説明

組織回収袋

【課題】体腔内で容易に開口でき、開口状態を容易に維持できる組織回収袋を提供する。
【解決手段】組織回収袋1は、袋状体2と、該袋状体2の開口部3縁辺に列設された複数の紐通し孔6と、紐通し孔6に挿通された閉じ紐7とを備える。組織回収袋1は、開口部3に沿って着脱自在に装着され、開口時に塑性変形して開口状態を維持する開口維持部材4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下外科手術において切除された組織を収容して体外に摘出し、回収する組織回収袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記組織回収袋として、切除された組織を収容する袋状体と、該袋状体の開口部縁辺に列設された複数の紐通し孔と、該紐通し孔に挿通されて該袋状体の開口部を開閉自在とする閉じ紐とを備えるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
前記組織回収袋は、ポリエチレン等の無毒性で肉薄柔軟な樹脂製であり、前記袋状体は長方形状の底部をくの字型とし、熱溶着によりシールされている。そして、切除された組織を前記袋状体に収容した後、前記閉じ紐を引くことにより、前記開口部を絞って閉じるようになっている。
【0004】
前記組織回収袋の使用に当たっては、前記底部を軸として円柱状に巻き取られ、内径5mm程度の外套管内に収納される。そして、前記組織回収袋は、前記外套管を切開孔から体腔内に導入した後、別の切開孔から体腔内に挿入された鉗子により該外套管から引き出され、展開されることにより使用に供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実登第3063390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の組織回収袋は、円柱状に巻き取られた状態で外套管内に収納されているので所謂巻き癖がついており、体腔内で該外套管から引き出されたときに、容易に開口することができず、また開口状態を維持することも難しいという不都合がある。
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、体腔内で容易に開口することができ、開口状態を維持することができる組織回収袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、内視鏡下外科手術において切除された組織を収容する袋状体と、該袋状体の開口部縁辺に列設された複数の紐通し孔と、該紐通し孔に挿通されて該袋状体の開口部を開閉自在とする閉じ紐とを備え、該組織を該袋状体に収容して体外に摘出し、回収する組織回収袋において、前記開口部に沿って着脱自在に装着され、開口時に塑性変形して開口状態を維持する開口維持部材を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の組織回収袋は、従来の組織回収袋と同様に円柱状に巻き取られて、内径5mm程度の外套管内に収納される。そして、前記外套管を切開孔から体腔内に導入した後、別の切開孔から体腔内に挿入された鉗子により該外套管から引き出され、展開されることにより使用に供される。
【0010】
このとき、本発明の組織回収袋は、前記開口部に沿って装着された開口維持部材を備えるので、該開口維持部材を塑性変形させることにより、該開口部を容易に開口することができる。また、前記開口維持部材は一旦塑性変形させると、該塑性変形は外力が作用しない状況では不可逆であるので、該開口維持部材により該開口部の開口状態を容易に維持することができる。
【0011】
さらに、前記開口維持部材は着脱自在に装着されている。従って、切除された組織を本発明の組織回収袋に収容した後は、前記開口維持部材を該組織回収袋から取り去ることにより、前記開口部を閉じることが可能になる。
【0012】
本発明の組織回収袋において、前記開口維持部材は、例えば、塑性変形可能な材料からなる1対の脚部と、該脚部の一方の端部で互いに接合する接合部とを備えている。前記塑性変形可能な材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド等を挙げることができる。
【0013】
また、本発明の組織回収袋は、前記開口維持部材を着脱自在に装着するために、例えば、前記開口部に沿って列設され、前記開口維持部材の脚部が着脱自在に挿通される複数の脚部挿通孔を備える構成とすることができる。あるいは、本発明の組織回収袋は、前記開口部端を折り返して袋状体に熱溶着することにより形成されたトンネル状の挿通孔を備える構成としてもよい。
【0014】
本発明の組織回収袋において、前記脚部挿通孔は、例えば、前記開口部と前記紐通し孔との間に設けられていてもよく、前記紐通し孔に対して前記開口部と反対側に設けられていてもよい。
【0015】
また、本発明の組織回収袋において、前記脚部は、前記接合部と反対側の端部に前記脚部挿通孔に係合して抜け止めする係合部を備えることが好ましい。本発明の組織回収袋は、前記脚部が前記係合部を備えることにより、開口を準備する間に意図しない状況での前記開口維持部材の脱落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の組織回収袋の一構成例を示す斜視図。
【図2】図1に示す組織回収袋の開口操作を示す斜視図。
【図3】図1に示す組織回収袋の開口部を閉じる操作を示す斜視図。
【図4】本発明の組織回収袋の他の構成例の要部を拡大して示す斜視図。
【図5】本発明の組織回収袋のさらに他の構成例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の組織回収袋1は、切除された組織を収容する袋状体2と、袋状体2の開口部3の開口状態を維持する開口維持部材4とを備えている。
【0019】
袋状体2は、例えば、ポリエチレン等の無毒性で肉薄柔軟な樹脂からなる円筒状体において、開口部3と反対側の端部が熱溶着されたシーム部5により閉塞されることにより形成されている。また、袋状体2は、開口部3に沿って列設された複数の紐通し孔6と、紐通し孔6に挿通されて開口部3を開閉自在とする閉じ紐7と、開口部3と紐通し孔6との間に列設された脚部挿通孔8とを備えている。
【0020】
開口維持部材4は、例えば、ポリエチレン等の塑性変形可能な材料からなる1対の脚部9,9と、脚部9,9の一方の端部で互いに接合する接合部10とを備えている。開口維持部材4は、袋状体2の側方から、脚部9,9が脚部挿通孔8に着脱自在に挿通されている。
【0021】
組織回収袋1は、使用に当たっては、例えば、開口維持部材4又はシーム部5を軸として円柱状に巻き取られ、内径5mm程度の外套管(図示せず)内に収納される。そして、前記外套管を切開孔から体腔内に導入した後、別の切開孔から体腔内に挿入された鉗子により該外套管から引き出され、展開される。
【0022】
前記外套管から引き出された組織回収袋1は、図2に示すように、鉗子(図示せず)により開口維持部材4の脚部9,9をその中央部で互いに離間するように塑性変形させることにより開口部3が開口される。開口維持部材4の脚部9,9は一旦塑性変形させると、該塑性変形は外力が作用しない状況では不可逆であるので、開口維持部材4により開口部3の開口状態が容易に維持される。組織回収袋1は、前述のように開口部3が開口されたならば、ついで開口部3から袋状体2に切除された組織を収容する。
【0023】
組織回収袋1の開口部3を閉じるときには、図3に示すように、まず、鉗子(図示せず)を用いて開口維持部材4の脚部9,9を脚部挿通孔8から引き抜いて、袋状体2から脱離させる。そして、次に、他の鉗子(図示せず)を用いて閉じ紐7の把持部7aを把持し、閉じ紐7を引くことにより開口部3を絞って閉じ、組織回収袋1を体外に摘出する。
【0024】
尚、開口維持部材4の脚部9,9を脚部挿通孔8から引き抜いて、袋状体2から脱離させる操作は、閉じ紐7を引くことにより開口部3を絞った後に行うようにしてもよい。また、組織回収袋1の使用に当たっては、上述のように円柱状に巻き取られた状態で、前記外套管内に収納されることなく、切開孔に挿入されたトロカール等を介して、体腔内に導入されてもよい。
【0025】
ところで、図1に示す組織回収袋1では、前述のいずれかの方法により体腔内に導入された後、開口部3の開口を準備する間に、意図しない状況で開口維持部材4が脱落することがある。
【0026】
そこで、組織回収袋1では、図4に示すように、脚部9は、接合部10と反対側の端部に脚部挿通孔8aに係合して抜け止めする係合部9aを備えるようにしてもよい。係合部9aは、脚部9の端部に細幅部9bを介して連設されており、最大幅が脚部9の幅より大きくなっている。一方、脚部挿通孔8aは、他の脚部挿通孔8より小型であり、細幅部9bは挿通可能であるものの、係合部9aが係合して抜け止めされる大きさに形成されている。
【0027】
組織回収袋1は、係合部9aが脚部挿通孔8aに係合することにより、開口部3の開口を準備する間に開口維持部材4の脱落を防止することができる。一方、開口部3を閉じるときには、袋状体2は肉薄柔軟な樹脂からなるので、係合部9aを脚部挿通孔8aに挿通させて、開口維持部材4を袋状体2から引き抜くことができる。
【0028】
尚、係合部9aは脚部挿通孔8に係合して抜け止めされる構成となっていればよく、脚部9の端部に細幅部9bを介することなく連設されていてもよい。この場合、脚部挿通孔8aに代えて、通常の脚部挿通孔8が係合部9aを抜け止めする。
【0029】
本実施形態の組織回収袋1では、開口部3と紐通し孔6との間に脚部挿通孔8が列設されているが、脚部挿通孔8は、紐通し孔6に対して開口部3と反対側に紐通し孔6の列に沿って列設されていてもよい。また、脚部挿通孔8に代えて、図5に示すように、開口部3の端縁を折り返して、シーム部11により袋状体2に熱溶着して、袋状体2の一方の側面に入口と出口とを備えるトンネル状の挿通孔12を形成し、挿通孔12に脚部9を挿通するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…組織回収袋、 2…袋状体、 3…開口部、 4…開口維持部材、 7…閉じ紐、 8,8a…脚部挿通孔、 9…脚部、 10…接合部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡下外科手術において切除された組織を収容する袋状体と、該袋状体の開口部縁辺に列設された複数の紐通し孔と、該紐通し孔に挿通されて該袋状体の開口部を開閉自在とする閉じ紐とを備え、該組織を該袋状体に収容して体外に摘出し、回収する組織回収袋において、
前記開口部に沿って着脱自在に装着され、開口時に塑性変形して開口状態を維持する開口維持部材を備えることを特徴とする組織回収袋。
【請求項2】
請求項1記載の組織回収袋において、前記開口維持部材は、塑性変形可能な材料からなる1対の脚部と、該脚部の一方の端部で互いに接合する接合部とを備えることを特徴とする組織回収袋。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の組織回収袋において、前記開口部に沿って列設され、前記開口維持部材の脚部が着脱自在に挿通される複数の脚部挿通孔を備えることを特徴とする組織回収袋。
【請求項4】
請求項3記載の組織回収袋において、前記脚部挿通孔は、前記開口部と前記紐通し孔との間に設けられることを特徴とする組織回収袋。
【請求項5】
請求項3または請求項4記載の組織回収袋において、前記脚部は、前記接合部と反対側の端部に前記脚部挿通孔に係合して抜け止めする係合部を備えることを特徴とする組織回収袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−103926(P2011−103926A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259100(P2009−259100)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)