説明

組換え真核細胞、並びに、細胞内シグナル伝達抑制方法

【課題】リガンド結合活性を維持した状態で膜貫通受容体を大量発現させる技術を提供する。
【解決手段】膜貫通受容体をコードする遺伝子が導入され、前記膜貫通受容体を細胞膜上で発現可能である組換え真核細胞であって、前記膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものであり、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドが連結され、リガンド結合活性を保持した状態で前記膜貫通受容体を発現可能である組換え真核細胞が提供される。膜貫通受容体をコードする遺伝子を細胞に導入する工程を有し、前記膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものであり、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドを連結することにより、前記膜貫通受容体のリガンド結合活性を保持しつつ細胞内シグナル伝達を抑制する細胞内シグナル伝達抑制方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は組換え真核細胞、並びに、細胞内シグナル伝達抑制方法に関し、さらに詳細には、膜貫通受容体をコードする遺伝子が導入された組換え真核細胞、並びに、膜貫通受容体をコードする遺伝子を真核細胞に導入する細胞内シグナル伝達抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜貫通受容体の中でも特にGタンパク質共役型受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)は、現在市販されている低分子医薬品の約半数がこの受容体を標的としているため、医薬品開発において極めて注目を集めている。GPCRは7回膜貫通型受容体であり、そのN末端を細胞外に、C末端を細胞内に向けて存在している。すなわち、GPCRの細胞外ドメインは、N末端ドメイン、細胞外第1ループ、細胞外第2ループ、および細胞外第3ループから構成されている。一方、GPCRの細胞内ドメインは、細胞内第1ループ、細胞内第2ループ、細胞内第3ループ、およびC末端ドメインから構成されている。
【0003】
医薬品スクリーニングの為のリガンド結合評価や膜貫通受容体の結晶化、又は膜貫通受容体そのものの基礎的研究を行う為には大量の受容体が必要である。そのためには、膜貫通受容体が細胞膜における構造とリガンド結合活性を維持した状態で、大量発現が可能な技術が必要不可欠である。ところが、一般的に、膜貫通受容体を大量発現させることは可溶性タンパク質に比べて困難である。
【0004】
例として、GPCRの一種であるヒト由来GPR119(以下、「hGPR119」と称する。)を挙げる。hGPR119はグルコース依存性インスリン分泌性受容体であり、糖尿病に関連するターゲットである。hGPR119は、主に膵臓及び消化管に発現している。生理活性脂質であるリゾホスファチジルコリン及びオレイルエタノールアミド(OEA)をリガンドとして相互に作用し、グルコース依存性インクレチンおよびインスリンの分泌を促進することが知られている。
【0005】
hGPR119のcDNAが導入された組換え細胞は、例えばMultispan社から供給されており、市場から入手可能である。この細胞は、発現量指標となるFLAGタグをhGPR119のN末端に挿入して発現させた細胞である。この細胞は、受容体そのもののリガンド結合活性はあるものの、抗FLAG抗体の染色では検出できない程度の発現量であるとされている。そこで、hGPR119の発現量を増加させる技術が求められている。
【0006】
hGPR119の発現量を増加させる方法に関し、Flp-In T-Rex ベクターsystem(インビトロジェン社)を用いた方法が知られている(非特許文献1)。そして、このベクターを用いて発現させた細胞に対してテトラサイクリンを添加すると、mRNA量を増加させることが報告されている。しかし、hGPR119発現量の増加については明記されておらず、実際のhGPR119発現量の増加は定かでない。また、発現を行う宿主細胞にとって、ターゲットタンパク質が毒性または細胞の増殖阻害性を示す場合、mRNA量を増加させることで発現量を増加させることは、発現量増加の目的に対しては逆効果である。なぜなら、細胞に対しての毒性または増殖阻害性を示すタンパク質をより増やすことは、細胞へのダメージをより増やすことになるからである。根本的な解決には膜貫通受容体の性質に基づいて抜本的な改善手法を発明することが必要である。
【0007】
非特許文献2によれば、動物細胞でGPCRの高発現株が取得できないのは、GPCRが高発現になることでリガンドがなくてもシグナルが流れるようになり、細胞が正常に増殖しなくなるためと考えられている。
【0008】
また非特許文献3によれば、hGPR119においては、過剰発現によってGsタンパク質の恒常的な活性化が引き起こされていることが示唆されている。このことから、GPCRの発現における恒常的な活性化を抑えることが細胞増殖、ひいては大量発現に良い結果をもたらすと考えられる。Gタンパク質の活性化を抑える方法としては、Gタンパク阻害剤を加える方法が挙げられる。しかし、この方法は目的受容体以外のシグナル伝達も阻害するため、増殖阻害を引き起こすと考えられ、不適である。また目的受容体のアンタゴニストが公知である場合、アンタゴニストを培地に添加することで目的受容体に対して特異的にシグナル伝達を阻害することは可能であるが、非常にコストがかかる。また、アンタゴニストが公知でない場合は、この方法は適用できない。
【0009】
hGPR119以外のGPCRにも、嗅覚受容体など、発現が非常に難しいものが数多くあると考えられ、それらの発現をうまくハンドリングできるようにすることで、医薬品開発や新たな創薬ターゲットの探索を効率的に進められるようになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】HA Overton et al., Cell Metabolism. (2006) 3 pp.167-175
【非特許文献2】生物物理 45 (5) 236-242 (2005)
【非特許文献3】Y Sakamoto et al., Biochemical and biophysical Research Communications 351 (2006) 474-480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、細胞膜における構造とリガンド結合活性を維持した状態で膜貫通受容体を大量発現させることには、多くの困難性がある。そこで本発明は、リガンド結合活性を維持した状態で膜貫通受容体を大量発現させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するための方策を種々検討した。その結果、膜貫通受容体のC末端に所定以上の分子量を有するタンパク質を付加することにより、当該膜貫通受容体の発現量が増大させることができるとともに、その発現量、リガンド結合活性、及び細胞の状態(例えば形態)を長期間にわたって維持できることを見出した。さらに、これらの効果の要因として、細胞内シグナル伝達の抑制が関係していることを見出し、本発明を完成した。上記した課題を解決するために提供される本発明は、以下のとおりである。
【0013】
請求項1に記載の発明は、膜貫通受容体をコードする遺伝子が導入され、前記膜貫通受容体を細胞膜上で発現可能である組換え真核細胞であって、前記膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものであり、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドが連結され、リガンド結合活性を保持した状態で前記膜貫通受容体を発現可能であることを特徴とする組換え真核細胞である。
【0014】
本発明は、膜貫通受容体をコードする遺伝子が導入され、前記膜貫通受容体を細胞膜上で発現可能である組換え真核細胞に係るものである。本発明の組換え真核細胞においては、当該膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものであり、当該膜貫通受容体のC末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチド(以下、「付加タンパク質」と称することがある。)が連結されている。この構成により、膜貫通受容体のリガンド結合活性を維持しつつ、膜貫通受容体の発現量を増加させることができる。本発明の組換え真核細胞によれば、リガンド結合活性を維持した状態で膜貫通受容体を大量発現させることができる。
【0015】
膜貫通受容体のC末端に連結される分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチド(付加タンパク質)は、1つのタンパク質又はポリペプチドで構成されていてもよいし、複数のタンパク質又はポリペプチドからなる集合体であってもよい。また、連結の様式は、共有結合(ペプチド結合等)と非共有結合のいずれでもよい。
【0016】
請求項2に記載の発明は、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドが連結された膜貫通受容体をコードする遺伝子が導入されたものであることを特徴とする請求項1に記載の組換え真核細胞である。
【0017】
本発明の組換え真核細胞は、「C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドが連結された膜貫通受容体をコードする遺伝子」、換言すれば「膜貫通受容体のC末端に付加タンパク質が連結されてなる融合タンパク質又は融合ポリペプチドをコードする遺伝子」が導入されている。すなわち本発明の組換え真核細胞では、膜貫通受容体と付加タンパク質とがペプチド結合を介して連結され、1つの融合タンパク質又は融合ポリペプチドを構成している。かかる構成により、付加タンパク質の連結が確実となり、膜貫通受容体の大量発現がより確実となる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、前記タンパク質又はポリペプチドの分子量は、6万以上かつ18万以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組換え真核細胞である。
【0019】
かかる構成により、膜貫通受容体の発現量が特に大きいものとなる。
【0020】
請求項1〜3のいずれかに記載の組換え真核細胞において、前記膜貫通受容体は、7回膜貫通型受容体であることが好ましい(請求項4)。
【0021】
請求項4に記載の組換え真核細胞において、Gタンパク質共役型受容体であることが好ましい(請求項5)。
【0022】
請求項5に記載の組換え真核細胞において、前記Gタンパク質共役型受容体は、GPR119又はアンジオテンシンII受容体タイプIであってもよい(請求項6)。
【0023】
請求項7に記載の発明は、膜貫通受容体をコードする遺伝子を真核細胞に導入する工程を有し、前記膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものであり、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドを連結することにより、前記膜貫通受容体のリガンド結合活性を保持しつつ細胞内シグナル伝達を抑制することを特徴とする細胞内シグナル伝達抑制方法である。
【0024】
本発明は細胞内シグナル伝達抑制方法に係るものである。本発明は、膜貫通受容体をコードする遺伝子を真核細胞に導入する工程を有し、当該膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものである。そして、当該膜貫通受容体のC末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチド(付加タンパク質)を連結する。これにより、膜貫通受容体のリガンド結合活性を保持しつつ細胞内シグナル伝達を抑制する。本発明を真核細胞に適用することにより、細胞内シグナル伝達抑制に起因する膜貫通受容体の大量発現を実現することができる。
【0025】
本発明においても、膜貫通受容体のC末端に連結される分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチド(付加タンパク質)は、1つのタンパク質又はポリペプチドで構成されていてもよいし、複数のタンパク質又はポリペプチドからなる集合体であってもよい。また、連結の様式は、共有結合(ペプチド結合等)と非共有結合のいずれでもよい。
【0026】
請求項7に記載の細胞内シグナル伝達抑制方法において、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドが連結された膜貫通受容体をコードする遺伝子を細胞に導入することが好ましい(請求項8)。
【0027】
請求項7又は8に記載の細胞内シグナル伝達抑制方法において、前記タンパク質又はポリペプチドの分子量は、6万以上かつ18万以下であることが好ましい(請求項9)。
【0028】
請求項7〜9のいずれかに記載の細胞内シグナル伝達抑制方法において、前記膜貫通受容体は、7回膜貫通型受容体であることが好ましい(請求項10)。
【0029】
請求項10に記載の細胞内シグナル伝達抑制方法において、前記7回膜貫通型受容体は、Gタンパク質共役型受容体であることが好ましい(請求項11)。
【0030】
請求項11に記載の細胞内シグナル伝達抑制方法において、前記Gタンパク質共役型受容体は、GPR119又はアンジオテンシンII受容体タイプIであってもよい(請求項12)。
【発明の効果】
【0031】
本発明の組換え真核細胞によれば、リガンド結合活性を維持した状態で膜貫通受容体を大量発現させることができる。また、長期継代培養が可能である。その結果、膜画分の大量調製及び精製が容易になり、膜貫通受容体の結晶化プロセスにおいて膜画分調製のコストが低減できる。また、医薬品スクリーニングのための膜貫通受容体のリガンド結合評価において、低コスト化が可能となる。
【0032】
本発明の細胞内シグナル伝達抑制方法についても同様であり、細胞内シグナル伝達抑制に起因する膜貫通受容体の大量発現と長期継代培養を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】hGPR119のC末端に各種タンパク質を連結させた場合の解析結果を表すヒストグラムであり、(a)は陰性対照、(b)はFLAGタグ(N末端)を連結させた場合、(c)はシグナル配列(N末端)とEGFPを連結させた場合、(d)はGroELを連結させた場合を表す。
【図2】hGPR119のC末端にGroELの1〜7量体を連結させた場合の解析結果を表すヒストグラムであり、(a)は陰性対照、(b)〜(h)はそれぞれGroELの1〜7量体を連結させた場合を表す。
【図3】蛍光顕微鏡による細胞の観察結果を表す写真であり、(a)は、hGPR119のC末端にEGFPのみを連結させた場合、(b)は、hGPR119のC末端にEGFPとGroEL2量体を連結させた場合を表す。
【図4】継代によるhGPR119発現量の経時変化を表すグラフである。
【図5】hGPR119のcAMPシグナル測定結果を表すグラフである。
【図6】hAGTR1のリガンド結合活性の解析結果を表すヒストグラムであり、(a)は陰性対照、(b)は陽性対照、(c)は、hAGTR1のC末端に付加タンパク質を連結しない場合、(d)は、hAGTR1のC末端にGroEL2量体を連結させた場合、(e)は、hAGTR1のC末端にGroEL3量体を連結させた場合を現す。
【図7】hAGTR1のカルシウムシグナル測定実験の結果を表すグラフであり、(a)は陽性対照、(b)はGroEL2量体を連結させた場合、(c)はGroEL3量体を連結させた場合、(d)は陰性対照を表す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の1つの様相は、膜貫通受容体をコードする遺伝子が導入され、前記膜貫通受容体を細胞膜上で発現可能である組換え真核細胞であって、前記膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものであり、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドが連結され、リガンド結合活性を保持した状態で前記膜貫通受容体を発現可能であることを特徴とする組換え真核細胞である。
【0035】
膜貫通受容体としては、C末端が細胞膜の内側に存在するものであれば特に限定はない。貫通の回数は、1回でもよいし、3回以上でもよい。またシグナル伝達機構についても限定はなく、例えば、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)、イオンチャネル型受容体、酵素連結型受容体のいずれでもよい。
【0036】
好ましい実施形態では、膜貫通受容体が7回膜貫通型受容体であり、より好ましくはGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。GPCRの例としては、GPR119、アンジオテンシンII受容体、CCケモカイン受容体、CXCケモカイン受容体、Cケモカイン受容体、CX3Cケモカイン受容体、嗅覚受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、アデノシン受容体、アドレナリン受容体、GABA受容体、セロトニン受容体、アンギオテンシン受容体、カンナビノイド受容体、コレシストキニン受容体、ドーパミン受容体、P2Y受容体、グルカゴン受容体、ヒスタミン受容体、ガストリン受容体、オピオイド受容体、ロドプシン、セクレチン受容体、ソマトスタチン受容体、オーファン受容体、などが挙げられる。
【0037】
本発明の組換え真核細胞では、導入された遺伝子により発現される膜貫通受容体のC末端に、分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチド(付加タンパク質)が連結されている。付加タンパク質は、分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドで、且つリガンド結合活性を保持した状態で当該膜貫通受容体を発現可能とするものであれば特に限定はない。付加タンパク質は、細胞内で可溶性の状態で発現されるものであることが好ましい。
【0038】
好ましい実施形態では、付加タンパク質の分子量が6万以上18万以下である。この範囲であれば、膜貫通受容体の発現量がより大きくなる。例えば、分子シャペロンの一種であるシャペロニン(chaperonin)を構成するサブユニット(「HSP60」ともいう)は、分子量が約6万であり、付加タンパク質として好適に採用される。複数のシャペロニンサブユニットを直列に連結させたシャペロニンサブユニットの連結体(特許第4038555号公報に記載)も、付加タンパク質として好適に採用される。シャペロニンの例として、大腸菌由来シャペロニンであるGroELが挙げられる。GroELサブユニット遺伝子は、宿主となる動物細胞との関係においてマイナーコドンを含んでおらず、特に好適に採用される。GroELサブユニット遺伝子の塩基配列を配列番号4に示す。
【0039】
なお、細胞内における局在の標識マーカーとして、膜貫通受容体のC末端に緑色蛍光タンパク質(EGFP;分子量2万7千)を連結させる技術が公知である。しかし、後述の実施例で示されるように、本発明における付加タンパク質としてEGFPを用いても、膜貫通受容体の発現量を増大させることはできない。本発明における付加タンパク質は、分子量が3万以上であることが必要である。
【0040】
膜貫通型受容体と付加タンパク質との連結の態様としては、これらがペプチド結合を介して連結された態様が代表的である。この場合は、膜貫通型受容体のC末端に付加タンパク質が連結されてなる融合タンパク質又は融合ポリペプチドを、細胞内で発現させればよい。具体的には、前記融合タンパク質をコードする遺伝子を、発現可能な状態で導入すればよい。
【0041】
ペプチド結合以外の連結様式を利用することもできる。一例を挙げると、FLAGタグのようなタグ配列を膜貫通型受容体のC末端に連結する。そして、このタグ配列を認識する抗体を結合させる。これにより、タグ配列と抗体とからなる集合体が付加タンパク質として機能できるようになる。この場合には、膜貫通受容体とタグ配列との融合タンパク質と、タグ配列を認識する抗体を、別々のベクター上で共発現させればよい。抗体としては、例えば、Fv型抗体等の抗体断片を用いることができる。付加タンパク質の分子量は、タグ配列の数およびタグ配列に結合する抗体の数を調整することにより、自由に設定することができる。タグ配列の例としては、FLAGタグの他、c−mycタグ、Haloタグ、GFPなどが挙げられる。
【0042】
膜貫通受容体のN末端には、シグナル配列を付与してもよい。これにより、細胞内で発現した膜貫通受容体の細胞膜への移行を容易にすることができる。当該シグナル配列としては、小胞体輸送に関連するものであれば特に限定はない。例として、SignalIPのソフト解析から推定されるマウスエンドセリン受容体タイプAのシグナル配列(以下、「mAss」と称する。)が挙げられる。
【0043】
本発明の組換え真核細胞の宿主となる細胞としては、動物細胞が好ましく用いられる。動物細胞の例としては、COS−7細胞、マウスAtT−20細胞、ラットGH3細胞,ラットMtT細胞,マウスMIN6細胞、Vero細胞、CHO細胞、HeLa細胞、L細胞、BHK細胞、BALB3T3細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、L929細胞などが挙げられる。動物細胞以外の例としては、酵母が挙げられる。
【0044】
膜貫通受容体をコードする遺伝子の細胞への導入は、発現ベクターに組み込まれた状態で行うことが好ましい。例えば、膜貫通受容体(例えばhGPR119)の遺伝子の3’末端に付加タンパク質(例えばGroELサブユニット)の遺伝子を連結し、融合遺伝子を作製する。この融合遺伝子を発現ベクターに組み込んでプロモーターの制御下に置き、宿主細胞に導入する。発現ベクターの例としては、pCI、pSI、pAdVantage、pTriEX、pKA1、pCDM8、pSなどが挙げられる。また、発現ベクター上のプロモーターの例としては、CMVプロモーター、AMLプロモーター、SV40プロモーター、SRαプロモーター、EF−1αプロモーター等が挙げられる。さらに、発現ベクターには、プロモーター活性を増強するエンハンサーを含めてもよい。
【0045】
ベクターを宿主細胞に導入する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション法、エレクトロポレーション法、リポフェクション法、遺伝子銃を用いた方法が挙げられる。
【0046】
本発明の他の様相は、膜貫通受容体をコードする遺伝子を真核細胞に導入する工程を有し、前記膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものであり、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドを連結することにより、前記膜貫通受容体のリガンド結合活性を保持しつつ細胞内シグナル伝達を抑制することを特徴とする細胞内シグナル伝達抑制方法である。本発明の細胞内シグナル伝達抑制方法においても、上記した実施形態と同様の実施形態が可能である。
【0047】
GPCRは、他のGPCRとヘテロダイマーを形成したり、また他のタンパク質と会合することが報告されている(Nakahataら,YAKUGAKU ZASSHI, 127, 3-14(2007))。GPCRは種類によっては、発現や活性の調節に必要な別の因子が関与していることがある。本発明によって膜貫通受容体の大量精製が可能となることで実験が容易となり、これまで未知であったGPCRの活性調節に関与する因子を発見できる可能性がある。未知の因子を見出すことは、GPCRの発現制御をより容易に行うことにつながる。
【0048】
また、GroELは天然状態では7量体を1つのリングとした構造を形成する。よって、C末端に6個以下のGroELサブユニットを連結させたGPCRを精製し、GroELサブユニット単体を後から添加することで7量体を形成させ、GroELの構造体が形成するリング構造内にGPCRを閉じ込めた複合体を形成させることが可能である。GroELは2次元結晶が作製可能であることから、この複合体を用いた結晶構造解析も可能である。
【0049】
膜貫通受容体のC末端と付加タンパク質との連結部分に、プロテアーゼによる切断サイトを導入しておくと、膜貫通受容体を大量発現させた後にプロテアーゼを添加することにより、膜貫通受容体のみを大量精製することができる。当該プロテアーゼと切断サイトの例としては、トロンビン、エンテロカイネース、活性型血液凝固第10因子等の限定分解型プロテアーゼ等とそれらの切断サイトが挙げられる。
【0050】
以下、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0051】
(1)GroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片の調製
大腸菌HMS174(DE3)株(ノバジェン社)からゲノムDNAを抽出・精製した。このゲノムDNAを鋳型とし、配列番号1及び2示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、GroELサブユニット遺伝子(配列番号4)を含むDNA断片を増幅した(以下、「DNA断片A」と称する。)。DNA断片Aには、プライマーに由来して、5'末端にSalIサイト、3'末端にストップコドン(TAA)をコードする配列及びNotIサイトが導入された。すなわち、DNA断片Aに含まれるGroELサブユニット遺伝子は、ストップコドンを有するものである。
【0052】
一方、前記ゲノムDNAを鋳型とし、配列番号1及び3示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、GroELサブユニット遺伝子(配列番号4)を含むDNA断片を増幅した(以下、「DNA断片B」と称する。)。DNA断片Bには、プライマーに由来して、5'末端にSalIサイト、3'末端にXhoIサイトが導入された。すなわち、DNA断片Bに含まれるGroELサブユニット遺伝子は、ストップコドンを有さないものである。
【0053】
(2)ヒト由来GPR119(hGPR119)遺伝子を含むDNA断片の調製
NCBIデータベースのヌクレオチド番号NM_178471の情報に基づいて、hGPR119遺伝子(DNA)(配列番号12)を人工遺伝子合成(GenScript社)にて取得した。この人工合成DNAを鋳型とし、配列番号5及び6に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、hGPR119遺伝子(配列番号12)を含むDNA断片を増幅した(以下、「DNA断片C」と称する。)。DNA断片Cには、プライマーに由来して、5'末端にNheIサイト、3'末端にストップコドンをコードする配列及びXhoIサイトが導入された。すなわち、DNA断片Cに含まれるhGPR119遺伝子は、ストップコドンを有するものである。
【0054】
一方、前記人工合成DNAを鋳型とし、配列番号5及び7示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、hGPR119遺伝子(配列番号12)を含むDNA断片を増幅した(以下、「DNA断片D」と称する。)。DNA断片Dには、プライマーに由来して、5'末端にNheIサイト、3'末端にXhoIサイトが導入された。すなわち、DNA断片Dに含まれるhGPR119遺伝子は、ストップコドンを有さないものである。
【0055】
(3)ヒト由来アンジオテンシン受容体遺伝子を含むDNA断片の調製
NCBIのACCESSION番号NM_000685の情報に基づいて、ヒト由来アンジオテンシンII受容体タイプI(hAGTR1)遺伝子(配列番号16)を人工遺伝子合成(GenScript社)にて取得した。人工合成したhAGTR1遺伝子を鋳型とし、配列番号13及び14に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、hAGTR1遺伝子(配列番号16)を含むDNA断片を増幅した(以下、「DNA断片E」と称する。)。DNA断片Eには、プライマーに由来して、5'末端にNheIサイト、3'末端にストップコドンをコードする配列及びNotIサイトが導入された。すなわち、DNA断片Eに含まれるhAGTR1遺伝子は、ストップコドンを有するものである。
【0056】
一方、前記人工合成DNAを鋳型とし、配列番号13及び15示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、hAGTR1遺伝子(配列番号16)を含むDNA断片を増幅した(以下、「DNA断片F」と称する。)。DNA断片Fには、プライマーに由来して、5'末端にNheIサイト、3'末端にSalIサイトが導入された。すなわち、DNA断片Fに含まれるhAGTR1遺伝子は、ストップコドンを有さないものである。
【0057】
(4)EGFP遺伝子を含むDNA断片の調製
pEGFP−N1ベクター(GenBank Accession#U55762、BD Biosciences, Clontech、CA、USA)を鋳型とし、配列番号17及び18に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマー対としてPCRを行い、EGFP遺伝子(配列番号19)を含むDNA断片を増幅した(以下、「DNA断片G」と称する。)。DNA断片Gには、プライマーに由来して、5'末端にSalIサイト、3'末端にXhoIサイトが導入された。すなわち、DNA断片Gに含まれるEGFP遺伝子は、ストップコドンを有さないものである。
【0058】
(5)hGPR119遺伝子を含む各種ベクターの作製(一過性発現用)
哺乳動物細胞の一過性発現用ベクターであるpCI mammalian Expression Vector(プロメガ社)を、制限酵素SalI及びNotI(タカラバイオ社)を用いて制限酵素処理を行った。また、上記(1)で作製したDNA断片A(ストップコドンを有するGroEL遺伝子を含む断片)も同様に制限酵素SalI及びNotIを用いて制限酵素処理を行った。これらの断片をライゲーションキット(タカラバイオ社)を用いて連結した。これにより、pCI mammalian Expression VectorにGroELサブユニット(分子量6万)遺伝子が挿入されたベクター(以下、「pCGベクター」と称する。)が作製された。
【0059】
pCGベクターを制限酵素NheIおよびSalI(タカラバイオ社)で処理を用いて制限酵素処理を行った。同様に、上記(2)で調製したDNA断片D(ストップコドンを有しないhGPR119遺伝子を含む断片)についても制限酵素NheIおよびSalIで制限酵素処理を行った。これらの断片をライゲーションキットを用いて連結した。これにより、pCGベクターにhGPR119が挿入されたベクター(以下、「pCG-hGPR119ベクター」と称する。)が作製された。
【0060】
PCG-hGPR119ベクターを制限酵素NheIで制限酵素処理したサイトに、配列番号10及び配列番号11で示されるプライマー断片の等モル混合溶液を100℃で3分インキュベートさせて室温に戻すことでアニールさせた断片(以下、「mAssFLAG断片」と称する。)をライゲーション反応させた。これにより、pCG-hGPR119ベクターにおけるhGPR119のN末端にマウス由来エンドセリン受容体タイプAのシグナル配列(mAss)とFLAGタグを付加したベクター(以下、「pCG-mAssFLAG-hGPR119ベクター」と称する。)が作製された。
【0061】
また、同様に、PCG-hGPR119ベクターを制限酵素NheIで制限酵素処理したサイトに、配列番号8及び配列番号9で示されるプライマー断片の等モル混合溶液を100℃で3分インキュベートさせて室温に戻すことでアニールさせた断片(以下、「FLAG断片」と称する。)をライゲーション反応させた。これにより、pCG-hGPR119ベクターにおけるhGPR119のN末端にFLAGタグが付加されたベクター(以下、「pCG-FLAG-hGPR119ベクター」と称する。)が作製された。
【0062】
pCG-mAssFLAG-hGPR119ベクターを制限酵素SalIで制限酵素処理した。また、上記(1)で調製したDNA断片B(ストップコドンを有しないGroEL遺伝子を含む断片)を制限酵素SalI及びXhoI(タカラバイオ社)で制限酵素処理した。これらの断片をライゲーションキットを用いて連結した。SalIの制限酵素断片とXhoIの制限酵素断片はライゲーション可能であり、GroEL遺伝子が正方向の連結体としてライゲーションすることが可能である。これにより、pCG-mAssFLAG-hGPR119ベクターにさらにGroELサブユニット遺伝子が1個から6個付加された(GroELが2連結から7連結された)ベクター(以下、「pCG2-mAssFLAG-hGPR119ベクター」、「pCG3-mAssFLAG-hGPR119ベクター」、「pCG4-mAssFLAG-hGPR119ベクター」、「pCG5-mAssFLAG-hGPR119ベクター」、「pCG6-mAssFLAG-hGPR119ベクター」、「pCG7-mAssFLAG-hGPR119ベクター」とそれぞれ称する。)が得られた。
【0063】
(6)hGPR119遺伝子を含む各種ベクターの作製(安定発現用)
哺乳動物細胞の安定発現用ベクターであるpIRESneo3ベクター(クロンテック社)を制限酵素NheIおよびNotIで制限酵素処理を行った。同様に、上述のpCG2-mAssFLAG-hGPR119ベクターも制限酵素NheIおよびNotIで制限酵素処理を行い、hGPR119とGroEL2量体融合体に相当する遺伝子断片(以下、「hGPR119-(GroEL)2断片」と称する。)を得た。hGPR119-(GroEL)2断片とpIRESneo3ベクターをライゲーションキットを用いて連結し、pIRESneo3-hGPR119-(GroEL)2ベクターを得た。
【0064】
pIRESneo3-hGPR119-(GroEL)2ベクターを再度制限酵素NheIで処理し、先に述べたmAssFLAG断片を挿入してpIRESneo3-mAssFLAG-hGPR119-(GroEL)2ベクターを得た。
【0065】
続いて、pIRESneo3-mAssFLAG-hGPR119-(GroEL)2ベクターを制限酵素SalIで制限酵素処理した後に、上記(4)で調製したDNA断片G(ストップコドンを有さないEGFP遺伝子を含む断片)の制限酵素SalI処理済みの断片を挿入した。これにより、pIRESneo3-mAssFLAG-hGPR119-EGFP-(GroEL)2ベクターを得た。
【0066】
(7)hGPR119遺伝子を含む各種ベクターの作製(EGFP融合、比較例)
pEGFP-N1ベクター(GenBank Accession番号 #U55762)のNheI制限酵素サイトとXhoI制限酵素サイトを、それぞれ制限酵素NheIとXhoIで切断した。このサンプルの電気泳動を行い、ベクター断片側をWizard SV Gel and PCR Clean-Up System(プロメガ社)によって回収した。回収したベクター断片をバクテリア由来アルカリフォスファターゼ(BAP)にて脱リン酸化処理を行った。一方、上記(2)で調製したDNA断片D(ストップコドンを有しないhGPR119遺伝子を含む断片)についても同様に、制限酵素NheIとXhoIで切断後に電気泳動を行い、hGPR119に相当する断片をWizard SV Gel and PCR Clean-Up Systemによって回収した。これらのDNA断片を、ライゲーションキットを用いて連結し、hGPR119のC末端にEGFPが連結された融合タンパク質の遺伝子を含むベクター(以下、「pEGFP-hGPR119ベクター」と称する。)を得た。
【0067】
pEGFP-hGPR119ベクターを制限酵素NheIで制限酵素処理し、そのサイトに、FLAG断片を挿入した。これにより、pEGFP-hGPR119ベクターにおけるhGPR119のN末端にFLAG配列が付加されたベクター(以下、「pEGFP-FLAG-hGPR119ベクター」と称する。)を得た。
【0068】
pEGFP-hGPR119ベクターを制限酵素NheIで制限酵素処理した断片に、mAssFLAG断片を挿入し、pEGFP-hGPR119ベクターにおけるhGPR119のN末端にマウス由来エンドセリン受容体タイプAのシグナル配列が付加されたベクター(以下、「pEGFP-mAssFLAG-hGPR119ベクター」と称する。)が作製された。
【0069】
(8)hAGTR1遺伝子を含む各種ベクターの作製(一過性発現用)
上記(5)で作製したpCGベクターを制限酵素NheIおよびSalIを用いて制限酵素処理を行った。同様に、上記(3)で調製したDNA断片F(ストップコドンを有しないhAGTR1遺伝子を含む断片)についても制限酵素NheIおよびSalIで制限酵素処理を行った。それぞれの断片をライゲーションキット用いて連結した。これにより、pCGベクターにhAGTR1遺伝子が挿入されたベクター(以下、「pCG-hAGTR1ベクター」と称する。)が作製された。
【0070】
続いて、pCG-hAGTR1ベクターを制限酵素NheIで制限酵素処理し、そのサイトにFLAG断片を挿入した。これにより、pCG-hAGTR1ベクターにおけるhAGTR1のN末端にFLAG配列が付加されたベクター(以下、「pCG-FLAG-hAGTR1ベクター」と称する。)を得た。
【0071】
pCG-FLAG-hAGTR1ベクターを制限酵素SalIで制限酵素処理し、続いて上記(1)で調製したDNA断片B(ストップコドンを有しないGroEL遺伝子を含む断片)を制限酵素SalI及びXhoIで制限酵素処理した。これらの断片をライゲーションキットを用いて連結した。SalIの制限酵素断片とXhoIの制限酵素断片はライゲーション可能であり、GroEL遺伝子が正方向の連結体としてライゲーションすることが可能である。これにより、pCG-FLAG-hAGTR1ベクターにさらにGroEL遺伝子が1個から2個付加された(GroELが2連結から3連結された)ベクター(以下、「pCG2-FLAG-hAGTR1ベクター」、「pCG3-FLAG-hAGTR1ベクター」とそれぞれ称する。)が得られた。
【0072】
哺乳動物細胞の安定発現用ベクターであるpIRESneo3ベクター(クロンテック社)を制限酵素NheIおよびNotIで制限酵素処理を行った。同様に、上記(3)で調製したDNA断片E(ストップコドンを有するhAGTR1遺伝子を含む断片)も制限酵素NheIおよびNotIで制限酵素処理を行った。これらの断片とpIRESneo3ベクターをライゲーションキットを用いて連結し、pIRESneo3-hAGTR1ベクターを得た。このベクターを再度制限酵素NheIで処理し、先に述べたFLAG断片を挿入してpIRESneo3-FLAG-hAGTR1ベクターを得た。
【0073】
構築した各ベクターと発現される膜貫通受容体の構成を表1に纏めた。
【表1】

【0074】
(9)hGPR119の安定発現細胞の作製
宿主細胞としてHEK293細胞(Stratagene社)を用いた。HEK293T細胞はネオマイシン耐性であるため、安定発現細胞の作製にはHEK293細胞が宿主細胞として適している。
pEGFP-mAssFLAG-h119ベクター、pIRESneo3-mAssFLAG-hGPR119-(GroEL)2ベクター、またはpIRESneo3-mAssFLAG-h119-EGFP-(GroEL)2ベクターを、Lipofectamine 2000(インビトロジェン社)およびOpti-MEM(ギブコ社)を用いて、プロトコールに従い、DNA(μg)/Opti-MEM(ml)=192μg / 2.4 ml、Lipofectamine(μl)/Opti-MEM(ml)=180μl / 2.4mlの組成でHEK293細胞へ導入した。
遺伝子導入2日後、細胞をトリプシンで剥離・回収し、フローサイトメーター(FCM; FACS Calibur、ベクトンディッキンソン社)にて発現を確認した。さらに遺伝子が導入された細胞を6ウェルプレート(コーニング社)へ2.0×105cellsずつ播種し、通常培地に抗生物質G418を200μg/mL〜1200μg/mLの濃度範囲で加え、薬剤選択培地にて培養を行った。培地交換を行いながら遺伝子未導入細胞が死滅後、ウェルがコンフルエントになったら再びFCMにて発現を確認した。
各G418濃度で得られた薬剤耐性株から、限界希釈を行い、通常培地にて2週間培養後にコロニーを形成しているウェルから6ウェルへ移した(これ以後、200μg/mLの選択培地(10%FBS、0.1 mM NEAA混合DMEM培地)にて培養、必要に応じて濃度を変えた)。ウェルがコンフルエントになった時点でFCMにて発現を確認し、発現量が高いクローンをスクリーニングした。
この操作によって得られた安定発現細胞株を、それぞれ、「mAssFLAG-hGPR119-EGFP/HEK293細胞」、「mAssFLAG-hGPR119-(GroEL)2/HEK293細胞」、「mAssFLAG-hGPR119-EGFP-(GroEL)2/HEK293細胞」とした。
【0075】
(10)hAGTR1の安定発現細胞の作製
宿主細胞として、CHO細胞を用いた。
pIRESneo3-FLAG-hAGTR1ベクターを用い、Lipofectamine 2000とOpti-MEMを用いて上記(9)と同様の操作を行った。この操作によって得られたhAGTR1安定発現細胞株を、「FLAG-hAGTR1/CHO細胞」とした。
【0076】
作製した各安定発現細胞と発現される膜貫通受容体の構成を表2に纏めた。
【表2】

【0077】
(11)hGPR119のFCMによる発現量測定
Lipofectamine 2000とOpti-MEMを用いて上記(9)と同様の操作を行い、pEGFP-FLAG-hGPR119ベクター、pEGFP-mAssFLAG-hGPR119ベクター、又はpCG-FLAG-hGPR119ベクターをHEK293T細胞へ導入し、hGPR119を一過性発現させた。
細胞表面に発現しているhGPR119の量を知るために、FLAG抗体の結合量を調べた。すなわち、濃度10μg/mLのANTI-FLAG M2 マウスモノクローナル抗体(シグマアルドリッチ社)(以下、単に「FLAG抗体」と略記することがある。)のPBS溶液(以下、「FLAG抗体溶液」と略記することがある。)を調製した。
pEGFP-FLAG-hGPR119ベクター、pEGFP-mAssFLAG-hGPR119ベクター、又はpCG-FLAG-hGPR119ベクターが導入された各HEK293T細胞をそれぞれPBSで洗浄した後、FLAG抗体溶液を各細胞と混合し、4℃で1時間インキュベーションを行った。その後、各細胞をPBSで洗浄し、2次抗体としてフィコエリスリン(PE)で標識された抗マウスIgG抗体(ベックマンコールター社製)を添加した後、4℃で30分間インキュベーションを行った。各細胞をPBSで洗浄後、フローサイトメーター(FACSCalibur)を用いて、各細胞とFLAG抗体との相互作用を解析した。2次抗体染色操作の対照として、2次抗体染色していないHEK293T細胞の解析も行った。
【0078】
結果を図1(a)〜(d)に示す。図1(a)は、FLAG抗体での染色を行わなかったpEGFP-FLAG-hGPR119一過性発現HEK293T細胞、図1(b)は、FLAG抗体での染色を行ったpEGFP-FLAG-hGPR119一過性発現HEK293T細胞、図1(c)は、FLAG抗体での染色を行ったpEGFP-mAssFLAG-hGPR119一過性発現HEK293T細胞、図1(d)は、FLAG抗体での染色を行ったpCG-FLAG-hGPR119(C末端GroEL1量体融合)一過性発現HEK293T細胞の結果である。図1(a)の領域Cは、2次抗体染色していないHEK293T細胞に相当する部分である。
【0079】
図1(a)と図1(b)との比較より、pEGFP-FLAG-hGPR119一過性発現HEK293T細胞ではFLAG抗体による染色の差が見られなかった。このことから、hGPR119のC末端にEGFP(分子量2万7千)を付加してもhGPR119の発現量が増加することはなく、hGPR119は一般的な方法では発現できないことが分かった。
【0080】
図1(c)に示すように、N末端にシグナル配列(mAss)を付加することによって、細胞膜上でのhGPR119の発現量が増加することが分かった。なお、図中の領域R2は、EGFP融合ベクターの発現をバックグラウンドとした場合に比して、FLAG抗体の結合が観察される領域に相当する。R2領域に含まれる、FLAG抗体の結合における平均蛍光強度は55であった。
【0081】
図1(d)に示すように、C末端にGroEL(分子量6万)を付加することによっても、細胞膜上でのhGPR119の発現量が増加することが分かった。領域R1は、HEK293T細胞をバックグランドにした場合に比して、FLAG抗体の結合が観察される領域に相当する。なお、R1領域に含まれるFLAG抗体の結合における平均蛍光強度は60であり、図1(c)の平均蛍光強度(55)よりも大きかった。
これにより、hGPR119のC末端にGroELを付加することによりhGPR119の発現量が増大することが示された。さらにGroELの付加は、シグナル配列(mAss)を付加して細胞膜への膜移行を行う従来の手法に比してより発現量を増加させることが分かった。
【0082】
(12)GroEL多量体を付加した場合の発現量検討
pCG-mAssFLAG-hGPR119ベクター、pCG2-mAssFLAG-hGPR119ベクター、pCG3-mAssFLAG-hGPR119ベクター、pCG4-mAssFLAG-hGPR119ベクター、pCG5-mAssFLAG-hGPR119ベクター、pCG6-mAssFLAG-hGPR119ベクター、又はpCG7-mAssFLAG-hGPR119ベクターを用いて、上記(11)と同様のFCMを行い、GroEL多量体(n=1〜7)をC末端に付加した場合のhGPR119発現量の増加を調べた。結果を図2(a)〜(h)に示す。図2(a)は、HEK293T細胞のみ(陰性対照)、図2(b)〜(h)はそれぞれn=1〜7の場合を示す。HEK293T細胞に相当するバックグランド領域を図2(a)の領域Cとした。図2(b)〜(h)において、領域Cに対してFLAG抗体の結合が観察される領域R1とし、その領域に含まれる平均蛍光強度を解析した。その結果、n=1の場合(分子量6万)は平均蛍光強度が75、n=2(分子量12万)の場合は平均蛍光強度が112、n=3の場合(分子量18万)は平均蛍光強度が61、n=4の場合(分子量24万)は平均蛍光強度が50、n=5の場合(分子量30万)は平均蛍光強度が44、n=6の場合(分子量36万)は平均蛍光強度が34、n=7の場合(分子量42万)は平均蛍光強度が41であった。
以上より、hGPR119のC末端にGroEL多量体を付加することによってもhGPR119の発現量が増大することが示された。また発現量に関し、n=2の場合に最も高い値が得られ、n=1,3の場合もそれに次ぐ高い値が得られた。
【0083】
(13)顕微鏡観察による細胞におけるhGPR119の発現分布
GroEL付加によってhGPR119の発現量が増加した細胞について、細胞の状態を蛍光顕微鏡を用いて観察した。ベクターとしてpEGFP-mAssFLAG-hGPR119ベクターとpIRESneo3-mAssFLAG-h119-EGFP-(GroEL)2ベクターを用い、HEK293T細胞による一過性発現の系で行った。一過性発現は、Lipofectamine 2000とOpti-MEMを用いて上記(9)と同様の方法で行った。
プレート上の細胞を蛍光顕微鏡(オリンパスIX70、WIBフィルター、倍率400倍)により観察した。結果を図3(a),(b)に示す。図3(a)はpEGFP-mAssFLAG-hGPR119ベクターを用いた一過性発現細胞の場合、図3(b)はpIRESneo3-mAssFLAG-h119-EGFP-(GroEL)2ベクターを用いた一過性発現細胞の場合の結果をそれぞれ示す。
【0084】
その結果、pEGFP-mAssFAG-hGPR119ベクターを用いた一過性発現細胞(図3(a))は、pIRESneo3-mAssFLAG-h119-EGFP-GroEL2 ベクターを用いた一過性発現細胞(図3(b))に比して、細胞内にタンパク質が局在しており、あまり細胞膜上に発現していないことが分かった。また細胞の形態についても、pEGFP-mAssFAG-hGPR119ベクターを用いた一過性発現細胞(図3(a))は丸みがかった細胞になっており、通常のHEK293T細胞とは異なった形態をとっているため、細胞に非常にストレスがかかった状態であった。それに対し、pIRESneo3-mAssFLAG-h119-EGFP-GroEL2ベクターを用いた一過性発現細胞(図3(b))の場合は、細胞の形態は、通常のHEK293T細胞に近い状態であり、発現も細胞膜により局在していることが分かった。
【0085】
(14)継代によるhGPR119安定発現細胞における発現安定性検討
上記(9)で作製した、mAssFLAG-hGPR119-EGFP/HEK293細胞、mAssFLAG-hGPR119-(GroEL)2/HEK293細胞、およびmAssFLAG-hGPR119-EGFP-(GroEL)2/HEK293細胞を、安定発現株取得完了時点を0日目として継代を続け、経過時間ごとのhGPR119の細胞表面におけるhGPR119の発現量の経時変化をプロットした。発現量の測定は、上述のFLAG抗体を用いたFCMにて行った。結果を図4に示す。各プロットは、FLAG抗体で染色された細胞集団の蛍光強度の平均値である。すなわち、hGPR119のC末端にEGFPのみ(分子量2万7千)を付加した場合は、継代を重ねるごとに発現量が低下し、14日目以降で発現量がほぼバックグランド程度に低下した(図4の(●))。これに対し、GroEL2量体(分子量12万)またはGroEL2量体とEGFP(分子量14万7千)を付加した場合は、継代を重ねても長期間にわたって高発現が維持された(図4の(■)と(▲))。
【0086】
(15)hGPR119のcAMPシグナル測定
上記(9)で作製した、mAssFLAG-hGPR119-EGFP/HEK293細胞、mAssFLAG-hGPR119-(GroEL)2/HEK293細胞、及びmAssFLAG-hGPR119-EGFP-(GroEL)2/HEK293細胞、並びにHEK293細胞(陰性対照)を用い、hGPR119のcAMPシグナルを測定した。hGPR119に対するリガンドとして、N-Oleoylethanolamine(OEA)(シグマアルドリッチ社)を用いた。cAMP測定は、cAMP測定キット(CatchPoint Cyclic-AMP Fluorescent Assay Kit, モレキュラーデバイス社)を用いて行い、EC50値を算出した。
【0087】
結果を図5に示す。まず、mAssFLAG-hGPR119-EGFP/HEK293細胞(■)では、EC50が6.7×10-6Mであった。この値は非特許文献1に記載の値とほぼ同等であり、hGPR119が有する本来の活性と考えられた。すなわち、hGPR119のC末端にEGFPを付加してもhGPR119の立体構造に変化はなく、かつシグナル抑制も起こっていないと考えられた。
一方、mAssFLAG-hGPR119-(GroEL)2/HEK293細胞(▼)では、mAssFLAG-hGPR119-EGFP/HEK293細胞(■)の曲線と比較して、cAMPシグナル変異量がOEAの添加量に対して小さく、cAMPシグナルが抑制されていた。EC50については1.7×10-6Mであり、非特許文献1に記載の値とほぼ同等であることから、hGPR119が有する本来の活性と考えられた。すなわち、hGPR119のC末端にGroEL2量体を付加してもhGPR119の立体構造に変化はないと考えられた。
さらに、mAssFLAG-hGPR119-EGFP-(GroEL)2/HEK293細胞(◆)では、シグナル強度の変化が観察されず(EC50が算出不能)、HEK293細胞(陰性対照)と同レベルまでcAMPシグナルが抑制されていた。
以上より、hGPR119のC末端にタンパク質を付加した場合、EGFPのみ(分子量2万7千)の付加ではcAMPシグナルが抑制されないが、GroEL2量体(分子量12万)の付加及びGroEL2量体とEGFP(分子量14万7千)の付加ではcAMPシグナルが抑制されることが示された。
なお、GroEL2量体とEGFPを付加した場合の方がGroEL2量体のみの付加よりもシグナル伝達がより抑制されたのは、可能性として、分子量の違いによる立体障害の差によるものと考えられる。
【0088】
(16)フローサイトメトリーを用いたhAGTR1の蛍光リガンド結合実験
上記(10)で作製したFLAG-hAGTR1/CHO細胞(hAGTR1の安定発現細胞)、並びに、pIRESneo3-FLAG-hAGTR1ベクター、pCG2-hAGTR1ベクター、又はpCG3-hAGTR1ベクターをHEK293T細胞で一過性発現させた細胞を用いて、FCMによる蛍光リガンド結合実験を行った。一過性発現は、Lipofectamine 2000とOpti-MEMを用いて上記(9)と同様の方法で行った。蛍光色素(Alexa488)を結合したATIIのリガンドとして、ATII−Alexa488(インビトロジェン社、Ex=495nm、Em=519nm)を用いた。
【0089】
各細胞を培養フラスコから剥がし、PBSで洗浄した後、30μMのATII−Alexa488のPBS溶液で、4℃で1時間インキュベーションを行った。その後、各細胞をPBSで洗浄し、フローサイトメーター(FACSCalibur)を用いて、hAGTR1発現細胞とATIIの結合相互作用を解析した。
【0090】
結果を図6(a)〜(e)に示す。図6(a)はリガンドを添加していないhAGTR1の安定発現細胞の測定結果であり、バックグランドに相当する(陰性対照)。図6(b)はリガンドを添加した場合のhAGTR1の安定発現細胞の測定結果である(陽性対照)。図6(b)のように、安定発現細胞では細胞の集団全体がX軸方向(ATII−Alexa488の蛍光強度の増加方向)にシフトしており、リガンドが結合したことを示している。
図6(c)はpIRESneo3-FLAG-hAGTR1ベクターを用いた一過性発現細胞、図6(d)はpCG2-FLAG-hAGTR1ベクターを用いた一過性発現細胞、図6(e)はpCG3-FLAG-hAGTR1ベクターを用いた一過性発現細胞の結果である。いずれの場合も、細胞の集団全体がX軸方向(ATII−Alexa488の蛍光強度の増加方向)にシフトしており、リガンドが結合していた。これは、hAGTR1のC末端にGroEL2量体またはGroEL3量体を付加した場合でも、リガンド結合活性を保持していることを示していた。なお、宿主細胞であるHEK293T細胞を用いた場合はX軸方向へのシフトはみられなかった。
【0091】
(17)hAGTR1のカルシウムシグナル測定実験
pCG2-hAGTR1ベクターとpCG3-hAGTR1ベクターの一過性発現CHO細胞を用いて、細胞内Ca2+シグナル伝達活性評価を行った。陽性対照としてpIRESneo3-FLAG-hAGTR1ベクターの一過性発現CHO細胞を用いた(hAGTR1発現、シグナル伝達あり)。陰性対照として、宿主細胞であるCHO細胞(hAGTR1未発現、シグナル伝達なし)を用いた。
【0092】
各細胞2×104個を96穴マイクロタイタープレートに蒔き、播種したプレートの各穴にリガンドであるATII(ペプチド研究所)を10μMになるように添加した。ATIIを添加した後、各細胞がATIIによって刺激された際の細胞内Ca2+濃度の一過的上昇度を測定した。測定はN=3で実施し、シグナル変化量をベースライン値(10秒までの値)と最大との差分の平均値として算出した。Ca2+濃度変化測定は、Ca2+シグナル解析装置(FLIPR;Molecular Devices社)及び細胞内Ca染色キット(Ca3kit;Molecular Devices社)を用いて行った。
【0093】
結果を図7に示す。(a)はpIRESneo3-FLAG-hAGTR1ベクター(陽性対照)、(b)はpCG2-FLAG-hAGTR1ベクター、(c)はpCG3-FLAG-hAGTR1ベクターの、各一過性発現CHO細胞の結果である。(d)はCHO細胞の結果である(陰性対照)。図7においてリガンドであるATIIを添加した横軸10秒の地点をベース(最小値)とし、Ca2+シグナル変化量の最大値との差に相当するシグナル変化量は、(a):84.3、(b):74.2、(c):49.5、(d):47.0であった。
以上より、hAGTR1のC末端にGroEL2量体またはGroEL3量体を連結することにより、細胞内Ca2+シグナル伝達を抑制することができた。また、分子量が大きいGroEL3量体(c)の方が、GroEL2量体(b)に比べてシグナル伝達抑制効果が高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜貫通受容体をコードする遺伝子が導入され、前記膜貫通受容体を細胞膜上で発現可能である組換え真核細胞であって、前記膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものであり、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドが連結され、リガンド結合活性を保持した状態で前記膜貫通受容体を発現可能であることを特徴とする組換え真核細胞。
【請求項2】
前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドが連結された膜貫通受容体をコードする遺伝子が導入されたものであることを特徴とする請求項1に記載の組換え真核細胞。
【請求項3】
前記タンパク質又はポリペプチドの分子量は、6万以上かつ18万以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の組換え真核細胞。
【請求項4】
前記膜貫通受容体は、7回膜貫通型受容体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の組換え真核細胞。
【請求項5】
前記7回膜貫通型受容体は、Gタンパク質共役型受容体であることを特徴とする請求項4に記載の組換え真核細胞。
【請求項6】
前記Gタンパク質共役型受容体は、GPR119又はアンジオテンシンII受容体タイプIであることを特徴とする請求項5に記載の組換え真核細胞。
【請求項7】
膜貫通受容体をコードする遺伝子を真核細胞に導入する工程を有し、前記膜貫通受容体は細胞膜の内側にC末端が存在するものであり、前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドを連結することにより、前記膜貫通受容体のリガンド結合活性を保持しつつ細胞内シグナル伝達を抑制することを特徴とする細胞内シグナル伝達抑制方法。
【請求項8】
前記C末端に分子量3万以上のタンパク質又はポリペプチドが連結された膜貫通受容体をコードする遺伝子を細胞に導入することを特徴とする請求項7に記載の細胞内シグナル伝達抑制方法。
【請求項9】
前記タンパク質又はポリペプチドの分子量は、6万以上かつ18万以下であることを特徴とする請求項7又は8に記載の細胞内シグナル伝達抑制方法。
【請求項10】
前記膜貫通受容体は、7回膜貫通型受容体であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の細胞内シグナル伝達抑制方法。
【請求項11】
前記7回膜貫通型受容体は、Gタンパク質共役型受容体であることを特徴とする請求項10に記載の細胞内シグナル伝達抑制方法。
【請求項12】
前記Gタンパク質共役型受容体は、GPR119又はアンジオテンシンII受容体タイプIであることを特徴とする請求項11に記載の細胞内シグナル伝達抑制方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−120507(P2012−120507A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275733(P2010−275733)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】