はないが、例えばポリエチレングリコールやリゾチウムなどがあり、特に、ポリエチレングリコールであることが好ましい。またさらに、平均分子量1000〜6000程度のポリエチレングリコールが好ましい。一方、連続相としては、分散相である水性の細胞液に対して非親和性を有する油性の液体であれば特に制限はなく、例えばオリーブオイルやオレイン酸などを用いればよい。
【0030】
懸濁法の場合、液滴の粒径を制御することが難しく、粒径の均一な液滴が生成されにくいため、融合容器に入れたときに細胞を入れた液滴すべてを電極に確実に接触させることが難しい。また、懸濁法は液滴の中に確実に細胞を入れるための制御が難しい。そこで、粒径の均一な液滴を生成するための本発明に用いる液滴生成装置の一例の概念図を図3に示した。
【0031】
図3に示す液滴生成装置は、分散相としての細胞含有液を導入する導入口(16)およびこれに連通し液滴を構成する分散相としての細胞含有液を送液する分散相導入流路(図3における導入流路A(10))と、連続相を導入する導入口(16)およびこれに連通し連続相を送液する連続相導入流路(図3における導入流路B(11))とを備え、さらに、前記分散相である細胞含有液を送液する導入流路A(10)と前記連続相を送液する導入流路B(11)を交差部(18)において交差させ、前記交差部から前記細胞含有液からなる液滴を含む連続相を排出する排出流路(図3における排出流路C(12))およびこれに連通する排出口(17)が連通しており、前記導入流路及び前記排出流路が微小流路である微小流路構造体(13)で構成されている。また、導入流路Aと導入流路Bは、交差部において任意の角度(20)で交差しており、流路設計の際に自由に角度を設定できる。図3の場合には、分散相である細胞液に融合させる2種の細胞を混ぜた状態で導入流路Aに導入するため、1つの液滴に2種の細胞を同数ずつあるいは、2細胞一対で入れることは可能であるが、その確率が低い。そこで、本発明のさらに好ましい態様を図4に示した。
【0032】
図4に示す液滴生成装置は、分散相である2種類の細胞を各々含んだ2種の細胞含有液を別々に送液するための2本の導入流路を備えるものである。すなわち、細胞含有液を分散相とし、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第一導入口(161)およびこれに連通する第一分散相導入流路(導入流路D(14))と、もう一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第二導入口(162)およびこれに連通する第二分散相導入流路(導入流路E(15))を備えており、第一分散相導入流路(14)と第二分散相導入流路(15)とを合流させた分散相を送液する分散相導入流路(導入流路A(10))と、連続相を導入する連続相導入口(163)およびこれに連通する連続相導入流路(微小流路B(11))と、液滴を含んだ連続相を排出する排出流路(12)およびこれに連通する排出口(17)と、を備える微小流路構造体であって、分散相導入流路(10)と連続相導入流路(11)とは図4中で角度(20)に示されるように任意の角度で交差部において交差しており、かつ導入流路および排出流路が微小流路である細胞融合装置である。
【0033】
図4のようにすることで、2種の細胞を分けて導入流路Aに導入することが可能となり、1つの液滴に2種の細胞を同数ずつあるいは、2細胞一対で入れる確率をより高めることが可能となる。また、図3〜図4に示した微小流路構造体(13)には、細胞液を導入するための1以上の導入口(16)、(161)、(162)、(163)と、液滴を含んだ連続相を排出するための排出口(17)を備えており、導入口は微小流路A、微小流路B、微小流路D、微小流路Eと連通し、排出口は微小流路Cと連通している。
【0034】
なお、ここで微小流路とは、幅と深さが数μm〜数百μm程度の大きさを有する流路を意味している。例えば、直径数μm〜数十μm程度の細胞を複数個入れた、直径500μm程度の液滴を生成するための微小流路のサイズは、幅500μm程度、深さ200μm程度である。ここで、微小流路の長さには特に制限はない。
【0035】
また液滴の生成を容易にするための構造として、図3〜図5に示すように、分散相である細胞液を送液する分散相導入流路(図3〜図5における導入流路A(10))と連続相を送液する連続相導入流路(図3〜図5における導入流路B(11))の交差部(18)より、排出口に至る排出流路(図3〜図5における排出流路C(12))の一部において、排出流路Cの幅が狭くなっている部位(19)を有していることが好ましい。その部位(19)は、交差部(18)またはその近傍にあることが好ましく、図5に示すように交差部(18)の分散相を送液する分散相導入流路(図3〜図5における導入流路A(10))の側にあることがさらに好ましい。このような液滴生成装置を用いることで、大きさのそろった液滴を容易に生成できる理由は後述する。
【0036】
なお、上述した微小流路構造体の材質は、油性の連続相によって水性の液滴を生成できる材質であれば特に制限はない。ただし、水性の液滴を生成するには微小流路構造体が有する微小流路の内壁が非親水性であることが好ましく、例えばアクリルやシリコンゴムなどの非親水性の樹脂などが好ましい。また、ガラスや金属などの親水性の材質で微小流路構造体を構成する場合は、例えばシランカップリング剤などを微小流路に送液して、微小流路内壁を非親水性に処理すればよい。
【0037】
このような微小流路構造体の製作方法に特に制限はないが、図6に示すように一般に微小流路を形成した微小流路基板(26)にカバー体(27)を積層一体化させて製作する方法が用いられる。ここで、微小流路基板上の微小流路は、金属製や樹脂製の微小流路基板であれば機械加工により形成してもよいし、ガラス製の微小流路基板であれば一般的なフォトリソグラフィーとエッチング処理により形成してもよいし、樹脂製であれば、流路に相当する凹凸が逆に形成された金型などを用いて成形によって形成してもよく特に制限はない。また、積層一体化させるカバー体の材質にも制限はないが、微小流路基板の材質と同じものが好ましい。またカバー体と微小流路基板を積層一体化させるための接合方法としては、材質に合わせた接合方法を用いればよく特に制限はない。例えば、材質に適した接着剤を用いて接合してもよいし、材質がガラスや樹脂であれば微小流路基板とカバー体を加圧して加熱する熱接合などで接合することができる。
【0038】
次に、本発明に用いる融合容器(2)の概念図を図7に示した。図7は、対向する一対の電極(4)として金属のブロックを用い、ガラス基板(21)の上に接着剤で一対の電極(4)としての金属ブロックを固定した構造体の例である。図7に示すように、本発明に用いる融合容器(2)は、融合領域(5)の中で、2種の細胞を入れた液滴が、対向する一対の電極(4)の両方と接触するような構造であれば特に制限はない。例えば、直径数μm〜数十μm程度の細胞を複数個入れた、直径500μm程度の液滴を生成した場合、融合領域(5)における電極間距離は250μm〜400μm程度、深さ100μm〜250μm程度であることが好ましい。また、融合領域の長さに特に制限はない。
【0039】
このように、液滴の大きさが数百μm程度であることから、融合容器も微小流路であることが好ましい。この好ましい態様の一例として図8、図9に、微小流路(22)の対向する内壁に、一対の電極(4)として導電部材を配した融合容器を示した。図8は、導電部材を流路の両側の側壁に配した場合であり、図9は導電部材を流路の上部と下部に配した場合である。図8、図9の場合、融合領域(5)は微小流路(22)そのものに相当する。
【0040】
また、液滴生成装置を微小流路構造体とし、融合容器を微小流路とした場合、図10に示すように、液滴生成装置と融合容器を1つの微小流路構造体として集積化した細胞融合装置を構成してもよい。融合容器の両電極は液滴と接触できる間隔である必要があるが、液滴が両電極と接触しない場合、電極間に印加した交流電圧が液滴に十分に印加されないため、液滴内で細胞を接触させることや融合させることができなくなる。
【0041】
次に、本発明の細胞融合方法をさらに詳細に説明する。
【0042】
図11、図12に本発明の細胞融合方法の手順を説明した概念図を示した。本発明の細胞融合方法は、2種類の細胞A(28)及び細胞B(29)が入った液滴(25)を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極(4)の電極間の融合領域(5)へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に電源(3)により交流電圧を印加して、または、交流電圧を印加した後直流パルス電圧を印加して、前記液滴内の2種類の細胞を接触させ2種類の細胞を融合する細胞融合方法である。
【0043】
2種類の細胞を液滴に入れることで、融合できる細胞の数は、1つの液滴に入った細胞の数で制限され、さらに図12に示すように、2種類の細胞を各々1つずつ1つの液滴に入れることで、1つの液滴内に融合する2種の細胞を1組だけ入れることが可能となる。このような態様にすることで、同種の2細胞同士の融合、あるいは同種の細胞及び異種の細胞を含む3以上の細胞が融合することがなくなり、2細胞一対での細胞融合の融合確率を飛躍的に高めることが可能となる。また2種の細胞を入れた液滴は、図11、図12に示すように液滴が両電極と接触していないと、交流電圧を印加して細胞を接触させることができないので、液滴は両電極に接触させる必要がある。
【0044】
また、本発明の細胞融合方法に用いる液滴生成方法に特に制限はないが、図13に示すように粒径の均一な液滴を生成するためには、2種類の細胞が入った細胞含有液を分散相として微小流路に送液させ、細胞含有液を含まない連続相を微小流路に送液させ、分散相(23)である細胞含有液を送液する導入流路と連続相(24)を送液する導入流路を両者が合流する交差部(18)において、前記分散相を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞が入った液滴(25)を生成する細胞融合方法であることが好ましい。
【0045】
さらに、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を第一の微小流路に送液させ、もう一方の細胞を含む細胞含有液を第二の微小流路に送液させ、両者を合流させた後に、微小流路に送液させた細胞含有液を含まない連続相と合流する交差部において、前記細胞含有液を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞の一つずつが入った液滴を生成する細胞融合方法であることが好ましい。
【0046】
また、分散相と連続相の合流部から排出口に至る排出流路のうち、合流部近傍さらに好ましくは合流部近傍の分散相側に凸部を設けて排出流路の幅を狭くすることによって、連続相が分散相をせん断しやすくすることが可能となる。このようにした場合、液滴を形成する分散相と分散相をせん断する連続相は、微小流路の幅と深さ、及び送液速度によって単位時間当たりの体積が正確に決まる。また、分散相と連続相の合流部では、それぞれの送液速度と粘性によって、連続相が分散相をせん断するタイミングが正確に決まる。従って、このような液滴生成方法を用いることによって、粒径の均一な液滴を生成することができ、融合容器の融合領域に一定の電極間隔で固定した一対の電極間に、生成した液滴を両電極に接触させる確率を高めることが可能となる。
【0047】
また、本発明の細胞融合方法は、細胞含有液を送液する微小流路と連続相を送液する微小流路とが交差して合流する交差部において、交差する角度により生成する液滴の大きさを変えることができる細胞融合方法であり、図13に示す液滴を構成する分散相である細胞液を送液する導入流路と連続相を送液する導入流路の交差する角度(20)によって、図14に示すように液滴の粒径を変えることも可能となる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明の細胞融合装置においては、1つの液滴内に融合する2種の細胞を入れて2細胞一対の細胞融合を行う確率が高くなり、同種の2細胞同士の融合、あるいは同種の細胞及び異種の細胞を含む3以上の細胞が融合する確率が減り、2細胞一対での細胞融合の融合確率を飛躍的に高めることが可能となる。
(2)本発明の細胞融合装置においては、微小流路を用いることで容易に粒径の均一な液滴を形成することが可能となるうえ、1つの液滴に2種類の細胞をいれることができる確率が高まり、さらには、1つの液滴に2細胞一対を入れることができる確率が高まる。
(3)本発明の細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法においては、微小流路で生成した2種の細胞を入れた液滴の大きさを容易に変え両電極に液滴を容易に接触させることが可能となり、液滴内の2細胞に交流電圧を印加することが可能になり、2細胞の接触と化学的な融合を容易に行うことができる。
(4)本発明の細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法においては、微小流路で生成した2種の細胞を入れた液滴の大きさを容易に変え両電極に液滴を容易に接触させることが可能となり、液滴内の2細胞に交流電圧及び直流パルス電圧を印加することが可能になり、2細胞の接触と電気的な融合を容易に行うことができる。
(5)本発明の細胞融合方法においては、2細胞一対での細胞融合の確率を高めることが可能となる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
【0050】
(実施例1)
図15に実施例に用いた細胞融合装置の概念図を示す。細胞融合装置(30)は大きく分けて、液滴生成装置(1)、融合容器(2)、電源(3)から構成される。ここで電源(3)は、図16に示した交流電源(8)で構成されている。液滴生成装置は微小流路構造体(13)で構成した。微小流路構造体は、微小流路を形成した微小流路基板(26)に、分散相としての細胞液を導入する2つの導入口A(36)と導入口B(37)、連続相を導入する導入口C(38)、細胞液の液滴を含んだ連続相を排出する排出口(17)のそれぞれに相当する箇所に貫通孔を形成したカバー体(27)を積層一体化させて構成した。
【0051】
微小流路基板は、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのアクリル製の基板に機械加工により微小流路を形成した。微小流路の幅は500μm、深さは250μmであり、2種類の細胞を別々に送液するための2本の導入流路D(14)及び導入流路E(15)を、2細胞を含んだ細胞液を分散相として送液する導入流路A(10)に同一の合流部(31)で合流させ、さらに導入流路Aを連続相を送液する導入流路B(11)と44°の角度で交差部(18)において合流させ、2細胞を入れた液滴を含んだ連続相を排出する排出流路C(12)を導入流路Aと導入流路Bからそれぞれ158°の角度に配置して形成した。カバー体の材料には、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのシリコンゴム製の基板を使用し、分散相としての細胞液を導入する2つの導入口A(36)、導入口B(37)、連続相を導入する導入口C(38)、細胞液の液滴を含んだ連続相を排出する排出口(17)のそれぞれに相当する箇所に直径1mmの貫通孔を機械加工により形成した。
【0052】
シリコンゴム製のカバー体は、その表面が粘着性を有しており、アクリル製の基板に圧着させることで微小流路基板とカバー体を密着させ積層一体化させた。3つの導入口には、外径約1mm×内径約0.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブ(32)を接着剤で固定し、各々のチューブの反対側の端に送液用のシリンジ(39)を接続した。また、排出口には、外径約1mm×内径約0.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブ(32)を接着剤で固定し、チューブの反対側は融合容器(2)に接続した。融合容器は、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのアクリル製の基板(33)の上に、長さ70mm×幅10mm×厚さ0.5mmのステンレス製の金属板(34)を接着剤で固定し製作した。ステンレス製の金属板はリード線を介して、交流電源(8)と接続した。ここで、交流電源として信号発生器(エヌエフ回路設計ブロック製、WF1966)を用いた。
【0053】
細胞は、マウス抗体産生細胞(φ5μm)とマウスミエローマ細胞(φ10μm)を用いた。両方の細胞を培地から取り出し、遠心分離で細胞と培地を分離し、取り出した細胞をそれぞれ分子量4000のポリエチレングリコール50%水溶液に懸濁させ、0.7×106個/mLの密度になるように細胞懸濁液を調整した。
【0054】
まずはじめに、上記マウス抗体産生細胞の細胞懸濁液をシリンジを用いて導入流路Dに注入し、マウスミエローマ細胞の細胞懸濁液をシリンジを用いて導入流路Eに注入した。送液速度は各々4μL/分で送液した。導入流路Dと導入流路Eは導入流路Aと同一部分で合流し、マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が混合した状態で導入流路Aを約8μL/分で送液した。これと同時に、連続相としてオレイン酸を、シリンジを用いて導入流路Bに注入し、送液速度8μL/分で送液した。導入流路Aを流れる分散相としての細胞懸濁液と導入流路Bを流れる連続相としてのオレイン酸は、交差部(18)で合流し、オレイン酸によって細胞懸濁液がせん断され、2細胞が入った液滴を生成した。
【0055】
生成された液滴の直径は550μm、粒径の分散度を示すCV値(標準偏差を平均粒径で除算した値)は7%となり、非常に均一な粒径を有する液滴を生成することができた。また、マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が2細胞一対づつ入った液滴は、全液滴のうち5%程度生成できた。また、80%は細胞の入っていない液滴、12%はどちらかの細胞が1つ入った液滴、3%は3以上の細胞が入った液滴が生成された。生成した液滴をテフロン(登録商標)チューブを介して融合容器に導入し、融合領域が液滴で十分満たされた状態で送液を停止した。次に、電極間に10V、3MHzの交流電圧を印加したところ、液滴内の細胞が電極方向に数珠状に接触し、引き続き2細胞一対での細胞の融合を確認した。
【0056】
(実施例2)
図15の細胞融合装置を用いた第2の実施例を示す。図15に示すように細胞融合装置(30)は大きく分けて、液滴生成装置(1)、融合容器(2)、電源(3)から構成される。ここで電源(3)は、図17に示した交流電源(8)と直流パルス電源(9)及び切替スイッチ(7)で構成されている。液滴生成装置は微小流路構造体(13)で構成した。微小流路構造体は、微小流路を形成した微小流路基板(26)に、分散相としての細胞液を導入する2つの導入口A(36)と導入口B(37)、連続相を導入する導入口C(38)、細胞液の液滴を含んだ連続相を排出する排出口(17)のそれぞれに相当する箇所に貫通孔を形成したカバー体(27)を積層一体化させて構成した。微小流路基板は、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのアクリル製の基板に機械加工により微小流路を形成した。
【0057】
微小流路の幅は500μm、深さは250μmであり、2種類の細胞を別々に送液するための2本の導入流路D(14)及び導入流路E(15)を、2細胞を含んだ細胞液を分散相として送液する導入流路A(10)に同一の合流部(31)で合流させ、さらに導入流路Aを連続相を送液する導入流路B(11)と44°の角度で交差部(18)において合流させ、2細胞を入れた液滴を含んだ連続相を排出する排出流路C(12)を導入流路Aと導入流路Bからそれぞれ158°の角度に配置して形成した。
【0058】
カバー体の材料には、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのシリコンゴム製の基板を使用し、分散相としての細胞液を導入する2つの導入口A(36)、導入口B(37)、連続相を導入する導入口C(38)、細胞液の液滴を含んだ連続相を排出する排出口(17)のそれぞれに相当する箇所に直径1mmの貫通孔を機械加工により形成した。シリコンゴム製のカバー体は、その表面が粘着性を有しており、アクリル製の基板に圧着させることで微小流路基板とカバー体を密着させ積層一体化させた。
【0059】
3つの導入口には、外径約1mm×内径約0.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブ(32)を接着剤で固定し、各々のチューブの反対側の端に送液用のシリンジ(39)を接続した。また、排出口には、外径約1mm×内径約0.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブ(32)を接着剤で固定し、チューブの反対側は融合容器(2)に接続した。融合容器は、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのアクリル製の基板(33)の上に、長さ70mm×幅10mm×厚さ0.5mmのステンレス製の金属板(34)を接着剤で固定し製作した。
【0060】
ステンレス製の金属板は導電線(6)を介して、交流電源(8)と直流パルス電源(9)を切替スイッチ(7)によって切り替えることが可能な電源(3)と接続した。ここで、交流電源として信号発生器(エヌエフ回路設計ブロック製、WF1966)、直流パルス電源として細胞融合用電源(ネッパジーン製、LF101)を用いた。
【0061】
細胞は、マウス抗体産生細胞(φ5μm)とマウスミエローマ細胞(φ10μm)を用いた。両方の細胞を300mMの濃度のマンニトール水溶液に懸濁させ、0.7×106個/mLの密度になるように細胞懸濁液を調整した。両細胞懸濁液には、細胞融合での細胞膜の再生を促進するために、0.1mMの塩化カルシウム、0.1mMの塩化マグネシウムを添加した。また、連続相としては80%のオレイン酸を用いた。オレイン酸には、液滴が形成されやすいように分散剤としてスパン60を0.3%添加した。
【0062】
まずはじめに、上記マウス抗体産生細胞の細胞懸濁液をシリンジを用いて導入流路Dに注入し、マウスミエローマ細胞の細胞懸濁液をシリンジを用いて導入流路Eに注入した。送液速度は各々4μL/分で送液した。導入流路Dと導入流路Eは導入流路Aと同一部分で合流し、マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が混合した状態で導入流路Aを約8μL/分で送液した。
【0063】
これと同時に、連続相としてオレイン酸をシリンジを用いて導入流路Bに注入し、送液速度8μL/分で送液した。導入流路Aを流れる分散相としての細胞懸濁液と導入流路Bを流れる連続相としてのオレイン酸は、交差部(18)で合流し、オレイン酸によって細胞懸濁液がせん断され、2細胞が入った液滴を生成した。生成された液滴の直径は550μm、粒径の分散度を示すCV値(標準偏差を平均粒径で除算した値)は7%となり、非常に均一な粒径を有する液滴を生成することができた。
【0064】
また、マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が2細胞一対づつ入った液滴は、全液滴のうち5%程度生成できた。また、80%は細胞の入っていない液滴、12%はどちらかの細胞が1つ入った液滴、3%は3以上の細胞が入った液滴が生成された。生成した液滴をテフロン(登録商標)チューブを介して融合容器に導入し、融合領域が液滴で十分満たされた状態で送液を停止した。
【0065】
次に、電極間に10V、3MHzの交流電圧を印加したところ、液滴内の細胞が電極方向に数珠状に接触した。このときマウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が1細胞ずつ入った液滴では、2細胞一対での接触が生じた。次に切り替えスイッチにより直流パルス電源を接続し、電極間に100V、30μsの直流パルス電圧を印加したところ、2細胞一対での細胞の融合を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の細胞融合装置の概念図である。
【図2】本発明に用いる液滴生成装置に懸濁法を用いた場合の概念図である。
【図3】本発明に用いる液滴生成装置に微小流路を用いた場合の概念図である。
【図4】本発明に用いる液滴生成装置に微小流路を用いた場合の好ましい態様の概念図である。
【図5】本発明に用いる液滴生成装置に微小流路を用いた場合のさらに好ましい態様の概念図である。
【図6】微小流路構造体の概念図である。
【図7】本発明に用いる融合容器の概念図である。
【図8】本発明に用いる融合容器に微小流路を用いた場合の第1の例を示す概念図である。
【図9】本発明に用いる融合容器に微小流路を用いた場合の第2の例を示す概念図である。
【図10】液滴生成装置と融合容器を1つの微小流路構造体した場合の概念図である。
【図11】本発明の細胞融合方法の手順を説明した第1の例の概念図である。
【図12】本発明の細胞融合方法の手順を説明した第2の例の概念図である。
【図13】本発明における微小流路を用いた液滴生成方法を示した図である。
【図14】分散相である細胞液を送液する導入流路と連続相を送液する導入流路の交差する角度によって液滴の粒径を変えることが可能であることを示す図である。
【図15】実施例に用いた細胞融合装置の概念図である。
【図16】本発明に用いる電源の第1の構成例である。
【図17】本発明に用いる電源の第2の構成例である。
【符号の説明】
【0067】
1:液滴生成装置
2:融合容器
3:電源
4:電極
5:融合領域
6:導電線
7:切り替えスイッチ
8:交流電源
9:直流パルス電源
10:導入流路A
11:導入流路B
12:排出流路C
13:微小流路構造体
14:導入流路D
15:導入流路E
16:導入口
161:第一導入口
162:第二導入口
161:連続相導入口
17:排出口
18:交差部
19:部位
20:角度
21:ガラス基板
22:微小流路
23:分散相
24:連続相
25:液滴
26:微小流路基板
27:カバー体
28:細胞A
29:細胞B
30:細胞融合装置
31:合流部
32:チューブ
33:基板
34:金属板
35:配管
36:導入口A
37:導入口B
38:導入口C
39:シリンジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞融合を効率的に行うための細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、異なる細胞同士を融合させ1つの交雑細胞とする細胞融合技術として、主にポリエチレングリコール(PEG)を用いる化学的融合法が用いられているが、この方法では(i)PEGは細胞に対して強い毒性を持っている、(ii)融合するにあたりPEGの重合度、添加量などの最適な諸条件を見出すのに手間がかかる、(iii)融合に際して高度な技術が要求され、特定の技術に習熟した人にしか使えない、(iv)2細胞の接触は偶発的であり、2細胞一対での細胞融合の制御が困難なため細胞融合確率が極めて低い、等の解決すべき課題があった。
【0003】
これに対して、電気的細胞融合法は、高度な技術が不要で、簡単に効率よく融合させることができ、細胞に与える毒性がなく、高活性をもったままの状態で細胞を融合させることができるという利点がある。電気的細胞融合法は、1981年西ドイツのZimmermannが確立したものであり、その原理は次の通りである。すなわち、平行電極間に交流電圧を印加し、そこに細胞を導入すると、細胞は電流密度の高い方へ引き寄せられ数珠状にならぶ。なお、細胞が数珠状にならんだ状態を一般にパールチェーンと呼ぶ。この状態で数μsec〜数十μsec単位の直流パルス電圧を電極間に印加することにより細胞膜の電気伝導度が瞬間的に低下し、脂質二重層により構成される細胞膜の可逆的乱れとその再構成が行われ、その結果細胞融合が起こるものである。電気的融合法には、主に微小電極法と平行電極法が用いられている。
【0004】
微小電極法は、顕微鏡を見ながらマイクロマニュピレーターで手作業により細胞を拾い集めては直流パルス電圧を印加し2細胞一対を融合する方法であり、極めて確実ではあるが、手間のかかる方法であり、その操作は熟練を要す上、大量の細胞を扱う上では実用的とはいえなかった。また、手作業ではなく機械的機構を用いて自動的に2細胞一対を接触させ融合させる微小電極法が報告されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された方法は、2つのマイクロギア(歯車)の互いに向かい合うティース(歯車の歯と歯の間にある隙間。特許文献1のマイクロギアのティースのサイズは、融合させる細胞程度の大きさを有している。)間によって形成された空間を融合部とし、2つのマイクロギアを回転させながら、前記ティースに2種の細胞を1個ずつそれぞれ連続的に誘導して接触させ融合させる。しかしながら、特許文献1に記載された方法では、自動化は可能であるがマイクロギアの製作が非常に難しいため実用的とはいえなかった。
【0005】
平行電極法は、誘電泳動により複数の細胞を数珠状に配列形成させた後、直流パルス電圧を印加することによって融合させる方法であり、その取り扱いは簡単であるが、数珠状になった複数の細胞が融合するため化学的融合法と同様に2細胞の接触は偶発的であり、2細胞一対での細胞融合の確実な制御が難しいという課題があった。
【0006】
また、PEGを用いる化学的融合法と電気的細胞融合法を組み合わせた方法が報告されている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載された方法では、細胞を入れたPEGの溶媒を電極間に導入し、電極間に交流電圧を印加し細胞を数珠状に並べることで、細胞を秩序よく配列させることを試みている。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載された方法においても、細胞が数珠状に連なる際に、細胞の並ぶ順番を制御することができないため、化学的融合法を単独で用いた場合よりは改善されるものの、依然として2細胞の接触は偶発的であり、2細胞一対での細胞融合の確実な制御が難しいという課題があり、さらなる改善が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開平3−292881号公報
【特許文献2】特開昭60−9490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、かかる従来の実状に鑑みて提案されたものであり、細胞融合を効率的かつ簡便に行う細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するものとして、2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し両電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記一対の電極間に交流電圧を印加するための交流電源からなる事を特徴とする融合装置、または、前記交流電源及び直流パルス電圧を印加するための直流パルス電源からなることを特徴とする細胞融合装置を用いて、前記2種類の細胞を液滴に入れた液滴を生成し、前記液滴を対向する一対の電極間の融合領域に両電極に接触するように導入し、前記電極間に交流電圧を印加する、または、交流電圧を印加した後直流パルス電圧を印加することで前記2種類の細胞を接触させて融合することを特徴とし、前記液滴を構成する分散相の成分が、細胞膜の流動性を高める物質を含有することを特徴とする細胞融合方法を用いることにより、上記の従来技術の課題を解決することができることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の細胞融合装置は、2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し前記一対の電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記一対の電極間に交流電圧を印加するための交流電源と、を備える細胞融合装置である。
また本発明の細胞融合装置は、2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し前記一対の電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記融合容器に対向する前記一対の電極間に、交流電圧を印加する交流電源及び、直流パルス電圧を印加する直流パルス電源を備えており、かつ前記交流電源と前記直流パルス電源とを切り替える切替機構を備える細胞融合装置である。
【0012】
また本発明の細胞融合装置は、液滴生成装置が、分散相としての細胞含有液を導入する導入口およびこれに連通する分散相導入流路と、連続相を導入する導入口およびこれに連通する連続相導入流路と、細胞含有液からなる液滴を含む連続相を排出する排出流路およびこれに連通する排出口と、を備える微小流路構造体であって、前記分散相導入流路と前記連続相導入流路とは任意の角度で交差部において交差しており、かつ前記導入流路および前記排出流路が微小流路である細胞融合装置である。
【0013】
また本発明の細胞融合装置は、液滴生成装置が、細胞含有液を分散相とし、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第一導入口およびこれに連通する第一分散相導入流路と、もう一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第二導入口およびこれに連通する第二分散相導入流路と、前記第一分散相導入流路と第二分散相導入流路とを合流させた分散相を送液する分散相導入流路と、連続相を導入する導入口およびこれに連通する連続相導入流路と、液滴を含んだ連続相を排出する排出流路およびこれに連通する排出口と、を備える微小流路構造体であって、前記分散相導入流路と前記連続相導入流路とは任意の角度で交差部において交差しており、かつ前記導入流路および前記排出流路が微小流路である細胞融合装置である。
【0014】
また本発明の細胞融合装置は、微小流路構造体が、分散相導入流路と連続相導入流路との交差部より、排出口に至る排出流路中の一部において、排出流路の幅が狭くなっている部位を有する細胞融合装置である。
【0015】
また本発明の細胞融合装置は、排出流路の幅が狭くなっている部位が、前記交差部またはその近傍にある細胞融合装置である。
【0016】
また本発明の細胞融合装置は、排出流路の幅が狭くなっている部位が、前記交差部の分散相導入流路側にある細胞融合装置である。
【0017】
また本発明の細胞融合装置は、融合容器が、対向する内壁に一対の導電部材を配した微小流路である細胞融合装置である。
【0018】
本発明の細胞融合方法は、2種類の細胞が入った液滴を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極間の融合領域へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させ細胞を融合する、または、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させた後、前記一対の電極間に直流パルス電圧を印加して細胞を融合する、前述した細胞融合装置を用いた細胞融合方法である。
【0019】
また本発明の細胞融合方法は、2種類の細胞が入った細胞含有液を分散相として微小流路に送液させ、細胞含有液を含まない連続相を微小流路に送液させ、両者が合流する交差部において、前記分散相を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞が入った液滴を生成する細胞融合方法である。
【0020】
また本発明の細胞融合方法は、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を第一の微小流路に送液させ、もう一方の細胞を含む細胞含有液を第二の微小流路に送液させ、両者を合流させた後に、微小流路に送液させた細胞含有液を含まない連続相と合流する交差部において、前記細胞含有液を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞の一つずつが入った液滴を生成する細胞融合方法である。
【0021】
また本発明の細胞融合方法は、細胞含有液を送液する微小流路と連続相を送液する微小流路とが交差して合流する交差部において、交差する角度により生成する液滴の大きさを変えることができる細胞融合方法である。
【0022】
また本発明の細胞融合方法は、液滴を構成する分散相の成分として、細胞膜の流動性を高める物質を含み、さらに、細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールである細胞融合方法である。
【0023】
以下では、図を用いて本発明の細胞融合装置をさらに詳細に説明する。
【0024】
図1に本発明の細胞融合装置の概念図を示す。本発明の細胞融合装置は大きく分けて、液滴生成装置(1)と融合容器(2)と電源(3)から構成される。液滴生成装置と融合容器は配管(35)などによって連結されていてもよいが、個別に独立していてもよいし、一体化した構造体であってもよい。液滴生成装置と融合容器が各々個別に独立している場合は、液滴生成装置で生成した2種の細胞が入った液滴を回収容器に集めたあと、回収容器から融合容器にスポイトやピペット、シリンジなどを用いて導入すればよい。
【0025】
融合容器(2)は、図1に示すように対向する一対の電極(4)の間に、融合領域(5)を有する容器である。電極の材質は導電部材であって化学的に安定な部材であればとくに制限はなく、白金、金、銅などの金属やステンレスなどの合金などでもよい。また、容器の材質としては前記一対の電極が電気的に通電しないような絶縁性の材料であれば特に制限はなく、ガラスや樹脂、セラミックなどであればよい。
【0026】
融合容器の電極には導電線(6)を介して電源(3)が接続されている。電源(3)は図16に示すように2種の細胞のパールチェーンを形成するための交流電圧を印加する交流電源(8)から構成されていてもよいし、図17に示すように、電源(3)は交流電圧を印加する交流電源(8)と直流パルス電圧を印加する直流パルス電源(9)を備えかつ前記交流電源(8)と前記直流パルス電源(9)とを切り替える切替機構すなわち切替スイッチ(7)から構成されていてもよい。
【0027】
次に、液滴生成装置をさらに詳細に説明する。
【0028】
本発明に用いる液滴生成装置の一例の概念図を図2に示した。液滴生成装置は、2種の細胞を液滴(25)に入れることができる機能を有していればよく、図2に示すように細胞を含んだ細胞液(以下、細胞含有液と略称することがある。)を分散相(23)とし、分散相と連続相(24)を懸濁させて液滴を形成させてもよい(以下、懸濁法と称する)。なお、ここで用いる細胞の大きさに特に制限はないが、一般的に数μm〜数十μm程度の直径を有する細胞を扱う。また生成する液滴の大きさにも特に制限はないが、前記大きさの細胞を入れるため、液滴のサイズは、直径数μm〜数mm程度であることが好ましい。
【0029】
また、分散相としての細胞を含んだ細胞液(細胞含有液)は、一般に電気的細胞融合に用いる細胞液であれば特に制限はなく、例えば、濃度が150mM〜400mM程度のマンニトール、グルコース、シュークロースなどといった糖類の水溶液などを用いればよい。または、分散相としての細胞を含んだ細胞液(細胞含有液)は、細胞膜の流動性を高める物質を含んでいることが好ましい。ここで、細胞膜の流動性を高める物質は、接触した細胞同士に膜融合を起こさせる物質であれば特に制限はないが、例えばポリエチレングリコールやリゾチウムなどがあり、特に、ポリエチレングリコールであることが好ましい。またさらに、平均分子量1000〜6000程度のポリエチレングリコールが好ましい。一方、連続相としては、分散相である水性の細胞液に対して非親和性を有する油性の液体であれば特に制限はなく、例えばオリーブオイルやオレイン酸などを用いればよい。
【0030】
懸濁法の場合、液滴の粒径を制御することが難しく、粒径の均一な液滴が生成されにくいため、融合容器に入れたときに細胞を入れた液滴すべてを電極に確実に接触させることが難しい。また、懸濁法は液滴の中に確実に細胞を入れるための制御が難しい。そこで、粒径の均一な液滴を生成するための本発明に用いる液滴生成装置の一例の概念図を図3に示した。
【0031】
図3に示す液滴生成装置は、分散相としての細胞含有液を導入する導入口(16)およびこれに連通し液滴を構成する分散相としての細胞含有液を送液する分散相導入流路(図3における導入流路A(10))と、連続相を導入する導入口(16)およびこれに連通し連続相を送液する連続相導入流路(図3における導入流路B(11))とを備え、さらに、前記分散相である細胞含有液を送液する導入流路A(10)と前記連続相を送液する導入流路B(11)を交差部(18)において交差させ、前記交差部から前記細胞含有液からなる液滴を含む連続相を排出する排出流路(図3における排出流路C(12))およびこれに連通する排出口(17)が連通しており、前記導入流路及び前記排出流路が微小流路である微小流路構造体(13)で構成されている。また、導入流路Aと導入流路Bは、交差部において任意の角度(20)で交差しており、流路設計の際に自由に角度を設定できる。図3の場合には、分散相である細胞液に融合させる2種の細胞を混ぜた状態で導入流路Aに導入するため、1つの液滴に2種の細胞を同数ずつあるいは、2細胞一対で入れることは可能であるが、その確率が低い。そこで、本発明のさらに好ましい態様を図4に示した。
【0032】
図4に示す液滴生成装置は、分散相である2種類の細胞を各々含んだ2種の細胞含有液を別々に送液するための2本の導入流路を備えるものである。すなわち、細胞含有液を分散相とし、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第一導入口(161)およびこれに連通する第一分散相導入流路(導入流路D(14))と、もう一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第二導入口(162)およびこれに連通する第二分散相導入流路(導入流路E(15))を備えており、第一分散相導入流路(14)と第二分散相導入流路(15)とを合流させた分散相を送液する分散相導入流路(導入流路A(10))と、連続相を導入する連続相導入口(163)およびこれに連通する連続相導入流路(微小流路B(11))と、液滴を含んだ連続相を排出する排出流路(12)およびこれに連通する排出口(17)と、を備える微小流路構造体であって、分散相導入流路(10)と連続相導入流路(11)とは図4中で角度(20)に示されるように任意の角度で交差部において交差しており、かつ導入流路および排出流路が微小流路である細胞融合装置である。
【0033】
図4のようにすることで、2種の細胞を分けて導入流路Aに導入することが可能となり、1つの液滴に2種の細胞を同数ずつあるいは、2細胞一対で入れる確率をより高めることが可能となる。また、図3〜図4に示した微小流路構造体(13)には、細胞液を導入するための1以上の導入口(16)、(161)、(162)、(163)と、液滴を含んだ連続相を排出するための排出口(17)を備えており、導入口は微小流路A、微小流路B、微小流路D、微小流路Eと連通し、排出口は微小流路Cと連通している。
【0034】
なお、ここで微小流路とは、幅と深さが数μm〜数百μm程度の大きさを有する流路を意味している。例えば、直径数μm〜数十μm程度の細胞を複数個入れた、直径500μm程度の液滴を生成するための微小流路のサイズは、幅500μm程度、深さ200μm程度である。ここで、微小流路の長さには特に制限はない。
【0035】
また液滴の生成を容易にするための構造として、図3〜図5に示すように、分散相である細胞液を送液する分散相導入流路(図3〜図5における導入流路A(10))と連続相を送液する連続相導入流路(図3〜図5における導入流路B(11))の交差部(18)より、排出口に至る排出流路(図3〜図5における排出流路C(12))の一部において、排出流路Cの幅が狭くなっている部位(19)を有していることが好ましい。その部位(19)は、交差部(18)またはその近傍にあることが好ましく、図5に示すように交差部(18)の分散相を送液する分散相導入流路(図3〜図5における導入流路A(10))の側にあることがさらに好ましい。このような液滴生成装置を用いることで、大きさのそろった液滴を容易に生成できる理由は後述する。
【0036】
なお、上述した微小流路構造体の材質は、油性の連続相によって水性の液滴を生成できる材質であれば特に制限はない。ただし、水性の液滴を生成するには微小流路構造体が有する微小流路の内壁が非親水性であることが好ましく、例えばアクリルやシリコンゴムなどの非親水性の樹脂などが好ましい。また、ガラスや金属などの親水性の材質で微小流路構造体を構成する場合は、例えばシランカップリング剤などを微小流路に送液して、微小流路内壁を非親水性に処理すればよい。
【0037】
このような微小流路構造体の製作方法に特に制限はないが、図6に示すように一般に微小流路を形成した微小流路基板(26)にカバー体(27)を積層一体化させて製作する方法が用いられる。ここで、微小流路基板上の微小流路は、金属製や樹脂製の微小流路基板であれば機械加工により形成してもよいし、ガラス製の微小流路基板であれば一般的なフォトリソグラフィーとエッチング処理により形成してもよいし、樹脂製であれば、流路に相当する凹凸が逆に形成された金型などを用いて成形によって形成してもよく特に制限はない。また、積層一体化させるカバー体の材質にも制限はないが、微小流路基板の材質と同じものが好ましい。またカバー体と微小流路基板を積層一体化させるための接合方法としては、材質に合わせた接合方法を用いればよく特に制限はない。例えば、材質に適した接着剤を用いて接合してもよいし、材質がガラスや樹脂であれば微小流路基板とカバー体を加圧して加熱する熱接合などで接合することができる。
【0038】
次に、本発明に用いる融合容器(2)の概念図を図7に示した。図7は、対向する一対の電極(4)として金属のブロックを用い、ガラス基板(21)の上に接着剤で一対の電極(4)としての金属ブロックを固定した構造体の例である。図7に示すように、本発明に用いる融合容器(2)は、融合領域(5)の中で、2種の細胞を入れた液滴が、対向する一対の電極(4)の両方と接触するような構造であれば特に制限はない。例えば、直径数μm〜数十μm程度の細胞を複数個入れた、直径500μm程度の液滴を生成した場合、融合領域(5)における電極間距離は250μm〜400μm程度、深さ100μm〜250μm程度であることが好ましい。また、融合領域の長さに特に制限はない。
【0039】
このように、液滴の大きさが数百μm程度であることから、融合容器も微小流路であることが好ましい。この好ましい態様の一例として図8、図9に、微小流路(22)の対向する内壁に、一対の電極(4)として導電部材を配した融合容器を示した。図8は、導電部材を流路の両側の側壁に配した場合であり、図9は導電部材を流路の上部と下部に配した場合である。図8、図9の場合、融合領域(5)は微小流路(22)そのものに相当する。
【0040】
また、液滴生成装置を微小流路構造体とし、融合容器を微小流路とした場合、図10に示すように、液滴生成装置と融合容器を1つの微小流路構造体として集積化した細胞融合装置を構成してもよい。融合容器の両電極は液滴と接触できる間隔である必要があるが、液滴が両電極と接触しない場合、電極間に印加した交流電圧が液滴に十分に印加されないため、液滴内で細胞を接触させることや融合させることができなくなる。
【0041】
次に、本発明の細胞融合方法をさらに詳細に説明する。
【0042】
図11、図12に本発明の細胞融合方法の手順を説明した概念図を示した。本発明の細胞融合方法は、2種類の細胞A(28)及び細胞B(29)が入った液滴(25)を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極(4)の電極間の融合領域(5)へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に電源(3)により交流電圧を印加して、または、交流電圧を印加した後直流パルス電圧を印加して、前記液滴内の2種類の細胞を接触させ2種類の細胞を融合する細胞融合方法である。
【0043】
2種類の細胞を液滴に入れることで、融合できる細胞の数は、1つの液滴に入った細胞の数で制限され、さらに図12に示すように、2種類の細胞を各々1つずつ1つの液滴に入れることで、1つの液滴内に融合する2種の細胞を1組だけ入れることが可能となる。このような態様にすることで、同種の2細胞同士の融合、あるいは同種の細胞及び異種の細胞を含む3以上の細胞が融合することがなくなり、2細胞一対での細胞融合の融合確率を飛躍的に高めることが可能となる。また2種の細胞を入れた液滴は、図11、図12に示すように液滴が両電極と接触していないと、交流電圧を印加して細胞を接触させることができないので、液滴は両電極に接触させる必要がある。
【0044】
また、本発明の細胞融合方法に用いる液滴生成方法に特に制限はないが、図13に示すように粒径の均一な液滴を生成するためには、2種類の細胞が入った細胞含有液を分散相として微小流路に送液させ、細胞含有液を含まない連続相を微小流路に送液させ、分散相(23)である細胞含有液を送液する導入流路と連続相(24)を送液する導入流路を両者が合流する交差部(18)において、前記分散相を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞が入った液滴(25)を生成する細胞融合方法であることが好ましい。
【0045】
さらに、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を第一の微小流路に送液させ、もう一方の細胞を含む細胞含有液を第二の微小流路に送液させ、両者を合流させた後に、微小流路に送液させた細胞含有液を含まない連続相と合流する交差部において、前記細胞含有液を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞の一つずつが入った液滴を生成する細胞融合方法であることが好ましい。
【0046】
また、分散相と連続相の合流部から排出口に至る排出流路のうち、合流部近傍さらに好ましくは合流部近傍の分散相側に凸部を設けて排出流路の幅を狭くすることによって、連続相が分散相をせん断しやすくすることが可能となる。このようにした場合、液滴を形成する分散相と分散相をせん断する連続相は、微小流路の幅と深さ、及び送液速度によって単位時間当たりの体積が正確に決まる。また、分散相と連続相の合流部では、それぞれの送液速度と粘性によって、連続相が分散相をせん断するタイミングが正確に決まる。従って、このような液滴生成方法を用いることによって、粒径の均一な液滴を生成することができ、融合容器の融合領域に一定の電極間隔で固定した一対の電極間に、生成した液滴を両電極に接触させる確率を高めることが可能となる。
【0047】
また、本発明の細胞融合方法は、細胞含有液を送液する微小流路と連続相を送液する微小流路とが交差して合流する交差部において、交差する角度により生成する液滴の大きさを変えることができる細胞融合方法であり、図13に示す液滴を構成する分散相である細胞液を送液する導入流路と連続相を送液する導入流路の交差する角度(20)によって、図14に示すように液滴の粒径を変えることも可能となる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本発明の細胞融合装置においては、1つの液滴内に融合する2種の細胞を入れて2細胞一対の細胞融合を行う確率が高くなり、同種の2細胞同士の融合、あるいは同種の細胞及び異種の細胞を含む3以上の細胞が融合する確率が減り、2細胞一対での細胞融合の融合確率を飛躍的に高めることが可能となる。
(2)本発明の細胞融合装置においては、微小流路を用いることで容易に粒径の均一な液滴を形成することが可能となるうえ、1つの液滴に2種類の細胞をいれることができる確率が高まり、さらには、1つの液滴に2細胞一対を入れることができる確率が高まる。
(3)本発明の細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法においては、微小流路で生成した2種の細胞を入れた液滴の大きさを容易に変え両電極に液滴を容易に接触させることが可能となり、液滴内の2細胞に交流電圧を印加することが可能になり、2細胞の接触と化学的な融合を容易に行うことができる。
(4)本発明の細胞融合装置とそれを用いた細胞融合方法においては、微小流路で生成した2種の細胞を入れた液滴の大きさを容易に変え両電極に液滴を容易に接触させることが可能となり、液滴内の2細胞に交流電圧及び直流パルス電圧を印加することが可能になり、2細胞の接触と電気的な融合を容易に行うことができる。
(5)本発明の細胞融合方法においては、2細胞一対での細胞融合の確率を高めることが可能となる。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更が可能であることは言うまでもない。
【0050】
(実施例1)
図15に実施例に用いた細胞融合装置の概念図を示す。細胞融合装置(30)は大きく分けて、液滴生成装置(1)、融合容器(2)、電源(3)から構成される。ここで電源(3)は、図16に示した交流電源(8)で構成されている。液滴生成装置は微小流路構造体(13)で構成した。微小流路構造体は、微小流路を形成した微小流路基板(26)に、分散相としての細胞液を導入する2つの導入口A(36)と導入口B(37)、連続相を導入する導入口C(38)、細胞液の液滴を含んだ連続相を排出する排出口(17)のそれぞれに相当する箇所に貫通孔を形成したカバー体(27)を積層一体化させて構成した。
【0051】
微小流路基板は、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのアクリル製の基板に機械加工により微小流路を形成した。微小流路の幅は500μm、深さは250μmであり、2種類の細胞を別々に送液するための2本の導入流路D(14)及び導入流路E(15)を、2細胞を含んだ細胞液を分散相として送液する導入流路A(10)に同一の合流部(31)で合流させ、さらに導入流路Aを連続相を送液する導入流路B(11)と44°の角度で交差部(18)において合流させ、2細胞を入れた液滴を含んだ連続相を排出する排出流路C(12)を導入流路Aと導入流路Bからそれぞれ158°の角度に配置して形成した。カバー体の材料には、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのシリコンゴム製の基板を使用し、分散相としての細胞液を導入する2つの導入口A(36)、導入口B(37)、連続相を導入する導入口C(38)、細胞液の液滴を含んだ連続相を排出する排出口(17)のそれぞれに相当する箇所に直径1mmの貫通孔を機械加工により形成した。
【0052】
シリコンゴム製のカバー体は、その表面が粘着性を有しており、アクリル製の基板に圧着させることで微小流路基板とカバー体を密着させ積層一体化させた。3つの導入口には、外径約1mm×内径約0.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブ(32)を接着剤で固定し、各々のチューブの反対側の端に送液用のシリンジ(39)を接続した。また、排出口には、外径約1mm×内径約0.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブ(32)を接着剤で固定し、チューブの反対側は融合容器(2)に接続した。融合容器は、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのアクリル製の基板(33)の上に、長さ70mm×幅10mm×厚さ0.5mmのステンレス製の金属板(34)を接着剤で固定し製作した。ステンレス製の金属板はリード線を介して、交流電源(8)と接続した。ここで、交流電源として信号発生器(エヌエフ回路設計ブロック製、WF1966)を用いた。
【0053】
細胞は、マウス抗体産生細胞(φ5μm)とマウスミエローマ細胞(φ10μm)を用いた。両方の細胞を培地から取り出し、遠心分離で細胞と培地を分離し、取り出した細胞をそれぞれ分子量4000のポリエチレングリコール50%水溶液に懸濁させ、0.7×106個/mLの密度になるように細胞懸濁液を調整した。
【0054】
まずはじめに、上記マウス抗体産生細胞の細胞懸濁液をシリンジを用いて導入流路Dに注入し、マウスミエローマ細胞の細胞懸濁液をシリンジを用いて導入流路Eに注入した。送液速度は各々4μL/分で送液した。導入流路Dと導入流路Eは導入流路Aと同一部分で合流し、マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が混合した状態で導入流路Aを約8μL/分で送液した。これと同時に、連続相としてオレイン酸を、シリンジを用いて導入流路Bに注入し、送液速度8μL/分で送液した。導入流路Aを流れる分散相としての細胞懸濁液と導入流路Bを流れる連続相としてのオレイン酸は、交差部(18)で合流し、オレイン酸によって細胞懸濁液がせん断され、2細胞が入った液滴を生成した。
【0055】
生成された液滴の直径は550μm、粒径の分散度を示すCV値(標準偏差を平均粒径で除算した値)は7%となり、非常に均一な粒径を有する液滴を生成することができた。また、マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が2細胞一対づつ入った液滴は、全液滴のうち5%程度生成できた。また、80%は細胞の入っていない液滴、12%はどちらかの細胞が1つ入った液滴、3%は3以上の細胞が入った液滴が生成された。生成した液滴をテフロン(登録商標)チューブを介して融合容器に導入し、融合領域が液滴で十分満たされた状態で送液を停止した。次に、電極間に10V、3MHzの交流電圧を印加したところ、液滴内の細胞が電極方向に数珠状に接触し、引き続き2細胞一対での細胞の融合を確認した。
【0056】
(実施例2)
図15の細胞融合装置を用いた第2の実施例を示す。図15に示すように細胞融合装置(30)は大きく分けて、液滴生成装置(1)、融合容器(2)、電源(3)から構成される。ここで電源(3)は、図17に示した交流電源(8)と直流パルス電源(9)及び切替スイッチ(7)で構成されている。液滴生成装置は微小流路構造体(13)で構成した。微小流路構造体は、微小流路を形成した微小流路基板(26)に、分散相としての細胞液を導入する2つの導入口A(36)と導入口B(37)、連続相を導入する導入口C(38)、細胞液の液滴を含んだ連続相を排出する排出口(17)のそれぞれに相当する箇所に貫通孔を形成したカバー体(27)を積層一体化させて構成した。微小流路基板は、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのアクリル製の基板に機械加工により微小流路を形成した。
【0057】
微小流路の幅は500μm、深さは250μmであり、2種類の細胞を別々に送液するための2本の導入流路D(14)及び導入流路E(15)を、2細胞を含んだ細胞液を分散相として送液する導入流路A(10)に同一の合流部(31)で合流させ、さらに導入流路Aを連続相を送液する導入流路B(11)と44°の角度で交差部(18)において合流させ、2細胞を入れた液滴を含んだ連続相を排出する排出流路C(12)を導入流路Aと導入流路Bからそれぞれ158°の角度に配置して形成した。
【0058】
カバー体の材料には、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのシリコンゴム製の基板を使用し、分散相としての細胞液を導入する2つの導入口A(36)、導入口B(37)、連続相を導入する導入口C(38)、細胞液の液滴を含んだ連続相を排出する排出口(17)のそれぞれに相当する箇所に直径1mmの貫通孔を機械加工により形成した。シリコンゴム製のカバー体は、その表面が粘着性を有しており、アクリル製の基板に圧着させることで微小流路基板とカバー体を密着させ積層一体化させた。
【0059】
3つの導入口には、外径約1mm×内径約0.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブ(32)を接着剤で固定し、各々のチューブの反対側の端に送液用のシリンジ(39)を接続した。また、排出口には、外径約1mm×内径約0.5mmのテフロン(登録商標)製のチューブ(32)を接着剤で固定し、チューブの反対側は融合容器(2)に接続した。融合容器は、長さ70mm×幅40mm×厚さ1mmのアクリル製の基板(33)の上に、長さ70mm×幅10mm×厚さ0.5mmのステンレス製の金属板(34)を接着剤で固定し製作した。
【0060】
ステンレス製の金属板は導電線(6)を介して、交流電源(8)と直流パルス電源(9)を切替スイッチ(7)によって切り替えることが可能な電源(3)と接続した。ここで、交流電源として信号発生器(エヌエフ回路設計ブロック製、WF1966)、直流パルス電源として細胞融合用電源(ネッパジーン製、LF101)を用いた。
【0061】
細胞は、マウス抗体産生細胞(φ5μm)とマウスミエローマ細胞(φ10μm)を用いた。両方の細胞を300mMの濃度のマンニトール水溶液に懸濁させ、0.7×106個/mLの密度になるように細胞懸濁液を調整した。両細胞懸濁液には、細胞融合での細胞膜の再生を促進するために、0.1mMの塩化カルシウム、0.1mMの塩化マグネシウムを添加した。また、連続相としては80%のオレイン酸を用いた。オレイン酸には、液滴が形成されやすいように分散剤としてスパン60を0.3%添加した。
【0062】
まずはじめに、上記マウス抗体産生細胞の細胞懸濁液をシリンジを用いて導入流路Dに注入し、マウスミエローマ細胞の細胞懸濁液をシリンジを用いて導入流路Eに注入した。送液速度は各々4μL/分で送液した。導入流路Dと導入流路Eは導入流路Aと同一部分で合流し、マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が混合した状態で導入流路Aを約8μL/分で送液した。
【0063】
これと同時に、連続相としてオレイン酸をシリンジを用いて導入流路Bに注入し、送液速度8μL/分で送液した。導入流路Aを流れる分散相としての細胞懸濁液と導入流路Bを流れる連続相としてのオレイン酸は、交差部(18)で合流し、オレイン酸によって細胞懸濁液がせん断され、2細胞が入った液滴を生成した。生成された液滴の直径は550μm、粒径の分散度を示すCV値(標準偏差を平均粒径で除算した値)は7%となり、非常に均一な粒径を有する液滴を生成することができた。
【0064】
また、マウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が2細胞一対づつ入った液滴は、全液滴のうち5%程度生成できた。また、80%は細胞の入っていない液滴、12%はどちらかの細胞が1つ入った液滴、3%は3以上の細胞が入った液滴が生成された。生成した液滴をテフロン(登録商標)チューブを介して融合容器に導入し、融合領域が液滴で十分満たされた状態で送液を停止した。
【0065】
次に、電極間に10V、3MHzの交流電圧を印加したところ、液滴内の細胞が電極方向に数珠状に接触した。このときマウス抗体産生細胞とマウスミエローマ細胞が1細胞ずつ入った液滴では、2細胞一対での接触が生じた。次に切り替えスイッチにより直流パルス電源を接続し、電極間に100V、30μsの直流パルス電圧を印加したところ、2細胞一対での細胞の融合を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の細胞融合装置の概念図である。
【図2】本発明に用いる液滴生成装置に懸濁法を用いた場合の概念図である。
【図3】本発明に用いる液滴生成装置に微小流路を用いた場合の概念図である。
【図4】本発明に用いる液滴生成装置に微小流路を用いた場合の好ましい態様の概念図である。
【図5】本発明に用いる液滴生成装置に微小流路を用いた場合のさらに好ましい態様の概念図である。
【図6】微小流路構造体の概念図である。
【図7】本発明に用いる融合容器の概念図である。
【図8】本発明に用いる融合容器に微小流路を用いた場合の第1の例を示す概念図である。
【図9】本発明に用いる融合容器に微小流路を用いた場合の第2の例を示す概念図である。
【図10】液滴生成装置と融合容器を1つの微小流路構造体した場合の概念図である。
【図11】本発明の細胞融合方法の手順を説明した第1の例の概念図である。
【図12】本発明の細胞融合方法の手順を説明した第2の例の概念図である。
【図13】本発明における微小流路を用いた液滴生成方法を示した図である。
【図14】分散相である細胞液を送液する導入流路と連続相を送液する導入流路の交差する角度によって液滴の粒径を変えることが可能であることを示す図である。
【図15】実施例に用いた細胞融合装置の概念図である。
【図16】本発明に用いる電源の第1の構成例である。
【図17】本発明に用いる電源の第2の構成例である。
【符号の説明】
【0067】
1:液滴生成装置
2:融合容器
3:電源
4:電極
5:融合領域
6:導電線
7:切り替えスイッチ
8:交流電源
9:直流パルス電源
10:導入流路A
11:導入流路B
12:排出流路C
13:微小流路構造体
14:導入流路D
15:導入流路E
16:導入口
161:第一導入口
162:第二導入口
161:連続相導入口
17:排出口
18:交差部
19:部位
20:角度
21:ガラス基板
22:微小流路
23:分散相
24:連続相
25:液滴
26:微小流路基板
27:カバー体
28:細胞A
29:細胞B
30:細胞融合装置
31:合流部
32:チューブ
33:基板
34:金属板
35:配管
36:導入口A
37:導入口B
38:導入口C
39:シリンジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し前記一対の電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記一対の電極間に交流電圧を印加するための交流電源と、を備える細胞融合装置。
【請求項2】
前記融合容器に対向する前記一対の電極間に、交流電圧を印加する交流電源及び、直流パルス電圧を印加する直流パルス電源を備えており、かつ前記交流電源と前記直流パルス電源とを切り替える切替機構を備える請求項1記載の細胞融合装置。
【請求項3】
液滴生成装置が、分散相としての細胞含有液を導入する導入口およびこれに連通する分散相導入流路と、連続相を導入する導入口およびこれに連通する連続相導入流路と、細胞含有液からなる液滴を含む連続相を排出する排出流路およびこれに連通する排出口と、を備える微小流路構造体であって、前記分散相導入流路と前記連続相導入流路とは任意の角度で交差部において交差しており、かつ前記導入流路および前記排出流路が微小流路であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の細胞融合装置。
【請求項4】
液滴生成装置が、細胞含有液を分散相とし、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第一導入口およびこれに連通する第一分散相導入流路と、もう一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第二導入口およびこれに連通する第二分散相導入流路と、前記第一分散相導入流路と第二分散相導入流路とを合流させた分散相を送液する分散相導入流路と、連続相を導入する導入口およびこれに連通する連続相導入流路と、液滴を含んだ連続相を排出する排出流路およびこれに連通する排出口と、を備える微小流路構造体であって、前記分散相導入流路と前記連続相導入流路とは任意の角度で交差部において交差しており、かつ前記導入流路および前記排出流路が微小流路であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の細胞融合装置。
【請求項5】
微小流路構造体が、分散相導入流路と連続相導入流路との交差部より、排出口に至る排出流路中の一部において、排出流路の幅が狭くなっている部位を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の細胞融合装置。
【請求項6】
前記排出流路の幅が狭くなっている部位が、前記交差部またはその近傍にあることを特徴とする請求項5記載の細胞融合装置。
【請求項7】
排出流路の幅が狭くなっている部位が、前記交差部の分散相導入流路側にあることを特徴とする請求項6記載の細胞融合装置。
【請求項8】
融合容器が、対向する内壁に一対の導電部材を配した微小流路であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の細胞融合装置。
【請求項9】
2種類の細胞が入った液滴を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極間の融合領域へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させ細胞を融合することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の細胞融合装置を用いた細胞融合方法。
【請求項10】
2種類の細胞が入った液滴を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極間の融合領域へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させた後、前記一対の電極間に直流パルス電圧を印加して2種類の細胞を融合する事を特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の細胞融合装置を用いた細胞融合方法。
【請求項11】
2種類の細胞が入った細胞含有液を分散相として微小流路に送液させ、細胞含有液を含まない連続相を微小流路に送液させ、両者が合流する交差部において、前記分散相を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞が入った液滴を生成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の細胞融合方法。
【請求項12】
2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を第一の微小流路に送液させ、もう一方の細胞を含む細胞含有液を第二の微小流路に送液させ、両者を合流させた後に、微小流路に送液させた細胞含有液を含まない連続相と合流する交差部において、前記細胞含有液を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞の一つずつが入った液滴を生成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の細胞融合方法。
【請求項13】
細胞含有液を送液する微小流路と連続相を送液する微小流路とが交差して合流する交差部において、交差する角度により生成する液滴の大きさを変えることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の細胞融合方法。
【請求項14】
前記液滴を構成する分散相の成分として、細胞膜の流動性を高める物質を含むことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の細胞融合方法。
【請求項15】
細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項14に記載の細胞融合方法。
【請求項1】
2種類の細胞を1つの液滴に入れる液滴生成装置と、対向する一対の電極間に融合領域を有し前記一対の電極に接触するように前記液滴を入れる融合容器と、前記一対の電極間に交流電圧を印加するための交流電源と、を備える細胞融合装置。
【請求項2】
前記融合容器に対向する前記一対の電極間に、交流電圧を印加する交流電源及び、直流パルス電圧を印加する直流パルス電源を備えており、かつ前記交流電源と前記直流パルス電源とを切り替える切替機構を備える請求項1記載の細胞融合装置。
【請求項3】
液滴生成装置が、分散相としての細胞含有液を導入する導入口およびこれに連通する分散相導入流路と、連続相を導入する導入口およびこれに連通する連続相導入流路と、細胞含有液からなる液滴を含む連続相を排出する排出流路およびこれに連通する排出口と、を備える微小流路構造体であって、前記分散相導入流路と前記連続相導入流路とは任意の角度で交差部において交差しており、かつ前記導入流路および前記排出流路が微小流路であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の細胞融合装置。
【請求項4】
液滴生成装置が、細胞含有液を分散相とし、2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第一導入口およびこれに連通する第一分散相導入流路と、もう一方の細胞を含む細胞含有液を導入する第二導入口およびこれに連通する第二分散相導入流路と、前記第一分散相導入流路と第二分散相導入流路とを合流させた分散相を送液する分散相導入流路と、連続相を導入する導入口およびこれに連通する連続相導入流路と、液滴を含んだ連続相を排出する排出流路およびこれに連通する排出口と、を備える微小流路構造体であって、前記分散相導入流路と前記連続相導入流路とは任意の角度で交差部において交差しており、かつ前記導入流路および前記排出流路が微小流路であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の細胞融合装置。
【請求項5】
微小流路構造体が、分散相導入流路と連続相導入流路との交差部より、排出口に至る排出流路中の一部において、排出流路の幅が狭くなっている部位を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の細胞融合装置。
【請求項6】
前記排出流路の幅が狭くなっている部位が、前記交差部またはその近傍にあることを特徴とする請求項5記載の細胞融合装置。
【請求項7】
排出流路の幅が狭くなっている部位が、前記交差部の分散相導入流路側にあることを特徴とする請求項6記載の細胞融合装置。
【請求項8】
融合容器が、対向する内壁に一対の導電部材を配した微小流路であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の細胞融合装置。
【請求項9】
2種類の細胞が入った液滴を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極間の融合領域へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させ細胞を融合することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の細胞融合装置を用いた細胞融合方法。
【請求項10】
2種類の細胞が入った液滴を生成させた後、前記液滴を、対向する一対の電極間の融合領域へ前記一対の電極に接触するように導入し、前記一対の電極間に交流電圧を印加して前記液滴内の2種類の細胞を接触させた後、前記一対の電極間に直流パルス電圧を印加して2種類の細胞を融合する事を特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の細胞融合装置を用いた細胞融合方法。
【請求項11】
2種類の細胞が入った細胞含有液を分散相として微小流路に送液させ、細胞含有液を含まない連続相を微小流路に送液させ、両者が合流する交差部において、前記分散相を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞が入った液滴を生成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の細胞融合方法。
【請求項12】
2種類の細胞のいずれか一方の細胞を含む細胞含有液を第一の微小流路に送液させ、もう一方の細胞を含む細胞含有液を第二の微小流路に送液させ、両者を合流させた後に、微小流路に送液させた細胞含有液を含まない連続相と合流する交差部において、前記細胞含有液を前記連続相でせん断することにより2種類の細胞の一つずつが入った液滴を生成することを特徴とする請求項9または請求項10に記載の細胞融合方法。
【請求項13】
細胞含有液を送液する微小流路と連続相を送液する微小流路とが交差して合流する交差部において、交差する角度により生成する液滴の大きさを変えることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の細胞融合方法。
【請求項14】
前記液滴を構成する分散相の成分として、細胞膜の流動性を高める物質を含むことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の細胞融合方法。
【請求項15】
細胞膜の流動性を高める物質が、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項14に記載の細胞融合方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−325586(P2007−325586A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122143(P2007−122143)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】
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