説明

経皮吸収製剤の拡散測定セル、それを用いた拡散測定装置及び拡散測定方法

【課題】 本発明は、皮膚表面の気泡を容易に取り除くことができ、容易且つ短時間で経皮吸収製剤の拡散性(経皮吸収性)を測定することができる経皮吸収製剤の拡散測定セル、それを用いた拡散測定装置及び拡散測定方法を提供する。
【解決手段】 側壁中間部に皮膚及び経皮吸収製剤を設置するための開口部を有する、レセプター液を充満するためのレセプター室が形成されているセル本体と、皮膚及び経皮吸収製剤を開口部に固定するための蓋体よりなり、セル本体にはレセプター室の上部からセル本体の外側に連通しているレセプター液排出路とレセプター室の側壁下端部付近からセル本体の外側に連通しているレセプター液注入路が形成されていることを特徴とする経皮吸収製剤の拡散測定セル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮吸収製剤の薬剤が皮膚を透過して拡散する状態を測定する拡散測定セル、それを用いた拡散測定装置及び拡散測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の物質が、あるメンブレンに吸収され、メンブレンの一方から他方に移動する速度を測定する装置として、一般にフランツセルが使用されていた。
フランツセルは、上側容器と下側容器の間にメンブレンを挟持し、上側容器に測定対象物質を供給し、下側容器にレセプター液を供給し、所定時間後にレセプター液の測定対象物質の濃度を測定することにより拡散速度を測定する装置である。
【0003】
しかし、ニトログリセリンテープ、ISDNテープ、インドメタシンゲル、プレドニゾロン軟膏等の経皮吸収製剤を人体に貼付する場合は、経皮吸収製剤に含まれる薬剤が人体に吸収される状態を経時的に把握しておくことは、治療上では必須の要件であるが、上記フランツセルのみでは薬剤の拡散速度の長時間にわたる経時的変化を測定することはできなかった。
【0004】
測定対象物質の拡散状態を経時的に測定するために、必要な時にレセプター液を採取しうる、図7に示したフランツ型セルである拡散セルが提案されている。図7は提案されている拡散セルの一例を示す断面模式図である。
【0005】
図中100は円筒状で上端部にフランジを有する容器本体であり、200は円筒状であり、下端部にフランジを有する上部容器である。容器本体100の周囲には、下端部付近に保温液注入口102が設けられ、上端部付近に保温液排出口103が設けられているジャケット101が設置されている。又、容器本体100の下端部付近にはレセプター液注入口104が連通されると共に容器本体100の中間部にはサンプル採取するためのサンプル採取部105が枝状に設置されている。サンプル採取部105には、サンプル採取用のチューブ300が、その先端が容器本体100の略中央に達するように差し込まれている。
【0006】
上記拡散セルで測定対象物質の拡散状態を経時的に測定するには、最初に、回転子400を容器本体100の中に供給し、容器本体100のフランジと上部容器200のフランジでメンブレン500を挟持する。次に、レセプター液注入口104からレセプター液を注入して容器本体100内に充満させると共に回転子400を回転させてレセプター液を攪拌する。又、保温液注入口102から所定温度に加熱された保温媒体をジャケット101に注入し、上部容器200側のメンブレン500上に測定対象物質を供給する。そして、所定時間毎にレセプター液注入口104から所定量のレセプター液を注入して測定対象物質が拡散しているレセプター液をサンプル採取用のチューブ300からあふれ出させ、得られたサンプル液の測定対象物質の濃度を測定し、拡散状態を経時的に測定する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】米国特許第5198109号公報
【0007】
上記拡散セルは、測定対象物質の拡散状態を経時的に測定することができるが、容器本体100の上面にメンブレンを挟持した後、容器本体100の下端部からレセプター液を注入して容器本体100内に充満させるのでメンブレンの下面側に気泡が残り、メンブレンとレセプター液との接触面積が一定せず正確なデータが得られなかった。
【0008】
又、この気泡を取り除くのは非常に困難であり、長い時間が必要であった。そのため測定に多くの労力と時間が必要であり、多数の測定を行うことは至難の業であった。経皮吸収製剤の開発に於いては、薬品の経皮吸収性の測定は必須要件であり、多くの測定を同時に行う必要があり、容易に経皮吸収性の測定を行うことができる拡散測定セルの開発が望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記欠点に鑑み、皮膚表面の気泡を容易に取り除くことができ、容易且つ短時間で経皮吸収製剤の拡散性(経皮吸収性)を測定することができる経皮吸収製剤の拡散測定セル、それを用いた拡散測定装置及び拡散測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の経皮吸収製剤の拡散測定セルは、側壁中間部に皮膚及び経皮吸収製剤を設置するための開口部を有する、レセプター液を充満するためのレセプター室が形成されているセル本体と、皮膚及び経皮吸収製剤を開口部に固定するための蓋体よりなり、セル本体にはレセプター室の上部からセル本体の外側に連通しているレセプター液排出路とレセプター室の側壁下端部付近からセル本体の外側に連通しているレセプター液注入路が形成されていることを特徴とする。
【0011】
上記拡散測定セルで測定する際には、経皮吸収製剤の拡散性を測定するのであるから、経皮吸収製剤を貼付する人、動物等の体温と略同じ温度の恒温槽に拡散測定セルを立設する必要があり、多数の測定を同時に行うのが好ましいので、セル本体の形状は略立方体又は直方体が好ましい。
【0012】
蓋体は皮膚及び経皮吸収製剤を開口部に固定しうるものであれば、特に限定されるものではないが、皮膚及び経皮吸収製剤は柔らかいので、開口部に変形することなく確実の固定するためには、皮膚及び経皮吸収製剤を開口部に保持するための保持部材と、保持部材を開口部に押圧し固定するための蓋本体からなることが好ましい。
【0013】
又、蓋本体で保持部材を開口部に容易且つ確実に押圧し固定するには、蓋本体はセル本体の側壁に螺合可能になされていることが好ましい。
【0014】
上記セル本体及び蓋体(蓋本体と保持部材)は、拡散セルに使用されている従来公知の任意の材料で形成されればよいが、製造のし易さから、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましい。この熱可塑性樹脂はレセプター液に溶出可能な化合物を実質的に含有していないものが好ましい。
又、セル本体はレセプター室、レセプター液排出路及びレセプター液注入路が外から見えるように透明熱可塑性樹脂で形成されているのが好ましい。
【0015】
レセプター室の形状は、特に限定されるものではないが、レセプター液の測定対象の薬剤が均一になるように攪拌する必要があるので円筒状が好ましく、その上部はレセプター液排出路に向かって次第に細くなるようにラッパ状になされているのが好ましい。
【0016】
又、レセプター室の側壁中間部には皮膚及び経皮吸収製剤を設置するための開口部が形成されている。開口部の形状は特に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、四角形等が挙げられる。
【0017】
上記皮膚は、経皮吸収製剤の拡散性を測定するために従来から一般に使用されている皮膚であれば特に限定されず、例えば、人の皮膚、ラット、マウス、ミニブタ、猿、蛇、ウサギ、モルモット等の動物の皮膚、人工皮膚、透析膜、シリコン膜等が挙げられる。
【0018】
セル本体にレセプター室、レセプター液排出路及びレセプター液注入路を形成するには、セル本体にレセプター室、レセプター液排出路及びレセプター液注入路用の凹部を穿設し、必要部分を埋設する方法で形成されるのが好ましい。
【0019】
上記拡散測定セルで測定する際には、経皮吸収製剤の拡散性を測定するのであるから、人の体温と略同じ温度の恒温槽に拡散測定セルを立設する必要があるので、レセプター液排出路及びレセプター液注入路の開口部はセル本体の上壁に開口していることが好ましい。
【0020】
又、レセプター液排出路とレセプター液排出用チューブ及びレセプター液注入路とレセプター液注入用チューブは容易且つ確実に液密に接続されるのが好ましいので、レセプター液排出路及びレセプター液注入路の開口部にはねじ溝が切られており、レセプター液排出用チューブ又はレセプター液注入用チューブの端部に接続部材を設置し、この接続部材が水密に螺合可能になされていることが好ましい。
【0021】
本発明の経皮吸収製剤の拡散測定装置は、レセプター液供給装置、請求項1記載の拡散測定セル、拡散測定セル内に収納されている回転子、拡散測定セルを収納する恒温槽、該恒温槽の下に設置され、回転子を回転させるための回転装置及び経皮吸収製剤からレセプター液に拡散した薬剤溶液を分取、貯蔵するレセプター液分取装置よりなり、レセプター液供給装置と拡散測定セルのレセプター液注入路がレセプター液供給用チューブにより連通され、拡散測定セルのレセプター液排出路とレセプター液分取装置がレセプター液排出用チューブにより連通されていることを特徴とする。
【0022】
拡散測定セルで測定する際には、所定時間毎に所定量のレセプター液を供給する必要があるので、レセプター液供給装置は、レセプター液貯蔵容器と所定量のレセプター液を輸送しうるポンプよりなり、レセプター液貯蔵容器とポンプが輸液チューブで連通されると共に、ポンプがレセプター液供給用チューブに連通されていることが好ましい。
【0023】
レセプター液排出用チューブ及びレセプター液注入用チューブの内径は大きくなると、経皮吸収製剤からレセプター室内のレセプター液に拡散した薬剤がチュ−ブ内のレセプター液に拡散し、測定精度が低下するので小さいほうが好ましく、一般に0.2〜5mmであり、好ましくは0.5〜2mmである。
【0024】
レセプター液排出用チューブの長さは長くなると、経皮吸収製剤の薬剤が拡散したレセプター液をレセプター液分取装置に輸液して測定する際に、多量のレセプター液をレセプター室に輸液する必要があり、レセプター室内のレセプター液薬剤濃度が薄まり、測定精度が低下するので、短いほうが好ましく、一般に20〜100cmであり、好ましくは30〜50cmである。
【0025】
又、本発明の拡散測定装置においては、多数の測定が同時にできるのが好ましいので、一つのレセプター液供給装置と一つの拡散測定セルが連通され、複数の拡散測定セルが設置されるのが好ましい。
【0026】
レセプター液分取装置はレセプター液に拡散した薬剤の濃度を測定するために時間を変えてレセプター液を分取貯蔵する装置である。フラクションコレクターと原理的に同一の機能を有する装置であれば使用しうる。
【0027】
上記レセプター液分取装置においては、輸液されてきた経皮吸収製剤の薬剤が拡散したレセプター液をレセプター液分取装置のサンプルセルに貯蔵し、次いで、濃度測定のための装置(例えば高速液体クロマトグラフ(HPLC)、ガスクロマトグラフ等)に供される。
【0028】
例えば、輸液されてきた経皮吸収製剤の薬剤が拡散したレセプター液を分取したサンプルセルをHPLCのサンプルホルダーに設置してHPLCにより薬剤濃度を測定する。
【0029】
本発明の経皮吸収製剤の拡散測定方法は、
(1)レセプター室内に回転子が収納されている、請求項1記載の拡散測定セルを開口部が上向きになるように載置し、皮膚及び経皮吸収製剤を皮膚がレセプター室側になるように蓋体で開口部に固定する第1工程、
(2)皮膚及び経皮吸収製剤が縦向きになるように、拡散測定セルを恒温槽に収納し、レセプター液をレセプター室に充満する第2工程、
(3)恒温槽内でレセプター液を所定温度に保持すると共に回転子を回転し、経皮吸収製剤から薬剤をレセプター液に拡散させる第3工程、及び、
(4)所定時間毎に、レセプター液をレセプター室に輸液することにより、経皮吸収製剤の薬剤が拡散したレセプター液をレセプター液分取装置に輸液し、レセプター液分取装置内の分取セルに薬物溶液を分取する第4工程からなることを特徴とする。
【0030】
上記第1工程は、レセプター室内に回転子が収納されている、請求項1記載の拡散測定セルを開口部が上向きになるように載置し、皮膚及び経皮吸収製剤を皮膚がレセプター室側になるように蓋体で開口部に固定する工程である。
【0031】
先ず最初にレセプター室内に回転子を収納しておき、拡散測定セルを開口部が上向きになるように載置し、開口部をふさぐように皮膚及び経皮吸収製剤を、皮膚がレセプター室側になるように蓋体で開口部に固定する。
【0032】
経皮吸収製剤が粘着テープ形状のものは、皮膚に直接貼付すればよいが、ゲル状、軟膏状の流動性を有する場合は合成樹脂シート等のシート基材に塗布して貼付するのが好ましい。
【0033】
蓋体が蓋本体と保持部材よりなる場合は、開口部をふさぐように皮膚及び経皮吸収製剤を載置し、その上に保持部材を置いて、皮膚及び経皮吸収製剤を仮固定し、次いで、蓋本体で押圧し固定する。又、保持部材に皮膚及び経皮吸収製剤を仮固定した後、皮膚及び経皮吸収製剤で開口部をふさぐように、皮膚及び経皮吸収製剤が仮固定された保持部材を載置し、蓋本体で押圧し固定してもよい。この場合、蓋本体をセル本体の側壁に螺合しても、皮膚及び経皮吸収製剤は保持部材で仮固定されているのでねじれたり皺がよることがない。
【0034】
第2工程は、皮膚及び経皮吸収製剤が縦向きになるように拡散測定セルを恒温槽に収納し、レセプター液をレセプター室に充満する工程である。即ち、セル本体の上壁が上になるように拡散測定セルを恒温槽に収納する。レセプター室にレセプター液を充満するには、特に多くの拡散セルを用いる同時測定を行うには、ポンプによりレセプター液を供給するのが好ましい。
【0035】
尚、拡散測定セルを恒温槽に収納する前に、レセプター液供給装置と拡散測定セルのレセプター液注入路をレセプター液供給用チューブにより連通し、拡散測定セルのレセプター液排出路とレセプター液分取装置をレセプター液排出用チューブにより連通しておくのが好ましい。
【0036】
皮膚及び経皮吸収製剤は縦向きに設置されているので、レセプター液を充満する際に皮膚表面に気泡が付着することがない。例え、皮膚表面に気泡が付着したとしても拡散測定セルを振動することによって、容易に気泡を除去することができる。
【0037】
第3工程は、恒温槽内でレセプター液を所定温度に保持すると共に回転子を回転し、経皮吸収製剤から薬剤をレセプター液に拡散させる工程である。経皮吸収製剤中の薬剤の拡散速度を測定するのであるから、レセプター液は経皮吸収製剤を貼付する対象の体温と略同一に保持されるのが好ましい。又、回転子はレセプター室内のレセプター液を攪拌し、レセプター液の薬剤濃度を均一にする。回転子の回転は、一般に、レセプター室(拡散測定セル、恒温槽)の下に設置された回転装置により回転される。
【0038】
第4工程は、所定時間(一般に、1〜4時間)毎に、レセプター液をレセプター室に輸液することにより、経皮吸収製剤の薬剤が拡散したレセプター液をレセプター液分取装置に輸液し、レセプター液分取装置で輸液されてきたレセプター液をサンプルセルに分取、貯蔵する工程である。
【0039】
測定するために、レセプター室に輸液する際には、最初にレセプター液排出用チューブ内に残存していたレセプター液が輸液されるので、レセプター室に輸液するレセプター液の量は少なくなると、レセプター室のレセプター液が輸液されず、逆に多くなると、レセプター室内のレセプター液薬剤濃度が薄まり、測定精度が低下するので、1回測定するために、レセプター室に輸液するレセプター液の量は0.05〜2.0cm3 が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0cm3 である。
【0040】
尚、レセプター液をレセプター液分取装置に輸液し、サンプルセルに分取するに当っては、レセプター液排出用チューブから最初にサンプルセルに送液される液はチューブ内に存在した液でありレセプター室内の濃度を有する液ではない。それゆえレセプター液排出用チューブの総体積に相当する液を最初に廃棄した後の液をサンプルセルに分取する必要がある。
【発明の効果】
【0041】
本発明の経皮吸収製剤の拡散測定セルの構成は上述の通りであるから、拡散測定セルに皮膚及び経皮吸収製剤を容易に設置することができ、皮膚表面に気泡が付着することなく、短時間で容易にレセプター室のレセプター液を充満することができる。
従って、本発明の経皮吸収製剤の拡散測定装置は、経皮吸収製剤の拡散状態を容易に測定することができ、且つ多数の測定を同時に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
次に、本発明を図面を参照して説明する。図1は本発明のセル本体の一例を示す縦断面図であり、図2は図1におけるA−A断面図である。
【0043】
図中1は、透明塩化ビニル樹脂からなり、略直方体のセル本体である。セル本体1にはレセプター液を充満するためのレセプター室11が形成されている。レセプター室11は底面が平らで円筒状であり、その上部は次第に細くなるようにラッパ状になされており、その先端にレセプター液排出路12が連通されている。レセプター液排出路12はセル本体1の上壁に開口しており、開口部付近は拡開され、螺子溝121が切られている。
【0044】
レセプター室11の側壁下端部付近にはレセプター液注入路13が連通されており、レセプター液注入路13の他端はセル本体1の上壁に開口しており、開口部付近は拡開され、螺子溝131が切られている。
【0045】
14はセル本体11の側壁からレセプター室11に向かって穿設された、蓋体本体21を固定するための略円形の凹部であり、凹部14の側壁には螺子溝141が切られている。レセプター室11の側壁中間部には、皮膚及び経皮吸収製剤を設置するための開口部15が凹部14に向かって穿設されている。尚、16は凹部14の底部に立設された保持部材22の回転防止ピンである。
【0046】
図3は本発明の拡散測定セル7の開口部に皮膚及び経皮吸収製剤を設置した状態の一例を示す縦断面図であり、図4は図3におけるB−B断面図である。図5(イ)は保持部材の一例を示す正面図であり、(ロ)は背面図であり、(ハ)は側面図である。
【0047】
図中2は蓋体であり、蓋体2は蓋本体21と保持部材22よりなる。保持部材22は正面視略円形の板状体221であり、その大きさは凹部14に嵌入可能に、凹部14と略同一大きさである。板状体221には中心部に、開口部15と略同一形状の貫通孔223が同心円状に穿設され、その周囲であって、蓋本体21側に同心円状に凸部222が形成されている。
【0048】
蓋本体21はその周囲に螺子溝211が切られている円筒状体であり、その先端部は、保持部材22の貫通孔223に嵌入可能な凸部212、保持部材22の凸部222が嵌入可能な凹部213及び保持部材22の凸部222の周囲の凹部に嵌入可能な凸部214が中心部から円周方向に順次同心円状に形成されている。
【0049】
皮膚及び経皮吸収製剤5で開口部15をふさぎ、保持部材22で仮固定した後、蓋本体21の螺子溝211を凹部14の螺子溝141に螺合することにより固定されている。
【0050】
3はレセプター液注入用チューブであり、その先端部に接続部材31が接続されており、接続部材31の周囲に螺子溝32が切られている。接続部材31をレセプター液注入路13の開口部付近に切られた螺子溝131に螺合することにより、水密にレセプター液注入用チューブ3とレセプター液注入路13が連通されている。
【0051】
4はレセプター液排出用チューブであり、その先端部に接続部材41が接続されており、接続部材41の周囲に螺子溝42が切られている。接続部材41をレセプター液排出路12の開口部付近に切られた螺子溝121に螺合することにより、水密にレセプター液排出用チューブ4とレセプター液排出路12が連通されている。尚、6はレセプター室11に供給された回転子である。
【0052】
本発明の拡散測定装置の一例を示す模式図である。図中8はレセプター液供給装置であり、レセプター液供給装置8はレセプター液貯蔵容器81と所定量のレセプター液を輸送しうるポンプ82よりなり、レセプター液貯蔵容器81とポンプ82が輸液チューブ83で連通されると共に、ポンプ82がレセプター液供給用チューブ3に連通されている。又、レセプター液貯蔵容器81にはレセプター液87が貯蔵されている。
【0053】
7は拡散測定セルであり、セル本体1の上壁が上になるように(皮膚及び経皮吸収製剤5が縦向きになるように)恒温槽84内に収納され、レセプター室11内のレセプター液の温度が一定に保たれている。85は、恒温槽84の下側に設置された回転装置であり、レセプター室11内の回転子6が回転可能に設置されている。複数の拡散測定セル7を設置し、複数の濃度測定を同時に行う場合は複数の回転子6を同時に回転しうる回転装置(例えば、12連スターラー)が使用される。又、拡散測定セル7のレセプター液排出路12とレセプター液分取装置86はレセプター液排出用チューブ4により連通されている。
【0054】
経皮吸収製剤からレセプター液に拡散した薬剤濃度を測定するには、まず、図3及び4に示したように、拡散測定セル7に皮膚及び経皮吸収製剤5を設置し、図6に示したようにセル本体1の上壁が上になるように(皮膚及び経皮吸収製剤5が縦向きになるように)恒温槽84内に収納する。次いで、ポンプ82を作動させ、レセプター液貯蔵容器81中のレセプター液87をレセプター室11に輸液し、レセプター室11をレセプター液で充満し、回転子6を回転しレセプター液を攪拌しながら経皮吸収製剤中の薬剤をレセプター液に拡散させる。そして、所定時間毎に、ポンプ82を作動させ、レセプター液貯蔵容器81中の所定量のレセプター液をレセプター室11に輸液し、レセプター室11から押出されレセプター液分取装置86に供給されたレセプター液をサンプルセルに分取、貯蔵する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のセル本体の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】本発明の拡散測定セルの開口部に皮膚及び経皮吸収製剤を設置した状態の一例を示す縦断面図である。
【図4】図3におけるB−B断面図である。
【図5】(イ)は保持部材の一例を示す正面図であり、(ロ)は背面図であり、(ハ)は側面図である。
【図6】本発明の拡散測定装置の一例を示す模式図である。
【図7】従来の拡散セルの一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 セル本体
11 レセプター室
12 レセプター液排出路
13 レセプター液注入路
14 凹部
15 開口部
16 回転防止ピン
2 蓋体
21 蓋体本体
22 保持部材
3 レセプター液注入用チューブ
4 レセプター液排出用チューブ
5 皮膚及び経皮吸収製剤
6 回転子
7 拡散測定セル
8 レセプター液供給装置
81 レセプター液貯蔵容器
82 ポンプ
83 輸液チューブ
84 恒温槽
85 回転装置
86 レセプター液分取装置
87 レセプター液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁中間部に皮膚及び経皮吸収製剤を設置するための開口部を有する、レセプター液を充満するためのレセプター室が形成されているセル本体と、皮膚及び経皮吸収製剤を開口部に固定するための蓋体よりなり、セル本体にはレセプター室の上部からセル本体の外側に連通しているレセプター液排出路とレセプター室の側壁下端部付近からセル本体の外側に連通しているレセプター液注入路が形成されていることを特徴とする経皮吸収製剤の拡散測定セル。
【請求項2】
セル本体が、略立方体又は直方体であることを特徴とする請求項1記載の経皮吸収製剤の拡散測定セル。
【請求項3】
蓋体が、皮膚及び経皮吸収製剤を開口部に保持するための保持部材と、保持部材を開口部に押圧し固定するための蓋本体からなることを特徴とする請求項1記載の経皮吸収製剤の拡散測定セル。
【請求項4】
蓋本体が、セル本体の側壁に螺合可能になされていることを特徴とする請求項3記載の経皮吸収製剤の拡散測定セル。
【請求項5】
レセプター液排出路及びレセプター液注入路の開口部はセル本体の上壁に開口していることを特徴とする請求項1記載の経皮吸収製剤の拡散測定セル。
【請求項6】
レセプター液排出路及びレセプター液注入路の開口部にはねじ溝が切られており、レセプター液排出用チューブ又はレセプター液注入用チューブの端部に設置された接続部材が水密に螺合可能になされていることを特徴とする請求項1記載の経皮吸収製剤の拡散測定セル。
【請求項7】
レセプター液供給装置、請求項1記載の拡散測定セル、拡散測定セル内に収納されている回転子、拡散測定セルを収納する恒温槽、該恒温槽の下に設置され、回転子を回転させるための回転装置及び経皮吸収製剤からレセプター液に拡散した薬剤溶液を分取、貯蔵するレセプター液分取装置よりなり、レセプター液供給装置と拡散測定セルのレセプター液注入路がレセプター液供給用チューブにより連通され、拡散測定セルのレセプター液排出路とレセプター液分取装置がレセプター液排出用チューブにより連通されていることを特徴とする経皮吸収製剤の拡散測定装置。
【請求項8】
レセプター液供給装置が、レセプター液貯蔵容器と所定量のレセプター液を輸送しうるポンプよりなり、レセプター液貯蔵容器とポンプが輸液チューブで連通されると共に、ポンプがレセプター液供給用チューブに連通されていることを特徴とする請求項7記載の経皮吸収製剤の拡散測定装置。
【請求項9】
一つのレセプター液供給装置と一つの拡散測定セルが連通され、拡散測定セルが複数であることを特徴とする請求項3記載の経皮吸収製剤の拡散測定装置。
【請求項10】
(1)レセプター室内に回転子が収納されている、請求項1記載の拡散測定セルを開口部が上向きになるように載置し、皮膚及び経皮吸収製剤を皮膚がレセプター室側になるように蓋体で開口部に固定する第1工程、
(2)皮膚及び経皮吸収製剤が縦向きになるように、拡散測定セルを恒温槽に収納し、レセプター液をレセプター室に充満する第2工程、
(3)恒温槽内でレセプター液を所定温度に保持すると共に回転子を回転し、経皮吸収製剤から薬剤をレセプター液に拡散させる第3工程、及び、
(4)所定時間毎に、レセプター液をレセプター室に輸液することにより、経皮吸収製剤の薬剤が拡散したレセプター液をレセプター液分取装置に輸液し、レセプター液分取装置内の分取セルに薬物溶液を分取する第4工程
からなることを特徴とする経皮吸収製剤の拡散測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−101283(P2007−101283A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289602(P2005−289602)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(501296380)コスメディ製薬株式会社 (42)