説明

組織の液状化に基づく脂肪吸引術

内部空洞と、物質がこの空洞に進入することを許容するように構成された開口部とを有するカニューレを使用して、標的組織を被験者から除去することができる。これは、組織の一部が開口部の中へ引き込まれるように、負圧を空洞の中に生成することによって実現される。次いで導管を介して流体が送達されて、この流体が空洞の内部の導管を退出して、開口部の中へ引き込まれた組織の一部に衝突する。流体は、組織を軟化、液状化、またはゲル状化させる圧力および温度で送達される。次いで軟化、液状化、またはゲル状化された組織は吸い取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年4月30日に出願した米国仮出願第60/915027号の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
脂肪吸引術は、脂肪形成術(脂肪モデリング)、脂肪彫刻(liposculpture)、または吸引脂肪除去手術(吸引補助式脂肪除去)としても知られており、人体の多数の様々な部位(例えば、胸部、臀部、腰回り、大腿部、または腕部)から皮下脂肪を除去する美容外科手術である。典型的な脂肪吸引手術は、鋭利な刃の器具の剪断動作に依拠し、脂肪沈着物を切り取る。次いで、剪断された脂肪沈着物は、カニューレの開口部の中へ吸い取られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この処置は、外科医には大きな労力を要し、患者に外傷性となり、かつ非常に時間が掛かるものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に説明される方法および装置を用いると、脂肪組織の部分がカニューレ中の開口部の中へ引き込まれて、加熱された溶液は、これらの組織部分に衝突する。この加熱溶液は、脂肪組織の部分を液状化またはゲル状化し、それらを患者の身体からより容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】組織液状化システムの実施形態を示す図である。
【図2】図1の実施形態の先端部の細部を示す図である。
【図3】図1の実施形態の先端部の別法による構成を示す断面図である。
【図4】図1の実施形態の先端部の他の別法による構成の細部を示す図である。
【図5】前方を向く外部腫張噴霧塗布器を含む組織液状化システムの別の実施形態を示す図である。
【図5A】前方を向く外部腫張噴霧塗布器を含む組織液状化システムの別の実施形態を示す図である。
【図6】カニューレの先端部の幾つかの変形例を示す図である。
【図7】推奨度がより低い実施形態において、どのようにカニューレが外部流体供給経路を備えて構成されうるかを示す図である。
【図8】どのようにカニューレが吸引経路の内部にある流体供給管を備えて構成されるかを示す図である。
【図9】吸引経路の内部にある単一の流体供給管を備えるカニューレを示す図である。
【図10】2本の内部流体供給管を備えるカニューレ構成を示す図である。
【図11】吸引経路の内部にある2本の流体供給経路を有するカニューレを示す図である。
【図12】吸引経路の内部にある6本の流体供給経路を備えるカニューレを示す図である。
【図13】6本の内部流体供給経路を備える別法のカニューレ構成を示す図である。
【図14】適切な流体加熱および加圧システムのブロック図である。
【図15】高速度カメラの流体供給画像と圧力上昇グラフとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下に説明される実施形態は、一般に、生体から標的組織を除去するために、標的組織を加熱して軟化、ゲル状化、または液状化するように、加圧され加熱された生体適合性流体を送達することを必要とする。この加熱生体適合性流体は、一連のパルスとして送達されることが好ましいが、別法の実施形態では、連続流として送達されてもよい。組織が軟化、ゲル状化、または液状化された後で、組織は、被験者の身体から吸い出される。
【0007】
被験者との相互作用は、図1〜図4に示されるカニューレ30で発生する。カニューレの先端部は、被験者の体内へ導入するために滑らかで丸味を帯びていることが好ましく、カニューレの基端部は、ハンドピース20と嵌合するように構成される。カニューレ30は、内部空洞を有し、かつこの空洞の中へ開口する1以上の開口部37を有する。これらの開口部37は、カニューレ30の先端部分の近くに位置することが好ましい。低圧源が適切な取付け具を介して空洞まで連結されると、標的組織を開口部37の中へ引き込む吸引力が生成される。
【0008】
また、カニューレは、空洞の中へ引き込まれた標的組織の上に加熱流体を誘導する1以上の流体供給管35を有する。これら流体供給管は、カニューレの外壁に対して内側に(図8に示されている)配置されることが好ましいが、別法の実施形態では、供給管の長さの一部についてカニューレに対して外側に(図7に示されている)あってよい。加熱流体供給管35は、カニューレの外壁の内部において、吸引開口部37の近傍で終端することが好ましい。流体供給管35は、流体が空洞の中へ引き込まれた標的組織に作用するように、開口部37を横切って流体を噴霧するように配置される。組織流体流を送達することは、カニューレの外壁の内部に閉じ込められることが好ましい。
【0009】
流体送達部分は、流体供給貯槽4と、この貯槽4中の流体を加熱する熱源8と、所望の温度を維持するために必要に応じて熱源8を制御する温度調整器9と、を使用して実施される。流体供給源4からの加熱流体は、圧力調整器11を備えるポンプシステム19のような適切な装置によって、所定圧力下で送達される。任意で、加熱流体計量デバイス12は、送達された流体を測定するために設けられてもよい。
【0010】
ポンプ19は、加熱流体を貯槽または流体供給源4から流体供給管35を伝って汲み出し、流体供給管35は、カニューレ30の基端部からカニューレの先端部まで走る。これらの流体供給管は、カニューレの先端部近傍でUターンしており、カニューレ30の基端部に向かって後ろを向くことが好ましい。その結果、加熱流体が供給管35の送達開口部43でこの供給管から出ると、流体は、実質的に先端側から基端側に向かう方向へ移動する。好ましくは、ポンプは、以下により詳細に説明されるように、加熱流体の加圧されて脈動する出力を供給管35を伝って送達し、流体の一連の塊は、送達開口部43から噴射される。
【0011】
真空源および流体源は、ハンドピース20を介してカニューレ30と接続している。加熱溶液の供給源は、適切な取付け具でハンドピース20の基端側で連結され、真空源も適切な取付け具でハンドピース20の基端側に連結される。カニューレ30は、適切な取付け具でハンドピース20の先端側に連結されており、(a)流体供給源からの加熱流体がカニューレの中の供給管35まで経路設定され、かつ(b)真空が真空源14からカニューレの中の空洞まで経路設定され、物質を空洞から排出する。
【0012】
より具体的には、ポンプ19から吐出される加圧された加熱溶液は、高圧可撓性管材を介してハンドル20の基端部に連結されており、適切な取付け具を使用して作製されたインターフェースを備えるハンドピース20を介してカニューレ30まで経路設定される。真空源14は、吸引回収容器15に連結され、次にこの容器は、可撓性を有する管材16を介してハンドルの基端部に連結されて、適切な取付け具を使用して作製されたインターフェースを備えるハンドピース20を介してカニューレ30まで経路設定される。ハンドルとカニューレ30との間における加圧流体の供給配管連結は、ハンドルの先端部に位置する高圧簡易切離し取付け具を使用して行われており、いったんカニューレがハンドルの先端端の中へ挿入されると、そのカニューレが流体供給源および真空供給源の両方と連携しかつ連結するように構成されている。カニューレ30は、装着キャップによってハンドル20上の定位置に保持される。
【0013】
図3で最もよく分かるように、カニューレ30が体内に挿入されると、真空源14は、低圧領域をカニューレ30の内部に形成し、標的脂肪組織は、吸引開口部37を介してカニューレ30の中へ引き込まれる。供給管35の端部の幾何学配置は、送達開口部から離れ他塊の軌跡が、吸引開口部37を介してカニューレ30の中へ引き込まれた脂肪組織に衝突するように構成されている。そのため、供給管の端部は、供給管が固定されているカニューレ30の内壁の方向に対して実質的に平行である方向を向いていることが好ましい。この供給管の端部は、流動が開口部を横切って先端側から基端側へ向かう方向へ進むように配向されることが好ましい。供給管35の先端43のこの配置は、有利には、脂肪組織へのエネルギー移転(動的および熱的)を最大化し、流体損失を最小化して、加熱流体と加熱流体が真空源によって引っ張られるのと同じ方向へ液状化/ゲル状化/軟化された物質とを押し進めることによって閉塞を防止することを補助する。
【0014】
いったん標的脂肪組織が吸引開口部37に進入すると、その脂肪組織には、送達開口部43を介して供給管35から出る加熱流体の塊が繰り返し衝突する。標的脂肪組織は、衝突する流体の塊によって加熱され、軟化、ゲル状化、または液状化される。それが生じると、空洞中の緩い物質(すなわち、加熱流体およびこの流体によって取り除かれた組織部分)は、真空源14によって周囲組織から引き離され、容器15(図1に示されている)の中へ堆積される。
【0015】
有利なことに、(他の種類の組織に比較して)脂肪はより容易に軟化、ゲル状化、または液状化され、したがって、本処置は、他の種類の組織よりも多く皮下脂肪を標的にしている。塊の先端側から基端側へ向かう方向は、液状化/ゲル状化された組織がカニューレ30を介して患者の体外に吸引されているときに、この組織が移動する方向と同じであることに留意されたい。流体流を先端側から基端側へ向かう方向へ進ませることによって、追加的なエネルギー(真空、流体熱的および動的)が同じ方向へ伝達されるが、これは、吸引された組織をカニューレを介して移動させことを補助する。これは、閉塞物のさらなる削減に寄与し、それは、手術を実行するのに掛かる時間を短縮する。
【0016】
注目すべきことであるが、本実施形態では、流体の大部分が手術中にカニューレの内部に留まる(但し、僅かな量の流体は、吸引開口部37を介して被験者の体内へ漏れることがある)。これは、カニューレから組織内へ流体が漏出することを最小限にすると、流体流から、液状化のためにカニューレの中へ引き込まれた組織へのエネルギー伝達(熱的および動的)を最大化するので有利である。
【0017】
ここで、システムの流体供給部分をさらに詳細に説明する。図3は、2本の供給管35を有するカニューレ30の実施形態の部分切取り図を示す。供給管35のそれぞれは、加熱流体を送達するために設けられる。供給管35は、カニューレ30の基端部分からカニューレ30の先端部32に延びる。供給管35は、カニューレ35の内部に沿って延びるが、カニューレ35の内部に固定された別体の構造であってもよく、またはカニューレ30の壁と一体化されたルーメンであってもよい。供給管35は、加熱された生体適合性溶液を送達するように構成されており、組織を液状化する。この加熱溶液は、ハンドピース20を介して供給管35の中へ送達される。
【0018】
供給管35は、基端部31から先端部32まで軸33に沿って長手方向へ延在する。供給管35は、U字湾曲部41を有し、先端部32の内壁に沿って供給管35の延在する方向を効果的に変更する。送達開口部43を有する供給管末端部分42は、U字湾曲部41の末端部に隣接する。送達開口部43は、吸引開口部37を横切って供給管35から出る加熱溶液を誘導するように構成される。この様態では、供給管35が、吸引開口部37を介してカニューレ30に進入した標的組織上へと流体を誘導するように構成される。
【0019】
加熱溶液供給管35は、外科等級の管材から作製されてよい。あるいは、加熱溶液供給管がカニューレ30の構造と一体である実施形態では、供給管35が、カニューレ30と同じ材料から作製されてもよい。供給管35の直径は、加熱溶液に関する標的組織の量的要件と、加熱溶液を1以上の吸引開口部37を横切って送達するのに必要とされる供給管の本数と、に依存する。カニューレ30の管径は、カニューレの外径によって様々であり、それらは2〜6mmの範囲である。流体供給管35の直径は、管の内径に依存する。供給管35の直径の推奨される範囲は、約0.008インチ(約0.2032mm)から0.032インチ(約0.8128mm)である。1つの好ましい実施形態において、供給管35は、カニューレ30の長さについて0.02インチ(0.0508mm)径であり、最後の0.1インチ(2.54mm)にわたって直径を0.008インチ(0.2032mm)に低減することによって形成される出口ノズルを備える。送達開口部43の形状およびサイズは、低減直径および平坦構成を含めて、推奨されている低減直径によって異なってもよい。
【0020】
別の実施形態において、カニューレ30は、異なる本数の加熱溶液供給管35を有してよく、それぞれが各吸引開口部に対応する。例えば、3つの吸引開口部37を有するカニューレ30であれば、3本の加熱溶液供給管35を含むことが好ましい。さらには、1以上の吸引開口部に適応するために、加熱溶液供給管を追加してもよく、例えば、4つの吸引開口部が設けられる場合、4本の加熱溶液供給管が設けられてもよい。別の実施形態において、供給管35は、多管に分岐してもよく、各分岐は、吸引開口部の役目を果たす。別の実施形態において、1以上の供給管は、加熱溶液を単一の開口部に送達してもよい。さらに別の実施形態において、供給管35は、カニューレ30の基端部分の中に1以上の流体を受け入れるように構成され、これら1以上の流体を単一の送達開口部43を介して送達してもよい。別の実施形態において、カニューレは、内視鏡または他の撮像デバイスに装着されてもよい。図5および図5Aに示されるさらに別の実施形態において、カニューレ30は、先端側から基端側に至る流体供給管35に加えて、前方を向く外部流体送達塗布器45を有してもよい。
【0021】
加熱流体は、生体適合性であるべきであり、それには無菌の生理学的血清、食塩溶液、グルコース溶液、リンゲル乳酸加、ヒドロキシエチル澱粉、またはこれらの溶液の混合物が含んでもよい。加熱された生体適合性溶液は、腫張溶液を含んでもよい。この腫張溶液は、局所麻酔薬、血管収縮薬、および脱凝集生成物のような、異なる作用を生み出す1つまたは複数の生成物の混合物を含んでもよい。例えば、生体適合性溶液には、麻酔剤のような、キシロカイン、マルカイン、ネサカイン、ノボカイン、ディプリバン、ケタラール、またはリドカインが含まれてもよい。エピネフリン、レボルファノール、フェニレフリン、アチルアドリアノール、またはエフェドリンを血管収縮薬として使用できる。加熱された生体適合性流体は食塩水もしくは無菌水を含んでもよいし、または食塩水もしくは無菌水のみを含んでもよい。
【0022】
図14は、流体を加熱しかつそれを圧力下で送達するのに適切な方法の一実施例を示す。図14における構成要素は、以下の段階を使用して動作する。すなわち、室温の食塩水は、静脈バッグ51から混合貯蔵用貯槽54の中へ徐々に流出する。いったん貯槽54中の流体が一定限度に達すると、加熱器システム8の定速蠕動ポンプ55は、流体を貯槽54から加熱器袋56まで移動させる。この流体は、袋の中をくまなく循環され、加熱器システム8の電気パネル57によって加熱される。この加熱流体は、再び貯槽54に戻されて、貯蔵容器の中で他の流体と混合する。定速蠕動ポンプ55は、流体を加熱器ユニットに循環させて再び貯槽54の中へ戻すことを続ける。流体の連続的な循環は、非常に安定しかつ均一な加熱流体量を供給する。温度制御は、サーモスタットまたは温度感知集積回路のような、当業者には容易に明白となる任意の従来技法を使用して実施可能である。その温度は、ダイアル式またはデジタル式制御装置のような、任意の適切なユーザインターフェースによって所望の水準に設定することができるが、その設計も当業者には明白であろう。
【0023】
ポンプ58は、ポンププランジャが後進行程で移動するときに加熱流体を流体貯槽54からポンプ室の中へ引き込むピストン型ポンプである。ポンプへの流体入口は、流体がポンプ室の中へ吸引されることを可能とするが、流体が流出することを不可能とするインラインの一方向逆止弁を有する。いったんポンププランジャの後進行程が終了すると、プランジャの前進移動は、ポンプ室中の流体を加圧し始める。その圧力は、ポンプ58の入口にある一方向逆止弁を閉じさせ、流れがポンプ入口から流出するのを防止する。ポンププランジャが、その前進移動を続けるとき、ポンプ室内の流体は圧力が上昇する。いったんその圧力がポンプ吐出圧調整器に対する事前設定圧力に達すると、吐出弁は開く。これは、ポンプ58からカニューレハンドル20を経由し、そこからカニューレ30中の供給管35の中へ移動する加圧された加熱流体の塊を形成する。ポンププランジャがその前進移動を終了すると、流体圧が低下し、吐出弁は閉じる。そして、これらの段階は、一連の塊を生成するために反復される。適切な反復速度(すなわち、パルス速度)を、後述する。
【0024】
容積移送式ポンプを実施するための適切な手法の一実施例は、ポンプ軸を直線運動で移動させる偏位カムをポンプモータ上で使用することである。ポンプ軸は、偏位カムに対して一定張力を維持する内部バネで装荷される。ポンプ軸が偏位カムに向かって後進移動すると、この軸は、ポンプ室内に真空を形成して、加熱された食塩水を加熱流体貯槽から吸引する。一方向逆止弁は、ポンプ室への入口開口に位置しており、この弁は、流体を後進行程時に室内に流入させ、かついったん流体が前進行程時に加圧されると閉じる。多入口開口は、加熱または冷却溶液の使用を許容しうる。いったんポンプ軸の後進移動の終了時点で加熱流体がポンプ室の充満を完了すると、カムの偏位部分は、ポンプ軸を前方に押し始める。加熱流体は、ポンプ室内の事前設定圧力(例えば、1100ポンド毎平方インチ(7.7×10kg/m))まで加圧されるが、その圧力は、吐出口上の弁を開かせて、ポンプ室の加圧内容物を流体供給管35に吐出する。いったんポンププランジャがその全行程をカムの偏位に基づいて終了すると、ポンプ室内の圧力は、低下して、吐出弁は、閉じる。カムが回転し続けると、この過程は、繰り返される。ポンプ軸は、使用者が塊のサイズを変更することを可能にするカットレリーフと共に作製することができる。軸上の切除部は、ポンプ室内のすべての流体が吐出経路を介して供給管に運ばれることを可能にするか、または加圧流体の一部が貯槽に運び戻されることを可能にする。
【0025】
組織液状化システムにおける加熱された生体適合性溶液は、標的組織を軟化、ゲル状化、または液状化するために最適化された様態で送達されることが好ましい。可変パラメータには、限定するものではないが、溶液の温度、溶液の圧力、溶液のパルス速度または振動数、および流れ内部のパルスまたは塊のデューティサイクルが含まれる。さらには、真空源14を介してカニューレに加えられる真空圧を、標的組織に対して最適化することができる。
【0026】
人体内部の皮下脂肪沈着物を標的にする脂肪吸引手術には、生体適合性の加熱溶液が、好ましくは華氏75と250度との間、より好ましくは華氏110度(23.9℃)と140度(60℃)との間の温度で標的脂肪組織に送達されるべきであることが判明した。加熱溶液に関して特に推奨される動作温度は、その温度が非常に効果的でかつ安全に思われるので、約華氏120度(約48.9℃)である。また、脂肪沈着物の液状化には、加熱溶液の圧力が、好ましくは約200(約1.4×10kg/m)と約2500ポンド毎平方インチ(約1.8×10kg/m)との間、より好ましくは約600ポンド毎平方インチ(約4.2×10kg/m)と約1300ポンド毎平方インチ(約9.1×10kg/m)との間、さらにより好ましくは約900ポンド毎平方インチ(約6.3×10kg/m)と約1300ポンド毎平方インチ(約9.1×10kg/m)との間の圧力である。特に推奨される動作圧力は約1100ポンド毎平方インチ(約7.7×10kg/m)であり、それは流体流量を最小化しながら所望の動的エネルギーを与えるものである。溶液のパルス速度は、毎秒20パルスと毎秒150パルスとの間であることが好ましく、毎秒25パルスと毎秒60パルスとの間であることがより好ましい。幾つかの実施形態では、毎秒約40パルスのパルス速度が使用された。また、加熱溶液は、1%〜100%の間のデューティサイクル(すなわち、パルスが送達される周期によって除算されたパルスの持続時間)を有しうる。推奨される実施形態では、このデューティサイクルが30%と60%との間、より具体的には30%と50%との間の範囲にある。
【0027】
推奨される実施形態では、上昇速度(すなわち、流体が所望の圧力にもたらされる速度)が、約1ミリ秒またはそれよりも速い。これは、いったんポンプ室内の圧力が設定点(例えば、1100ポンド毎平方インチに設定することができる)に達すると開く標準的な安全弁を有することによって実現することができる。図15に示されるように、圧力上昇は、圧力上昇グラフ(差込み)中の上昇速度を表すスパイクによって明白であるように、殆ど瞬間的である。さらに、図15は、非常に短い時間間隔の間にどのように流体が供給管を退出するかを例示する。
【0028】
ここで吸引サブシステムに戻ると、図3は、2つの吸引開口部を有する実施形態の拡大切取り図を示す。図示されたように、カニューレ30は、このカニューレ30の先端領域の近くでかつ先端部32に対して基端側に位置する2つの吸引開口部37を有する。吸引開口部37は、カニューレ30の先端領域の周囲を囲むような様々な構成で位置決めすることができる。例示された実施形態において、これらの吸引開口部37は、タイルカニューレ30の対向側にあるが、別の実施形態において、それらは、互いに異なるように位置決めされている。吸引開口部37は、真空供給源14によって形成されたカニューレ軸内部の低圧に反応して、脂肪組織が開口部の中へ進入することを可能とするように構成される。そして、空洞内に位置する物質(すなわち、取り除かれた組織および供給管35を退出した加熱流体)は、カニューレ30、ハンドピース20を介して基端方向へ吸い取られ、容器15の中へ吸い込まれる(すべて図1に示されている)。従来の真空ポンプ(例えば、HK surgical社のAP-III HK吸引ポンプ)は、真空源用に使用可能である。
【0029】
推奨される実施形態において、液状化/ゲル状化された組織をカニューレを介して再び吸い上げる吸引真空は、0.33気圧から1気圧(1気圧=760mmHg)の範囲にわたる。このパラメータの変更が、システム性能に何らかの重要な変化を引き起こすとは期待されていない。任意選択では、真空水準が手術中に術者によって調整可能でよい。低減した吸引真空は血液損失を低下させると期待されるので、術者は、真空範囲の下端で作業することを選好しうる。
【0030】
図1〜図4に戻ると、ここでカニューレ30およびハンドピース20がより詳細に説明される。ハンドピース20は、基端部21および先端部22と、好ましくは基端部に位置する流体供給連結部23および真空供給連結部24と、(カニューレと接続するために)先端部にある流体供給取付け具および真空供給取付け具と、を有する。ハンドピース20は、物質を空洞から排出するために、加熱流体を流体供給源からカニューレ中の供給管35まで経路設定し、かつ真空を真空源14からカニューレ中の空洞まで経路設定する。
【0031】
いくつかの実施形態では、冷却用流体供給源6を使用して、手術野における加熱流体流の熱影響を抑制する。これらの実施形態において、ハンドピースは、このハンドピースの各端部にある適切な取付け具を使用して、冷却用流体もカニューレ35の中へと経路設定する。これらの実施形態では、冷却用流体の計量デバイス13を任意で有する。ハンドピース20は、成形されたグリップ、真空供給源入/切制御装置、熱源入/切制御装置、交互冷却用流体入/切制御装置、計量デバイス入/切制御装置、および流体圧制御装置など、機能的かつ人間工学的な特徴を任意で備える。また、ハンドピース20は、カニューレ吸引開口部の位置表示器、温度および圧力表示器並びに、送達された流体量、吸引された流体量、および除去された組織量に関する表示器を含む機能表示器を任意で備える。あるいは、1以上の上述の制御装置は、別体の制御盤上に配置されてもよい。
【0032】
ハンドピース20の先端部22は、カニューレ30と嵌合するように構成されている。カニューレ30は、ステンレス鋼などの外科等級材料の中空管を備えており、中空管は、基端部31から延びて先端部32にある丸味を帯びた先端で終端する。カニューレ30の基端部31は、ハンドピース20の先端部22に取り付けられる。取付けは、螺合式ネジ取付け具、スナップ嵌め式取付け具、簡易解除式取付け具、摩擦式取付け具、または当技術分野で知られた任意の他の取付け連結部によって可能である。この取付け連結部は、使用中にカニューレ30がハンドピース20から外れることを防止すべきであり、特に外科医が、カニューレとハンドピースとの組立体をカニューレ長手軸33に対してほぼ平行に前後運動で動かすときに、カニューレ30とハンドピース20との間の不必要な移動を防止するべきであることが理解されよう。
【0033】
カニューレは、処置中の身体部位、摘出される脂肪の量、および全体的な患者の体付きおよび形態学的構造に基づいて、外科医の解剖学的精度を可能にするために、様々な直径、長さ、曲率、および角形成の設計を含みうる。これは、僅かな脂肪沈着物のデリケートかつ精密な脂肪吸引用の1mm未満の範囲(0.25mm)から、大量の脂肪除去用(すなわち、腹部、臀部、腰回り、背部、大腿部など)の最大2cmの直径を有するカニューレにわたるカニューレ直径と、小領域用(すなわち、瞼、頬、下顎、顔面など)の2cmから、より大きな領域および四肢上の領域用(脚部、腕部、腓部、背部、腹部、臀部、大腿部など)の最大50cmの長さを含むことになろう。無数にある設計には、限定するものではないが、先端部のみのC字形湾曲部、S字形湾曲部、基端側または先端側からの急激な湾曲部ばかりでなく、他の直線的および非直線的な設計も含まれる。カニューレは、堅固な円筒管、連接管、または可撓性管であってもよい。
【0034】
吸引開口部37のそれぞれが、基端部38、先端部39、および吸引開口部周囲40を含む。例示された吸引開口部は楕円形または円形であるが、別の実施形態では、他の形状(例えば、卵形状、菱形もしくは多角の形状、または無定形の形状)で作製することができる。図3に示されたように、吸引開口部37は、カニューレ30の1以上の側面上に線状に延びる様態で配置されてよい。あるいは、吸引開口部37は、図4に示すように直線状に複数配置(multiple linear arrangement)した状態で設けられてよい。任意で、それぞれの吸引開口部の寸法または形状は、例えば、図4に例示されたように最も先端側の吸引開口部から最も基端側の吸引開口部にわたって変化してよく、この図では、それぞれの吸引開口部の直径が先端口から基端口に向けて連続的に減少しうる。
【0035】
幾つかの実施形態において、吸引開口部周囲縁40は、滑らかで、鋭利でない縁部を形成するように構成されており、標的脂肪組織の剪断、引裂、または切断を抑制する。標的組織は液状化/ゲル状化/軟化されるので、カニューレ30は、従来の脂肪吸引カニューレに見られるほど多量に組織を剪断する必要がない。これらの実施形態において、周囲縁40は、典型的に先行技術の脂肪吸引カニューレに見られるものよりも鈍くかつ厚い。別の実施形態において、カニューレは、剪断用吸引開口部、または抑制された剪断用吸引開口部と剪断用吸引開口部との組合せを使用してよい。任意の個別化された吸引開口部の吸引開口部周囲縁40は、特定の応用例に適切であるように、剪断表面、または剪断表面と抑制された剪断表面との組合せを含むようにも構成可能である。
【0036】
1つと6つの間の吸引開口部37を使用することが好ましく、2つまたは3つの吸引開口部を使用することがより好ましい。吸引開口部は、円形または長円形のような、様々な形状で作製されてよい。図6は、異なるサイズの幾つかの典型的な吸引開口部を示す。標準的な剪断用開口部37を有する断面Fが示されている。断面Gは、より大きな剪断用開口部37を有し、他方で断面Hは、剪断を抑制するために滑らかで鋭利でない縁部を備える周囲を有する。長円形吸引開口部が使用されるとき、好ましくは、長軸が先端側から基端側への軸に対して実質的に平行に配向されるべきである。より小さい吸引開口部では、所与のエネルギー塊に関してカニューレの中へ吸引される脂肪がより少ないので、吸引開口部は過剰に大きくするべきではない。他方で、脂肪組織の進入を許容するために、それらは過剰に小さくするべきではない。円形吸引開口部に適切なサイズの範囲は、約0.04インチ(約1.016mm)と約0.2インチ(約5.08mm)との間である。長円形吸引開口部に適切なサイズは、約0.2インチ(約5.08mm)×0.05インチ(1.27mm)と約1/2インチ(約12.7mm)×1/8インチ(3.175mm)との間である。吸引開口部のサイズは、外科医の要件に応じて様々な応用例に関してさらに異なりうる。吸引するべき領域が広くなると、より多くの剪断用表面を必要とするより大きな開口部が必要となりうる。
【0037】
図7〜図13に示すように、吸引経路の単位長さの表面積は、吸引経路の全周長に単位長さを乗算することによって計算可能である。吸引経路の典型的な周長はπ(4.115mm)であり、これを長さ1mmで乗算すると12.9mmの単位長さ面積が得られる。図7は、吸引経路の内側の直径を示す(次いで、これをπで乗算すると周囲長さが得られ、次いで単位長さ1mmで乗算すると12.93の表面積が得られる)。図7に示された実施形態において、吸引経路の抵抗比は、計算で12.92mm/13.30mm=0.97となる。また、流体経路(両方の管を含めて)の抵抗比は、計算で5.10mm/1.04mm=4.90となる。抵抗比を比較すると、第1の通路は吸引経路として定義されているが、図7の実施形態において、比較抵抗比は0.97/4.90=0.20であることが分かる。
【0038】
図8に示された実施形態において、吸引経路の計算上の抵抗比は、1.68であり、流体経路の計算上の抵抗比(両方の管を含めて)は、4.92である。したがって、比較抵抗比は、0.34である。同様に、図9では、吸引抵抗比が1.11、流体抵抗比が4.61であり、したがって、比較抵抗比は0.24である。図10では、吸引抵抗比が1.20、流体抵抗比が5.98であり、したがって、比較抵抗比は0.20に等しい。図11では、吸引抵抗比が1.31、流体抵抗比が4.65であり、したがって、比較抵抗比は0.28である。図12では、吸引抵抗比が2.25、流体抵抗比が7.88であり、したがって、比較抵抗比は0.29である。図13では、吸引抵抗比が1.23で、流体抵抗比が10.23であり、したがって、比較抵抗比は0.12である。
【0039】
以上に説明された実施形態は、限定するものではないが、顔面、頚部、下顎、瞼、後頚部(バッファローの瘤)、背部、肩部、腕部、三頭筋、二頭筋、前腕部、手、胸部、乳房、腹部、腹部エッチングおよび造形、脇腹、腹回りの贅肉、背中の下部、臀部、バナナロール、腰回り、サドルバック、腹側および背側大腿部、内腿、恥丘、外陰部、膝、腓、脛、脛骨前域、踵、ならびに足の脂肪吸引を含む様々な脂肪吸引手術で使用してもよい。また、過去の脂肪吸引後の残存脂肪組織および固まった瘢痕組織(繊維症の領域)を精確に除去するために修正的な脂肪吸引手術でも使用してもよい。
【0040】
また、上述した実施形態は、皮膚、脂肪、筋膜、および/または筋肉弁状部が外科手術の一部として盛上げおよび/または除去される他の形成外科手術と併用してもよい。これには、限定するものではないが、頚部造形ならびに頤下脂肪除去、下顎切除、および頬部脂肪細工を伴う美容整形(皺皮切除)、瞼手術(眼瞼形成術)、眉上弓手術、乳房削減整形、乳房美容整形、豊胸、乳房再建、腹壁形成術、胴体輪郭整形、胴体美容整形、大腿部美容整形、臀部美容整形、腕部美容整形(上腕美容整形)ばかりでなく、頭部、頚部、前胸腹部、および四肢の一般的な再建手術も含まれる。上述した実施形態は、脂肪吸引分野の他に数多くの応用例を有することがさらに理解されよう。
【0041】
上述した実施形態は、限定するものではないが、日焼け損傷(化学線性変化)、皺線、喫煙者の皺、笑い皺、過度色素沈着、黒皮症、座瘡瘢痕、過去の手術瘢痕、角化上皮症ばかりでなく、他の皮膚増殖性疾患も含む皮膚老化の形跡を伴う身体領域の皮膚表面再形成で使用可能である。
【0042】
以上に説明された実施形態は、限定するものではないが、異常な老化した皮膚を生み出す皮膚の厚化した外層(角質)および真皮成分(膠原質、弾力素、ヒアルロン酸)の薄化を含む追加的な組織タイプを標的にしてもよい。カニューレは、損傷を受けた外層を摘出、除去、および標的の対象にして、健康な深部層を残す(従来の皮膚擦傷法、化学的剥取り(トリクロロ酢酸、フェノール、クロトン油、サルチル酸など)および剥離レーザ表面再形成(二酸化炭素、エルビウムなど)と同様の処置)。加熱流は、深部組織刺激、薄色化、およびより締まった皮膚を生み出す膠原質沈着が可能であり、色変化の改善で全体的な皮膚の肌理および/または皮膚の色調を改善する。この処置は、損傷を受けた標的組織のみに対して選択的である設定および送達流体を利用する従来の方法に勝る、随伴損傷の少ない高い精度を提供することになる。
【0043】
他の実施態様は、特に顔面の組織洗浄用に使用されるばかりでなく、深部洗浄、剥奪、ならびに全体的な皮膚の水分補給および軽薄化用に頚部、胸部、および胴体にも応用することができる様々な先端部の設計およびより軽度の圧力設定を含む。またより高い圧力設定は、過剰に乾燥した領域を軟化、水分補給、および加湿するために、足、手、膝、および肘の過角化症、皮膚硬結形成の領域用に使用可能である。
【0044】
追加的な組織除去手術を、様々な他の実施形態によって実現してもよい。例えば、より低い吸引圧力および緩い塊を有する非外傷性の流れを含めて、より低い圧力設定を有するカニューレ設計を使用して、脂肪欠乏領域の中へ再注入するために摘出および処理することができる生存可能な脂肪の細胞(脂肪細胞)を選択的に除去してもよい。これには、限定するものではないが、顔面、眉上弓、瞼、眼頬溝、笑い皺、鼻唇溝、唇頤溝、頬、下顎皺、顎、乳房、前胸腹部、臀部、腕部、二頭筋、三頭筋、前腕部、手、脇腹、腰回り、腿、膝、腓、脛、足、および背部の周囲領域が含まれる。同様の方法を使用して、脂肪吸引後の凹みおよび/または過剰に侵略的な脂肪吸引による陥凹に対処してもよい。同様の方法を利用する他の手術には、限定するものではないが、豊胸、乳房美容整形、乳房再建、一般的な形成外科的再建、顔面再建、体幹および/または四肢の再建が含まれる。
【0045】
追加的な用途には、脊柱または脊柱髄核摘出術における組織除去が含まれる。脊柱髄核摘出術の手術で使用されるカニューレは、以上に説明されたカニューレの内部に加熱溶液供給管を含む。このカニューレは、例えば、上、下、右、および左の多軸で移動可能な可撓性を有する先端部をさらに含む。先端部が可撓性を有するため、外科医は、カニューレを線維輪の中の開口を介して、髄核組織が位置する中心領域の中へ挿入することができる。次いで、外科医はカニューレ先端を任意の方向へ誘導することができる。この様態でカニューレを使用すると、外科医は、線維輪および神経組織を完全で無損傷の状態のまま髄核組織をきれいに除去することができる。
【0046】
別の実施形態において、本発明の設計は、冠状動脈および他の血管系中の易損性斑点を含めて、血管血栓および粥腫性斑点を除去するために血管内カテーテルに組み込まれうる。
【0047】
別の実施態様において、本発明の設計を使用するカニューレは、限定するものではないが、膀胱腫瘍の経尿道前立腺切除術および経尿道摘除術を含む泌尿器科応用例で使用可能である。
【0048】
別の実施態様において、本発明の設計は、内視鏡手術で使用される器具またはカニューレに組み込まれうる。1つのこのような応用例の実施例は、関節鏡術における軟骨または軟骨組織表面再形成である。このカニューレを使用して、より滑らかな関節表面を創出するために、不規則で、損傷を受けた、または裂けた軟骨組織、瘢痕組織、および他の細片または沈着物を除去できる。別の実施例は、卵巣、卵管の基端側におけるまたは腹膜腔もしくは腹膜後腔における子宮内膜組織の婦人科手術および内視鏡術除去である。
【0049】
慢性気管支炎および気腫(COPD、慢性閉塞性肺疾患)を治療するさらに他の実施態様では、本カニューレは、気管支鏡を使用する様態で使用されるように変更することができるが、気管支管の炎症を起こした管路が液状化されかつ吸引され、それによって新しい健康な気管支管組織がそれに置換されることを可能にする。
【0050】
説明された様々な実施形態は、それぞれに次の利点、(1)標的組織と非標的組織との間の区別と、(2)液体が先端側から基端側への方向へ吸引開口部を横切って発射され、一般に吸引開口部またはカニューレが閉塞または妨害を受けるのを防止することによる、閉塞耐性と、(3)非標的組織に対する損傷を軽減する、従来の脂肪吸引に対する吸引水準の低減と、(4)必要とされる手術時間およびカニューレ操作量の大幅な削減と、(5)外科医の疲労の大幅な軽減と、(6)患者にとっての血液損失の減少と、(7)手術中に脂肪組織を剪断する必要性がより少ないことによる、患者の回復時間の改善と、の少なくとも1つを実現する。
【0051】
本発明が幾つか実施態様を参照して詳細に説明されたが、本明細書では他の実施態様が可能でありかつ企図される。
【0052】
本明細書で開示されたすべての特徴は、別様に明示的に記述されていない限り、同じ、均等の、または同様な目的にかなう代替の特徴によって置き換えることができる。したがって、別段明示的に記述されていない限り、開示された特徴のそれぞれは、一般的な一連の均等な、または同様の特徴の一例に過ぎないものである。
【符号の説明】
【0053】
4 流体供給貯槽、6 冷却用流体供給源、8 熱源、9 温度調整器、11 圧力調整器、12 加熱流体計量デバイス、13 冷却用流体計量デバイス、14 真空源、15 吸引回収容器、16 可撓性管材、19 ポンプシステム、20 ハンドピース,ハンドル、21 ハンドピースの基端部、22 ハンドピースの先端部、23 流体供給連結部、24 真空供給連結部、30 カニューレ、31 カニューレの基端部、32 カニューレの先端部、33 カニューレ長手軸、5 流体供給管、37 吸引開口部、38 吸引開口部の基端部、39 吸引開口部の先端部、40 吸引開口部周囲縁、41 U字湾曲部、42 供給管末端部分、43 送達開口部、45 外部流体送達塗布具、51 静脈バッグ、54 混合貯蔵用貯槽、55 定速蠕動ポンプ、56 加熱器袋、57 電気パネル、58 ピストン型ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カニューレを使用して組織を被験者から除去する方法であって、
前記カニューレは、内部空洞と、物質が前記空洞に進入することを許容するように構成された開口部とを有し、
当該方法は、
負圧を前記空洞の中に生成し、前記組織の一部が前記開口部の中へ引き込まれる段階と、
前記導管を介して前記流体を送達し、流体が前記空洞の内部の導管から出て前記開口部の中へ引き込まれた前記組織の前記一部に衝突する段階であって、前記流体が前記組織を軟化、液状化、またはゲル状化させる圧力および温度で送達される段階と、
軟化、液状化、またはゲル状化された前記組織を吸い取る段階と、
を有する方法。
【請求項2】
前記流体は、華氏100度と華氏140度との間の温度で送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体は、約華氏120度の温度で送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記流体は、900と1300ポンド毎平方インチとの間の圧力で送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記流体は、パルスで送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記流体は、前記開口部の中へ引き込まれた前記組織の前記一部に衝突する直前に、先端側から基端側に向かう方向へ移動している、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記流体は、華氏100度と華氏140度との間の温度で送達される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記流体は、900と1300ポンド毎平方インチとの間の圧力で送達される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記流体は、パルスで送達される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記流体は、華氏75度と華氏250度との間の温度でかつ200と2500ポンド毎平方インチとの間の圧力で送達される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
組織を被験者から除去する装置であって、
当該装置は、
被験者の体内へ挿入するように構成されたカニューレであって、当該カニューレが、内部空洞を形成する側壁を有し、前記空洞が、閉じた先端部を有し、前記側壁が、物質が前記空洞に進入することを許容するように構成された少なくとも1つの開口部を有するカニューレと、
負圧を前記空洞の内部に生成するように構成された吸引源であって、(a)前記組織の一部が前記少なくとも1つの開口部の中へ引き込まれ、かつ(b)前記空洞の中に位置する緩い物質が引き出される吸引源と、
前記空洞の内部に位置する退出口を有する送達管であって、送達管および前記退出口が、前記送達管を退出する流体が前記吸引源によって前記開口部の中へ引き込まれる前記組織の前記一部に衝突するように構成される送達管と、
流体を収容するように構成された容器と、
前記流体を華氏75度と華氏250度との間の温度に維持するように構成された温度制御システムと、
前記温度制御された流体を前記送達管を介して汲み上げるように構成されたポンプであって、前記温度制御された流体が200と2500ポンド毎平方インチとの間の圧力で送達されるポンプと、
を備える装置。
【請求項12】
前記流体は、華氏100度と華氏140度との間の温度で送達される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記流体は、約華氏120度の温度で送達される、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記流体は、900と1300ポンド毎平方インチの圧力で送達される、請求項11に記載の装置。
【請求項15】
前記流体は、パルスで送達される、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記流体は、前記開口部の中へ引き込まれた前記組織の前記一部に衝突する直前に、実質的に先端側から基端側に向けて移動している、請求項11に記載の装置。
【請求項17】
前記流体は、華氏100度と華氏140度との間の温度で送達される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記流体は、900と1300ポンド毎平方インチとの間の圧力で送達される、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記流体は、パルスで送達される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
組織を被験者から除去するカニューレであって、
当該カニューレは、
外表面および内部空洞を形成する側壁であって、前記外表面が、被験者の体内への安全な挿入および前記被験者の体内での安全な操作を許容するように構成され、前記側壁が、物質が前記空洞に進入することを許容するように構成された開口部を有する側壁と、
前記カニューレの基端部に配置された第1の取付け具であって、当該第1の取付け具が、前記空洞を吸引源に連結するように構成され、当該第1の取付け具および前記側壁が、前記吸引源が前記第1の取付け具に連結されて駆動されるときに負圧が前記空洞の内部で生成され、(a)前記組織の一部が前記開口部の中へ引き込まれ、かつ(b)前記空洞の中に位置する緩い物質が前記空洞から引き出される第1の取付け具と、
前記空洞の内部に位置する退出口と、入力口と、を有する送達管であって、当該送達管から出る流体が、前記吸引源によって前記開口部の中へ引き込まれる前記組織の前記一部に衝突するように構成される送達管と、
前記送達管の前記入力口を加圧流体源に連結するように構成される前記カニューレの基端部に配置された第2の取付け具と、
を備えるカニューレ。
【請求項21】
前記送達管は、前記流体を前記第2の取付け具から前記開口部よりも先端側の点まで経路設定し、次いで後ろ向きに湾曲し、前記退出口から出る前記流体が前記開口部を通過するときに、前記流体が前記カニューレの前記基端部に向かって移動して戻る、請求項20に記載のカニューレ。
【請求項22】
前記側壁は、物質が前記空洞に進入することを許容するように構成される第2の開口部も有し、前記空洞の内部に位置する退出口と、入力口とを有する第2の送達管をさらに備え、
前記第2の送達管は、当該第2の送達管を退出する流体が、前記吸引源によって前記第2の開口部の中へ引き込まれる前記組織の一部に衝突するように構成される、請求項20に記載のカニューレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−525890(P2010−525890A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506598(P2010−506598)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/061994
【国際公開番号】WO2008/134713
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509300289)アンドリュー・テクノロジーズ・エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】