説明

組織結紮デバイス

【課題】術者が片手で容易に縫合糸のループを形成することができる組織結紮デバイスを提供する。
【解決手段】組織を結紮するための組織結紮デバイス1であって、縫合糸20と、縫合糸20の縫合糸側接続部21に接続された接続部31、および、縫合糸側接続部21に対向するように配置され縫合糸20を当接可能な係止面34cが内壁面に設けられた溝部34を有する鉤状部材30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫合糸を備える組織結紮デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、組織を縫合、結紮する動作は、多くの手技において非常に重要な位置を占めているが、熟練を要する難度の高い動作となっている。近年、患者の侵襲を低減する目的から、内視鏡や腹腔鏡、胸腔鏡などを用いて手術などの各種手技を行う試みが進められている。このような鏡視下では、縫合糸や縫合針などを長い鉗子などで操作する必要があるため、縫合、結紮などの難度はさらに高くなる。
【0003】
縫合や結紮において、特に困難なのは、縫合糸を結んで結び目を形成する動作である。結び目が緩んでしまうと縫合や結紮が解除されて重大な合併症を引き起こす場合もある。手技によっては結び目を多数形成する場合もあり、その場合、難度はさらに上昇する。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献1に記載の医療用縫合器が提案されている。この医療用縫合器は、糸止め部材に縫合糸が接続された縫合体を備えている。糸止め部材は、断面がU字形状に形成されている。縫合糸は、生体吸収性の樹脂によって形成され、モノフィラメント(単線)とマルチフィラメント(複線)とを使い分けることができる。
曲針などを用いて組織に係止された縫合糸を糸止め部材のU字溝内に引き込んで糸止め部材に縫合糸を係合させ、縫合糸でループを形成する。縫合糸を引き絞ってから、かしめや超音波などにより糸止め部材を変形させると、U字溝内に引き込まれた縫合糸が糸止め部材に固定される。このようにして結び目が形成されるため、結び目の形成が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−140982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の医療用縫合器では、組織を結紮するときに糸止め部材および縫合糸を別々に支持する必要がある。このため、術者が手技をするときに、糸止め部材に縫合糸を係合させて縫合糸でループを形成するという動作を、片手だけで行うことができない。このため、手技が煩雑になったり、手技に要する時間が長くなったりするという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、術者が片手で容易に縫合糸のループを形成することができる組織結紮デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の組織結紮デバイスは、組織を結紮するための組織結紮デバイスであって、縫合糸と、前記縫合糸の縫合糸側接続部に接続された接続部、および、前記縫合糸側接続部に対向するように配置され前記縫合糸を当接可能な係止面が内壁面に設けられた溝部を有する鉤状部材と、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記鉤状部材に対する前記縫合糸側接続部の向きを規制する方向規制部を備えることがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記鉤状部材は、前記接続部から直線状に延びる直状部と、一端が前記直状部に接続され、前記直状部を含む基準平面上で湾曲または屈曲することで前記接続部側に向く開口が形成された前記溝部を有する折れ曲がり部と、を有することがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記直状部は、前記縫合糸側接続部の中心軸線である基準線に直交するように延び、前記基準平面は、前記基準線に直交することがより好ましい。
【0010】
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記直状部は、前記縫合糸側接続部の中心軸線である基準線に直交するように延び、前記基準平面は、前記基準線に直交することなく交差するか、前記基準線を含むことがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記直状部は、前記縫合糸側接続部の中心軸線に沿って、前記縫合糸から離間する側に延びることがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記直状部は、前記縫合糸側接続部の中心軸線に沿って、前記縫合糸側に延びることがより好ましい。
【0011】
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記直状部が、前記縫合糸側接続部の中心軸線である基準線に直交し前記縫合糸側接続部を通る直交平面を規定したときに、前記直交平面に対して前記縫合糸から離間する側に延びることがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記直状部が、前記縫合糸側接続部の中心軸線である基準線に直交し前記縫合糸側接続部を通る直交平面を規定したときに、前記直交平面に対して前記縫合糸側に延びることがより好ましい。
また、上記の組織結紮デバイスにおいて、前記縫合糸に接続された縫合針を備えることがより好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の組織結紮デバイスによれば、術者が片手で容易に縫合糸のループを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図2】同組織結紮デバイスをZ軸の負の向きに見た平面図である。
【図3】同組織結紮デバイスの要部の断面図である。
【図4】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図5】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図6】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図7】本発明の第2実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図8】同組織結紮デバイスをZ軸の負の向きに見た平面図である。
【図9】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図10】本発明の第2実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図11】本発明の第2実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図12】同組織結紮デバイスの要部をX軸の正の向きに見た正面図である。
【図13】本発明の第2実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図14】本発明の第3実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図15】同組織結紮デバイスの要部をY軸の正の向きに見た側面図である。
【図16】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図17】本発明の第4実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図18】同組織結紮デバイスの要部をY軸の正の向きに見た側面図である。
【図19】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図20】図19中の切断線A1−A1の断面図である。
【図21】本発明の第5実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図22】同組織結紮デバイスの要部をY軸の正の向きに見た側面図である。
【図23】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図24】本発明の第5実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図25】本発明の第5実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図26】本発明の第6実施形態の組織結紮デバイスの斜視図である。
【図27】同組織結紮デバイスの要部をY軸の正の向きに見た側面図である。
【図28】同組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【図29】本発明の第6実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図30】本発明の第6実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図31】本発明の実施形態の変形例における鉤状部材の斜視図である。
【図32】本発明の実施形態の変形例における鉤状部材の斜視図である。
【図33】本発明の実施形態の変形例における鉤状部材の斜視図である。
【図34】本発明の実施形態の変形例の鉤状部材における、図34(A)は斜視図であり、図34(B)はX軸の正の向きに見た正面図である。
【図35】本発明の実施形態の変形例の鉤状部材における、図35(A)は斜視図であり、図35(B)はX軸の正の向きに見た正面図である。
【図36】本発明の実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図37】本発明の実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図38】本発明の実施形態の変形例における組織結紮デバイスの要部の斜視図である。
【図39】本発明の実施形態の変形例における組織結紮デバイスの分解図である。
【図40】本発明の実施形態の変形例における組織結紮デバイスを使用して組織を縫合する動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る組織結紮デバイス(以下、「デバイス」とも称する。)の第1実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。
図1および図2に示すように、本デバイス1は、縫合糸20と、縫合糸20の端部(縫合糸側接続部)21に接続された鉤状部材30と、縫合糸20の他方の端部22に接続された縫合針40とを備えている。
【0015】
本実施形態では、鉤状部材30はステンレススチールにより形成されている。
縫合糸20および鉤状部材30を形成する材料としては、金属や樹脂なども好適に用いることができる。
金属の例としては、Co−Cr合金、βチタン、ニッケルチタン、純Ti、Ti合金、Mg合金などを挙げることができる。
一方で、縫合糸20および鉤状部材30に用いられる樹脂は、吸収性の樹脂と非吸収性の樹脂とに分類される。吸収性の樹脂としては、PGA、PLA、PDS、TMC、ポリエプシロンカプロラクトンおよびその共重合体などがある。非吸収性の樹脂としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブテステル、フッ素樹脂などがある。
【0016】
鉤状部材30は、縫合糸20の端部21に接続された接続部31と、接続部31から直線状に延びる直状部32と、一端が直状部32に接続された湾曲部(折れ曲がり部)33とを有している。
接続部31には、図3に示すように、内径が縫合糸20の外径よりわずかに大きく設定された固定穴31aが形成されている。縫合糸20の端部21を固定穴31aに圧入し、端部21と接続部31とを接着剤Bなどで固定することで、縫合糸20に接続部31が接続されている。
なお、固定穴31aおよび接着剤Bで、方向規制部51を構成する。
【0017】
以下では、説明の便宜のために、図1および図2に示すように、縫合糸20の端部21を原点Oとし、縫合糸20の原点Oにおける中心軸線を基準線L1と規定する。
基準線L1上にZ軸を規定し、縫合糸20から離間する向きをZ軸の正の向きとする。原点Oを通り基準線L1に直交する直交平面S1を規定すると、直交平面S1上に設けられるX軸およびY軸と前述のZ軸とで、右手系の直交座標系が規定される。
このように規定された直交座標系XYZにおいて、直状部32は、X軸の正の向き、すなわち、基準線L1に直交するように延びている。
直状部32は、一方向に延びる棒状に形成されている。
【0018】
湾曲部33は、XY平面となる基準平面上で湾曲していて、湾曲部33には湾曲の内側に溝部34が形成されている。鉤状部材30が配置されているXY平面は、基準線L1に直交している。湾曲部33における湾曲した部分の中心角度は、約180度に設定されている。
溝部34は、湾曲部33をZ方向に貫通するように形成されている。溝部34の深さ(溝部34の底部34aから開口34bまでの距離)および幅は、縫合糸20の外径より大きく設定されている(図2参照。)。溝部34は、開口34bが接続部31側に向くように、すなわち、X軸の負の向きを向くように形成されている。溝部34の内壁面には、縫合糸20の端部21に対向するように配置され、縫合糸20を当接可能な係止面34cが設けられている。湾曲部33におけるX軸の負の向き側の端部であって、Y軸の正の向き側の端部となる部分が、直状部32に接続されている。
湾曲部33は、直状部32における接続部31が接続された端部とは反対側の端部に接続されている。
【0019】
この例では、接続部31、直状部32、および湾曲部33は、ステンレススチール製のワイヤーを曲げ加工することで、一体に形成されている。鉤状部材30は縫合糸20より硬く形成されていて、カシめることで塑性変形させることができる。
直状部32および湾曲部33は、それぞれが延びる向きに直交する平面による断面形状が矩形状に形成されている。
鉤状部材30の大きさは、例えば10mm以下と、非常に小さく形成されている。
【0020】
縫合針40は、公知の各種のものを使用することができ、直線状のもの、湾曲状のもの、先端部のみ湾曲し、他の部位が直線状に形成されたものなどを、縫合部位などを考慮して適宜選択することができる。縫合糸20と縫合針40との接続態様には特に制限はなく、具体的には、接着、溶着、あるいは縫合針40の端部に形成した穴に縫合糸20の端部を通して結ぶなどの方法を挙げることができる。
【0021】
次に、以上のように構成されたデバイス1の使用時の動作について、開口の両側の組織を縫合する場合を例にとって説明する。
まず、術者は、図4に示すように、把持鉗子Wなどでデバイス1の縫合針40を把持し、開口部Tの一方の組織T1の近傍に縫合針40を穿刺する。
図5に示すように、開口部Tの他方の組織T2にも縫合針40および縫合糸20を通す。縫合針40を開口部Tから離間するように引くことで、鉤状部材30が組織T1、T2上に配置されるように調節する。デバイス1は方向規制部51を備えているため、縫合糸20に対する鉤状部材30の向きが安定する。
【0022】
縫合針40を把持した把持鉗子Wを鉤状部材30側に移動し、縫合糸20を開口34bを通して溝部34に係合させ、縫合糸20でループを形成する。鉤状部材30に縫合糸20が係合した状態を保持しつつ、縫合針40を縫合糸20の端部21から離間するように引く。縫合糸20が鉤状部材30の係止面34cに当接するため、鉤状部材30から縫合糸20が外れるのが防止される。
方向規制部51により縫合糸20に対する鉤状部材30の向きが規定されているため、図6に示すように、組織T1、T2の表面と鉤状部材30が配置されているXY平面とがほぼ平行になった状態で、組織Tに鉤状部材30が当接する。溝部34内で縫合糸20がZ軸方向に移動して、組織T1、T2が縫合糸20により緊縛される。
縫合針40を縫合糸20の端部21から離間するように引いた状態で、不図示の別の把持鉗子などで鉤状部材30の湾曲部33を外側から潰すようにカシめ、縫合糸20に鉤状部材30を固定する。このように、縫合糸20とカシめた鉤状部材30とにより結び目を形成することで、組織Tを結紮する。
縫合糸20におけるカシめた鉤状部材30より縫合針40側を医療用のナイフなどで切断し、縫合針40および切断した縫合糸20を取り出して手技を終了する。
【0023】
以上説明したように、本実施形態のデバイス1によれば、組織T1、T2に縫合糸20を通し、鉤状部材30の溝部34に縫合糸20を係合させ、縫合針40を縫合糸20の端部21から離間するように引く。
溝部34はZ方向に貫通していて、縫合糸20を開口34bを通すように引き回すことで、溝部34に縫合糸20を容易に係合させることができる。縫合糸20が鉤状部材30の係止面34cに当接するため、端部21から離間しようとする縫合糸20は係止面34cにより支持され、鉤状部材30から縫合糸20が外れるのが防止される。したがって、術者が片手で容易に縫合糸20のループを形成することができる。
デバイス1は方向規制部51を備えるため、縫合糸20に対する鉤状部材30の向きが固定され、術者が鉤状部材30の向きを容易に認識することができる。これにより、鉤状部材30の溝部34に縫合糸20をより簡単に係合させることができる。
【0024】
鉤状部材30は直状部32と湾曲部33とで構成されているため、鉤状部材30を容易に構成することができる。開口34bが接続部31側に向いているため、術者に開口34bの向きを認識しやすくすることができる。
また、鉤状部材30が配置されているXY平面は基準線L1に直交している。これにより、組織T1に縫合糸20を通し、縫合針40を引いて組織T1に鉤状部材30を当接させたときに、組織T1の表面と鉤状部材30がほぼ平行となるため、組織T1に鉤状部材30が当接したときに組織T1が損傷するのを防止することができる。
デバイス1は縫合針40を備えるため、縫合針40に接続された縫合糸20を組織T1、T2に容易に通すことができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7から図13を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7および図8に示すように、本実施形態のデバイス2は、前記第1実施形態のデバイス1の鉤状部材30に代えて、鉤状部材60を備えている。
鉤状部材60は、鉤状部材30とは直状部32に湾曲部33が接続されている向きが異なる。湾曲部33は、ZX平面となる基準平面S2上で湾曲している。湾曲部33が湾曲しているZX平面は、基準線L1を含む面となっている。溝部34は、湾曲部33をY方向に貫通するように形成されている。
湾曲部33におけるX軸の負の向き側の端部であって、Z軸の正の向き側の端部となる部分が、直状部32に接続されている。
【0026】
次に、このように構成されたデバイス2の使用時の動作について説明する。
図9に示すように、組織T1、T2に縫合糸20を通し、鉤状部材60の溝部34に縫合糸20を係合させ、縫合針40を縫合糸20の端部21から離間するように引く。このとき、縫合糸20が鉤状部材60の係止面34cに当接するため、鉤状部材60から縫合糸20が外れるのが防止される。組織T2から縫合糸20が突出する方向と溝部34が貫通する方向とが交差するため、溝部34内を通る縫合糸20に溝部34の内壁面の角34dが食い込む。
これ以降の動作は、前述のデバイス1を用いた場合と同様なので、説明を省略する。
【0027】
以上説明したように、本実施形態のデバイス2によれば、術者が片手で容易に縫合糸20のループを形成することができる。
さらに、湾曲部33が湾曲している基準平面S2が基準線L1を含む面となっている。このため、組織T1、T2に縫合糸20を通したあとで溝部34内に縫合糸20を通して縫合針40を縫合糸20の端部21から離間するように引くと、縫合糸20に溝部34の角34dが食い込む。したがって、溝部34から縫合糸20が抜けにくくすることができる。
【0028】
本実施形態のデバイス2は、以下に説明するようにその形状を様々に変形させることができる。
例えば、図10に示すデバイス2Aのように、本実施形態のデバイス2の湾曲部33におけるX軸の負の向き側の端部であって、Z軸の負の向き側の端部となる部分が、直状部32に接続されているように構成してもよい。
この場合においても、湾曲部33が湾曲する基準平面S2は基準線L1を含む面となっている
【0029】
また、本実施形態および上記変形例では、湾曲部33が湾曲している基準平面S2は、基準線L1を含むZX平面であるとした。しかし、湾曲部33が湾曲している基準平面が基準線L1に直交することなく交差する平面であるとしてもよい。
例えば、図11および図12に示すデバイス2Bのように、デバイス2の湾曲部33が基準平面S4上に配置されるように構成してもよい。基準平面S4は、X軸を含むとともに、Y軸の正の向き側であってZ軸の正の向き側となる領域、および、Y軸の負の向き側であってZ軸の負の向き側となる領域を通る平面となっている。
【0030】
図13に示すデバイス2Cのように、湾曲部33が基準平面S5上に配置されるように構成してもよい。基準平面S5は、X軸を含むとともに、Y軸の正の向き側であってZ軸の負の向き側となる領域、および、Y軸の負の向き側であってZ軸の正の向き側となる領域を通る平面となっている。
このように構成されたデバイス2A、2B、2Cによっても、本実施形態のデバイス2と同様に、溝部34に通した縫合糸20が溝部34から抜けにくくすることができる。
【0031】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図14から図16を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図14および図15に示すように、本実施形態のデバイス3は、前記第1実施形態のデバイス1の鉤状部材30に代えて、鉤状部材70を備えている。
鉤状部材70は、鉤状部材30とは直状部32が接続部31から延びる向きが異なる。直状部32は、接続部31からZ軸の正の向き、すなわち、基準線L1に沿って、縫合糸20から離間する側に延びている。
この例では、湾曲部33が湾曲している面をZX平面としている。
【0032】
次に、このように構成されたデバイス3の使用時の動作について説明する。
組織T1、T2に縫合糸20を通し、縫合針40を開口部Tから離間するように引く。組織T1に鉤状部材70を当接させると、図16に示すように、鉤状部材70の湾曲部33が組織T1から浮いた(離間した)状態が保持される。
鉤状部材70の溝部34に縫合糸20を係合させ、縫合針40を縫合糸20の端部21から離間するように引く。
これ以降の動作は、前述のデバイス1を用いた場合と同様なので、説明を省略する。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のデバイス3によれば、術者が片手で容易に縫合糸20のループを形成することができる。
さらに、組織T1に通した縫合糸20を引くことで組織T1に鉤状部材70を当接させると(縫合糸20を引ききると)、湾曲部33が組織Tから浮いた状態が保持される。したがって、鉤状部材70の溝部34に縫合糸20を容易に係合させることができる。
組織に繰り返して縫合糸20を通した場合には、組織をある程度緊縛するために縫合糸20を引ききることが必要となる。本実施形態のデバイス3を用いることで、例えば、管状の組織に周方向に連続して縫合糸20を通した後でも、組織から浮いた湾曲部33に縫合糸20を容易に係合させることができる。
【0034】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図17から図20を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図17および図18に示すように、本実施形態のデバイス4は、前記第1実施形態のデバイス1の鉤状部材30に代えて、鉤状部材80を備えている。
鉤状部材80は、鉤状部材30とは直状部32が接続部31から延びる向きが異なる。直状部32は、接続部31からZ軸の負の向き、すなわち、基準線L1に沿って、縫合糸20側に延びている。
この例では、湾曲部33が湾曲している面をZX平面としている。
【0035】
次に、このように構成されたデバイス4の使用時の動作について説明する。
組織T1、T2に縫合糸20を通し、縫合針40を開口部Tから離間するように引く。図19および図20に示すように、組織T1に鉤状部材80を当接させた後で、鉤状部材80の溝部34に縫合糸20を係合させ、縫合糸20を端部21から離間するように移動させる(引き絞る)。すると、縫合糸20は張った状態となり、鉤状部材80の湾曲部33が組織T1に食い込む。
この状態で、湾曲部33をカシめて、縫合糸20に鉤状部材80を固定する。
【0036】
以上説明したように、本実施形態のデバイス4によれば、術者が片手で容易に縫合糸20のループを形成することができる。
さらに、組織T1に鉤状部材80を食い込ませることで、縫合糸20が緩むのを組織T1の弾性により防止して、組織T1、T2を縫合糸20で緊縛することができる。
【0037】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図21から図25を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図21および図22に示すように、本実施形態のデバイス5は、前記第1実施形態のデバイス1の鉤状部材30に代えて、鉤状部材90を備えている。
鉤状部材90は、鉤状部材30とは直状部32が接続部31から延びる向きが異なる。直状部32は、接続部31からX軸の正の向きとZ軸の正の向きとの間の向きに延びている。
湾曲部33は、ZX平面となる前述の基準平面S2上で湾曲している。湾曲部33におけるZ軸の負の向き側の端部が直状部32に接続されている。
【0038】
次に、このように構成されたデバイス5の使用時の動作について説明する。
組織T1、T2に縫合糸20を通し、縫合針40を開口部Tから離間するように引く。組織T1に鉤状部材90を当接させると、図23に示すように、鉤状部材90の湾曲部33が組織T1から浮いた状態が保持される。
鉤状部材90の溝部34に縫合糸20を係合させ、縫合針40を縫合糸20の端部21から離間するように引く。
これ以降の動作は、前述のデバイス1を用いた場合と同様なので、説明を省略する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のデバイス5によれば、前記第3実施形態のデバイス3と同様の効果を奏することができる。
一般的に、術者は組織T1、T2から離間する側から観察しながら手技を行う。デバイス5では直状部32がZ軸に対して傾く方向に延びているため、術者に開口34bの位置を確認しやすくすることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、直状部32が延びる向きは上記の向きに限定されず、XY平面である前述の直交平面S1に対して縫合糸20から離間する側に延びていればよい。湾曲部33が配置される面は特に限定されない。
例えば、図24に示すデバイス5Aのように、直状部32および湾曲部33がともに基準平面S4上に配置されるように構成してもよい。基準平面S7は、Y軸を含むとともに、X軸の正の向き側であってZ軸の正の向き側となる領域、および、X軸の負の向き側であってZ軸の負の向き側となる領域を通る平面となっている。
また、図25に示すデバイス5Bのように、本実施形態のデバイス5において、湾曲部33におけるX軸の負の向き側の端部が直状部32に接続されるように構成してもよい。
このように構成されたデバイス5A、5Bによっても、本実施形態のデバイス5と同様の効果を奏することができる。
【0041】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図26から図30を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図26および図27に示すように、本実施形態のデバイス6は、前記第1実施形態のデバイス1の鉤状部材30に代えて、鉤状部材100を備えている。
鉤状部材100は、鉤状部材30とは直状部32が接続部31から延びる向きが異なる。直状部32は、接続部31からX軸の正の向きとZ軸の負の向きとの間の向きに延びている。
湾曲部33は、ZX平面上で湾曲している。湾曲部33におけるX軸の負の向き側の端部が、直状部32に接続されている。
【0042】
次に、このように構成されたデバイス6の使用時の動作について説明する。
組織T1、T2に縫合糸20を通し、縫合針40を開口部Tから離間するように引く。図28に示すように、組織T1に鉤状部材100を当接させた後で、鉤状部材100の溝部34に縫合糸20を係合させ、縫合糸20を端部21から離間するように移動させる。すると、縫合糸20は張った状態となり、鉤状部材100の湾曲部33が組織T1に食い込む。
この状態で、湾曲部33をカシめて、縫合糸20に鉤状部材100を固定する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のデバイス6によれば、前記第4実施形態のデバイス4と同様の効果を奏することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、直状部32が延びる向きは上記の向きに限定されず、XY平面である前述の直交平面S1に対して縫合糸20側に延びていればよい。湾曲部33が配置される面は特に限定されない。
例えば、図29に示すデバイス6Aのように、直状部32および湾曲部33がともに基準平面S8上に配置されるように構成してもよい。基準平面S8は、Y軸を含むとともに、X軸の正の向き側であってZ軸の負の向き側となる領域、および、X軸の負の向き側であってZ軸の正の向き側となる領域を通る平面となっている。
また、図30に示すデバイス6Bのように、本実施形態のデバイス6において、湾曲部33におけるZ軸の正の向き側の端部が、直状部32に接続されるように構成してもよい。
このように構成されたデバイス6A、6Bによっても、本実施形態のデバイス6と同様の効果を奏することができる。
【0045】
以上、本発明の第1実施形態から第6実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
以下、鉤状部材、方向規制部などの変形例について説明する。
例えば、前記第1実施形態から第6実施形態では、折れ曲がり部は平面上で湾曲した湾曲部33であるとした。しかし、折れ曲がり部の形状はこれに限ることなく、平面上で屈曲した屈曲部であってもよい。
図31に示す屈曲部111は、XY平面上で屈曲するように形成されている。この例では、屈曲部111の底部111aは、平面視で略V字状に凹んだ形状に形成されている。
図32に示す屈曲部112は、XY平面上で屈曲するように形成されている。この例では、屈曲部112の底部112aは、X軸に直交する平坦な形状に形成されている。
【0046】
図33に示す鉤状部材115は、前述の鉤状部材30とは直状部32に湾曲部33が接続されている向きが異なる。
鉤状部材30では、開口34bがX軸の負の向きに向くように形成されていたが、鉤状部材115では、湾曲部33がXY平面上に配置されるとともに、開口34bがY軸の負の向きに向くように形成されている。
【0047】
また、前記実施形態および変形例では、折れ曲がり部は平面上で湾曲または屈曲するように形成されているとした。しかし、折れ曲がり部が曲面上で、湾曲または屈曲するように形成されていてもよい。
例えば、図34に示す湾曲部117は、XY平面よりZ軸の正の向き側において湾曲する基準平面S11上で湾曲するように形成されている。
また、図35に示す湾曲部118は、XY平面よりZ軸の負の向き側において湾曲する基準平面S12上で湾曲するように形成されている。
【0048】
前記第1実施形態から第6実施形態で用いられた方向規制部51以外にも、各種構成の方向規制部を用いることができる。
例えば、図36に示すように、接続部31に形成された貫通孔31bに縫合糸20の中間部(縫合糸側接続部)23を圧入することで、方向規制部52を構成してもよい。
図37に示すように、接続部31に形成された切り欠き31cに縫合糸20の中間部23を圧入することで、方向規制部53を構成してもよい。
図38に示すように、接続部31と縫合糸20の中間部23とを、樹脂などで形成された接着剤(方向規制部)54で固定してもよい。方向規制部53および接着剤54の例は、接続部31に形成された孔に縫合糸20を通さなくてもよいので、方向規制部を簡単に構成することができる。
図39に示すように、接続部31に形成された固定穴31d内に、縫合糸20の端部21に設けられたボールジョイント121を配置し、固定穴31dに対してボールジョイント121を不図示のネジなどで固定することで、方向規制部54を構成してもよい。この例では、接続部31に対する縫合糸20の向きを容易に調節することができる。
【0049】
また、前記第1実施形態から第6実施形態では、デバイスに縫合針40は備えられなくてもよい。この例として、第1実施形態のデバイス1において縫合針40を備えない構成にした図40に示すデバイス1Aを用いて、血管(組織)T10を縫合する場合で説明する。
【0050】
術者は、縫合糸20の端部21側を把持鉗子Wで把持し、血管T10の近傍で縫合糸20の端部21の位置を保持する。
不図示の別の把持鉗子で縫合糸20の他方の端部22を把持し、縫合糸20を血管T10回りに引き回してループを形成してから、鉤状部材30の溝部34に縫合糸20を係合させる。
把持鉗子で湾曲部33をカシめ、縫合糸20に鉤状部材30を固定する。固定した鉤状部材30より端部22側で縫合糸20を切断し、手技を終了する。
【0051】
また、前記第1実施形態から第6実施形態では、鉤状部材が塑性変形できる材料で形成されているとした。しかし、溝部34に縫合糸20を圧入することで縫合糸20に鉤状部材を固定できるように構成した場合には、鉤状部材は、超弾性体などの塑性変形せずに弾性変形しかしない材料で形成されていてもよい。
前記第1実施形態から第6実施形態では、接続部31と湾曲部33とが、棒状に形成された直状部32で接続されているとした。しかし、接続部31と湾曲部33とが、直状部32に代えて、波形やシグザグ形に形成された部材で接続されるように構成してもよい。
【0052】
また、前記第1実施形態から第6実施形態では、方向規制部は必須の要素ではない。鉤状部材が係止面34cを備えていれば、鉤状部材に縫合糸20を係止して縫合糸20のループを形成することができるからである。
直状部32および湾曲部33は、それぞれが延びる向きに直交する平面による断面形状が矩形状に形成されているとした。しかし、この断面形状は矩形状に限ることなく、円形状や楕円形状でもよいし、矩形以外の多角形状でもよい。
【0053】
なお、前記第3実施形態から第6実施形態では、デバイスの使用時の動作の説明として、組織T1に鉤状部材を当接させた後で、鉤状部材の溝部34に縫合糸20を係合させている例で説明した。しかし、鉤状部材を組織T1に当接する前に溝部34に縫合糸20を係合させ、その後で縫合糸20を引っ張って鉤状部材を組織T1に当接させてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1、1A、2、2A、2B、2C、3、4、5、5A、5B、6、6A、6B デバイス(組織結紮デバイス)
20 縫合糸
21 端部(縫合糸側接続部)
30、60、70、80、90、100、115 鉤状部材
31 接続部
33、117、118 湾曲部(折れ曲がり部)
34 溝部
34b 開口
34c 係止面
40 縫合針
51、52、53、54 方向規制部
54 接着剤(方向規制部)
111、112 屈曲部(折れ曲がり部)
L1 基準線
S1 直交平面
S2、S4、S5、S7、S8、S11、S12 基準平面
T1、T2 組織
T10 血管(組織)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織を結紮するための組織結紮デバイスであって、
縫合糸と、
前記縫合糸の縫合糸側接続部に接続された接続部、および、前記縫合糸側接続部に対向するように配置され前記縫合糸を当接可能な係止面が内壁面に設けられた溝部を有する鉤状部材と、
を備えることを特徴とする組織結紮デバイス。
【請求項2】
前記鉤状部材に対する前記縫合糸側接続部の向きを規制する方向規制部を備えることを特徴とする請求項1に記載の組織結紮デバイス。
【請求項3】
前記鉤状部材は、
前記接続部から直線状に延びる直状部と、
一端が前記直状部に接続され、前記直状部を含む基準平面上で湾曲または屈曲することで前記接続部側に向く開口が形成された前記溝部を有する折れ曲がり部と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の組織結紮デバイス。
【請求項4】
前記直状部は、前記縫合糸側接続部の中心軸線である基準線に直交するように延び、
前記基準平面は、前記基準線に直交することを特徴とする請求項3に記載の組織結紮デバイス。
【請求項5】
前記直状部は、前記縫合糸側接続部の中心軸線である基準線に直交するように延び、
前記基準平面は、前記基準線に直交することなく交差するか、前記基準線を含むことを特徴とする請求項3に記載の組織結紮デバイス。
【請求項6】
前記直状部は、前記縫合糸側接続部の中心軸線に沿って、前記縫合糸から離間する側に延びることを特徴とする請求項3に記載の組織結紮デバイス。
【請求項7】
前記直状部は、前記縫合糸側接続部の中心軸線に沿って、前記縫合糸側に延びることを特徴とする請求項3に記載の組織結紮デバイス。
【請求項8】
前記直状部が、前記縫合糸側接続部の中心軸線である基準線に直交し前記縫合糸側接続部を通る直交平面を規定したときに、前記直交平面に対して前記縫合糸から離間する側に延びることを特徴とする請求項3に記載の組織結紮デバイス。
【請求項9】
前記直状部が、前記縫合糸側接続部の中心軸線である基準線に直交し前記縫合糸側接続部を通る直交平面より前記縫合糸側に延びることを特徴とする請求項3に記載の組織結紮デバイス。
【請求項10】
前記縫合糸に接続された縫合針を備えることを特徴とする請求項1に記載の組織結紮デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2013−27472(P2013−27472A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164328(P2011−164328)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】