説明

組積用ブロック及びそれを用いた施工方法

【課題】目地が目立たずに美観に優れたブロック塀の施工が比較的容易に実現できる組積用ブロックとその施工方法を提供する。
【解決手段】組積用ブロック13、14であって、ブロック上面に当該ブロック上面領域33、33´の両端面を残した状態で多段溝部31、32、31´、32´がブロック長手方向にわたって形成され、その残されたブロック上面領域33、33´の両端面にそれぞれモルタル収容溝34、34´がブロック長手方向にわたって形成されていることを特徴とする組積用ブロックとそれを用いた施工方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック塀等の組積ブロック構造体の施工において、左右及び上下に積み上げるために用いられる組積用ブロック及びそれを用いた施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロック塀は、例えばプライバシーの確保、防犯、防火、敷地境界表示等の様々な役割を果たし、外構構造物としてきわめて重要な役割を果たしている。このようなブロック塀は、一般的にはブロックを上下及び左右に順に積み上げることにより施工される。
【0003】
ブロックを用いた施工方法としては、上下方向に積み上げる場合は、通常はモルタルを用いて積み上げる。図1には、ブロックの側面(左右のブロックと隣接する面)の模式図を示す。図1に示すように、ブロック10の上面11にモルタル12を充填した上で、次のブロックをその上から順に積み上げることによりブロック塀がつくられる。左右方向についても同様に、ブロック10の側面にモルタル(図示せず)を充填して次のブロックを順に配置すれば良い。
【0004】
このようにして構成されるブロック塀に要求される特性は、強度、耐久性等に加え、その外観(意匠性)も重要である。このような見地より、ブロックがブロック塀の外観を構成する面に意匠を施した化粧ブロックも多用されているが、それだけでなくその施工の仕上がりの美しさも必要不可欠である。ところが、従来のブロックでは、ブロックを積み上げた際に高さ調整のためモルタルを押し込むとブロック塀の表面にモルタルが大きくはみ出るため、はみ出た余分なモルタルは目地コテ等で目地押え又は掻き落しの作業を行う必要があるが、たとえこれらの作業を実施したとしても目地が目立ってしまい、ブロック塀等としての外観を損ねる原因となる。
【0005】
これに関し、ブロックどうしの間に隙間が形成されるような溝部をブロックに設けることにより、その隙間にモルタルを充填する組積構造が提案されている(特許文献1)。この礎石構造によれば、上記隙間にモルタルが充填されるので、ブロックを積み重ねた状態でモルタルがブロック側面からはみ出すことはないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−291622
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術では、上下方向にブロックどうしが直接に接触するような組積構造であるため、ブロックどうしの寸法誤差を緩衝することが困難である。組積に用いるブロックは同一寸法で設計されているものの、実際はそれぞれ微妙な誤差がある。この誤差は目地により吸収することができるが、目地のない状態で組積すればその誤差を吸収することができなくなる。
【0008】
また、上記の従来技術では、ブロックどうしが接しているためにブロック塀として見た場合にその外観に目地が全くない状態になるため、場合によってはかえって意匠性(変化)に乏しくなることがある。
【0009】
従って、本発明の主な目的は、目地のモルタルが見えにくく美観に優れたブロック塀の施工が比較的容易に実現できる組積用ブロックとその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有するブロックを採用することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の組積用ブロック及びそれを用いた施工方法に係る。
1. 組積用ブロックであって、ブロック上面に当該ブロック上面領域の両端面を残した状態で多段溝部がブロック長手方向にわたって形成され、その残されたブロック上面領域の両端面にそれぞれモルタル収容溝がブロック長手方向にわたって形成されていることを特徴とする組積用ブロック。
2. ブロック下面に当該ブロック下面領域の両端面を残して溝部がブロック長手方向にわたって形成され、その残されたブロック下面領域の両端面にそれぞれモルタル収容溝がブロック長手方向にわたって形成されている、前記項1に記載の組積用ブロック。
3. ブロック上面のモルタル収容溝とブロック下面のモルタル収容溝とが実質的に対向するように形成されている、前記項2に記載の組積用ブロック。
4. 組積用ブロックとして、ブロック上面に当該ブロック上面領域の両端面を残した状態で多段溝部がブロック長手方向にわたって形成されているブロックを用いて組積ブロック構造体を施工する方法であって、組積用ブロック上面から少なくとも第一段目の多段溝部にモルタルを充填し、組積用ブロックどうしが上下方向に直接接触しないようにモルタルを介しながら組積用ブロックを上下方向に積み重ねる工程を含むことを特徴とする組積施工方法。
5. 組積用ブロックとして、前記項1〜3のいずれかに記載の組積用ブロックを用いて組積ブロック構造体を施工する方法であって、組積用ブロック上面から少なくとも第一段目の多段溝部にモルタルを充填し、組積用ブロックどうしが上下方向に直接接触しないようにモルタルを介しながら組積用ブロックを上下方向に積み重ねる工程を含むことを特徴とする組積施工方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組積用ブロックによれば、特定の箇所にモルタル収容溝を形成しているので、モルタル使用量が規定量よりも多くなってもモルタルがモルタル収容溝に逃げることができるので、ブロック塀等の組積ブロック構造体の表面又は表面付近にモルタルがはみ出ることを効果的に防止することができる。これにより、目地(特に横目地)のモルタルが見えにくくなり、優れた美観を得ることができる。同時に、従来のブロックで必要とされていた目地押さえ等も不要となるので、工程を簡略化することができる。これらの結果として、職人の技量差・経験差による問題も緩和ないしは解消でき、いずれの職人も優れた美観を有する組積ブロック構造体を構築することができる。
【0013】
また、多段溝部及びモルタル収容溝の形成又はこれらのサイズ変更により、所望の目地幅をもつ組積ブロック構造体を得ることができる。例えば、目地幅4〜6mm(特に4.5〜5.5mm)という比較的狭い目地幅をもつブロック塀をつくることも可能である。このような目地幅は、4mm未満の極細目地に比べて施工が容易である上、できあがった組積ブロック構造体は目地モルタルのはみ出しがなく、かつ、目地幅の狭さも相まって目地のモルタルがよりいっそう見えにくくできる点で優れている。
【0014】
さらに、本発明の組積用ブロックでは、前記のように、モルタル収容溝に余剰のモルタルが収容された場合は、モルタル収容溝がない場合に比してモルタルとブロックとの接触面積が大きくなるので、それだけ高い強度を得ることも可能となる。
【0015】
本発明の施工方法によれば、上下方向においてモルタル(横目地)を介在させることにより、組積用ブロックが互いに直接接触しないように施工するので、組積用ブロック間の寸法誤差をモルタル部分により効果的に吸収することができ、所望の設計通りの組積ブロック構造体をつくることができる。また、化粧面(コンクリート化粧面)に約5mmの疑似目地(リブ(縦溝))を設けることにより、意匠的に優れた構造体を提供することができる。
【0016】
特に、組積用ブロックとして本発明の組積用ブロックを用いる場合には、そのモルタル収容溝によりモルタルのはみ出しを効果的に防止することができるので、目地押さえ又は掻き取りの作業を省略することができる。その結果、職人の熟練度合いにかかわらず、美観に優れた組積ブロック構造体をよりいっそう容易に構築することが可能である。
【0017】
このようにして得られる組積ブロック構造体は、通常のコンクリートブロックでは390〜398mm×190mm×100〜150mmサイズであるが、本発明では横目地の幅を例えば4.5〜5.5mmに設定し、ブロックサイズを398mm×195mm×120mm(150mm)にした上で、化粧面に5mm前後の擬似目地をブロック化粧面の縦方向(場合によっては横方向)に設けた場合、略正方形の組積ブロック構造体を構築することもできる。このような構造体は、施工後の一体感も出るので、その点においても優れた美観を発揮することができる。また、互いに異なるデザイン、色、形状、質感等をもつブロックを用いた場合は、色ムラ等の問題も解消できるほか、多様な顧客の要望に応じることができる商品として期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来のブロックにモルタルを配置した状態を示す概略図である。
【図2】本発明の組積用ブロックの下面、化粧面及び上面を示す概略図である。
【図3】本発明の組積用ブロックの上面を示す概略図である。
【図4】本発明の組積用ブロック(下側)に組積用ブロック(上側)を載せる状態を示す図である。
【図5】本発明の組積用ブロックにおけるモルタル収容溝の形状(断面形状)の一例を示す図である。
【図6】本発明の組積用ブロックにおけるモルタル収容溝の形状(断面形状)の一例を示す図である。
【図7】本発明の組積用ブロックにおけるモルタル収容溝の形状(断面形状)の一例を示す図である。
【図8】本発明の組積用ブロックにおけるモルタル収容溝の形状(断面形状)の一例を示す図である。
【図9】本発明の施工方法の工程の模式図である。
【図10】本発明の施工方法により得られた組積ブロック構造体の化粧面の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
10 ブロック
11 ブロック上面
12 モルタル(充填モルタル)
13 組積用ブロック(下)
14 組積用ブロック(上)
21 ブロック穴
22 ブロック化粧面
31 多段溝部第二段
32 多段溝部第一段
32’多段溝部第一段
33 ブロック上面領域
33’ブロック上面領域
34 モルタル収容溝
34’モルタル収容溝
40 組積用ブロック(上)の下面の溝部(凹部)の段差(傾斜面)
41 多段溝部第一段の段差(傾斜面)
42 組積用ブロック(上)の下面の溝部(凹部)
43 組積用ブロック(上)の下面領域
43’組積用ブロック(上)の下面領域
44 横目地
45 縦目地
46 疑似目地
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.組積用ブロック
本発明の組積用ブロックは、ブロック上面に当該ブロック上面領域の両端面を残した状態で多段溝部がブロック長手方向にわたって形成され、その残されたブロック上面(最上面)領域の両端面にそれぞれモルタル収容溝がブロック長手方向にわたって形成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の組積用ブロックの大きさ及び形状(外形)は限定的でなく、公知のブロック(コンクリートブロック等)で採用されている大きさ及び形状を採用することができる。また、その材質も限定されず、コンクリート、セラミックス、天然石等のいずれであっても良い。さらに、本発明の組積用ブロックは、化粧ブロックであっても良い。ブロック化粧面に縦方向又は横方向にわたって疑似目地(溝部)が形成されたものであっても良い。
【0022】
本発明の組積用ブロックの多段溝部は、ブロック上面に当該ブロック上面領域の両端面を残した状態で形成されている。本発明では、ブロック上面を上から見た状態において、ブロック上面の長さ方向に走る中心線を軸とした対称形の多段溝部(領域)を形成し、その両側に非多段溝部として同じ面積を有する領域が形成できるようにすることが好ましい。
【0023】
また、本発明の組積用ブロックの多段溝部は、略階段状に形成されており、2段又は3段以上の構成とすることができる。通常は、第一段及び第二段からなる2段の溝部とすれば良い。多段溝部の段差部分(高さ方向の面)は、垂直(鉛直)であっても良いし、傾斜していても良い。また、多段溝部の各段の大きさ、段差の高さ等は特に制限されないが、少なくともブロック上面から数えて第一段には施工時にモルタルが配置されることになるので、必要量のモルタルが載せられる大きさ等に設定することが好ましい。
【0024】
また、多段溝部は、ブロック長手方向にわたって形成されている。通常は、多段溝部は、ブロック長手方向にかけて同じ断面形状を維持していることが好ましい。なお、多段溝部の途中には配筋等のためのブロック穴(貫通穴)が開いていても良い。ブロック穴の個数、形状等は限定されず、公知又は市販のコンクリートブロック等で採用されているものと同様のものを採用することができる。
【0025】
多段溝部を構成しないブロック上面領域の両端面にそれぞれモルタル収容溝がブロック長手方向にわたって形成されている。両端面にモルタル収容溝を形成することにより、余分なモルタルが収容され、組積ブロック構造体の表面にモルタルがはみ出ることを防止し、目立たない目地を作り上げることができる。モルタル収容溝の溝形状は、凹状、V字状、U字状等のいずれの形状であっても良い。また、モルタル収容溝の本数も限定的でなく、組積ブロックの大きさ、前記領域の面積、溝幅、溝形状等に応じて1本、2本等のように適宜決定することができる。
【0026】
本発明の組積用ブロックの下面(底面)の形状は特に限定されないが、前記の両端面に対応する下面領域の両端面を有し、その両端面以外の部分に溝部がブロック長手方向にわたって形成されている構成を好適に採用することができる。また、下面領域(最下面)の両端部には、上面領域と同様に、モルタル収容溝がブロック長手方向にわたって形成されていても良い。これにより、モルタル収容力をより高めることが可能になる。下面領域の両端面にモルタル収容溝を有する場合は、そのモルタル収容溝の位置、本数及び溝幅は、上面領域の両端面に形成されたモルタル収容溝に対応(対向)するように同じ位置、本数及び幅に形成しておくことが望ましい。なお、下面領域の両端面にモルタル収容溝の溝形状(断面形状)は、上面領域の両端面に形成されたモルタル収容溝のそれと同じであっても異なっていても良い。
【0027】
2.組積用ブロックを用いた施工方法
本発明の施工方法は、組積用ブロックとして、ブロック上面に当該ブロック上面領域の両端面を残した状態で多段溝部がブロック長手方向にわたって形成されているブロックを用いて組積ブロック構造体を施工する方法であって、組積用ブロック上面から少なくとも第一段目の多段溝部にモルタルを充填し、組積用ブロックどうしが上下方向に直接接触しないようにモルタルを介しながら組積用ブロックを上下方向に積み重ねる工程を含むことを特徴とする。
【0028】
また、本発明では、本発明の組積用ブロックを用いて組積ブロック構造体を施工する方法であって、組積用ブロック上面から少なくとも第一段目の多段溝部にモルタルを充填し、組積用ブロックどうしが上下方向に直接接触しないようにモルタルを介しながら組積用ブロックを上下方向に積み重ねる工程を含むことを施工方法も包含する。
【0029】
このように、本発明の施工方法では、組積用ブロックとしては、前記の本発明の組積用ブロックのほか、そのブロックにおいてモルタル収容溝を有しないブロックも用いることができる。そして、本発明では、施工時にブロック上面が組積用ブロックを積み上げる方向になるように配置して組積用ブロックを用いることができ、通常は施工時にブロック上面が上向きとなるよう配置・積み重ねを行えば良い。
【0030】
本発明の施工方法では、多段溝部の少なくとも第一段の部分にモルタルを充填する。この場合のモルタル(セメント及び砂を含む組成物)は、公知又は市販のモルタルを使用することができる。モルタルは、第一段の部分に充填すれば良いが、第二段又はそれ以降の部分又は組積用ブロック上面にまたがって充填しても良い。このような場合であっても、余分なモルタルは、多段溝部又はモルタル収容溝に充填されるので、外側にはみ出ることはない。
【0031】
モルタルを充填した後、別途に用意した組積用ブロックをその上から積み上げる。この場合、上下の組積用ブロックどうしが直接接触しないようにモルタル(モルタル層)を介した状態で組積用モルタルを載せる。このようにして目地(横目地)を有する組積ブロック構造体を得ることができる。特に、本発明の組積用ブロックを使用する場合には、特に横目地の幅をより正確に調節することができる。そのため、例えば4.5〜5.5mmという比較的狭い幅の横目地をより容易に形成することができる。このような横目地は、目地モルタルが目立ちにくく、優れた美観を発揮することができる。特に、横方向(水平方向)に一体感(連続感)を出すことできるので、これまでにない新しいデザインを提供することができる。
【0032】
なお、本発明の施工方法では、上記特徴以外の工程(配筋、基礎、控壁等の施工)については公知の方法に従って実施することができる。従って、例えば本発明の組積用ブロックとして化粧ブロックを用い、横筋用ブロックとともに必要に応じてコーナー用ブロックを用いて所定の意匠をもつ組積ブロック構造体をつくることができる。また、これらの化粧ブロックの個々の意匠及び/又はサイズが異なるものを用いることで多彩なデザインを与えることができる。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0034】
実施例1
本発明の組積用ブロックを用いた施工例を示す。図2に組積用ブロックの下面(a)、
側面(化粧面22)(b)及び上面(c)の概略図を示す。この組積用ブロックはコンクリート製のものを使用する。ブロック外寸は、長さ398mm×高さ195mm×幅120mmである。下面には1つのブロック当たり3つのブロック穴21が設けられている。下面(a)は、下面領域の両端部43を残して溝部42がブロック長手方向にわたって形成されており、その段差40は傾斜面をなしていても良い。上面(c)は、下面領域の両端部33を残して多段溝部第一段32及び第二段落31からなる多段溝部がブロック長手方向にわたって形成されており、その第一段32の段差40は傾斜面をなしていても良い。第二段の段差は断面形状がU字状をなしている。上面には1つのブロック当たり1つのブロック穴21が設けられている。上面及び下面におけるブロック穴の個数、形状等は適宜設定することができる。図2では、側面に形成されている疑似目地及び上面(c)に存在するモルタル収容溝の表記は省略している。
【0035】
図3は、組積用ブロックの上面を上から見た概略図である。図3において、ブロック上面に当該ブロック上面領域の両端面33、33’を残した状態で多段溝部第二段31及び多段溝部第一段32、32’からなる多段溝部がブロック長手方向にわたって形成され、その残されたブロック上面領域の両端面33、33’にそれぞれ1本のモルタル収容溝34、34’がブロック長手方向にわたって形成されている。
【0036】
図4は、組積用ブロックを上下に積み上げる状態を側面(断面)から見た概略図である。これは、下側の組積用ブロック13の上面に対し、上側の組積用ブロック14の下面を積み重ねる状態である。図4の組積用ブロック13は、第一段32及び第二段31の2段からなる多段溝部を有する。図4では、多段溝部第一段の段差41は傾斜面を構成していても良くまた垂直(鉛直)に形成されていても良い。これは、多段溝部の各段の段差においても同様である。また、多段溝部の第二段のように略円弧状又はU字状の溝形状(断面形状)であっても良い。
【0037】
また、図4の組積用ブロック14のように、本発明の組積用ブロックの下面(底面)は、ブロック下面に当該ブロック下面領域の両端面43、43’を残した状態で溝部42がブロック長手方向にわたって形成されていても良い。この場合、組積用ブロック13の前記両端面33、33’が、組積用ブロック14の両端面43、43’に対向するように形成することが望ましい。また、組積用ブロック13の前記両端面33、33’の各幅と、組積用ブロック14の43、43’の各幅とは、互いに同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0038】
前記両端面33、33’上にはモルタル収容溝(図示せず)が長手方向にわたって形成されている。図5の円Aの部分における拡大図を図5〜図8に示す。これらの図に示すように、モルタル収容溝34の溝形状(断面形状)は、V字状(図5)、台形状(図6)、U字状(図7)、凹状(コの字状)(図8)等のいずれの形状であっても良い。また、図5〜図8では、モルタル収容溝34の本数はいずれも2本(両端で合計4本)であるが、1本であっても良いし、3本以上であっても良い。
【0039】
そして、図4のように、下側の組積用ブロック13の少なくとも多段溝部の第一段32、32’上にモルタルを載せる(前記第一段32のモルタルの表示は省略)。次いで、その上から組積用ブロック14を積み上げる。このとき、多段溝部の第一段32、32’上に載せられたモルタル12は、組積用ブロック14の重みにより加圧されて組積用ブロック13の両端面33、33’と組積用ブロック14の両端面43、43’との隙間で水平方向に広がるが、その広がる過程においてモルタルの一部がモルタル収容溝34に収容される。これにより、モルタルがはみ出ることを防止することができる。
【0040】
また、これらの一連の工程の概要を図9に示す。まず下側になる組積用ブロック13を用意し、少なくとも多段溝部の第一段32、32’上にモルタルを載せる。その上から上側になる組積用ブロック14を載せる。これにより、モルタル12が水平方向に広がり、下側の組積用モルタルと上側の組積用モルタルとの間に目地(横目地)44を形成することになる。すなわち、下側の組積用モルタルと上側の組積用モルタルとは、互いに直接接触せずに、モルタルによる目地を介して積み重ねられる。この場合、目地幅が4.5〜5.5mm(特に5mm)となるように施工すれば、目地のモルタルが目立ちにくくなり、特に優れた外観を呈する組積ブロック構造体を構築することができる。なお、図9では、モルタル収容溝の図示は省略している。
【0041】
このようにして構築された組積ブロック構造体の化粧面の一例を図10に示す。図10では、横目地44及び縦目地45が存在するが、上図の組積ブロック構造体の縦目地と隣接する縦目地との間(中央部)に疑似目地46(縦溝)が形成されている。このように、本発明の組積用ブロックで形成された構造体にあっては横目地44の目地モルタルが目立たなる一方、疑似目地46が存在することにより、組積ブロック構造体があたかも化粧面が正方形のブロックから構成されているかのような印象を与えることができる。具体的には、上記のように、横目地の幅を例えば4.5〜5.5mmに設定し、ブロックサイズを398mm×195mm×120mm(又は150mm)にした上で、化粧面に5mm前後の擬似目地(縦目地)を化粧面に設けた場合、化粧面が略正方形の集合体からなる外観(正方形の格子状外観)をもつ組積ブロック構造体を構築することができる。また、疑似目地を設けない場合でも、横目地が目立たないため、組積ブロック構造体において横方向に安定感のある印象をもたせることもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組積用ブロックであって、ブロック上面に当該ブロック上面領域の両端面を残した状態で多段溝部がブロック長手方向にわたって形成され、その残されたブロック上面領域の両端面にそれぞれモルタル収容溝がブロック長手方向にわたって形成されていることを特徴とする組積用ブロック。
【請求項2】
ブロック下面に当該ブロック下面領域の両端面を残して溝部がブロック長手方向にわたって形成され、その残されたブロック下面領域の両端面にそれぞれモルタル収容溝がブロック長手方向にわたって形成されている、請求項1に記載の組積用ブロック。
【請求項3】
ブロック上面のモルタル収容溝とブロック下面のモルタル収容溝とが実質的に対向するように形成されている、請求項2に記載の組積用ブロック。
【請求項4】
組積用ブロックとして、ブロック上面に当該ブロック上面領域の両端面を残した状態で多段溝部がブロック長手方向にわたって形成されているブロックを用いて組積ブロック構造体を施工する方法であって、組積用ブロック上面から少なくとも第一段目の多段溝部にモルタルを充填し、組積用ブロックどうしが上下方向に直接接触しないようにモルタルを介しながら組積用ブロックを上下方向に積み重ねる工程を含むことを特徴とする組積施工方法。
【請求項5】
組積用ブロックとして、請求項1〜3のいずれかに記載の組積用ブロックを用いて組積ブロック構造体を施工する方法であって、組積用ブロック上面から少なくとも第一段目の多段溝部にモルタルを充填し、組積用ブロックどうしが上下方向に直接接触しないようにモルタルを介しながら組積用ブロックを上下方向に積み重ねる工程を含むことを特徴とする組積施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−196312(P2010−196312A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40774(P2009−40774)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(591286085)東洋工業株式会社 (17)