説明

経口投与用吸着剤

直径が0.01〜1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上であり、そして式(1):
R=(I15−I35)/(I24−I35) (1)
[式中、I15、I35、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が、それぞれ15°、35°、24°における回折強度である]で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤を開示する。また、上記直径、比表面積、回折強度比(R値)であり、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40〜1.10meq/gである表面改質球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤を開示する。これらの経口投与用吸着剤は、体内有益成分の吸着性が少なく、毒性物質の吸着性能が多いという有益な選択吸着特性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、特異な細孔構造を有する球状活性炭からなる経口投与用吸着剤、及び前記球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理することによって製造され、同様の特異な細孔構造を有する表面改質球状活性炭からなる経口投与用吸着剤に関する。
本発明による経口投与用吸着剤は、消化酵素等の体内の有益成分の吸着性が少ないにもかかわらず、有毒な毒性物質(Toxin)の吸着性能が多いという選択吸着特性を有し、更に、特異な細孔構造を有するので、従来の経口投与用吸着剤と比較すると、前記の選択吸着特性が著しく向上する。従って、特に、肝腎疾患者用の経口投与用吸着剤として有効である。
【背景技術】
腎機能や肝機能の欠損患者らは、それらの臓器機能障害に伴って、血液中等の体内に有害な毒性物質が蓄積したり生成したりするので、尿毒症や意識障害等の脳症をひきおこす。これらの患者数は年々増加する傾向を示しているため、これら欠損臓器に代わって毒性物質を体外へ除去する機能をもつ臓器代用機器あるいは治療薬の開発が重要な課題となっている。現在、人工腎臓としては、血液透析による有毒物質の除去方式が最も普及している。しかしながら、このような血液透析型人工腎臓では、特殊な装置を用いるために、安全管理上から専門技術者を必要とし、また血液の体外取出しによる患者の肉体的、精神的及び経済的負担が高いなどの欠点を有していて、必ずしも満足すべきものではない。
近年、これらの欠点を解決する手段として、経口的な服用が可能で、腎臓や肝臓の機能障害を治療することができる経口吸着剤が注目されている。具体的には、特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤は、特定の官能基を有する多孔性の球形炭素質物質(以後、表面改質球状活性炭とよぶ)からなり、生体に対する安全性や安定性が高く、同時に腸内での胆汁酸の存在下でも有毒物質の吸着性に優れ、しかも、消化酵素等の腸内有益成分の吸着が少ないという有益な選択吸着性を有し、また、便秘等の副作用の少ない経口治療薬として、例えば、肝腎機能障害患者に対して広く臨床的に利用されている。なお、前記特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤は、石油ピッチなどのピッチ類を炭素源とし、球状活性炭を調製した後、酸化処理、及び還元処理を行うことにより製造されていた。
【発明の開示】
本発明者は、ピッチ類から球状活性炭を調製し、酸化還元することにより得られる従来の多孔性球状炭素質物質からなる経口吸着剤よりも一層優れた選択的吸着性を示す経口投与用吸着剤の探求を進めていたところ、驚くべきことに、熱硬化性樹脂を炭素源として調製した球状活性炭は、酸化処理及び還元処理を実施する前の状態であるにもかかわらず、生体内の尿毒症性物質のひとつと考えられるβ−アミノイソ酪酸の吸着性に優れており、しかも有益物質である消化酵素(例えば、α−アミラーゼ)等に対する吸着性が少ないという有益な選択吸着性を有することを見出し、更に、その選択吸着性の程度が、前記特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤よりも優れていることを見出した。熱硬化性樹脂を炭素源として調製した前記球状活性炭は、β−アミノイソ酪酸に対して優れた吸着性を示すので、同様の分子サイズを有する他の毒性物質、例えば、オクトパミンやα−アミノ酪酸、更に腎臓病での毒性物質及びその前躯体であるジメチルアミン、アスパラギン酸、あるいはアルギニン等の水溶性の塩基性及び両性物質に対しても優れた吸着性を示すものと考えられる。
従来の多孔性球状炭素質物質、すなわち、前記特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤で用いる表面改質球状活性炭では、ピッチ類から調製される球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理して官能基を導入することによって、前記の選択吸着性が発現されることになると考えられていたので、酸化処理及び還元処理を実施する前の球状活性炭の状態で選択的吸着能を発現すること、及びその吸着能が従来の経口投与用吸着剤よりも優れているという本発明者による前記の発見は、驚くべきことである。
また、本発明者は、前記の球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理することによって調製した表面改質球状活性炭は、生体内の尿毒症性物質のひとつと考えられるβ−アミノイソ酪酸の吸着性に優れており、しかも有益物質である消化酵素(例えば、α−アミラーゼ)等に対する吸着性が少ないという前記の有益な選択吸着性が、前記特公昭62−11611号公報に記載の吸着剤よりも一層向上することを見出した。従って、β−アミノイソ酪酸と同様の分子サイズを有する他の毒性物質、例えば、オクトパミンやα−アミノ酪酸、更に腎臓病での毒性物質及びその前躯体であるジメチルアミン、アスパラギン酸、あるいはアルギニン等の水溶性の塩基性及び両性物質に関しても一層優れた選択吸着性を示すものと考えられる。
本発明はこうした知見に基づくものである。
従って、本発明は、
直径が0.01〜1mmであり、ラングミュア(Langmuir)の吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上であり、そして式(1):
R=(I15−I35)/(I24−I35) (1)
〔式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕
で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤に関する。
また、本発明は、直径が0.01〜1mmであり、ラングミュア(Langmuir)の吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上であり、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40〜1.10meq/gであり、そして式(1):
R=(I15−I35)/(I24−I35) (1)
〔式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕
で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である表面改質球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤にも関する。
【図面の簡単な説明】
図1は、従来法による表面改質球状活性炭のX線回折図(曲線A)、従来法による表面改質球状活性炭ペースト体のX線回折図(曲線B)、及び本発明の経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭のX線回折図(曲線C)である。
図2は、本発明による表面改質球状活性炭の表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(50倍)である。
図3は、本発明による表面改質球状活性炭の断面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(200倍)である。
図4は、従来法による表面改質球状活性炭の表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(50倍)である。
図5は、従来法による表面改質球状活性炭の断面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(200倍)である。
図6は、本発明の経口投与用吸着剤による血清クレアチニンへの効果を調べた結果を示すグラフである。
図7は、本発明の経口投与用吸着剤による血中尿素窒素への効果を調べた結果を示すグラフである。
図8は、本発明の経口投与用吸着剤によるクレアチニン・クリアランスへの効果を調べた結果を示すグラフである。
図9は、本発明の経口投与用吸着剤による尿蛋白排泄量への効果を調べた結果を示すグラフである。
図10は、本発明の経口投与用吸着剤によるICG(Indocyanine green:インドシアニングリーン)への効果を調べた結果を示すグラフである。
図11は、本発明の経口投与用吸着剤によるGOT(glutamic−oxaloacetic transaminase;グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)への効果を調べた結果を示すグラフである。
図12は、本発明の経口投与用吸着剤によるGPT(glutamic−pyruvic transaminase;グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ)への効果を調べた結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭は、前記のとおり、前記式(1)から求められる回折強度比(R値)が1.4以上である。
最初に、回折強度比(R値)について説明する。
前記特公昭62−11611号公報の実施例1〜3に記載の従来法による表面改質球状活性炭に対して、粉末X線回折を実施すると、図1の曲線Aに示すような傾向のX線回折図形が得られる。なお、図1の曲線Aそれ自体は、後述する比較例1によって得られた表面改質球状活性炭のX線回折図形である。曲線Aから明らかなように、回折角(2θ)が20°〜30°の近辺に002面に由来する回折ピークが現れ、回折角(2θ)が30°より高角度側では回折X線の減少により強度が減少する。一方、回折角(2θ)が20°より低角度側では、002面からの回折X線が殆ど観測されない回折角15°以下の領域でも、強いX線が観測される。更に、前記特公昭62−11611号公報の実施例1〜3記載の表面改質球状活性炭に水分を吸着させ、粉末X線回折の測定を実施すると、図1の曲線Bに示すような傾向のX線回折図形が得られる。なお、図1の曲線Bそれ自体は、後述する比較例1によって得られた表面改質球状活性炭に水分を吸着させた後に得られるX線回折図形である。曲線Bから明らかなように、曲線Aに比べ曲線Bの低角度側のX線強度が大幅に低下することがわかる。これは低角度側のX線強度が微細な細孔に起因するものであり、細孔内に水分を吸着することによりX線散乱強度が低下したものと解釈される。
一方、後述する実施例に示すように、本発明者が見出した調製方法によって得られる球状活性炭又は表面改質球状活性炭では、水分を吸着させていない状態で、図1の曲線Cに示すような傾向のX線回折図が一般的に得られる。なお、図1の曲線Cそれ自体は、後述する実施例1によって得られた表面改質球状活性炭のX線回折図形である。すなわち、回折角(2θ)が15°以下の低角度領域における曲線Cの散乱強度が曲線Aの散乱強度と比較して明らかに強い傾向にある。なお、図1において、曲線A、曲線B、及び曲線Cは、回折角(2θ)が24°における回折強度がいずれも100となるように規格化してある。
図1の曲線Aのような傾向のX線回折図を示す多孔質体と、図1の曲線Cのような傾向のX線回折図を示す多孔質体とでは、その細孔構造が異なることは明らかである。また、曲線Aと曲線Bの比較により表面改質球状活性炭のX線回折において低角度側で観測される散乱強度が細孔構造に起因することは明らかであり、散乱強度が強いほどより多くの細孔を有する。散乱角と細孔径の関係は、より高角度側の散乱ほどその細孔径が小さいものと推測される。細孔構造の解析には一般に吸着法により細孔分布を求める方法が知られているが、細孔の大きさ、形状、吸着物質の大きさ、及び吸着条件等の違いにより細孔構造を精確に解析することが困難な場合が多い。本発明者は、002面からの回折X線による影響が少なく、且つ、微細孔による散乱を反映すると推定される15°付近の散乱強度が、吸着法で測定することが困難な超微細孔の存在を表す指標となり、このような微細孔の存在が有害物質であるβ−アミノイソ酪酸の吸着に有効であるものと推定している。すなわち、回折角(2θ)が15°付近の散乱強度が強い球状活性炭又は表面改質球状活性炭ほど、有害物質であるβ−アミノイソ酪酸の吸着に有効であると推測している。
また、後述する実施例で示すように、本発明者は、図1の曲線Aのような傾向のX線回折図を示す従来の球状活性炭又は表面改質球状活性炭と比較して、図1の曲線Cのような傾向のX線回折図を示す本発明による球状活性炭又は表面改質球状活性炭の方が、優れた選択吸着性能を示すことを実験的に確認した。
そこで、前記の関係を明確化するために、本明細書においては前記式(1)によって計算される回折強度比(R値)によって、球状活性炭又は表面改質球状活性炭を規定する。前記式(1)において、I15は回折角(2θ)が15°における回折強度であり、曲線Aと曲線Cとの間で、回折強度差が大きくなる領域である。I24は回折角(2θ)が24°における回折強度であり、曲線Aと曲線Cとの間で、回折強度差が小さくなる領域である。なお、I35は回折角(2θ)が35°における回折強度であり、各測定試料間のバックグラウンドによる測定誤差を補正する目的で導入する。
従って、前記式(1)によって計算される回折強度比(R値)は、曲線Aについては、
R=t/u
となり、曲線Cについては、
R=s/v
となる。
従来公知の代表的な経口投与用表面改質球状活性炭について、本発明者が確認したところ、それらの回折強度比(R値)はいずれも1.4未満であり、回折強度比(R値)が1.4以上の経口投与用表面改質球状活性炭は、本発明者の知る限り、見出されていない。一方、後述する実施例に示すとおり、回折強度比(R値)が1.4以上の表面改質球状活性炭は、回折強度比(R値)が1.4未満の表面改質球状活性炭と比較すると、β−アミノイソ酪酸の吸着能が向上しており、毒性物質の選択吸着性が向上した経口投与用吸着剤として有効であることが分かる。
なお、本発明の経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭においては、前記式(1)によって計算される回折強度比(R値)が、好ましくは1.4以上であり、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは1.6以上である。
本発明者が見出したところによれば、回折強度比(R値)が1.4以上の球状活性炭又は表面改質球状活性炭は、例えば、従来の経口投与用吸着剤の炭素源として用いられてきたピッチ類に代えて、炭素源として熱硬化性樹脂を用いることにより調製することができる。あるいは、従来の経口投与用吸着剤同様に、炭素源としてピッチ類を用い、不融化処理の工程で架橋構造を発達させ、炭素六角網面の配列を乱すことにより調製することができる。
最初に、炭素源として熱硬化性樹脂を用いる場合の調製方法を説明する。
熱硬化性樹脂からなる球状体を、炭素と反応性を有する気流(例えば、スチーム又は炭酸ガス)中で、700〜1000℃の温度で賦活処理すると、本発明の経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭を得ることができる。ここで、球状「活性炭」とは、球状の熱硬化性樹脂などの炭素前駆体を熱処理した後に、賦活処理を行うことによって得られる多孔質体であり、球状で比表面積が100m/g以上であるものを意味する。本発明においては1000m/g以上が好ましい。
なお、熱硬化性樹脂からなる前記球状体が、熱処理により軟化して形状が非球形に変形するか、あるいは球状体同士が融着する場合には、前記の賦活処理の前に、不融化処理として、酸素を含有する雰囲気にて、150℃〜400℃で酸化処理を行うことにより軟化を抑制することができる。
また、前記の熱硬化性樹脂球状体を熱処理すると、多くの熱分解ガスなどが発生する場合には、賦活操作を行う前に適宜予備焼成を行い、予め熱分解生成物を除去してもよい。
更に、選択吸着性を一層向上させるには、こうして得られた球状活性炭を、続いて、酸素含有量0.1〜50vol%(好ましくは1〜30vol%、特に好ましくは3〜20vol%)の雰囲気下、300〜800℃(好ましくは320〜600℃)の温度で酸化処理し、更に800〜1200℃(好ましくは800〜1000℃)の温度下、非酸化性ガス雰囲気下で加熱反応による還元処理をすることにより、本発明の経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭を得ることができる。ここで、表面改質球状活性炭とは、前記の球状活性炭を、前記の酸化処理及び還元処理して得られる多孔質体であり、球状活性の表面に酸性点と塩基性点とをバランスよく付加することにより腸管内の有毒物質の吸着特性を向上させたものである。
出発材料として用いる前記の熱硬化性樹脂球状体は、粒径が約0.02〜1.5mmであることが好ましい。
出発材料として用いる前記の熱硬化性樹脂としては、球状体を成形することが可能な樹脂であり、500℃以下の熱処理においては溶融又は軟化せずに、形状変形も起こさないことが重要である。また、酸化処理などのいわゆる不融化処理により、溶融酸化を回避することのできる熱硬化性樹脂であれば使用することができる。
出発材料として用いる前記の熱硬化性樹脂としては、熱処理による炭素化収率が高いことが望ましい。炭素化収率が低いと、球状活性炭としての強度が弱くなる。また、不必要な細孔が形成されるため、球状活性炭の嵩密度が低下して、体積あたりの比表面積が低下するので、投与体積が増加し、経口投与が困難になるという問題を引き起こす。従って、熱硬化性樹脂の炭素化収率は高いほど好ましく、非酸化性ガス雰囲気中800℃での熱処理による収率の好ましい値は40重量%以上、更に好ましくは45重量%以上である。
出発材料として用いる前記の熱硬化性樹脂として、具体的には、フェノール樹脂、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型アルキルフェノール樹脂、若しくはレゾール型アルキルフェノール樹脂を挙げることができ、その他にもフラン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、又はエポキシ樹脂などを用いることができる。熱硬化性樹脂としては、更に、ジビニルベンゼンと、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、又はメタクリル酸との共重合体を用いることができる。
また、前記の熱硬化性樹脂として、イオン交換樹脂を用いることもできる。イオン交換樹脂は、一般的に、ジビニルベンゼンと、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、又はメタクリル酸との共重合体(すなわち、熱硬化性樹脂)からなり、基本的には三次元網目骨格をもつ共重合体母体に、イオン交換基が結合した構造を有する。イオン交換樹脂は、イオン交換基の種類により、スルホン酸基を有する強酸性イオン交換樹脂、カルボン酸基又はスルホン酸基を有する弱酸性イオン交換樹脂、第四級アンモニウム塩を有する強塩基性イオン交換樹脂、第一級又は第三級アミンを有する弱塩基性イオン交換樹脂に大別され、このほか特殊な樹脂として、酸及び塩基両方のイオン交換基を有するいわゆるハイブリッド型イオン交換樹脂があり、本発明においては、これらのすべてのイオン交換樹脂を原料として使用することができる。本発明においては、出発材料としてフェノール樹脂を用いるのが特に好ましい。
次に、炭素源としてピッチ類を用い、不融化処理の工程で架橋構造を発達させ、炭素六角網面の配列を乱すことにより、経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭を調製する方法を説明する。
最初に、石油ピッチ又は石炭ピッチ等のピッチに対し、添加剤として、沸点200℃以上の2環式又は3環式の芳香族化合物又はその混合物を加えて加熱混合した後、成形してピッチ成形体を得る。なお、前記の球状活性炭又は表面改質球状活性炭は経口投与用であるので、その原料も、安全上充分な純度を有し、且つ品質的に安定であることが必要である。
次に、熱水中で前記のピッチ成形体を撹拌下に分散造粒して微小球体化する。更に、ピッチに対して低溶解度を有し、かつ前記添加剤に対して高溶解度を有する溶剤で、ピッチ成形体から添加剤を抽出除去し、得られた多孔性ピッチを、酸化剤を用いて酸化すると、熱に対して不融性の多孔性ピッチが得られる。こうして得られた不融性多孔性ピッチを、更に炭素と反応性を有する気流(例えば、スチーム又は炭酸ガス)中で、加熱処理すると、球状活性炭を得ることができる。
こうして得られた球状活性炭を、続いて、酸素含有雰囲気下にて加熱下で酸化処理し、更に非酸化性ガス雰囲気下で加熱反応による還元処理をすることにより、本発明の経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭を得ることができる。
前記の製造方法において、特定量の酸素を含有する雰囲気としては、純粋な酸素、酸化窒素又は空気等を酸素源として用いることができる。また、炭素に対して不活性な雰囲気としては、例えば、窒素、アルゴン、又はヘリウム等を単独で用いるか、あるいはそれらの混合物を用いることができる。
前記の原料ピッチに対して、芳香族化合物を添加する目的は、原料ピッチの流動性を向上させ微小球体化を容易にすること及び成形後のピッチ成形体からその添加剤を抽出除去させることにより成形体を多孔質とし、その後の工程の酸化による炭素質材料の構造制御ならびに焼成を容易にすることにある。このような添加剤としては、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、フェニルナフタレン、ベンジルナフタレン、メチルアントラセン、フェナンスレン、又はビフェニル等を単独で、又はそれらの2種以上の混合物を用いることができる。ピッチに対する添加量は、ピッチ100重量部に対し芳香族化合物10〜50重量部の範囲が好ましい。
ピッチと添加剤との混合は、均一な混合を達成するために、加熱して溶融状態で行うのが好ましい。ピッチと添加剤との混合物は、得られる球状活性炭又は表面改質球状活性炭の粒径(直径)を制御するため、粒径約0.01〜1mmの粒子に成形することが好ましい。成形は溶融状態で行ってもよく、また混合物を冷却後に粉砕する等の方法によってもよい。
ピッチと添加剤との混合物から添加剤を抽出除去するための溶剤としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタン等の脂肪族炭化水素、ナフサ、又はケロシン等の脂肪族炭化水素を主成分とする混合物、あるいはメタノール、エタノール、プロパノール、又はブタノール等の脂肪族アルコール類等が好適である。
このような溶剤でピッチと添加剤との混合物成形体から添加剤を抽出することによって、成形体の形状を維持したまま、添加剤を成形体から除去することができる。この際に、成形体中に添加剤の抜け穴が形成され、均一な多孔性を有するピッチ成形体が得られるものと推定される。
こうして得られた多孔性ピッチ成形体を、次いで不融化処理、すなわち酸化剤を用いて、好ましくは常温から300℃までの温度で酸化処理することにより、熱に対して不融性の多孔性不融性ピッチ成形体を得ることができる。ここで用いる酸化剤としては、例えば、酸素ガス(O)、あるいは酸素ガス(O)を空気や窒素等で希釈した混合ガスを挙げることができる。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭は、熱硬化性樹脂、あるいはピッチを原料として、例えば前記製造方法によって製造すると共に、直径が0.01〜1mmである。球状活性炭又は表面改質球状活性炭の直径が0.01mm未満になると、球状活性炭又は表面改質球状活性炭の外表面積が増加し、消化酵素等の有益物質の吸着が起こり易くなるので好ましくない。また、直径が1mmを越えると、球状活性炭又は表面改質球状活性炭の内部への毒性物質の拡散距離が増加し、吸着速度が低下するので好ましくない。直径は、好ましくは0.02〜0.8mmである。なお、本明細書で「直径がDl〜Duである」という表現は、JIS K 1474に準じて作成した粒度累積線図(平均粒子径の測定方法に関連して後で説明する)において、ふるいの目開きDl〜Duの範囲に対応するふるい通過百分率(%)が90%以上であることを意味する。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭は、ラングミュア(Langmuir)の吸着式により求められる比表面積(以下「SSA」と省略することがある)が1000m/g以上である。SSAが1000m/gより小さい球状活性炭又は表面改質球状活性炭では、毒性物質の吸着性能が低くなるので好ましくない。SSAは、好ましくは1000m/g以上である。SSAの上限は特に限定されるものではないが、嵩密度及び強度の観点から、SSAは、3000m/g以下であることが好ましい。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭において、特定細孔直径範囲内の細孔容積は特に限定されない。例えば、前記特公昭62−11611号公報には、細孔半径100〜75000オングストロームの空隙容積(すなわち、細孔直径20〜15000nmの細孔容積)が0.1〜1mL/gの表面改質球状活性炭からなる吸着剤が記載されているが、本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭においては、細孔直径20〜15000nmの細孔容積が0.1〜1mL/gであることも、あるいは0.1mL/g以下であることもできる。なお、細孔直径20〜1000nmの細孔容積が1mL/gを越えると消化酵素等の有用物質の吸着量が増加することがあるので、細孔直径20〜1000nmの細孔容積が1mL/g以下であることが好ましい。
なお、本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭においては、一層優れた選択吸着性を得る観点から、細孔直径7.5〜15000nmの細孔容積が0.25mL/g未満、特に0.2mL/g以下であることが好ましい。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる表面改質球状活性炭(すなわち、前記の球状活性炭を更に酸化処理及び還元処理することによって製造される生成物)では、官能基の構成において、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40〜1.10meq/gである。官能基の構成において、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40〜1.00meq/gの条件を満足すると、前記の選択吸着特性が向上し、特に前記の有毒物質の吸着能が高くなるので好ましい。官能基の構成において、全酸性基は0.40〜0.90meq/gであることが好ましく、全塩基性基は0.40〜1.00meq/gであることが好ましい。
本発明の吸着剤を肝腎疾患治療薬として用いる場合、その官能基の構成は、全酸性基が0.40〜1.00meq/g、全塩基性基が0.40〜1.10meq/g、フェノール性水酸基が0.20〜0.70meq/g、及びカルボキシル基が0.15meq/g以下の範囲にあり、且つ全酸性基(a)と全塩基性基(b)との比(a/b)が0.40〜2.5であり、全塩基性基(b)とフェノール性水酸基(c)とカルボキシル基(d)との関係〔(b+c)−d〕が0.60以上であることが好ましい。
本発明による経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭が有する各物性値、すなわち、平均粒子径、比表面積、細孔容積、全酸性基、及び全塩基性基は、以下の方法によって測定する。
(1)平均粒子径
球状活性炭又は表面改質球状活性炭についてJIS K 1474に準じて粒度累積線図を作成する。平均粒子径は、粒度累積線図において、横軸の50%の点の垂直線と粒度累積線との交点から、横軸に水平線を引いて交点の示すふるいの目開き(mm)を求めて、平均粒子径とする。
(2)比表面積(ラングミュアの式による比表面積の計算法)
ガス吸着法による比表面積測定器(例えば、MICROMERITICS社製「ASAP2010」)を用いて、球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料のガス吸着量を測定し、ラングミュアの式により比表面積を計算することができる。具体的には、試料である球状活性炭又は表面改質球状活性炭を試料管に充填し、300℃で減圧乾燥した後、乾燥後の試料重量を測定する。次に、試料管を−196℃に冷却し、試料管に窒素を導入し球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料に窒素を吸着させ、窒素分圧と吸着量の関係(吸着等温線)を測定する。
窒素の相対圧力をp、その時の吸着量をv(cm/g STP)とし、ラングミュアプロットを行う。すなわち、縦軸にp/v、横軸にpを取り、pが0.05〜0.3の範囲でプロットし、そのときの傾きをb(g/cm)とすると比表面積S(単位=m/g、)は下記の式により求められる。

ここで、MAは窒素分子の断面積で0.162nmを用いた。
(3)水銀圧入法による細孔容積
水銀ポロシメーター(例えば、MICROMERITICS社製「AUTOPORE 9200」)を用いて細孔容積を測定することができる。試料である球状活性炭又は表面改質球状活性炭を試料容器に入れ、2.67Pa以下の圧力で30分間脱気する。次いで、水銀を試料容器内に導入し、徐々に加圧して水銀を球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の細孔へ圧入する(最高圧力=414MPa)。このときの圧力と水銀の圧入量との関係から以下の各計算式を用いて球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の細孔容積分布を測定する。
具体的には、細孔直径22μmに相当する圧力(0.06MPa)から最高圧力(414MPa:細孔直径3nm相当)までに球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料に圧入された水銀の体積を測定する。細孔直径の算出は、直径(D)の円筒形の細孔に水銀を圧力(P)で圧入する場合、水銀の表面張力を「γ」とし、水銀と細孔壁との接触角を「θ」とすると、表面張力と細孔断面に働く圧力の釣り合いから、次式:
−πDγcosθ=π(D/2)・P
が成り立つ。従って
D=(−4γcosθ)/P
となる。
本明細書においては、水銀の表面張力を484dyne/cmとし、水銀と炭素との接触角を130度とし、圧力PをMPaとし、そして細孔直径Dをμmで表示し、下記式:
D=1.27/P
により圧力Pと細孔直径Dの関係を求める。例えば、本発明における細孔直径20〜1000nmの範囲の細孔容積とは、水銀圧入圧1.27MPaから63.5MPaまでに圧入された水銀の体積に相当する。
(4)回折強度比(R値)
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料を120℃で3時間減圧乾燥した後、アルミニウム試料板(35×50mm、t=1.5mmの板に20×18mmの穴をあけたもの)に充填し、グラファイトモノクロメーターにより単色化したCuKα線(波長λ=0.15418)を線源とし、反射式デフラクトメーター法により回折角(2θ)が15°、24°、及び35°のそれぞれの角度における回折強度I15、I24、I35を測定する。X線発生部及びスリットの条件は、印加電圧40kV、電流100mA、発散スリット=1/2°、受光スリット=0.15mm、散乱スリット=1/2°である。回折図形の補正には、ローレンツ偏光因子、吸収因子、原子散乱因子等に関する補正を行わず、標準物質用高純度シリコン粉末の(111)回折線を用いて回折角を補正した。
(5)全酸性基
0.05規定のNaOH溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料1gを添加し、48時間振とうした後、球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるNaOHの消費量である。
(6)全塩基性基
0.05規定のHCl溶液50mL中に、200メッシュ以下に粉砕した球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料1gを添加し、24時間振とうした後、球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料をろ別し、中和滴定により求められるHClの消費量である。
本発明の経口投与用吸着剤として用いる球状活性炭又は表面改質球状活性炭は、後述する実施例において示すように、肝疾患憎悪因子や腎臓病での毒性物質の吸着性に優れているにもかかわらず、有益物質である消化酵素等に対する吸着性が少ないという選択吸着性に優れているので、腎疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いるか、あるいは、肝疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いることができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用いることができる(「臨床腎臓学」朝倉書店、本田西男、小磯謙吉、黒川清、1990年版及び「腎臓病学」医学書院、尾前照雄、藤見惺編集、1981年版参照)。
また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
従って、本発明による経口投与用吸着剤を腎臓疾患治療薬として用いる場合には、前記の球状活性炭及び/又は表面改質球状活性炭を有効成分として含有する。本発明の経口投与用吸着剤を腎臓疾患治療薬又は肝臓疾患治療薬として用いる場合、その投与量は、投与対象がヒトであるかあるいはその他の動物であるかにより、また、年令、個人差、又は病状などに影響されるので、場合によっては下記範囲外の投与量が適当なこともあるが、一般にヒトを対象とする場合の経口投与量は1日当り1〜20gを3〜4回に分けて服用し、更に症状によって適宜増減することができる。投与形態は、散剤、顆粒、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、懸濁剤、スティック剤、分包包装体、又は乳剤等であることができる。カプセル剤として服用する場合は、通常のゼラチンの他に、必要に応じて腸溶性のカプセルを用いることもできる。錠剤として用いる場合は、体内でもとの微小粒体に解錠されることが必要である。更に他の薬剤であるアルミゲルやケイキサレートなどの電解質調節剤と配合した複合剤の形態で用いることもできる。
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
以下の実施例において、α−アミラーゼ吸着試験及びDL−β−アミノイソ酪酸吸着試験は以下の方法で実施し、選択吸着率は以下の方法で計算した。
(1)α−アミラーゼ吸着試験
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料0.125gを正確に量って共栓付三角フラスコにとる。一方、α−アミラーゼ(液化型)0.100gを正確に秤量して、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとした液(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間振り混ぜる。フラスコの内容物をろ孔0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し、はじめのろ液約20mLを除き、次のろ液約10mLを取って試料溶液とする。
一方、pH7.4のリン酸塩緩衝液を用いて同じ操作を行い、そのろ液を補正液とする。試料溶液及び補正液につき、pH7.4のリン酸塩緩衝液を対照とし、吸光度測定法により試験を行い、波長282nmにおける吸光度を測定する。試料溶液の吸光度と補正液の吸光度の差を試験吸光度とする。
検量線はα−アミラーゼ原液を0mL、25mL、50mL、75mL、及び100mLの量でメスフラスコに正確に分取し、pH7.4リン酸塩緩衝液で100mLにメスアップして波長282nmにおける吸光度を測定することにより作成した。
試験吸光度と検量線より、α−アミラーゼ残存量(mg/dL)を計算した。
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の量の依存性を測定するため、球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の量を0.500gとし、上記方法と同様の方法で試験吸光度を測定し、α−アミラーゼ残存量を計算した。
(2)DL−β−アミノイソ酪酸吸着試験
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料を乾燥した後、乾燥試料2.500gを正確に量って共栓付三角フラスコにとる。一方、DL−β−アミノイソ酪酸0.100gを正確に量り、pH7.4のリン酸塩緩衝液を加えて溶かし、正確に1000mLとした液(原液)50mLを、前記の共栓付三角フラスコに正確に加え、37±1℃で3時間振り混ぜる。フラスコの内容物をろ孔0.65μmのメンブランフィルターで吸引ろ過し、はじめのろ液約20mLを除き、次のろ液約10mLを取って試料溶液とする。
試料溶液0.1mLを試験管に正確に取り、pH8.0のリン酸塩緩衝液5mLを正確に加えて混合した後、フルオレスカミン0.100gを非水滴定用アセトン100mLに溶かした液1mLを正確に加えて混合した後で、15分間静置する。この液につき、蛍光光度法により試験を行い、励起波長390nm、及び蛍光波長475nmで蛍光強度を測定する。
DL−β−アミノイソ酪酸原液を0mL、15mL、50mL、75mL、及び100mLの量とpH7.4リン酸塩緩衝液とで100mLにして攪拌し、ろ過し、ろ液0.1mLを試験管に正確に取り、pH8.0のリン酸塩緩衝液5mLを正確に加えて混合した後、フルオレスカミン0.100gを非水滴定用アセトン100mLに溶かした液1mLを正確に加えて混合した後で、15分間静置する。これらの液につき、蛍光光度法により試験を行い、励起波長390nm、及び蛍光波長475nmで蛍光強度を測定し、検量線を作成する。最後にDL−β−アミノイソ酪酸の残存量(mg/dL)を上記検量線を用いて計算する。
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の量の依存性を測定するため、球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の量を0.500gとして上記方法と同様の方法で試験蛍光強度を測定し、DL−β−アミノイソ酪酸の残存量を計算した。
(3)選択吸着率
球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の使用量が0.500gの場合のα−アミラーゼ吸着試験におけるα−アミラーゼ残存量、及び同様に、球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料の使用量が0.500gの場合のDL−β−アミノイソ酪酸吸着試験におけるDL−β−アミノイソ酪酸残存量のそれぞれのデータに基づいて、以下の計算式:
A=(10−Tr)/(10−Ur)
(ここで、Aは選択吸着率であり、TrはDL−β−アミノイソ酪酸の残存量であり、Urはα−アミラーゼの残存量である)
から計算した。
【実施例1】
球状のフェノール樹脂(粒子径=10〜700μm:商品名「高機能真球樹脂マリリンHF500タイプ」;群栄化学株式会社製)を目開き250μmの篩で篩分し、微粉末を除去した後、微粉除去した球状のフェノール樹脂150gを目皿付き石英製縦型反応管に入れ、窒素ガス気流下1.5時間で350℃まで昇温し、更に900℃まで6時間で昇温した後、900℃で1時間保持して、球状炭素質材料68.1gを得た。その後、窒素ガス(3NL/min)と水蒸気(2.5NL/min)との混合ガス雰囲気中、900℃で賦活処理を行った。球状活性炭の充填密度が0.5mL/gまで減少した時点で賦活処理を終了とし、球状活性炭29.9g(収率19.9wt%)を得た。
得られた球状活性炭の回折角(2θ)15°における回折強度は743cpsであり、回折角(2θ)35°における回折強度は90cpsであり、回折角(2θ)24°における回折強度は473cpsであった。従って、回折強度比(R値)は1.71であった。
得られた球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
図1の曲線Cは、実施例1で得られた球状活性炭を120℃で2時間真空乾燥した後で、前記の「回折強度比(R値)」の測定方法と同様の手順で測定して得られた回折曲線である。
【実施例2】
実施例1で用いたフェノール樹脂(群栄化学株式会社製)に代えて、住友ベークライト株式会社製の球状のフェノール樹脂(平均粒径=700μm:商品名「フェノール樹脂球状硬化物 ACSシリーズ PR−ACS−2−50C」)を使用したこと以外は、実施例1に記載の方法を繰り返して、球状活性炭を得た。収率は26.5%であった。
得られた球状活性炭の回折角(2θ)15°における回折強度は788cpsであり、回折角(2θ)35°における回折強度は72cpsであり、回折角(2θ)24°における回折強度は492cpsであった。従って、回折強度比(R値)は1.71であった。
得られた球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
【実施例3】
実施例1で得られた球状活性炭を更に流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素との混合ガス雰囲気下470℃で3時間15分間酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の回折角(2θ)15°における回折強度は627cpsであり、回折角(2θ)35°における回折強度は66cpsであり、回折角(2θ)24°における回折強度は400cpsであった。従って、回折強度比(R値)は1.68であった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
【実施例4】
出発材料として、実施例2で得られた球状活性炭を使用したこと以外は、実施例3に記載の方法を繰り返して、表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の回折角(2θ)15°における回折強度は702cpsであり、回折角(2θ)35°における回折強度は74cpsであり、回折角(2θ)24°における回折強度は428cpsであった。従って、回折強度比(R値)は1.77であった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
【実施例5】
フェノール樹脂に替えてイオン交換性樹脂(スチレン系;有効径=0.50〜0.65mm:商品名「Amberlite15WET」;オルガノ株式会社製)を使用したこと以外は、実施例3に記載の方法を繰り返して、表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の回折角(2θ)15°における回折強度は765cpsであり、回折角(2θ)35°における回折強度は82cpsであり、回折角(2θ)24°における回折強度は485cpsであった。従って、回折強度比(R値)は1.69であった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
また、得られた表面改質球状活性炭の表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(50倍)を図2に示す。更に、得られた表面改質球状活性炭の断面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(200倍)を図3に示す。
比較例1
石油系ピッチ(軟化点=210℃;キノリン不溶分=1重量%以下;H/C原子比=0.63)68kgと、ナフタレン32kgとを、攪拌翼のついた内容積300Lの耐圧容器に仕込み、180℃で溶融混合を行った後、80〜90℃に冷却して押し出し、紐状成形体を得た。次いで、この紐状成形体を直径と長さの比が約1〜2になるように破砕した。
0.23重量%のポリビニルアルコール(ケン化度=88%)を溶解して93℃に加熱した水溶液中に、前記の破砕物を投入し、攪拌分散により球状化した後、前記のポリビニルアルコール水溶液を水で置換することにより冷却し、20℃で3時間冷却し、ピッチの固化及びナフタレン結晶の析出を行い、球状ピッチ成形体スラリーを得た。
大部分の水をろ過により除いた後、球状ピッチ成形体の約6倍重量のn−ヘキサンでピッチ成形体中のナフタレンを抽出除去した。このようにして得た多孔性球状ピッチを、流動床を用いて、加熱空気を通じながら、235℃まで昇温した後、235℃にて1時間保持して酸化し、熱に対して不融性の多孔性球状酸化ピッチを得た。得られた多孔性球状酸化ピッチの酸素含有率は14重量%であった。
続いて、多孔性球状酸化ピッチを、流動床を用い、50vol%の水蒸気を含む窒素ガス雰囲気中900℃で170分間賦活処理して球状活性炭を得、更にこれを流動床にて、酸素濃度18.5vol%の窒素と酸素との混合ガス雰囲気下で470℃で3時間15分間、酸化処理し、次に流動床にて窒素ガス雰囲気下900℃で17分間還元処理を行い、表面改質球状活性炭を得た。
得られた表面改質球状活性炭の回折角(2θ)15°における回折強度は647cpsであり、回折角(2θ)35°における回折強度は84cpsであり、回折角(2θ)24°における回折強度は546cpsであった。従って、回折強度比(R値)は1.22であった。
得られた表面改質球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。
図1の曲線Aは比較例1で得られた表面改質球状活性炭を120℃で2時間真空乾燥した後に、前記「回折強度比(R値)」の測定方法と同様の手順で測定して得られた回折曲線であり、図1の曲線Bは、比較例1で得られた表面改質球状活性炭200mgにイオン交換水2〜3滴を滴下してペースト状にし、そのペースト状表面改質球状活性炭に関して同様に測定して得られた回折曲線である。
また、得られた表面改質球状活性炭の表面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(50倍)を図4に示す。更に、得られた表面改質球状活性炭の断面構造を示す走査型電子顕微鏡写真(200倍)を図5に示す。
比較例2
球状活性炭の酸化処理及び還元処理を行わないこと以外は、比較例1に記載の方法を繰り返して、球状活性炭を得た。
得られた球状活性炭の回折角(2θ)15°における回折強度は651cpsであり、回折角(2θ)35°における回折強度は81cpsであり、回折角(2θ)24°における回折強度は548cpsであった。従って、回折強度比(R値)は1.22であった。
得られた球状活性炭の特性を表1及び表2に示す。

前記表1に記載の「細孔容積(Hg pore)」は、水銀圧入法により求めた細孔直径20〜1000nmの範囲の細孔容積に相当する。
前記表1に記載の「SSA(BET式)」は、参考として記載した比表面積の測定値であり、以下の方法によって測定した。
ラングミュアの式による比表面積の測定と同様にして−196℃で球状活性炭試料又は表面改質球状活性炭試料に窒素を吸着させ、窒素分圧と吸着量の関係(吸着等温線)を測定する。
窒素の相対圧力をp、その時の吸着量をv(cm/g STP)とし、BETプロットを行う。すなわち、縦軸にp/(v(1−p))、横軸にpを取り、pが0.05〜0.3の範囲でプロットし、そのときの傾きb(単位=g/cm)、及び切片c(単位=g/cm)から、比表面積S(単位=m/g)は下記の式により求められる。

ここで、MAは窒素分子の断面積で0.162nmを用いた。

薬理効果確認試験1:腎疾患の改善作用
腎臓の3/4を摘出して作製した腎不全モデルラットを用い、本発明の経口投与用吸着剤の投与による腎不全に対する薬理効果確認試験を行った。試料としては、前記実施例1及び実施例3で得られた経口投与用吸着剤を使用した。確認試験は、モデルラット作製から6週間経過時点で群間に偏りのないように、対照群(6匹;以下C1群と呼ぶ)、実施例1の経口投与用吸着剤投与群(6匹;以下P1群と呼ぶ)及び実施例3の経口投与用吸着剤投与群(6匹;以下与P2群と呼ぶ)に分けた。
各群に粉末飼料を与えた。各群に対する給餌量はC1群の2〜3日間の平均摂餌量を基準にして決めた。P1群及びP2群に対しては、前記C1群と同様の粉末飼料に、経口投与用吸着剤5重量%を追加混合して与えた。経口投与用吸着剤の投与を開始してから8週目に、血清中のクレアチニン、尿素窒素、尿中のクレアチニン、クレアチニン・クリアランス、及び蛋白排泄量を測定した。なお、腎臓を摘出していない正常ラット(6匹)についても同様の実験を行った(正常群)。
結果を図6〜図9に示す。血清中のクレアチニン(図6)及び尿素窒素(図7)は、C1群に比してP1群及びP2群において、投与開始から8週間経過時でそれぞれ有意に低値を示した。腎機能の指標であるクレアチニン・クリアランス(図8)は、C1群において低下が認められ、P1群及びP2群においては、C1群で認められた低下に対して有意な抑制が認められた。一方、尿細管機能の指標となる蛋白排泄量(図9)は、C1群で増加が認められたが、P1群及びP2群においては、その増加を有意に抑制することが認められた。なお、尿中のクレアチニンついても同様の結果が得られた。
以上の結果から、本発明の経口投与用吸着剤は、慢性腎不全の進行を抑制、あるいは改善し、腎機能の低下を防止及び維持することができることが明らかとなった。
薬理効果確認試験2:肝疾患の改善作用
四塩化炭素誘発肝疾患モデルラットを用い、本発明の経口投与用吸着剤の投与による肝疾患に対する薬理効果確認試験を行った。試料としては、前記実施例1及び実施例3で得られた経口投与用吸着剤を用いた。
具体的には、Sprague−Dauleyラット(日本クレア製;雄性7週齢)を用い、四塩化炭素を12mg/kgの量で、週2回の割合にて、本薬理効果確認試験の終了時まで(約4ヵ月間)皮下投与を継続した。四塩化炭素の投与を開始してから2ヶ月後に、肝機能の低下が確認されたので、病態が群間に偏りのないように、対照群(6匹;以下C2群と呼ぶ)、実施例1の経口投与用吸着剤投与群(6匹;以下Q1群と呼ぶ)及び実施例3の経口投与用吸着剤投与群(6匹;以下与Q2群と呼ぶ)に分けた。
各群に粉末飼料を与えた。各群に対する給餌量はC2群の2〜3日間の平均摂餌量を基準にして決めた。Q1群及びQ2群に対しては、前記C2群と同様の粉末飼料に、経口投与用吸着剤5重量%を追加混合して、群分け後2ヶ月間投与した。四塩化炭素を投与しない正常ラットについても同様の実験を行った(正常群)。
経口投与用吸着剤投与を開始してから投与実験が完了するまでの約2ヶ月間にわたり、ICG(Indocyanine green:インドシアニングリーン)、GOT(glutamic−oxaloacetic transaminase;グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)、及びGPT(glutamic−pyruvic transaminase;グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ)を測定した。経口投与用吸着剤の投与開始から2ヶ月後の結果を図10(ICG)、図11(GOT)、及び図12(GPT)に示す。肝実質機能を反映するICGテストを比較すると、C2群に比して、Q1群及びQ2群は、いずれも有意に低値を示した。更に、逸脱酵素であるGOT及びGPTでも、C2群に比して、Q1群及びQ2群は、いずれも有意に低値を示した。
以上の結果から、本発明の経口投与用吸着剤は、肝機能の低下を改善することができることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
本発明による経口投与用吸着剤は、特異な細孔構造を有しているので、経口服用した場合に、消化酵素等の体内の有益成分の吸着性が少ないにもかかわらず、有毒な毒性物質(Toxin)の消化器系内における吸着性能が優れるという選択吸着特性を有し、従来の経口投与用吸着剤と比較すると、前記の選択吸着特性が著しく向上する。
本発明の経口投与用吸着剤は、腎疾患の治療用又は予防用経口投与用吸着剤として用いるか、あるいは、肝疾患の治療用又は予防用吸着剤として用いることができる。
腎疾患としては、例えば、慢性腎不全、急性腎不全、慢性腎盂腎炎、急性腎盂腎炎、慢性腎炎、急性腎炎症候群、急性進行型腎炎症候群、慢性腎炎症候群、ネフローゼ症候群、腎硬化症、間質性腎炎、細尿管症、リポイドネフローゼ、糖尿病性腎症、腎血管性高血圧、若しくは高血圧症候群、あるいは前記の原疾患に伴う続発性腎疾患、更に、透析前の軽度腎不全を挙げることができ、透析前の軽度腎不全の病態改善や透析中の病態改善にも用いることができる(「臨床腎臓学」朝倉書店、本田西男、小磯謙吉、黒川清、1990年版及び「腎臓病学」医学書院、尾前照雄、藤見惺編集、1981年版参照)。
また、肝疾患としては、例えば、劇症肝炎、慢性肝炎、ウイルス性肝炎、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変、肝癌、自己免疫性肝炎、薬剤アレルギー性肝障害、原発性胆汁性肝硬変、振せん、脳症、代謝異常、又は機能異常を挙げることができる。その他、体内に存在する有害物質による病気、すなわち、精神病等の治療にも用いることができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径が0.01〜1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上であり、そして式(1):
R=(I15−I35)/(I24−I35) (1)
〔式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕
で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤。
【請求項2】
直径が0.01〜1mmであり、ラングミュアの吸着式により求められる比表面積が1000m/g以上であり、全酸性基が0.40〜1.00meq/gであり、全塩基性基が0.40〜1.10meq/gであり、そして式(1):
R=(I15−I35)/(I24−I35) (1)
〔式中、I15は、X線回折法による回折角(2θ)が15°における回折強度であり、I35は、X線回折法による回折角(2θ)が35°における回折強度であり、I24は、X線回折法による回折角(2θ)が24°における回折強度である〕
で求められる回折強度比(R値)が1.4以上である表面改質球状活性炭からなることを特徴とする、経口投与用吸着剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、腎疾患治療又は予防剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の経口投与用吸着剤を有効成分とする、肝疾患治療又は予防剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の経口投与用吸着剤と薬剤学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、腎疾患治療又は予防剤。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の経口投与用吸着剤と薬剤学的に許容可能な担体又は希釈剤とを含む、肝疾患治療又は予防剤。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の経口投与用吸着剤の有効量を、腎疾患治療又は予防が必要な患者に投与することを含む、腎疾患治療又は予防方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の経口投与用吸着剤の有効量を、肝疾患治療又は予防が必要な患者に投与することを含む、肝疾患治療又は予防方法。
【請求項9】
腎疾患治療又は予防剤の製造のための、請求項1又は2に記載の経口投与用吸着剤の使用。
【請求項10】
肝疾患治療又は予防剤の製造のための、請求項1又は2に記載の経口投与用吸着剤の使用。

【国際公開番号】WO2004/039380
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548106(P2004−548106)
【国際出願番号】PCT/JP2003/014011
【国際出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【特許番号】特許第3672200号(P3672200)
【特許公報発行日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】