説明

細長い中空体を含有する経皮治療システム

本発明は、活性成分又は幾つかの活性成分を皮膚に貼付するための経皮治療システムに関する。細長い中空体はTTSの層の一つの中に組込まれ、ここで上記中空体は、充填媒体又は幾つかの充填媒体を含有する。本発明は、前記タイプのシステムの調製及び使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの活性物質若しくは幾つかの活性物質、又は治療的に有効なそれらの塩を皮膚上に貼付するための経皮治療システム(TTS)であって、ここで充填剤又は幾つかの充填剤を有する細長い中空体がTTS中に組込まれている経皮治療システムに関する。本発明は、さらに該システムの調製及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
充填された中空糸は、切断又は研磨の道具における貯蔵潤滑剤として使用され、又は液体接着剤を放出することによってプラスチックにおけるヘアラインクラック(髪の毛のように細いひび)を取除くために使用される。今日では、細長い中空体の物理的性質を特定の用途に適合させることが技術的に可能である。その結果、その性質の範囲は、例えば、ガラス状の脆弱なものからゴム状弾性を有する柔軟なものまで、気密性のものから高度に透過性のものまで広がっている。細長い中空体の外径は10nm未満(ナノチューブ)から数100μm(中空糸)にまで広がり得る。
【0003】
中空糸は、従来技術でTTSにおいて既に使用されている。このように、特許文献1は、半径方向に配列された穴を持つ中空糸を有する感圧接着剤フィルムを含む製剤を開示している。この場合、活性物質は中空糸自身中に組込むことができるか、あるいは、中空糸は空で、活性物質が拡散によって中空糸の層を通過して皮膚の表面に到達する。この適用において、中空糸は制御膜の機能をもって使用され、又は中空糸は活性物質の緩慢で制御された放出をもたらす。
【0004】
特許文献2は、ニコチンと低分子量物質の混合物で満たされた、開口穴を有する中空糸を用いてニコチンを放出するためのニコチンパッチを開示している。これは、TTSからの活性物質の放出を遅くする。
【0005】
特許文献3では、開口穴を有する中空糸の組織状複合体が、経皮水分損失を通して生じるTTS中の水分の蓄積を減少させ、その結果として使用期間中のシステムの安定性を改良するための、TTSの非閉塞性裏地として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP0227836A1号公報
【特許文献2】特開2004−168734号公報
【特許文献3】EP0413034A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によって解決しようとする課題は、単純な構造故に、一方では、TTSを安全に保管でき、そしてシステムの不活性化又は活性化を保管中にすでに発生しないことを確実にする経皮治療システム(TTS)を提供することであった。一方、本発明は、−実施態様次第で−、任意の時点(使用前、使用後又は使用中)で意図的に(積極的に)又は自動的に(受動的に)、システムの活性化又は失活を可能ならしめるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1に記載されたようなTTSによって見事に解決される。放射エネルギー又は他のエネルギーの供給によって中空体の構造に変化が生まれ、そのことによって1つ又は複数の充填剤が中空体から放出される。エネルギーは機械的、熱的、電気的、磁気的、電磁気的又は化学的エネルギーとして供給できる。これは中空体の格別な性質に依存する。好ましくはエネルギーが圧力、熱、放射線、電流又は音の形態で供給される。
【発明の効果】
【0009】
例えば、脆弱な中空体は、曲げ、拡大、伸張、捩り、又は折りたたみによる機械的な応力を受けて、不可逆的に変形させられる。TTSの中空体の構造の破壊又は破裂を通して、1つの充填剤又は幾つかの充填剤が、細長い中空体から放出され、そして−格別な実施態様に依存するが−種々の方法で反応できる。機械的負荷の程度、従って中空チューブの破壊又は破裂の開始は、格別な貼付及び中空チューブの材料に依存する。従って、例えばTTSを活性化するために、TTSを使用前に積極的に折りたたむことが可能である。別の実施態様において、TTSを皮膚から取除く際に、少なくとも自動的に、この貼付のために特に使用された中空チューブが破壊するような厳しい曲げがあり、そして放出された充填剤、例えば未使用の活性物質、が不活化される。DIN−EN28510に従って、例えば皮膚又は基材から180度の角度で、好ましくは90度を超える角度でTTSが引きはがされた時に、中空糸が破壊される。同様に、皮膚上での使用中に、指又は他の物体でTTS上を押しつけることによって、活性化が起こるように(感圧)破壊が達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
上述の原理は柔軟な中空チューブの場合においては、有効でない。その代わりに、他のエネルギー形態、例えば音、熱、放射線等が、中空体を破壊、破裂、分解又は穿孔するための効果的な手段として使用できる。好ましい実施態様において、中空体が破裂するように、TTSに熱が供給されると拡張するさらなる薬剤が中空体中に組込まれる。別の好ましい実施態様において、その材料の性質のために、本体温度より高い温度で中空体が分解し又は穿孔される。異なる材料特性を有する脆弱な中空チューブと柔軟な中空チューブの組合せも好ましい。このようにして、中空体中に含有される活性物質が、例えば定められた時点で活性化できる。
【0011】
好ましい実施態様において、充填剤は少なくとも一つの活性物質を含み、そして1つ又は複数の活性物質の放出は、中空体の破壊、分解又は穿孔によって起こる。中空チューブによる、マトリックス中の活性物質及び/又は添加剤の分離によって、多くの利点が提供され、それらについて実施例に基づいて以下により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。これらの実施例は単に本発明を説明する目的を有するものである。
【0012】
経皮治療システム(TTS)は当業者によって基本的に公知である。通常、TTSは、活性物質に対して不透過性である裏打部材、活性物質を含有する一つ又はそれ以上の層、場合により、活性物質の放出を制御する膜、及び取り外し可能な保護層を含む。もし、活性物質を含む層がマトリックス層の形態であるならば、それは自己接着性の形態のものであり得るか、又は皮膚に隣接する側上に感圧接着剤層がさらに備え得る。活性物質のリザーバー(reservoir)の場合、充填剤は固体ポリマーマトリックス中の溶液、懸濁液、ゲル又は分散体の形態であり得る。次いで活性物質の放出を制御する膜が、皮膚と活性物質のリザーバー間に挿入され、そしてこの膜には、皮膚上に固定するために、感圧接着剤層を皮膚に隣接する側上にまた備える。マイクロカプセル化された形態で活性物質を含有するマイクロリザーバー(microreservoir)システムも好適である。本発明の意味における活性物質を含有する層は、少なくとも一つの又はそれ以上の活性物質及び充填剤を有する細長い中空体を含み、そして1つ又は複数の活性物質は中空体の内側及び外側の両方に存在し得る。充填剤は気体、液体、半固体又は固体の形態である。本システムは、同じ又は異なる活性物質を種々の層中に有する多層システムの形態であり得るか、又は異なる濃度でもあり得る。皮膚上に貼付した後、得られたTTSが透明であるか又は少なくとも半透明である本発明の活性物質のパッチが好ましい。
【0013】
裏打部材層は、活性物質の望ましくない漏れを防ぐために、TTS中に含有される活性物質に対して不透過性でなければならない。適切な裏打部材の材料は、特に好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルであり、それらは特に強い。更に、例えばポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル、酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース誘導体、又は種々のフィルムの組合せなど、ほとんど任意の他の適合性プラスチックが適切である。アルミニウムとポリエチレンテレフタレートのようなプラスチックとの複合積層体がしばしば使用される。これらの複合積層体の利点は、アルミニウム箔が安価に製造でき、そしてほとんど全ての薬学的に活性な物質に対して不透過性という点である。また、アルミニウム箔は不透明であるため、特に光感受性活性物質の場合に、光からの確実な保護という利点を与えてくれる。
【0014】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)及びシリコーン類から製造される、規定の孔サイズを有する微孔性ポリマーフィルムが、制御膜として使用できる。これらのポリマーフィルムは、それらが活性物質の調製において含有される物質に対して抵抗性がある場合、適切である。
【0015】
適切な接着剤は、いわゆる感圧接着剤(PSA)と呼ばれる、短時間の軽い加圧後に皮膚に付着する高粘性の物質である。それらは高い粘着力及び接着力を有する。ポリ(メタ)アクリレート類に基づく、ポリイソブチレン類に基づく、そしてシリコーン類に基づく感圧接着剤が使用される。感圧接着剤の層は1つ又は複数の活性物質を含有していてもよく、又は活性物質がなくてもよい。本発明の意味において、感圧接着剤の層は活性物質を含有する層であり得、従って細長い中空体も含む。従って、1つ又は複数の活性物質はこの層中にのみ、又は細長い中空体中にのみ存在し得る。しかしながら、活性物質はこの層中及び細長い中空体中の両方にも存在し得る。
【0016】
感圧接着剤の層、及び/又は場合により存在する本発明のTTSのリザーバー又はマトリックス層は、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及びそれらのエステル、ポリアクリレート類、イソブチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル、天然及び/又は合成ゴム、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム又はネオプレンゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などのスチレン−ジエン共重合体に基づく感圧接着剤ポリマー、及びホットメルト接着剤、又は感圧接着剤シリコーンポリマー類又はポリシロキサン類に基づいて製造されるものを含むグループから選ばれる材料を含み得る。
【0017】
ポリアクリレート類は、一般に、種々の単量体(アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、及びメタクリル酸エステルを含むグループからの少なくとも一つの単量体)、及び特にそれらの混合物からの単量体を重合することによって製造される。ある場合には水でもよいが、好ましくは有機溶媒が、適切なポリアクリレートの製造のための重合中の溶媒として使用される。重合において使用される単量体の構造に依存するが、官能基を含有し得るポリアクリレート類が得られる。官能基としてOH基(ヒドロキシル基)を有するポリアクリレート類及びCOOH基(カルボキシル基)を有するポリアクリレート類が広く使用されている。
【0018】
シリコーン類、それ自身が感圧接着剤であり得るポリシロキサン類又はシリコーン類は適切なシリコーンポリマー類として適用される。シリコーン感圧接着剤とは、例えばポリジメチルシロキサン構造、又はポリジメチルジフェニルシロキサン構造に基づく感圧接着剤を意味する。特に、市販のシリコーン感圧接着剤、例えばダウコーニング社製のBIO-PSAが適切である。
【0019】
保護層は、貯蔵中のパッチの感圧接着剤の皮膚に隣接する層を保護するために機能し、そして使用直前に除去される。
【0020】
一般的には、これは、接着剤を備えたフィルム、例えば片側上をシリコーン処理したポリエチレンテレフタレート(PET)のポリエステルフィルムを含む。
【0021】
経皮投与又は局所適用に適切な全ての活性物質は、活性物質と考えてよい。これらには、本発明の意味において、化学物質、医薬品、着臭剤、及びフェロモンが挙げられる。1つ又は複数の活性物質はまた、それらの薬理学的に活性な塩の形態で又はプロドラッグとしてもあり得る。プロドラッグは、代謝されていないとき薬学的に不活性な又は僅かに活性な物質であり、そして体内の代謝後にのみ十分に活性な物質に変換される。
【0022】
格別な実施態様において、感受性の及び/又は高度に揮発性の活性物質が細長い中空体中に含有される。その結果、拡散過程による使用前の活性物質のロスの危険性が防がれ、又は少なくとも大きく低減される。既に記載したように、活性物質は種々の層中に存在していてもよく、細長い中空体はそれらの層の少なくとも一つの中に含有される。活性物質は好ましくは、鎮痛剤の群、例えば麻薬からの活性物質である。好ましくは、モルヒネ誘導体、ヘロイン及びブプレノルフィン又はフェンタニル、スフェンタニル及びアルフェンタニル、又はそれらの誘導体が挙げられる。感受性の及び/又は、高度に揮発性の高い活性物質、好ましくは例えばニコチン、ニトログリセリン、サリチル酸、スコポラミン、ベンザトロピン、ブプロピオン、シクロペンタミン・カプサイシン(dapsaicin)、フェンフルラミン、フェンタニル、シクロペンタミン、エフェドリン、セレギリン、スフェンタニル、オキシブチニン、ラサギリン、メカミラミン、メマンチン、サリチル酸メチル、ベンラファキシンなども使用される。
【0023】
活性物質を含有する層は、1つ又は複数の活性物質及び細長い中空体に加えて、基本的に当業者によって公知の、可塑剤、粘着付与剤、可溶化剤、安定剤、充填剤、担体、透過促進剤、例えば脂肪アルコール、ポリオール脂肪酸エステル、ポリアルコール類、アゾン、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及びテルペン類のような他の添加剤をさらに含有することができる。本発明における他の好ましい添加剤は、例えばシリコーン油、水素化樹脂酸のグリセリンエステル、ヒドロアビエチン−アルコール−樹脂エステル、ヒドロアビエチン−酸−樹脂エステル、松脂の水素化メチルエステル、部分的に水素化した松脂のエステル、松脂のエステル、コロホニー、フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、石油樹脂、キシレン樹脂である。あるいは、貯蔵中の活性物質を安定化させるため、又は分解を最少化させるため、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸エステル、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、パルミチン酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビルのような老化防止剤がさらに使うことができる。活性物質の製剤は、放出制御機能を何も有しない増粘性添加剤をさらに含有することができる。好ましくは、増粘性添加剤は、微粉化した二酸化ケイ素、例えばAerosil-R974(登録商標)、金属酸化物、酸化チタン、酸化亜鉛、シリケート、ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウム、タルク、ステアレート、ステアリン酸亜鉛、ポリエチレン、ポリスチレン−不溶性ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、例えばCarbopol934P(登録商標)、鉱油、羊毛脂及び高分子量ポリエチレングリコールを含むグループから選ばれる。好ましいポリエチレングリコールの例はCarbowax1000(登録商標)である。適切な溶媒及び場合により更なる添加剤を添加することによって、1つ又は複数の活性物質の調製の粘度調節が可能となる。原則として、全ての一般的な有機溶媒、例えばエタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、石油エーテル、ガソリン、ケトン類、アセトン、グリセリン、DEET(N,N−ジエチル−3−メチルベンズアミド)、THF及び多くの油類、例えばシリコーン油、パラフィン、トリグリセリド類、中性油、又は植物油類が溶媒として適する。ポリマー中での活性物質のよりよい溶解のために、経皮治療システムは一つ又はそれ以上の溶媒を含有し得る。可溶性ポリビニルピロリドン、コリドン(Kollidon)−酢酸ビニル、プロピレングリコール、オレイン酸エチル、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、トランスクトール(transcutol)、プロピレングリコールモノカプリレート、ソルケタール(solketal)、オレイン酸、1−メチルピロリドン、グリセリン、乳酸ラウリル、トリアセチン、グリセリンモノオレエート、ソルビタンモノオレエート及びソルビタントリオレエートが、このために考え得る。プロピレングリコール、ブタンジオール及び乳酸ラウリルが、特に好ましい。
【0024】
本題の意味において、細長い中空体は、その長さがその幅よりも大きい物体を意味する。一般的には、それらは2、3μmの長さを有する。しかしながら、20センチメーターまでの中空体が既に入手可能である。フロークッション、パッド又は湿布の形態で中空体が使用される場合に、これらの製品は、数メーターの長さまでにもなり得る。中空体の外径は、1nmから1000μm、好ましくは10nmから500μm、特に好ましくは10nmから100μm、そして格別好ましくは10nmから50μmである。例えば、中空糸、ナノファイバー、ナノチューブ、バッキーチューブ(buckytubes)、ナノスケールのカーボンチューブ、カーボンナノチューブ(CNTs)が使用される。
【0025】
中空体は、壁が閉環又は螺旋構造を形成している、単一壁又は多重壁であり得、ここで断面は中空体の長さに亘って大部分で同じであり、そして好ましくは円形である。壁厚は製造方法に依存し、そして好ましくは外径の5から10%の範囲内である。好ましくは、それらには孔が備わっておらず、従って充填剤に対して不透過性と考え得る。一つ又はそれ以上の充填剤、例えば単一気体又は種々の気体の混合物、単一液体又はいくつかの液体(溶液、懸濁液、乳液)、単一固体又はいくつかの固体又は半固体の製剤(ペースト、ゲル、軟膏、クリーム等)が中空体中に供される。好ましい実施態様において、その直径は長さに対して極く極く小さいため、従って不透過性に関しては、中空体の端部が開いているかどうかは重要でない。
【0026】
好ましい中空体は、実施態様次第であるが、亀裂が成長しそして中空体が最終的に破壊する前に、所定の程度に、可塑的に変形されるだけであり得る。従ってそれらは脆性を有する。それらは、中空体の壁を形成する材料の組成を介して、例えばTTSを皮膚から引き剥がす場合、又は指若しくは皮膚上にあるTTS上のある他の物体の圧力を通じて、調節できる所定の曲げ半径又は角度で破壊する。このようにして、(感圧)破壊が達成され、そしてシステムの活性化又は非活性化が開始される。しかしながら、その他の可能性、例えば音、熱、放射線等も、中空体の崩壊のための効果的な手段として使用できる。そのような実施態様において、中空糸の機械的性質は、ガラス状の脆弱なものからゴム状弾性的なものまでの全範囲にあると考えられ得る。
【0027】
材料の選択については何らの制限もない。通常、それらは炭素、金属、金属酸化物又はポリマー配合物又はそれらの組合せから成る。ガラス状の成分がポリマー成分と組合される新規材料グループ、ORMOCER(登録商標)、の使用が特に好ましい。この複合材料は、分子の特殊な有機架橋性基が組込まれている無機ケイ素−酸素ネットワークから成る。無機のガラス状構造体は材料の紡糸を可能にする。有機セグメントは、繊維の性質の問題ない修飾を確実にできるようにする。従ってORMOCER(登録商標)中空糸の特性のスペクトルがガラス状の脆弱なものからゴム状弾性を有する柔軟なものにまで、そして気密性から高透過性にまで広がる。格別な実施態様において、1つ又は複数の活性物質を含有する層は、脆弱中空体と同様、さらに柔軟中空体も含む。これらは、その内容物を放出するよう、音、熱、又は放射線をトリガー原理として用いて活性化できる。
【0028】
中空糸の製造は当業者に公知の技術、例えば樹脂が圧縮空気によって強制的に中空紡糸ノズルを通して押し出される紡糸プロセスによって行われる。次いで、繊維は紫外線照射を用いてキュアされる。他のプロセスは、例えばポリマー溶液又は融解物が押出されるノズルに高電圧がかけられる静電紡糸;中空体が形成された後、鋳型を選択的に除去する鋳型繊維の被覆に基づくTUFTプロセス(Tubes by Fiber Template);又は多孔性鋳型中の孔の壁がポリマー溶液で濡らされる又は溶融されるWASTEプロセス(Wetting Assisted Templating)である。この場合、このようにして得られた中空体は、中空体の内壁上又は外壁上への官能基の選択的導入によって更に官能化され得る。
・このように製造された細長い中空体は、TTS中にただ単に不定形素材として組込まれ得るか、又は全体の束として、糸又はマット内に処理され得て、次いで平らな層として、フィルムとして、積層体またはファブリック、織られたシート状パッドとして、例えば平らな形状の、例えばリボン形態又はロール形態の、充填された細長い中空体から作られ得る織られた材料として使用され、そして細長い中空体から充填剤が漏れることなく、複合シーリング及び/又はパンチングプロセスにおいて、使用しようとする外形が得られる。
・充填された細長い中空体が、例えばポリウレタンのようなプラスチックのキャリア媒体に埋めこまれる、フィルム形状の材料として。
・0.1と200cm2の間の規定の寸法を有する、充填された細長い中空体(パッド)の平らな層として。
【0029】
当業者によって十分によく知られているTTS製造の多様な技術は、中空体を前記の平らな層の形態で組込むために利用できる。充填された細長い中空体は、以下の方法によって、不定形素材の形態でTTS中に埋め込まれる:
・被覆プロセス前の被覆配合物中への直接封入
・被覆プロセス前の活性物質リザーバー中への直接封入
・乾燥完了前の接着剤マトリックス上への不定形素材の貼り付け
・乾燥された接着剤マトリックス上への不定形素材の貼り付け
【0030】
積層体が裏打部材で覆われる前に、中空体の層は一つ又はそれ以上のさらなる層で被覆できる。
【0031】
最も単純な場合においては、充填剤は、細長い中空体中に含有される活性物質である。TTSの折りたたみ又は捩りによって、中空体が破られ、そして活性物質が中空体から放出される。この構造によって信頼できる貯蔵が確かなものとなる。しかしながら、放出は中空体の分解又は穿孔によってもなされ得るが、それは中空体の性質に依存する。供されたTTSの構造で、実際にシステムが使用前に格別に活性化される。この実施態様は、感受性の又は高度に揮発性の活性物質、特にニコチンである場合、又はシステムの他の成分との非適合性である場合に、格別有利である。前記活性物質の例は特にニコチン、ニトログリセリン、サリチル酸、スコポラミン、ベンザトロピン、フェンフルラミン、シクロペンタミン、エフェドリン、セレギリン、ラサギリン、メカミラミン、メマンチンその他である。
【0032】
通常、悪用の場合、身に付けられたTTSを抽出することによって鎮痛性活性物質に到達しようとする試みがなされる。格別な実施態様において、本発明の目的はオピオイドを含有する鎮痛性のパッチの悪用に対する可能性を著しく低下させることである。この実施態様において、活性物質はマトリックス中に含有され、そして中空体は、接触で活性物質を破壊するかまたは不活性化する物質を充填剤として含有する。ここでTTSが皮膚から除去されると、TTSの引き剥がし及びそれに伴う高レベルの機械的応力(曲げ)によって、中空体の破壊を引き起こす。物質は放出されそして活性物質と接触することになる。これは、例えば酸化プロセスによって不可逆的に破壊されるか又はアンタゴニストの放出によって不活化される。適切な酸化剤は、特に例えば過マンガン酸カリウムのような過マンガン酸塩、二酸化マンガン、二酸化鉛、四酢酸鉛、セリウム(IV)塩、クロム酸塩、クロム酸、四酸化オスミウム、硝酸、亜硝酸カリウムなどの亜硝酸塩、二酸化セレン、過酸化水素及びその他ペルオキソ化合物、臭素、塩素、次亜ハロゲン酸塩、又は硫黄などの無機試薬;好ましくは、過マンガン酸カリウム、過酸化水素及び亜硝酸カリウム;ジメチルスルホキシド、N−ブロモスクシンイミド、キノン類などの有機酸化剤、超原子価ヨウ素化合物、過酸及び過エステル、並びに酵素である。ある活性物質に対して、酸化剤は、好ましくは活性物質とのその化学反応性に基づいて選択される。従って、活性物質の不正な単離が効果的に防がれる。活性物質は、好ましくは鎮痛剤グループ、例えば麻薬からの活性物質である。好ましくはモルヒネ誘導体、ヘロイン及びブプレノルフィン、又はフェンタニル及びその誘導体であるサフェンタニル及びアルフェンタニルを挙げられる。基本的に、活性物質の組合せも使用でき、そのためのTTSを介した貼付は適切な投与形態である。
【0033】
別の好ましい実施態様において、1つ又は複数の活性物質を含有するマトリックス層は少なくとも二つの活性物質を有し、活性物質の少なくとも一つは細長い中空体中にある。この分割は、互いに適合性でない、そして使用の直前まで接触状態になるべきではない少なくとも二つの活性物質が存在する場合に有利なものとなる。この構造に由来する格別に有利な点は、中空体の破壊、分解又は穿孔が、所定の時間間隔後まで、例えば6から36又は168時間後まで好ましくは起こらず、次いで第一の時間に対して遅れた時間で活性物質が放出されるという点である。従って、繰返して使用するための同じTTSを同時に使用する、二度貼付用の二相TTSが提供される。第一の着用期間の後、TTSの第二相を、皮膚上での(ユーザーによる)中空体を破壊することによって、又はTTSの除去した後及びTTSの再貼付した後に、開始させる。
【0034】
別の好ましい実施態様において、1つ又は複数の活性物質を含有する層中に、その薬理学的に活性な塩の一つの形態で少なくとも一つの活性物質がある。細長い中空体中に、充填剤として、塩の形態から活性物質を遊離し、その結果それを薬理学的に活性な又はより活性な形態に変換する塩基性の添加剤がある。従って本発明のこの好ましい実施態様は、TTSの使用前の塩基性添加剤による遊離による活性物質ベースのインサイチュ製造である。逆の配置(充填剤として塩の形態での活性物質が細長い中空体中にあり、そして塩基性の添加剤が層中にある)も本発明の好ましい実施態様である。
【0035】
別の格別に好ましい実施態様において、中空体の壁は半透性であるように設計される。従って、皮膚上の水分の形態での水は、TTSの使用期間中に中空体内に吸収される。溶媒の拡散によって、半透性膜を通って水が中空体内に供給されるため、中空体が破裂して充填剤を放出する程度に中空体が拡張を引起すことになる。また、半透性的に充填されていない中空体もTTS中に存在し得て、そのことが、使用期間中の皮膚からの水の経表皮水分衰失による、TTSの如何なる接着強度低下又は活性物質の劣化も防ぎ、又は少なくとも減少させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数の活性物質に対して不透過性である裏打部材、1つ又は複数の活性物質を含む層又は1つ又は複数の活性物質を含む幾つかの層、場合により取り外し可能な保護層を含み、これと共に1つ又は複数の活性物質を含む層の少なくとも一つが、一つの充填剤又は幾つかの充填剤を備えた、細長い中空体を含む経皮治療システムであって、1つ又は複数の充填剤を、中空体の構造を変えることによって中空体から放出し得ることを特徴とする経皮治療システム。
【請求項2】
中空体の構造における変化が、機械的、熱的、電気的、磁気的、電磁気的又は化学的エネルギーを供給することによってもたらされることを特徴とする、請求項1に記載の経皮治療システム。
【請求項3】
中空体の構造における変化が、圧力、熱、放射線、電流又は音によって、好ましくは圧力又は熱によって引起されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の経皮治療システム。
【請求項4】
充填剤が、少なくとも一つの活性物質を含み、そして1つ又は複数の活性物質の放出が、中空体の破壊、分解又は穿孔によって生じさせることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項5】
1つ又は複数の活性物質を含む層が少なくとも二つの活性物質を含み、ここで活性物質の少なくとも一つが細長い中空体中にあり、そして中空体を破壊、分解又は穿孔によって、好ましくは所定の時間間隔後に放出されることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項6】
中空体中に含有される充填剤が、活性物質又は活性物質を不活化する性質を有し、そして好ましくはアンタゴニストであることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項7】
中空体中に含有される充填剤が、1つ又は複数の活性物質を破壊する性質を有し、そして好ましくは酸化剤であることを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項8】
充填剤が、皮膚から取り外される間のTTSの機械的応力によって、好ましくは中空体の破壊の結果として中空体から放出されるだけであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の経皮治療システム。
【請求項9】
1つ又は複数の活性物質を含有する層が、少なくとも一つの活性物質を、治療的に有効な塩の一つの形態で含有し、そして活性物質を塩の形態から遊離させる塩基性の添加剤が中空体中に含有されていることを特徴とする、請求項1〜8の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項10】
1つ又は複数の活性物質を含有する層が、活性物質を塩の形態から遊離させる塩基性の添加剤を含有し、これと共にその治療的に有効な塩の一つの形態で少なくとも一つの活性物質が中空体中にあることを特徴とする、請求項1〜9の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項11】
中空体の壁が半透性であるように設計され、そして充填剤が、好ましくは中空体への水の供給に起因する中空体の破壊を通じて放出されることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項12】
中空体の外径が1nmから1000μm、好ましくは10nmから500μm、特に好ましくは10nmから100μm、そして格別好ましくは10nmから50μmであることを特徴とする、請求項1〜11の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項13】
中空体が脆弱で及び/又は柔軟であるように設計されていることを特徴とする、請求項1〜12の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項14】
中空体がORMOCER(登録商標)中空糸製であることを特徴とする、請求項1〜13の何れか1項に記載の経皮治療システム。
【請求項15】
活性物質を含有する層が、皮膚に隣接する側上に感圧接着剤層をさらに有することを特徴とする、請求項1〜14の何れか1項に記載の経皮治療システム。

【公表番号】特表2010−536898(P2010−536898A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522217(P2010−522217)
【出願日】平成20年8月16日(2008.8.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006742
【国際公開番号】WO2009/030351
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】