細胞関連のHIVの経上皮移動の低減及び防止、殺菌剤及び他の処方並びに方法
scFv型抗体を含有する膣殺菌薬は、経上皮HIVの伝染を減少又は防止する。抗体として、(scFv型の)抗CD18及び/又は抗CD11抗体を用いる。抗ICAM抗体も用いることが、好ましい。抗体は、乳酸菌の細菌性送達手段のような細菌性の送達システムを用いて、防御されるべき上皮に送達することができる。これによりHIVの経上皮伝染は、初期感染の予防を含み、減少又は防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にHIV感染の性的伝染の対処に有効である方法に関する。特に、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が子宮頸部、膣、胃腸、直腸、結腸及び口腔の上皮を越えて感染するのを阻止するために、CD18に対する抗体を用いる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
HIV−1感染は、大多数のHIV−1の性的伝染が異性との接触の結果として世界的規模で生じているように、性的な接触を通して最も頻繁にもたらされている(Louria, D. B., J. H. Skurnick, P. Palumbo, J. D. Bogden, C. Rohowsky-Kochan, T. N. Denny, and C. A. Kennedy, 2000, HIV heterosexual transmission: a hypothesis about an additional potential determinant, Int J Infect Dis 4:110-6; Skurnick, J. H., C. A. Kennedy, G. Perez, J. Abrams, S. H. Vermund, T. Denny, T. Wright, M. A. Quinones, and D. B. Louria, 1998, Behavioral and demographic risk factors for transmission of human immunodeficiency virus type 1 in heterosexual couples: report from the Heterosexual HIV Transmission Study, Clin Infect Dis 26:855-64)。出産適齢期の女性が、HIV−1に感染する危険性が最も高く(Davis, S. F., D. H. Rosen, S. Steinberg, P. M. Wortley, J. M. Karon, and M. Gwinn, 1998, Trends in HIV prevalence among childbearing women in the United States, 1989-1994, J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retrovirol 19:158-64; Wortley, P. M., and P. L. Fleming, 1997, AIDS in women in the United States, Recent trends, Jama 278:911-6)、これが、世界的な女性、新生児、及び子供のHIV−1感染における、対応する増加をもたらしている。例えば、女性へのHIV−1の性的伝染の機構は、女性のHIV−1予防のための有力な標的として検討されている。更に、男性及び女性の直腸での使用に関する潜在的な取り組みは、その経路を介しての伝染を予防すると考えられている。
【0003】
殺菌剤は、新たなHIV−1感染の罹患率を減少させるために用いることのできる、潜在的に女性が管理する予防的療法である。部分的に有効な殺菌剤でさえ、HIVの蔓延に対して大きな影響を及ぼす可能性があり、73の低所得国のわずか20%の女性が、60%の有効度の殺菌剤を他に防御されていない全ての性的行為の半分に用いた場合、女性、男性及び子供において、3年間で250万のHIV感染を防げるであろうと推定される(Watts, C., W. Thompson, and L. Heise, 1998, Presented at the International Conference on AIDS, Geneva.)。
【0004】
様々な可能性のある抗HIV−1の殺菌剤は、現在開発及び臨床的試験の進行段階にある。しかし、それらの殺菌剤は、リスクのある人々の殆どが使用するには現実的ではない高い製造費用を必要としている。更に現在試験中の殺菌剤は、いくつかのCCR5利用の分離株に対する有効性の減少、泌尿生殖器の常在菌(normal flora)の破壊、生殖器上皮に対する毒性、発癌可能性、及び細胞関連のウィルスに対する実証のない効能を含む、いくつかの難点があり、「D'Cruz, O. J., and F. M. Uckun, 2004, Clinical development of microbicides for the prevention of HIV infection, Curr Pharm Des 10:315-36」に概説されている。マカク属のサルのSHIVの伝染に対する防御に用いられる抗gp120抗体の経膣的適用のような、抗体の殺菌剤としての使用は、多くの化学的化合物に関連する毒性の問題を回避できる(Veazey, R. S., R. J. Shattock, M. Pope, J. C. Kirijan, J. Jones, Q. Hu, T. Ketas, P. A. Marx, P. J. Klasse, D. R. Burton, and J. P. Moore, 2003, Prevention of virus transmission to macaque monkeys by a vaginally applied monoclonal antibody to HIV-1 gp120, Nat Med 9:343-6)。
【0005】
HIV−1の無細胞の伝染を標的とする化学的な又は抗体ベースの殺菌剤の設計における1つの難点は、ウィルスの表面エピトープの大きな可変性である。この難点は、細胞関連及び/又は無細胞の伝染に関係する、宿主細胞タンパク質のエピトープを標的とすることで回避することができる。以前には、宿主ICAM−1は、抗体ベースの殺菌剤の開発に関する有力な標的として認識されていた。抗ICAM−1は、インビトロでのモデルの子宮頸部上皮の細胞単層を越える、及びインビボでのHIV−1の伝染のHuPBL−SCIDマウスモデルの両方で、細胞関連のHIV−1の伝染を阻止することが示されている。とりわけ、マウスモデルにおける結果は、マウスの上皮でのICAM−1の関与が、伝染を阻止するために必要であること、そして感染したヒトPBMC接種材料ではICAM−1のみの阻止では、伝染を阻止するためには不十分であることを実証した(Chancey,C.J.,K.V.Khanna,J.F.Seegers,G.W.Zhang,J.Hildreth,A.Langan及びR.B.Markhamの「細胞間接着分子1(ICAM−1)に特異的な、乳酸菌に発現される単鎖の可変性断片(scFv)は、子宮頸部上皮を越えての細胞関連のHIV−1の感染を阻止する(J. Immunol 176:5627-36, 2006)を参照されたい)。
【0006】
しかし、抗体産生の新しい方法にもかかわらず、抗体の消極的な投与に必然的に関係して、このような殺菌剤の費用は、高額になりやすい。
背景として、Markhamら(Johns Hopkins University)の米国特許第6,566,095号(2003年5月20日)「HIVの性的伝染を防止するための組成物及び方法」に、記載がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
経済的に及び臨床的に実現可能な方法で、広範囲のHIV−1の変異体の性的伝染を阻止することが可能な抗体を提供することは有益なことであるが、そのような抗体は、本発明の前には未だ提供されていない。ウィルス抗原を標的とする取り組みの何れもが抱える主要な問題は、HIVの場合に、大きな可変性であり、そして高頻度で変化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、抗CD18抗体が上皮を越えてのHIV−1の伝染を阻止するという発明者らの発見を活用している。抗CD18抗体は、従って子宮頸部上皮、膣上皮、胃腸上皮、直腸上皮、結腸上皮及び口腔上皮を越えてのHIV−1の伝染を防止する又は軽減する殺菌剤に用いることができ、それによりHIV−1感染に対する方法を提供することができる。また発明者らは、抗CD18抗体が、ICAM−1に対する抗体と組合せて用いることができることを見い出した。更にはこの効果を生み出す抗体の濃度は、臨床的状況において入手可能の十分に低いレベルである。
【0009】
また本発明は、HIV−1の伝染を阻止するために、抗CD18抗体のscFvを使用することも提供する。有利なことに、そのようなscFv(ここにおいて、抗原結合の重鎖及び軽鎖領域が、それらが機能的にFabと似た態様に折り畳まれていることを確保する分子、に連結している単鎖の抗体である)は、例えば、遺伝子操作された乳酸菌、遺伝子操作された大腸菌等のような、遺伝子操作された細菌性送達システムにより分泌される様な範囲の大きさでありそしてそのような構造(即ち、複鎖ではない)である。従って、防御抗体(例えば、抗CD18抗体のような)のscFvを産生するために遺伝子操作された細菌(例えば、乳酸菌、大腸菌等のような)は、領域(例えば、子宮頸部領域、膣領域等のような)にコロニーを形成するのに用いることができ、そしてそのままで(in situ)HIV感染に対する防御を提供することができる。
【0010】
本発明は、HIV感染の性的伝染を防止する方法を提供する。本発明は、CD18に特異的な抗体を用いる方法を提供する。CD18は、2つのICAM−1インテグリン・リガンドであるMac−1及びLFA−1(その両者とも、移動細胞に存在する)のβ鎖である。本発明は、抗CD18が上皮障壁を越えての細胞関連のウィルスの伝染を阻止できること、そして上皮表面に適用した場合、上皮の下部の感染しやすい細胞の無細胞のウィルスによる感染を阻止できることを、示すことができる発見に基づいている。理論にとらわれることなく、無細胞のウィルスに対する抗CD18の有効性に関する例示的な要因は、ウィルスが感染すると細胞から抗原が出芽し、ウィルスが宿主抗原を捕捉することによるかもしれない。従って、本発明は、無細胞のウィルスのHIVの場合のウィルス性抗原(ここにおける抗原は、高度に可変的であり、そして高頻度で変化する)を標的とする際に従来から観察される問題の解決に取り組んでいる。
【0011】
好ましい一態様では、本発明は、HIV(例えば、無細胞のHIV、細胞関連のHIVのような)曝露を受ける可能性のある上皮(例えば、子宮頸部上皮、膣上皮、直腸上皮、結腸上皮、口腔上皮のような)を、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11抗体又は両方に曝露することを含んでなる、ヒト又は哺乳動物のHIVの初期感染を防止する方法を提供しており、ここにおいて、上皮を抗体に曝露する段階が、HIV感染の何れの確立よりも先行し、そしてHIV感染を防止するものであり、具体的には、上皮をCD18及び/又はCD11の抗体と組み合わせた抗ICAM抗体に曝露する段階を含む防止の方法;抗体を少なくとも1つの細菌性(例えば、乳酸菌等のような)送達システムを介して上皮に送達する段階を含む防止の方法;用いられる細菌性(例えば乳酸菌等のような)送達システムの量は、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体を0.5〜100マイクログラム/mlの範囲の濃度で、発現するのに十分な量である防止の方法;scFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体の濃度が、約0.5〜100マイクログラム/mlの範囲である防止の方法;細菌性の送達システムが、scFvを発現する防止の方法;抗体が、産生物(細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体、scFv様分子の四量体及びそれらの組み合わせのような)として、細菌性の送達システムにより発現する防止の方法等である。
【0012】
別の好ましい態様では、本発明は、HIV(例えば、無細胞のHIV、細胞関連のHIVのような)曝露を受ける可能性のある上皮(例えば、子宮頸部上皮、膣上皮、直腸上皮、結腸上皮、口腔上皮のような)を、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体又は両方に曝露することを含んでなる、ヒト又は哺乳動物へのHIV(例えば、無細胞のHIV、細胞関連のHIVのような)の経上皮伝染を阻止する方法を提供するものであり、具体的には、上皮を抗体に曝露する段階がHIV感染の何れの確立よりも先行し、そしてHIV感染の確立を防止するような阻止方法;上皮経由のHIVの伝染が減少する又は防止される阻止方法;HIVの性的伝染が減少する又は防止される阻止方法;CD18及び/又はCD11の抗体と組合せて抗ICAM抗体に上皮を曝露することを含む阻止方法;少なくとも1つの細菌性の送達システム(例えば、乳酸菌の送達システム等のような)を介して抗体を上皮へ送達することを含む阻止方法;用いられる乳酸菌の送達システムの量が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体を0.5〜100マイクログラム/mlの範囲の濃度で、発現するのに十分な量である阻止方法;細菌性の送達システムが、scFvを発現する阻止方法;scFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体の濃度が、約0.5〜100マイクログラム/mlの範囲である阻止方法;抗体が、産生物(例えば、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体、scFv様分子の四量体及びそれらの組合せのような)として、細菌性の送達システムにより発現する阻止方法等、である。
【0013】
別の好ましい態様では、本発明は、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体(抗CD11抗体の具体例は、抗CD11a、抗CD11b、抗CD11c、抗CD11dがある)又はその両方を含んでなる殺菌剤を提供するものであり、具体的には、抗体が細菌性の送達システムによりscFvとして発現する殺菌剤(具体例には、例えば抗体を、少なくとも1つの乳酸菌の細菌性送達手段等を介して、防御されるべき上皮に送達することができる殺菌剤等);少なくとも1つの抗ICAM抗体を更に含んでなる殺菌剤;抗ICAM抗体(単一又は複数)並びに抗CD18及び/又は抗CD11の抗体を一緒にした累積的な抗HIVの効果が、(個別の抗CD18及び/又は抗CD11の抗体の効果)+(個別の抗ICAM抗体の効果)と、少なくとも等しい又はそれより大きい殺菌剤等、である。
【0014】
別の好ましい態様では、本発明は、(A)軽鎖の抗原結合性の可変領域及び重鎖の抗原結合性の可変領域を結合タンパク質(例えば、付着の重鎖及び軽鎖の可変領域をCD18が結合するような構造に折り畳んでいる、アミノ酸の配列を含んでなる結合タンパク質のような)に融合して、単鎖の抗体(scFv)を形成すること、ここにおいて抗体の分子は同じである又は異なっていてもよく、そして抗CD11及び抗CD18の抗体より選ばれる;(B)細菌性の送達システム(例えば、乳酸菌の送達システム、大腸菌の送達システム、乳酸球菌の送達システム等のような)が、HIVの伝染から防御されるべき上皮を含有する環境において、段階(A)の単鎖の抗体を発現する状態を形成すること;を含んでなる、殺菌剤を作成する方法を提供する。
【0015】
別の好ましい態様では、本発明は、HIV−1の経上皮の伝染を阻止する発現産生物(例えば、抗CD18;抗CD11;組み換え菌により発現するリガンド;等のような)を提供する。
本発明の方法、システム、産生物、組成物等は、女性及び男性に対して使用可能であり、有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、防御抗体(例えば、抗CD18抗体、抗CD11抗体(例えば、抗CD11a抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CD11d抗体)、抗CD18抗体と抗CD11抗体との組合せ)は、病原菌(例えば、HIV)の上皮(例えば、子宮頸部上皮、膣上皮、胃腸上皮、直腸上皮、結腸上皮、口腔上皮のような)を越えての伝染を阻止するために用いる。
【0017】
本明細書に記述の防御抗体に関して、多様な反復物(例えば、複鎖抗体、自然発生の単鎖抗体、又はそれらの断片等のような)が、本発明の実施において用いられてもよい。
【0018】
本発明の防御抗体を、病原菌(HIVのような)の伝染阻止に用いるように上皮へ送達するために、例えば、乳酸菌送達システム、大腸菌送達システム等のような細菌性送達システムを用いることができる。用いられる他の好ましい細菌性システムは、生殖管、胃腸管(例えば末梢胃腸管のような)、口腔管等の常在菌(normal flora)として存在する細菌種に基づくものを含む。
【0019】
乳酸菌の使用は、送達システムを構築するのに特に好ましいと見なされる。具体的には、抗体の送達システムは、単鎖Fvs(scFv)として知られる短い表面結合又は分泌の異種タンパク質が持続してその場所で(in situ)産生されるために作り出された乳酸菌を用いて提供できる。これらのscFvは、特異的なHIV関連の標的に対して狙う抗体の可変領域に似るように折り畳むことができる。ICAM−1に対するscFvが、細胞関連のHIV−1のインビトロでの伝染を、70±5%減少させることが実証されている。更に、ある重症の複合型免疫不全症のマウスを用いたインビボでの伝染では、ヒト末梢血単核細胞(Hu−PBL−SCIDマウス)に再構成されたICAM−1に対する抗体は、膣内に接種されたHIV−1感染細胞による伝染から最大90%の防御を提供できる(Chancey,C.J.,K.V.Khanna,J.F.Seegers,G.W.Zhang,J.Hildreth,A.Langan及びR.B.Markhamの「細胞間接着分子1(ICAM−1)に特異的な乳酸菌発現性の単鎖の可変性断片(scFv)が、子宮頸部上皮の単層を越えての細胞関連のHIV−1の感染を阻止する」(J Immunol 176:5627-5636, 2006))。これらの検討は、この抗体が膣上皮細胞の表面でICAM−1と反応することを示している(データは示さず)。この観察されたインビボでの防御は、抗体の低い濃度(20ug/ml)で達成された。この乳酸菌送達システムは、一例として記述したものであり、当業者は理解されるであろうが、多様な他の乳酸菌送達システムが構成されてもよい。例えば、「C. Kruger, Y. Hu, Q. Pan, H. Marcotte, A. Hultberg, D. Delwar, P. J. van Dalen, P. H. Pouwels, R. J. Leer, C. Kelly, C. Van Dollenweerd, J. Ma, and L. Hammartstrom, "In situ delivery of passive immunity by lactobacilli producing single-chain antibodies," Nature Biotechnology, 20:702-706 (2002)」を参照されたい。
【0020】
継続した期間にわたり抗体を恒常的に生成できる乳酸菌のその場所での(in situ)使用に関して、病原菌(例えば、HIV)の伝染を阻止するために、十分な抗体の濃度が必要となる。その場所での(in situ)使用に関するそのような抗体濃度は、抗CD18及び/又は抗CD11の抗体、並びに付加的に抗ICAM抗体の使用と組合せて用いる場合、抗伝染の効果をもたらすように、提供することができる。
【0021】
細菌性システム(例えば、乳酸菌、大腸菌)により発現する抗体は、「従来の抗体」ではなく、抗体分子(例えば、抗CD18抗体、抗CD11抗体)の軽及び重鎖の機能的末端を結合タンパク質と遺伝子学的に融合することにより産生される単鎖抗体(scFv)と言われる範疇のものである。結合タンパク質の使用は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Tang, Y., N. Jiang, C. Parakh, and D. Hilvert, 1996, Selection of linkers for a catalytic single-chain antibody using phage display technology, J. Biol Chem, 271:15682-15686」を参照されたい。加えて本発明の実施では、例えば、二量体、三量体、及びscFv四量体のような、更に結合する部位を含むscFvの変異体である変異物及び代替物を用いてもよい。例えば、「Le Gall, F., S. M. Kipriyanov, G. Moldenhauer, and M. Little, 1999, Di-, tri- and tetrameric single chain Fv antibody fragments against human CD19: effect of valency on cell binding, FEBS Lett 453:164-168; Lawrence, L.J., A.A. Kortt, P. Iliades, P.A. Tulloch, and P.J. Hudson, 1998, Orientation of antigen binding sites in dimeric and trimeric single chain Fv antibody fragments, FEBS Lett 425:479-484」を参照されたい。結合タンパク質として、付着した重及び軽鎖の可変領域を、目的(例えば、CD18)の抗原が結合するような様式で折り畳むのを確保するアミノ酸の配列の何れかが用いられてもよい。
【0022】
細菌性送達システムは、適用に応じて選択されてもよい。具体的には、乳酸菌送達システムを用いることは、経膣的に適用できる殺菌剤の製剤化に好ましいと考えられる。別の具体例として、大腸菌送達システムを用いることは、経直腸的に適用できる製品(例えば、直腸性交を介する伝染を防止する製品のような)の製剤化に好ましいと考えられる。
【0023】
本発明の実施に関して、有効成分は、例えば、殺菌剤、遅延放出送達システム、固相システム(structure)、子宮頸部リング、スポンジ、コンドーム、ジェル、クリーム、坐薬、カプセル剤等のような、多様な形態であってよい。殺菌剤は、本発明の有効成分に関して最も好ましい製剤であるが、殺菌剤の剤型が多様であってもよいことは理解されるであろう。具体的には、防御抗体は、送達手段(例えば、遅延放出送達システムのような)を組み込んでいる、又はそこから防御抗体が徐々に放出されるような固相構造をした(例えば、防御抗体又は断片を含ませた固相物質、子宮頸部リング等のような)システムにより送達されてもよい。あるいは、防御抗体は、工場設備で製造されてもよい。更に、精製技術が実用的使用のために改良されることにより、精製した防御抗体を調製して、細菌性送達システム無しで、ジェル、子宮頸部リング、スポンジ等による投与のような、直接的に、ヒト及び哺乳動物に投与することができる。
【0024】
有効成分の投与は、好ましくは、男性又は女性の消費者自身によってできる。具体的には、例えば、消費者による自己投与を介して、scFvを発現する細菌が凍結乾燥された形態(例えば、坐薬、カプセル剤等のような)で送達される。別の検討では、ある特定の細菌が、坐薬又はカプセル剤の形態で、冷蔵することなく最大2年間生存可能であることが示めされ、本発明による細菌性システムに関して同様の生存能力が期待できる。細菌が、永久に生き延びるとは考えられないことは理解されるであろう、従って、例えば、数日毎又は月一回のような置き換えが望ましい。本発明は、細菌の持続性を観察するための検出システムの一部として、また細菌の次なる適用が必要とされる場合の指標として、使用できるタンパク質をコードする細菌も提供する。
【0025】
本明細書には、例示として女性又は男性の具体例が示されているが、これは本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。本発明の方法、製品及び製剤は、男性及び女性を経上皮のHIVの伝染(性交に起因するものとは別の経上皮のHIVの伝染のような)から防御することにおいて有用である。
有利なことに、本発明では、細菌は、防御抗体を産生するように設計することができ、その後に、製品の製造工程が、細菌を多量に成長させること、続いて細菌をそのままでの(in situ)送達のために凍結乾燥することを単に含み、これは比較的安価に実施することができる。従って、本発明は、抗体の精製を必要とせず、そして活性な製品を合成するための複雑な化学的工程を必要としない、初期HIV感染を予防し、そして経上皮のHIVの伝染を防止する方法を有利に提供する。
(実施例)
【実施例1】
【0026】
本実施例では、我々は、ICAM−1のリガンドとして、また子宮頸部上皮を越えての細胞関連のHIV−1の伝染を阻止する候補物として、役目を果たすことのできるLFA−1又はMac−1分子の一本鎖である、CD18に対する抗体を同定する。本実施例はまた、ICAM−1に対する抗体と組合せて用いた、CD18に対する抗体が、どちらか一方の抗体単独の場合よりもHIV−1に感染された細胞の移動を大きく減少させ、臨床的状況で得られる抗体の濃度にて伝染を有効に遮断することを又実証する。
【0027】
物質及び方法
HIV−1調製物
HIV−1Ba−L(Advanced Biotechnologies, Inc., Columbia, MD)、HIV−1のCCR5利用の変異体を、1.0mlのアリコート(1×106、50%の組織培養感染用量(TCID50)/ml)で購入し、液体窒素中に保管した。
PBMCの単離及び培養
ヒトPBMCは、Ficoll Plus勾配(GE Healthcare, Piscataway, NJ)上で白血球除去の血液(leukopheresed blood)(Hemapheresis Center, Johns Hopkins Hospital, Baltimore, MD)の遠心分離により分離した。PBMCは、100U/mlのペニシリン、100μgのストレプトマイシン、10ng/mlのゲンタマイシン及び2mMのL−グルタミン(以下では、cRPMIと言う、培地及び全ての添加剤は、Mediatech,Herndon,VAから入手)、10%の加熱非活性化されたウシ胎仔血清(FCS;Atlanta Biologicals, Atlanta, GA)、及び5μg/mlのPHA(Sigma, St. Louis, MO)を5%のCO2、37℃にて添加したRPMI−1640中で、2×106cells/mlで48時間培養した。48時間後、PBMCは、10U/mlのIL−2(Roche Biochemicals, Indianapolis, IN)を添加したcRPMI−10%FCSに移し、そして104TCID50HIVBal と共に24時間培養した。ウィルス接種材料を、24時間後に取り出して、細胞を温cRPMIで洗浄し、そして10U/mlのIL−2を添加した新しいcRPMI−10%FCSに加えた。培養物は、感染後(pi)3日目及び7日目に新培地に供給した。PBMCは、感染後7〜9日目に伝染実験に用いた。
【0028】
ヒト子宮頸部の上皮細胞のトランスウェル(transwell)培養
ヒトの、自然に形質転換した、子宮頸部の上皮細胞株HT−3(American Type Cell Culture, Rockville, MD, ATCC#HTB-32)は、cRPMIに関して上記のように添加した、McCoy社の5a培地で10%FCSと共に培養し、3日毎に0.05%のトリプシン−EDTA(Mediatech)による細胞置き換えを行う定期的な置換培養を行った。子宮頸部の上皮細胞は、3.0μmの孔の大きさを有する直径12nmのPCFトランスウェル挿入物(Millipore, Bedford, MA)につき、2×105cellsをcRPMI−10%のFCSに播腫して、そして37℃、5%CO2の条件で保持した。培地は、2〜3日毎に交換した。細胞は、7日目に分極した完全な単層をトランスウェル挿入物上に形成し、これは西洋ワサビペルオキシダーゼ(Sigma)に対する細胞単層の透過性を観察して確認した。トランスウェル挿入物上の子宮頸部の上皮単層は、培養の6〜8日目の間に使用した。
【0029】
経上皮のHIV−1の伝染
経上皮移動アッセイは、幾らかの改良を加えて、Bomsel(Bomsel, M., 1997, Transcytosis of infectious human immunodeficiency virus across a tight human epithelial cell line barrier, Nat Med 3:42-7)の記述のように実施した。つまり、1×106のHIVBa−L感染のPBMCを、指定された抗体で処理した子宮頸部の上皮単層の頂端部に添加し、そして24時間移動させた。PBMCの生存率は、それらのトランスウェルへの添加に先行して、トリパンブルー排除法(Sigma)により評価し、常に>85%であることを見出した。頂端部及び基底部の上澄み液中のHIV−1p24抗原の量は、HIV−1p24ELISAアッセイ法(Perkin-Elmer, Boston, MA)により測定した。伝染したPBMCは、基底部のコンパートメントから収集し、遠心分離により沈殿させ、そしてトリパンブルー排除法を用いて血球計で計数し、生存率を評価した。マウス・モノクロナール抗体H52(抗CD18)及びMT−M5(抗ICAM−1)は、ジョンズ・ホプキンス大学医学部(Johns Hopkins University School of Medicine)のJames Hildreth研究室から入手した。マウス・モノクロナール抗体7E4(抗CD18)は、ベックマン・コールター・イムノテック社(Beckman-Coulter Immunotech Miami, FL)から入手した。マウス骨髄腫IgG1イソタイプ(対照)は、Zymed社(South San Francisco, CA)から入手した。
【0030】
統計的分析
統計的分析は、Intercooled Stata 8(Stata Corp, College Station, TX)の統計パッケージを用いて実施した。ボンフェローニ(Bonferroni)補正法と共に一元配置分散分析法(one-way ANOVA)用いて群間の差異を比較して、0.05に等しい又はより小さいp値を有意であると見なした。
【0031】
実験結果
CD18に対する抗体の子宮頸部上皮単層を越えての細胞関連のHIV−1の伝染の阻止
細胞関連のHIV−1の伝染の阻止におけるCD18に対する抗体の効果を、抗ICAM−1と相対的に比較するために、抗ICAM−1(クローンMT−M5)、抗CD18(クローンH52)又はイソタイプ対照マウスIgG1の何れかを、子宮頸部上皮トランスウェル培養物の頂端のチェンバーに添加する直前の1×106のHIV感染のPBMCに加えた。PBMCは24時間移動させ、そして抗体はアッセイを実施する間存在させておいた。
【0032】
抗ICAM−1及び抗CD18の両方は、未処理及びイソタイプの対照の両方と比較した場合、テストした10〜100μg/mlの範囲の全ての濃度で、有意に(p<0.01)細胞移動を減少させた(図1A)。しかし、抗CD18は、テストした全ての濃度で抗ICAM−1よりも有意に(p<0.05)細胞移動を大きく阻止し、更に抗ICAM−1の対応する濃度での阻止と比較して、基底部のコンパートメントで検出された細胞の数を2.5〜4倍減少させた。同様の傾向は、基底側の上澄みで検出されたHIV−1p24の量の測定においても観察された。両方の抗体処理物は、各濃度で、有意に(p<0.01)基底部のコンパートメントで検出されたHIV−1p24の量を減少させた(図1B)。HIV−1p24は、対応する抗ICAM−1処理群よりも、抗CD18処理群で少なく検出されたが、差異は統計的に有意ではなかった。抗体での処理は、トランスウェルの頂端側で細胞により放出されるHIV−1p24の量を変化させなかった。
【0033】
インビトロで観察された抗CAM−1に対する阻止レベルは、インビボでのHUPBL−SCIDマウスモデルを用いて、細胞関連のHIV−1の伝染における高度に有意な減少と関連付けられている(Chancey et al., supra)。従って、これらの実験において観察された高い阻止力は、CD18に対する抗体が抗HIV殺菌剤としての開発に極めて高い可能性を有していることを実証している。
【0034】
50:50の抗CAM−1及び抗CD18抗体の混合物によるHIV−1感染培養物からの細胞移動の低減
異なる接着分子に対する抗体の混合物が単一の抗体よりも大きく阻止できるかどうかを判定する目的で、50:50の比で混合したCD18及びICAM−1に対する抗体を、それらを子宮頸部上皮トランスウェル培養物の頂端のチェンバーに添加する直前の、1×106のHIV−感染PBMCに加えた。HIV−1感染PBMCは24時間移動させ、そして抗体はアッセイを実施する間存在させておいた。
【0035】
全ての抗体処理物は、未処理又はイソタイプ対照の処理トランスウェルと比較した場合、感染培養物からのPBMCの伝染を全ての濃度で有意に(p<0.05)減少した(図2A)。ここでも抗CD18は、抗ICAM−1よりも大きく細胞移動を減少させ、そして抗ICAM−1/抗CD18を50:50で含む混合物での処理物は、抗ICAM−1又は抗CD18の何れか単独での対応する濃度で観察された場合より優れて、細胞移動において統計的に有意な減少(p<0.05)をもたらした(図2B)。
【0036】
抗体の濃度を更に減小した場合、50:50混合物の細胞移動を阻止することに対する増進が、5ug/mlの濃度で観察されたが、1ug/mlでは50:50混合物は抗CD18単独の場合と同程度であった(図5)。1ug/mlでの抗ICAM−1単独は、移動を38%減少させただけであり、わずかに統計的に有意(p<0.051)であっただけである。このため、これは低い濃度での抗ICAM−1の寄与の低下を示しているかもしれない。
【0037】
各々の抗体のより少ない総量でより顕著な効果が達成できることを示唆するので、この接着受容体対に対する抗体である抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物によるHIV−1感染細胞の移動を阻止することに対する増進化は、注目すべきである。低い濃度での増大した有効性は、送達システムに関係なく、殺菌剤ベースの抗体において好ましいであろう。感染細胞の伝染におけるデータは、各々の抗体の非常に低い濃度で阻止することが達成できることを明らかにしている。従って、CD18に対する抗体の単独及びICAM−1に対する抗体と組合せたものは、細胞関連のHIV−1の伝染を阻止する方法を提供するはずであり、そしてこの方法は、形質転換された細菌による産生のままで(in situ)の結果で、インビボで達成可能であると現実的に期待できる濃度の抗体で実現できる。
【実施例2】
【0038】
抗体及びFabの産生
マウスIgG1抗ヒトモノクロナール抗体H52(抗CD18)及びMT−M5(抗ICAM−1)は、ジョンズ・ホプキンス大学医学部(Johns Hopkins University School of Medicine)のJames Hildreth研究室から入手した。マウスIgG1抗ヒトモノクロナール抗体7E4(抗CD18)は、ベックマン・コールター・イムノテック社(Beckman-Coulter Immunotech Miami, FL)から入手した。マウス骨髄腫IgG1イソタイプ(対照)は、Zymed社(South San Francisco, CA)から入手した。ハムスター抗マウスICAM−1及びハムスターIgG1イソタイプ(対照)は、BD Biosciences/Pharmingen(San Diego, CA)から入手した。Fabの検討のために、抗CD18クローン7E4及びマウスIgG1イソタイプ(対照)は、フィシンベースのImmunopure Fab/F(ab)’2消化キット(Pierce, Rockford IL)を用いて消化及び精製した。
【0039】
膣伝染のHuPBL−SCIDマウスモデル
HuPBL−SCIDマウスモデルは、以前に記述されている(Khanna,K.V.,K.J.Whaley,L.Zeitlin,T.R.Moench,K.Mehrazar,R.A.Cone,Z.Liao,J.E.Hildreth,T.E.Hoen,L.Shultz及びR.B.Markhamの「マウスにおける細胞関連のHIV−1の膣伝染は、局所の膜修飾剤により阻止される。」(J Clin Invest 109:205-211, 2002))。即ち、重症の複合型免疫不全症を有する雌マウス(C.B−17SCID)(Bosma, G. C., R. P. Custer, and M. J. Bosma. 1983, A sever combined immunodeficiency mutation in the mouse, Nature 301:527-530)は、SCIDマウス・コロニー(Jackson研究室(Bar Harbor,Maine)由来のC.B−17SCIDマウスを用いて確立した)から入手した。マウスは、1mlのPBS中の5×107の未刺激、未感染のHuPBMCを腹腔内に(i.p.)投与し、次いで7日後に2.5mgのプロゲスチン(Depo−Provera(登録商標)、Upjohn Pharmaceuticals, Kalamazoo, Michigan)で皮下(s.c.)処理した。プロゲスチン処理から7日間、マウスは、Vaporstick麻酔装置(SurgiVet Inc., Waukesha, WI)により供給される30〜50%のO2混合中で、イソフルラン(IsoFlo, Abbott Laboratories, Chicago IL)で麻酔をかけて、そして、PBS−1%ウシ血清アルブミン(BSA,Sigma)に懸濁した1×106のHIV−1Ba−L−感染HuPBMCを受ける5分前に、抗ICAM−1(MT−M5)、抗CD18(H52)、若しくは指定のような抗ICAM−1:抗CD18の50:50混合物、又はイソタイプの対照抗体の適切な混合物の何れかを、10μl中の総量0.4μgで膣内に投与した。マウスは5分間麻酔をかけたままにし、次いでピペットにて膣内接種を行い、接種物の漏出は観察されなかった。膣組織への外傷性障害を避けるために細心の注意を払った。2週間後、マウスを安楽死させて、腹膜細胞を冷PBSで洗浄して回収した。洗浄により回収された(マウス及びヒト由来の両方の)細胞は、DNA−PCRによりヒトβグロビンに関してアッセイを行い、マウスにおけるヒト細胞の移植が成功したことを確認した。ヒト細胞を有さないマウスは、実験群の通常は0〜30%の間であり、分析から除外した。
【0040】
検討のマウスの腹膜腔から採取した細胞からのウィルスの回収を評価するために、未感染のHuPBMCは、PHAで刺激して、そしてHuPBL−SCIDマウスから回収した腹膜細胞と共培養するために、調製のIL−2添加培地(1マウス当たり1×106)に保持した。陽性マウスは、HIV−1p24ELISAにより共培養細胞からの上澄みで判定したが、これは我々の実験において、感染したマウスを検出する最も感度の高い方法である。全ての場合に、細胞は、マウスの腹膜腔に通常移植するために得た細胞の提供者以外の提供者から入手した。
【0041】
膣接種に用いるHuPBMCは、上記のように分離して、cRPMI−1640中に保持した。PBMCは、2日間PHAで刺激して、その後細胞は、IL−2(10U/ml)と共にcRPMI中で104TCID50のHIV−1Ba−Lに曝した。感染細胞培養物は、10日間IL−2を添加したcRPMIに保持して、マウスに接種した。
【実施例3】
【0042】
CD18に対する抗体による細胞関連のHIV−1の子宮頸部の上皮単層を越えての伝染の阻止
細胞移動の減少(実施例1に上述のように)は、単一のハイブリドーマ由来の抗CD18に限定されるものではなく、CD18に対する第2の阻止抗体であるクローン7E4を50及び10μg/mlでテストした場合、感染培養物からの細胞移動は、各々63%及び55%減少した(図9A)。伝染の指標として基底部のHIV−1p24を用いると、感染のより大きな減少が観察され、50及び10μg/mlの7E4では、p24の伝染は各々81%及び62%減少した(図9B)。抗CD18クローンH52で観察される移動及び伝染の減少より低いレベルではあるが、両方の基準で測定された阻止力は統計的に非常に有意であった(p<0.01)。
【実施例4】
【0043】
抗CD18Fabのインビトロでの細胞関連のHIV−1の伝染の阻止
分子当たり同じ数の抗原結合部位を有しているが抗体分子のFc領域が欠如している一価の抗体の断片が、完全な抗体と同様に阻止するかどうか判定する目的で、抗CD18クローン7E4のFab断片を、インビトロでのHIV−1p24の伝染及び感染細胞の移動を阻止するそれらの能力に関してテストした。完全な抗CD18、イソタイプの対照抗体、抗CD18Fab、又はイソタイプの対照Fabは、HIV−1感染のPBMCと共にHT−3子宮頸部の上皮単層の頂端側に添加され、そして細胞は24時間移動するようにした。Fabの濃度は、抗CD18結合部位の数と等しくなるように調節した。
【0044】
34μg/mlの濃度では、抗CD18Fabは、未処理及びイソタイプの対照の両方と比べて、有意に(p<0.05)、HIV−1感染培養物からのPBMCの移動及びHIV−1p24の伝染の両方を減少させた(図10A〜B)。濃度を6.7μg/mlに下げた場合、イソタイプの対照Fabと比較して、細胞移動は統計的に有意ではない減少を示したが(図10A)、HIV−1p24の伝染は有意に減少した(図10B)。しかし、テストした両方の濃度では、抗CD18Fabは、完全な抗CD18の対応する濃度の効果よりも劣るレベルで伝染を阻止した。34μg/mlのFab及び50μg/mlの完全な抗CD18において、伝染は、細胞移動に関して各々45.5±6.8%及び62.5±6.3%減少し、p24に関して各々63.8±2.6%及び71.3±0.2%減少した。
【実施例5】
【0045】
抗ICAM−1及び抗CD18抗体の50:50混合物による細胞関連のHIV−1の伝染の減少
インテグリン接着分子の相互作用に含まれる受容体リガンド対の各構成要素に対する抗体の混合物が、同じ総濃度の単一の抗体よりも有効に阻止できるかどうか判定するために、CD18及びICAM−1に対する抗体の50:50の比の混合物は、1×106のPBMCに加えて、直ちに子宮頸部の上皮トランスウェル培養物の頂端のチェンバーに添加した。PBMCは24時間移動させ、そして抗体はアッセイを実施する間存在させておいた。
【0046】
テストした全ての濃度での抗ICAM−1及び抗CD18の処理物は、未処理及びイソタイプ対照の処理培養物と比べて、有意に(p<0.05)、感染培養物からのPBMCの伝染を減少させた(図11A)。ここでも抗CD18は、抗ICAM−1よりも大きく細胞移動を減少させ、そして抗ICAM−1:抗CD18の50:50混合物での処理は、抗ICAM−1又は抗CD18クローンH52の何れか単独での対応する濃度で観察された場合より、細胞移動において統計的に有意な減少(p<0.05)をもたらした(図11B)。抗CD18及び50:50混合物を対応する濃度の抗ICAM−1と比較した場合に、伝染したHIV−1p24において有意な減少が観察されたが、抗ICAM−1/抗CD18混合物を単独使用の抗CD18と比較した場合に観察される減少はわずかであり、統計的に有意なものではなかった(図11C)。抗体の濃度を更に下げた場合、細胞移動を阻止することに対する50:50混合物の増進化が、5ug/mlの濃度で観察された(図5)。
【実施例6】
【0047】
抗ICAM−1を伴う抗CD18クローン7E4
単独で用いる場合にH52よりも低い効果での阻止を示す、抗CD18クローン7E4を抗ICAM−1と混合した場合、劇的な効果が観察された。テストした全ての濃度で、抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、何れかの抗体の単独での対応する濃度の効果よりも有意に、HIV−1感染細胞の細胞移動を減少させた(図12A〜B)。同様の効果は、HIV−1p24を指標として用いた観察でも見られ、50:50の混合物が、10ug/ml及び20ug/mlの濃度で、対応する単独抗体の効果よりも有意に伝染を減少させた(図12C〜D)。とりわけ、5ug/mlの濃度の50:50の混合物は、未処理のサンプルと比較して、細胞移動を90±2.0%減少させ、20μg/mlでは、抗ICAM−1又は抗CD18 7E4の何れよりも(各々、78±3.6及び62±3.0%(図12B))極めて有意に減少させた。
【実施例7】
【0048】
抗ICAM−1、抗CD18及び50:50混合物によるインビボでの細胞関連のHIV−1の伝染の阻止
子宮頸部上皮におけるICAM−1に対する抗体は、Depo−Provera処理のHuPBL−SCIDマウスを用いるインビボのモデルで、細胞関連のHIV−1の伝染を減少させることが観察されている。移動細胞におけるCD18の阻止物質の単独、又はマウスの子宮頸部上皮におけるICAM−1の阻止物質との組み合わせが、インビボでの同じモデルにおいてHIV−1の伝染を阻止できるかどうか評価するために、抗マウスICAM−1、抗CD18、抗マウスICAM−1及び抗CD18の50:50混合物、又はイソタイプの対照抗体の混合物の何れか(10μlのPBS−1%BSA中の0.4μgの単一抗体又は各々0.2μgの各抗体の混合物)は、膣内に投与され、次いで5分後に1×106のHIV−1感染ヒトPBMCの膣内接種を実施した。抗マウスICAM−1、抗CD18及び抗マウスICAM−1と抗CD18の混合物の全ては、対照群と比較して、細胞関連のHIV−1の伝染を有意に減少させた(表1)。用いた抗体の濃度では、単一抗体で処理した群において完全な防御がもたらされた。
【0049】
【表1】
【実施例8】
【0050】
上皮に適用した抗CD18による感染しやすい表皮下細胞の遊離ウィルスの初期感染の防止
性的伝染における無細胞及び細胞関連のウィルスの相対的な重要性は公知ではないため、無細胞のウィルスの伝染における抗CD18及び抗ICAM−1の有効性を評価した。無細胞のウィルスは、Hu−PBL−SCIDマウスシステムに伝染できない、そこでこの検討の有効性を、ヒト血清を用いてインビトロのトランスウェルモデルで評価した。検討は、上部チェンバーに添加した抗体が、下部チェンバーに置かれ、次いで上部チェンバーに無細胞のウィルス及び異なる濃度のMabを接種する、感染しやすいPBMC(PHA及びIL−2に活性化される)の遊離ウィルスによる感染を減少できるかどうかにより実施した。24時間後、トランスウェル、細胞は、下部チェンバーから取り出し、洗浄し、そして培養培地を含有するIL−2に再懸濁した。培養上澄み液中のp24の濃度を7日間にわたり測定した。図13のデータは、p24の濃度が、抗CD18を上部チェンバーに添加しているトランスウェル中で有意に低いことを示す。更に、抗ICAM−1抗体は、無意味な対照の抗体を有するトランスウェルでの結果と比較して感染を減少させた。
【0051】
これらの検討は、インビトロの子宮頸部上皮を越えてのHIV−1感染細胞の伝染におけるβ−インテグリンCD18の役割を実証する。抗ICAM−1のインビトロで観察される阻止のレベルは、インビボのHuPBL−SCIDマウスモデルを用いる細胞関連のHIV−1の伝染における高度に有意な減少と以前に関連付けられている。よって、本発明の実施例1〜2の実験において観察される高い程度の阻止力は、CD18に対する抗体の抗HIV−1殺菌剤としての有用性を実証する。
【0052】
CD18は、白血球に発現する細胞接着受容体のLeu−cam系の共通のβ2サブユニットであり、これには、LFA−1(CD11a/CD18、α1β2)、Mac−1(CD11b/CD18、αMβ2)、p150,95(CD11c/CD18、αxβ2)及びCD11d/CD18(αDβ2)が含まれる(Sanchez-Madrid, F., J. A. Nagy, E. Robbins, P. Simon, and T. A. Springer, 1983, A human leukocyte differentiation antigen family with distinct alpha-subunits and a common beta-subunit:the lymphocyte function-associated antigen (LFA-1), the C3bi complement receptor (OKM1/Mac-1), and the p150,95 molecule, J Exp Med 158:1785-1803)。CD18に対する抗体が細胞関連のHIV−1の伝染を阻止する(例えば図1及び2)という観察は、単球及びリンパ球の接着並びに経内皮移動におけるCD18の確立された役割と一致するものである(Greenwood, j., Y. Wang, and V. L. Calder, 1995, Lymphocyte adhesion and transendothelial migration in the central nervous system:the role of LFA-1, ICAM-1, VLA-4 and VCAM-1. off, Immunology 86:408-15; Hakkert, B. C., T. W. Kuijpers, J. F. Leeuwenberg, J. A. van Mourik, and D. Roos, 1991, Neutrophil and monocyte adherence to and migration across monolayers of cytokine-activated endothelial cells: the contribution of CD18, ELAM-1, and VLA-4, Blood 78:2721-6; Meerschaert, J., and M. B. Furie, 1995, The adhesion molecules used by monocytes for migration across endothelium include CD11a/CD18, CD11b/CD18, and VLA-4 on monocytes and ICAM-1, VCAM-1, and other ligands on endothelium, J Immunol 154:4099-112; Meerschaert,J., and M. B. Furie, 1994, Monocytes use either CD11/CD18 or VLA-4 to migrate across human endothelium in vitro, J Immunol 152:1915-26; Muller, W. A., and S. A. Weigl, 1992, Monocyte-selective transendothelial migration; dissection of the binding and transmigration phases by an in vitro assay, J Exp Med 176:819-28; Parkos, C. A., C. Delp, M. A. Arnaout, and J. L. Madara, 1991, Neutrophil migration across a cltured intestinal epithelium, Dependence on a CD11b/CD18-mediated event and enhanced efficiency in physiological direction, J Clin Invest 88:1605-12; Schenkel, A. R., Z. Mamdouh, and W. A. Muller, 2004, Locomotion of monocytes on endothelium is a critical step during extravasation, Nat Immunol 5:393-400; te Velde, A. A., G. D. Keizer, and C. G. Figdor, 1987, Differential function of LFA-1 family molecules (CD11 and CD18) in adhesion of human monocytes to melanoma and endothelial cells, Immunology 61:261-7)。
【0053】
他方、ICAM−1及びそのリガンドの接着の阻止を示した、異なる抗ICAM−1抗体が、p24 ELISAによって示されるように、広く変化する範囲の程度にHIV−1の伝染を減少させることが観察されている。これらの実施例では、テストした接着阻止の抗CD18クローンであるH52(Hildreth, J. E., V. Holt, J. T. August, and M. D. Pescovitz, 1989, Monoclonal antibodies against porcine LFA-1: species cross-reactivity and functional effects of beta-subunit-specific antibodies, Mol Immunol 26:883-95)及び7E4(Nortamo, P., M. Patarroyo, C. Kantor, J. Suopanki, and C. G. Gahmberg, 1988, Immunological mapping of the human leukocyte adhesion glycoprotein gp90 (CD18) by monoclonal antibodies, Scand J Immunol 28:537-46)の両方は、HIV−1の伝染及びHIV−1感染培養物からのPBMCの移動の両方を、有意に阻止できることが実証されている(図2)。テストした全ての濃度で、クローンH52由来の抗体は、クローン7E4由来の抗体よりも有効に阻止した。
【0054】
観察されたように、抗CD18クローン7E4のFabは、その効果は完全な7E4抗体よりわずかに劣っているが、HIV−1の伝染を有意に減少させ、そして子宮頸部の上皮単層を越えるHIV−1感染培養物からのPBMCの数を減少させた(図10)。先に用いた完全な抗体と比較して、Fabは、一価であり、そして作り出された乳酸菌により産生されるであろうscFvとより近い大きさである。観察された阻止レベルにおけるわずかな減少は、Fabを産生するために用いた酵素消化に起因する、結合能力の低下によるものかもしれない。これらの結果は、一価の、分泌された抗CD18scFvが、細胞関連のHIV−1の伝染を減少させるのに用いることができると示唆している。
【0055】
抗体による阻止のレベルが、2つの異なる抗体の組合せにより改良できるかどうかを判定するために、抗ICAM−1及び抗CD18の混合による到達の阻止レベルを、各抗体単独での同じ濃度で観察された効果と比較した。抗ICAM−1と抗CD18クローンH52又は7E4のどちらかとの混合物は、どちらか一方の抗体が単独の対応する濃度の効果と比較して、HIV−1感染細胞の移動を有意に減少させ(図11A〜B、5及び図12A〜B)、そしてHIV−1の伝染を有意に減少させた(図12C〜D)。これは、ICAM−1とCD18の両方が、子宮頸部上皮を越えてのHIV−1感染細胞の移動に対する寄与が小さい他方の結合パートナーを結合しているかもしれない、しかし単一抗体では阻止が不十分な抗体濃度で最大の便益が観察されるので、抗体の組合せがICAM−1/CD18の相互作用をより有効に阻止する可能性が高い、ということを示唆している。より顕著な効果が、抗体のより低い総量で達成できるので、この接着受容体対に対する抗体である抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物によって、細胞関連のHIV−1の伝染の阻止が増強されることは、注目に値する。より低い濃度(例えば、約1〜5マイクログラム範囲の濃度)での増大した有効性は、送達システムに関係なく抗体ベースの殺菌剤において好ましいであろう。他の検討では、発明者らの研究は、乳酸菌により分泌され、インビトロのアッセイでの使用の前に精製した抗ICAM−1 scFvが、67μg/mlの濃度で用いた場合に、HIV−1感染培養物からの細胞の経上皮移動及びHIV−1の伝染の両方を阻止できることを実証した。液体培養において5μg/mlまでの濃度でも効果が得られている(データは示さず)。
【0056】
特に、CD18に対する抗体は、40μg/mlでHu−PBL−SCIDマウスモデルにおける細胞関連のHIV−1の伝染を完全に阻止した(表1)。
2つのチェンバーシステムでは、両方の抗体、特に抗CD18は、下部チェンバーに置かれた表皮下のPBMCの伝染を明確に減少させた。抗体の濃度は、上部チェンバーで観察される濃度(データは示さず)の約10%で、トランスウェルの下部チェンバーにおいて検出することができた。伝染の阻止は、トランスウェルアッセイにおいて完全ではなかったが、細胞関連の伝染におけるそのような減少レベルは、Hu−PBL−SCIDマウスモデルにおける100%の防御につながる。よって、抗CD18は、細胞関連及び無細胞のウィルスの両方の伝染を阻止することに有効であろう。
【0057】
これらの実験的な実施例の結果は、HIV−1の性的伝染におけるCD18の重要性を実証している。CD18に対する抗体は、乳酸菌ベースの送達システムを用いる抗HIV−1殺菌剤としての有用性を示す。更には、ICAM−1に対する抗体と組合せて用いるCD18に対する抗体は、女性泌尿生殖器において乳酸菌産生scFvをそのまま(in situ)で用いて提供することが可能な抗体濃度で、経上皮HIVの伝染を阻止することを示している。
【0058】
女性へのHIV−1の伝染を防止するための殺菌剤は、世界的規模のHIVの蔓延を阻止することにおいて重要な役割を果たすことができる。本明細書における実験に基づき、本発明者らは、本明細書の宿主細胞接着分子に対する抗体が、抗HIV−1殺菌剤として有用であると考えている。これらの実験的実施例は、βインテグリンCD18に対する抗体の2つの異なるクローンが、HIV−1の伝染と感染培養物からの細胞の移動の両方を減少させる(p<0.01)ことを実証している。更には、抗ICAM−1と抗CD18のクローンのどちらか一方との50:50混合物が、どちらかの抗体を単独で同じ総濃度で用いた場合よりも、有意に(p<0.05)HIV−1感染培養物からのPBMCの伝染を減少させた。インビボでは、抗CD18及び抗CD18と抗ICAM−1の50:50の混合物の両方が、HuPBL−SCIDマウスにおける細胞関連のHIV−1の膣内伝染を、有意に減少させた。これらの結果は、細胞関連のHIV−1の伝染におけるCD18の重要性を実証するものである。更には、ICAM−1に対する抗体と組合せて用いるCD18に対する抗体は、乳酸菌産生のscFvを用いてインビボで達成することが可能な濃度で、阻止することを示している。
【実施例9】
【0059】
組み換え菌
また、防御抗体の別の態様として、組み換え菌(例えば、rCD54のような)は、機能性(アゴニスト)または欠損性(アンタゴニスト)リガンドを発現するのに用いることができる。具体的には、感染したリンパ球又はマクロファージの表面のLFA−1又はMac−1による上皮細胞の表面のICAM−1の結合は、可溶性リガンドがICAM−1受容体を架橋することができない1価の形態である限り、可溶性形態のLFA−1又はMac−1リガンドによるICAM−1受容体の占有により阻止され得る。そのような架橋では、上皮が崩壊することになる。同様に、可溶性ICAM−1は、上皮細胞の表面のICAM−1受容体によって、LFA−1又はMac−1との結合が阻止され得る。
【0060】
本発明はその好ましい態様に関して記述しているが、当業者は、本発明が添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内の変更を実施できることを理解されるであろう。従って、本発明は、上述のような態様に限定されるべきものではなく、本明細書に提供する記述の精神及び範囲内の全ての変更及びその均等物をさらに含むべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1A〜Bは、CD18に対する抗体が、ICAM−1に対する抗体と同様に又はより優れて、HIV−1感染細胞の移動を(図1A)及びHIV−1p24の伝染を(図1B)阻止することを示す棒グラフである。1×106のHIV−1感染PBMCは、100、50又は10μg/mlで、指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18H52又はイソタイプ対照)と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。図1A〜5において、エラーバーは、±一標準偏差を示す。図1Aに関して、未処理及びイソタイプ対照と比較した各抗体処理物は、p<0.01であり、そして対応する濃度での抗ICAM−1と抗CD18群の間は、p<0.05である。図1Bに関して、未処理及びイソタイプ対照と比較した各抗体処理物は、p<0.01である。
【図2】図2Aは、棒グラフであり、そして図2Bは折れ線グラフである。抗ICAM及び抗CD18の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動をどちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlで、指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。図1Aに関して、未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。図1Bに関して、同じ濃度での各処理物の間は、p<0.05である。
【図3】図3は、棒グラフである。抗CD18単独、又は抗ICAM−1と組合せて用いた場合は、HIV−1p24の伝染を抗ICAM−1単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlで、指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05であり;抗ICAM−1と比較した抗CD18及び50:50混合物は、p<0.05である。
【図4】図4は、棒グラフである。抗CD18によって阻止すること、及び抗ICAM−1との混合物によって増強することは、1つの抗体クローンに限定されるものではない。1×106のHIV−1感染PBMCは、10μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。
【図5】図5は、棒グラフである。抗CD18単独、及び抗ICAM−1と組合せた場合は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動を減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、1又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。
【図6】図6は、折れ線グラフである(y=0.0073x−0.0473;R=0.9818)。
【図7】図7は、折れ線グラフであり、抗ICAM、抗CD18及び50/50混合物に関するデータを有する。図7Aは、図7に関する棒グラフである。
【図8】図8は、棒グラフであり、未処理物、イソタイプ対照、抗ICAM、抗CD18及び50/50混合物の実験のデータに関する。
【図9】図9A〜Bは、棒グラフである。抗CD18クローン7E4は、HIV−1感染細胞の移動を(図9A)及びHIV−1p24の伝染を(図9B)阻止する。1×106のHIV−1感染PBMCは、50又は10μg/mlでの指定の抗体(抗CD18 H52、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、各群につき3回繰り返して、基底部のHIV−1p24の濃度又は生存PBMC数の平均±SDとして示す。両方のグラフに関して、未処理及びイソタイプ対照と比較した各抗体処理物は、p<0.05である。
【図10】図10A〜Bは、棒グラフである。抗CD18Fabは、HT−3細胞単層を越えてのHIV−1感染のPBMC(図10A)及びp24(図10B)の伝染を阻止する。1×106のHIV−1感染のPBMCは、指定の抗体と共に浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。全ての未処理の抗体は、50又は10μg/mlの濃度で用い、そして全てのFabは結合可能な部位と等しくなるよう34又は6.7μg/mlで用いる。データは、生存PBMC数(図10A)又は基底部のHIV−1p24の濃度(図10B)の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。Aに関して、未処理及び対応するイソタイプ対照と比較した処理物は、p<0.05であり;Bに関して、未処理及び対応するイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05である。
【図11A】図11A〜Cは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図11A、B)及びHIV−1p24の伝染(図11C)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数(図11A、B)又は基底部のHIV−1p24の濃度(図11C)の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図11A)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図11B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図11C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05であり、抗ICAM−1と比較した抗CD18及び50:50混合物は、p<0.05である。
【図11B】図11A〜Cは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図11A、B)及びHIV−1p24の伝染(図11C)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数(図11A、B)又は基底部のHIV−1p24の濃度(図11C)の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図11A)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図11B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図11C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05であり、抗ICAM−1と比較した抗CD18及び50:50混合物は、p<0.05である。
【図11C】図11A〜Cは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図11A、B)及びHIV−1p24の伝染(図11C)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数(図11A、B)又は基底部のHIV−1p24の濃度(図11C)の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図11A)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図11B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図11C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05であり、抗ICAM−1と比較した抗CD18及び50:50混合物は、p<0.05である。
【図12A】図12A〜Dは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図12A、B)及びHIV−1p24の伝染(図12C、D)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染のPBMCは、総量20、10又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数又は基底部のHIV−1p24の濃度の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図12A、C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図12B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図12D)混合物及び10及び20μg/mlの濃度の処理物間は、p<0.05である。
【図12B】図12A〜Dは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図12A、B)及びHIV−1p24の伝染(図12C、D)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染のPBMCは、総量20、10又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数又は基底部のHIV−1p24の濃度の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図12A、C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図12B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図12D)混合物及び10及び20μg/mlの濃度の処理物間は、p<0.05である。
【図12C】図12A〜Dは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図12A、B)及びHIV−1p24の伝染(図12C、D)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染のPBMCは、総量20、10又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数又は基底部のHIV−1p24の濃度の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図12A、C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図12B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図12D)混合物及び10及び20μg/mlの濃度の処理物間は、p<0.05である。
【図12D】図12A〜Dは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図12A、B)及びHIV−1p24の伝染(図12C、D)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染のPBMCは、総量20、10又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数又は基底部のHIV−1p24の濃度の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図12A、C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図12B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図12D)混合物及び10及び20μg/mlの濃度の処理物間は、p<0.05である。
【図13】図13は、子宮頸部上皮下での標的細胞の感染を減少させるかどうか判定するための、ICAM−1及びCD18に対する抗体を単独及び組合せの両方で用いる実験に関するデータを示すグラフである。総量20ug/mlの指定の抗体又は混合物は、1×103のTCID50HIV−1 JR−CSFに添加して、直後にME−180トランスウェル培養物の頂端側に基底部のコンパートメント中の1×106PHAブラストを添加して、そして37℃にて24時間培養した。次いでトランスウェルを取り除いて、PBMCの上澄みを48時間間隔でサンプリングした。基底部のコンパートメント中の細胞の感染は、培養した細胞由来の上澄み中のHIV−1p24の増加レベルにより測定した。データは、単一ウェルである抗CD18を除いて、3つのウェルの平均±SDとして示す。白抜きの記号は、未処理細胞との有意な差(p<0.05)を示す。抗CD18及び抗ICAM−1における組合せの効果が見られ、ここにおいて組合せの効果の殆どは、抗CD18に起因すると見なされる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にHIV感染の性的伝染の対処に有効である方法に関する。特に、本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が子宮頸部、膣、胃腸、直腸、結腸及び口腔の上皮を越えて感染するのを阻止するために、CD18に対する抗体を用いる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
HIV−1感染は、大多数のHIV−1の性的伝染が異性との接触の結果として世界的規模で生じているように、性的な接触を通して最も頻繁にもたらされている(Louria, D. B., J. H. Skurnick, P. Palumbo, J. D. Bogden, C. Rohowsky-Kochan, T. N. Denny, and C. A. Kennedy, 2000, HIV heterosexual transmission: a hypothesis about an additional potential determinant, Int J Infect Dis 4:110-6; Skurnick, J. H., C. A. Kennedy, G. Perez, J. Abrams, S. H. Vermund, T. Denny, T. Wright, M. A. Quinones, and D. B. Louria, 1998, Behavioral and demographic risk factors for transmission of human immunodeficiency virus type 1 in heterosexual couples: report from the Heterosexual HIV Transmission Study, Clin Infect Dis 26:855-64)。出産適齢期の女性が、HIV−1に感染する危険性が最も高く(Davis, S. F., D. H. Rosen, S. Steinberg, P. M. Wortley, J. M. Karon, and M. Gwinn, 1998, Trends in HIV prevalence among childbearing women in the United States, 1989-1994, J Acquir Immune Defic Syndr Hum Retrovirol 19:158-64; Wortley, P. M., and P. L. Fleming, 1997, AIDS in women in the United States, Recent trends, Jama 278:911-6)、これが、世界的な女性、新生児、及び子供のHIV−1感染における、対応する増加をもたらしている。例えば、女性へのHIV−1の性的伝染の機構は、女性のHIV−1予防のための有力な標的として検討されている。更に、男性及び女性の直腸での使用に関する潜在的な取り組みは、その経路を介しての伝染を予防すると考えられている。
【0003】
殺菌剤は、新たなHIV−1感染の罹患率を減少させるために用いることのできる、潜在的に女性が管理する予防的療法である。部分的に有効な殺菌剤でさえ、HIVの蔓延に対して大きな影響を及ぼす可能性があり、73の低所得国のわずか20%の女性が、60%の有効度の殺菌剤を他に防御されていない全ての性的行為の半分に用いた場合、女性、男性及び子供において、3年間で250万のHIV感染を防げるであろうと推定される(Watts, C., W. Thompson, and L. Heise, 1998, Presented at the International Conference on AIDS, Geneva.)。
【0004】
様々な可能性のある抗HIV−1の殺菌剤は、現在開発及び臨床的試験の進行段階にある。しかし、それらの殺菌剤は、リスクのある人々の殆どが使用するには現実的ではない高い製造費用を必要としている。更に現在試験中の殺菌剤は、いくつかのCCR5利用の分離株に対する有効性の減少、泌尿生殖器の常在菌(normal flora)の破壊、生殖器上皮に対する毒性、発癌可能性、及び細胞関連のウィルスに対する実証のない効能を含む、いくつかの難点があり、「D'Cruz, O. J., and F. M. Uckun, 2004, Clinical development of microbicides for the prevention of HIV infection, Curr Pharm Des 10:315-36」に概説されている。マカク属のサルのSHIVの伝染に対する防御に用いられる抗gp120抗体の経膣的適用のような、抗体の殺菌剤としての使用は、多くの化学的化合物に関連する毒性の問題を回避できる(Veazey, R. S., R. J. Shattock, M. Pope, J. C. Kirijan, J. Jones, Q. Hu, T. Ketas, P. A. Marx, P. J. Klasse, D. R. Burton, and J. P. Moore, 2003, Prevention of virus transmission to macaque monkeys by a vaginally applied monoclonal antibody to HIV-1 gp120, Nat Med 9:343-6)。
【0005】
HIV−1の無細胞の伝染を標的とする化学的な又は抗体ベースの殺菌剤の設計における1つの難点は、ウィルスの表面エピトープの大きな可変性である。この難点は、細胞関連及び/又は無細胞の伝染に関係する、宿主細胞タンパク質のエピトープを標的とすることで回避することができる。以前には、宿主ICAM−1は、抗体ベースの殺菌剤の開発に関する有力な標的として認識されていた。抗ICAM−1は、インビトロでのモデルの子宮頸部上皮の細胞単層を越える、及びインビボでのHIV−1の伝染のHuPBL−SCIDマウスモデルの両方で、細胞関連のHIV−1の伝染を阻止することが示されている。とりわけ、マウスモデルにおける結果は、マウスの上皮でのICAM−1の関与が、伝染を阻止するために必要であること、そして感染したヒトPBMC接種材料ではICAM−1のみの阻止では、伝染を阻止するためには不十分であることを実証した(Chancey,C.J.,K.V.Khanna,J.F.Seegers,G.W.Zhang,J.Hildreth,A.Langan及びR.B.Markhamの「細胞間接着分子1(ICAM−1)に特異的な、乳酸菌に発現される単鎖の可変性断片(scFv)は、子宮頸部上皮を越えての細胞関連のHIV−1の感染を阻止する(J. Immunol 176:5627-36, 2006)を参照されたい)。
【0006】
しかし、抗体産生の新しい方法にもかかわらず、抗体の消極的な投与に必然的に関係して、このような殺菌剤の費用は、高額になりやすい。
背景として、Markhamら(Johns Hopkins University)の米国特許第6,566,095号(2003年5月20日)「HIVの性的伝染を防止するための組成物及び方法」に、記載がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
経済的に及び臨床的に実現可能な方法で、広範囲のHIV−1の変異体の性的伝染を阻止することが可能な抗体を提供することは有益なことであるが、そのような抗体は、本発明の前には未だ提供されていない。ウィルス抗原を標的とする取り組みの何れもが抱える主要な問題は、HIVの場合に、大きな可変性であり、そして高頻度で変化することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、抗CD18抗体が上皮を越えてのHIV−1の伝染を阻止するという発明者らの発見を活用している。抗CD18抗体は、従って子宮頸部上皮、膣上皮、胃腸上皮、直腸上皮、結腸上皮及び口腔上皮を越えてのHIV−1の伝染を防止する又は軽減する殺菌剤に用いることができ、それによりHIV−1感染に対する方法を提供することができる。また発明者らは、抗CD18抗体が、ICAM−1に対する抗体と組合せて用いることができることを見い出した。更にはこの効果を生み出す抗体の濃度は、臨床的状況において入手可能の十分に低いレベルである。
【0009】
また本発明は、HIV−1の伝染を阻止するために、抗CD18抗体のscFvを使用することも提供する。有利なことに、そのようなscFv(ここにおいて、抗原結合の重鎖及び軽鎖領域が、それらが機能的にFabと似た態様に折り畳まれていることを確保する分子、に連結している単鎖の抗体である)は、例えば、遺伝子操作された乳酸菌、遺伝子操作された大腸菌等のような、遺伝子操作された細菌性送達システムにより分泌される様な範囲の大きさでありそしてそのような構造(即ち、複鎖ではない)である。従って、防御抗体(例えば、抗CD18抗体のような)のscFvを産生するために遺伝子操作された細菌(例えば、乳酸菌、大腸菌等のような)は、領域(例えば、子宮頸部領域、膣領域等のような)にコロニーを形成するのに用いることができ、そしてそのままで(in situ)HIV感染に対する防御を提供することができる。
【0010】
本発明は、HIV感染の性的伝染を防止する方法を提供する。本発明は、CD18に特異的な抗体を用いる方法を提供する。CD18は、2つのICAM−1インテグリン・リガンドであるMac−1及びLFA−1(その両者とも、移動細胞に存在する)のβ鎖である。本発明は、抗CD18が上皮障壁を越えての細胞関連のウィルスの伝染を阻止できること、そして上皮表面に適用した場合、上皮の下部の感染しやすい細胞の無細胞のウィルスによる感染を阻止できることを、示すことができる発見に基づいている。理論にとらわれることなく、無細胞のウィルスに対する抗CD18の有効性に関する例示的な要因は、ウィルスが感染すると細胞から抗原が出芽し、ウィルスが宿主抗原を捕捉することによるかもしれない。従って、本発明は、無細胞のウィルスのHIVの場合のウィルス性抗原(ここにおける抗原は、高度に可変的であり、そして高頻度で変化する)を標的とする際に従来から観察される問題の解決に取り組んでいる。
【0011】
好ましい一態様では、本発明は、HIV(例えば、無細胞のHIV、細胞関連のHIVのような)曝露を受ける可能性のある上皮(例えば、子宮頸部上皮、膣上皮、直腸上皮、結腸上皮、口腔上皮のような)を、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11抗体又は両方に曝露することを含んでなる、ヒト又は哺乳動物のHIVの初期感染を防止する方法を提供しており、ここにおいて、上皮を抗体に曝露する段階が、HIV感染の何れの確立よりも先行し、そしてHIV感染を防止するものであり、具体的には、上皮をCD18及び/又はCD11の抗体と組み合わせた抗ICAM抗体に曝露する段階を含む防止の方法;抗体を少なくとも1つの細菌性(例えば、乳酸菌等のような)送達システムを介して上皮に送達する段階を含む防止の方法;用いられる細菌性(例えば乳酸菌等のような)送達システムの量は、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体を0.5〜100マイクログラム/mlの範囲の濃度で、発現するのに十分な量である防止の方法;scFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体の濃度が、約0.5〜100マイクログラム/mlの範囲である防止の方法;細菌性の送達システムが、scFvを発現する防止の方法;抗体が、産生物(細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体、scFv様分子の四量体及びそれらの組み合わせのような)として、細菌性の送達システムにより発現する防止の方法等である。
【0012】
別の好ましい態様では、本発明は、HIV(例えば、無細胞のHIV、細胞関連のHIVのような)曝露を受ける可能性のある上皮(例えば、子宮頸部上皮、膣上皮、直腸上皮、結腸上皮、口腔上皮のような)を、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体又は両方に曝露することを含んでなる、ヒト又は哺乳動物へのHIV(例えば、無細胞のHIV、細胞関連のHIVのような)の経上皮伝染を阻止する方法を提供するものであり、具体的には、上皮を抗体に曝露する段階がHIV感染の何れの確立よりも先行し、そしてHIV感染の確立を防止するような阻止方法;上皮経由のHIVの伝染が減少する又は防止される阻止方法;HIVの性的伝染が減少する又は防止される阻止方法;CD18及び/又はCD11の抗体と組合せて抗ICAM抗体に上皮を曝露することを含む阻止方法;少なくとも1つの細菌性の送達システム(例えば、乳酸菌の送達システム等のような)を介して抗体を上皮へ送達することを含む阻止方法;用いられる乳酸菌の送達システムの量が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体を0.5〜100マイクログラム/mlの範囲の濃度で、発現するのに十分な量である阻止方法;細菌性の送達システムが、scFvを発現する阻止方法;scFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体の濃度が、約0.5〜100マイクログラム/mlの範囲である阻止方法;抗体が、産生物(例えば、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体、scFv様分子の四量体及びそれらの組合せのような)として、細菌性の送達システムにより発現する阻止方法等、である。
【0013】
別の好ましい態様では、本発明は、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体(抗CD11抗体の具体例は、抗CD11a、抗CD11b、抗CD11c、抗CD11dがある)又はその両方を含んでなる殺菌剤を提供するものであり、具体的には、抗体が細菌性の送達システムによりscFvとして発現する殺菌剤(具体例には、例えば抗体を、少なくとも1つの乳酸菌の細菌性送達手段等を介して、防御されるべき上皮に送達することができる殺菌剤等);少なくとも1つの抗ICAM抗体を更に含んでなる殺菌剤;抗ICAM抗体(単一又は複数)並びに抗CD18及び/又は抗CD11の抗体を一緒にした累積的な抗HIVの効果が、(個別の抗CD18及び/又は抗CD11の抗体の効果)+(個別の抗ICAM抗体の効果)と、少なくとも等しい又はそれより大きい殺菌剤等、である。
【0014】
別の好ましい態様では、本発明は、(A)軽鎖の抗原結合性の可変領域及び重鎖の抗原結合性の可変領域を結合タンパク質(例えば、付着の重鎖及び軽鎖の可変領域をCD18が結合するような構造に折り畳んでいる、アミノ酸の配列を含んでなる結合タンパク質のような)に融合して、単鎖の抗体(scFv)を形成すること、ここにおいて抗体の分子は同じである又は異なっていてもよく、そして抗CD11及び抗CD18の抗体より選ばれる;(B)細菌性の送達システム(例えば、乳酸菌の送達システム、大腸菌の送達システム、乳酸球菌の送達システム等のような)が、HIVの伝染から防御されるべき上皮を含有する環境において、段階(A)の単鎖の抗体を発現する状態を形成すること;を含んでなる、殺菌剤を作成する方法を提供する。
【0015】
別の好ましい態様では、本発明は、HIV−1の経上皮の伝染を阻止する発現産生物(例えば、抗CD18;抗CD11;組み換え菌により発現するリガンド;等のような)を提供する。
本発明の方法、システム、産生物、組成物等は、女性及び男性に対して使用可能であり、有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明では、防御抗体(例えば、抗CD18抗体、抗CD11抗体(例えば、抗CD11a抗体、抗CD11b抗体、抗CD11c抗体、抗CD11d抗体)、抗CD18抗体と抗CD11抗体との組合せ)は、病原菌(例えば、HIV)の上皮(例えば、子宮頸部上皮、膣上皮、胃腸上皮、直腸上皮、結腸上皮、口腔上皮のような)を越えての伝染を阻止するために用いる。
【0017】
本明細書に記述の防御抗体に関して、多様な反復物(例えば、複鎖抗体、自然発生の単鎖抗体、又はそれらの断片等のような)が、本発明の実施において用いられてもよい。
【0018】
本発明の防御抗体を、病原菌(HIVのような)の伝染阻止に用いるように上皮へ送達するために、例えば、乳酸菌送達システム、大腸菌送達システム等のような細菌性送達システムを用いることができる。用いられる他の好ましい細菌性システムは、生殖管、胃腸管(例えば末梢胃腸管のような)、口腔管等の常在菌(normal flora)として存在する細菌種に基づくものを含む。
【0019】
乳酸菌の使用は、送達システムを構築するのに特に好ましいと見なされる。具体的には、抗体の送達システムは、単鎖Fvs(scFv)として知られる短い表面結合又は分泌の異種タンパク質が持続してその場所で(in situ)産生されるために作り出された乳酸菌を用いて提供できる。これらのscFvは、特異的なHIV関連の標的に対して狙う抗体の可変領域に似るように折り畳むことができる。ICAM−1に対するscFvが、細胞関連のHIV−1のインビトロでの伝染を、70±5%減少させることが実証されている。更に、ある重症の複合型免疫不全症のマウスを用いたインビボでの伝染では、ヒト末梢血単核細胞(Hu−PBL−SCIDマウス)に再構成されたICAM−1に対する抗体は、膣内に接種されたHIV−1感染細胞による伝染から最大90%の防御を提供できる(Chancey,C.J.,K.V.Khanna,J.F.Seegers,G.W.Zhang,J.Hildreth,A.Langan及びR.B.Markhamの「細胞間接着分子1(ICAM−1)に特異的な乳酸菌発現性の単鎖の可変性断片(scFv)が、子宮頸部上皮の単層を越えての細胞関連のHIV−1の感染を阻止する」(J Immunol 176:5627-5636, 2006))。これらの検討は、この抗体が膣上皮細胞の表面でICAM−1と反応することを示している(データは示さず)。この観察されたインビボでの防御は、抗体の低い濃度(20ug/ml)で達成された。この乳酸菌送達システムは、一例として記述したものであり、当業者は理解されるであろうが、多様な他の乳酸菌送達システムが構成されてもよい。例えば、「C. Kruger, Y. Hu, Q. Pan, H. Marcotte, A. Hultberg, D. Delwar, P. J. van Dalen, P. H. Pouwels, R. J. Leer, C. Kelly, C. Van Dollenweerd, J. Ma, and L. Hammartstrom, "In situ delivery of passive immunity by lactobacilli producing single-chain antibodies," Nature Biotechnology, 20:702-706 (2002)」を参照されたい。
【0020】
継続した期間にわたり抗体を恒常的に生成できる乳酸菌のその場所での(in situ)使用に関して、病原菌(例えば、HIV)の伝染を阻止するために、十分な抗体の濃度が必要となる。その場所での(in situ)使用に関するそのような抗体濃度は、抗CD18及び/又は抗CD11の抗体、並びに付加的に抗ICAM抗体の使用と組合せて用いる場合、抗伝染の効果をもたらすように、提供することができる。
【0021】
細菌性システム(例えば、乳酸菌、大腸菌)により発現する抗体は、「従来の抗体」ではなく、抗体分子(例えば、抗CD18抗体、抗CD11抗体)の軽及び重鎖の機能的末端を結合タンパク質と遺伝子学的に融合することにより産生される単鎖抗体(scFv)と言われる範疇のものである。結合タンパク質の使用は、当該技術分野で公知であり、例えば、「Tang, Y., N. Jiang, C. Parakh, and D. Hilvert, 1996, Selection of linkers for a catalytic single-chain antibody using phage display technology, J. Biol Chem, 271:15682-15686」を参照されたい。加えて本発明の実施では、例えば、二量体、三量体、及びscFv四量体のような、更に結合する部位を含むscFvの変異体である変異物及び代替物を用いてもよい。例えば、「Le Gall, F., S. M. Kipriyanov, G. Moldenhauer, and M. Little, 1999, Di-, tri- and tetrameric single chain Fv antibody fragments against human CD19: effect of valency on cell binding, FEBS Lett 453:164-168; Lawrence, L.J., A.A. Kortt, P. Iliades, P.A. Tulloch, and P.J. Hudson, 1998, Orientation of antigen binding sites in dimeric and trimeric single chain Fv antibody fragments, FEBS Lett 425:479-484」を参照されたい。結合タンパク質として、付着した重及び軽鎖の可変領域を、目的(例えば、CD18)の抗原が結合するような様式で折り畳むのを確保するアミノ酸の配列の何れかが用いられてもよい。
【0022】
細菌性送達システムは、適用に応じて選択されてもよい。具体的には、乳酸菌送達システムを用いることは、経膣的に適用できる殺菌剤の製剤化に好ましいと考えられる。別の具体例として、大腸菌送達システムを用いることは、経直腸的に適用できる製品(例えば、直腸性交を介する伝染を防止する製品のような)の製剤化に好ましいと考えられる。
【0023】
本発明の実施に関して、有効成分は、例えば、殺菌剤、遅延放出送達システム、固相システム(structure)、子宮頸部リング、スポンジ、コンドーム、ジェル、クリーム、坐薬、カプセル剤等のような、多様な形態であってよい。殺菌剤は、本発明の有効成分に関して最も好ましい製剤であるが、殺菌剤の剤型が多様であってもよいことは理解されるであろう。具体的には、防御抗体は、送達手段(例えば、遅延放出送達システムのような)を組み込んでいる、又はそこから防御抗体が徐々に放出されるような固相構造をした(例えば、防御抗体又は断片を含ませた固相物質、子宮頸部リング等のような)システムにより送達されてもよい。あるいは、防御抗体は、工場設備で製造されてもよい。更に、精製技術が実用的使用のために改良されることにより、精製した防御抗体を調製して、細菌性送達システム無しで、ジェル、子宮頸部リング、スポンジ等による投与のような、直接的に、ヒト及び哺乳動物に投与することができる。
【0024】
有効成分の投与は、好ましくは、男性又は女性の消費者自身によってできる。具体的には、例えば、消費者による自己投与を介して、scFvを発現する細菌が凍結乾燥された形態(例えば、坐薬、カプセル剤等のような)で送達される。別の検討では、ある特定の細菌が、坐薬又はカプセル剤の形態で、冷蔵することなく最大2年間生存可能であることが示めされ、本発明による細菌性システムに関して同様の生存能力が期待できる。細菌が、永久に生き延びるとは考えられないことは理解されるであろう、従って、例えば、数日毎又は月一回のような置き換えが望ましい。本発明は、細菌の持続性を観察するための検出システムの一部として、また細菌の次なる適用が必要とされる場合の指標として、使用できるタンパク質をコードする細菌も提供する。
【0025】
本明細書には、例示として女性又は男性の具体例が示されているが、これは本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。本発明の方法、製品及び製剤は、男性及び女性を経上皮のHIVの伝染(性交に起因するものとは別の経上皮のHIVの伝染のような)から防御することにおいて有用である。
有利なことに、本発明では、細菌は、防御抗体を産生するように設計することができ、その後に、製品の製造工程が、細菌を多量に成長させること、続いて細菌をそのままでの(in situ)送達のために凍結乾燥することを単に含み、これは比較的安価に実施することができる。従って、本発明は、抗体の精製を必要とせず、そして活性な製品を合成するための複雑な化学的工程を必要としない、初期HIV感染を予防し、そして経上皮のHIVの伝染を防止する方法を有利に提供する。
(実施例)
【実施例1】
【0026】
本実施例では、我々は、ICAM−1のリガンドとして、また子宮頸部上皮を越えての細胞関連のHIV−1の伝染を阻止する候補物として、役目を果たすことのできるLFA−1又はMac−1分子の一本鎖である、CD18に対する抗体を同定する。本実施例はまた、ICAM−1に対する抗体と組合せて用いた、CD18に対する抗体が、どちらか一方の抗体単独の場合よりもHIV−1に感染された細胞の移動を大きく減少させ、臨床的状況で得られる抗体の濃度にて伝染を有効に遮断することを又実証する。
【0027】
物質及び方法
HIV−1調製物
HIV−1Ba−L(Advanced Biotechnologies, Inc., Columbia, MD)、HIV−1のCCR5利用の変異体を、1.0mlのアリコート(1×106、50%の組織培養感染用量(TCID50)/ml)で購入し、液体窒素中に保管した。
PBMCの単離及び培養
ヒトPBMCは、Ficoll Plus勾配(GE Healthcare, Piscataway, NJ)上で白血球除去の血液(leukopheresed blood)(Hemapheresis Center, Johns Hopkins Hospital, Baltimore, MD)の遠心分離により分離した。PBMCは、100U/mlのペニシリン、100μgのストレプトマイシン、10ng/mlのゲンタマイシン及び2mMのL−グルタミン(以下では、cRPMIと言う、培地及び全ての添加剤は、Mediatech,Herndon,VAから入手)、10%の加熱非活性化されたウシ胎仔血清(FCS;Atlanta Biologicals, Atlanta, GA)、及び5μg/mlのPHA(Sigma, St. Louis, MO)を5%のCO2、37℃にて添加したRPMI−1640中で、2×106cells/mlで48時間培養した。48時間後、PBMCは、10U/mlのIL−2(Roche Biochemicals, Indianapolis, IN)を添加したcRPMI−10%FCSに移し、そして104TCID50HIVBal と共に24時間培養した。ウィルス接種材料を、24時間後に取り出して、細胞を温cRPMIで洗浄し、そして10U/mlのIL−2を添加した新しいcRPMI−10%FCSに加えた。培養物は、感染後(pi)3日目及び7日目に新培地に供給した。PBMCは、感染後7〜9日目に伝染実験に用いた。
【0028】
ヒト子宮頸部の上皮細胞のトランスウェル(transwell)培養
ヒトの、自然に形質転換した、子宮頸部の上皮細胞株HT−3(American Type Cell Culture, Rockville, MD, ATCC#HTB-32)は、cRPMIに関して上記のように添加した、McCoy社の5a培地で10%FCSと共に培養し、3日毎に0.05%のトリプシン−EDTA(Mediatech)による細胞置き換えを行う定期的な置換培養を行った。子宮頸部の上皮細胞は、3.0μmの孔の大きさを有する直径12nmのPCFトランスウェル挿入物(Millipore, Bedford, MA)につき、2×105cellsをcRPMI−10%のFCSに播腫して、そして37℃、5%CO2の条件で保持した。培地は、2〜3日毎に交換した。細胞は、7日目に分極した完全な単層をトランスウェル挿入物上に形成し、これは西洋ワサビペルオキシダーゼ(Sigma)に対する細胞単層の透過性を観察して確認した。トランスウェル挿入物上の子宮頸部の上皮単層は、培養の6〜8日目の間に使用した。
【0029】
経上皮のHIV−1の伝染
経上皮移動アッセイは、幾らかの改良を加えて、Bomsel(Bomsel, M., 1997, Transcytosis of infectious human immunodeficiency virus across a tight human epithelial cell line barrier, Nat Med 3:42-7)の記述のように実施した。つまり、1×106のHIVBa−L感染のPBMCを、指定された抗体で処理した子宮頸部の上皮単層の頂端部に添加し、そして24時間移動させた。PBMCの生存率は、それらのトランスウェルへの添加に先行して、トリパンブルー排除法(Sigma)により評価し、常に>85%であることを見出した。頂端部及び基底部の上澄み液中のHIV−1p24抗原の量は、HIV−1p24ELISAアッセイ法(Perkin-Elmer, Boston, MA)により測定した。伝染したPBMCは、基底部のコンパートメントから収集し、遠心分離により沈殿させ、そしてトリパンブルー排除法を用いて血球計で計数し、生存率を評価した。マウス・モノクロナール抗体H52(抗CD18)及びMT−M5(抗ICAM−1)は、ジョンズ・ホプキンス大学医学部(Johns Hopkins University School of Medicine)のJames Hildreth研究室から入手した。マウス・モノクロナール抗体7E4(抗CD18)は、ベックマン・コールター・イムノテック社(Beckman-Coulter Immunotech Miami, FL)から入手した。マウス骨髄腫IgG1イソタイプ(対照)は、Zymed社(South San Francisco, CA)から入手した。
【0030】
統計的分析
統計的分析は、Intercooled Stata 8(Stata Corp, College Station, TX)の統計パッケージを用いて実施した。ボンフェローニ(Bonferroni)補正法と共に一元配置分散分析法(one-way ANOVA)用いて群間の差異を比較して、0.05に等しい又はより小さいp値を有意であると見なした。
【0031】
実験結果
CD18に対する抗体の子宮頸部上皮単層を越えての細胞関連のHIV−1の伝染の阻止
細胞関連のHIV−1の伝染の阻止におけるCD18に対する抗体の効果を、抗ICAM−1と相対的に比較するために、抗ICAM−1(クローンMT−M5)、抗CD18(クローンH52)又はイソタイプ対照マウスIgG1の何れかを、子宮頸部上皮トランスウェル培養物の頂端のチェンバーに添加する直前の1×106のHIV感染のPBMCに加えた。PBMCは24時間移動させ、そして抗体はアッセイを実施する間存在させておいた。
【0032】
抗ICAM−1及び抗CD18の両方は、未処理及びイソタイプの対照の両方と比較した場合、テストした10〜100μg/mlの範囲の全ての濃度で、有意に(p<0.01)細胞移動を減少させた(図1A)。しかし、抗CD18は、テストした全ての濃度で抗ICAM−1よりも有意に(p<0.05)細胞移動を大きく阻止し、更に抗ICAM−1の対応する濃度での阻止と比較して、基底部のコンパートメントで検出された細胞の数を2.5〜4倍減少させた。同様の傾向は、基底側の上澄みで検出されたHIV−1p24の量の測定においても観察された。両方の抗体処理物は、各濃度で、有意に(p<0.01)基底部のコンパートメントで検出されたHIV−1p24の量を減少させた(図1B)。HIV−1p24は、対応する抗ICAM−1処理群よりも、抗CD18処理群で少なく検出されたが、差異は統計的に有意ではなかった。抗体での処理は、トランスウェルの頂端側で細胞により放出されるHIV−1p24の量を変化させなかった。
【0033】
インビトロで観察された抗CAM−1に対する阻止レベルは、インビボでのHUPBL−SCIDマウスモデルを用いて、細胞関連のHIV−1の伝染における高度に有意な減少と関連付けられている(Chancey et al., supra)。従って、これらの実験において観察された高い阻止力は、CD18に対する抗体が抗HIV殺菌剤としての開発に極めて高い可能性を有していることを実証している。
【0034】
50:50の抗CAM−1及び抗CD18抗体の混合物によるHIV−1感染培養物からの細胞移動の低減
異なる接着分子に対する抗体の混合物が単一の抗体よりも大きく阻止できるかどうかを判定する目的で、50:50の比で混合したCD18及びICAM−1に対する抗体を、それらを子宮頸部上皮トランスウェル培養物の頂端のチェンバーに添加する直前の、1×106のHIV−感染PBMCに加えた。HIV−1感染PBMCは24時間移動させ、そして抗体はアッセイを実施する間存在させておいた。
【0035】
全ての抗体処理物は、未処理又はイソタイプ対照の処理トランスウェルと比較した場合、感染培養物からのPBMCの伝染を全ての濃度で有意に(p<0.05)減少した(図2A)。ここでも抗CD18は、抗ICAM−1よりも大きく細胞移動を減少させ、そして抗ICAM−1/抗CD18を50:50で含む混合物での処理物は、抗ICAM−1又は抗CD18の何れか単独での対応する濃度で観察された場合より優れて、細胞移動において統計的に有意な減少(p<0.05)をもたらした(図2B)。
【0036】
抗体の濃度を更に減小した場合、50:50混合物の細胞移動を阻止することに対する増進が、5ug/mlの濃度で観察されたが、1ug/mlでは50:50混合物は抗CD18単独の場合と同程度であった(図5)。1ug/mlでの抗ICAM−1単独は、移動を38%減少させただけであり、わずかに統計的に有意(p<0.051)であっただけである。このため、これは低い濃度での抗ICAM−1の寄与の低下を示しているかもしれない。
【0037】
各々の抗体のより少ない総量でより顕著な効果が達成できることを示唆するので、この接着受容体対に対する抗体である抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物によるHIV−1感染細胞の移動を阻止することに対する増進化は、注目すべきである。低い濃度での増大した有効性は、送達システムに関係なく、殺菌剤ベースの抗体において好ましいであろう。感染細胞の伝染におけるデータは、各々の抗体の非常に低い濃度で阻止することが達成できることを明らかにしている。従って、CD18に対する抗体の単独及びICAM−1に対する抗体と組合せたものは、細胞関連のHIV−1の伝染を阻止する方法を提供するはずであり、そしてこの方法は、形質転換された細菌による産生のままで(in situ)の結果で、インビボで達成可能であると現実的に期待できる濃度の抗体で実現できる。
【実施例2】
【0038】
抗体及びFabの産生
マウスIgG1抗ヒトモノクロナール抗体H52(抗CD18)及びMT−M5(抗ICAM−1)は、ジョンズ・ホプキンス大学医学部(Johns Hopkins University School of Medicine)のJames Hildreth研究室から入手した。マウスIgG1抗ヒトモノクロナール抗体7E4(抗CD18)は、ベックマン・コールター・イムノテック社(Beckman-Coulter Immunotech Miami, FL)から入手した。マウス骨髄腫IgG1イソタイプ(対照)は、Zymed社(South San Francisco, CA)から入手した。ハムスター抗マウスICAM−1及びハムスターIgG1イソタイプ(対照)は、BD Biosciences/Pharmingen(San Diego, CA)から入手した。Fabの検討のために、抗CD18クローン7E4及びマウスIgG1イソタイプ(対照)は、フィシンベースのImmunopure Fab/F(ab)’2消化キット(Pierce, Rockford IL)を用いて消化及び精製した。
【0039】
膣伝染のHuPBL−SCIDマウスモデル
HuPBL−SCIDマウスモデルは、以前に記述されている(Khanna,K.V.,K.J.Whaley,L.Zeitlin,T.R.Moench,K.Mehrazar,R.A.Cone,Z.Liao,J.E.Hildreth,T.E.Hoen,L.Shultz及びR.B.Markhamの「マウスにおける細胞関連のHIV−1の膣伝染は、局所の膜修飾剤により阻止される。」(J Clin Invest 109:205-211, 2002))。即ち、重症の複合型免疫不全症を有する雌マウス(C.B−17SCID)(Bosma, G. C., R. P. Custer, and M. J. Bosma. 1983, A sever combined immunodeficiency mutation in the mouse, Nature 301:527-530)は、SCIDマウス・コロニー(Jackson研究室(Bar Harbor,Maine)由来のC.B−17SCIDマウスを用いて確立した)から入手した。マウスは、1mlのPBS中の5×107の未刺激、未感染のHuPBMCを腹腔内に(i.p.)投与し、次いで7日後に2.5mgのプロゲスチン(Depo−Provera(登録商標)、Upjohn Pharmaceuticals, Kalamazoo, Michigan)で皮下(s.c.)処理した。プロゲスチン処理から7日間、マウスは、Vaporstick麻酔装置(SurgiVet Inc., Waukesha, WI)により供給される30〜50%のO2混合中で、イソフルラン(IsoFlo, Abbott Laboratories, Chicago IL)で麻酔をかけて、そして、PBS−1%ウシ血清アルブミン(BSA,Sigma)に懸濁した1×106のHIV−1Ba−L−感染HuPBMCを受ける5分前に、抗ICAM−1(MT−M5)、抗CD18(H52)、若しくは指定のような抗ICAM−1:抗CD18の50:50混合物、又はイソタイプの対照抗体の適切な混合物の何れかを、10μl中の総量0.4μgで膣内に投与した。マウスは5分間麻酔をかけたままにし、次いでピペットにて膣内接種を行い、接種物の漏出は観察されなかった。膣組織への外傷性障害を避けるために細心の注意を払った。2週間後、マウスを安楽死させて、腹膜細胞を冷PBSで洗浄して回収した。洗浄により回収された(マウス及びヒト由来の両方の)細胞は、DNA−PCRによりヒトβグロビンに関してアッセイを行い、マウスにおけるヒト細胞の移植が成功したことを確認した。ヒト細胞を有さないマウスは、実験群の通常は0〜30%の間であり、分析から除外した。
【0040】
検討のマウスの腹膜腔から採取した細胞からのウィルスの回収を評価するために、未感染のHuPBMCは、PHAで刺激して、そしてHuPBL−SCIDマウスから回収した腹膜細胞と共培養するために、調製のIL−2添加培地(1マウス当たり1×106)に保持した。陽性マウスは、HIV−1p24ELISAにより共培養細胞からの上澄みで判定したが、これは我々の実験において、感染したマウスを検出する最も感度の高い方法である。全ての場合に、細胞は、マウスの腹膜腔に通常移植するために得た細胞の提供者以外の提供者から入手した。
【0041】
膣接種に用いるHuPBMCは、上記のように分離して、cRPMI−1640中に保持した。PBMCは、2日間PHAで刺激して、その後細胞は、IL−2(10U/ml)と共にcRPMI中で104TCID50のHIV−1Ba−Lに曝した。感染細胞培養物は、10日間IL−2を添加したcRPMIに保持して、マウスに接種した。
【実施例3】
【0042】
CD18に対する抗体による細胞関連のHIV−1の子宮頸部の上皮単層を越えての伝染の阻止
細胞移動の減少(実施例1に上述のように)は、単一のハイブリドーマ由来の抗CD18に限定されるものではなく、CD18に対する第2の阻止抗体であるクローン7E4を50及び10μg/mlでテストした場合、感染培養物からの細胞移動は、各々63%及び55%減少した(図9A)。伝染の指標として基底部のHIV−1p24を用いると、感染のより大きな減少が観察され、50及び10μg/mlの7E4では、p24の伝染は各々81%及び62%減少した(図9B)。抗CD18クローンH52で観察される移動及び伝染の減少より低いレベルではあるが、両方の基準で測定された阻止力は統計的に非常に有意であった(p<0.01)。
【実施例4】
【0043】
抗CD18Fabのインビトロでの細胞関連のHIV−1の伝染の阻止
分子当たり同じ数の抗原結合部位を有しているが抗体分子のFc領域が欠如している一価の抗体の断片が、完全な抗体と同様に阻止するかどうか判定する目的で、抗CD18クローン7E4のFab断片を、インビトロでのHIV−1p24の伝染及び感染細胞の移動を阻止するそれらの能力に関してテストした。完全な抗CD18、イソタイプの対照抗体、抗CD18Fab、又はイソタイプの対照Fabは、HIV−1感染のPBMCと共にHT−3子宮頸部の上皮単層の頂端側に添加され、そして細胞は24時間移動するようにした。Fabの濃度は、抗CD18結合部位の数と等しくなるように調節した。
【0044】
34μg/mlの濃度では、抗CD18Fabは、未処理及びイソタイプの対照の両方と比べて、有意に(p<0.05)、HIV−1感染培養物からのPBMCの移動及びHIV−1p24の伝染の両方を減少させた(図10A〜B)。濃度を6.7μg/mlに下げた場合、イソタイプの対照Fabと比較して、細胞移動は統計的に有意ではない減少を示したが(図10A)、HIV−1p24の伝染は有意に減少した(図10B)。しかし、テストした両方の濃度では、抗CD18Fabは、完全な抗CD18の対応する濃度の効果よりも劣るレベルで伝染を阻止した。34μg/mlのFab及び50μg/mlの完全な抗CD18において、伝染は、細胞移動に関して各々45.5±6.8%及び62.5±6.3%減少し、p24に関して各々63.8±2.6%及び71.3±0.2%減少した。
【実施例5】
【0045】
抗ICAM−1及び抗CD18抗体の50:50混合物による細胞関連のHIV−1の伝染の減少
インテグリン接着分子の相互作用に含まれる受容体リガンド対の各構成要素に対する抗体の混合物が、同じ総濃度の単一の抗体よりも有効に阻止できるかどうか判定するために、CD18及びICAM−1に対する抗体の50:50の比の混合物は、1×106のPBMCに加えて、直ちに子宮頸部の上皮トランスウェル培養物の頂端のチェンバーに添加した。PBMCは24時間移動させ、そして抗体はアッセイを実施する間存在させておいた。
【0046】
テストした全ての濃度での抗ICAM−1及び抗CD18の処理物は、未処理及びイソタイプ対照の処理培養物と比べて、有意に(p<0.05)、感染培養物からのPBMCの伝染を減少させた(図11A)。ここでも抗CD18は、抗ICAM−1よりも大きく細胞移動を減少させ、そして抗ICAM−1:抗CD18の50:50混合物での処理は、抗ICAM−1又は抗CD18クローンH52の何れか単独での対応する濃度で観察された場合より、細胞移動において統計的に有意な減少(p<0.05)をもたらした(図11B)。抗CD18及び50:50混合物を対応する濃度の抗ICAM−1と比較した場合に、伝染したHIV−1p24において有意な減少が観察されたが、抗ICAM−1/抗CD18混合物を単独使用の抗CD18と比較した場合に観察される減少はわずかであり、統計的に有意なものではなかった(図11C)。抗体の濃度を更に下げた場合、細胞移動を阻止することに対する50:50混合物の増進化が、5ug/mlの濃度で観察された(図5)。
【実施例6】
【0047】
抗ICAM−1を伴う抗CD18クローン7E4
単独で用いる場合にH52よりも低い効果での阻止を示す、抗CD18クローン7E4を抗ICAM−1と混合した場合、劇的な効果が観察された。テストした全ての濃度で、抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、何れかの抗体の単独での対応する濃度の効果よりも有意に、HIV−1感染細胞の細胞移動を減少させた(図12A〜B)。同様の効果は、HIV−1p24を指標として用いた観察でも見られ、50:50の混合物が、10ug/ml及び20ug/mlの濃度で、対応する単独抗体の効果よりも有意に伝染を減少させた(図12C〜D)。とりわけ、5ug/mlの濃度の50:50の混合物は、未処理のサンプルと比較して、細胞移動を90±2.0%減少させ、20μg/mlでは、抗ICAM−1又は抗CD18 7E4の何れよりも(各々、78±3.6及び62±3.0%(図12B))極めて有意に減少させた。
【実施例7】
【0048】
抗ICAM−1、抗CD18及び50:50混合物によるインビボでの細胞関連のHIV−1の伝染の阻止
子宮頸部上皮におけるICAM−1に対する抗体は、Depo−Provera処理のHuPBL−SCIDマウスを用いるインビボのモデルで、細胞関連のHIV−1の伝染を減少させることが観察されている。移動細胞におけるCD18の阻止物質の単独、又はマウスの子宮頸部上皮におけるICAM−1の阻止物質との組み合わせが、インビボでの同じモデルにおいてHIV−1の伝染を阻止できるかどうか評価するために、抗マウスICAM−1、抗CD18、抗マウスICAM−1及び抗CD18の50:50混合物、又はイソタイプの対照抗体の混合物の何れか(10μlのPBS−1%BSA中の0.4μgの単一抗体又は各々0.2μgの各抗体の混合物)は、膣内に投与され、次いで5分後に1×106のHIV−1感染ヒトPBMCの膣内接種を実施した。抗マウスICAM−1、抗CD18及び抗マウスICAM−1と抗CD18の混合物の全ては、対照群と比較して、細胞関連のHIV−1の伝染を有意に減少させた(表1)。用いた抗体の濃度では、単一抗体で処理した群において完全な防御がもたらされた。
【0049】
【表1】
【実施例8】
【0050】
上皮に適用した抗CD18による感染しやすい表皮下細胞の遊離ウィルスの初期感染の防止
性的伝染における無細胞及び細胞関連のウィルスの相対的な重要性は公知ではないため、無細胞のウィルスの伝染における抗CD18及び抗ICAM−1の有効性を評価した。無細胞のウィルスは、Hu−PBL−SCIDマウスシステムに伝染できない、そこでこの検討の有効性を、ヒト血清を用いてインビトロのトランスウェルモデルで評価した。検討は、上部チェンバーに添加した抗体が、下部チェンバーに置かれ、次いで上部チェンバーに無細胞のウィルス及び異なる濃度のMabを接種する、感染しやすいPBMC(PHA及びIL−2に活性化される)の遊離ウィルスによる感染を減少できるかどうかにより実施した。24時間後、トランスウェル、細胞は、下部チェンバーから取り出し、洗浄し、そして培養培地を含有するIL−2に再懸濁した。培養上澄み液中のp24の濃度を7日間にわたり測定した。図13のデータは、p24の濃度が、抗CD18を上部チェンバーに添加しているトランスウェル中で有意に低いことを示す。更に、抗ICAM−1抗体は、無意味な対照の抗体を有するトランスウェルでの結果と比較して感染を減少させた。
【0051】
これらの検討は、インビトロの子宮頸部上皮を越えてのHIV−1感染細胞の伝染におけるβ−インテグリンCD18の役割を実証する。抗ICAM−1のインビトロで観察される阻止のレベルは、インビボのHuPBL−SCIDマウスモデルを用いる細胞関連のHIV−1の伝染における高度に有意な減少と以前に関連付けられている。よって、本発明の実施例1〜2の実験において観察される高い程度の阻止力は、CD18に対する抗体の抗HIV−1殺菌剤としての有用性を実証する。
【0052】
CD18は、白血球に発現する細胞接着受容体のLeu−cam系の共通のβ2サブユニットであり、これには、LFA−1(CD11a/CD18、α1β2)、Mac−1(CD11b/CD18、αMβ2)、p150,95(CD11c/CD18、αxβ2)及びCD11d/CD18(αDβ2)が含まれる(Sanchez-Madrid, F., J. A. Nagy, E. Robbins, P. Simon, and T. A. Springer, 1983, A human leukocyte differentiation antigen family with distinct alpha-subunits and a common beta-subunit:the lymphocyte function-associated antigen (LFA-1), the C3bi complement receptor (OKM1/Mac-1), and the p150,95 molecule, J Exp Med 158:1785-1803)。CD18に対する抗体が細胞関連のHIV−1の伝染を阻止する(例えば図1及び2)という観察は、単球及びリンパ球の接着並びに経内皮移動におけるCD18の確立された役割と一致するものである(Greenwood, j., Y. Wang, and V. L. Calder, 1995, Lymphocyte adhesion and transendothelial migration in the central nervous system:the role of LFA-1, ICAM-1, VLA-4 and VCAM-1. off, Immunology 86:408-15; Hakkert, B. C., T. W. Kuijpers, J. F. Leeuwenberg, J. A. van Mourik, and D. Roos, 1991, Neutrophil and monocyte adherence to and migration across monolayers of cytokine-activated endothelial cells: the contribution of CD18, ELAM-1, and VLA-4, Blood 78:2721-6; Meerschaert, J., and M. B. Furie, 1995, The adhesion molecules used by monocytes for migration across endothelium include CD11a/CD18, CD11b/CD18, and VLA-4 on monocytes and ICAM-1, VCAM-1, and other ligands on endothelium, J Immunol 154:4099-112; Meerschaert,J., and M. B. Furie, 1994, Monocytes use either CD11/CD18 or VLA-4 to migrate across human endothelium in vitro, J Immunol 152:1915-26; Muller, W. A., and S. A. Weigl, 1992, Monocyte-selective transendothelial migration; dissection of the binding and transmigration phases by an in vitro assay, J Exp Med 176:819-28; Parkos, C. A., C. Delp, M. A. Arnaout, and J. L. Madara, 1991, Neutrophil migration across a cltured intestinal epithelium, Dependence on a CD11b/CD18-mediated event and enhanced efficiency in physiological direction, J Clin Invest 88:1605-12; Schenkel, A. R., Z. Mamdouh, and W. A. Muller, 2004, Locomotion of monocytes on endothelium is a critical step during extravasation, Nat Immunol 5:393-400; te Velde, A. A., G. D. Keizer, and C. G. Figdor, 1987, Differential function of LFA-1 family molecules (CD11 and CD18) in adhesion of human monocytes to melanoma and endothelial cells, Immunology 61:261-7)。
【0053】
他方、ICAM−1及びそのリガンドの接着の阻止を示した、異なる抗ICAM−1抗体が、p24 ELISAによって示されるように、広く変化する範囲の程度にHIV−1の伝染を減少させることが観察されている。これらの実施例では、テストした接着阻止の抗CD18クローンであるH52(Hildreth, J. E., V. Holt, J. T. August, and M. D. Pescovitz, 1989, Monoclonal antibodies against porcine LFA-1: species cross-reactivity and functional effects of beta-subunit-specific antibodies, Mol Immunol 26:883-95)及び7E4(Nortamo, P., M. Patarroyo, C. Kantor, J. Suopanki, and C. G. Gahmberg, 1988, Immunological mapping of the human leukocyte adhesion glycoprotein gp90 (CD18) by monoclonal antibodies, Scand J Immunol 28:537-46)の両方は、HIV−1の伝染及びHIV−1感染培養物からのPBMCの移動の両方を、有意に阻止できることが実証されている(図2)。テストした全ての濃度で、クローンH52由来の抗体は、クローン7E4由来の抗体よりも有効に阻止した。
【0054】
観察されたように、抗CD18クローン7E4のFabは、その効果は完全な7E4抗体よりわずかに劣っているが、HIV−1の伝染を有意に減少させ、そして子宮頸部の上皮単層を越えるHIV−1感染培養物からのPBMCの数を減少させた(図10)。先に用いた完全な抗体と比較して、Fabは、一価であり、そして作り出された乳酸菌により産生されるであろうscFvとより近い大きさである。観察された阻止レベルにおけるわずかな減少は、Fabを産生するために用いた酵素消化に起因する、結合能力の低下によるものかもしれない。これらの結果は、一価の、分泌された抗CD18scFvが、細胞関連のHIV−1の伝染を減少させるのに用いることができると示唆している。
【0055】
抗体による阻止のレベルが、2つの異なる抗体の組合せにより改良できるかどうかを判定するために、抗ICAM−1及び抗CD18の混合による到達の阻止レベルを、各抗体単独での同じ濃度で観察された効果と比較した。抗ICAM−1と抗CD18クローンH52又は7E4のどちらかとの混合物は、どちらか一方の抗体が単独の対応する濃度の効果と比較して、HIV−1感染細胞の移動を有意に減少させ(図11A〜B、5及び図12A〜B)、そしてHIV−1の伝染を有意に減少させた(図12C〜D)。これは、ICAM−1とCD18の両方が、子宮頸部上皮を越えてのHIV−1感染細胞の移動に対する寄与が小さい他方の結合パートナーを結合しているかもしれない、しかし単一抗体では阻止が不十分な抗体濃度で最大の便益が観察されるので、抗体の組合せがICAM−1/CD18の相互作用をより有効に阻止する可能性が高い、ということを示唆している。より顕著な効果が、抗体のより低い総量で達成できるので、この接着受容体対に対する抗体である抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物によって、細胞関連のHIV−1の伝染の阻止が増強されることは、注目に値する。より低い濃度(例えば、約1〜5マイクログラム範囲の濃度)での増大した有効性は、送達システムに関係なく抗体ベースの殺菌剤において好ましいであろう。他の検討では、発明者らの研究は、乳酸菌により分泌され、インビトロのアッセイでの使用の前に精製した抗ICAM−1 scFvが、67μg/mlの濃度で用いた場合に、HIV−1感染培養物からの細胞の経上皮移動及びHIV−1の伝染の両方を阻止できることを実証した。液体培養において5μg/mlまでの濃度でも効果が得られている(データは示さず)。
【0056】
特に、CD18に対する抗体は、40μg/mlでHu−PBL−SCIDマウスモデルにおける細胞関連のHIV−1の伝染を完全に阻止した(表1)。
2つのチェンバーシステムでは、両方の抗体、特に抗CD18は、下部チェンバーに置かれた表皮下のPBMCの伝染を明確に減少させた。抗体の濃度は、上部チェンバーで観察される濃度(データは示さず)の約10%で、トランスウェルの下部チェンバーにおいて検出することができた。伝染の阻止は、トランスウェルアッセイにおいて完全ではなかったが、細胞関連の伝染におけるそのような減少レベルは、Hu−PBL−SCIDマウスモデルにおける100%の防御につながる。よって、抗CD18は、細胞関連及び無細胞のウィルスの両方の伝染を阻止することに有効であろう。
【0057】
これらの実験的な実施例の結果は、HIV−1の性的伝染におけるCD18の重要性を実証している。CD18に対する抗体は、乳酸菌ベースの送達システムを用いる抗HIV−1殺菌剤としての有用性を示す。更には、ICAM−1に対する抗体と組合せて用いるCD18に対する抗体は、女性泌尿生殖器において乳酸菌産生scFvをそのまま(in situ)で用いて提供することが可能な抗体濃度で、経上皮HIVの伝染を阻止することを示している。
【0058】
女性へのHIV−1の伝染を防止するための殺菌剤は、世界的規模のHIVの蔓延を阻止することにおいて重要な役割を果たすことができる。本明細書における実験に基づき、本発明者らは、本明細書の宿主細胞接着分子に対する抗体が、抗HIV−1殺菌剤として有用であると考えている。これらの実験的実施例は、βインテグリンCD18に対する抗体の2つの異なるクローンが、HIV−1の伝染と感染培養物からの細胞の移動の両方を減少させる(p<0.01)ことを実証している。更には、抗ICAM−1と抗CD18のクローンのどちらか一方との50:50混合物が、どちらかの抗体を単独で同じ総濃度で用いた場合よりも、有意に(p<0.05)HIV−1感染培養物からのPBMCの伝染を減少させた。インビボでは、抗CD18及び抗CD18と抗ICAM−1の50:50の混合物の両方が、HuPBL−SCIDマウスにおける細胞関連のHIV−1の膣内伝染を、有意に減少させた。これらの結果は、細胞関連のHIV−1の伝染におけるCD18の重要性を実証するものである。更には、ICAM−1に対する抗体と組合せて用いるCD18に対する抗体は、乳酸菌産生のscFvを用いてインビボで達成することが可能な濃度で、阻止することを示している。
【実施例9】
【0059】
組み換え菌
また、防御抗体の別の態様として、組み換え菌(例えば、rCD54のような)は、機能性(アゴニスト)または欠損性(アンタゴニスト)リガンドを発現するのに用いることができる。具体的には、感染したリンパ球又はマクロファージの表面のLFA−1又はMac−1による上皮細胞の表面のICAM−1の結合は、可溶性リガンドがICAM−1受容体を架橋することができない1価の形態である限り、可溶性形態のLFA−1又はMac−1リガンドによるICAM−1受容体の占有により阻止され得る。そのような架橋では、上皮が崩壊することになる。同様に、可溶性ICAM−1は、上皮細胞の表面のICAM−1受容体によって、LFA−1又はMac−1との結合が阻止され得る。
【0060】
本発明はその好ましい態様に関して記述しているが、当業者は、本発明が添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内の変更を実施できることを理解されるであろう。従って、本発明は、上述のような態様に限定されるべきものではなく、本明細書に提供する記述の精神及び範囲内の全ての変更及びその均等物をさらに含むべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1A〜Bは、CD18に対する抗体が、ICAM−1に対する抗体と同様に又はより優れて、HIV−1感染細胞の移動を(図1A)及びHIV−1p24の伝染を(図1B)阻止することを示す棒グラフである。1×106のHIV−1感染PBMCは、100、50又は10μg/mlで、指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18H52又はイソタイプ対照)と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。図1A〜5において、エラーバーは、±一標準偏差を示す。図1Aに関して、未処理及びイソタイプ対照と比較した各抗体処理物は、p<0.01であり、そして対応する濃度での抗ICAM−1と抗CD18群の間は、p<0.05である。図1Bに関して、未処理及びイソタイプ対照と比較した各抗体処理物は、p<0.01である。
【図2】図2Aは、棒グラフであり、そして図2Bは折れ線グラフである。抗ICAM及び抗CD18の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動をどちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlで、指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。図1Aに関して、未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。図1Bに関して、同じ濃度での各処理物の間は、p<0.05である。
【図3】図3は、棒グラフである。抗CD18単独、又は抗ICAM−1と組合せて用いた場合は、HIV−1p24の伝染を抗ICAM−1単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlで、指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05であり;抗ICAM−1と比較した抗CD18及び50:50混合物は、p<0.05である。
【図4】図4は、棒グラフである。抗CD18によって阻止すること、及び抗ICAM−1との混合物によって増強することは、1つの抗体クローンに限定されるものではない。1×106のHIV−1感染PBMCは、10μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。
【図5】図5は、棒グラフである。抗CD18単独、及び抗ICAM−1と組合せた場合は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動を減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、1又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。
【図6】図6は、折れ線グラフである(y=0.0073x−0.0473;R=0.9818)。
【図7】図7は、折れ線グラフであり、抗ICAM、抗CD18及び50/50混合物に関するデータを有する。図7Aは、図7に関する棒グラフである。
【図8】図8は、棒グラフであり、未処理物、イソタイプ対照、抗ICAM、抗CD18及び50/50混合物の実験のデータに関する。
【図9】図9A〜Bは、棒グラフである。抗CD18クローン7E4は、HIV−1感染細胞の移動を(図9A)及びHIV−1p24の伝染を(図9B)阻止する。1×106のHIV−1感染PBMCは、50又は10μg/mlでの指定の抗体(抗CD18 H52、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、各群につき3回繰り返して、基底部のHIV−1p24の濃度又は生存PBMC数の平均±SDとして示す。両方のグラフに関して、未処理及びイソタイプ対照と比較した各抗体処理物は、p<0.05である。
【図10】図10A〜Bは、棒グラフである。抗CD18Fabは、HT−3細胞単層を越えてのHIV−1感染のPBMC(図10A)及びp24(図10B)の伝染を阻止する。1×106のHIV−1感染のPBMCは、指定の抗体と共に浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。全ての未処理の抗体は、50又は10μg/mlの濃度で用い、そして全てのFabは結合可能な部位と等しくなるよう34又は6.7μg/mlで用いる。データは、生存PBMC数(図10A)又は基底部のHIV−1p24の濃度(図10B)の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。Aに関して、未処理及び対応するイソタイプ対照と比較した処理物は、p<0.05であり;Bに関して、未処理及び対応するイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05である。
【図11A】図11A〜Cは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図11A、B)及びHIV−1p24の伝染(図11C)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数(図11A、B)又は基底部のHIV−1p24の濃度(図11C)の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図11A)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図11B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図11C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05であり、抗ICAM−1と比較した抗CD18及び50:50混合物は、p<0.05である。
【図11B】図11A〜Cは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図11A、B)及びHIV−1p24の伝染(図11C)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数(図11A、B)又は基底部のHIV−1p24の濃度(図11C)の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図11A)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図11B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図11C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05であり、抗ICAM−1と比較した抗CD18及び50:50混合物は、p<0.05である。
【図11C】図11A〜Cは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図11A、B)及びHIV−1p24の伝染(図11C)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染PBMCは、50、20又は10μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 H52又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数(図11A、B)又は基底部のHIV−1p24の濃度(図11C)の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図11A)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図11B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図11C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての処理物は、p<0.05であり、抗ICAM−1と比較した抗CD18及び50:50混合物は、p<0.05である。
【図12A】図12A〜Dは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図12A、B)及びHIV−1p24の伝染(図12C、D)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染のPBMCは、総量20、10又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数又は基底部のHIV−1p24の濃度の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図12A、C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図12B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図12D)混合物及び10及び20μg/mlの濃度の処理物間は、p<0.05である。
【図12B】図12A〜Dは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図12A、B)及びHIV−1p24の伝染(図12C、D)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染のPBMCは、総量20、10又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数又は基底部のHIV−1p24の濃度の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図12A、C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図12B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図12D)混合物及び10及び20μg/mlの濃度の処理物間は、p<0.05である。
【図12C】図12A〜Dは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図12A、B)及びHIV−1p24の伝染(図12C、D)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染のPBMCは、総量20、10又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数又は基底部のHIV−1p24の濃度の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図12A、C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図12B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図12D)混合物及び10及び20μg/mlの濃度の処理物間は、p<0.05である。
【図12D】図12A〜Dは、グラフである。抗ICAM−1及び抗CD18 7E4の50:50混合物は、HIV−1感染培養物からの細胞の移動(図12A、B)及びHIV−1p24の伝染(図12C、D)を、どちらか一方の抗体単独の場合よりも、大きく減少させる。1×106のHIV−1感染のPBMCは、総量20、10又は5μg/mlでの指定の抗体(抗ICAM−1 MT−M5、抗CD18 7E4又はイソタイプ対照)又は混合物と共に、浸透性のトランスウェル支持体で成長したHT−3単層の頂端側に添加されて、そして24時間移動させられる。データは、生存PBMC数又は基底部のHIV−1p24の濃度の平均±SDとして示し、そして各処理群につき3回繰り返した、2つの別の実験を表す。(図12A、C)未処理及びイソタイプ対照と比較した全ての抗体処理物は、p<0.05である。(図12B)同じ濃度での各処理物間は、p<0.05である。(図12D)混合物及び10及び20μg/mlの濃度の処理物間は、p<0.05である。
【図13】図13は、子宮頸部上皮下での標的細胞の感染を減少させるかどうか判定するための、ICAM−1及びCD18に対する抗体を単独及び組合せの両方で用いる実験に関するデータを示すグラフである。総量20ug/mlの指定の抗体又は混合物は、1×103のTCID50HIV−1 JR−CSFに添加して、直後にME−180トランスウェル培養物の頂端側に基底部のコンパートメント中の1×106PHAブラストを添加して、そして37℃にて24時間培養した。次いでトランスウェルを取り除いて、PBMCの上澄みを48時間間隔でサンプリングした。基底部のコンパートメント中の細胞の感染は、培養した細胞由来の上澄み中のHIV−1p24の増加レベルにより測定した。データは、単一ウェルである抗CD18を除いて、3つのウェルの平均±SDとして示す。白抜きの記号は、未処理細胞との有意な差(p<0.05)を示す。抗CD18及び抗ICAM−1における組合せの効果が見られ、ここにおいて組合せの効果の殆どは、抗CD18に起因すると見なされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
HIV感染を受ける可能性のある上皮を、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体又はその両方に対して曝露することを含んでなる、ここにおいて上皮を抗体に曝露する段階がHIV感染の何れの確立よりも先行し、そしてHIV感染の確立を防止する、ヒト又は哺乳動物でのHIVの初期感染を防止する方法。
【請求項2】
上記HIVが、無細胞のHIVである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記HIVが、細胞関連のHIVである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CD18及び/又はCD11の抗体と組合せた抗ICAM抗体に上皮を曝露することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの細菌性の送達システムを介して、抗体を上皮へ送達することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの乳酸菌の送達システムを介して、抗体を上皮へ送達することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
用いられる乳酸菌の送達システムの量が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体を0.5〜100マイクログラム/mlの範囲の濃度で、発現するのに十分な量である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
scFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体の濃度が、約0.5〜100マイクログラム/mlの範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
細菌性の送達システムが、scFvを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上皮が、膣上皮、子宮頸部上皮、直腸上皮、結腸上皮及び口腔上皮からなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
抗CD11抗体が、抗CD11a、抗CD11b、抗CD11c及び抗CD11dからなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗体が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体、scFv様分子の四量体及びそれらの組合せからなる群より選ばれる産生物として、細菌性の送達システムにより発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
HIV曝露を受ける可能性のある上皮を、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体又はその両方に対して曝露することを含んでなる、ヒト又は哺乳動物へのHIVの経上皮伝染を阻止する方法。
【請求項14】
上皮を抗体に曝露する段階が、HIV感染の何れの確立よりも先行し、そしてHIV感染の確立を防止する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記HIVが、無細胞のHIVである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
上記HIVが、細胞関連のHIVである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
上皮を越えてのHIVの伝染が減少する又は防止される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
HIVの性的伝染が減少する又は防止される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
CD18及び/又はCD11の抗体と組合せて抗ICAM抗体に、上皮を曝露することを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの細菌性の送達システムを介して、抗体を上皮へ送達することを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの乳酸菌の送達システムを介して、抗体を上皮へ送達することを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
ヒトが女性である、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
ヒトが男性である、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
用いられる乳酸菌の送達システムの量が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体を0.5〜100マイクログラム/mlの範囲の濃度で、発現するのに十分な量である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
細菌性の送達システムが、scFvを発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
scFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体の濃度が、約0.5〜100マイクログラム/mlの範囲である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
上皮が、膣上皮、子宮頸部上皮、直腸上皮、結腸上皮及び口腔上皮からなる群より選ばれる、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
抗CD11抗体が、抗CD11a、抗CD11b、抗CD11c及び抗CD11dからなる群より選ばれる、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
抗体が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体、scFv様分子の四量体及びそれらの組合せからなる群より選ばれる産生物として、細菌性の送達システムにより発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体又はその両方を含んでなる、殺菌剤。
【請求項31】
抗体が、細菌性の送達システムによりscFvとして発現する、請求項30に記載の殺菌剤。
【請求項32】
抗体を、少なくとも1つの乳酸菌の細菌性送達手段を介して、防御されるべき上皮に送達することができる、請求項30に記載の殺菌剤。
【請求項33】
少なくとも1つの抗ICAM抗体を更に含んでなる、請求項30に記載の殺菌剤。
【請求項34】
抗ICAM抗体(単一又は複数)並びに抗CD18及び/又は抗11抗体を一緒にした累積的な抗HIVの効果が、(1)個別の抗CD18及び/又は抗CD11の抗体の効果、及び(2)個別の抗ICAM抗体の効果を足した効果と、少なくとも等しい又はそれより大きい、請求項33に記載の殺菌剤。
【請求項35】
抗CD11抗体が、抗CD11a、抗CD11b、抗CD11c及び抗CD11dからなる群より選ばれる、請求項30に記載の殺菌剤。
【請求項36】
(A)軽鎖の抗原結合性の可変領域及び重鎖の抗原結合性の可変領域を結合タンパク質に融合して、単鎖の抗体(scFv)を形成すること(ここにおける抗体分子は、同じであるか又は異なっていてもよく、そして抗CD11及び抗CD18より選ばれる)、
(B)細菌性の送達システムが、HIVの伝染から防御されるべき上皮を含有する環境において、段階(A)の単鎖抗体を発現する状態を形成すること、
を含んでなる、殺菌剤を作成する方法。
【請求項37】
細菌性の送達システムが、乳酸菌、大腸菌及び乳酸球菌からなる群より選ばれる少なくとも1つの細菌を含んでなる、請求項36に記載の作成方法。
【請求項38】
結合タンパク質が、付着の重鎖及び軽鎖の可変領域をCD18が結合するような構造に折り畳んでいる、アミノ酸の配列を含んでなる、請求項36に記載の作成方法。
【請求項39】
発現産生物が、抗CD18、抗CD11、及び組み換え菌により発現するリガンドからなる群より選ばれる、HIV−1の経上皮伝染を阻止する発現産生物。
【請求項1】
HIV感染を受ける可能性のある上皮を、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体又はその両方に対して曝露することを含んでなる、ここにおいて上皮を抗体に曝露する段階がHIV感染の何れの確立よりも先行し、そしてHIV感染の確立を防止する、ヒト又は哺乳動物でのHIVの初期感染を防止する方法。
【請求項2】
上記HIVが、無細胞のHIVである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記HIVが、細胞関連のHIVである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CD18及び/又はCD11の抗体と組合せた抗ICAM抗体に上皮を曝露することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの細菌性の送達システムを介して、抗体を上皮へ送達することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの乳酸菌の送達システムを介して、抗体を上皮へ送達することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
用いられる乳酸菌の送達システムの量が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体を0.5〜100マイクログラム/mlの範囲の濃度で、発現するのに十分な量である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
scFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体の濃度が、約0.5〜100マイクログラム/mlの範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
細菌性の送達システムが、scFvを発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上皮が、膣上皮、子宮頸部上皮、直腸上皮、結腸上皮及び口腔上皮からなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
抗CD11抗体が、抗CD11a、抗CD11b、抗CD11c及び抗CD11dからなる群より選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
抗体が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体、scFv様分子の四量体及びそれらの組合せからなる群より選ばれる産生物として、細菌性の送達システムにより発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
HIV曝露を受ける可能性のある上皮を、1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体又はその両方に対して曝露することを含んでなる、ヒト又は哺乳動物へのHIVの経上皮伝染を阻止する方法。
【請求項14】
上皮を抗体に曝露する段階が、HIV感染の何れの確立よりも先行し、そしてHIV感染の確立を防止する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
上記HIVが、無細胞のHIVである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
上記HIVが、細胞関連のHIVである、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
上皮を越えてのHIVの伝染が減少する又は防止される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
HIVの性的伝染が減少する又は防止される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
CD18及び/又はCD11の抗体と組合せて抗ICAM抗体に、上皮を曝露することを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つの細菌性の送達システムを介して、抗体を上皮へ送達することを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの乳酸菌の送達システムを介して、抗体を上皮へ送達することを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
ヒトが女性である、請求項13に記載の方法。
【請求項23】
ヒトが男性である、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
用いられる乳酸菌の送達システムの量が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体を0.5〜100マイクログラム/mlの範囲の濃度で、発現するのに十分な量である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
細菌性の送達システムが、scFvを発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
scFv、scFvの二量体、scFvの三量体及び/又はscFv様分子の四量体の濃度が、約0.5〜100マイクログラム/mlの範囲である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
上皮が、膣上皮、子宮頸部上皮、直腸上皮、結腸上皮及び口腔上皮からなる群より選ばれる、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
抗CD11抗体が、抗CD11a、抗CD11b、抗CD11c及び抗CD11dからなる群より選ばれる、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
抗体が、細菌により産生可能なscFv、scFvの二量体、scFvの三量体、scFv様分子の四量体及びそれらの組合せからなる群より選ばれる産生物として、細菌性の送達システムにより発現する、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
1つ又はそれ以上の抗CD18、抗CD11の抗体又はその両方を含んでなる、殺菌剤。
【請求項31】
抗体が、細菌性の送達システムによりscFvとして発現する、請求項30に記載の殺菌剤。
【請求項32】
抗体を、少なくとも1つの乳酸菌の細菌性送達手段を介して、防御されるべき上皮に送達することができる、請求項30に記載の殺菌剤。
【請求項33】
少なくとも1つの抗ICAM抗体を更に含んでなる、請求項30に記載の殺菌剤。
【請求項34】
抗ICAM抗体(単一又は複数)並びに抗CD18及び/又は抗11抗体を一緒にした累積的な抗HIVの効果が、(1)個別の抗CD18及び/又は抗CD11の抗体の効果、及び(2)個別の抗ICAM抗体の効果を足した効果と、少なくとも等しい又はそれより大きい、請求項33に記載の殺菌剤。
【請求項35】
抗CD11抗体が、抗CD11a、抗CD11b、抗CD11c及び抗CD11dからなる群より選ばれる、請求項30に記載の殺菌剤。
【請求項36】
(A)軽鎖の抗原結合性の可変領域及び重鎖の抗原結合性の可変領域を結合タンパク質に融合して、単鎖の抗体(scFv)を形成すること(ここにおける抗体分子は、同じであるか又は異なっていてもよく、そして抗CD11及び抗CD18より選ばれる)、
(B)細菌性の送達システムが、HIVの伝染から防御されるべき上皮を含有する環境において、段階(A)の単鎖抗体を発現する状態を形成すること、
を含んでなる、殺菌剤を作成する方法。
【請求項37】
細菌性の送達システムが、乳酸菌、大腸菌及び乳酸球菌からなる群より選ばれる少なくとも1つの細菌を含んでなる、請求項36に記載の作成方法。
【請求項38】
結合タンパク質が、付着の重鎖及び軽鎖の可変領域をCD18が結合するような構造に折り畳んでいる、アミノ酸の配列を含んでなる、請求項36に記載の作成方法。
【請求項39】
発現産生物が、抗CD18、抗CD11、及び組み換え菌により発現するリガンドからなる群より選ばれる、HIV−1の経上皮伝染を阻止する発現産生物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【公表番号】特表2009−511601(P2009−511601A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535768(P2008−535768)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/040360
【国際公開番号】WO2007/047573
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(508113413)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/040360
【国際公開番号】WO2007/047573
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(508113413)
【Fターム(参考)】
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