説明

細胞観察装置および観察方法

【課題】注目領域における観察対象の細胞にのみ照明光を照射して、観察対象外の細胞の退色を防止することができる細胞観察装置および観察方法を提供する。
【解決手段】標本に照明光を照射する対物レンズと、該対物レンズによる照明光の照射範囲を調節するスキャナと、対物レンズにより照明された標本の画像を生成する画像生成部31と、生成された標本の画像から各細胞の特徴を示すデータを抽出する細胞データ抽出部32と、抽出された各細胞のデータと対応付けて各細胞の領域を抽出する細胞領域抽出部33と、抽出された各細胞のデータに基づいて、標本の中から注目細胞を選択する注目細胞選択部35と、スキャナを動作させて、注目細胞選択部35により選択された注目細胞に対応する細胞の領域に照明光を照射するコントローラとを備える細胞観察装置を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば細胞等の生体組織を観察する細胞観察装置および観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、細胞群の画像を撮影して取得した画像を複数の区画に分割し、注目細胞が存在する区画ごとにレーザ光を照射する走査型サイトメータが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−292422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている走査型サイトメータでは、再観察する際、区画単位で再観察するため、同じ区画内において、注目領域ではない観察対象外の細胞にまで照明光が照射され、この細胞に対して余計な退色を招くという不都合がある。
また、観察対象外だった細胞が、次回の観察時において注目細胞として選ばれた場合、既に退色しているので、正しいデータが得られない可能性がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、注目領域における観察対象の細胞にのみ照明光を照射して、観察対象外の細胞の退色を防止することができる細胞観察装置および観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様は、細胞群に照明光を照射する照明光学系と、該照明光学系による照明光の照射範囲を調節する照射範囲調節手段と、前記照明光学系により照明された前記細胞群の画像を生成する画像生成部と、該画像生成部により生成された前記細胞群の画像から各細胞の特徴を示すデータを抽出する細胞データ抽出部と、該細胞データ抽出部により抽出された各細胞のデータと対応付けて各細胞の領域を抽出する細胞領域抽出部と、前記細胞データ抽出部により抽出された各細胞のデータに基づいて、前記細胞群の中から注目細胞を選択する注目細胞選択部と、前記照射範囲調節手段を動作させて、前記注目細胞選択部により選択された前記注目細胞に対応する前記細胞の領域に照明光を照射する制御部とを備える細胞観察装置である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、照明光学系により細胞群に照明光が照射されることで発生した細胞群からの光から、画像生成部により細胞群の画像が生成される。この細胞群の画像から、細胞データ抽出部により各細胞の特徴を示すデータが抽出され、細胞領域抽出部により各細胞のデータと対応付けて各細胞の領域が抽出される。また、注目細胞選択部により、各細胞のデータに基づいて細胞群の中から、観察対象となる注目細胞が選択される。そして、制御部により照射範囲調節手段が動作させられ、注目細胞選択部により選択された注目細胞に対応する細胞の領域に照明光が照射される。
【0008】
このようにすることで、注目細胞選択部により選択された注目細胞のみに照明光が照射され、注目細胞以外の領域には照明光が照射されない。これにより、注目細胞以外の細胞への照明光の照射を防止することができ、注目細胞以外の細胞の照明光による退色等の悪影響を防止することができる。
【0009】
上記態様において、前記照射範囲調節手段が、一対のガルバノミラーと、該一対のガルバノミラーを揺動させる揺動機構とを有するガルバノスキャナであることとしてもよい。
このようにすることで、揺動機構により一対のガルバノミラーを揺動させることにより、照明光学系による照明光の照射範囲を調節することができる。
【0010】
上記態様において、前記照射範囲調節手段が、前記照明光の方向を偏向する複数の微小素子と、該複数の微小素子を動作させて前記照明光の偏向方向を変化させる駆動機構とを有する微小素子アレイであることとしてもよい。
このようにすることで、駆動機構により複数の微小素子を動作させることにより、照明光の偏向方向を変化させることができる。これにより、照明光学系に一部または全部の照明光を選択して入射させることができ、照明光学系による照明光の照射範囲を調節することができる。
【0011】
上記態様において、前記照明光学系が、前記注目細胞に細胞観察用の照明光を照射することとしてもよい。
このようにすることで、照明光学系により注目細胞に細胞観察用の照明光を照射して、注目細胞の画像を取得することができる。
【0012】
上記態様において、前記照明光学系が、前記注目細胞を刺激する細胞刺激光を照射することとしてもよい。
このようにすることで、照明光学系により注目細胞に細胞刺激光を照射して注目細胞を刺激し、刺激されて状態の変化した注目細胞を観察することができる。
【0013】
上記態様において、前記照射範囲調節手段が、前記照明光学系の倍率によって照明光を照射する領域の大きさを補正することとしてもよい。
このようにすることで、照明光学系の倍率によって照明光を照射する領域の大きさを補正し、照射範囲調節手段により適切な照明領域の照明光を照射することができる。これにより、注目細胞以外の細胞に照明光を照射して退色させてしまうことを効果的に防止することができる。
【0014】
本発明の第2の態様は、細胞群に照明光を照射して細胞群の画像を取得する画像取得ステップと、該画像取得ステップにより取得された前記細胞群の画像から各細胞のデータを抽出する細胞データ抽出ステップと、該細胞データ抽出ステップにより抽出された各細胞のデータと対応付けて各細胞の領域を抽出する細胞領域抽出ステップと、前記細胞領域抽出ステップにより抽出された各細胞のデータに基づいて、前記細胞群の中から注目細胞を選択する注目細胞選択ステップと、該注目細胞選択ステップによって選択された前記注目細胞に対応する前記細胞の領域に照明光を照射する注目細胞照射ステップと、該注目細胞照射ステップにより照明光が照射された前記注目細胞の画像を表示する注目細胞表示ステップとを含む細胞観察方法である。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、細胞群の画像から抽出された各細胞のデータに基づいて、細胞群の中から観察対象となる注目細胞が選択され、この注目細胞に対応する細胞の領域に照明光が照射される。このようにすることで、注目細胞のみに照明光が照射され、注目細胞以外の領域には照明光が照射されない。これにより、注目細胞以外の細胞への照明光の照射を防止することができ、注目細胞以外の細胞の照明光による退色等の悪影響を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、注目領域における観察対象の細胞にのみ照明光を照射して、観察対象外の細胞の退色を防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡の概略構成図である。
【図2】図1の光学ユニットの部分拡大図である。
【図3】図1のPCの機能を展開して示した機能ブロック図である。
【図4】図3の細胞データ抽出部が抽出する細胞データの一例を示す図である。
【図5】図3の画像生成部により生成された標本の画像を示す図である。
【図6】図5の標本の画像において細胞の領域として抽出するための条件の一例を示す図である。
【図7】図3の細胞領域抽出部により抽出された細胞の領域を示す図である。
【図8】図3の演算部により作成されたスキャッタグラムを示す図である。
【図9】図8のスキャッタグラムにおいて各ドットと細胞の領域との対応関係を説明する図である。
【図10】図3の注目領域選択部により選択された注目細胞群を示す図である。
【図11】図1の顕微鏡において再観察を行う際に実行される処理を示すフローチャートである。
【図12】図1の顕微鏡においてタイムラプス観察を行う際に実行される処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る顕微鏡の概略構成図である。
【図14】図13のDMDユニットの部分拡大図である。
【図15】本発明の第3の実施形態に係る顕微鏡の概略構成図である。
【図16】図15の刺激位置調節ユニットの部分拡大図である。
【図17】図15の刺激位置調節ユニットによる刺激位置の調節方法を説明する図である。
【図18】図15の顕微鏡において細胞の観察および刺激を行う際に実行される処理を示すフローチャートである。
【図19】図15の変形例に係る顕微鏡の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る顕微鏡1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る顕微鏡1は、図1に示すように、照明光を発する光源11と、標本Aを載置するステージ13と、標本Aに対向して配置された対物レンズ(照明光学系)14と、対物レンズ14により集光された標本Aからの光を検出する光学ユニット12と、光学ユニット12により検出された標本Aからの光から画像を生成するPC15と、PC15により生成された画像を表示するモニタ16と、これらを制御するコントローラ(制御部)17とを備えている。
【0019】
光源11は、例えば細胞群からなる標本Aを観察するための細胞観察用の照明光を発する光源である。具体的には、光源11は、例えば、標本A中の観察対象に特異的に付着または発現する蛍光物質を励起させる励起光を発するようになっている。
【0020】
対物レンズ14は、光源11から発せられた照明光を標本Aに照射するとともに、標本Aからの光を集光するようになっている。具体的には、対物レンズ14は、例えば、光源11から発せられた励起光を標本Aに照射するとともに、標本A上において蛍光物質が励起されて発生した蛍光を集光するようになっている。
【0021】
光源11と光学ユニット12との間は光ファイバ18により接続されており、光源11から発せられた照明光は、光ファイバ18により光学ユニット12に導光されるようになっている。
【0022】
光学ユニット12は、図2に示すように、光ファイバ18により導光された照明光を平行光にするレンズ21と、照明光の光路中に設けられたダイクロイックミラー22と、光源11からの照明光を走査するスキャナ(照射範囲調節手段)23と、標本Aからの光を検出する光検出器24とを備えている。
【0023】
ダイクロイックミラー22は、光源11からの照明光を透過する一方、対物レンズ14により集光された標本Aからの光を光検出器24に向けて反射するようになっている。これにより、ダイクロイックミラー22は、光源11からの照明光と、標本Aからの光とを分岐するようになっている。
【0024】
光検出器24は、例えば光電子増倍管(Photomultiplier Tube)であり、検出した標本Aからの光を光電変換して得られた電気信号をコントローラ17に出力するようになっている。
【0025】
ダイクロイックミラー22と光検出器24との間には、ダイクロイックミラー22により反射された標本Aからの光のうち光源11からの照明光を遮断するバリアフィルタ25と、バリアフィルタ25を透過した標本Aからの光を光検出器24の受光面に集光するレンズ26とが設けられている。
【0026】
スキャナ23は、例えば銀コートされた一対のガルバノミラー27,28を有しており、これらガルバノミラー27,28の揺動角度を変化させ、ラスタスキャン方式で駆動されるようになっている。これにより、光源11からの照明光を標本A上において2次元的に走査させることができるようになっている。
【0027】
PC15は、パーソナルコンピュータであり、図3に示すように、標本Aの画像を生成する画像生成部31と、各細胞のデータを抽出する細胞データ抽出部32と、各細胞のデータと対応付けて各細胞の領域を抽出する細胞領域抽出部33と、各細胞のデータを演算処理する演算部34と、各細胞のデータに基づいて標本Aの中から注目細胞を選択する注目細胞選択部35と、抽出されたデータを記憶する記憶部36とを機能として備えている。
【0028】
画像生成部31は、スキャナ23により動作される標本A上における照明光の照射領域と、光検出器24により検出された光の強度とに基づいて、標本Aの画像を生成するようになっている。
【0029】
細胞データ抽出部32は、画像生成部31により生成された標本Aの画像から、各細胞の特徴を示すデータを抽出するようになっている。ここで、各細胞のデータとは、図4に示すように、例えば各細胞の面積(Area)や、最大強度(Max Intensity)や、最小強度(Min Intensity)や、真円度(Circularity Factor)等である。これらデータは、各細胞と対応付けられて細胞データテーブルとして記憶部36に記憶される。
【0030】
細胞領域抽出部33は、画像生成部31により生成された標本Aの画像から、細胞データ抽出部32により抽出された各細胞のデータと対応付けて各細胞の領域を抽出するようになっている。具体的には、図5に示すように、画像生成部31により生成された標本Aの画像に細胞A1〜A11とゴミ等の異物Bが混在している場合、図6に示すように、各種の条件設定を行うことにより細胞の領域を抽出する。細胞の領域を抽出するための条件として、図6では、一例として、最大強度(Max Intensity)、最小強度(Min Intensity)、最大面積(Max Area)、最小面積(Min Area)を設定している。このような条件設定を行うことで、図7に示すように、細胞の領域として、符号A1〜A3,A6〜A11が抽出される。
【0031】
演算部34は、細胞データ抽出部32により抽出された各細胞のデータを統計処理して、その処理結果をモニタ16に表示するようになっている。具体的には、演算部34は、図8に示すように、細胞データ抽出部32により抽出された各細胞のデータをスキャッタグラム上に表示するようになっている。図8では、一例として、各細胞の真円度(Circularity Factor)を縦軸に、各細胞の面積(Area)を横軸に設定したスキャッタグラムを表示している。このスキャッタグラム上のデータ(ドット)は、図9に示すように、細胞領域抽出部33により抽出された各細胞の領域A1〜A3,A6〜A11とそれぞれ対応付けられている。
【0032】
注目細胞選択部35は、細胞データ抽出部32により抽出された各細胞のデータに基づいて、標本Aの中から注目細胞を選択するようになっている。具体的には、注目細胞選択部35は、図10に示すように、演算部34により演算されてモニタ16に表示されたスキャッタグラムから、ユーザがマウス等の入力装置(図示略)を操作することにより、注目細胞群を選択するようになっている
【0033】
コントローラ17は、スキャナ23を動作させて、注目細胞選択部35により選択された注目細胞に対応する細胞の領域に照明光を照射するようになっている。具体的には、コントローラ17は、図10に示すスキャッタグラム上の注目細胞群における各注目細胞に対応する領域に、照明光をそれぞれ照射するようになっている。
【0034】
上記構成を有する顕微鏡1の作用について以下に説明する。
光源11を作動させると、光源11から射出された照明光は、光学ユニット12に導光される。光学ユニット12に導光された照明光は、ダイクロイックミラー22を透過して、スキャナ23により標本A上において2次元的に走査され、対物レンズ14により標本A上に照射される。
【0035】
標本Aからの光(例えば反射光や蛍光)は、対物レンズ14により集光され、スキャナ23を通過して、ダイクロイックミラー22により反射される。反射された標本Aからの光は、バリアフィルタ25およびレンズ26を透過して、光検出部24により検出される。
【0036】
このように光検出部24により検出された標本Aからの光の強度情報とスキャナ23による照明光の照射位置とを対応づけて記憶することにより、2次元的な画像を構築することが可能となる。
【0037】
上記のように生成される標本Aの画像を用いた顕微鏡1による細胞観察方法について、図11に示すフローチャートに従って以下に説明する。
まず、画像取得ステップS1により、標本Aの測定範囲に照明光を照射して標本Aの画像を取得する。
次に、細胞データ抽出ステップS2により、画像取得ステップS1において取得された標本Aの画像から各細胞の特徴(面積や強度等)を示すデータを抽出する。
【0038】
次に、細胞領域抽出ステップS3により、細胞データ抽出ステップS2において抽出された各細胞のデータと対応付けて各細胞の領域を抽出する。
次に、統計処理ステップS4により、細胞データ抽出ステップS2において抽出された各細胞のデータを統計処理してスキャッタグラムを作成する。
次に、注目細胞選択ステップS5により、統計処理ステップS4において統計処理された結果、すなわちスキャッタグラムを用いて、標本Aの中から注目細胞を選択する。
【0039】
次に、注目細胞照射ステップS6により、注目細胞選択ステップS5において選択された注目細胞に対応する細胞の領域に照明光を順次照射する。
次に、注目細胞表示ステップS7により、注目細胞照射ステップにより照明光が照射された注目細胞の画像を表示する(再観察)。
【0040】
次に、上記の注目細胞照射ステップS6および注目細胞表示ステップS7の処理が、全ての注目細胞について行われたかについての判断が行われる(ステップS8)。未観察の注目細胞があれば、注目細胞照射ステップS6および注目細胞表示ステップS7の処理を繰り返し、全ての注目細胞について行われた場合には細胞観察を終了する。
【0041】
また、上記構成を有する顕微鏡1を用いて、タイムラプス観察を行う場合には、図12に示すように、上記のステップS1〜S8までの処理に加えて、タイムラプス観察を行うために予め規定された回数(規定回数)の観察を行ったかについての判断を行う(ステップS9)。規定回数未満の観察回数の場合には、ステップS6〜S8までの処理を繰り返し、規定回数の観察を行った場合にはタイムラプス観察を終了する。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る顕微鏡1によれば、標本Aの画像から抽出された各細胞のデータに基づいて、標本Aの中から観察対象となる注目細胞が選択され、この注目細胞に対応する細胞の領域に照明光が照射される。このようにすることで、注目細胞のみに照明光が照射され、注目細胞以外の領域には照明光が照射されない。これにより、注目細胞以外の細胞への照明光の照射を防止することができ、注目細胞以外の細胞の照明光による退色等の悪影響を防止することができる。
【0043】
また、本実施形態に係る顕微鏡1において、対物レンズ14の倍率によって照明光を照射する領域の大きさを自動的に補正する補正手段を光学ユニット12に設けることとしてもよい。
このようにすることで、対物レンズ14の倍率によって照明光を照射する領域の大きさを自動的に補正し、適切な照明領域の照明光を照射することができる。これにより、注目細胞以外の細胞に照明光を照射して退色させてしまうことを効果的に防止することができる。
【0044】
[第2の実施形態]
以下に、第2の実施形態に係る顕微鏡2について、図面を参照して説明する。以降では、本実施形態に係る顕微鏡2について、第1の実施形態に係る顕微鏡1と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0045】
本実施形態に係る顕微鏡2は、図13に示すように、照明光を発する光源11と、光源11からの照明光の標本A上における照射範囲を調節するDMDユニット43と、標本Aを載置するステージ13と、標本Aに対向して配置された対物レンズ(照明光学系)14と、対物レンズ14により集光された標本Aからの光を検出するCCDユニット42と、CCDユニット42により検出された標本Aからの光から画像を生成するPC15と、CCDユニット42とPC15との間に設けられた通信ユニット(CCU)41と、PC15により生成された画像を表示するモニタ16と、これらを制御するコントローラ(制御部)17とを備えている。
【0046】
DMDユニット43は、図14に示すように、光ファイバ18が接続されるファイバアタッチメント51と、光ファイバ18により導光された照明光を平行光にするシリンドリカルレンズ52と、照明光の光路中に設けられたダイクロイックミラー53と、ダイクロイックミラー53を透過した照明光をDMD55に向けて反射するミラー54と、微小可動ミラーが複数配列されたDMD(照射範囲調節手段)55と、標本Aからの光をDMD55に結像する結像レンズ56と、標本Aからの光をDMD55に向けて反射するミラー57を備えている。
【0047】
DMD(Digital Mirror Device)55は、微小可動ミラー(微小素子)が複数配列された構成を有しており、微小可動ミラーを動作(ON/OFF)させることによって、光源11から発せられた照明光の一部または全部を選択的に反射して、標本A上における照明光の照射領域を変化させるようになっている。
【0048】
ダイクロイックミラー53は、光源11からの照明光を透過する一方、対物レンズ14により集光された標本Aからの光をCCDユニット42に向けて反射するようになっている。これにより、ダイクロイックミラー53は、光源11からの照明光と、標本Aからの光とを分岐するようになっている。
【0049】
CCDユニット42は、標本Aからの光を検出して標本Aの画像を生成するCCD(Charge Coupled Device)61を有しており、標本Aの画像信号をCCU41を介してPC15に出力するようになっている。
【0050】
ダイクロイックミラー53とCCD61との間には、ダイクロイックミラー53により反射された標本Aからの光のうち光源11からの照明光を遮断するバリアフィルタ58と、バリアフィルタ58を透過した標本Aからの光をCCD61の受光面に集光するレンズ59,60とが設けられている。
【0051】
上記構成を有する本実施形態に係る顕微鏡2によれば、DMD55の微小可動ミラーを動作(ON/OFF)させることによって、注目細胞に対応する細胞の領域に照明光が照射される。このようにすることで、注目細胞のみに照明光が照射され、注目細胞以外の領域には照明光が照射されない。これにより、前述の第1の実施形態と同様に、注目細胞以外の細胞への照明光の照射を防止することができ、注目細胞以外の細胞の照明光による退色等の悪影響を防止することができる。
【0052】
[第3の実施形態]
以下に、第3の実施形態に係る顕微鏡3について、図面を参照して説明する。以降では、本実施形態に係る顕微鏡3について、前述の各実施形態に係る顕微鏡1,2と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0053】
本実施形態に係る顕微鏡3は、図15に示すように、照明光を発する光源11と、標本Aを載置するステージ13と、標本Aに対向して配置された対物レンズ(照明光学系)14と、対物レンズ14により集光された標本Aからの光を検出する光学ユニット12と、標本Aを刺激する刺激光の照射位置を調節する刺激位置調節ユニット65と、光学ユニット12により検出された標本Aからの光から画像を生成するPC15と、PC15により生成された画像を表示するモニタ16と、これらを制御するコントローラ(制御部)17とを備えている。
【0054】
光源11は、例えば細胞群からなる標本Aを観察するための細胞観察用の照明光と、細胞を刺激する細胞刺激光とを同時に、または切り替えて発する光源である。
光源11と光学ユニット12との間は光ファイバ18により接続されており、光源11から発せられた照明光は、光ファイバ18により光学ユニット12に導光されるようになっている。
光源11と刺激位置調節ユニット65との間は光ファイバ66により接続されており、光源11から発せられた細胞刺激光は、光ファイバ66により刺激位置調節ユニット65に導光されるようになっている。
【0055】
刺激位置調節ユニット65は、図16に示すように、光ファイバ66が接続されるファイバアタッチメント71と、光ファイバ66により導光された細胞刺激光を平行光にするシリンドリカルレンズ72と、シリンドリカルレンズ72からの細胞刺激光をDMD75に向けて反射するミラー74と、微小可動ミラーが複数配列されたDMD(照射範囲調節手段)75と、DMD75からの細胞刺激光を集光するレンズ76と、レンズ76により集光された細胞刺激光を対物レンズ14に向けて反射するミラー77を備えている。
【0056】
DMD(Digital Mirror Device)75は、微小可動ミラー(微小素子)が複数配列された構成を有しており、微小可動ミラーを動作(ON/OFF)させることによって、光源11から発せられた細胞刺激光の一部または全部を選択的に反射して、標本A上における細胞刺激光の照射領域を変化させるようになっている。
【0057】
具体的には、DMD75の微小可動ミラーを動作(ON/OFF)させることによって、図17に示すように、細胞刺激光を照射する領域Cについて、細胞の領域の重心からのオフセット量やスポットの大きさを設定することができる。
【0058】
上記構成を有する顕微鏡3の細胞観察方法について、図18に示すフローチャートに従って以下に説明する。
図18に示すフローチャートにおいてステップS1〜S5までは、図11に示すフローチャートと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0059】
注目細胞照射ステップS16では、注目細胞選択ステップS5において選択された注目細胞に対応する細胞の領域に照明光および細胞刺激光を順次照射する。
次に、注目細胞表示ステップS7により、注目細胞照射ステップにより照明光および細胞刺激光が照射された注目細胞の画像を表示する(再観察)。
【0060】
上記の注目細胞照射ステップS16および注目細胞表示ステップS7の処理が、全ての注目細胞について行われたかについての判断が行われる(ステップS8)。未観察の注目細胞があれば、注目細胞照射ステップS16および注目細胞表示ステップS7の処理を繰り返し、全ての注目細胞について行われた場合には細胞観察を終了する。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る顕微鏡3によれば、DMD75の微小可動ミラーを動作(ON/OFF)させることによって、注目細胞に対応する細胞の領域に細胞刺激光が照射される。これにより、注目細胞を刺激して、刺激されて状態の変化した注目細胞を照明光により観察することができる。
また、注目細胞以外の細胞への照明光および細胞刺激光の照射を防止することができ、注目細胞以外の細胞の照明光および細胞刺激光による退色等の悪影響を防止することができる。
【0062】
[変形例]
以下に、本実施形態に係る顕微鏡3の変形例について図19を参照して説明する。
本実施形態に係る顕微鏡3の変形例として、図19に示すように、本実施形態に係る顕微鏡3の刺激位置調節ユニット65において、DMD75に代えて、ガルバノミラーを有するスキャナ(照射範囲調節手段)81を設けることとしてもよい。または、DMDのような反射型微小素子アレイの代わりに、LCD(液晶アレイ)のような透過型微小素子アレイを用いることもできる。
【0063】
図19に示すように、スキャナ81は、一対のガルバノミラー82,83を有しており、これらガルバノミラー82,83の揺動角度を変化させ、ラスタスキャン方式で駆動されるようになっている。これにより、光源11からの細胞刺激光の標本A上における照射範囲を調節することができるようになっている。
【0064】
なお、図19において、符号84,86はミラー、符号85はダイクロイックミラーである(図15では未図示)。ダイクロイックミラー85は、光学ユニット12からの照明光および対物レンズ14により集光された標本Aからの光を透過する一方、刺激位置調節ユニット65からの細胞刺激光を反射するようになっている。これにより、ダイクロイックミラー85は、照明光および標本Aからの光と、細胞刺激光を分岐するようになっている。
【0065】
本変形例に係る顕微鏡4によれば、スキャナ81を動作させることによって、注目細胞に対応する細胞の領域に細胞刺激光が照射される。これにより、前述の顕微鏡3と同様に、注目細胞を刺激して、刺激されて状態の変化した注目細胞を照明光により観察することができる。
【0066】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、本発明を上記の各実施形態および変形例に適用したものに限定されることなく、これらの実施形態および変形例を適宜組み合わせた実施形態に適用してもよく、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0067】
A 標本
1,2,3,4 顕微鏡
11 光源
12 光学ユニット
13 ステージ
14 対物レンズ(照明光学系)
15 PC
16 モニタ
17 コントローラ(制御部)
21 レンズ
22 ダイクロイックミラー
23 スキャナ(照射範囲調節手段)
24 光検出器
31 画像生成部
32 細胞データ抽出部
33 細胞領域抽出部
34 演算部
35 注目細胞選択部
36 記憶部
41 通信ユニット
42 CCDユニット
43 DMDユニット
55 DMD(照射範囲調節手段)
65 刺激位置調節ユニット
75 DMD(照射範囲調節手段)
81 スキャナ(照射範囲調節手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞群に照明光を照射する照明光学系と、
該照明光学系による照明光の照射範囲を調節する照射範囲調節手段と、
前記照明光学系により照明された前記細胞群の画像を生成する画像生成部と、
該画像生成部により生成された前記細胞群の画像から各細胞の特徴を示すデータを抽出する細胞データ抽出部と、
該細胞データ抽出部により抽出された各細胞のデータと対応付けて各細胞の領域を抽出する細胞領域抽出部と、
前記細胞データ抽出部により抽出された各細胞のデータに基づいて、前記細胞群の中から注目細胞を選択する注目細胞選択部と、
前記照射範囲調節手段を動作させて、前記注目細胞選択部により選択された前記注目細胞に対応する前記細胞の領域に照明光を照射する制御部とを備える細胞観察装置。
【請求項2】
前記照射範囲調節手段が、一対のガルバノミラーと、該一対のガルバノミラーを揺動させる揺動機構とを有するガルバノスキャナである請求項1に記載の細胞観察装置。
【請求項3】
前記照射範囲調節手段が、前記照明光の方向を偏向する複数の微小素子と、該複数の微小素子を動作させて前記照明光の偏向方向を変化させる駆動機構とを有する微小素子アレイである請求項1に記載の細胞観察装置。
【請求項4】
前記照明光学系が、前記注目細胞に細胞観察用の照明光を照射する請求項1に記載の細胞観察装置。
【請求項5】
前記照明光学系が、前記注目細胞を刺激する細胞刺激光を照射する請求項1に記載の細胞観察装置。
【請求項6】
前記照射範囲調節手段が、前記照明光学系の倍率によって照明光を照射する領域の大きさを補正する請求項1に記載の細胞観察装置。
【請求項7】
細胞群に照明光を照射して細胞群の画像を取得する画像取得ステップと、
該画像取得ステップにより取得された前記細胞群の画像から各細胞のデータを抽出する細胞データ抽出ステップと、
該細胞データ抽出ステップにより抽出された各細胞のデータと対応付けて各細胞の領域を抽出する細胞領域抽出ステップと、
前記細胞領域抽出ステップにより抽出された各細胞のデータに基づいて、前記細胞群の中から注目細胞を選択する注目細胞選択ステップと、
該注目細胞選択ステップによって選択された前記注目細胞に対応する前記細胞の領域に照明光を照射する注目細胞照射ステップと、
該注目細胞照射ステップにより照明光が照射された前記注目細胞の画像を表示する注目細胞表示ステップとを含む細胞観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−19748(P2012−19748A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160820(P2010−160820)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】