説明

細菌コロニー採取装置、及び細菌コロニー釣菌装置

【課題】コロニー保持体から目的のコロニーを採取する細菌コロニー採取装置において、隣接する他種コロニーのコンタミネーションを防止しつつ、硬いコロニーの採取量を増加する事を目的とする。
【解決手段】本発明の細菌コロニー採取装置は、コロニーを採取するコロニー採取部材と、前記コロニー採取部材を少なくとも一軸方向へ駆動させる駆動部を備え、前記コロニー採取部材でコロニーに切り込みを入れてコロニーを採取する装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロニーを採取する細菌コロニー採取装置、及びコロニー釣菌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
臨床や環境衛生や食品衛生等の各種検査では、固体状またはゲル状の培地等に代表されるコロニー保持体上の複数種類のコロニーから、コロニーを採取するための道具であるコロニー採取部材を用いて目的のコロニーのみを採取するコロニー採取という作業が行われる。特許文献1には、液体培地へのコロニー移植方法が開示されている。これは、コロニーを中空状移植針で突き刺す事により、中空筒内にコロニーとコロニー保持体を採取する。この方法によれば、多量のコロニーを容易に採取できる。
【0003】
また、特許文献2には、スポイトの先端に微生物採取用担体を備え、スポイトの加圧部と微生物採取用担体との間に吸入口を備えた微生物採取用具が開示されている。微生物採取用担体で被検査物の表面を拭き取ることにより、微生物を付着させ、その後、微生物懸濁用の液体を吸入口から微生物採取用担体へ繰り返し流すことにより、微生物を剥離すると共に、微生物採取用担体に夾雑物を留めている。
【0004】
また、コロニー採取後にその採取したコロニーを微細化して溶液にリリースする、いわゆる釣菌を自動で行う細菌コロニー釣菌装置がある。この装置には、細菌コロニー採取装置に望まれている性能に加えて、コスト低減とメンテナンス性向上と釣菌時間の短縮のために、一軸方向のみのコロニー採取部材の動作で採取したコロニーを溶液へ効率良くリリースする事が望まれている。従来の細菌コロニー釣菌装置としては、コロニー採取部材の繊維でコロニーを拭き取って付着させ、その付着面に液体を繰り返し吐き出す事により液体へコロニーをリリースする特許文献2の装置が知られている。この装置は、コロニー採取部材に付着したコロニーを液体へ十分にリリースできるという効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平03−240482号公報
【特許文献2】特開2008−187944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のコロニー移植方法では、一軸方向のみのコロニー採取部材の動作でコロニーを採取する事ができる。しかし、中空状移植針でコロニーを採取するため、コロニー保持体も採取してしまうという課題がある。
【0007】
また特許文献2の微生物採取用具では、コロニー採取部材の繊維の間隔と孔径が採取するコロニーが通過でき、かつ液体に含まれる夾雑物が通過できない大きさである。そのため、コロニー採取時に(繊維内部に留まった夾雑物の影響で)コロニーが繊維を通過せずに押しつぶされてコロニー保持体上に広がって隣接するコロニーに接触してしまい、他種コロニーがコンタミネーションする可能性が高いという課題がある。所定以上の硬さのコロニーが採取できない可能性が高いという課題もある。
【0008】
そこで本発明は、コロニー保持体から目的のコロニーを採取する細菌コロニー採取装置において、隣接する他種コロニーのコンタミネーションを防止しつつ、硬いコロニーの採取量を増加する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の細菌コロニー採取装置は、コロニーを採取するコロニー採取部材と、前記コロニー採取部材を少なくとも一軸方向へ駆動させる駆動部を備え、前記コロニー採取部材でコロニーに切り込みを入れてコロニーを採取する装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コロニー保持体上のコロニーを採取する細菌コロニー採取装置において、一軸方向のみのコロニー採取部材の動作で隣接する他種コロニーのコンタミネーションを防止しつつ、硬いコロニーを採取することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施形態による、細菌コロニー採取装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の第一の実施形態の細菌コロニー採取装置による、コロニー採取部材の構造を示す図である。
【図3】本発明の第一の実施形態の細菌コロニー採取装置による、切り込みを入れてコロニーを採取する流れを示す断面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態の細菌コロニー採取装置による、コロニー採取部材の構造を示す図である。
【図5】本発明の第一の実施形態の細菌コロニー採取装置による、コロニーを採取しながら微細化する流れを示す断面図である。
【図6】本発明の第一の実施形態による細菌コロニー採取装置による、コロニー採取部材の硬さに対する硬いコロニーの採取性能を評価した実験結果を示す図である。
【図7】本発明の第二の実施形態による、切り込みを入れてコロニーを採取した後に、コロニーの微細化と溶液へのリリースを行う細菌コロニー釣菌装置の構成を示す図である。
【図8】本発明の第二の実施形態の細菌コロニー釣菌装置による、切り込みを入れてコロニーを採取した後に、コロニーの微細化と溶液へのリリースを行う流れを示す断面図である。
【図9】本発明の第三の実施形態による、切り込みを入れてコロニーを採取しながら微細化した後に、その微細化したコロニーの溶液へのリリースを行う、細菌コロニー釣菌装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の第三の実施形態の細菌コロニー釣菌装置による、コロニー採取部材の切り込み部が非弾性体の多孔質部であり、切り込みを入れてコロニーを採取しながら微細化した後に、その微細化したコロニーの溶液へのリリースを行う流れを示す断面図である。
【図11】本発明の第三の実施形態の細菌コロニー釣菌装置による、コロニー採取部材の切り込み部が弾性体の多孔質部であり、切り込みを入れてコロニーを採取しながら微細化した後に、その微細化したコロニーの溶液へのリリースを行う流れを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
〔第一の実施形態〕
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態の細菌コロニー採取装置は、コロニー採取部材で切り込みを入れてコロニーを採取する装置である。
【0014】
図1は、本発明の第一の実施形態による細菌コロニー採取装置の構成を示す図である。図1に示す様に、本発明の実施形態は、コロニー保持体101上のコロニー102を採取するコロニー採取部材103、コロニー採取部材103を少なくとも一軸方向に移動させる駆動部104から構成されている細菌コロニー採取装置である。
【0015】
図1に示す細菌コロニー採取装置の各要素の詳細を以下に述べる。
【0016】
コロニー採取部材103は、コロニー102に切り込みを入れる切り込み部105を有する。このコロニー102とは、真菌を含む細菌とその分泌物の集合体を指す。コロニー採取においては、切り込み部105がコロニー102に切り込みを入れる事でコロニー102が採取される。このようにコロニー102に切り込みを入れて採取する事で、一軸方向のみのコロニー採取部材103の動作でコロニー102を採取できるという効果がある。また切り込みを入れないで採取する際に起こっていた、コロニー102が押しつぶされてコロニー保持体101に広がる事が原因の隣接する他種コロニーのコンタミネーションを防止するという効果もある。ここで言う切り込みとは、コロニー102を切り込み部105に侵入させる事を意味する。この切り込み部105の硬さ,サイズ等の構造は、コロニー102に切り込みが入る範囲とする。その様な範囲とする事で、硬いコロニーの採取量を増加させることができるという効果がある。
【0017】
切り込み部105は、例えば図2の様な複数の突起を有する突起部106である事が考えられる。この突起の硬さ,間隔,大きさはコロニー102に切り込みが入る範囲であれば良く、規則的でも不規則的でも良い。また突起部106の断面形状は、円柱状でも多角柱状でも、その他の形状でも良い。また表面(突起部106の表面)は、平面でも凹凸面でも良い。また突起部106の材質は、弾性体でも非弾性体でも良い。また図2の様な突起部106でなくとも、コロニー102に切り込みを入れる事ができる構造であれば良い。
【0018】
コロニー保持体101はその表面にコロニー102が保持されており、固体状またはゲル状の培地等である。
【0019】
駆動部104は、コロニー採取部材103を保持し、またコロニー採取部材103を少なくとも一軸方向へ駆動させる機能を有する。この駆動部104は、コロニー保持体101のコロニー保持面に対して、コロニー採取部材103を垂直あるいは斜めの少なくとも一軸方向に駆動させる機能を有する。また、コロニー保持体101を採取しない様にコロニー採取部材103を駆動させる機能を有する。コロニー保持体101を採取しない様にする理由は、コロニー保持体101の採取による、後の検査の誤判定の発生を防止するためである。このコロニー保持体101の採取の原因は、コロニー採取部材103がコロニー102に切り込みを入れた後に、駆動部104の駆動によりコロニー保持体101にも切り込みを入れる事である。コロニー保持体101に切り込みを入れない動作としては、例えば、コロニー保持体101に切り込みが入る駆動距離以下で、つまり、コロニー保持体101に切り込みが入る直前までコロニー採取部材103を駆動させる事が考えられる。また、コロニー採取部材103の材質が弾性体の場合は、切り込みを入れる際にコロニー採取部材103がコロニー102へ加える荷重を測定する機構を設け、その機構でコロニー採取部材103がコロニー102へ加える荷重を測定し、コロニー採取部材103がコロニー保持体101に切り込みを入れる荷重以下でコロニー採取部材103を駆動させる事が考えられる。この駆動部の動作により、コロニー保持体101の採取を防止する効果がある。
【0020】
図3は、本実施形態の細菌コロニー採取装置による、切り込みを入れてコロニー102を採取する流れを示す断面図である。ここではコロニー採取部材103の切り込み部105の構造が、図2に示す突起部106である場合を例に示している。
【0021】
まず、突起部106をコロニー保持体101のコロニー102が保持されている上方に配置する(図3(a))。
【0022】
次に、駆動部104によって突起部106をコロニー102に近づけ、コロニー102に荷重をかけて突き刺して切り込みを入れる(図3(b))。この様に突起部106をコロニー102に突き刺して切り込みを入れる事により、コロニー102を分割しながら突起部106自身の内部に取り込む。ここで言う分割とは、コロニー保持体101のコロニー保持面に対し、コロニー102を複数のパーツに分ける事を意味する。また、ここで言う分割しながら自身の内部に取り込むとは、突起部106の空間に、分割したコロニー107を充填する事を意味する。この突起部106の外径は、コロニー102の外径よりも大きくても小さくても良い。また駆動部104の駆動は、コロニー保持体101のコロニー保持面に対して、垂直方向,斜め方向等どの方向でも良い。またこの切り込みは、コロニー保持体101のコロニー保持面に対して垂直方向,斜め方向等どの方向でも良い。またこの切り込みは、コロニー102を貫通してコロニー保持体101に達していてもいなくても良く、コロニー保持体101を採取しない様にコロニー採取部材103の駆動を駆動部104で制御していれば良い。
【0023】
最後に、その内部に分割したコロニー107が取り込まれた突起部106を、駆動部104の駆動によりコロニー102から遠ざける(図3(c))。この駆動部104の駆動は、コロニー保持体101のコロニー保持面に対して、垂直方向,斜め方向等どの方向でも良い。
【0024】
図4は、本実施形態の細菌コロニー採取装置による、コロニー採取部材103の図2とは別の構造を示す図である。
【0025】
このコロニー採取部材103はコロニー102に切り込みを入れる切り込み部105が、内部で繋がっている複数の孔108を有する多孔質部109である。この多孔質部109の硬さは、コロニー102に切り込みが入る範囲とする。またこの多孔質部109は、弾性体でも非弾性体でも良い。孔108の形状は、円状,多角状でもその他の形状でも良い。またこの孔108の間隔,大きさは、コロニー102に切れ目を入れる事ができる範囲であれば良く、規則的でも不規則的でも良い。
【0026】
図5は、図4に示す切り込み部105を有するコロニー採取部材103を用いて、コロニー102を採取しながら微細化する流れを示す断面図である。ここでは多孔質部109が非弾性体である場合を例に示しているが、弾性体であっても良い。
【0027】
まず、多孔質部109をコロニー保持体101のコロニー102が保持されている上方に配置する(図5(a))。
【0028】
次に、駆動部104を駆動して多孔質部109をコロニー102に近づけ、押し付ける(図5(b))。この様に多孔質部109を押し付ける事により、コロニー102に切り込みを入れて採取しながら微細化する。ここで言う微細化とは、コロニー102をコロニー採取部材のコロニー保持面に対してコロニー102を複数パーツに分ける分割よりさらに細かくする事を意味する。またここで言うコロニーを採取しながら微細化するとは、コロニーの採取に微細化の効果もあるため、これらを同時に行う事を意味する。この多孔質部109の外径はコロニー102の外径よりも大きくても小さくても良い。また、多孔質部109はコロニーを微細化すれば、押し付けの際に縮んでも縮まなくても良い。この駆動部104の駆動は、コロニー保持体101のコロニー保持面に対して、垂直方向,斜め方向等どの方向でも良い。またこの微細化は、コロニー102を貫通してコロニー保持体101に達していてもいなくても良い。
【0029】
最後に微細化したコロニー110を保持したコロニー採取部材103を、駆動部104の駆動によりコロニー102から遠ざける(図5(c))。この駆動部104の駆動は、コロニー保持体101のコロニー保持面に対して、垂直方向,斜め方向等どの方向でも良い。
【0030】
本実施形態では、コロニーの採取と微細化を同時に行うため、別に行う場合と比較すると、コロニー採取と微細化に要する時間が短縮されるという効果がある。
【0031】
図6は、本実施形態による、細菌コロニー採取装置による、コロニー採取部材の硬さに対する硬いコロニーの採取性能を評価した実験結果を示す図である。
【0032】
本発明でいう硬いコロニーとは、軟らかいコロニー採取部材103だとコロニー採取で切り込みを入れる際にコロニーに対してかける荷重で、コロニー採取部材103が座屈したり撓んだりして採取量が少なくなるコロニーを指す。ここで対象とした硬いコロニーは、我々がコロニー採取を試験したRothia mucilaginosa、Bacillus pumilus、Neisseria lactamica等の真菌を含む数10種の中で、軟らかいコロニー採取部材103だとコロニー採取部材103で切り込みを入れる際にかける荷重で、コロニー採取部材103が座屈したり撓んだりして、採取量が最も少なくなったStreptococcus salivarius(以下S.salivarius)である。
【0033】
この実験では、コロニー採取部材103として、直径2mm,長さ10mmのプラスチック材の先端に、直径2mm,長さ2mmの多孔質部109を接着したものを用いた。多孔質部109には発泡ポリウレタンを用い、その硬さを2kg,22kg,26kg,51kgの4種とした。この硬さとは、JIS K6400−2で規定されている軟質発泡材量の硬さの測定法に従って測定された値であり、図の横軸にはこのJIS K6400−2に準拠してメーカーが測定した値を示した。この硬さの値は、大きいほどコロニー採取のときコロニー採取部材103でコロニー102に切り込みを入れる際のコロニー採取部材103が座屈したり撓んだりする最低荷重が大きくなる。すなわち、硬さの数値が大きい発泡ポリウレタン程、同じ荷重をかけた時の撓みや座屈は小さくなりコロニー102に切り込みを入れやすくなる。またコロニー採取部材103がコロニー102に加える荷重は、上記発泡ポリウレタンが元厚の25%となる荷重とし、それぞれの発泡ポリウレタンフォーム毎に設定した。
【0034】
図の縦軸には、S.salivaliusコロニー102の採取割合を示す。この採取割合は、コロニー全量に対する採取したコロニー量から算出した値であり、その値が大きい程硬いコロニー102の採取性能が高い事を示す。
【0035】
図に示す様に、硬さが2.0kgの発泡ポリウレタンでは釣菌割合が0.14と低い。しかし硬さの数値が大きくなるに従い釣菌割合も増加し、硬さ51kgでは釣菌割合が0.61と目標の0.5を上回った。この結果は、コロニー採取部材103によりコロニー102に切り込みをいれてコロニー102を採取する、という本発明によって、硬いコロニー102の釣菌量が増加する事を示し、本発明の効果を実証した。
【0036】
〔第二の実施形態〕
図7は、本発明の第二の実施形態による、切り込みを入れてコロニーを採取した後に、コロニーの微細化と溶液へのリリースを行う細菌コロニー釣菌装置の構成を示す図である。ここで言う「釣菌」とは、コロニーを採取し、採取後にその採取したコロニーを微細化して溶液にリリースする事を意味する。つまり、細菌コロニー釣菌装置は、コロニーを採取し、採取後にその採取したコロニーを微細化して溶液にリリースする装置を意味する。
【0037】
図7に示す様に、本実施形態の細菌コロニー釣菌装置は、コロニー保持体101上のコロニー102を採取するコロニー採取部材103、コロニー採取部材103を少なくとも一軸方向に移動させる駆動部104,溶液を溜めている試験管201,駆動部104を移動させる駆動部移動装置202,コロニー102に切り込みを入れて採取した後にコロニー102の微細化と溶液へのリリースを行うコロニーリリース微細化装置203を備えている。
【0038】
図7に示す細菌コロニー釣菌装置の各要素の詳細を以下に述べる。
【0039】
試験管201は、溶液を溜めている。またコロニー微細化を妨害せず、また自身が微細化により破壊や変形等の妨害を受けないものとする。この試験管201の溶液を溜めるための空洞の大きさは、コロニー採取部材103の切り込み部105が全てその中に収まるものとする。またその空洞に溜める溶液の量は、コロニー採取部材103の切り込み部105が全て浸る範囲とする。
【0040】
駆動部移動装置202は、コロニー102に切り込みを入れて採取する位置とコロニー102の微細化と溶液へのリリースを行う位置の間でコロニー採取部材103を移動させるために、駆動部104を移動する機能を有する。駆動部移動装置202を設けず、駆動部104をコロニー保持体101と試験管201近辺に2つ備えても良い。また、駆動部104にコロニー採取部材103を保持する方向を変える機能を設けても良い。
【0041】
コロニーリリース微細化装置203は、コロニー採取部材103を用いてコロニー102に切り込みを入れてコロニー102を採取した後に、そのコロニー採取部材103に採取されたコロニー102を微細化して溶液へリリースする。具体的には、試験管201中の溶液に流体のせん断力を発生させる装置、試験管201中の溶液に超音波を与える装置等である。溶液に流体のせん断力を発生させ、細菌コロニー採取装置に付着したコロニーを、リリースする機能を有する。ここで言う微細化とは、コロニー102をコロニー採取部材のコロニー保持面に対してコロニー102を垂直方向に複数パーツに分ける分割よりさらに細かくする事を意味する。またここで言うリリースとは、採取したコロニーを溶液に放出する事を意味する。このコロニーリリース微細化装置203は、試験管201中に配置しても良い。その場合には、コロニーリリース微細化装置203の溶液に接触する箇所を洗浄する洗浄装置を設ける。またこのコロニーリリース微細化装置203は、試験管201の側面に配置しても上面に配置しても下面に配置しても良い。また試験管201に接触していても接触していなくても良い。
【0042】
図8は、本発明の第二の実施形態の細菌コロニー釣菌装置による、切り込みを入れてコロニーを採取した後にコロニーの微細化と溶液へのリリースを行う流れを示す断面図である。ここではコロニー採取部材の切り込み部105の構造が図2に示す突起部106である場合を例に示している。コロニー採取は、図3(a),(b),(c)と同様の流れで行う(図8(a),(b),(c))。
【0043】
コロニー採取後に、コロニー102に切り込みを入れて採取した分割したコロニー107を保持した突起部106を、試験管201中の溶液204へ浸す。この時、突起部106は溶液204中に全て浸る様にする(図8(d))。
【0044】
次に、コロニーリリース微細化装置203の動作を開始し、突起部106に採取された分割したコロニー107を溶液204へリリースする(図8(e))。
【0045】
次に、コロニーリリース微細化装置203の動作により、分割したコロニー107を微細化して微細化したコロニー110を生成する(図8(f))。ここで、コロニーリリース微細化装置は、試験管201中の溶液に流体のせん断力を発生させる動きや超音波を発生させる動作を行う。
【0046】
この分割したコロニー107の溶液204へのリリースと微細化は、図8(e),(f)に示す様にリリースした後に微細化するという順序でなくても良く、微細化した後にリリースするという順序でも良い。また、微細化とリリースを同時に行っても良い。
【0047】
〔第三の実施形態〕
図9は、本発明の第三の実施形態による、切り込みを入れてコロニーを採取しながら微細化した後に、その微細化したコロニーの溶液へのリリースを行う、細菌コロニー釣菌装置の構成を示す図である。ここで言う釣菌とは、コロニー採取の後にその採取したコロニーを微細化して溶液へリリースする事を意味する。図9に示す様に、本発明の実施形態は、コロニー保持体101上のコロニー102を採取するコロニー採取部材103、コロニー採取部材103を少なくとも一軸方向に移動させる駆動部104、溶液を溜めるための空洞を有する試験管201,駆動部104を移動させる駆動部移動装置202から構成されている細菌コロニー釣菌装置である。
【0048】
図10は、本発明の第三の実施形態の細菌コロニー釣菌装置による、コロニー採取部材の切り込み部が非弾性体の多孔質部であり、切り込みを入れてコロニーを採取しながら微細化した後に、その微細化したコロニーの溶液へのリリースを行う流れを示す断面図である。ここではコロニー採取部材103の切り込み部105の構造が、図4に示す多孔質部109で、かつ、この多孔質部109が非弾性体である場合を例に示している。
【0049】
コロニー採取は、図5(a),(b),(c)と同様の流れで行う(図10(a),(b),(c))。
【0050】
コロニー採取後に、コロニー102に切り込みを入れて採取した微細化したコロニー110を保持した多孔質部109を、試験管201中の溶液204へ浸す。この時、多孔質部109は溶液204中に全て浸る様にする(図10(d))。
【0051】
次に、駆動部104の動作によりコロニー102を採取した多孔質部109を降下させて、溶液を溜めた試験管201底面に押し付ける(図10(e))。
【0052】
次に、多孔質部109を引き上げる(図10(f))。この多孔質部109の押し付けと上昇により多孔質部109が振動し、採取したコロニーが溶液へリリースされる。
【0053】
この多孔質部109の押し付けと引き上げを繰り返す。この繰り返しにより、溶液へリリースされるコロニーの量は増加する。
【0054】
本発明の第三の実施形態では、コロニーの採取と微細化とリリースを駆動部104のみで行う事ができる。そのため、コロニーリリース微細化装置203が不要となり、細菌コロニー釣菌装置のコストが低減されるという効果、小型化できるという効果がある。また、コロニーの採取と微細化を同時に行うため、別に行う場合と比較すると、コロニー採取と微細化に要する時間が短縮できるという効果もある。
【0055】
図11は、本発明の第三の実施形態の細菌コロニー釣菌装置による、コロニー採取部材の切り込み部が弾性体の多孔質部であり、切り込みを入れてコロニーを採取しながら微細化した後に、その微細化したコロニーの溶液へのリリースを行う流れを示す断面図である。ここではコロニー採取部材103の切り込み部105の構造が、図4に示す多孔質部109で、かつ、この多孔質部109が弾性体である場合を例に示している。
【0056】
コロニー採取は、図5(a),(b),(c)と同様の流れで行う(図11(a),(b),(c))。
【0057】
コロニー採取後に、コロニー102に切り込みを入れて採取した微細化したコロニー110を保持した多孔質部109を、試験管201中の溶液204へ浸す。この時、多孔質部109は溶液204中に全て浸る様にする(図11(d))。
【0058】
次に、駆動部104の動作によりコロニー102を採取した多孔質部109を降下させて、溶液を溜めた試験管201底面に押し付ける(図11(e))。この際、多孔質部109の孔108は、圧縮して採取したコロニーを溶液中へ押し出す。
【0059】
次に、多孔質部109を引き上げる(図11(f))。この際圧縮していた多孔質部109の孔108は、伸長して溶液を吸引する。この多孔質部109の押し付けと上昇により多孔質部109が振動し、採取したコロニーが溶液へリリースされる。
【0060】
この多孔質部109の押し付けと引き上げを繰り返す。この繰り返しにより、溶液へリリースされるコロニーの量は増加する。この様に多孔質部109を弾性体とし、リリースの際に多孔質体109の孔108を圧縮伸長させる事で、非弾性体の場合よりもリリースが促進され、リリースに要する時間が短縮できるという効果がある。
【0061】
なお、本発明は、以下のように表現することもできる。
(1)コロニー保持体上のコロニーを採取するコロニー採取部材と、コロニー採取部材を少なくとも一軸方向へ駆動させる駆動部を備え、コロニー採取部材でコロニーに切り込みを入れてコロニーを採取する事を特徴とする。
(2)コロニー保持体上のコロニーを採取するコロニー採取部材と、コロニー採取部材を少なくとも一軸方向へ駆動させる駆動部を備え、コロニー採取部材がコロニーに切り込みを入れる切り込み部を有する事を特徴とする。
(3)上記の細菌コロニー採取装置において、コロニーを分割しながら自身の内部に取り込む事を特徴とする。
(4)上記の細菌コロニー採取装置において、コロニー採取部材の切り込み部が最下部の上部に空間を有する複数の突起部であり、この突起部でコロニーを突き刺してコロニーに切り込みを入れる事を特徴とする。
(5)上記の細菌コロニー採取装置において、コロニー採取部材は、その切り込み部が内部でつながっている複数の孔を有する多孔質部であり、この多孔質部をコロニーに押し付けて切り込みを入れ、コロニーを採取しながら微細化する事を特徴とする。
(6)上記の細菌コロニー採取装置において、駆動部は、コロニー保持体を採取しない駆動距離でコロニー採取部を駆動する事を特徴とする。
(7)上記の細菌コロニー採取装置において、採取したコロニーの微細化と溶液へのリリースを行うコロニーリリース微細化装置、溶液を溜めている試験管を備え、切り込みを入れてコロニーを採取した後に、採取したコロニーを微細化して溶液へリリースする細菌コロニー釣菌装置である事を特徴とする。
(8)上記の細菌コロニー釣菌装置において、コロニー採取部材の切り込み部が、最下部の上部に空間を有する複数の突起部である事を特徴とする。
(9)上記の細菌コロニー釣菌装置において、コロニーリリース微細化装置は、採取したコロニーを微細化してコロニーを溶液中へリリースする機能を有する事を特徴とする。
(10)上記の細菌コロニー釣菌装置において、溶液を溜めている試験管を備え、コロニーに切り込みを入れてコロニーを採取しながら微細化した後に、その微細化したコロニーを溶液へリリースする事を特徴とする。
(11)上記の細菌コロニー釣菌装置において、コロニー採取部材は、内部でつながっている複数の孔を有する多孔質部である事を特徴とする。
(12)上記の細菌コロニー釣菌装置において、試験管の底に多孔質部を押し付けた後に多孔質部を引き上げる事で採取したコロニーを溶液へリリースする事を特徴とする。
(13)上記の細菌コロニー釣菌装置において、多孔質部の試験管の底への押し付けと引き上げを複数回繰り返す事を特徴とする。
(14)上記の細菌コロニー釣菌装置において、多孔質部が弾性体であり、試験管の底に多孔質部を押し付けて圧縮させた後に多孔質部を引き上げて伸長させる事で採取したコロニーを溶液へリリースする事を特徴とする。
【符号の説明】
【0062】
101 コロニー保持体
102 コロニー
103 コロニー採取部材
104 駆動部
105 切り込み部
106 突起部
107 分割したコロニー
108 孔
109 多孔質部
110 微細化したコロニー
201 試験管
202 駆動部移動装置
203 コロニーリリース微細化装置
204 溶液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロニーを採取するコロニー採取部材と、
前記コロニー採取部材を駆動させる駆動部を備え、
前記コロニー採取部材でコロニーに切り込みを入れてコロニーを採取する細菌コロニー採取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の細菌コロニー採取装置において、
前記コロニー採取部材がコロニーに切り込みを入れる切り込み部を有する細菌コロニー採取装置。
【請求項3】
請求項1記載の細菌コロニー採取装置において、
コロニーを分割しながら前記コロニー採取部材の内部に取り込む細菌コロニー採取装置。
【請求項4】
請求項2記載の細菌コロニー採取装置において、
前記切り込み部が複数の突起部である細菌コロニー採取装置。
【請求項5】
請求項1記載の細菌コロニー採取装置において、
前記コロニー採取部材は、多孔質部材である細菌コロニー採取装置。
【請求項6】
請求項1記載の細菌コロニー採取装置において、
前記駆動部は、コロニーを保持するコロニー保持体の直前までコロニー採取部を駆動する細菌コロニー採取装置。
【請求項7】
切り込みを入れてコロニーを採取するコロニー採取部材と、
前記コロニー採取部材を駆動させる駆動部と、
溶液を溜めた試験管と、
採取したコロニーの微細化を行うコロニー微細化部と、
前記溶液へのコロニーのリリースを行うコロニーリリース部を備えた、細菌コロニー釣菌装置。
【請求項8】
請求項7に記載のコロニー釣菌装置において、
前記コロニー採取部材がコロニーに切り込みを入れる切り込み部を有する細菌コロニー釣菌装置。
【請求項9】
請求項8に記載のコロニー釣菌装置において、
前記切り込み部が複数の突起部である細菌コロニー釣菌装置。
【請求項10】
切り込みを入れてコロニーを採取するコロニー採取部材と、
前記コロニー採取部材を駆動させる駆動部と、
溶液を溜めた試験管を有し、
前記コロニー採取部材は、多孔質部材であり、
コロニー採取後に、
前記駆動部は、前記試験管の底に前記多孔質部材を押し付ける細菌コロニー釣菌装置。
【請求項11】
請求項10に記載の細菌コロニー釣菌装置において、
前記駆動部は、前記多孔質部の試験管の底への押し付けと底からの引き離しを複数回繰り返す細菌コロニー釣菌装置。
【請求項12】
請求項10に記載の細菌コロニー釣菌装置において、
前記多孔質部が弾性体であり、
前記試験管の底に前記多孔質部を押し付けて圧縮させた後に前記多孔質部を底から引き離して前記多孔質部を伸長させる細菌コロニー釣菌装置。
【請求項13】
切り込みを入れてコロニーを採取するコロニー採取部材と、
前記コロニー採取部材を駆動させる駆動部と、
溶液を溜めた試験管を備え、
試験管中の溶液に流体のせん断力または超音波を発生させる手段を有する細菌コロニー釣菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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