説明

細菌判別装置および細菌判別方法

【課題】蛍光標識された細菌が形状不良でも判別出来る細菌判別装置および細菌判別方法を提供する。
【解決手段】光を照射して検体を蛍光させ、検体からの蛍光を含む画像を撮像し、画像から蛍光された領域を抽出し、領域の重心の位置を算出し、領域の輪郭を算出し、重心の位置から輪郭を形成する輪郭点までの距離を輪郭点毎に算出し、重心の位置から輪郭点への方向と所定の方向とのなす角度を輪郭点毎に算出し、各輪郭点における距離と角度とに基づいて、距離と角度との関係を示す曲線を算出し、曲線と所定の形状を有する理想曲線との距離の差を角度毎に算出し、距離の差に基づいて、曲線と理想曲線との相関を示す相関値を算出し、相関値に基づいて、検体が細菌であるか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌判別装置および細菌判別方法に関し、特に、集菌法の遠心分離機で処理して細菌が傷ついた場合においても、形状を判断し細菌を検出するために好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
細菌を分類する方法としては、寒天培養法が最も一般的な方法である。これは試料を寒天培地に塗り、所定時間培養して形成したコロニーを、染色又は無染色にて、顕微鏡を用いて観察者が分類する検査方法である。しかしこの寒天培養法は、基本的に手作業で行うため処理が煩わしく、また培養するため細菌の種類を判定するまでに時間がかかる。
【0003】
そこで抗酸菌の検出において、培養せずに観察する蛍光観察法がある。これは細菌だけが蛍光するように検体を調整し、その蛍光を落斜蛍光顕微鏡などの光学手段を用いて観察者が観察する検査方法である。
【0004】
また、光学手段で観察者が観察する代わりに、カメラなど撮影手段を用いて自動で各視野を撮影し、撮影した画像から細菌を自動で検出する方法がある。検出方法としては、抗酸菌の蛍光は背景色と比較して特徴があり、抗酸菌は桿菌であるためカプセル状の形状をしていることを用いて細菌の色と形状の特徴を判定することにより細菌を識別する。
【0005】
ここで、対象物の色と形状の判定を行う方法として、テンプレートマッチングが知られている。これは予め様々な大きさや傾きの画像を撮影しておき、撮影した画像と各画素の色を比較して、予め撮影した画像の中で最も似ている画像とどの程度似ているか判定することで色と形状を識別する方法である。しかし、予め様々な大きさや傾きの画像を撮影することが煩わしく、予め撮影した画像が多いほどテンプレートマッチングの処理時間を要する。
【0006】
そこで、テンプレートマッチングの課題を解決する方法として、次のような対象物の輪郭と重心から形状を識別する方法が提案されている。
【0007】
例えば、対象物を撮影し、重心から各輪郭の画素までの距離と基準線からの角度を算出し、距離と角度による曲線を基に、平均値と変極点の数や値などから形状(円/楕円/四角/歪形)を判定する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−264715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の構成では細菌が傷ついて一部形状が欠けている場合、蛍光する細菌の領域を抽出しても理想的な形状の特徴とは異なる為、歪形と判断してしまう可能性がある。
【0009】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであって、細菌が傷ついて一部欠けたような形状でも理想形状と近い形状であれば細菌と識別することを可能とする細菌判別装置および細菌判別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の第1の細菌判別装置は、光を照射して検体を蛍光させる光学部と、前記検体からの蛍光を含む画像を撮像する撮像部と、前記画像から蛍光された領域を抽出する領域抽出部と、前記領域の重心の位置を算出する重心位置算出部と、前記領域の輪郭を算出する輪郭算出部と、前記重心の位置から前記輪郭を形成する輪郭点までの距離を前記輪郭点毎に算出する距離算出部と、前記重心の位置から前記輪郭点への方向と所定の方向とのなす角度を前記輪郭点毎に算出する角度算出部と、前記各輪郭点における前記距離と前記角度とに基づいて、距離と角度との関係を示す曲線を算出する曲線算出部と、前記曲線と所定の形状を有する理想曲線との距離の差を前記角度毎に算出する形状比較部と、前記距離の差に基づいて、前記曲線と前記理想曲線との相関を示す相関値を算出する相関値算出部と、前記相関値に基づいて、前記検体が細菌であるか否かを判定する細菌判定部とを有する構成としている。
【0011】
また、本発明の第2の細菌判別装置は、前記細菌判定部が、前記相関値が所定値以下である場合、前記検体が細菌であると判定する構成としている。
【0012】
また、本発明の第3の細菌判別装置は、前記細菌判定部が、前記相関値が所定値よりも大きい場合、前記検体が細菌以外であると判定する構成としている。
【0013】
また、本発明の第4の細菌判別装置は、前記曲線算出部が、前記輪郭点における前記距離と前記角度との関係を示す曲線を距離と角度について正規化し、正規化された前記曲線を算出する構成としている。
【0014】
また、本発明の第5の細菌判別装置は、前記相関値算出部が、前記距離の差の最大値と最小値との差、前記距離の差の絶対値の最大値、前記距離の差の分散度合い、および前記距離の差の絶対値の総和の少なくとも1つを前記相関値とする構成としている。
【0015】
また、本発明の第1の細菌判別方法は、光を照射して検体を蛍光させる光学工程と、前記検体からの蛍光を含む画像を撮像する撮像工程と、前記画像から蛍光された領域を抽出する領域抽出工程と、前記領域の重心の位置を算出する重心位置算出工程と、前記領域の輪郭を算出する輪郭算出工程と、前記重心の位置から前記輪郭を形成する輪郭点までの距離を前記輪郭点毎に算出する距離算出工程と、前記重心の位置から前記輪郭点への方向と所定の方向とのなす角度を前記輪郭点毎に算出する角度算出工程と、前記各輪郭点における前記距離と前記角度とに基づいて、距離と角度との関係を示す曲線を算出する曲線算出工程と、前記曲線と所定の形状を有する理想曲線との距離の差を前記角度毎に算出する形状比較工程と、前記距離の差を基づいて、前記曲線と理想曲線との相関を示す相関値を算出する相関値算出工程と、前記相関値に基づいて、前記検体が細菌であるか否かを判定する細菌判定工程とを有する方法としている。
【0016】
また、本発明の第2の細菌判別方法は、前記細菌判定工程において、前記相関値が所定値以下である場合、前記検体が細菌であると判定する方法としている。
【0017】
また、本発明の第3の細菌判別方法は、前記細菌判定工程において、前記相関値が所定値よりも大きい場合、前記検体が細菌以外であると判定する方法としている。
【0018】
また、本発明の第4の細菌判別方法は、前記曲線算出工程において、前記輪郭点における前記距離と前記角度との関係を示す曲線を距離と角度について正規化し、正規化された前記曲線を算出する方法としている。
【0019】
また、本発明の第5の細菌判別方法は、前記相関値算出工程において、前記距離の差の最大値と最小値との差、前記距離の差の絶対値の最大値、前記距離の差の分散度合い、および前記距離の差の絶対値の総和の少なくとも1つを前記相関値とする方法としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、細菌が傷ついて一部欠けたような形状でも理想形状と近い形状であれば細菌と識別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態における細菌判別装置および細菌判別方法を図面とともに詳細に説明する。
【0022】
図1は本発明の実施形態における細菌検出装置100の一例を示すブロック図である。細菌検出装置100は、光学手段101、撮像手段102、画像処理手段103、表示手段104を有して構成される。細菌検出装置100により、細菌判別方法を実現可能である。
【0023】
尚、光学手段101は「光学部」としての機能を有する。また、撮像手段102は「撮像部」としての機能を有する。また、画像処理手段103は、「領域抽出部」、「重心位置算出部」、「輪郭算出部」、「距離算出部」、「角度算出部」、「曲線算出部」、「形状比較部」、「相関値算出部」、「細菌判定部」としての機能を有する。
【0024】
図1において、プレート1は検査対象物である。光学手段101は、プレート1に励起光を照射し、プレート1上の細菌が励起され発した蛍光を撮像手段102へ導く。撮像手段102は、蛍光観察している領域を撮影して画像を生成し、画像を画像処理手段103へ出力する。画像処理手段103は、撮影した画像の色と形状から細菌を検出し、その検出結果を表示手段104へ出力する。表示手段104は、検出結果を表示する。
【0025】
次に、プレート1について詳細に説明する。
【0026】
プレート1は、スライドガラスを用いており、細菌が励起光により励起され蛍光を発するように調整された検体が塗られている。また、必要であれば熱処理などの処理を施す。検体としては例えば人の痰や便などである。なお、プレート1として、シャーレなどの任意のプレート1を採用してもよい。
【0027】
次に、光学手段101の一例について、図2を用いて詳細に説明する。図2は蛍光観察において光学手段101の処理の一例を示す説明図である。
【0028】
光学手段101は、蛍光顕微鏡を用いて蛍光観察を行う。まず、プレート1に紫外線を含む光202を照射するために光源201として水銀ランプなどを使用する。光源201からの光202は、励起フィルタ203を通る。励起フィルタ203は、細菌が蛍光するのに必要な波長の光(以下、励起光204という)を透過し、不要な光を遮光する。そして、ダイクロイックミラー205にて励起光204を対物レンズ206に導き、対物レンズ206を経由してプレート1に照射される。ダイクロイックミラー205は、光源201に対して45度の角度で設置され、特定の波長のみ反射する。照射された励起光204で検体中の細菌が励起され蛍光207を発し、その蛍光207は対物レンズ206を経由して、吸収フィルタ208を通り、撮像手段102へ蛍光207を導く。吸収フィルタ208は、蛍光207を透過し、反射した励起光204や外光などの蛍光207以外の光209を遮光する。なお、光学手段101として蛍光観察が可能なマイクロメータなど任意の光学手段101を採用してもよい。
【0029】
次に、撮像手段102の一例について詳細に説明する。
【0030】
撮像手段102は、モノクロCCDカメラを用いており、光学手段101である蛍光顕微鏡にCマウントで接合している。光学手段101により導かれた検体からの蛍光207を、CCDカメラで撮影し、撮影した画像を画像処理手段103へ出力する。なお、撮像手段102として、カラーCCDカメラなど任意の撮像手段102を採用してもよい。
【0031】
次に、画像処理手段103の構成の一例について、図3〜図14を用いて詳細に説明する。
【0032】
図3は、画像の画素の位置を、二次元座標上の点の座標として取扱うことを示す説明図である。図3(a)は、横方向をX軸、縦方向をY軸、左下の画素を原点として、画像の各画素の位置を二次元座標上の点の座標として取扱うことを示す説明図である。図3(b)は、注目画素の中心位置301が、二次元座標のXY軸において整数の座標位置(Xn,Yn)であることを示す説明図である。画像処理手段103で取扱う画像については、図3のように画素の位置を二次元座標上の点の座標として取扱う。
【0033】
図4は、画像処理手段103が行う抗酸菌の蛍光検出のための形状判定方法の一例を示すフローチャートである。
【0034】
まず、ステップS101において、画像処理手段103が、撮影した画像の輝度情報から細菌が抽出できるように、二値化を行う。二値化の方法としては、例えば以下の処理を画像の全画素について行う。撮影した画像において、蛍光を発している部分の画素の輝度値は背景部分の画素の輝度値より高くなる。そこで、注目している画素の輝度値が閾値よりも高ければ1とし、それ以外を0とすることで二値化を行う。閾値の決め方としては、例えば観察者が細菌と背景を識別した領域について、細菌の輝度値の平均値と背景の輝度値の平均値を予め測定しておき、その中間値を閾値とする。画素の値が1の場合は細菌の領域の一部の可能性が高い画素とし、0の場合は背景とする。
【0035】
ステップS102は領域抽出工程であり、画像処理手段103が、ステップS101で算出した0と1に二値化した画像を用いて領域を抽出する。領域の抽出はニ値化した画像の全画素について、以下の処理を行う。注目画素の値が1の場合に周囲8近傍に1の値があれば、その画素も注目画素の領域と同じ領域であると識別する。領域を抽出する一般的な方法としては、領域毎に別々のラベル値を与えることで各領域を識別するラベリングなどがある。
【0036】
以下のステップでは、算出した領域の内一つの領域を対象とする。
【0037】
ステップS103は重心位置算出工程であり、画像処理手段103が、ステップS102で算出した領域について重心の算出を行う。
【0038】
領域における重心の算出方法の一例について、図5を用いて説明する。図5は抽出した領域501と領域の重心502を示す説明図である。領域501の各画素の座標位置の平均値を重心502して算出する。具体的には、まず各画素のX座標とY座標それぞれについて加算する。そして、加算した値を画素数で割り平均値を算出する。そのXとYの平均値で表される座標位置を重心502して算出する。
【0039】
ステップS104は輪郭算出工程であり、画像処理手段103が、ステップS102で算出した領域501について輪郭の算出を行う。
【0040】
輪郭の算出方法の一例について、図6を用いて説明する。図6は抽出した領域501における輪郭601と、輪郭601上の輪郭点602を示す説明図である。例えば領域501中の注目する画素について、注目する画素の8近傍の少なくとも1つに背景の画素がある場合に、輪郭601上の画素として算出する。また、輪郭601上の画素を輪郭点602とする。
【0041】
ステップS105は距離算出工程であり、画像処理手段103が、ステップS103で算出した重心502とステップS104で算出した輪郭601上の注目する輪郭点602間の距離を算出する。距離の算出では、二次元での二点間の距離を求める。
【0042】
二点間の距離の求める方法の一例について、図7を用いて説明する。図7はXY座標系において重心502の座標(X1,Y1)、輪郭点602の座標(X2,Y2)と二点を結ぶ線分701の一例を示す説明図である。また、二次元のXY座標系において、重心502の座標(X1,Y1)、輪郭点602の座標(X2,Y2)とするときの二点間の距離を求める関係式は、以下のようになる。この関係式では、XとYについてそれぞれ差の二乗が算出され、それが加算され平方根が求められることで二点間の距離として算出される。
【0043】
【数1】

【0044】
ステップS106は角度算出工程であり、画像処理手段103が、重心502と輪郭点602とを結ぶ線分701が、重心502を原点とする予め規定しておいた方向を持つ軸の基準線とのなす角度を算出する。例えば撮影した画像において、予め規定する方向をX軸方向としておく。
【0045】
角度の算出方法の一例について、図8を用いて説明する。図8は重心502と輪郭点602を結ぶ線分701と、重心502を通り予め規定しておいた方向をX軸方向とした基準線801が反時計回りになす角度802の一例を示す説明図である。基準線801と線分701とのなす角度802について、例えば反時計回りに0度以上360度未満の整数とする。このときの角度802の算出方法は、重心502を原点として考えた時の輪郭点602における正接関数の逆関数であるアークタンジェントを用いて算出できる。
【0046】
アークタンジェントの一例について、図9、図15〜図17を用いて説明する。図9は重心502を原点としたときのX軸方向の基準線801と輪郭点602の座標(Xn,Yn)のなす角度802をθとしたときの説明図である。図15は第1象限と第3象限にある原点について対照である点について、角度802の関係を示す説明図である。図16は第2象限と第4象限にある原点について対照である点について、角度802の関係を示す説明図である。図17は縦軸を角度802であるθ、横軸をYn/Xnとしたときの各象限における値を示すグラフである。また、座標(Xn,Yn)において、アークタンジェントを用いて角度802であるθを算出する関係式は、以下のようになる。
【0047】
θ=arctan(Yn/Xn)・・・(数式2)
【0048】
Yn/Xnが実数の範囲で計算されると、−90度<θ<90度の範囲しか値が得られない。ここで、角度802について、第1象限を0度≦θ<90度、第2象限を90度≦θ<180度、第3象限を180度≦θ<270度、第4象限を270度≦θ<360度とする。
【0049】
第1象限については、数式2からそのまま算出できる。第2象限については、図16のように、数式2により算出される値は−90度<θ<0度の範囲と同じ値であることから、角度802を−θとすると180度加算することで算出できる。第3象限については、図15のように、数式2により算出される値は0度≦θ<90度の範囲と同じ値であることから、θに180度加算することで算出できる。第4象限については、図16のように、数式2により算出される値は−90度<θ<0度の範囲と同じ値であることから、単に360度を加算することで算出できる。
【0050】
つまり、数式2を用いて算出した角度802について、第2象限と第3象限では180度、第4象限では360度を加算することで90度と270度を除き、0度以上360度未満の値を得ることができ、図17のような角度802と座標位置の関係を得ることができる。また、どの象限か判定する方法としてはXnとYnの値がそれぞれ0、正、負の組み合わせの条件により算出できる。例えばXnが負、Ynが0または負の場合、第3象限と判定する。また、図17で示すように90度と270度については算出できないので、Xnの値が0でYnの値が正のとき90度、Xnの値が0でYnの値が負のとき270度として算出することで、0度以上360度未満の値を得ることができる。
【0051】
ステップS107は曲線算出工程であり、画像処理手段103が、線分701の長さである距離と、線分701と基準線801とのなす角度802について、距離と角度802の関係を示す曲線を算出する。
【0052】
曲線の算出方法の一例について、図10を用いて説明する。図10(a)は縦軸が距離、横軸が角度であり、各輪郭点602における重心502からの距離と角度802をそれぞれ算出した二次元分布グラフのイメージ図である。始点1001は角度802が0度に最も近い座標、終点1002は角度802が360度に最も近い座標を示している。図10(b)は図10(a)における座標を角度802について補間した曲線の一例を示す図である。符号1003は距離の値の最大値であり、符号1004は距離の値の最小値1である。
【0053】
曲線の算出方法の一例としては、例えば各輪郭点602について距離と角度802を基に、縦軸を距離、横軸を角度とする図10(b)のような曲線を算出する。例えば、図5のような領域501において、距離と角度802を算出すると、距離と角度802の関係を示す二次元分布は、図10(a)のように座標が点在する。これを前後の座標から角度802について直線補間により算出すると図10(b)のようになる。
【0054】
ここで、角度802と距離の関係の一例について説明する。角度802と距離の関係は、以下のようになる。
【0055】
L(θ)=L(θ+360*N)・・・(数式3)
【0056】
角度802をθとするときの距離をL(θ)とすると、θに360度の整数N倍を加算した角度802における距離L(θ+360*N)とθにおける距離L(θ)は同じ距離であり、周期的な特徴を持っている。つまり、始点1001の前の座標は終点1002であり、終点1002の後ろの座標は始点1001である。これを用いて0度から始点1001の角度と、終点1002の角度から360度までの距離の値を補間することができ、0度から360度までの距離の値を補間することができる。
【0057】
ステップS108は曲線正規化工程であり、画像処理手段103が、ステップS107で算出した曲線の正規化を行う。
【0058】
正規化の一例について、図11を用いて説明する。図11(a)は図10(b)の二次元グラフを距離について正規化した図である。符号1101は、距離の最大値1003における角度を示している。図11(b)は図11(a)を角度について正規化した図である。符号1102は、図11(a)における0度の角度を示している。
【0059】
曲線の正規化の方法の一例として、例えば距離と角度それぞれについて正規形に変形することで、曲線の正規化を行う。まず、図11(a)のように、距離の最大値1003を100、距離の最小値1004を0として距離について正規化を行う。そして、11(b)のように、距離の最大値1003における角度1101が0度となるように曲線をずらすことで、角度について正規化を行う。周期的な特徴を用いて0度未満になる場合は360度を加算して角度について正規化を行う。つまり、図11(a)において距離の最大値1003における角度1101の左側にある曲線部分は、図11(b)において図11(a)における0度の角度1102の右側の曲線部分となるようにずらす。
【0060】
ステップS109は形状比較工程であり、画像処理手段103が、ステップS108で算出した正規化を行った曲線と、予め準備しておいた理想曲線との距離の差を算出することで比較を行う。
【0061】
比較の一例について、図12と図13を用いて説明する。図12(a)は検出する対象の理想形状を示す図である。図12(b)は図12(a)の理想形状について、ステップS101からステップS108までを行い、正規化した曲線の理想曲線を示す二次元グラフである。図13は図11(b)の曲線と図12(b)の理想曲線の各角度802についての距離の差を示す二次元グラフである。
【0062】
比較の方法の一例としては、例えば図11(b)の曲線と図12(b)の理想曲線の各角度802について距離の差を算出し、図13のような2つの曲線の差分を示す二次元グラフを算出して比較する。
【0063】
ステップS110は相関値算出工程であり、画像処理手段103が、ステップS109の比較結果としての相関を数値化する。ここで、理想形状と同じような形状であればステップS109で算出した二次元グラフの各角度における距離の差は0に近い値なので、各角度における距離の差を数値化することで理想形状との違いを比較できる。
【0064】
ここで、算出する相関値は、理想形状との違いを数値化したものであり、理想形状と同じような形状であれば相関値が小さくなる算出方法を考える。例えば、図13において、曲線の凹凸部分の振れ幅を数値化するために、距離の差の最大値と最小値を算出し、最大値と最小値の差を相関値として算出する。なお、距離の差の絶対値の最大値を相関値としてもよい。なお、図13において、各角度における距離の差のばらつきを数値化するために、例えば距離の差の分散や標準偏差、距離の差の絶対値の総和を相関値としてもよい。さらに、これらを組み合わせて相関値としてもよい。
【0065】
ステップS111は細菌判定工程であり、画像処理手段103が、ステップS110で算出した相関値が、細菌の条件を満たすかどうか判定を行う。
【0066】
細菌の判定方法の一例について、図14を用いて説明する。図14は、縦軸が、ステップS110で算出した相関値で最大値と最小値の差、横軸が、複数の領域501を対象とするため、各領域501を識別するための領域501の番号とする棒グラフで、各領域501について相関値をそれぞれ算出した値の一例を示す図である。各領域501について、ステップS110で算出した相関値は、理想形状に近ければ小さい値となる。そのため、相関値と予め用意しておいた所定値1401を比較し、所定値1401以下である場合に細菌と判定する。所定値1401より大きい場合には細菌ではないと判定する。所定値1401の決め方としては、例えば予め細菌と細菌以外についてステップS101からステップS110までを行い相関値を計測し、細菌と細菌以外について相関値の平均値を算出し、各平均値の中間値を所定値1401とする。
【0067】
次に、表示手段104の一例について詳細に説明する。
【0068】
表示手段104としては、例えばCRTモニタを用いる。表示手段104は画像処理手段103から出力された検出結果を表示する。なお、表示手段104として、タッチパネルなど任意の表示手段104を採用してもよい。
【0069】
次に、細菌検出装置100の動作の一例について説明する。
【0070】
プレート1に塗られた検体を光学手段101が蛍光観察し、蛍光している様子を撮像手段102が撮影する。撮影された画像を撮像手段02が画像処理手段103へ出力し、画像処理手段103が領域の相関値から細菌を判定する。そして、その結果を表示手段104が表示する。
【0071】
このような細菌検出装置100によれば、領域501の重心502および輪郭601から距離と角度802の曲線を算出し、正規化した曲線と理想的な形状の曲線を比較することにより、一部の形状劣化による影響を除去することができ、一部欠けたような形状でも理想形状と近い形状であれば細菌と識別することができる。
【0072】
また、ステップS107における曲線算出工程において、直線補間による二点間で補間を行う代わりに、複数の座標を用いて曲線補間を行って補間の精度を向上させることで、ノイズに左右されにくくなり、正確に判断することができる。したがって、曲線補間を行うことがより好ましい。
【0073】
また、ステップS108における曲線正規化工程において、角度802の正規化を相関値が最小となるように調整してもよい。この場合、図11(a)において、任意の角度802が0度になるように正規化する。そして、ステップS109の形状比較工程を行い、ステップS110の相関値算出工程により相関値を算出する。これを全ての角度802について行い、それぞれの角度802が0度になるように正規化したときの相関値を算出する。算出した全ての相関値について、最小の相関値を曲線の相関値とする。角度802の正規化を相関値が最小となるように調整することにより、細菌判定がノイズに左右されにくくなり、正確に判断することができる。したがって、角度802の正規化を相関値が最小となるように調整することがより好ましい。
【0074】
また、ステップS110における相関値算出工程において、前述の相関値を組合せて複数の相関値としてもよい。複数の相関値を用いる場合は、各相関値に対応した所定値1401を予め用意しておき、例えば全ての相関値が相関値に対応した各所定値1401以下である場合に細菌と判定する。各相関値に対応した所定値1401は、相関値毎に計測して平均の中間値を相関値に対応した所定値1401とする。複数の相関値を考慮することにより、細菌判定がより正確に判定することができる。したがって、複数の相関値を考慮することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、一部欠けたような形状でも理想形状と近い形状であれば識別する機能を有する細菌検査装置および細菌検査方法等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施形態における細菌検出装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態の光学手段における蛍光観察の一例を説明するための図
【図3】本発明の実施形態における画像と座標系の一例を説明するための説明図であり、(a)は本発明の実施形態における画像の各画素の位置を二次元の座標系へ拡張する場合の一例を説明するための図であり、(b)は本発明の実施形態における注目画素の中心位置と二次元座標の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の実施形態における細菌検出方法の一例を示すフローチャート
【図5】本発明の実施形態における抽出した領域と領域の重心の一例を説明するための図
【図6】本発明の実施形態における輪郭と輪郭点の一例を説明するための図
【図7】本発明の実施形態における二点間の距離の一例を説明するための図
【図8】本発明の実施形態における輪郭点における角度の一例を説明するための図
【図9】本発明の実施形態におけるアークタンジェントの一例を説明するための図であり、原点と輪郭点のなす角度の一例を説明するための図
【図10】本発明の実施形態における距離と角度の関係の一例を示す説明図であり、(a)は本発明の実施形態の輪郭点における距離と角度802の一例を示す二次元分布図であり、(b)は本発明の実施形態における図10(a)の座標間の各角度を補間した曲線の一例を示す二次元グラフである。
【図11】本発明の実施形態における距離と角度の関係の一例を示す説明図であり、(a)は本発明の実施形態における図10(b)の曲線を距離について正規化した一例を示す二次元グラフであり、(b)は本発明の実施形態における図11(a)の曲線を角度について正規化した一例を示す次元グラフである。
【図12】本発明の実施形態における理想形状と理想曲線の一例を説明するための図であり、(a)は本発明の実施形態における理想形状の一例を説明するための図、(b)は本発明の実施形態における理想曲線の一例を示す二次元グラフである。
【図13】本発明の実施形態における計測し正規化した曲線と理想曲線との差の一例を示す二次元グラフ
【図14】本発明の実施形態における細菌判定方法の一例を説明するための図
【図15】本発明の実施形態におけるアークタンジェントの一例を説明するための図であり、第1象限と第3象限の一例を説明するための図
【図16】本発明の実施形態におけるアークタンジェントの一例を説明するための図であり、第2象限と第4象限の一例を説明するための図
【図17】本発明の実施形態におけるアークタンジェントの一例を説明するための図であり、座標と角度の関係の一例を示す二次元グラフ
【符号の説明】
【0077】
1 プレート
100 細菌検出装置
101 光学手段
102 撮像手段
103 画像処理手段
104 表示手段
201 光源
202 光源201からの光
203 励起フィルタ
204 励起光
205 ダイクロイックミラー
206 対物レンズ
207 蛍光
208 吸収フィルタ
209 蛍光以外の光
301 中心位置
501 領域
502 重心
601 輪郭
602 輪郭点
701 線分
801 基準線
802 角度
1001 始点
1002 終点
1003 距離の最大値
1004 距離の最小値
1101 距離の最大値における角度
1102 図11(a)における0度の角度
1401 所定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射して検体を蛍光させる光学部と、
前記検体からの蛍光を含む画像を撮像する撮像部と、
前記画像から蛍光された領域を抽出する領域抽出部と、
前記領域の重心の位置を算出する重心位置算出部と、
前記領域の輪郭を算出する輪郭算出部と、
前記重心の位置から前記輪郭を形成する輪郭点までの距離を前記輪郭点毎に算出する距離算出部と、
前記重心の位置から前記輪郭点への方向と所定の方向とのなす角度を前記輪郭点毎に算出する角度算出部と、
前記各輪郭点における前記距離と前記角度とに基づいて、距離と角度との関係を示す曲線を算出する曲線算出部と、
前記曲線と所定の形状を有する理想曲線との距離の差を前記角度毎に算出する形状比較部と、
前記距離の差に基づいて、前記曲線と前記理想曲線との相関を示す相関値を算出する相関値算出部と、
前記相関値に基づいて、前記検体が細菌であるか否かを判定する細菌判定部と
を有する細菌判別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の細菌判別装置であって、
前記細菌判定部は、前記相関値が所定値以下である場合、前記検体が細菌であると判定する細菌判別装置。
【請求項3】
請求項1に記載の細菌判別装置であって、
前記細菌判定部は、前記相関値が所定値よりも大きい場合、前記検体が細菌以外であると判定する細菌判別装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の細菌判別装置であって、
前記曲線算出部は、前記輪郭点における前記距離と前記角度との関係を示す曲線を距離と角度について正規化し、正規化された前記曲線を算出する細菌判別装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の細菌判別装置であって、
前記相関値算出部は、前記距離の差の最大値と最小値との差、前記距離の差の絶対値の最大値、前記距離の差の分散度合い、および前記距離の差の絶対値の総和の少なくとも1つを前記相関値とする細菌判別装置。
【請求項6】
光を照射して検体を蛍光させる光学工程と、
前記検体からの蛍光を含む画像を撮像する撮像工程と、
前記画像から蛍光された領域を抽出する領域抽出工程と、
前記領域の重心の位置を算出する重心位置算出工程と、
前記領域の輪郭を算出する輪郭算出工程と、
前記重心の位置から前記輪郭を形成する輪郭点までの距離を前記輪郭点毎に算出する距離算出工程と、
前記重心の位置から前記輪郭点への方向と所定の方向とのなす角度を前記輪郭点毎に算出する角度算出工程と、
前記各輪郭点における前記距離と前記角度とに基づいて、距離と角度との関係を示す曲線を算出する曲線算出工程と、
前記曲線と所定の形状を有する理想曲線との距離の差を前記角度毎に算出する形状比較工程と、
前記距離の差を基づいて、前記曲線と理想曲線との相関を示す相関値を算出する相関値算出工程と、
前記相関値に基づいて、前記検体が細菌であるか否かを判定する細菌判定工程と
を有する細菌判別方法。
【請求項7】
請求項6に記載の細菌判別方法であって、
前記細菌判定工程において、前記相関値が所定値以下である場合、前記検体が細菌であると判定する細菌判別方法。
【請求項8】
請求項6に記載の細菌判別方法であって、
前記細菌判定工程において、前記相関値が所定値よりも大きい場合、前記検体が細菌以外であると判定する細菌判別方法。
【請求項9】
請求項6ないし8のいずれか1項に記載の細菌判別方法であって、
前記曲線算出工程において、前記輪郭点における前記距離と前記角度との関係を示す曲線を距離と角度について正規化し、正規化された前記曲線を算出する細菌判別方法。
【請求項10】
請求項6ないし9のいずれか1項に記載の細菌判別方法であって、
前記相関値算出工程において、前記距離の差の最大値と最小値との差、前記距離の差の絶対値の最大値、前記距離の差の分散度合い、および前記距離の差の絶対値の総和の少なくとも1つを前記相関値とする細菌判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−301737(P2008−301737A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150311(P2007−150311)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】