説明

組換え生物及び組換え生物により作られるタンパク質

【課題】優れた物性を有するタンパク質を作る組換え生物、及びその組換え生物により作られる物性の優れたタンパク質を提供する。
【解決手段】特定の塩基配列を有し、ナガコガネグモの牽引糸タンパク質をコードする核酸と、該核酸がコードし、組換え生物(カイコ)によって作られる牽引糸タンパク質。また、組換えカイコによって作られる絹糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え生物及び組換え生物により作られるタンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた強度を有する天然繊維として、クモの糸が注目されている。しかし、クモは、共食いをするため集団飼育には適さず、1匹のクモから得られる糸の量はわずかである。しかも、クモは目的に応じて多種類の糸を使い分けるため、クモ糸の大量生産は困難である。
【0003】
そこで、遺伝子組み換え技術を用いて、クモ以外の生物に、クモ糸タンパク質をコードする遺伝子を導入し、クモ糸を作らせる試みがなされている。例えば、遺伝子組換えヤギにクモ糸タンパク質を作らせ、ヤギの乳中からクモ糸タンパク質を得る方法が開示されている(特許文献1)。しかし、上記方法による場合、クモ糸タンパク質を抽出、精製し、人工的に紡糸する必要があり、手間やコスト、溶媒による環境への負荷等の点で問題がある。
【0004】
上記問題を解決するため、カイコに、クモ糸タンパク質をコードする遺伝子を導入し、クモ糸タンパク質を作らせる試みがなされている(特許文献2)。組換えカイコによれば、クモ糸タンパク質が絹糸として吐糸されるため、上記抽出、精製、紡糸等の処理が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002−506642号公報
【特許文献2】国際公開第2005/068495号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の組換えカイコにより作られる絹糸の物性は、本来のクモ糸の物性には遠く及ばず、強度が不十分なものであった。
【0007】
そこで、本発明は、優れた物性を有するタンパク質を作る組換え生物、及びその組換え生物により作られる物性の優れたタンパク質を提供することを目的とする。また、十分に優れた強度を有する絹糸を作る組換えカイコ、及びその組換えカイコにより作られる、十分に優れた強度を有する絹糸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、被組換え生物にナガコガネグモの遺伝子を導入した場合に、得られるタンパク質の物性が優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(i)〜(iv)のいずれかの核酸が導入された組換え生物、及び、上記組換え生物により作られるタンパク質に関する。
(i)配列番号1の塩基配列を有する核酸
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(iii)上記(i)の核酸と90%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸
(iv)上記(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、牽引糸タンパク質をコードする核酸
【0010】
上記特定の核酸を導入することにより、組換え生物が作るタンパク質は、クモタンパク質を多く含むものとなり、その結果、強度などの物性が優れたものとなる。
【0011】
特に、本発明は、上記(i)〜(iv)のいずれかの核酸が導入された組換えカイコ、及び、上記組換えカイコにより作られる絹糸に関する。上記特定の核酸をカイコに導入することにより、組換えカイコが作る絹糸は、クモタンパク質を多く含むものとなり、その結果、十分な強度を有するものとなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた物性を有するタンパク質を作る組換え生物、及びその組換え生物により作られる物性の優れたタンパク質を提供することが可能となる。また、十分に優れた強度を有する絹糸を作る組換えカイコ、及びその組換えカイコにより作られる、十分に優れた強度を有する絹糸を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】遺伝子組換え用ベクタープラスミドの構造を示す模式図である。
【図2】クモ遺伝子発現カセットが挿入された位置の右側のカイコゲノム配列を示す図である。
【図3】遺伝子組換えカイコが作製した絹糸のタンパク質をSDS−PAGEで分離した結果を示す図である。
【図4】組換えカイコ(A)と非組換えカイコ(B)の絹糸の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0015】
本発明は、以下の(i)〜(iv)のいずれかの核酸が導入された組換え生物、及び、上記組換え生物により作られるタンパク質に関する。
(i)配列番号1の塩基配列を有する核酸
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(iii)上記(i)の核酸と90%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸
(iv)上記(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、牽引糸タンパク質をコードする核酸
【0016】
特に、本発明は、上記(i)〜(iv)のいずれかの核酸が導入された組換えカイコ、及び、上記組換えカイコにより作られる絹糸に関する。
【0017】
配列番号1の塩基配列を有する核酸は、コガネグモ属ナガコガネグモ(Argiope bruennichi)において、牽引糸(又は縦糸)タンパク質の主成分であるMaSp1(大瓶状腺スピドロイン1)タンパク質をコードする核酸であるが、配列番号1の塩基配列を有するものであれば、人工合成により得たものでもよく、ゲノムライブラリー又はcDNAライブラリーから得たものでもよく、これらのものをPCRで増幅したものや制限酵素で切り出したものでもよい。
【0018】
配列番号2のアミノ酸配列は、ナガコガネグモのMaSp1タンパク質が有するアミノ酸配列である。
【0019】
カイコに導入する核酸は、牽引糸タンパク質をコードするものであれば、配列番号1の塩基配列を有する核酸と90%以上の配列同一性を有する核酸(iii)であってもよい。上記配列同一性は90%以上であればよいが、95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましい。
【0020】
また、カイコに導入する核酸は、牽引糸タンパク質をコードするものであれば、配列番号1の塩基配列を有する核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸(iv)であってもよい。ここで、核酸の「相補鎖」とは、核酸の塩基間の水素結合に基づいて対合する核酸配列(例えば、Aに対するT、Gに対するC)をいう。また、「ハイブリダイズ」とは、上記相補鎖間で起こる相補的結合、又は一本鎖核酸分子間の塩基対相互作用の形成を意味する。
【0021】
上記「ストリンジェントな条件」とは、標的配列に対して相同性を有するヌクレオチド鎖の相補鎖が標的配列に優先的にハイブリダイズし、そして相同性を有さないヌクレオチド鎖の相補鎖が実質的にハイブリダイズしない条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、そして種々の状況で異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHでの特定の配列についての熱融解温度(T)より約5℃低く選択される。Tは、規定されたイオン強度、pH、および核酸濃度下で、標的配列に相補的なヌクレオチドの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。「ストリンジェントな条件」は配列依存的であり、そして種々の環境パラメーターによって異なる。核酸のハイブリダイゼーションの一般的な指針は、Tijssen(Tijssen(1993)、Laboratory Technniques In Biochemistry And Molecular Biology−Hybridization With Nucleic Acid Probes Part I、第2章「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay」、Elsevier,New York)に見出される。
【0022】
代表的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0M Na未満であり、代表的には、pH7.0〜8.3で約0.01〜1.0MのNa濃度(または他の塩)であり、そして温度は、短いヌクレオチド(例えば、10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、そして長いヌクレオチド(例えば、50ヌクレオチドより長い)については少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成され得る。本明細書におけるストリンジェントな条件として、50%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS(37℃)の緩衝溶液中でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSCで60℃での洗浄が挙げられる。
【0023】
本明細書において、「組換え生物」とは、遺伝子組換えにより外来遺伝子が染色体に導入され、形質転換された生物を示す。形質転換される対象となる被組換え生物としては、特に制限はなく、昆虫、動物、植物、微生物等を用いることができるが、昆虫を用いることが好ましい。好適な昆虫としては、カイコ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(てんさん)(Antheraea yamamai)、柞蚕(さくさん)(Antheraea pernyi)等が挙げられる。なかでも、カイコガ科に属するカイコ、クワコ等が好適に用いられ、特に、カイコを用いることが好ましい。
【0024】
本明細書において、「カイコ」とは、カイコガ属カイコ(Bombyx mori)をいう。カイコは、実験用の品種であっても、実用商品化された実用品種であってもよい。また、「組換えカイコ」とは、遺伝子組換えにより外来遺伝子がカイコ染色体に導入され、形質転換されたカイコを示す。本実施形態において、遺伝子組み換えはトランスポゾンを用いる方法により行うが、外来遺伝子をカイコに導入できる方法であれば制限はなく、エレクトロポレーション等の他の方法によって遺伝子組み換えを行ってもよい。
【0025】
本明細書において、「絹糸」とは、カイコ、クワコ、天蚕、柞蚕等により吐糸される繊維であり、繭を構成し、フィブロインタンパク質を主成分とするものである。フィブロインタンパク質は、大小2つのサブユニット(H鎖及びL鎖)からなる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0027】
(クモ遺伝子)
配列番号1の塩基配列を有する核酸を含むベクターを利用し、上記核酸の両端にマッチするプライマーを設計し、PCR法によりクモ遺伝子を取得した。プライマーには、次の遺伝子操作をするために、あらかじめ適当な制限酵素サイトを設けた。具体的には、フォワードプライマーとしてMaSp1FW(5’−CGACTCACTATAGGGAATTCCTTAACTAGTGGAGCAGCC−3’)(配列番号3)を用い、リバースプライマーとしてMaSp1RV(5’−GACAATCCGTATACCAAGCTTTCTCTGCTAGCTAG−3’)(配列番号4)を用いた。
【0028】
(カイコフィブロインH鎖遺伝子プロモーター配列)
カイコフィブロインH鎖遺伝子プロモーター配列は、同遺伝子の配列(GeneBank登録番号AF226688)に基づいて設計したプライマーを用い、通常のカイコゲノムDNAをテンプレートとし、PCR法により取得した。具体的には、フォワードプライマーとして制限酵素HindIIIサイトを含むPfibH5’(5’−AAGCTTGTTGTACAAAACTGCC−3’)(配列番号5)を用い、リバースプライマーとしてSpeIサイトを含むPfibH3’(5’−TGCAGCACTAGTGCTGAAATCGCT−3’)(配列番号6)を用いた。
【0029】
(カイコフィブロインH鎖遺伝子のC末端部分配列)
カイコフィブロインH鎖遺伝子のC末端部分配列は、同遺伝子の配列(GeneBank登録番号AF226688)に基づいて設計したプライマーを用い、通常のカイコゲノムDNAをテンプレートとし、PCR法により取得した。具体的には、フォワードプライマーとして、NheIサイトを含むLBS−FW(5’−CTAGCTAGCAGTTACGGAGCTGGCAGGG−3’)(配列番号7)を用い、リバースプライマーとして、BamHIサイトを含むLBS−RV(5’−CGGGATCCTAGTACATTCAAATAAAATGCATAC−3’)(配列番号8)を用いた。
【0030】
(遺伝子組換用ベクタープラスミドの作製)
上記カイコフィブロインH鎖プロモーター配列(FP)、クモ遺伝子配列(MASP)及びカイコフィブロインH鎖遺伝子のC末端部分配列(FC)を順に連結し、クモ遺伝子発現カセットとした。このクモ遺伝子発現カセットを、piggyBacトランスポゾンを含むベクタープラスミドに導入し、遺伝子組換え用ベクタープラスミドとした。図1は、遺伝子組換え用ベクタープラスミドの構造を示す模式図である。図1中の記号は以下のものを意味する。
【0031】
FP:カイコフィブロインH鎖遺伝子プロモーター配列
MASP:クモ遺伝子配列
FC:カイコフィブロインH鎖遺伝子のC末端部分配列
MK:マーカー遺伝子配列
L:piggyBacトランスポゾンLハンド
R:piggyBacトランスポゾンRハンド
【0032】
(組み換えカイコの作製)
上記遺伝子組換用ベクタープラスミドを、大腸菌で増殖させ、「QIAGEN plasmid Midi Kit」((株)キアゲン社製)を用い、キットに添付したマニュアルに従って精製した。トランスポゼースタンパク質遺伝子を含むヘルパープラスミドも上記の方法で精製した。精製した上記のプラスミドDNAをTEバッファーで溶解し、遺伝子組換え用ベクタープラスミドDNAとヘルパープラスミドDNAを1対1の比で混和し、エタノール沈殿を行った。最後に、この混和DNAを400ng/ulの濃度になるように、5mMのKClを含むpH7のリン酸バッファーで調製した。これを産後3〜6時間のカイコ卵に顕微鏡の下で注射した。
【0033】
注射した卵をG0世代とし、G0世代が成長したガはG0ガと呼び、G0ガを親として産まれる卵はG1卵とする。G0ガを未注射のガと交尾させ、G1卵を採取し、催青期のG1卵について、蛍光顕微鏡の下で蛍光の発する個体(ポジティブ卵)をスクリーニングした。1匹の親ガ(G0ガ)が産む卵集団を1集団とし、1粒以上のポジティブ卵が検出された集団の数を、「ポジティブG1数」として計上した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
(インバースPCRによるクモ遺伝子の挿入及びその位置の確認)
カイコのゲノムDNAは、公知の方法(Sambrook and Maniatis,Molecular Cloning−A Laboratory Manualを参照)で抽出した。ゲノムDNAは制限酵素HaeIIIにより切断した後、セルフライゲーションされた。これをテンプレートとし、piggyBacの左右ハンドにそれぞれマッチする2ぺアのプライマーを用い、挿入位置のカイコゲノム配列を含む断片を送付し、配列を同定した。具体的には、レフトハンドフォワードプライマーとしてBacLF(5’−CTTGACCTTGCCACAGAGGACTATTAGAGG−3’)(配列番号9)を用い、レフトハンドリバースプライマーとしてBacLR(5’−CAGTGACACTTACCGCATTGACAAGCACGC−3’)(配列番号10)を用い、ライトハンドフォワードプライマーとして(5’−CCTCGATATACAGACCGATAAAACACATG−3’)(配列番号11)を用い、ライトハンドリバースプライマーとして(5’−GTCAGTCAGAAACAACTTTGGCACATATC−3’)(配列番号12)を用いた。図2は、クモ遺伝子発現カセットが挿入された位置の右側のカイコゲノム配列(配列番号13)を示す。
【0036】
(絹糸のタンパク質分析)
遺伝子組み換えカイコが作製した繭を切取り、1mgの繭片に対して50μlの60%LiSCNを加えて振動させ、室温下で2時間静置し、タンパク質を可溶化した。その後、15000rpmで遠心して不溶部分を除き、SDS−PAGEにより、上層の溶液中のクモ糸タンパク質とカイコのフィブロインとを分離した。図3は、遺伝子組換えカイコが作製した絹糸のタンパク質をSDS−PAGEで分離した結果を示す図である。図3中、FHはカイコフィブロインH鎖を意味し、MASPはクモ糸タンパク質を意味する。また、図3のレーン1にはHMW分子量マーカーを流し、レーン2には組換えカイコが作製した絹糸のタンパク質を含む上記上層の溶液を流し、レーン3にはレーン2の5倍のタンパク質を含む溶液を流した。分離結果から、絹糸タンパク質中のクモ糸タンパク質の含有率を計算したところ、22.5%と、従来の組換えカイコにおける上記含有率よりも顕著に高い数値を示した。
【0037】
(絹糸の走査電子顕微鏡観察による繊度推算)
組換えカイコが作製した繭を40℃の温水に1分間漬け、毛羽を除き、丁寧に糸を採取し、20℃、65%RHの条件で一昼夜馴致したものをサンプルとした。得られたサンプルについて、SEM(走査電子顕微鏡)S−2380N(日立製作所製)を用い、10kV電圧で観察及び撮影を行った。これをもとに、糸の直径と断面積を推算し、その断面積をもとに糸の強度を計算した。コントロールとして、遺伝子組み換えを行っていないカイコ(非組換えカイコ)の繭についても同様の処理を行った。図4は、組換えカイコ(A)と非組換えカイコ(B)の絹糸の走査電子顕微鏡写真である。
【0038】
(絹糸の物性解析)
組換えカイコが作製した繭を40℃の温水に1分間漬け、毛羽を除き、丁寧に糸を採取し、20℃、65%RHの条件で一昼夜馴致したものをサンプルとした。得られたサンプルについて、「AUTOGRAPH AGS−J」(島津製作所製)を用いて、20℃、65%RHの標準条件下で引っ張り試験を行った。コントロールとして、遺伝子組換えを行っていないカイコ(非組換えカイコ)が作製した絹糸についても、同様に引っ張り試験を行った。その結果、コントロール(非組換えカイコ)の絹糸の強度が397.0MPa(3.49g/d)であったのに対して、組換えカイコが作製した絹糸の強度は489.2MPa(4.27g/d)と、22.35%も増強していた。
【0039】
一方、特許文献2に記載のオニグモ等の遺伝子を用いた従来の組換えカイコにおいては、コントロールの絹糸の強度3.78g/dに対して、組換えカイコの絹糸の強度は3.93g/dと、3.96%しか増強していない(特許文献2の第29頁表3参照)。
【0040】
以上のことから、本発明の特定の核酸を用いた場合には、従来のオニグモ等の遺伝子を用いた場合よりも、組換えカイコが作製する絹糸の強度が高まることが明らかとなった。表2に、本発明の絹糸と特許文献2の絹糸との物性比較を示す。
【0041】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の組換え生物により作られるタンパク質は、優れた物性を有する天然素材として有用である。特に、本発明の組換えカイコにより作られる絹糸は、十分に優れた強度を有する天然素材であるため、手術縫合糸などの医療用品をはじめ、航空機材、衣料品、化粧品など、さまざまな用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(i)〜(iv)のいずれかの核酸が導入された組換え生物。
(i)配列番号1の塩基配列を有する核酸
(ii)配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸
(iii)前記(i)の核酸と90%以上の配列同一性を有し、牽引糸タンパク質をコードする核酸
(iv)前記(i)の核酸の相補鎖とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、牽引糸タンパク質をコードする核酸
【請求項2】
組換えカイコである、請求項1に記載の組換え生物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組換え生物により作られるタンパク質。
【請求項4】
請求項2に記載の組換えカイコにより作られる絹糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−55270(P2012−55270A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203558(P2010−203558)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(592154411)岡本株式会社 (29)
【Fターム(参考)】