説明

絆創膏組成物

【課題】 支持体と皮膚粘着層とからなる絆創膏において、薬物を均一に分散又は溶解し、製剤の均一性や保型性を高める。
【解決手段】 プラスター又はテープ状支持体と、常温で皮膚粘着性を有する層とからなる絆創膏において、該皮膚粘着層に、
薬物と、
下記化学式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体と
を含有することを特徴とする絆創膏組成物。
O−[(EO)(AO)]−R (I)
(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、m,nはそれぞれEO、AOの平均付加モル数で、1≦m,n≦70である。EOとAOの合計に対するEOの割合は、20〜80質量%である。EOとAOはブロック状付加でもランダム状付加でもよい。R,Rは炭素数1〜4の炭化水素基または水素原子であり、R,Rの炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚に直接貼付する医療用の絆創膏組成物、特に薬物の分散性、剥離時の痛み、貼付した際の汗の滞留の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、絆創膏組成物としては、プラスターまたはテープ状支持体の片面に薬物を含有する皮膚粘着層を有するものが一般的に知られているが、このような絆創膏中に薬物を含有する場合には、その薬物が水溶性であれ、疎水性であれ、該皮膚粘着層に溶解しないことが多く、結晶状態で分散して配合することが行われてきた。このため、系の中で薬物の局在化が起こったり、凝集やブツが生じたり、あるいは結晶の析出や成長が起こったりして、皮膚粘着層中の薬物が不均一になりやすく、また、析出した再結晶微粒子が表面に偏在することで、粘着性が低下するなど製造上また品質管理上大きな問題となってきた。
【0003】
また一方で、従来の絆創膏組成物には、皮膚粘着層に感圧性粘着剤が用いられることが多いため、一般的には水分の配合は行われない。このため、皮膚から剥離する時に痛みがあったり、皮膚に貼付した際に汗が溜まりやすかったり、使用時に不快感が伴うことがしばしばあった。
【0004】
一部の疎水性の薬物に対しては、皮膚粘着層を調整する過程で、例えば加熱処理により薬物を系の中に溶解して配合することができるが、展延して冷却した後、経時で結晶析出やブツの発生が生じることがしばしばあった。このため、薬物の溶解性または分散性を改善して経皮吸収を促進する目的で、例えば、薬物を鎖状式モノカルボン酸エステルや高級アルコール類と共に配合する方法(特許文献1参照)や、ミリスチン酸イソプロピルと共に配合する方法(特許文献2,3参照)が行われていた。
【0005】
【特許文献1】特開平5―271070号公報
【特許文献2】特開平7−145047号公報
【特許文献3】特開平7−196505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、可塑剤、軟化剤として用いられるこのような油分や溶剤を製剤に加えると、系によっては、皮膚粘着剤の粘着性が著しく変化したり、成型時の展延性に影響したり、経時で凝集したりして、製剤の均一性や保形性が著しく悪くなることが認められた。また、その他の疎水性の薬物や水溶性の薬物に対しては、皮膚粘着剤に溶解しないため、均一に分散させることは非常に困難であった。また、従来からの使用性についての問題点に関しても、剥離時の痛みや、貼付した際に汗が溜まりやすい点については、いまだ十分に改善された製剤は見出されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上述の課題に鑑み鋭意研究した結果、プラスター又はテープ状支持体と常温で皮膚粘着性を有する層からなる絆創膏組成物において、該皮膚粘着層に、薬物と、特定構造のアルキレンオキシド誘導体とを含有することにより、該薬物が水溶性であっても疎水性であっても、均一に分散あるいは溶解して系に配合出来ることを見出し、また、経時においても製剤の均一性や保形性を損なわないことを見出した。また、さらに本発明の絆創膏組成物は、剥離時の痛みを軽減し、貼付した際に汗が溜まりにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
また、本発明者らの予想もしなかったことに、本発明による絆創膏組成物は、皮膚刺激性を著しく低減でき、安全性に優れた絆創膏組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる絆創膏組成物は、プラスター又はテープ状支持体と、常温で皮膚粘着性を有する層とからなる絆創膏において、該皮膚粘着層に、薬物と、下記化学式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体とを含有することを特徴とする。
O−[(EO)(AO)]−R (I)
(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、mおよびnはそれぞれ前記オキシエチレン基、オキシアルキレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、20〜80質量%である。オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R,Rは、同一もしくは異なってもよい炭素数1〜4の炭化水素基または水素原子であり、RおよびRの炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)
【0009】
また、前記絆創膏組成物において、アルキレンオキシド誘導体が、オキシエチレン基とオキシアルキレン基がランダム状に付加していることが好適である。また、前記絆創膏組成物において、アルキレンオキシド誘導体の含有量が、皮膚粘着層全量に対して0.01〜50質量%であることが好適である。また、前記絆創膏組成物において、該皮膚粘着層に、さらにI.O.B値が0.1〜1.2の油分を含有することが好適である。また、前記絆創膏組成物において、界面活性剤を実質的に含有しないことが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる絆創膏組成物は、プラスター又はテープ状支持体と、常温で皮膚粘着性を有する層とからなる絆創膏において、該皮膚粘着層に、薬物とともに、特定構造のアルキレンオキシド誘導体を含有することによって、当該薬物が均一に分散または溶解され、製剤の均一性や保型性が高められ、さらには、剥離時の痛みを改善し、貼付した際に汗が溜まりにくいものである。また、本発明にかかる絆創膏組成物は、皮膚刺激性やかぶれを著しく低減することができ、安全性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明において特徴的な式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体において、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、具体的には、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシイソブチレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基などが挙げられる。好ましくは、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。
【0012】
mはオキシエチレン基の平均付加モル数であり、1≦m≦70、好ましくは2≦m≦50である。nは炭素数3〜4のオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1≦n≦70、好ましくは2≦n≦50である。オキシエチレン基または炭素数3〜4のオキシアルキレン基が0であるとしっとり感が落ち、70を越えるとべたつき感がでてきて、すべすべ感が十分に得られない傾向がある。
また、オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合が、20〜80質量%であることが好ましい。
【0013】
エチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またオキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。ブロック状には2段ブロックのみならず、3段以上のブロックも含まれる。好ましくはランダム状に付加されているものが挙げられる。
及びRは炭素数1〜4の炭化水素基もしくは水素原子で、炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基である。炭素数5以上の炭化水素基では親水性が低下し、しっとり感が低下する。R,Rは、同一であっても異なっていても良い。
【0014】
およびRはそれぞれ同種のものを用いても、炭素数1〜4の炭化水素基と水素原子とが混在しても、異種の炭素数1〜4の炭化水素基が混在してもよい。ただし、RおよびRの炭化水素基のうち、炭化水素基と水素原子の存在割合は、炭化水素基の数(X)に対する水素原子の数(Y)の割合Y/Xが0.15以下、好ましくは0.06以下である。Y/Xの割合が0.15を越えると、べたつき感がでてくる。
【0015】
上記アルキレンオキシド誘導体において、具体的にはPOE(9)POP(2)ジメチルエーテル、POE(7)POP(12)ジメチルエーテル、POE(14)POP(7)ジメチルエーテル、POE(17)POP(4)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジメチルエーテル、POE(6)POP(14)ジメチルエーテル、POE(15)POP(5)ジメチルエーテル、POE(25)POP(25)ジメチルエーテル、POE(27)POP(14)ジメチルエーテル、POE(55)POP(28)ジメチルエーテル、POE(36)POP(41)ジメチルエーテル、POE(9)POB(2)ジメチルエーテル、POE(14)POB(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジエチルエーテル、POE(10)POP(10)ジプロピルエーテル、POE(10)POP(10)ジブチルエーテル等が挙げられる。
【0016】
本発明のアルキレンオキシド誘導体は公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒の存在下にエーテル化させることによって得られる。
【0017】
本発明の絆創膏組成物へのアルキレンオキシド誘導体の配合量は特に限定されないが、通常は皮膚粘着層全量中、0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜40質量%、さらに好ましくは0.5〜30質量%配合される。アルキレンオキシド誘導体の配合量が少なすぎると十分な安定化効果が得られないため好ましくなく、またアルキレンオキシド誘導体の配合量が多すぎると配合による効果の発現が十分ではない。
【0018】
本発明において使用される薬物としては、水溶性、疎水性いずれのものでも良い。鎮痛消炎剤、殺菌消毒剤、抗真菌剤、抗生物質、ビタミン剤、血行促進剤、局所麻酔剤、抗ヒスタミン剤、ステロイド剤、抗ウィルス剤、角質軟化剤、サルファ剤、代謝性剤等が挙げられる。
【0019】
殺菌消毒剤としては、アクリノール、安息香酸、安息香酸ベルベリン、イソプロパノール、イソプロピルメチルフェノール、エタノール、塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、塩酸クロルヘキシジン、オバノール、過酸化水素、グルコン酸クロルヘキシジン、クレオソート、クレゾール石鹸液、クロロブタノール、酢酸デカリニウム、次亜塩素酸ナトリウム、消毒用エタノール、セトリミド、チモール、トリクロカルバン、濃塩化ベンザルコニウム50、ヒノキチオール、フェノール、ベンジルアルコール、ペンタクロルフェノール、ポビドンヨード、マーキュロクロム、無水エタノール、ヨウ化カリウム、ヨウ素、ヨードチンキ、ヨードホルム、レゾルシン等が挙げられる。
【0020】
抗真菌剤としては、2,4,6−トリブロムフェニルカプロン酸エステル、5−フルオロシトシン、アムホテリシンB、イソコナゾール、ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛、エキサラミド、エコナゾール、塩酸アモロルフィン、塩酸クロコナゾール、塩酸ジアンタゾール、塩酸テルビナフィン、塩酸ネチコナゾール、塩酸ブテナフィン、オキシコナゾール、グリセオフルビン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、シクロピロクスオラミン、シッカニン、硝酸イコナゾール、硝酸エコナゾール、硝酸オキシコナゾール、硝酸スルコナゾール、硝酸ミコナゾール、スルコナゾール、チアントール、チオコナゾール、チメロサール、デルマシド、トリクロロフェノールカプロエート、トリコマイシン、トリブロムフェノールカプロエート、トリメチルセチルアンモニウムペンタクロロフェネート、トルシクラート、トルナフテート、ナイスタチン、ナフチフィン、パラアセチルアミノフェニルロダン、バリチオン、ハロプロジン、ビホナゾール、ピマリジン、ピロールニトリン、フェニル−11−ヨード−10−ウンデシノエート、ペンタクロルフェノール、ミコナゾール、木槿皮、ラウリルトリフェニルホスホニウムブロミド、ラノコナゾール、リラナフタート等が挙げられる。
【0021】
抗生物質としては、例えばβ−ラクタン系抗生物質(ペニシリン類、セファロスポリン類)、アンフォテリシン、エリスロマイシン、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸グラミシジン、塩酸テトラサイクリン、塩酸デメチルクロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、カナマイシン、クラミシジン、グリセオフルビン、クリンダマイシン、クロラムフェニコール、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウム、ストレプトマイシン、セファトリジンン、セファレキシン、セファロスポリン、セファロチン、セフメタゾール、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、トリコマイシン、ナイスタチン、ナジフロキサシン、ニトロフラントイン、バシトラシン、フシジン酸ナトリウム、ミノサイクリン、メタサイクリン、メトロニダゾール、ラクトビオエリスロマイシン、硫酸カナマイシン、硫酸ゲンタマイシン、硫酸コリスチン、硫酸ストレプトマイシン、硫酸フラジオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ポリミキシンB、等が挙げられる。
【0022】
ビタミン剤としては、例えばビタミンA及びその類縁物質として、肝油、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、ビタミンA、ビタミンA油等、ビタミンB1及びその類縁物質として、塩酸ジセチアミン、塩酸チアミン、オクトチアミン、ジベンゾイルチアミン、硝酸チアミン、チアミンジスルフィド、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、ビタミンB1、ビタミンB1塩酸塩、ビタミンB1誘導体、フルスルチアミン、フルスルチアミン塩酸塩、ベンフォチアミン等、ビタミンB2及びその類縁としてフラビンアデニンジヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、酪酸リボフラビン、リボフラビン、リン酸リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム等、ビタミンB6及びその類縁物質として塩酸ピリドキシン、ジパルミチン酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール等、ビタミンB12及びその類縁物質として塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、メコバラミン等、ビタミンC及びその類縁物質としてアスコルビン酸、アスコルビン酸カルシウム、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム等、ビタミンD及びその類縁物質としてビタミンD、ビタミンD1、ビタミンD2(エルゴカルシフェロール)、ビタミンD3(コレカルシフェロール)、マキサカルシトール、タカルシトール等、ビタミンE及びその類縁物質としてコハク酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ビタミンEコハク酸エステルカルシウム等、その他ビタミン類として、ビタミンF、ビタミンH、ビタミンK1、ビタミンU(メチルメチオニンスルホニウムクロリド)等が挙げられる。
【0023】
血行促進剤としては、例えばα−ボルネオール、アセチルコリン、イクタモール、イノシトールヘキサニコチネート、エチニルエストラジオール、塩酸エフェドリン、カフェイン、カプサイシン、カロペプタイド、カンタリスチンキ、酢酸トコフェロール、ジエチルスチルベストロール、シクランデレート、ジンゲロン、シンナリジン、タンニン酸、トラゾリン、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ノニル酸ワレニルアミド、ビタミンE、ベラパミル、ポリエチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0024】
ステロイド類としては、例えばヒドロコルチゾン、プレゾニゾロン、パラメタゾン、ベクロメタゾンプロピオナート、フルメタゾン、ベタメタゾン、プロピオン酸ベクロメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニドアセテート、プロピオン酸クロベクゾール、アムシノニド、塩酸フルルヘキシジン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルドロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸コルチゾン、酢酸ジフロラゾン、酢酸デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニゾロン、ジフルプレドナート、ジプロピオン酸ベタメタゾン、ダイクロリゾン、デスオキシメタゾン、パラメタゾン、ハルシノニド、ビバル酸フルメタゾン、ファルネシル酸プレドニゾロン、ブデソニド、フランカルボン酸モメタゾン、フルオシノニド、フルオロメトロン、フルドロキシコルチド、フルドロコルチド、フルドロコルチゾンアセテート、プロピオン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸デキサメタゾン、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸ベタメタゾン、メチルプレドニゾロン等が挙げれる。
【0025】
局所麻酔剤としては、例えばアミノ安息香酸エチル、塩酸エピロカイン、塩酸オキシブタニカイン、塩酸カタカイン、塩酸コカイン、塩酸ジブカイン、塩酸ジメチソキン、塩酸テーカイン、塩酸テトラカイン、塩酸ブタニカイン、塩酸プビルカイン、塩酸ブラモオシン、塩酸プラモキシン、塩酸プロカイン、塩酸プロビトカイン、塩酸ヘキソチオカイン、塩酸メピバカイン、塩酸メブリルカイン、塩酸メブリルブタニカイン、塩酸リドカイン、オキシポリエトキシドデカン、クロロブタノール、酢酸ピペロカイン、ジブカイン、テーカイン、プロカイン、ペルカミンバーゼ、ベンジルアルコール、ベンゾカイン、リドカイン等が挙げられる。
【0026】
抗ヒスタミン剤としては、例えばイソサイベンジルクレミゾール、インサイベンジル、塩酸イソチペンジル、塩酸イプロヘプチン、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸トルジルアミン、塩酸トリプロリジン、塩酸プロメタジン、塩酸メトジラジン、カルビノキサシン、クロルフェニラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルイミダゾール、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、ジフェンヒドラミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、トリペレナミン、トンジアルミン、フェンベンズアミン、プロメタジン、ペリアクチン、マレイン酸カルビノキサミン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸フェニラミン、メキタジン、ラウリル硫酸ジフェンヒドラミン等が挙げられる。
【0027】
坑ウィルス剤としては、例えばアシクロビル、バラシクロビル、ガンシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、ビダラビン、シダラビン、イドクスウリジン、トリフルリジン、エドクスジン、ブロバビル、フィアシタビン等が挙げられる。
【0028】
サルファ剤としては、例えばスルファジアジン、スルファジアジン銀、スルファニルアミド、スルファピリジン、スルファミン、スルファメタゾール、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルファメトキシピリジン、スルファメトキシピリダミン、スルファメトキシン、スルファモノメトキシン、スルフィソキサゾール、スルフィソキサゾールナトリウム、スルフィソミジン、スルフィソミジンナトリウム、ホモスルファミン等が挙げられる。
【0029】
鎮痛消炎剤としては、例えばサリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、カンフル、ノニル酸ワニリアルアミド、トコフェロール、ハッカ油、チモール、トウガラシエキス、トウガラシ末、酢酸トコフェロール、dl−カンフル、アセトアミノフェン、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナック、ジクロフェナックナトリウム、アルクロフェナック、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、4,5−ジフェニルイミダゾール、dl−塩酸メチルエフェドリン、dl−メチルエフェドリン、亜鉛華リニメント、亜鉛華、亜鉛華デンプン、アスピリン、アズレン、アズレンスルホン酸ナトリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アルクロキサ、アルジオキサ、イクタモール、イソチベンジル、イプシロン−アミノカプロン酸、イブフェナック、イブプロフェンピコノール、インドプロフェン、フルフェナム酸ブチル、塩化亜鉛、カラミン、乾燥水酸化アルミニウムカリウム、グアイアズレン、クリダナク、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、クロフェゾン、ケトプロフェン、サリチル・ミョウバン散、サリチル酸コリン、サリチル酸ナトリウム、サリンダック、酸化亜鉛、ジメチルイソプロピルアズレン、スプロフェン、タンニン酸、チアプロフェン酸、チンク油、トルメチン、ナプロキセン、ピロキシカム、フェノプロフェン、フェルビナク、フェンチアザック、フェンブフェン、ブチジン酸、ブフェキサマク、フマル酸クレマスチン、プラノプロフェン、ベンダザック、ベンジタミン、ベンタザック、ベンタゾシン、ベンツアルデヒドシアンヒドリン、メペリゾール、硫酸亜鉛、硫酸ベルベリン等が挙げられる。
【0030】
角質軟化剤としては、例えば安息香酸、イオウ、イクタモール、グリセリン、グリセリンカリ液、ケロハイドリック、コロジオン、サリチル酸、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸グリコール、乳酸、尿素、ヘパリン類似物質、ヨクイニン等が挙げられる。
【0031】
代謝性剤としては、例えばγ−オリザノール、アスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸ナトリウム、アスパラギン酸マグネシウム、アスパラギン酸マクネシウム・カリウム、アミノエチルスルホン酸、塩化ホスホリルコリンカルシウム、塩酸ベタイン、オロチン酸、オロチン酸コリン、グルクノラクトン、グルクロン酸、グルクロン酸アミド、グルクロン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、グルタミン酸、コンチーム、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、システイン、システイン塩酸塩、システイン誘導体、重酒石酸コリン、大豆リン脂質、チオクト酸、チオクト酸アミド、ニコチン酸アミド、パンテチン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、ビオチン、葉酸、ローヤルゼリー等が挙げられる。
【0032】
また、本発明による絆創膏組成物に配合される薬物の配合量は、皮膚粘着層全量中、0.001〜30質量%が好適とされる。またさらに好ましくは0.05〜20質量%であり、特に好ましくは、0.1〜10質量%である。薬物の配合量が少なすぎると十分な薬理効果が得られないため好ましくなく、また薬物の配合量が多すぎると安全性を損なうために好ましくない。
【0033】
また、本発明による絆創膏組成物に配合される薬物の配合量と化学式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体の割合は1:500〜10:1が好適とされる。尚、さらに好ましくは1:100〜5:1であり、特に好ましくは、1:50〜3:1である。これらの割合を逸脱すると、安定性、安全性などの面で好ましくないと考える。
【0034】
本発明において使用される常温で皮膚粘着性を有する層としては、例えば、粘着剤や粘着付与剤等から構成される。粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤等が用いられる。アクリル系粘着剤として(メタ)アクリル酸−n−ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルブチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチチルエステル、(メタ)アクリル酸イソオクチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸−n−デシルエステル、(メタ)アクリル酸イソデシルエステル、(メタ)アクリル酸−n−ドデシルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸イソブチルエステル、(メタ)アクリル酸ラウリルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシルエステル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及び、/又は上記エステル類と共重合可能な(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロシキエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロシキプロピルエステル、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸−2−メトシキエチルエステルの如き官能基を有する単量体及び/又はアクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネートの如きビニル系単量体との共重合物が挙げられる。
【0035】
ゴム系粘着剤としては、例えばポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブテンゴム、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリスチレン−ポリブタジエンゴム、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンゴム(EPM),スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体ゴム(SIS)、ポリエーテルアミド共重合体ポリマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、天然ゴム等が挙げられる。また、シリコン系粘着剤として、ポリオルガノシロキサン等のシリコーンゴムが挙げられる。さらにビニル系粘着剤として、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセテート等が挙げられる。その他として、ポリウレタン粘着剤等があげられる。本発明においてはこれらの粘着剤を、密着性、相溶性等を考慮しながら一種、又は二種以上で使用する。
【0036】
また、一方粘着付与剤としては、脂環族飽和炭化水素樹脂、ロジン系樹脂、ポリテルペン樹脂、クロマン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペンフェノール樹脂などが挙げられる。本発明においてはこれらの粘着付与剤を、密着性、相溶性等を考慮しながら一種、又は二種以上で使用する。
【0037】
本発明による、皮膚粘着層中の粘着剤および粘着付与剤は、皮膚粘着層全量中、20〜99.99質量%が好適とされる。尚、さらに好ましくは30〜99.9質量%、特に好ましくは40〜99質量%である。粘着剤および粘着付与剤の配合量が少なすぎると膏体の安定性(保形性)が悪くなるために好ましくない。
【0038】
本発明による絆創膏組成物においては、前記特定構造のアルキレンオキシド誘導体を配合することにより、皮膚粘着層中に薬物を均一に分散または溶解することができ、製剤の均一性や保型性を高めることを可能とするものである。なお、従来の絆創膏組成物においては、薬物とともに界面活性剤を配合することにより、皮膚粘着層中に分散させたものも散見されるが、界面活性剤が絆創膏組成物の保形性や粘着性に影響してしまったり、場合によっては薬理効果の発現が遅れてしまう等の問題があった。これに対して、本発明による絆創膏組成物は、前記特定構造のアルキレンオキシド誘導体を配合することにより、界面活性剤を配合することなく、皮膚粘着層中に薬物を均一に分散または溶解することができるものである。
【0039】
このため、本発明による絆創膏組成物においては、界面活性剤を実質的に含有しないことが好適である。また、絆創膏組成物中に界面活性剤を配合しないことにより、前述した界面活性剤による保形性や粘着性、あるいは薬理効果の発現に対する悪影響のほか、界面活性剤による皮膚刺激性の問題を回避することも可能となる。なお、本発明において、「実質的に界面活性剤を含有しない」とは、界面活性剤の配合の有無が、皮膚粘着層中における薬物の均一分散に直接寄与していないことを意味するものであり、界面活性剤を極微量配合しているものまでを除外するものではない。具体的には、水難溶性薬物の配合量に対する界面活性剤の配合量が5.0質量%未満、特に1.0質量%未満であることが好適である。
【0040】
また、本発明による絆創膏組成物には、薬物によっては溶解補助剤または分散補助剤としてI.O.B値:0〜1.2の油分を配合することが出来る。
I.O.B(Inorganic Organic Balance)値とは「化学の領域」第11巻、第10号、第719〜725頁、1957年に示されている藤田による計算方法に従い算出した無機性及び有機性の値の比、すなわち次式によって表される数値である。
Σ 無機性
I.O.B値= ――――――――
Σ 有機性
【0041】
また、本発明に配合するI.O.B値が0〜1.2の油分としては、例えば、液体油脂としてアボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
【0042】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0043】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0044】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、 POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
【0045】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0046】
高級アルコールとしては、例えば、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等);分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
【0047】
合成エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、 12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、コハク酸2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、クエン酸トリエチル、クロタミトン等が挙げられる。
【0048】
本発明の絆創膏組成物において配合されるI.O.B値:0〜1.2の油分の配合量は、皮膚粘着層全量中、0.1〜70質量%が好適とされる。さらに好ましくは1〜60質量%であり、特に好ましくは、3〜50質量%である。油分の配合量が少なすぎると薬物の十分な溶解や分散の補助効果が得られないために好ましくなく、また油分の配合量が多すぎると系の安定性を損なうために好ましくない。
【0049】
本発明において使用される支持体としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリピロピレン、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリウレタン、エチレン/酢酸ビニル共重合体、セロハン等の各種プラスティックフィルムや、和紙、クラフト紙等の紙類、綿布、スフ、不織布等の布類、金属箔、及びこれらの各種支持体の積層体等が挙げられる。医療用途に用いるものであれば形状に特に限定されず、例えば救急絆創膏や巻絆、ドレッシング材、ドレープ材等に適宜用いることが出来る。
【0050】
本発明の皮膚粘着層を形成するには、従来の公知の方法で良く、例えば、溶剤塗工法、ホットメルト塗工法、エマルション塗工法、電子線架橋法など種々の塗工法が好適である。例えば、溶剤塗工法で粘着剤層を形成するには、例えば、粘着剤や粘着付与剤を適当な溶媒で希釈し、これに薬物、アルキレンオキシド誘導体、さらに必要に応じて添加物を加えて均一に混合し、得られた溶液を支持体表面に塗布・乾燥する。溶液を直接支持体表面に塗布せずに例えばシリコン樹脂などをコーティングしたライナー上に塗布し、乾燥後に支持体と密着させてもよい。このようなライナーは、使用時まで貼付剤の皮膚粘着層表面を保護するために用いられる。
一方、ホットメルト法については、例えば、粘着剤、粘着付与剤をニーダー、ミキサー等の混練機を用い、120〜150℃程度の温度で混練して溶融する。溶融後、系の温度を100〜120℃に降下し、薬物、アルキレンオキシド誘導体を添加し、均一に混合して溶融状態の溶液を得る。この溶液をホットメルトコーターを用いて、プラスターまたはテープ状の支持体に展延するか、あるいはライナー上に展延し、得られた皮膚粘着層上にライナー、あるいは支持体を張り合わせて製造することが出来る。
【0051】
皮膚粘着層の厚みは、特に限定されないが、通常は、500μm以下で、好ましくは20〜300μmである。皮膚粘着層の厚みが薄くなりすぎると、必要な薬物量を含有するこが出来ず、一方皮膚粘着層の厚みが厚くなりすぎると、皮膚粘着層中に含有する薬物が十分に拡散せずに、薬物放出性が低下してしまうため好ましくない。
【0052】
本発明の絆創膏組成物には上記必須成分の他、通常医薬品の絆創膏組成物に用いられる成分を配合することができ常法に応じて製造される。以下に具体的な配合可能成分を列挙するが、上記必須成分と下記成分の一種又は二種以上とを配合して本発明の絆創膏組成物を調製できる。
【実施例】
【0053】
次に実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。配合量は質量%である。
まず最初に、本発明にかかるアルキレンオキシド誘導体の合成例について示す。
【0054】
合成例1 ブロックポリマーの合成
ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジメチルエーテル
CHO(EO)(PO)10(EO)CH
【0055】
プロピレングリコール76gと触媒として水酸化カリウム3.1gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりプロピレンオキシド522gを滴下させ、2時間攪拌した。ひきつづき滴下装置によりエチレンオキシド440gを滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム224gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル188gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、前記アルキレンオキシド誘導体(ブロックポリマー)を得た。
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が110、得られた化合物の水酸基価が0.3、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.003であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0056】
合成例2 ランダムポリマーの合成例
ポリオキシエチレン(10モル)ポリオキシプロピレン(10モル)ジメチルエーテル
CHO[(EO)10/(PO)10]CH
【0057】
なお、以下の実施例において、EOはオキシエチレン基、POはオキシプロピレン基、[(EO)/(PO)]はランダム状結合を表す。
プロピレングリコール76gと触媒として水酸化カリウム3.1gをオートクレーブ中に仕込み、オートクレーブ中の空気を乾燥窒素で置換した後、攪拌しながら140℃で触媒を完全に溶解した。次に滴下装置によりエチレンオキシド440gとプロピレンオキシド522gの混合物を滴下させ、2時間攪拌した。次に、水酸化カリウム224gを仕込み、系内を乾燥窒素で置換した後、塩化メチル188gを温度80〜130℃で圧入し5時間反応させた。その後オートクレーブより反応組成物を取り出し、塩酸で中和してpH6〜7とし、含有する水分を除去するため減圧−0.095MPa(50mmHg)、100℃で1時間処理した。更に処理後生成した塩を除去するため濾過を行い、前記アルキレンオキシド誘導体(ランダムポリマー)を得た。
【0058】
塩化メチルを反応させる前にサンプリングし、精製したものの水酸基価が107、得られた化合物の水酸基価が0.4、末端メチル基数に対する水素原子数の割合は0.004であり、ほぼ完全に水素原子がメチル基に変換されている。
【0059】
本発明者らは、以上の各製造例に準じて各種アルキレンオキシド誘導体を調製し、下記実施例1〜8、比較例1〜3のプラスター剤あるいはテープ剤を常法により製造した。
【0060】
実施例1 プラスター剤
(1) インドメタシン 3.75%
(2) l−メントール 0.5
(3) アルキレンオキシド誘導体 20.0
CHO[(EO)36/(PO)41]CH
(4) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 17.0
(5) 流動パラフィン 20.0
(6) BHT 2.0
(7) 脂環族飽和炭化水素樹脂 36.75
合計 100.00g
(製法)基剤成分(4),(5),(6),(7)を加熱溶解した後、成分(3)に薬物(1),(2)を加えて撹拌溶解したものを加えて皮膚粘着層を調製し、これをポリエステル布製の支持体に展延して、プラスチック製ライナーで覆い、冷却後、7cm×10cmに切断して本発明の絆創膏組成物を調製した。
【0061】
実施例2 テープ剤
(1) ケトプロフェン 1.0%
(2) 酢酸トコフェロール 0.5
(3) アルキレンオキシド誘導体 15.0
CHO[(EO)36/(PO)41]CH
(4) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 26.0
(5) 流動パラフィン 16.0
(6) ミリスチン酸イソプロピル 5.0
(7) 酸化チタン 12.0
(8) 脂環族飽和炭化水素樹脂 24.5
合計 100.0g
(製法)実施例1に準じる。
【0062】
実施例3 プラスター剤
(1) 酢酸デキサメタゾン 0.25%
(2) ジフェンヒドラミン 1.0
(3) 酢酸トコフェロール 0.5
(4) イソプロピルメチルフェノール 0.1
(5) アルキレンオキシド誘導体 19.1
CHO[(EO)55/(PO)28]CH
(6) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 25.0
(7) 流動パラフィン 13.5
(8) 酸化チタン 7.5
(9) BHT 1.0
(10)脂環族飽和炭化水素樹脂 32.05
合計 100.00g
(製法)実施例1に準じる。
【0063】
実施例4 テープ剤
(1) エストラジオール 0.5%
(2) アルキレンオキシド誘導体 25.0
CHO[(EO)36/(PO)41]CH
(3) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 23.5
(4) 流動パラフィン 15.5
(5) ケイ酸アルミニウム 10.0
(6) 脂環族飽和炭化水素樹脂 25.5
合計 100.0g
(製法)実施例1に準じる。
【0064】
実施例5 テープ剤
(1) ビフォナゾール 1.0%
(2) フェンヒドラミン 0.5
(3) アルキレンオキシド誘導体 18.0
CHO[(EO)14/(PO)07]CH
(4) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 21.0
(5) 流動パラフィン 18.5
(6) セバシン酸ジブチル 2.0
(7) 酸化亜鉛 14.0
(8) BHT 1.5
(9) 脂環族飽和炭化水素樹脂 23.5
合計 100.0g
(製法)実施例1に準じる。
【0065】
実施例6 テープ剤
(1) アシクロビル 5.0%
(2) アルキレンオキシド誘導体 18.5
CHO[(EO)36/(PO)41]CH
(3) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 15.0
(4) 流動パラフィン 16.0
(5) ミリスチン酸イソプロピル 2.5
(6) アジピン酸ジイソプロピル 1.5
(7) 酸化チタン 12.0
(8) ポリブテン 3.0
(9) BHT 1.5
(10)脂環族飽和炭化水素樹脂 25.0
合計 100.0g
(製法)実施例1に準じる。
【0066】
実施例7 テープ剤
(1) リドカイン 3.0%
(2) プロカイン 2.0
(3) アルキレンオキシド誘導体 13.5
CHO[(EO)14/(PO)07]CH
(4) アクリル樹脂系感圧接着剤 77.0
(5) 酸化チタン 2.0
(6) プロピレングリコール 2.5
合計 100.0g
(製法)実施例1に準じる。
【0067】
実施例8 プラスター剤
(1) サリチル酸グリコール 1.0%
(2) l−メントール 0.5
(3) 酢酸トコフェロール 0.3
(4) トウガラシエキス 0.1
(5) アルキレンオキシド誘導体 21.5
CHO[(EO)36/(PO)41]CH
(6) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 28.5
(7) 流動パラフィン 11.0
(8) シリコンKF96A−6 3.0
(9) トリイソオクタン酸グリセリン 4.0
(10)ラポナイトXLG 5.5
(11)BHT 0.5
(12)脂環族飽和炭化水素樹脂 24.1
合計 100.0g
(製法)実施例1に準じる。
【0068】
比較例1 プラスター剤
(1) インドメタシン 3.75%
(2) L−メントール 0.5
(3) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 17.0
(4) 流動パラフィン 40.0
(5) BHT 2.0
(6) 脂環族飽和炭化水素樹脂 36.75
合計 100.00g
(製法)基剤成分(3),(4),(5),(6)を加熱溶解した後に、薬物(1),(2)を加えて撹拌したものを加えて皮膚粘着層を調製し、これを布製の支持体に展延して、プラスチック製ライナーで覆い、冷却後、7cm×10cmに切断して本発明の絆創膏組成物を調製した。
【0069】
比較例2 テープ剤
(1) ケトプロフェン 1.0%
(2) 酢酸トコフェロール 0.5
(3) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 26.0
(4) 流動パラフィン 31.0
(5) ミリスチン酸イソプロピル 5.0
(6) 酸化チタン 12.0
(7) 脂環族飽和炭化水素樹脂 24.5
合計 100.0g
(製法)比較例1に準じる。
【0070】
比較例3 プラスター剤
(1) 酢酸デキサメタゾン 0.25%
(2) ジフェンヒドラミン 1.0
(3) 酢酸トコフェロール 0.5
(4) イソプロピルメチルフェノール 0.1
(5) スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体 19.1
(6) 流動パラフィン 38.5
(7) 酸化チタン 7.5
(8) BHT 1.0
(9) 脂環族飽和炭化水素樹脂 32.05
合計 100.00g
(製法)比較例1に準じる。
【0071】
「評価(1):製剤の均一性、保形性」
製剤を各温度条件に保存し、外観観察により製剤の均一性、製剤の保形性について評価を行った。実施例1〜5および比較例1〜3の各製剤をアルミラミネート製の気密容器に入れ、50℃、40℃、25℃、0℃で1ヵ月間保存した。外観観察により以下の基準で判定した。
[製剤の均一性について]
◎…全く異常が認められない。
○…わずかに結晶析出やブツが認められるが、均一性には影響ない。
△…結晶析出やブツにより、製剤が一部不均一になっている。
×…結晶析出やブツにより、製剤全体の均一性が悪い。
[製剤の保形性について]
◎…全く異常が認められない。
○…わずかに成分のしみ出しが認められるが、保形性には影響ない。
△…成分のしみ出し、剥離不良、糊残り等が認められる。
×…製剤の一部が分離し、製剤全体の保形性が悪い。
【0072】
「評価(2):剥離後の痛み」
幅7cm、長さ10cmの絆創膏組成物を作成した。そしてパネル10名の前腕内側部に24時間貼付した後剥離し、剥離後の痛みの有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
◎…パネル8名以上が、剥離時に痛みがないと認めた。
○…パネル6名以上8名未満が、剥離時に痛みがないと認めた。
△…パネル3名以上6名未満が、剥離時に痛みがないと認めた。
×…パネル3名未満が、剥離時に痛みがないと認めた。
【0073】
「評価(3):接触角測定試験」
絆創膏組成物における皮膚からの発汗に対する影響を評価するため、絆創膏組成物中の皮膚粘着層の撥水性について、水に対する接触角で測定した。皮膚粘着層が水に対して撥水すればするほど、絆創膏組成物を貼付した際に汗が溜まりやすかった。実施例及び比較例の製剤について、皮膚粘着面を上に向けて、そこに水滴を落とし、30分静置後にその水滴が作る角度(接触角)を計測した。尚、数値は3回の測定値の平均値である。接触角が小さいほど貼付した際に汗が溜まりにくいと評価した。
【0074】
「評価(4):皮膚刺激試験」
幅3cm、長さ3cmの絆創膏組成物を作成した。そして10名のパネルの前腕内側部に開始時の皮膚に異常のないことを観察した後、実施例1〜5および比較例1〜3の各製剤を貼付して、サポーター等で試験部位を固定した。1日2回試料を貼り替えて、試験開始後3日後に塗布部位の外観観察による皮膚刺激性を以下の基準により判定した。
0…全く異常が認められない。
1…わずかに赤みが認められる。
2…赤みが認められる。
3…赤みと丘疹が認められる。
数値は3日間貼付した後のスコアの10名の平均値である。
【0075】
「実施例1〜8、比較例1〜3」
実施例、及び比較例に示す配合成分を混合し、これをポリエステル製織布に皮膚粘着層が200g/mになるように均一に塗布して絆創膏組成物を製造した。そして上記の試験を実施して評価を行なった。その結果を各表に示した。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
上記表1より、本発明において特徴的な特定構造のアルキレンオキシド誘導体を配合した実施例1〜5の絆創膏組成物においては、広範な温度範囲にわたって、製剤の均一性、製剤の保形性に優れており、膏体中で薬物成分が安定に配合されていることがわかる。また、さらに、実施例1〜5の絆創膏組成物は、剥離後の痛みが少なく、撥水性が低いために汗が溜まりにくく、さらには皮膚への刺激性も非常に低いというものであった。
【0079】
これに対して、上記表2より、実施例1,2の処方においてアルキレンオキシド誘導体に代えて一般的な保湿剤であるグリセリン、1,3−ブチレングリコールを配合した比較例1,2では、製剤の均一性、保形性が十分でなく、また、アルキレンオキシド誘導体を用いた実施例1,2と比較して、剥離後の痛みが生じており、撥水性が高く、さらには皮膚刺激性も高いものであった。また、実施例3の処方からアルキレンオキシド誘導体を除外した比較例3においても、比較例1,2と同様に、製剤の均一性、保型性、さらには剥離後の痛み、撥水性、皮膚刺激性に劣っており、これらのことから、本発明におけるアルキレンオキシド誘導体の配合効果が確認される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスター又はテープ状支持体と、常温で皮膚粘着性を有する層とからなる絆創膏において、該皮膚粘着層に、
薬物と、
下記化学式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体と
を含有することを特徴とする絆創膏組成物。
O−[(EO)(AO)]−R (I)
(式中、EOはオキシエチレン基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、mおよびnはそれぞれ前記オキシエチレン基、オキシアルキレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は、20〜80質量%である。オキシエチレン基と炭素数3〜4のオキシアルキレン基はブロック状に付加していてもランダム状に付加していてもよい。R,Rは、同一もしくは異なってもよい炭素数1〜4の炭化水素基または水素原子であり、RおよびRの炭化水素基数に対する水素原子数の割合が0.15以下である。)
【請求項2】
請求項1に記載の絆創膏組成物において、アルキレンオキシド誘導体が、オキシエチレン基とオキシアルキレン基がランダム状に付加していることを特徴とする絆創膏組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の絆創膏組成物において、アルキレンオキシド誘導体の含有量が、皮膚粘着層全量に対して0.01〜50質量%であることを特徴とする絆創膏組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の絆創膏組成物において、該皮膚粘着層に、さらにI.O.B値が0.1〜1.2の油分を含有することを特徴とする絆創膏組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の絆創膏組成物において、界面活性剤を実質的に含有しないことを特徴とする絆創膏組成物。


【公開番号】特開2006−1859(P2006−1859A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178143(P2004−178143)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】