説明

組込型保持フリットを備えたキャピラリループ

本明細書に開示しているのは、分析用キャピラリ1内に配設される保持フリット7、15を使用することによって、キャピラリカラム1のクロマトグラフ効果の増大を達成する装置および方法である。保持フリット7、15を分析用キャピラリカラム1内に配設することによって、空隙容量が著しく最小化される。本明細書で述べるカラム1および方法は、より大きなクロマトグラフ効率をもたらす簡易化分析キャピラリ1および保持フリット装置7、15を作り出す。さらに、本発明のカラム1は、現場で流体接続をし易くすることと共に、転送直径を縮小することによってクロマトグラフの忠実性(正確さ)を維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年2月4日出願の、米国特許仮出願第60/444,749号の優先権を主張し、参照によりその内容の全てを明確に本明細書の一部とする。
【0002】
本発明は、一般にクロマトグラフ用カラムに関し、特に中に配設される1つまたは複数の保持デバイスを有するカラムに関する。
【背景技術】
【0003】
試料中の被分析物を分離するのに使用する一般的な方法は、液体クロマトグラフである。液体クロマトグラフは、特定のクロマトグラフ用カラムおよび1つまたは複数の移動層を利用するが、後者は、カラムを釣り合わせると共にそこから被分析物を溶離するのに使用される。クロマトグラフ用カラムは、均質試料または異成分試料の中に含まれる被分析物の分離、純正化、および観察を行うのに使用される。カラムは、試料の被分析物と相互作用することのできる化学的環境をもたらす(「固定相」とも呼ばれる)吸着材料で包装される。一般的に吸着材料は、特定の化学的性質を有する官能基を含む。例えば逆相カラムは、固定相を有し、これが1つまたは複数の疎水基を備えた分子を含む。これらの疎水基、例えばC18炭化水素鎖は、疎水的相互作用によって他の分子と相互作用する。この疎水的相互作用を、有機体移動相を使用して中断することができ、そのようにして固定相から様々な被分析物を溶離する。
【0004】
本明細書で「従来型カラム」と呼ぶ最も一般的に使用されているクロマトグラフ用カラムは、吸着剤が中に包装されたカラムチューブと、入口端部品および出口端部品とから成り、それらの端部品は、流体流れへの接続をし易くし、カラムチューブ自体の中に吸着床を保つように設計されたフィルタを含む。これらのフィルタはカラムチューブの各端面それぞれに配設される。
【0005】
液体クロマトグラフ用カラムのサイズは、小さなキャピラリカラムを含む所望の用途に応じて様々であることができる。キャピラリカラムは、(濃度に関して)比較的小さな試料サイズが検査される時、特に有利である。キャピラリカラムを使用することでみられる他の利点は、他のカラムまたは器具とのそれらの接続が小さく、それによって最小限度の試料損失を達成し、より大きな効率のクロマトグラフ分離を獲得することである。
【0006】
試料の濃縮を達成するために、クロマトグラフで使用するための保持フリットが開発されてきた。しかし今日までのところ、ほとんどの保持フリットは、カートリッジ型のフォーマットである。というのは、それらの寸法が小さいことにより、望ましくないピーク分散を招く比較的大きな死空間と共に使用するのが困難となるからである。
【0007】
したがって、固定相の表面積を最大にするために、比較的大きな内側直径を有するキャピラリ用保持フリットを有すると同時に、それらの流体接続が、それらの直径よりも小さいことが望ましい。さらにキャピラリカラム内に配置される保持フリットを有し、それによって流体転送の力を最小限にし、分離の効率化を達成することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、キャピラリカラム内のクロマトグラフ効率の増大を、その中に配設される保持フリットを利用することによって行う装置および方法の両方に関する。保持フリットを分析用キャピラリカラム内に配設することによって、空隙容量は著しく最小化される。本明細書で述べるカラムおよび方法は、より大きなクロマトグラフ効率をもたらす簡易化分析用キャピラリおよび保持フリット装置を作り出す。さらに、本発明のカラムは、現場で(in situ)流体接続をし易くすることと共に、転送直径を縮小することによってクロマトグラフの忠実性を維持する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のキャピラリカラムは、分析用キャピラリカラム内のキャピラリ保持フリットを備える。この実施形態では、固定材料から成る分析用キャピラリカラムは、約75μmから約150μmの範囲の内側直径を有し、約20μmから約10μmの範囲の内側直径を有するキャピラリ保持フリットを受け取る。本発明の一態様では、ポリ(ジメチルシロキサン)などの接着剤様の重合体物質が、分析用キャピラリカラムの表面とキャピラリ保持フリットの外側表面の間に配設される。この接着剤様の物質は、密閉剤の働きをする。
【0010】
この発明の一実施形態では、単一の保持フリットが分析用キャピラリカラム内に配設される。この実施形態の一態様では、キャピラリ保持フリットは、分析用キャピラリカラムの入口内に配設される。この実施形態の代替的態様では、保持フリットは、分析用キャピラリの出口内に配設される。
【0011】
本発明の他の実施形態では、分析用キャピラリカラムは、複数の保持フリットを備える。この実施形態の一態様では、第1保持フリットが、分析用カラムの入口内に配設され、第2保持フリットが、分析用カラムの出口内に配設される。この実施形態のさらに他の態様は、分析用カラムの入口に隣接して配設される複数の保持フリットを採用する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、1つまたは複数の保持フリットを備える分析用カラムを使用することによって、試料内の複数の被分析物をクロマトグラフ的に分離する方法に関する。この実施形態では、1つまたは複数の被分析物を含む試料が、クロマトグラフシステムの中に導入される。このシステムは、1つまたは複数の保持フリットが中に配設される分析用キャピラリカラムを備える。この実施形態では、保持フリットは、一般に分析用カラムと連続する。保持フリットと分析用カラムの管腔域は位置合わせされて、被分析物の保持フリットから分析用カラムへの移動、またはその逆の移動をし易くする。一態様では、分析用カラムの保持フリットおよび固定相は、通常単一キャピラリに収容される。この実施形態では、この試料は移動相内で混合され、移動相は2つの要素、即ちクロマトグラフ用カラムの保持要素と分析要素の中を移動し、そこを通り抜ける。
【0013】
さらに他の実施形態では、本発明は、分析要素および1つまたは複数の保持要素から成るクロマトグラフキャピラリカラムを製造する方法に関する。この実施形態の一態様では、キャピラリ保持フリットは、分析用キャピラリ内に装着される。保持フリットは、必然的に前記分析用キャピラリよりも小さい直径を有する。保持フリットは、分析用キャピラリ内の定位置に固定される。保持フリットは、PDMSなどの接着剤様重合体物質を使用して定位置に保たれる。この接着剤様重合体物質は、保持フリットが分析用キャピラリ内に配設される領域内で、保持フリットの外側表面と分析用キャピラリの内側表面の間に配設される。内側保持フリットは、固定相領域に隣接する分析用キャピラリ内に配設することができる。この固定相は、任意の市販の固定相、または特別に製造された固定相であることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、1つまたは複数の保持フリットを使用することによって、キャピラリカラム内のクロマトグラフ効果の増大を達成する装置および方法の両方に関する。保持フリットが、分析用キャピラリカラム内に配設される。保持フリットを分析用キャピラリカラム内に配設し、それによって連続カラムを形成することにより、いくつかの利点が生まれるが、例えば、空隙容量が著しく最小化されて、より大きなクロマトグラフ効率が促進される。本明細書で述べるカラムおよび方法は、より大きなクロマトグラフ効率をもたらす簡易化分析保持フリットを作り出す。さらに、本発明のカラムは、転送直径を縮小すると共に、自然位で流体接続をし易くすることによってクロマトグラフの忠実性を維持する。
【0015】
本発明は、2つの識別可能な要素を有する分析用カラムに関する。そうした要素の一方は保持フリットである。この保持フリットは、分析要素内に、またはそれに隣接して配設されるキャピラリである。分析要素は、キャピラリカラムの、固定相を備える部分である。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態を表す。この図では、入口3と出口5が任意に頂部と底部に位置決めされているが、この位置決めは、単に読者の都合に合わせたものである。しかし、入口3と出口5は典型的なクロマトグラフ要素であって、それぞれが、クロマトグラフシステムの他方要素への流体接続を行うことができるようになる。動作では、1つまたは複数の被分析物が入口3でキャピラリカラム1に進入する。この実施形態では、入口3は第1保持フリット(または要素)7を備える。フリットの内側直径は、約10μmから約20μmの範囲であることができ、外側直径は、約90μmから約150μmの範囲であることができる。一態様では、この第1保持フリット7の管腔寸法は、20μm×90μmである。管腔寸法は、カラムに応じて変化することができるが、分析要素9よりも小さい。フリットの縦軸(La)に沿った長さは、約0.5cmから約25cmの範囲であることができる。試料は、第1保持要素7の管腔空間11を通過し、固定相13を含む分析要素9内に移動する。分析要素9の管腔寸法の内側直径は、約100μmから約150μmの範囲であることができ、外側直径は、約360μmから約720μmの範囲であることができる。例えば、分析要素の寸法は、100μm×360μmであることができる。分析要素9の縦軸(La)の寸法は、約1cmから約20cmの範囲であることができ、典型的な範囲であるが、より長い床を作製することもできる。分析要素9の固定相は、任意の市販の固定相から構成することができ、あるいは、特定目的のために特別に製造された固定相から構成することもできる。しかし、試料に含まれた被分析物が、固定相13の化学基と特有の相互作用を行うのは、この分析要素9(特に固定相13)内である。
【0017】
図1によって表される実施形態では、分析要素9を出る試料は、キャピラリカラム1の出口位置5に配設された第2保持要素15に進入する。第1保持要素7の場合と同様に、第2保持要素15の管腔寸法17は、分析要素9の寸法よりも小さい。第1および/または第2保持要素7、15の保持要素の管腔寸法は、内側直径で、約10μmから約50μmの範囲であることができる。しかし一般的には、これらの寸法は、分析要素9の管腔寸法よりも小さい。試料の被分析物は、出口5から第2保持要素15を出る。ここで被分析物が、さらなるプロセスまたは検出のために、キャピラリカラム1と流体接続する器具に進入することも考えられる。そのような器具の例には、以下に限らないが、質量分析計、結合解析器具、NMR器具、および紫外線もしくは蛍光検出器などの検出器が含まれる。
【0018】
本実施形態では、保持要素7、15は、連続した管腔域を形成するように、それぞれの管腔が位置合わせされるような形で、分析要素9に隣接して配設される。この点で、管腔域11および17が管腔域13と位置合わせされるように、保持要素7、15を分析要素9に並置することによって、忠実性が失われることはない。このような構成に付随して、いくつかの利点があるが、例えば、(1つまたは複数の)保持要素7、15と分析要素9は連続した構造内にあるため、それらの間には空隙容量が形成されない。その結果、従来型のカラムと比較して、より効率的なクロマトグラフ分離を実施することができる。この設計によって、フリットを作製するために焼結する必要がなくなり、したがってキャピラリカラムの端部はもはや極めて脆弱なものではなくなり、即ちカラムのデザインは、起伏があり、使用しやすい。
【0019】
(図1の場合と同様)1つまたは複数の保持要素が、キャピラリ表面21内に固定して配設される。入口保持要素7および出口保持要素15のそれぞれの外側表面23a、23bと、分析用カラムのキャピラリ21の内側表面との間に配設されるのは、接着剤のように作用する重合体物質である。この接着剤様物質は、保持要素の外側表面23a、23bを、分析用カラムのキャピラリ21の内側表面に密閉する。図1を参照されたい。本発明で使用することのできる適切な接着剤様物質の例は、重合体(ジメチルシロキサン)または「PDMS」であることができる。保持要素を分析用キャピラリカラムに密閉するのに使用することのできる他の接着剤様重合体物質には、以下に限らないが、エポキシ、樹脂、および粘着剤が含まれる。
【0020】
製造工程中、1つまたは複数の保持要素が分析用カラム内に配設される。PDMSのような接着剤様物質が、2つのキャピラリ(即ち保持用キャピラリおよび分析用キャピラリ)の間、具体的には保持要素キャピラリの外側表面と、分析用キャピラリの内側表面との間に配設される。この2つのキャピラリの溶融を達成するために、熱を加えることができる。凡そ室温(25℃まで)から約110℃の範囲の温度を用いることができる。分析用キャピラリ内に配設される保持用キャピラリの構成は、低い熱量をもたらす。カラムの加熱がし易くされて、温度が、分離を通じて一定の温度を保持し、維持する助けとなる。例えば、蛋白質は一般的には低温で捕捉され、高温で溶出される。(保持用および分析用の両方の)個々のキャピラリの製造は、当業者に知られている方法によって実施することができる。
【0021】
本発明のキャピラリカラム1の長さは、約3cmから25cmの範囲であることができる。さらにキャピラリカラムの長さに応じて、保持要素の長さは、約0.5cmから約25cmの範囲であることができる。さらに、分析要素の長さは約1cmから約20cmの範囲であることができる。
【0022】
キャピラリ要素は、キャピラリカラムを作り出すのに一般的に使用される任意の物質から構成することができる。これらの物質には、以下に限らないが、溶融シリカ、ステンレス鋼、または高分子化合物が含まれる。一実施形態では、幾分かの軟性を保持するが、クロマトグラフ用カラムとして作用するのに充分な強度も保持する化合物が使用される。他の実施形態では、第2キャピラリおよび第3キャピラリは、試料、固定相、および移動相に対して非反応性または不活性である。
【0023】
本発明の一実施形態では、複数の保持要素が分析用キャピラリに沿ってまたはその中に隣接して配設される。これらの保持要素は、キャピラリカラム装置全体から容易に取り外すことができるように設計される。例えば保持要素を、保持用カラム装置からスナップ式に外すこともできる。保持要素が材料によって閉塞される場合、このようにそれをカラム装置から簡単に取り外すことができる。保持要素の管腔寸法は、固定相を含む分析要素のそれよりも小さい。隣接する保持要素同士の接合は、クロマトグラフシステムの他の部分との流体接続と、保持要素の相互もしくは分析要素との流体接続とを損ねずに、溶融シリカなどの材料を快適にスナップ式に嵌め、または(材料をやすりで削り取るなど)当技術で知られている手段によって分離することができるようなものである。この実施形態では、これら複数の保持要素を使用して、試料マトリクス内に含まれる混入物質を収集することによって、分析用カラムを保存することができる。
【0024】
本発明の他の実施形態は、1つまたは複数の保持要素を備えるキャピラリカラムを使用することによって、被分析物を含む試料をクロマトグラフ的に分離するプロセスに関する。この実施形態では、図1で表すように、キャピラリカラムは1つまたは複数の保持要素を有することができる。被分析物の試料が、適切な条件で、圧力下の移動相を使用するキャピラリカラム内に導入される。この移動相は、被分析物をキャピラリカラム内に、またそこを通して搬送する。図1に戻ると、試料は入口3からキャピラリカラム1に進入する。入口位置3に配設されるのが、第1保持要素7である。試料の被分析物は保持要素7に進入し、そこで濃縮され、移動相13が存在する分析要素9に進入する。(保持要素と分析要素の接合部を図2で見ることができる。)上述のように、入口の付近で位置合わせされた複数の保持要素が存在することが可能である。これらのカラムが、例えば保護カラムである場合、このようなことがあり得る。しかし、被分析物は固定相13に進入し、そこでクロマトグラフの吸着を受ける。使用するキャピラリカラムに応じて、分析カラムから出る被分析物は、(図1に表すような)他の保持要素に進入し、検出器などの他の分析器具に進入することができ、あるいはおそらく収集容器もしくは廃棄容器に進入することによってクロマトグラフシステムを出ることができる。
【0025】
以下の実施例は、本発明の一実施形態を例証するためのものであり、いかなる形でも本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0026】
実施例1:市販のトラッピングカラムの設計の、クロマトグラフ分離に対する影響を図3に示す。図3のクロマトグラフAは、(Gly−Tyr、Val−Tyr−Val、メチオニンエンケファリン、ロイシンエンケファリン、およびアンギオテンシンIIから構成される)シグマペプチド標準H2016を、標準保持フリットで保持した後の分離を示す。5−35%B(ギ酸を0.1%含むアセトニトリル)を30分間にわたって使用することによって、ペプチド混合物の勾配溶離が達成された。移動相Aは、アセトニトリルと水2:98の混合物(ギ酸0.1%)から構成された。検出は、マイクロマスQ−Tof2質量分析計によって行われた。ピーク部が広く、尾を引いている部分が大きいことが注目される。トラッピングカラムが一旦取り外されると、クロマトグラフのピーク形状は劇的に改善し、(図3Bで表すように)予想通りとなる。
【実施例2】
【0027】
実施例2:図4Bは、シグマペプチド標準を使用して、トラッピングカラムなしの場合(図4A)、および市販のWaters350μm×5mm(SymmetryC18、15μm)Opti−pak(商標)のトラッピングカラム(図4C)と比較して見た、トラッピングカラム(床長さ20mmWaters5.0μmSymmetry(商標)C18)として動作する本発明の性能を示す。5−35%B(ギ酸を0.1%含むアセトニトリル)を30分間にわたって使用することによって、ペプチド混合物の勾配溶離が達成された。移動相Aは、アセトニトリルと水2:98の混合物(ギ酸0.1%)から構成された。検出は、マイクロマスQ−Tof2質量分析計によって行われた。本発明で達成されたより優れたピーク形状とは対照的に、Opti−pak(商標)カラムが使用された時、クロマトグラフのピークの形状は、大幅に損なわれることが明らかである。
【実施例3】
【0028】
実施例3:本発明の性能を評価するにあたり、2つのアセスメントが行われた。図5Aは、保持の実験を実施せずに、エノラーゼ消化物を、インラインのトラッピングカラムおよび分析用カラムを通して直接溶離した典型的クロマトグラムを示す。この実験計画のために、長さ20mmの、Waters5.0μmSymmetry(商標)C18から構成される保持相が使用され、長さ100mmの、Waters3.5μmSymmetryC18から構成される分析相が用いられた。エノラーゼ消化物の勾配溶離が、3〜55%Bから成るプログラム化された勾配(トリフルオロ酢酸を0.1%含むアセトニトリル)を30分使用して実施された。溶離剤Aは、トリフルオロ酢酸を0.1%含む水から成る。検出は、210nmの紫外線で行われた。このクロマトグラムから、優れたピーク形状およびクロマトグラフ分解が観察される。一般的な保持実験では、消化物は、オフラインで保持フリットに載せられ、続いて保持フリットから分析カラムに溶離される。図5Bは、上述の実験についてのクロマトグラフの結果である。ほんの僅かの分離損失しか観察されない。
【実施例4】
【0029】
実施例4:固定相としての、床長さ10cmの、Waters3.5μmSymmetryC18の本発明の分析用ナノカラムフォーマットの性能評価が、エノラーゼ消化物を使用して行われた。エノラーゼ消化物の勾配溶離が、3〜55%Bから成るプログラム化された勾配(トリフルオロ酢酸を0.1%含むアセトニトリル)を30分使用して実施された。溶離剤Aは、トリフルオロ酢酸を0.1%含む水から成る。検出は、210nmの紫外線で行われた。優れたクロマトグラフ分解およびピーク形状が本発明で達成される。ピーク幅はそれらの応用例と比較可能である。
【0030】
当然ながら、当業者は、上述の実施形態に基づいて本発明の他の特色および利点を認識するであろう。したがって、本発明は、添付請求項による指示以外には、以上に特に示し、述べたものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】1つのキャピラリカラム内に2つの保持フリットがある、本発明の一実施形態を表す図である。
【図2】クロマトグラフキャピラリカラムの固定相要素に隣接する保持フリットのデジタル画像である。
【図3A】従来型のトラッピングカラムの効果を示すクロマトグラムを表す図である。
【図3B】従来型のトラッピングカラムの効果を示すクロマトグラムを表す図である。
【図4A】本発明の保持フリットを備えたトラッピングカラムを使用するクロマトグラムを表す図である。
【図4B】本発明の保持フリットを備えたトラッピングカラムを使用するクロマトグラムを表す図である。
【図4C】本発明の保持フリットを備えたトラッピングカラムを使用するクロマトグラムを表す図である。
【図5A】本発明の保持フリットを備えた分析用トラッピングカラムを使用するクロマトグラムを表す図である。
【図5B】本発明の保持フリットを備えた分析用トラッピングカラムを使用するクロマトグラムを表す図である。
【図6】本発明の保持フリットを備えた分析用カラムを使用するクロマトグラムを表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフ用カラムであって、入口、出口、分析要素、および縦軸に沿って配置された1つもしくは複数の保持要素を備え、前記分析要素が、前記分析要素内に画定される管腔域内に配設される固定相を有し、前記保持要素が、その中に画定される、前記分析要素の前記管腔域と位置合わせされる管腔域を有して、被分析物が、前記保持要素と分析要素の間を移動し、そこを通り抜けることができるようになるカラム。
【請求項2】
前記分析要素が、前記入口に隣接して配設される保持要素を有する請求項1に記載のカラム。
【請求項3】
前記分析要素が、前記入口に隣接して配設される複数の保持要素を有する請求項2に記載のカラム。
【請求項4】
前記分析要素が、前記入口に隣接して配設される1つまたは複数の保持要素と、前記出口に隣接して配設される1つまたは複数の保持要素とを有する請求項1に記載のカラム。
【請求項5】
前記分析要素が、約1cmから約20cmの範囲の長さの縦軸を有する請求項1に記載のカラム。
【請求項6】
前記分析要素が、100μm×360μmである管腔域を有する請求項1に記載のカラム。
【請求項7】
前記1つまたは複数の保持要素の長さが、前記縦軸に沿って約0.5cmから約25cmの範囲であることができる請求項1に記載のカラム。
【請求項8】
前記分析要素が、任意の商業的供給源から選択された固定相を備える請求項1に記載のカラム。
【請求項9】
前記1つまたは複数の保持要素が、前記分析要素の管腔域よりも直径が小さい管腔域を有する請求項1に記載のカラム。
【請求項10】
前記1つまたは複数の保持要素を、前記分析要素に固定する手段をさらに備える請求項1に記載のカラム。
【請求項11】
前記固定する手段が接着剤である請求項10に記載のカラム。
【請求項12】
前記接着剤がPDMSエラストマである請求項11に記載のカラム。
【請求項13】
1または複数の被分析物を含む試料を分離する方法であって、
前記試料を適切な移動相と混合することと、
前記試料を、入口、出口、分析要素、および縦軸に沿って構成される1つまたは複数の保持要素を有するクロマトグラフ用カラムに導入し、被分析物が、前記保持要素と分析要素の間を移動し、そこを通り抜けることができるように、前記分析要素が、前記分析要素内に画定される管腔域内に配設される固定相を有し、前記保持要素が、前記保持要素の中に画定される、また前記分析要素の前記管腔と位置合わせされる管腔域を有することと、
前記被分析物を、前記分析要素内に配設された前記固定相によって分離することと、および、
適切な移動相を使用して、前記被分析物を前記固定相から溶離することとを含む方法。
【請求項14】
クロマトグラフ用カラムを作る方法であって、
中に配設された固定相を有する第1キャピラリを獲得することと、
前記第1キャピラリよりも小さな直径の第2キャピラリを、前記第1キャピラリの端部分の中に装着することと、および、
前記第2キャピラリを、接着剤を使用することによって定位置に固定することとを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−516740(P2006−516740A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503264(P2006−503264)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/002967
【国際公開番号】WO2004/069417
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(504438255)ウオーターズ・インベストメンツ・リミテツド (80)