組織固定デバイス
【課題】専用の処置具を用いることなく組織同士を固定することができる組織固定デバイスを提供する。
【解決手段】組織固定デバイス1は、螺旋状に巻回された線状部材22からなる固定部21と、線状部材22の端部22aに設けられた把持26と、を備え、固定部21が形成する螺旋の中心軸線C1回りに固定部21を回転させることで、線状部材22が組織内に貫入する。
【解決手段】組織固定デバイス1は、螺旋状に巻回された線状部材22からなる固定部21と、線状部材22の端部22aに設けられた把持26と、を備え、固定部21が形成する螺旋の中心軸線C1回りに固定部21を回転させることで、線状部材22が組織内に貫入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織同士を固定する組織固定デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切開手術などにおいて、組織同士を固定するときに縫合糸が用いられている。この場合、縫合糸を縫合針に取り付けておき、切開部の両側の組織に縫合針をそれぞれ穿通させる。これにより、縫合糸を両組織に貫入させ、縫合糸で両組織を緊縛した後で結紮することで、組織同士を固定している。
【0003】
この縫合糸の結紮は、非常に細やかな手技であるとともに、場合によっては患者の体腔内で結紮することもあり、術者の高度な技量が要求される手技となっている。
そこで、縫合糸を結紮することなく組織同士を固定する様々な組織固定デバイス(以下、「デバイス」とも称する。)が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されたデバイスは、螺旋コイル状に形成されていて、先端が尖頭針状に形成されている。デバイスの外径は3〜20mm程度であり、デバイスの中心軸線方向の長さは2mm以上に設定されている。
このデバイスを使用して組織同士を固定するときには、専用の処置具が用いられる。これは、デバイスが螺旋状に形成されているため把持しにくいからである。この処置具は、3本の弾性片からなる弾性保持部と、弾性片の基端が一体に連接された操作部とを有している。3本の弾性片は、自然状態において互いに離間するように拡開することで、3本の弾性片の全体としての外径がデバイスの内径より大きくなっている。
【0005】
このように構成されたデバイスを使用するときには、術者は、まず、3本の弾性片を指で摘むことで3本の弾性片の全体としての外径を小さくし、弾性片をデバイスの内側に嵌入してから指の力を解除する。すると、弾性片の弾性力により処置具がデバイスを強く保持する。
身体の切開部の両側の組織を互いに接近する方向に寄せ合わせた状態で、デバイスの螺旋の中心軸線が切開ラインと略一致するようにデバイスを位置づけ、デバイスの先端を組織に刺す。
操作部を回転させると、3本の弾性片により保持されたデバイスが中心軸線回りに回転し、切開ラインを挟んだ両側の組織にデバイスが先端から進入していく。デバイスが必要な深さに達したら、切断具などにより表皮の近傍でデバイスを切断し、体外側のデバイスを取り除く。
以上の手技により、両側の組織が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−47457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたデバイスで組織固定をするためには、専用の処置具が必要になっている。患者の負担を低減させるため、デバイスをさらに小さくすることが望まれているなかで、デバイスはさらに把持しにくくなっている。
上記のデバイスを用いることで、組織同士の固定に高度な技量は必要なくなったが、その一方で専用の処置具が必要になり、手技が煩雑になるという問題が生じている。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、専用の処置具を用いることなく組織同士を固定することができる組織固定デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の組織固定デバイスは、螺旋状に巻回された線状部材からなる固定部と、前記線状部材の端部に設けられた把持部と、を備え、前記固定部が形成する螺旋の中心軸線回りに前記固定部を回転させることで、前記線状部材が組織内に貫入することを特徴としている。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部は、前記固定部から離間する向きに延びることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部は直線状に延びることがより好ましい。
【0010】
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部は、前記中心軸線に平行に延びる棒状に形成されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部は、前記中心軸線上に配置されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部が延びる向きの先端部に、先端に向かうほど縮径する針状部を備えることがより好ましい。
【0011】
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記線状部材が巻回されるピッチは、前記線状部材の一端側よりも前記線状部材の他端側の方が大きくなるように形成されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記固定部の外径は、前記線状部材の一端側よりも前記線状部材の他端側の方が小さくなるように形成されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記固定部における前記把持部が設けられている前記端部とは反対側の第二の端部に設けられ、前記組織内に貫入する貫入抵抗が前記線状部材より大きく設定された止め部を備えることがより好ましい。
【0012】
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記止め部は、外径が前記線状部材の外径よりも大きく設定されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部に接続された縫合糸を備えることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記縫合糸における前記把持部が接続された側とは反対側に接続された縫合針を備えることがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組織固定デバイスによれば、専用の処置具を用いることなく組織同士を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態のデバイスの正面図である。
【図2】同デバイスの平面図である。
【図3】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図4】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図5】同デバイスを用いた手技を説明する平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図7】同デバイスの平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図11】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの斜視図である。
【図12】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図13】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの斜視図である。
【図14】同デバイスの平面図である。
【図15】本発明の第2実施形態のデバイスの全体図である。
【図16】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図17】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図18】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図19】同デバイスを用いた手技を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るデバイスの第1実施形態を、図1から図14を参照しながら説明する。
図1および図2に示すように、本デバイス1は、螺旋状に巻回された線状部材22からなる固定部21と、線状部材22の端部(他端)22aに設けられた把持部26とを備えている。
【0016】
線状部材22は、線状部材22における端部22aとは反対側の第二の端部(一端)22bから端部22aまで同一のピッチP1に設定されている。固定部21の外径は、線状部材22の第二の端部22bから端部22aまで等しく形成されている。
【0017】
把持部26は、固定部21が形成する螺旋の中心軸線C1に平行な向きD1に直線状に延びる棒状に形成されている。把持部26が延びる向きD1は、固定部21から離間する向きとなっている。本実施形態では、把持部26は、端部22aにおける線状部材22の接線T1の向きとは異なる向きD1に延びるように形成されている。
固定部21および把持部26は、線状部材22を成形することで一体に形成されている。線状部材22の長手方向に直交する断面形状は、円形に形成されている。
把持部26の大きさは、使用する鑷子(ピンセット)や持針器で扱いやすいことが望ましい。例えば、心臓血管領域などの微小な手術においては、把持部26の中心軸線C1方向の長さは、2〜10mm程度が好ましい。同様に、固定部21の中心軸線C1方向の長さは1〜3mm程度で、固定部21の外径は0.1〜1mm程度が好ましい。このように、デバイス1は小さく形成されている。
ただし、胃などの比較的大きな臓器の手術に用いられる場合には、固定部21および把持部26の大きさは前述した長さより大きく形成されてもよい。
【0018】
線状部材22は、本実施形態ではステンレス鋼で形成されている。
線状部材22を形成する材料としては、生体親和性を有する金属や樹脂を好適に用いることができる。
金属の例としては、本実施形態で用いられるステンレス鋼以外に、Ni−Ti合金、Co−Cr系合金、純Ti、Ti合金、Mg合金などを挙げることができる。
一方で、線状部材22に用いられる樹脂は、吸収性の樹脂と非吸収性の樹脂とに分類される。吸収性の樹脂としては、PGA、PLA、PDS、TMC、ポリエプシロンカプロラクトンおよびその共重合体などがある。非吸収性の樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブテステル、フッ素樹脂などがある。
【0019】
次に、以上のように構成された本実施形態のデバイス1を用いた手技について説明する。
まず、術者は、表皮や処置対象の臓器などを切開して適切な処置を施す。その後で、図3に示すように、切開部を挟んだ両側の組織W1、W2において、組織W1の端部W3および組織W2の端部W4をL字状に折り曲げるとともに、端部W3、W4の表面同士を当接させた状態に保持する。
次に、ピンセットVで把持部26の固定部21側を把持し、把持部26における向きD1の先端部26aを端部W3に押し付け、把持部26を端部W3、W4に穿刺させる。
図4に示すように、把持部26が端部W3、W4を貫通したら、貫通して端部W4から突出した把持部26の先端部26a側をピンセットVで把持し、デバイス1を向きD1側に引くことで、線状部材22の端部22aを組織W1の端部W3に穿通させる。
続いて、把持部26を向きD1側に引きながら固定部21の中心軸線C1回りにデバイス1を回転させると、図4および図5に示すように、固定部21を構成する線状部材22が端部W3、W4内に貫入し、端部W3、W4が、中心軸線C1方向に隣り合う線状部材22間に挟まれ、線状部材22の弾性力や変形した組織W1、W2の弾性力などにより互いに固定される。このように、把持部26は、一般的な縫合針のように、固定部21を端部W3、W4内に貫入するための導入機能を有している。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のデバイス1によれば、術者は手技を行うときに、ピンセットVで把持部26を把持する。把持部26は、線状部材22の端部22aに設けられ、直線状に延びるように形成されている。この把持部26が延びる方向に直交する平面による把持部26の断面形状は、一定となる。したがって、把持部26が非常に小さく形成されていても、ピンセットVなどで把持部26が延びる向きD1の両側から把持部26を挟むことで、把持部26を容易に把持することができる。
そして、ピンセットVを用いてデバイス1を中心軸線C1回りに回転させることで、組織W1、W2同士を固定することができる。
また、把持部26は固定部21から離間する向きD1に延びているため、固定部21から把持部26が突出する。これにより、把持部26をさらに容易に把持することができる。
【0021】
把持部26は、固定部21の中心軸線C1に平行に延びる棒状に形成されている。貫通して端部W4から突出した把持部26の先端部26a側をピンセットVで把持して中心軸線C1回りにデバイス1を回転させることで、把持部26の先端部26a側がピンセットVで覆われる。このため、デバイス1より向きD1側の組織が把持部26により損傷するのを抑えることができる。
また、把持部26をコンパクトに構成できるため、手技の障害となりにくい。
【0022】
本実施形態のデバイス1は、上記の実施形態の構成に限ることなく、以下に説明するように、その構成を様々に変形させることができる。
例えば、図6および図7に示すデバイス2のように、把持部26が固定部21の中心軸線C1上に配置されているように構成してもよい。この変形例の把持部26は、先端部26aに、先端に向かうほど縮径する針状部26bを備えている。
【0023】
このように構成されたデバイス2によれば、デバイス2を中心軸線C1回りに回転させたときに把持部26の位置がずれないため、デバイス2を中心軸線C1回りに容易に回転させ端部W3、W4内に貫入させることができる。
デバイス2は、術者がピンセットVで把持して操作するだけでなく、持針器などの把持機構のついた器具であれば操作可能であり、ロボットのマニピュレータの先端に設けられた把持装置で操作することも可能である。この場合、例えばマニピュレータに先端回転機構があるものであれば回転操作が容易であり、さらに、把持部26が固定部21の中心軸線C1上に配置されている方が、マニピュレータによる回転操作を行いやすい。
また、把持部26は、先端部26aに針状部26bが設けられているため、把持部26を端部W3、W4にさらに簡単に穿刺することができる。
【0024】
図8に示すデバイス3のように、前記変形例のデバイス2の各構成に加えて、線状部材22の第二の端部22bに把持部36が設けられていてもよい。この変形例では、把持部26には、針状部26bは設けられていない。
把持部36は、線状部材22と同一の材料で平板状に形成されている。把持部36は、向きD1とは反対となる向きD2に、幅は広いが直線状に延びるように形成されている。線状部材22と把持部36とは、接着や溶接などにより接続されている。
このように構成されたデバイス3によれば、固定部21の両端部22a、22b側から把持することができるため、デバイス3を操作しやすくなり、デバイス3の汎用性を向上させることができる。
【0025】
なお、本変形例において、デバイス3に把持部26は備えられなくてもよい。把持部36を把持することで、デバイス3を容易に操作できるからである。
【0026】
また、図9に示すデバイス4のように、前記変形例のデバイス2の固定部21に代えて固定部41を備えてもよい。この固定部41は、線状部材22の中心軸線C1方向のピッチが、第二の端部22b側よりも端部22a側の方が大きくなるように形成されている。
この変形例では、線状部材22のピッチは、第二の端部22bから端部22aに向かうにしたがって連続的に大きくなるように設定されている。
このように構成されたデバイス4によれば、組織W1の端部W3および組織W2の端部W4は、固定部41の端部22a側から中心軸線C1方向に隣り合う線状部材22間に挟まれていく。したがって、線状部材22間に端部W3、W4を挟みやすくなり、組織W1、W2同士をより確実に固定することができる。
なお、デバイス4における線状部材22のピッチは、第二の端部22bから端部22aに向かうにしたがって段階的に大きくなるように設定されていてもよい。
【0027】
図10に示すデバイス5のように、前記変形例のデバイス2の固定部21に代えて固定部51を備えてもよい。この固定部51は、線状部材22の第二の端部22b側の外径E1よりも端部22a側の外径E2の方が小さくなるように形成されている。
この変形例では、固定部51の外径は、第二の端部22bから端部22aに向かうにしたがって連続的に小さくなるように設定されている。
このように構成されたデバイス5によれば、前記変形例のデバイス4と同様の効果を奏することができる。
【0028】
また、図11に示すデバイス6のように、前記変形例のデバイス2の各構成に加えて、固定部21の第二の端部22bに止め部61を備えてもよい。
止め部61は平板状に形成されていて、固定部21の中心軸線C1と直交するように第二の端部22bに接続されている。止め部61は、線状部材22と同一の材料で形成されている。
止め部61は、外径が線状部材22の外径よりも大きく設定されている。これにより、止め部61を組織W1の端部W3内に貫入するときの入りにくさを表す貫入抵抗が、線状部材22の貫入抵抗より大きくなっている。
このように構成されたデバイス6によれば、固定部21を中心軸線C1回りに回転させ過ぎてデバイス6が端部W3、W4から抜け落ちてしまうのを防止することができる。
【0029】
なお、止め部の形状は、外径が線状部材22の外径よりも大きく設定されていればこの限りでなく、平板状以外にも球状や直方体状など、様々な形状とすることができる。
さらに、止め部は、本変形例以外にも、例えば図12に示すように、固定部21の第二の端部22b側の中心軸線C1方向に隣り合う線状部材22同士を接着剤66などで固定することで構成してもよい。
この場合、接着剤66と、接着剤66により固定される隣り合う線状部材22同士で、止め部を構成することになる。
【0030】
また、第二の端部22b側の線状部材22の外周面を化学処理などで荒らし、この部分の貫入抵抗を線状部材22の他の部分の貫入抵抗より増加させることで、止め部を構成してもよい。
【0031】
図13および図14に示すデバイス7のように、本実施形態のデバイス1の各構成に加えて、線状部材22の第二の端部22bに把持部68を備えてもよい。
把持部68は、棒状に形成され、第二の端部22bから直線状に延びている。この変形例では、把持部68は、図14に示すように、第二の端部22bにおける線状部材22の接線T2の向きと同一の向きD3に延びるように形成されている。
デバイス7の把持部68をこのように構成しても、把持部26と同様の効果を奏することができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図15から図19を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図15に示すように、本実施形態のデバイス8は、固定部71と、固定部71の第二の端部22bに設けられた止め部72と、前述の把持部26と、把持部26の先端部26aに接続された縫合糸73と、縫合糸73における把持部26が接続された側とは反対側に接続された縫合針74とを備えている。
固定部71の線状部材22は、中心軸線C1方向に密巻き(自然状態で中心軸線C1方向に隣り合う線状部材22同士が接触している巻き方)となるように螺旋状に巻回されている。
止め部72は円板状に形成され、固定部71の第二の端部22bに接続されている。
縫合糸73および縫合針74としては、公知のものを用いることができる。
【0033】
次に、以上のように構成された本実施形態のデバイス8を用いた手技について説明する。
まず、術者は、ピンセットVで縫合針74を把持し、切開部を挟んだ両側の組織W1、W2において、一方の組織W1を縫合針74で穿刺させる。組織W1から突出した縫合針74をピンセットVで把持して引き抜くことで、図16に示すように、縫合糸73を組織W1に貫通させる。
図17に示すように、組織W2を縫合針74で穿刺させる。縫合針74を切開部から離間するように引くことで、図18に示すように端部W3、W4の表面同士が当接した状態になる。このとき、線状部材22の端部22aを組織W1の端部W3に穿通させる。
【0034】
これ以降は、上記実施形態のデバイス1の手順と同様に、把持部26を引きながら固定部71の中心軸線C1回りにデバイス8を回転させると、固定部71を構成する線状部材22の間に端部W3、W4が貫入する。端部W3、W4が隣り合う線状部材22間に入り込むことで、図19に示すように、密巻きに巻回されていた線状部材22は中心軸線C1方向にピッチが広がる。
端部W3、W4は、デバイス8の線状部材22間に挟まれ、線状部材22の弾性力や変形した組織W1、W2の弾性力などにより互いに固定される。
このとき、止め部72によりデバイス8が端部W3、W4から抜け落ちてしまうのが防止される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のデバイス8によれば、縫合糸73を備えるため、前述のような小さい固定部71を扱うときの操作性を向上させることができる。この効果は、特に、切開部を挟んだ両側の組織の表面同士を当接させにくい、心臓の血管などの微細な組織を扱う時に顕著になる。
また、デバイス8は縫合針74を備えるため、穿刺性が向上し、組織W1の端部W3に容易に貫入することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、デバイス8に縫合針74は備えられなくてもよい。デバイス8をこのように構成しても、固定部71を扱うときの操作性を向上させることができるからである。
【0037】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、線状部材22の長手方向に直交する断面形状は円形に形成されているとした。しかし、この断面形状は円形に限ることなく、楕円形や、三角形および矩形などの多角形状でもよい。
【0038】
前記第1実施形態および第2実施形態では、把持部26は棒状に形成されているとした。しかし、把持部の形状はこれに限ることなく、波状、L字状、円弧状などでもよい。
また、前記第1実施形態および第2実施形態のデバイスは、上記実施形態で説明した切開して行われる手技以外にも、トロッカーなどを挿通させたり、口などの自然開口を挿通させたりして体内で行われる手技にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1、2、3、4、5、6、7、8 デバイス(組織固定デバイス)
21、41、51、71 固定部
22 線状部材
22a 端部(他端)
22b 第二の端部(一端)
26、36、68 把持部
26b 針状部
61、72 止め部
73 縫合糸
74 縫合針
C1 中心軸線
W1、W2 組織
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織同士を固定する組織固定デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切開手術などにおいて、組織同士を固定するときに縫合糸が用いられている。この場合、縫合糸を縫合針に取り付けておき、切開部の両側の組織に縫合針をそれぞれ穿通させる。これにより、縫合糸を両組織に貫入させ、縫合糸で両組織を緊縛した後で結紮することで、組織同士を固定している。
【0003】
この縫合糸の結紮は、非常に細やかな手技であるとともに、場合によっては患者の体腔内で結紮することもあり、術者の高度な技量が要求される手技となっている。
そこで、縫合糸を結紮することなく組織同士を固定する様々な組織固定デバイス(以下、「デバイス」とも称する。)が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載されたデバイスは、螺旋コイル状に形成されていて、先端が尖頭針状に形成されている。デバイスの外径は3〜20mm程度であり、デバイスの中心軸線方向の長さは2mm以上に設定されている。
このデバイスを使用して組織同士を固定するときには、専用の処置具が用いられる。これは、デバイスが螺旋状に形成されているため把持しにくいからである。この処置具は、3本の弾性片からなる弾性保持部と、弾性片の基端が一体に連接された操作部とを有している。3本の弾性片は、自然状態において互いに離間するように拡開することで、3本の弾性片の全体としての外径がデバイスの内径より大きくなっている。
【0005】
このように構成されたデバイスを使用するときには、術者は、まず、3本の弾性片を指で摘むことで3本の弾性片の全体としての外径を小さくし、弾性片をデバイスの内側に嵌入してから指の力を解除する。すると、弾性片の弾性力により処置具がデバイスを強く保持する。
身体の切開部の両側の組織を互いに接近する方向に寄せ合わせた状態で、デバイスの螺旋の中心軸線が切開ラインと略一致するようにデバイスを位置づけ、デバイスの先端を組織に刺す。
操作部を回転させると、3本の弾性片により保持されたデバイスが中心軸線回りに回転し、切開ラインを挟んだ両側の組織にデバイスが先端から進入していく。デバイスが必要な深さに達したら、切断具などにより表皮の近傍でデバイスを切断し、体外側のデバイスを取り除く。
以上の手技により、両側の組織が固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−47457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたデバイスで組織固定をするためには、専用の処置具が必要になっている。患者の負担を低減させるため、デバイスをさらに小さくすることが望まれているなかで、デバイスはさらに把持しにくくなっている。
上記のデバイスを用いることで、組織同士の固定に高度な技量は必要なくなったが、その一方で専用の処置具が必要になり、手技が煩雑になるという問題が生じている。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、専用の処置具を用いることなく組織同士を固定することができる組織固定デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の組織固定デバイスは、螺旋状に巻回された線状部材からなる固定部と、前記線状部材の端部に設けられた把持部と、を備え、前記固定部が形成する螺旋の中心軸線回りに前記固定部を回転させることで、前記線状部材が組織内に貫入することを特徴としている。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部は、前記固定部から離間する向きに延びることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部は直線状に延びることがより好ましい。
【0010】
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部は、前記中心軸線に平行に延びる棒状に形成されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部は、前記中心軸線上に配置されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部が延びる向きの先端部に、先端に向かうほど縮径する針状部を備えることがより好ましい。
【0011】
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記線状部材が巻回されるピッチは、前記線状部材の一端側よりも前記線状部材の他端側の方が大きくなるように形成されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記固定部の外径は、前記線状部材の一端側よりも前記線状部材の他端側の方が小さくなるように形成されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記固定部における前記把持部が設けられている前記端部とは反対側の第二の端部に設けられ、前記組織内に貫入する貫入抵抗が前記線状部材より大きく設定された止め部を備えることがより好ましい。
【0012】
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記止め部は、外径が前記線状部材の外径よりも大きく設定されていることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記把持部に接続された縫合糸を備えることがより好ましい。
また、上記の組織固定デバイスにおいて、前記縫合糸における前記把持部が接続された側とは反対側に接続された縫合針を備えることがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の組織固定デバイスによれば、専用の処置具を用いることなく組織同士を固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態のデバイスの正面図である。
【図2】同デバイスの平面図である。
【図3】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図4】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図5】同デバイスを用いた手技を説明する平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図7】同デバイスの平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図9】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図10】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図11】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの斜視図である。
【図12】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの正面図である。
【図13】本発明の第1実施形態の変形例におけるデバイスの斜視図である。
【図14】同デバイスの平面図である。
【図15】本発明の第2実施形態のデバイスの全体図である。
【図16】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図17】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図18】同デバイスを用いた手技を説明する斜視図である。
【図19】同デバイスを用いた手技を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るデバイスの第1実施形態を、図1から図14を参照しながら説明する。
図1および図2に示すように、本デバイス1は、螺旋状に巻回された線状部材22からなる固定部21と、線状部材22の端部(他端)22aに設けられた把持部26とを備えている。
【0016】
線状部材22は、線状部材22における端部22aとは反対側の第二の端部(一端)22bから端部22aまで同一のピッチP1に設定されている。固定部21の外径は、線状部材22の第二の端部22bから端部22aまで等しく形成されている。
【0017】
把持部26は、固定部21が形成する螺旋の中心軸線C1に平行な向きD1に直線状に延びる棒状に形成されている。把持部26が延びる向きD1は、固定部21から離間する向きとなっている。本実施形態では、把持部26は、端部22aにおける線状部材22の接線T1の向きとは異なる向きD1に延びるように形成されている。
固定部21および把持部26は、線状部材22を成形することで一体に形成されている。線状部材22の長手方向に直交する断面形状は、円形に形成されている。
把持部26の大きさは、使用する鑷子(ピンセット)や持針器で扱いやすいことが望ましい。例えば、心臓血管領域などの微小な手術においては、把持部26の中心軸線C1方向の長さは、2〜10mm程度が好ましい。同様に、固定部21の中心軸線C1方向の長さは1〜3mm程度で、固定部21の外径は0.1〜1mm程度が好ましい。このように、デバイス1は小さく形成されている。
ただし、胃などの比較的大きな臓器の手術に用いられる場合には、固定部21および把持部26の大きさは前述した長さより大きく形成されてもよい。
【0018】
線状部材22は、本実施形態ではステンレス鋼で形成されている。
線状部材22を形成する材料としては、生体親和性を有する金属や樹脂を好適に用いることができる。
金属の例としては、本実施形態で用いられるステンレス鋼以外に、Ni−Ti合金、Co−Cr系合金、純Ti、Ti合金、Mg合金などを挙げることができる。
一方で、線状部材22に用いられる樹脂は、吸収性の樹脂と非吸収性の樹脂とに分類される。吸収性の樹脂としては、PGA、PLA、PDS、TMC、ポリエプシロンカプロラクトンおよびその共重合体などがある。非吸収性の樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブテステル、フッ素樹脂などがある。
【0019】
次に、以上のように構成された本実施形態のデバイス1を用いた手技について説明する。
まず、術者は、表皮や処置対象の臓器などを切開して適切な処置を施す。その後で、図3に示すように、切開部を挟んだ両側の組織W1、W2において、組織W1の端部W3および組織W2の端部W4をL字状に折り曲げるとともに、端部W3、W4の表面同士を当接させた状態に保持する。
次に、ピンセットVで把持部26の固定部21側を把持し、把持部26における向きD1の先端部26aを端部W3に押し付け、把持部26を端部W3、W4に穿刺させる。
図4に示すように、把持部26が端部W3、W4を貫通したら、貫通して端部W4から突出した把持部26の先端部26a側をピンセットVで把持し、デバイス1を向きD1側に引くことで、線状部材22の端部22aを組織W1の端部W3に穿通させる。
続いて、把持部26を向きD1側に引きながら固定部21の中心軸線C1回りにデバイス1を回転させると、図4および図5に示すように、固定部21を構成する線状部材22が端部W3、W4内に貫入し、端部W3、W4が、中心軸線C1方向に隣り合う線状部材22間に挟まれ、線状部材22の弾性力や変形した組織W1、W2の弾性力などにより互いに固定される。このように、把持部26は、一般的な縫合針のように、固定部21を端部W3、W4内に貫入するための導入機能を有している。
【0020】
以上説明したように、本実施形態のデバイス1によれば、術者は手技を行うときに、ピンセットVで把持部26を把持する。把持部26は、線状部材22の端部22aに設けられ、直線状に延びるように形成されている。この把持部26が延びる方向に直交する平面による把持部26の断面形状は、一定となる。したがって、把持部26が非常に小さく形成されていても、ピンセットVなどで把持部26が延びる向きD1の両側から把持部26を挟むことで、把持部26を容易に把持することができる。
そして、ピンセットVを用いてデバイス1を中心軸線C1回りに回転させることで、組織W1、W2同士を固定することができる。
また、把持部26は固定部21から離間する向きD1に延びているため、固定部21から把持部26が突出する。これにより、把持部26をさらに容易に把持することができる。
【0021】
把持部26は、固定部21の中心軸線C1に平行に延びる棒状に形成されている。貫通して端部W4から突出した把持部26の先端部26a側をピンセットVで把持して中心軸線C1回りにデバイス1を回転させることで、把持部26の先端部26a側がピンセットVで覆われる。このため、デバイス1より向きD1側の組織が把持部26により損傷するのを抑えることができる。
また、把持部26をコンパクトに構成できるため、手技の障害となりにくい。
【0022】
本実施形態のデバイス1は、上記の実施形態の構成に限ることなく、以下に説明するように、その構成を様々に変形させることができる。
例えば、図6および図7に示すデバイス2のように、把持部26が固定部21の中心軸線C1上に配置されているように構成してもよい。この変形例の把持部26は、先端部26aに、先端に向かうほど縮径する針状部26bを備えている。
【0023】
このように構成されたデバイス2によれば、デバイス2を中心軸線C1回りに回転させたときに把持部26の位置がずれないため、デバイス2を中心軸線C1回りに容易に回転させ端部W3、W4内に貫入させることができる。
デバイス2は、術者がピンセットVで把持して操作するだけでなく、持針器などの把持機構のついた器具であれば操作可能であり、ロボットのマニピュレータの先端に設けられた把持装置で操作することも可能である。この場合、例えばマニピュレータに先端回転機構があるものであれば回転操作が容易であり、さらに、把持部26が固定部21の中心軸線C1上に配置されている方が、マニピュレータによる回転操作を行いやすい。
また、把持部26は、先端部26aに針状部26bが設けられているため、把持部26を端部W3、W4にさらに簡単に穿刺することができる。
【0024】
図8に示すデバイス3のように、前記変形例のデバイス2の各構成に加えて、線状部材22の第二の端部22bに把持部36が設けられていてもよい。この変形例では、把持部26には、針状部26bは設けられていない。
把持部36は、線状部材22と同一の材料で平板状に形成されている。把持部36は、向きD1とは反対となる向きD2に、幅は広いが直線状に延びるように形成されている。線状部材22と把持部36とは、接着や溶接などにより接続されている。
このように構成されたデバイス3によれば、固定部21の両端部22a、22b側から把持することができるため、デバイス3を操作しやすくなり、デバイス3の汎用性を向上させることができる。
【0025】
なお、本変形例において、デバイス3に把持部26は備えられなくてもよい。把持部36を把持することで、デバイス3を容易に操作できるからである。
【0026】
また、図9に示すデバイス4のように、前記変形例のデバイス2の固定部21に代えて固定部41を備えてもよい。この固定部41は、線状部材22の中心軸線C1方向のピッチが、第二の端部22b側よりも端部22a側の方が大きくなるように形成されている。
この変形例では、線状部材22のピッチは、第二の端部22bから端部22aに向かうにしたがって連続的に大きくなるように設定されている。
このように構成されたデバイス4によれば、組織W1の端部W3および組織W2の端部W4は、固定部41の端部22a側から中心軸線C1方向に隣り合う線状部材22間に挟まれていく。したがって、線状部材22間に端部W3、W4を挟みやすくなり、組織W1、W2同士をより確実に固定することができる。
なお、デバイス4における線状部材22のピッチは、第二の端部22bから端部22aに向かうにしたがって段階的に大きくなるように設定されていてもよい。
【0027】
図10に示すデバイス5のように、前記変形例のデバイス2の固定部21に代えて固定部51を備えてもよい。この固定部51は、線状部材22の第二の端部22b側の外径E1よりも端部22a側の外径E2の方が小さくなるように形成されている。
この変形例では、固定部51の外径は、第二の端部22bから端部22aに向かうにしたがって連続的に小さくなるように設定されている。
このように構成されたデバイス5によれば、前記変形例のデバイス4と同様の効果を奏することができる。
【0028】
また、図11に示すデバイス6のように、前記変形例のデバイス2の各構成に加えて、固定部21の第二の端部22bに止め部61を備えてもよい。
止め部61は平板状に形成されていて、固定部21の中心軸線C1と直交するように第二の端部22bに接続されている。止め部61は、線状部材22と同一の材料で形成されている。
止め部61は、外径が線状部材22の外径よりも大きく設定されている。これにより、止め部61を組織W1の端部W3内に貫入するときの入りにくさを表す貫入抵抗が、線状部材22の貫入抵抗より大きくなっている。
このように構成されたデバイス6によれば、固定部21を中心軸線C1回りに回転させ過ぎてデバイス6が端部W3、W4から抜け落ちてしまうのを防止することができる。
【0029】
なお、止め部の形状は、外径が線状部材22の外径よりも大きく設定されていればこの限りでなく、平板状以外にも球状や直方体状など、様々な形状とすることができる。
さらに、止め部は、本変形例以外にも、例えば図12に示すように、固定部21の第二の端部22b側の中心軸線C1方向に隣り合う線状部材22同士を接着剤66などで固定することで構成してもよい。
この場合、接着剤66と、接着剤66により固定される隣り合う線状部材22同士で、止め部を構成することになる。
【0030】
また、第二の端部22b側の線状部材22の外周面を化学処理などで荒らし、この部分の貫入抵抗を線状部材22の他の部分の貫入抵抗より増加させることで、止め部を構成してもよい。
【0031】
図13および図14に示すデバイス7のように、本実施形態のデバイス1の各構成に加えて、線状部材22の第二の端部22bに把持部68を備えてもよい。
把持部68は、棒状に形成され、第二の端部22bから直線状に延びている。この変形例では、把持部68は、図14に示すように、第二の端部22bにおける線状部材22の接線T2の向きと同一の向きD3に延びるように形成されている。
デバイス7の把持部68をこのように構成しても、把持部26と同様の効果を奏することができる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図15から図19を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図15に示すように、本実施形態のデバイス8は、固定部71と、固定部71の第二の端部22bに設けられた止め部72と、前述の把持部26と、把持部26の先端部26aに接続された縫合糸73と、縫合糸73における把持部26が接続された側とは反対側に接続された縫合針74とを備えている。
固定部71の線状部材22は、中心軸線C1方向に密巻き(自然状態で中心軸線C1方向に隣り合う線状部材22同士が接触している巻き方)となるように螺旋状に巻回されている。
止め部72は円板状に形成され、固定部71の第二の端部22bに接続されている。
縫合糸73および縫合針74としては、公知のものを用いることができる。
【0033】
次に、以上のように構成された本実施形態のデバイス8を用いた手技について説明する。
まず、術者は、ピンセットVで縫合針74を把持し、切開部を挟んだ両側の組織W1、W2において、一方の組織W1を縫合針74で穿刺させる。組織W1から突出した縫合針74をピンセットVで把持して引き抜くことで、図16に示すように、縫合糸73を組織W1に貫通させる。
図17に示すように、組織W2を縫合針74で穿刺させる。縫合針74を切開部から離間するように引くことで、図18に示すように端部W3、W4の表面同士が当接した状態になる。このとき、線状部材22の端部22aを組織W1の端部W3に穿通させる。
【0034】
これ以降は、上記実施形態のデバイス1の手順と同様に、把持部26を引きながら固定部71の中心軸線C1回りにデバイス8を回転させると、固定部71を構成する線状部材22の間に端部W3、W4が貫入する。端部W3、W4が隣り合う線状部材22間に入り込むことで、図19に示すように、密巻きに巻回されていた線状部材22は中心軸線C1方向にピッチが広がる。
端部W3、W4は、デバイス8の線状部材22間に挟まれ、線状部材22の弾性力や変形した組織W1、W2の弾性力などにより互いに固定される。
このとき、止め部72によりデバイス8が端部W3、W4から抜け落ちてしまうのが防止される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のデバイス8によれば、縫合糸73を備えるため、前述のような小さい固定部71を扱うときの操作性を向上させることができる。この効果は、特に、切開部を挟んだ両側の組織の表面同士を当接させにくい、心臓の血管などの微細な組織を扱う時に顕著になる。
また、デバイス8は縫合針74を備えるため、穿刺性が向上し、組織W1の端部W3に容易に貫入することができる。
【0036】
なお、本実施形態では、デバイス8に縫合針74は備えられなくてもよい。デバイス8をこのように構成しても、固定部71を扱うときの操作性を向上させることができるからである。
【0037】
以上、本発明の第1実施形態および第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、線状部材22の長手方向に直交する断面形状は円形に形成されているとした。しかし、この断面形状は円形に限ることなく、楕円形や、三角形および矩形などの多角形状でもよい。
【0038】
前記第1実施形態および第2実施形態では、把持部26は棒状に形成されているとした。しかし、把持部の形状はこれに限ることなく、波状、L字状、円弧状などでもよい。
また、前記第1実施形態および第2実施形態のデバイスは、上記実施形態で説明した切開して行われる手技以外にも、トロッカーなどを挿通させたり、口などの自然開口を挿通させたりして体内で行われる手技にも好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1、2、3、4、5、6、7、8 デバイス(組織固定デバイス)
21、41、51、71 固定部
22 線状部材
22a 端部(他端)
22b 第二の端部(一端)
26、36、68 把持部
26b 針状部
61、72 止め部
73 縫合糸
74 縫合針
C1 中心軸線
W1、W2 組織
【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻回された線状部材からなる固定部と、
前記線状部材の端部に設けられた把持部と、
を備え、
前記固定部が形成する螺旋の中心軸線回りに前記固定部を回転させることで、前記線状部材が組織内に貫入することを特徴とする組織固定デバイス。
【請求項2】
前記把持部は、前記固定部から離間する向きに延びることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項3】
前記把持部は直線状に延びることを特徴とする請求項2に記載の組織固定デバイス。
【請求項4】
前記把持部は、前記中心軸線に平行に延びる棒状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の組織固定デバイス。
【請求項5】
前記把持部は、前記中心軸線上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の組織固定デバイス。
【請求項6】
前記把持部が延びる向きの先端部に、先端に向かうほど縮径する針状部を備えることを特徴とする請求項4に記載の組織固定デバイス。
【請求項7】
前記線状部材が巻回されるピッチは、前記線状部材の一端側よりも前記線状部材の他端側の方が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項8】
前記固定部の外径は、前記線状部材の一端側よりも前記線状部材の他端側の方が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項9】
前記固定部における前記把持部が設けられている前記端部とは反対側の第二の端部に設けられ、前記組織内に貫入する貫入抵抗が前記線状部材より大きく設定された止め部を備えることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項10】
前記止め部は、外径が前記線状部材の外径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項9に記載の組織固定デバイス。
【請求項11】
前記把持部に接続された縫合糸を備えることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項12】
前記縫合糸における前記把持部が接続された側とは反対側に接続された縫合針を備えることを特徴とする請求項11に記載の組織固定デバイス。
【請求項1】
螺旋状に巻回された線状部材からなる固定部と、
前記線状部材の端部に設けられた把持部と、
を備え、
前記固定部が形成する螺旋の中心軸線回りに前記固定部を回転させることで、前記線状部材が組織内に貫入することを特徴とする組織固定デバイス。
【請求項2】
前記把持部は、前記固定部から離間する向きに延びることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項3】
前記把持部は直線状に延びることを特徴とする請求項2に記載の組織固定デバイス。
【請求項4】
前記把持部は、前記中心軸線に平行に延びる棒状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の組織固定デバイス。
【請求項5】
前記把持部は、前記中心軸線上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の組織固定デバイス。
【請求項6】
前記把持部が延びる向きの先端部に、先端に向かうほど縮径する針状部を備えることを特徴とする請求項4に記載の組織固定デバイス。
【請求項7】
前記線状部材が巻回されるピッチは、前記線状部材の一端側よりも前記線状部材の他端側の方が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項8】
前記固定部の外径は、前記線状部材の一端側よりも前記線状部材の他端側の方が小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項9】
前記固定部における前記把持部が設けられている前記端部とは反対側の第二の端部に設けられ、前記組織内に貫入する貫入抵抗が前記線状部材より大きく設定された止め部を備えることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項10】
前記止め部は、外径が前記線状部材の外径よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項9に記載の組織固定デバイス。
【請求項11】
前記把持部に接続された縫合糸を備えることを特徴とする請求項1に記載の組織固定デバイス。
【請求項12】
前記縫合糸における前記把持部が接続された側とは反対側に接続された縫合針を備えることを特徴とする請求項11に記載の組織固定デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−13490(P2013−13490A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147170(P2011−147170)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発/超低侵襲治療機器システムの研究開発/内視鏡下手術支援システムの研究開発プロジェクト」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「がん超早期診断・治療機器の総合研究開発/超低侵襲治療機器システムの研究開発/内視鏡下手術支援システムの研究開発プロジェクト」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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