説明

経皮的免疫賦活

【課題】ワクチンにより誘発される免疫応答を刺激し、疾患を治療し、ワクチン内の抗原の有効用量を減らすためのアジュバントによる経皮的免疫賦活方法の提供。
【解決手段】(a)ワクチンによる免疫を必要とする対象を用意するステップ、(b)少なくとも1種のアジュバントを皮膚表面から患者の皮膚に適用するステップ、及び(c)経皮以外の投与経路によりワクチンで対象を免疫し、ワクチンが1種又は複数の抗原を含有するステップ、を含み、これにより、少なくとも1種の該アジュバントが、1種又は複数の該抗原に特異的な免疫応答を誘発することによって、経皮的免疫賦活を起こし、かつ、少なくとも1種の該アジュバントにより賦活された免疫応答は、少なくとも1種の該アジュバントがない場合よりも有効である、経皮的免疫賦活方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2001年3月19日に提出された米国仮出願第60/276496号による利益を主張する。
【0002】
本発明は、経皮的免疫賦活用の処方物、ワクチンにより誘発される免疫応答を刺激し、疾患を治療し、ワクチン内の抗原の有効用量を減らすためのその使用、及びその組合せ及びその製造に関する。
【背景技術】
【0003】
様々な抗原が、抗原特異的免疫応答を誘発するために経皮免疫(TCI)により有効に投与されている。WO第98/20734号、WO第99/43350号及びWO第00/61184号;米国特許第5910306号及び同第5980898号;及び米国特許出願第09/257188号、同第09/309881号、同第09/311720号、同第09/316069号、同第09/337746号及び同第09/545417号参照。我々は以前に、TCIを、他の経路(例えば、腸内、粘膜、経皮、他の非経口経路)により投与されたワクチンと組み合わせて使用し、このような慣用のワクチン接種で初回抗原刺激し、又は追加免疫することができることを教示した。現在、経皮免疫により送達されるアジュバント単独で、慣用のワクチン接種には、反応するとしても僅かしか反応しない対象の免疫応答を刺激しうることが証明されている。年齢、後天的又は先天的な免疫不全、免疫抑制、又は慣用のワクチン中の抗原使用量の減少のために、慣用のワクチン接種に僅かしか反応しないと疑われる対象に、経皮的免疫賦活を使用することができる。
【0004】
慣用のワクチンへの経皮的免疫賦活の適用例として、我々は、インフルエンザウイルス及びウイルス感染から保護するために販売されているワクチンを選択した。経口、鼻腔内又は注射可能な経路による投与に適した形態を、ワクチンとして使用することができる。ワクチン接種に対して僅かしか反応しない対象も、アジュバントの経皮送達により刺激されれば、抗原特異的免疫応答を有しうることを我々は示す。本発明では、TCIを、免疫賦活用のアジュバントを送達するために使用する。他の経路で投与されると有毒となりうるアジュバントを、安全かつ有効に、経皮的に使用することができる。全身及び粘膜免疫の両方を賦活しうるアジュバントを使用するのが有利だが、抗アジュバント免疫応答は、治療には必須でなくてもよい。したがって、アジュバントの経皮送達及び全く別の経路によるワクチン接種を介して、免疫応答を統合することができることは意外である。
【0005】
Glueck et al.(J.Infect.Dis.、181:1129−1132、2000)は、鼻腔内インフルエンザワクチンのためのアジュバントとしてLTを使用した。このワクチンは、アジュバントと三価インフルエンザビロソーム(virosome)との両方からなる。Podda(Vaccine、19:2673−2680、2001)は、高齢者に筋肉内注射により投与されたインフルエンザワクチンのためのアジュバントとしてMF59を使用することを調べている。Lu et al.(Vaccine、20:1019−1029、2002)は、経口インフルエンザワクチンのためのアジュバントとしてLT又はLT突然変異体(R192G)を使用した。Hagiwara et al.(Vaccine、19:2071−2079、2001)は、鼻腔内不活化ウイルスワクチンのためのアジュバントして、LT又はLT突然変異体(H44A)を使用した。
【0006】
Chen et al.(J.Virol.、75:7956−7965、2001)は、アジュバントとしてCT又はCpGを使用した。アジュバントは粉末に乾燥され、不活化一価又は三価インフルエンザワクチンと組み合わされ、ジェットを使用して遺伝子銃(gene gun)で注射される。Watabe et al.(Vaccine、19:4434−4444、2001)は、アジュバントとしてサイトカイン発現遺伝ベクター及びM1マトリックスタンパク質又はM2膜抗原をコードするインフルエンザ遺伝子を含有する別の発現ベクターを使用する遺伝子免疫を使用した。
【0007】
前記の参考文献はいずれも、ワクチンとは別々のアジュバントを教示も示唆もしていない。ワクチンからアジュバントを除くか、ワクチン中にアジュバントを含まないこと及びワクチンにより誘発される免疫応答を刺激するためにTCIによりアジュバントを別に送達することにより、ワクチンの処方及びその使用を簡単にする利点も提供する。前記の参考文献のいくつかは、最近刊行されたにすぎないため、前記の検討は、それらの文献が先行技術であることを容認するものではないことにも注意すべきである。
【0008】
さらに、危険性のある集団のために、限られた量のインフルエンザワクチンしか利用することができない。その理由は、提供される最新のワクチン中に見出される血清型の組合せを、最も流行している今年の株に対する有効性を保証するために、短期間で製造しなければならないからである。したがって、抗原用量を減らしたワクチンの免疫原活性を高めるために、経皮免疫刺激を使用することができる(即ち、用量の節約)。
【0009】
本発明の他の利点は下記で検討するか、ここでの開示から明らかであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、対象でのワクチンに対する免疫応答を刺激することである。免疫応答を、老齢(例えば、65歳以上)、免疫不全であるか、免疫抑制されているか、これらの組合せである対象で刺激することができる。もしくは、ワクチン中の抗原の量を減らすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
少なくとも1種のアジュバントを含有する処方物を、対象の皮膚に皮膚表面から、対象のワクチン接種がより有効になるように適用する。これをここでは、「経皮的免疫賦活」と称する。ワクチン接種のために使用される抗原からアジュバントを分離することにより、安全かつ有効にアジュバントを送達することができ、ワクチンの再処方は必要ない。アジュバントは好ましくは、抗原提示細胞をターゲットとし、これは、ワクチンの1種又は複数の抗原を処理する。これは、TCIのための処方物が、ワクチンが送達される部位に適用されることを必ずしも必要としないが、処方物を送達する部位が同じか、隣接する部位であることは、便利である。
【0012】
ワクチンは、有効な免疫応答が、アジュバントの不在下では誘発されないような不十分な量の抗原を含有すればよい。もしくは、ワクチン単独で誘発される免疫応答が、対象に有効な治療をもたらしてもよいが、アジュバントを用いる免疫賦活は、より有利な処置(例えば、治療及び/又は予防)をもたらす免疫応答を刺激しうる。ワクチンは、非経皮技術:例えば、経口、鼻腔及び注射などの投与経路により投与することができる。ワクチンは、アジュバントを含有するか、含有しなくてもよい。
【0013】
アジュバントは、皮膚の下に位置する抗原提示細胞(APC)を活性化させることができる。APCは、リンパ節に移動する。抗原がAPCに摂取されると、APCは、ワクチン中の抗原の免疫原性エピトープを処理及び提示しうる。APC(例えば、皮膚樹状細胞、ランゲルハンス細胞)は活性化して、局所リンパ節に移動し、抗原の少なくとも1個の免疫原性エピトープを提示しうる。好ましくは、ワクチンでの免疫のために選択された投与経路は、活性化APCの交通を伴って、局所リンパ節に交差している。
【0014】
経皮免疫賦活により誘発される免疫応答は、皮膚浸透(例えば、化学的、物理的)により増強される。皮膚を、免疫応答の前、その後、その間、これらの組合せで、免疫応答を増強するために水和することができる。抗原特異的免疫応答を使用して、対象(例えば、ヒト、動物)を治療、存在する疾患の治療及び/又は起こりうる疾患からの保護をもたらすことができる。本発明の利点は、少なくとも2種の異なる方法で得られる:(i)ワクチン単独では有効な治療のための閾値には達しなかったが、免疫賦活を伴うと、閾値に達する免疫応答の刺激又は(ii)有効な治療のための閾値に達したが、免疫賦活により、より有利になる免疫応答の刺激。
【0015】
臨床又は実験室基準、健康に関する代理マーカー又は罹患率又は死亡率基準により、有効性を評価することができる。例えば、本発明の利点を、疫学的研究により、対象の選択された集団で示すことができる。このような処方物を使用及び製造する方法を、ここでは記載する。本発明のさらなる態様は、以下の詳細な説明及び請求項及びこれを一般化することにより、当技術分野の専門家には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】アジュバント含有パッチの皮膚表面への適用を伴うか、伴わない(LT及びTCI)、低用量破傷風トキソイドワクチンを筋肉内(im)注射した後の免疫応答の比較を示すグラフである。横棒は、相乗平均力価を示す。
【図2A】アジュバント含有パッチの皮膚表面への適用を伴うか、伴わない(LT及びTCI)、低用量インフルエンザワクチンを非経口的に接種した後の免疫応答の比較を示すグラフである。両大腿部に筋肉内注射された三価インフルエンザワクチン5μgを示している。横棒は、相乗平均力価を示す。
【図2B】アジュバント含有パッチの皮膚表面への適用を伴うか、伴わない(LT及びTCI)、低用量インフルエンザワクチンを非経口的に接種した後の免疫応答の比較を示すグラフである。尾の基部に皮下注射された三価インフルエンザワクチン1.5μgを示している。横棒は、相乗平均力価を示す。
【図3A】アジュバント含有パッチの皮膚表面への適用を伴うか、伴わない(LT及びTCI)、三価インフルエンザワクチンを筋肉内(im)注射した後の免疫応答の比較を示すグラフである。パナマA株(Panama A strain)に対する免疫応答を示している。横棒は、相乗平均力価を示す。
【図3B】アジュバント含有パッチの皮膚表面への適用を伴うか、伴わない(LT及びTCI)、三価インフルエンザワクチンを筋肉内(im)注射した後の免疫応答の比較を示すグラフである。ヨハネスブルクB株(Johannesburg B strain)に対する免疫応答を示している。横棒は、相乗平均力価を示す。
【図3C】アジュバント含有パッチの皮膚表面への適用を伴うか、伴わない(LT及びTCI)、三価インフルエンザワクチンを筋肉内(im)注射した後の免疫応答の比較を示すグラフである。ニューカレドニアA株(New Caledonia A strain)に対する免疫応答を示している。横棒は、相乗平均力価を示す。
【図4】抗原の経皮送達に適した4種の異なる処方の方法から得た結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
経皮的免疫賦活は、経皮免疫により少なくとも1種のアジュバントを、慣用のワクチン接種を受けたか、受けているか、受ける予定の対象に与える。慣用のワクチンに対して免疫応答を刺激する処置のために、対象を選択する。加齢、後天的又は先天的免疫不全、疾患又は外科的療法により誘発される免疫抑制、あるいは抗原量を減らした慣用のワクチンの使用により、対象が慣用のワクチン接種に反応できないか、僅かにしか反応できないのではないかとの疑い、病歴、あるいは医師又は獣医による決定を用いて、治療を必要とする対象を選択することができる。
【0018】
アジュバントを用いる経皮的免疫賦活は、経口、骨格筋内、又は皮下に投与されるワクチンに適用することができる。破傷風トキソイド及び多価インフルエンザワクチンを、本発明の例として使用する。経皮的免疫賦活は通常、非経口投与されたワクチンに適用することができる。これには、ジフテリア、百日咳、破傷風、肝炎(A、B及びC)、狂犬病、ライム病、おたふくかぜ、麻疹、インフルエンザウイルス感染、多価肺炎球菌ワクチン、黄熱、ヘモフィルスインフルエンザ感染、ロタウイルス感染、HIV感染及びマラリア感染を対象とするワクチンなどのワクチンが含まれる。
【0019】
一定のアジュバントは、粘膜免疫の強力な刺激物質であるので、本発明を、粘膜組織に通常は直接投与されるワクチンに適用することもできる。これに関連して、アジュバント含有パッチを、これらのワクチンを経口投与する時点に、皮膚に適用する。この適用の例には、腸内感染(コレラ、赤痢菌、腸毒素原性E.coli、ヘリコバクターピロリ又は弱毒化チフスワクチン)のためのワクチンが含まれる。アジュバントの免疫賦活作用を使用して、鼻腔インフルエンザワクチンなどの、鼻腔スプレーとして、又は肺吸入により送達されるワクチンの有効性を増強することができる。本発明は、バシラスアンスラシス(Bacillus anthracis)、ボルデテラペルツッシス(Bordetella pertussis)、クラミジアニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、連鎖球菌(Streptococci)A及びB群、風疹、モラクセラ(Moraxella)、シュードモナス(Pseudomonas)、RSウイルス(respiratory syncytial virus)、天然痘ウイルス(smallpox virus)及びマイコバクテリア(Mycobacteria)による、他の呼吸感染を予防又は治療的に処置するために開発されたワクチンのためにも使用することができる。アジュバントによる経皮的免疫賦活をワクチンと一緒に使用して、トラコーマクラミジア(Chlamydia trachomatis)、淋菌(Neisseria gonorrhea)及びトレポネーマパリダム(Treponema pallidum)により誘発される性行為感染症を予防又は治療的に処置することができる。
【0020】
本発明は、後天性免疫不全を有する個人、特に、年齢に伴って免疫無防備状態になった老人(例えば、65歳以上)の免疫反応を刺激するための方法も提供する。アジュバント含有パッチを使用して、老人ではあまり有効ではないワクチンに対する免疫応答を増強することができる。例えば、毎年インフルエンザで死亡する米国内の10,000から20,000人の人々のうち、これらの死亡者の90%が、老人である。インフルエンザワクチン接種と共にパッチを使用することにより、老齢人口での罹患率及び死亡率を改善することができる。感染性疾患(例えば、HIV)により誘発された易感染性免疫系を有する個人に、さらに日和見感染が高い死亡率をもたらす癌及び臓器移植のために免疫抑制治療を受けている個人に、パッチを使用することもできる。
【0021】
様々なタイプの癌を治療する新規のワクチン開発は、癌ワクチンの乏しい免疫原性により妨げられている。本発明を適用すると、多くの癌(例えば、乳癌、肝癌、黒色腫、前立腺癌)を予防又は治療的に処置するための実験的癌ワクチンの抗原性を改善することができる。
【0022】
皮膚構造及び免疫生物学
最も広範なヒトの器官である皮膚は、感染因子による侵入及び有害物質との接触に対する防御において重要な役割を果たしている。しかし、皮膚のこのバリア機能こそが、経皮免疫により、ワクチンを投与するための腸内、粘膜及び他の非経口経路に対する有効な代替案が得られると当技術分野が認めることを阻んでいたようである。最近、ワクチンの皮膚表面への投与は、特殊抗原提示細胞をターゲットとし、強い免疫応答をもたらすことが示されている。
【0023】
解剖学的に、皮膚は3つの層からなる:表皮、真皮及び皮下脂肪。表皮は、基底層、有棘層、顆粒層及び角化層からなる;角質層は、角化層及び脂質からなる。皮膚の主な抗原提示細胞であるランゲルハンス細胞は、ヒトでは表皮の中部から上部有棘層にあると報告されている。真皮は主に、結合組織を含有する。血管及びリンパ管は、真皮及び皮下脂肪に限られている。
【0024】
死んでいる皮膚細胞及び脂質の層である角質層は慣例的に、角質層下の生細胞から微生物及び有害物質を排除する、危険性のある外界に対するバリアと見なされてきた。さらに角質層は、皮膚からの水分の損失に対するバリアとして役立つ;比較的乾いた角質層は、5%から15%の含水率を有し、より深部の表皮及び真皮層は、85%から90%の含有率で比較的良好に水和されていると報告されている。皮膚のバリア機能は、角質細胞(corneocyte)間の広範な架橋により強化されている。最近になって初めて、抗原提示細胞(例えば、ランゲルハンス細胞)によりもたらされる二次的保護が認められた。さらに、皮膚活性アジュバントを使用する、浸透強化を伴う、又は伴わない皮膚を介しての免疫(即ち、経皮免疫)の可能性も、最近になって初めて記載された。アトピー及び皮膚炎などの望ましくない皮膚反応は、当技術分野で知られているが、経皮免疫の治療的利点の認識は、これまで認められていなかった。それというのも、皮膚は、約500ダルトンよりも大きい分子の通過に対するバリアになっていると考えられていたためである(Bos et al.、Exp.Dermatol.、9:165−169、2000)。
【0025】
表皮は、主に角化細胞からなるが、生角化細胞に分布しているランゲルハンス細胞(LC)と称される免疫監視細胞の重要な占有率(約1%から3%)を有する。LCは比較的、皮膚中で細胞の低い占有率ではあるが、これらは、ヒトの全皮膚表面積の25%を占めている。ランゲルハンス細胞は、ワクチン送達のための牽引ターゲットを作る免疫細胞の広範で表面的なネットワークバリアを示している。これらは、骨髄由来樹状細胞であり、これは、上皮表面へと移動して、そこで、免疫監視を行う。正常な環境下では、皮膚から排出性(draining)リンパ節へLCの基準量が送達されている。感染性微生物などの刺激に直面すると、皮膚外へと移動するLCの数が著しく増大して、抗原提示細胞の免疫監視機能を果たす。微生物、異物又はアジュバントとの相互作用により生じた危険信号に刺激されたランゲルハンス細胞は、その抗原提示機能により生じた非常に特異的で増幅された応答を介して、リンパ節中でエフェクター免疫応答を組織化する。
【0026】
動物又はヒトで免疫応答(例えば、抗原に特異的な液性及び/又は細胞性エフェクター)を誘発する経皮免疫(TCI)のためのシステムが得られる。この送達システムは、少なくとも1種のアジュバント及び/又は1種又は複数の抗原からなる処方物のヒト又は動物対象の皮膚への簡単な経皮投与をもたらす(Glenn et al.、J.Immunol.、161:3211−3214、1998a;Glenn et al.、Nature、391:851、1998b;Glenn et al.、Nature Med.、6:1403−1406、2000;Hammond et al.、Adv.Drug Deliv.Rev.、43:45−55、2000;Scharton−Kersten et al.、Infect.Immun.、68:5306−5313、2000)。したがって、皮膚が、真皮層を介して貫通していない限りは、抗原特異的免疫応答は、化学的及び/又は物理的浸透増強を伴って、又は伴わずに誘発される。少なくとも1種のアジュバントを、処方物を投与する時に乾燥形態で、及び/又はパッチの一部として提供することができる。アジュバントの使用により、老齢、免疫不全、免疫抑制、又はこれらの組合せの状態にある対象に投与されたワクチンにより誘発される免疫応答が刺激される(即ち、免疫賦活)。さらにこの送達系は、腸内、粘膜又は他の非経口免疫技術と組み合わせて使用することができる。したがって、ここに記載の技術は、例えば、免疫療法及び免疫保護などのヒト及び動物の治療で使用することができるであろう:治療的には、存在する疾患を治療するために、保護的には、疾患を予防するために、疾患の重度及び/又は期間を低減するために、疾患の1つ又は複数の症状を緩和するために、又はこれらの組合せで。
【0027】
角質層を通過するために抗原が利用する送達経路は、現在のところ知られていない。角質層(SC)は、皮膚を通しての薬物及び抗原の送達に対する主なバリアである。極性薬物の経皮薬物送達は幅広く、角化細胞の間に生じる水性細胞間チャネルを介して生じ続ける(Transdermal and Topical Drug Delivery Systems、Eds.Ghosh et al.、Buffalo Grove:Interpharm Press、1997)。SCは、浸透のための制限的なバリアであるが、これは、毛包及び汗管によって破られている。抗原がSCに直接的に浸透するか、表皮付属器を介して浸透するかは、多数の要因に依存している。これらの付属物は、経皮薬物送達では目立たない役割しかはたしていないと考えられている(Barry et al.、J.Control Rel.、6:85−97、1987)。DNAを使用する経皮免疫は、皮膚浸透のための経路として毛包を使用することができるというマウスでのいくつかの証拠にも関わらず(Fan et al.、Nature Biotechnol.、17:870−872、1999)、強い免疫応答は、より多くの皮膚表面積を使用するようである。SCバリアの破壊は、皮膚の簡単な水和によって達成することができるので(Roberts et al.、In:Pharmaceutical Skin Penetration Enhancement、Eds.Walters et al.、New York;Marcel Dekker、1993)、これは、経皮免疫のために使用することができる。
【0028】
1種又は複数のアジュバント、抗原及び抗原提示細胞(APC)の活性化は、免疫応答の誘発を刺激する。APCは、抗原を処理し、次いで、リンパ球に対して1種又は複数のエピトープを提示する。活性化は、処方物とAPC(例えば、ランゲルハンス細胞、他の樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球)との間の接触、APCによる処方物の接種、APCによる抗原の処理及び/又はエピトープの提示、APCの移動及び/又は分化、APCとリンパ球との間の相互作用あるいはこれらの組合せを促進することができる。アジュバント自体も、APCを活性化しうる。例えば、ケモカインは、抗原提示細胞を1つの部位に集め、かつ/又は活性化させることができる。特に、抗原提示細胞は、皮膚からリンパ節へと移動し、次いで、抗原をリンパ球に提示して、抗原特異的応答を誘発する。さらに、処方物は、抗原を認識して、抗原特異的免疫応答を誘発するリンパ球と直接的に接触することができる。皮膚に適用されたアジュバントにより刺激される皮膚からのAPCは、排出性(draining)リンパ節へと移動し、筋組織などの他の解剖学的部位で抗原に遭遇する他のAPCによる抗原提示と相互作用して、筋肉内経路により送達される抗原などの抗原に対する免疫応答を刺激することが可能である。同じ排出性リンパ領域中の皮膚上に置かれたアジュバント含有パッチが、どのように同じ排出性リンパ節領域に施与された非経口送達ワクチンに対する免疫応答を増強することができるかは不明であるが、我々はここで、筋肉内送達されたワクチンに対する免疫応答の刺激は、アジュバント含有パッチの皮膚表面への適用により達成することができることを証明する。
【0029】
抗体及び細胞障害性リンパ球(CTL)を含む抗原特異的B細胞及び/又はT細胞集団の活性化及び/又は拡大をもたらす免疫反応を引き出すことに加えて、本発明は、抗原特異性ヘルパー(Th1及び/又はTh2)又は遅延型過敏症T細胞サブセット(TDTH)に影響を及ぼす経皮免疫を使用することにより、免疫系の1つ又は複数の成分をプラスに、かつ/又はマイナスに調整することもできる。誘発される望ましい免疫応答は好ましくは、全身的又は局所的(例えば、粘膜)であるが、これは、通常望ましくない免疫応答(例えば、アトピー、皮膚炎、湿疹、乾癬及び他のアレルギー性又は過敏性反応)ではない。ここで分かるように、誘発される免疫応答は、疾患を治療するために有効な治療的又は予防的免疫応答をもたらす量及び質のものである。
【0030】
処方物を経皮投与する前、その間、又はその直後に無損傷又は貫通された皮膚を水和することが好ましく、いくつかの場合又は多くの場合に必要である。例えば、水和により、皮膚(例えば、角質層又は浸透増強技術により露出された表面表皮層)の最上層の含水率が25%、50%又は75%以上に高まる。皮膚は、グリセロール10%、イソプロピルアルコール70%及び水20%からなる水溶液で水和させることができる。閉鎖性包帯の付加又は半液体処方物(例えば、クリーム、エマルション、ゲル、ローション、ペースト)の使用により、皮膚の水和を高めることもできる。例えば、脂質ベシクル又は糖を処方物に加えて、溶液又は懸濁液を増粘することもできる。真皮が穿孔されない限り、水和は、可能ならば、表皮の一部を伴う処方物の適用部位のところの角質層の全て又は少なくとも一部の破壊を伴って、又は伴わずに生じる。この意図は、処方物の一部は遠位でも作用しうるが、処方物の免疫活性な成分を全身循環に導入する代わりに、処方物を、皮膚の抗原提示細胞に作用させることである。
【0031】
皮膚を、水和又は化学的浸透剤を含有する塗布具(例えば、パッド又はスティック状の吸着材)で拭くか、これらを直接、皮膚に塗布する。例えば、水溶液(例えば、水、生理食塩水、他の緩衝液)、アセトン、アルコール(例えば、イソプロピルアルコール)、界面活性剤(例えば、硫酸ドデシルナトリウム)、脱毛剤又は角質溶解剤(keratinolytic agent)(例えば、水酸化カルシウム、サリチル酸、尿素)、湿潤剤(例えば、グリセロール、他のグリコール)、ポリマー(例えば、ポリエチレン又はプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン)又これらの組合せを、処方物中で使用するか、又は処方物に導入することができる。同様に、皮膚の擦過(例えば、エメリーボード(emery board)又はエメリー紙、紙やすり、線維パッド、軽石などの研磨材)、皮膚の表皮層の除去(例えば、粘着テープでのピーリング又はストリッピング)、エネルギー源(例えば、熱、光、音波、電気、磁気)又はバリア破壊装置(例えば、ブレード、ニードル、発射体、スプレー、尖叉)を使用する皮膚の微細孔処理(microporating)あるいはこれらの組合せは、物理的浸透増強法として作用しうる。ミクロブレード又はミクロニードル、癌又はスプレーインジェクタに関し、さらに経皮免疫に適するであろう皮膚の微細孔処理及び技術に関する、WO第98/29134号、WO第01/34185号及びWO第02/07813号;米国特許第5445611号、同第6090790号、同第6142939号、同第6168587号、同第6312612号、同第6322808号及び同第6334856号参照。TCIに関連する化学的又は物理的浸透増強の目的は、少なくとも角質層又は表皮又は深部表皮層を、真皮層を越えて皮膚を穿孔することなしに除去することである。このことは好ましくは、ヒト又は動物対象に対して多くても、僅かな不快だけで、部位の出血を伴うことなく達成する。例えば、無損傷皮膚への処方物の投与は、角質層又は表皮以下までの皮膚層を穿孔するための熱的、光学的、音波的又は電磁エネルギーを必要とするか、必要としないでよい。
【0032】
WO第98/20734号及び同第99/43350号で行われている経皮免疫の間の差は、角質層の全てか、又は少なくとも一部が破壊されているかどうかである。ここで使用する場合の「浸透増強剤」との用語は、処方物中に、適用の前、適用の間又は適用の後に施与されると、このような破壊をもたらす化学薬品のことである。数種の化学薬品(例えば、アルコール)は、どの程度強く、これらが適用されるか(例えば、十分な圧力で拭くか、こする)に応じて、角質層を破壊することができるか、破壊しない。例えば、処方物中にアルコール、O/W又はW/Oエマルジョン、脂質ミセル又脂質ベシクルが含まれると、角質層の検出可能な破壊を伴うことなしに、無損傷皮膚にわたって同じ処方物の1種又は複数の免疫活性成分の浸透を強めることができる。
【0033】
ワクチン接種に使用することができる処方物を、さらにこれを製造するためのプロセスを提供する。処方物は、乾燥又は液体形態であってよい。乾燥処方物は、慣用のワクチンよりも貯蔵及び輸送が簡単であり、ワクチンの製造所からワクチン接種現場まで必要とされるコールドチェーンを不要にする。特定の作用方式に限らないが、乾燥処方物が液体処方物の改良となりうる他の方法は、処方物の乾燥活性成分の高濃度(例えば、1種又は複数のアジュバント及び/又は抗原)が、短時間で、免疫部位の所で直接に可溶化することにより達成されうることである。皮膚からの水分(例えば、発汗)及び閉鎖性包帯により、このプロセスを刺激することができる。こうすると、活性成分の可溶性限界に近づく濃度をその場で達成することができる。もしくは、抗原提示細胞により摂取され、処理される固体粒子形を用意することにより、処方物の乾燥活性成分自体が、改善でありうる。これらの考えられるメカニズムを考察することにより、本発明又はその同等物の範囲を限定するのではなく、本発明の作用を洞察し、免疫付与及びワクチン接種でのこの処方物の使用法を案内している。
【0034】
処方物は、液体;クリーム、エマルション、ゲル、ローション、軟膏、ペースト、溶液、懸濁液又は他の液体形として提供することができる。乾燥処方物を様々な形で提供することができる;例えば、微粒子又は顆粒、均一なフィルム、ペレット及び錠剤。処方物を溶解させ、次いで、容器中で、又は平坦な表面(例えば、皮膚)の上で乾燥させるか、簡単に、平坦な表面の上に振り掛けることができる。空気乾燥させるか、高温で乾燥させるか、凍結乾燥させるか、噴霧乾燥させるか、固体基質の上に塗布又は噴霧し、次いで乾燥させるか、固体基質の上に振り掛けるか、迅速に凍結させ、次いで徐々に真空下に乾燥させることができるか、これらの組合せであってよい。様々な分子が、処方物の活性成分である場合には、これらを、溶液中で混合し、次いで乾燥させるか、乾燥形で混合するのみであってよい。
【0035】
「パッチ」は、固体基質(例えば、閉鎖性又は非閉鎖性外科用包帯)、さらに少なくとも1種の活性成分を含有する製品のことである。液体を、パッチ中に導入することができる(即ち、湿潤なパッチ)。処方物の1種又は複数の活性成分を、基質の上に適用するか、パッチの基質又は接着剤中に導入することができるか、これらの組合せであってよい。液体処方物を、貯留部中に保持するか、貯留部の内容物と混合することができる。乾燥パッチは、処方物を可溶化するための液体貯留部を使用することができるか、使用しなくてもよい。パッチの区画又は室を、別の活性成分を分離することができるように使用して、1種のみの抗原又はアジュバントを、投与前に乾燥形に保持する;こうして液体及び固体を分離することにより、少なくとも1種の乾燥の活性成分の溶解時間及び速度を制御することができる。
【0036】
液体又は固体の形の処方物を、1種又は複数のアジュバント及び/又は抗原と共に、同じ又は別々の部分で、又は同時に、又は頻繁な繰り返し適用で投与することができる。パッチは、制御放出用貯留部又は速度制御マトリックスを含んでよいか、アジュバント及び/又は抗原の段階的放出を可能にする膜を使用することができる。これは、アジュバント及び/又は抗原を有する単一の貯留部を、又は別々の個々の抗原及びアジュバントのための複数の貯留部を含む。パッチの施与が、複数の抗原に対する免疫応答を誘発するように、パッチは、付加的な抗原を含んでもよい。このような場合には、抗原は、同じ源から由来してもよいか、由来しなくてもよく、これらは、異なる化学的構造を有して、様々な抗原に特異的な免疫応答を誘発する。複数のパッチを同時に施与することもできる;単一のパッチが、複数の貯留部を含んでもよい。有効な治療のために、複数のパッチを、間隔をおいて、又は継続的に、一定期間にわたって施与することもできる;これらは、異なる時間に、重複する期間、又は同時に施与することもできる。少なくとも1種のアジュバント及び/又はアジュバントを、投与前には乾燥の形に保持することができる。貯留部からの液体の連続的な放出又は処方物の乾燥成分を含有する貯留部への液体の侵入により少なくとも部分的に、その成分が溶解する。
【0037】
固体(例えば、ナノメートル又はマイクロメートル寸法の粒子)を、処方物中に導入することもできる。固体形(例えば、ナノ粒子又はマイクロ粒子)により、活性成分の分散又は可溶化を促進し、皮膚の表在層を通して処方物を運ぶのを助け;アジュバント、抗原又はその両方のための付着ポイントを基材にもたらし、これは、抗原提示細胞又はその組合せによりオプソニン処理されうる。シート、ロッド又はビーズとして成形された多孔性固体からの処方物の長期放出は、デポーとして作用する。
【0038】
処方物は、生物学的製剤及びワクチンに関する適切な規制官庁(例えば、米国食品薬品局)に許容されうる条件下に製造することができる。場合によって、結合剤、緩衝剤、着色剤、乾燥剤、希釈剤、湿潤剤、防腐剤、安定剤、他の賦形剤、接着剤、可塑剤、粘着性付与剤、増粘剤、パッチ材料又はこれらの組合せなどの成分を、これらが免疫的に不活性であっても、処方物中に含有させることができる。しかしながら、これらは、処方物の有効性を改善する他の望ましい特性又は特徴を有することもできる。
【0039】
投与に適した処方物の単一又は単位用量を提供する。単位用量中のアジュバント又は抗原の量は大体、約0.001μgから約10mgの広い範囲内である。この範囲は、約0.1μgから約1mgであってもよく、より狭い範囲は、約5μgから約500μgである。他の適切な範囲は、約1μgから約10μg、約10μgから約50μg、約50μgから約200μg、約1mgから約5mgである。毒素での好ましい用量は、約50μg又は100μg又はそれ未満である(例えば、約1μgから約50μg又は100μg)。抗原とアジュバントとの比は、約1:1であってよいが(例えば、抗原とアジュバントの両方である場合、ADPリボシル化外毒素)、乏しい抗原では、より高い比が適しており(例えば、約1:10又はそれ未満)、あるいは、アジュバントに対してより低い比の抗原を使用することもできる(例えば、約10:1以上)。
【0040】
アジュバント及び抗原又はポリヌクレオチドを含有する処方物は、ヒト又は動物対象の皮膚に施与することができ、抗原を免疫細胞に提示し、抗原特異的免疫応答を誘発させる。これは、病原体による感染の前、その間、又その後に行うことができる。処方物の免疫原性が、アジュバント活性が必要でないほど十分である場合には、抗原又は抗原をコードするポリヌクレオチドのみが必要で、付加的なアジュバントは必要でなくてもよい。処方物は、処方物の施与が複数抗原(即ち、多価)に対する免疫応答を誘発するように、付加的な抗原を含有してもよい。このような場合、抗原は、同じ源から由来してよいか、由来しなくてもよいが、抗原は、異なる抗原に対して特異的な免疫応答を誘発するように様々な化学的構造を有する。抗原特異性リンパ球は、免疫応答に関与し、Bリンパ球の関与の場合には、抗原特異性抗体は、免疫応答の一部をなしている。前記の処方物は、結合剤、緩衝剤、着色剤、乾燥剤、希釈剤、湿潤剤、防腐剤、安定剤、他の賦形剤、接着剤、可塑剤、粘着性付与剤、増粘剤及び当技術分野で知られているパッチ材料を含んでもよい。
【0041】
本発明を使用して、対象(例えば、疾患の予防、感染の効果からの保護、現存する疾患又は症状の治療又はこれらの組合せなどの処置を必要とするヒト又は動物)を治療する。感染以外の疾患には、癌、アレルギー及び自己免疫が含まれる。抗原が病原体に由来する場合には、治療は、病原体による感染に対してか、毒素分泌により誘発されるもののようなその病原効果に対して対象をワクチン接種することができる。本発明は、治療的には現存する疾患を治療するために、予防的には疾患を予防するために、疾患の重度及び/又は期間を低減するために、疾患の症状を軽減するために、又はこれらの組合せのために使用することができる。
【0042】
適用部位を、起こりうる局所皮膚反応を低減するか、免疫応答のタイプを変更するためのヒドロコルチゾン、トリアムシノロン及びモメタゾン(mometazone)又は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)などの抗炎症性コルチコステロイドで保護することができる。同様に、抗炎症性ステロイド又はNSAIDが、パッチ材料又は液体又は固体処方物中に含まれていてよく;コルチコステロイド又はNSAIDは、免疫の後に適用することもできる。IL−10、TNF−α、他の免疫調節剤を、抗炎症剤の代わりに使用することもできる。さらに、処方物を、単一又は複数の適用を使用して、1つよりも多い排出性リンパ節の上に位置する皮膚に適用することもできる。適用が複数抗原に対する免疫応答を誘発するように、処方物は、付加的な抗原を含有してもよい。このような場合には、抗原は、同じ源から由来してもよいか、由来しなくてもよいが、これらは、様々な抗原に特異的な免疫応答を誘発するように、異なる化学的構造を有することになろう。それぞれの室が、異なる抗原提示細胞を包含するので、多室パッチにより、多価ワクチンのより有効な送達が可能である。こうすると、抗原提示細胞は、1種のみの抗原(アジュバントを伴うか、伴わずに)に直面し、したがって、抗原競合が排除され、したがって、多価ワクチン中の個々の抗原に対する応答が増強される。
【0043】
浸透技術を用いて、又は用いずに、免疫応答を開始させるか、増加させるために、処方物を皮膚表面から皮膚に、又は免疫の他の経路に適用することができる。単一又は複数の適用を用いる経皮免疫(TCI)による開始の後に、同じ又は別の抗原での免疫を増大させるための腸内、粘膜、経皮及び/又は他の非経口技術を続けることもできる。単一又は複数の適用を用いる腸内、粘膜、経皮及び/又は他の非経口経路による開始の後に、同じ又は別の抗原での免疫を増大させるための経皮技術を続けることもできる。TCIは、粘膜又は経皮免疫などの慣用の局所技術とは異なることを特記する。それというのも、前者は、皮膚中には存在しない粘膜(例えば、肺、口腔、鼻、直腸)を必要とするが、後者は、真皮を通しての皮膚の穿孔を必要とするためである。皮膚への適用が、複数の抗原に対する免疫応答を誘発するように、処方物は、付加的な抗原を含有してもよい。
【0044】
抗原及びアジュバントに加えて、処方物は賦形剤を含有してもよい。例えば、処方物は、AQUAPHOR、Freund、Ribi又はSyntexエマルション;油中水型エマルション(例えば、水性クリーム、ISA−720)、水中油型エマルション(例えば、油性クリーム、ISA−51、MF59)、マイクロエマルション、乾燥脂質及び水中油型エマルション、他のタイプのエマルション;ゲル、脂肪、ワックス、オイル、シリコーン及び湿潤剤(例えば、グリセロール)を含有してもよい。
【0045】
抗原は、ヒト又は動物対象に感染する病原体(例えば、細菌、ウイルス、カビ又は原生動物)、アレルゲン及び自己抗原から由来してよい。抗原の化学構造は、1種又は複数の炭水化物、脂肪酸及びタンパク質(例えば、糖脂質、糖タンパク質、リポタンパク質)として記載することができる。タンパク様抗原が好ましい。抗原の分子量は、500ダルトン、800ダルトン、1000ダルトン、10キロダルトン、100キロダルトン又は1000キロダルトンよりも大きくてよい(これらの中間範囲も含まれる)。化学的又は物理的浸透増強が、細胞、ウイルス粒子及び1メガダルトンよりも大きな分子などの高分子構造には好ましいが、水和及び溶剤を用いる消毒などの技術が、皮膚に免疫を誘発するために十分である。抗原は、組換え技術、化学合成又は、天然源からの少なくとも部分的な精製により得ることができる。これは、化学的又は組み合え複合体であってもよい;例えば、化学的に反応性の基の間の結合又はタンパク質融合。抗原は、生細胞又はウイルス、弱毒化生細胞又はウイルス、死細胞又は不活化ウイルスとして提供することができる。もしくは、抗原を、細胞不含な形に、少なくとも部分的に精製することができる(例えば、細胞又はウイルス溶解産物、膜又は他の細胞内画分)。多くのアジュバントが、免疫原活性を有し、抗原と見なされるので、アジュバントも、抗原の前記の特性及び特徴を有すると予測される。例えば、アジュバント及び抗原を、同じ技術を使用して調製することができる(前記参照)。
【0046】
アジュバントを選択することにより、免疫応答の強化又は調節することができる。さらに、適切なアジュバントを選択することにより、液性又は細胞性免疫応答、特異的抗体アイソタイプ(例えば、IgM、IgD、IgA1、IgA2、IgE、IgG1、IgG2、IgG3及び/又はIgG4)及び/又は特異的T細胞サブセット(例えば、CTLl、Th1、Th2及び/又はTDTH)の優先的な誘発をもたらすことができる。アジュバントは好ましくは、化学的に活性か(例えば、タンパク分解的に消化されている)、遺伝的に活性な(例えば、融合、欠失又はポイント突然変異体)ADPリボシル化外毒素又はそのBサブユニットである。
【0047】
「抗原」は、免疫又はワクチン接種の後にヒト又は動物対象の免疫系により特異的に認識される処方物の活性成分である。抗原は、B細胞受容体(即ち、分泌されるか、膜結合されている抗体)又はT細胞受容体により認識される単一又は複数免疫原性エピトープを含む。T細胞受容体により認識されるタンパク質様エピトープは、特有の長さを有し、主な組織適合性複合体(MHC)I群又はII群分子によって抗原提示細胞上に結合されているかどうかに応じて、保存されたアミノ酸基を有する。対照的に、抗体により認識されるタンパク質様エピトープは、短鎖で延在したオリゴペプチド及びもっと長い折り畳まれたポリペプチドを含む様々な長さからなってよい。エピトープ間の単一アミノ酸の差は、明らかである。抗原は、病原体、アレルゲン物質又は哺乳類ホスト(例えば、自己抗原、癌抗原、免疫系の分子)の分子に対して免疫応答を誘発しうる。免疫調整のために、分子は、アレルゲン、自己抗原、その内部イメージ又は免疫系の他の成分であってよい(例えば、B又はT細胞受容体、補助受容体又そのリガンド、可溶性メディエータ又はその受容体)。したがって、抗原は通常、同一であるか、少なくとも、分子の化学的構造に由来するが、このような化学構造に僅かにしか類似していない模擬物質(mimetics)も、有利に使用することができる。
【0048】
「アジュバント」は、抗原に対する免疫応答の誘発を補助するための処方物の活性成分である。アジュバント活性とは、アジュバント自体を処方物中に含有させることにより、又は処方物の他の成分又は特別な免疫技術と組み合わせて、非対応抗原(即ち、アジュバントとは別の化学構造である抗原)に対する免疫応答を増大させる能力である。前記のように、分子は、抗原とアジュバントとの化学的な複合により、あるいは抗原及びアジュバントのコード領域の遺伝的な融合により、抗原及びアジュバント活性の両方を含有しうる;したがって、処方物は、1種のみの材料又は成分を含有するだけでもよい。
【0049】
「有効量」との用語は、抗原特異的免疫応答を誘発するアジュバント又は抗原の量を記載していることを意味している。「サブユニット」免疫原又はワクチンは、組換え技術、化学合成又は天然源からの少なくとも部分的な精製により、病原体の他の細胞又はウイルス成分(例えば、内毒素などの膜又は多糖類成分)から単離された活性成分(例えば、アジュバント、抗原)からなる処方物である。
【0050】
免疫応答の誘発により、例えば、免疫保護、脱感作、免疫抑制、自己免疫疾患の調節、癌免疫監視の強化、疾患を予防するための予防的ワクチン接種及び生じた疾患を軽減するための治療的ワクチン接種などの、対象の治療がもたらされる。その存在又は不在が、免疫応答の規模及び/又は動態に統計的に重要な変化をもたらす場合、生成物又は方法は、免疫系の誘発された要素の変化(例えば、液性vs.細胞性、Th1 vs.Th2);疾患症状の数及び/又は重度に対する効果;対象の健康及び快適さに対する効果(即ち、罹患率及び死亡率);又はこれらの組合せをもたらす。
【0051】
本発明で使用する場合の「排出性リンパ節領域」との用語は、一組の定義されたリンパ節(例えば、頚部、腋窩、鼠径部、上腕骨の内側上顆、膝窩、腹部及び胸部のもの)を介して、集められたリンパ液が濾過される解剖学的領域を意味している。したがって、免疫の部位及び時間が、処方物の異なる成分を一緒に送達するために適切に間を空けられている場合には(例えば、単独では有効ではない場合には、アジュバント又は抗原を有する2つのパッチを同時に、近くに位置させるのが有効である)、抗原提示細胞がリンパ節に移動するために必要とされる数分から数日間は、同じ排出性リンパ節界が、免疫のターゲットとなりうる(例えば、腸内、粘膜、経皮、経皮、他の非経口)。例えば、経皮技術によりアジュバントを送達するパッチを、慣用のワクチンを注射された同じ腕に貼って、高齢、小児又他の免疫学的に易感染性人口でのその有効性を強化することができる。対照的に、他方の肢にパッチを適用することで、アジュバント含有パッチが、抗原のみを含有するパッチの有効性を強化するのを防ぐことができる。
【0052】
本発明の実施に関して特定の理論と結びつけることはせずに、我々の観察に関する説明を提供するためにのみ、我々は、この経皮送達系は抗原を、免疫応答が誘発される免疫系の細胞に運ぶと仮定する。抗原は、皮膚の通常は存在する保護外側層(即ち、角質層)を通過して、直接に、あるいはリンパ球に処理抗原を提示する表皮中の抗原提示細胞集団(例えば、マクロファージ、組織マクロファージ、ランゲルハンス細胞、他の樹状細胞、Bリンパ球又はクッパー細胞)を介して免疫応答を誘発する。したがって、透過増強技術を用いて、又は用いずに、皮下注射又は経皮技術でのように、TCIでは、真皮を穿孔しない。場合によって、抗原は、毛包又は皮膚器官(例えば、汗腺、油腺)を介して角質層を通過しうる。
【0053】
実施例のような細菌性ADPリボシル化外毒素(bARE)での経皮免疫は、抗原提示細胞(APC)のうちで最も有効であると知られている表皮ランゲルハンス細胞をターゲットとしうる。APCの成熟は、形態学及び表現型によって判断することができる(例えば、MHC II群分子、CD83又は同時刺激性(co−stimulatory)分子の発現)。我々は、bAREは、無損傷皮膚に表皮的に適用されると、ランゲルハンス細胞を活性化するようであることを発見した。トリプシン分割されたbAREなどのアジュバントは、ランゲルハンス細胞活性を増強させる。リンパ球に抗原を提示するAPCとして作用して、強力な抗体応答を誘発する場合、ランゲルハンス細胞は、抗原の食細胞活動を介して特異的免疫応答及びリンパ節への移動を指示とする。皮膚は通常、病原体に対するバリアと考えられているが、このバリアの不完全さは、皮膚を介して侵入する微生物に対する免疫応答を統合するように設計されている表皮に分布している数多くのランゲルハンス細胞によって証明されている。Udeyによると(Clin.Exp.Immunol.、107:s6−s8、1997):
「ランゲルハンス細胞は、骨髄由来細胞であり、これは、全ての哺乳動物の重層扁平上皮に存在している。これは、補助細胞活性の全てを含み、これは、非炎症性表皮に存在し、最近のパラダイムでは、外皮的に適用される抗原を対象とする免疫応答の開始及び伝播に必須である。ランゲルハンス細胞は、強力な補助細胞(「樹状細胞」)ファミリーの一員であり、これは、稀にしか現れないが、表皮及び固体器官、さらにリンパ組織に広く分布している。
現在は、ランゲルハンス細胞(及び、おそらく他の樹状細胞)は、少なくとも2つの異なる段階を伴うライフサイクルを有する。表皮に位置するランゲルハンス細胞は、抗原捕捉性「歩哨(sentinel)」細胞の規則的なネットワークを構成している。表皮ランゲルハンス細胞は、微生物を含む粒子状物質を摂取することができ、複合抗原の有効なプロセッサである。しかしながら、これらは、僅かなレベルのみのMHC I及びII群抗原及び同時刺激分子(ICAM−1、B7−1及びB7−2)を発現し、抗原刺激を受けていないT細胞の僅かな刺激物質である。抗原と接触した後に、いくつかのランゲルハンス細胞は活性化されて、表皮を出て、局所リンパ節のT細胞依存領域へと移動し、ここで、成熟樹状細胞として局在化する。表皮を出て、リンパ節に移動する過程で、抗原を有する表皮ランゲルハンス細胞(ここでは、「メッセンジャー」)は、形態、表面表現型及び機能に関して劇的な変化を示す。表皮ランゲルハンス細胞とは異なり、リンパ球樹状細胞は主に、非貪食性で、タンパク質抗原は不十分にしか処理しないが、高レベルのMHC I群及びII群抗原及び様々な共同刺激分子を発現し、同定されている未刺激T細胞の最も強力な刺激物質である」。
【0054】
ランゲルハンス細胞の強力な抗原提示能は、経皮送達される免疫原及びワクチンのために利用することができる。皮膚免疫系を使用する免疫応答は、処方物を角質層(即ち、角化細胞及び脂質からなる皮膚の最上層)中のランゲルハンス細胞のみに送達し、次いで、ランゲルハンス細胞を活性化させて、抗原を摂取させ、B細胞小胞及び/又はT細胞依存領域に移動させ、B及び/又はTリンパ球に抗原を提示させる。bARE以外の抗原(例えば、毒素、コロニー形成又は病原性因子)が、ランゲルハンス細胞によって貪食される場合には、これらの抗原も、Tリンパ球に提示するためのリンパ節に移動し、次いで、その抗原に対して特異的な免疫応答を誘発するであろう。したがって、TCIの形態は、おそらくbARE又はその誘導体、ケモカイン、サイトカイン、PAMP又は、接触感作物質及びアジュバントを含む他のランゲルハンス細胞活性化物質によるランゲルハンス細胞の活性化である。ランゲルハンス細胞の皮膚占有率のサイズ又はその活性化状態を高めることにより、免疫応答の増強も期待される(例えば、アセトン前処理)。老齢対象又はランゲルハンス細胞欠損皮膚(即ち、UVダメージにより)では、ランゲルハンス細胞の占有率を補充することも可能である(例えば、トレチノイン前処理)。
【0055】
bAREなどのアジュバントは、全身的に注射又は投与すると、毒性が高いことが知られている。しかし、無損傷皮膚(即ち、外表皮的に)の表面に置かれると、これらは、全身的な毒性を誘発しないようである。したがって、経皮経路によって、全身的な毒性を伴うことなく、アジュバントの利点が可能となる。皮膚が、角質下まで(即ち、表皮付近又は表皮)しか侵入を受けず、真皮を貫通されない場合に、同様に毒性が発現しないと予想される。したがって、皮膚を介して免疫系の活性化を誘発できることにより、全身毒性を伴わずに強い免疫応答が誘発される。
【0056】
親和性成熟及び、主にIgG抗体にスイッチするイソタイプによって誘発される抗体応答の強さは通常、T細胞の助けによって達成され、Th1及びTh2経路の両方の活性化は、IgG1及びIgG2aの産生により触発される。もしくは、広い抗体応答は、胸腺非依存性抗原1型(Ti−1)によって誘発されることもあり、これは直接に、Bリンパ球を活性化させるか、MHC II群、CD25、CD40、B7−1/CD80、B7−2/CD86及びICAM−1分子のアップレギュレーションなどのBリンパ球に対する同様の活性化効果を有しうる。
【0057】
一般に知られている皮膚免疫応答のスペクトルは、アトピー及び接触皮膚炎に代表される。ランゲルハンス細胞活性化の病原性発現である接触皮膚炎は、ランゲルハンス細胞により支配され、これは、抗原を貪食し、リンパ節に移動させ、抗原に提示し、皮膚に移動するTリンパ球を感作し、侵された皮膚部位の所で生じる激しい破壊性細胞応答を誘発する。このような応答は通常、抗原特異性IgG抗体と関連しているとは知られていない。アトピー性皮膚炎も同様に、ランゲルハンス細胞を利用しうるが、Th2細胞と同定されており、通常、高レベルのIgE抗体と関連している。
【0058】
他方で、bAREでの経皮免疫は、有効かつ望ましい免疫応答をもたらす。普通、誘発される高レベルのIgGにより生じるアトピー又は接触皮膚炎に典型的な所見は存在しない。皮膚表面に適用された毒素又はE.coli易熱性エンテロトキシンは、免疫の24、48及び120時間後に、リンパ球浸潤の不在下に免疫を達成することができる。臨床前試験で見られた僅かな皮膚反応性は、簡単に治療することができた。このことは、経皮免疫がランゲルハンス細胞を用いることを示している。それというのも、これらは、「非炎症表皮に存在する補助細胞活性の全てを含み、最近のパラダイムでは、経皮的に適用された抗原を対象とする免疫応答の開始及び伝播に必須である」(Udey、1997)ためである。この場合、経皮免疫応答の独自性は、高レベルの抗原特異性IgG抗体並びに産生される抗体のタイプ(例えば、IgM、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3及びIgA)及び通常は抗原特異性IgE抗体の不在の両方によっても示される。アトピー又接触皮膚炎と同時に存在して、抗原提示細胞及びTリンパ球の十分な活性化が経皮応答で生じた場合には、経皮免疫は、皮膚炎症と協力して生じると考えることができる。
【0059】
ランゲルハンス細胞の経皮ターゲッティングは、その抗原提示機能の全て又は一部を不活性化する抗原と協力して使用して、免疫を調節するか、感作を予防することもできる。ランゲルハンス活性化又は他の皮膚免疫細胞を調節するための技術には例えば、抗炎症ステロイド又は非ステロイド薬(NSAID);シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、シクロホスファミド、グルココルチコイド又は他の免疫抑制剤;インターロイキン−10;インターロイキン−1モノクローナル抗体(mAB)又は可溶性受容体アンタゴニスト(RA);インターロイキン変換酵素(ICE)阻害剤;又はスーパー抗原を介して、例えば表皮ランゲルハンス細胞枯渇により誘発されるブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)を介しての枯渇が含まれる。同様の化合物を、ランゲルハンス細胞の自然免疫応答を調節し、異なるTヘルパー応答(Th1又はTh2)を誘発するために使用することができるか、免疫の強い副作用を低減するために皮膚炎症応答を調節することができる。同様に、免疫抑制剤を別に投与することにより、又は処方物と共に免疫抑制剤を同時投与することにより、免疫の前、その間又はその後に、リンパ球を免疫抑制することができる。例えば、ICEの抑制剤を加えることで、不利な皮膚反応を軽減することができるが、アレルギー性又は刺激性接触過敏性を通常はもたらす薬剤で、有効な全身保護免疫応答を誘発することができる。
【0060】
抗原
経皮免疫系は、免疫応答をもたらす特殊な細胞(例えば、抗原提示細胞、リンパ球)に対する作用物質を送達する。群としてこれらの作用物質は、抗原と称される。抗原は、例えば、炭水化物、糖脂質、糖タンパク質、脂質、リポタンパク質、リン脂質、ポリペプチド、これらの複合体又は、免疫応答を誘発すると知られている他の物質などの化学的構造からなってよい。抗原は、キャリヤと複合していてもよい。抗原は、例えば、細菌又はビリオンなどの全生物体として提示されてもよく;抗原は、全細胞又は膜のみからの抽出物又は溶解産物から得ることもできるか;抗原は、組換え技術により化学的に合成又は生産することもできる。抗原は、可溶化又は分散により、処方物に導入することができる。
【0061】
本発明の抗原は、好ましくは親和性タグ又はエピトープタグとの融合体として、組換え技術により発現することができる。遊離の、又はキャリヤタンパク質に複合したオリゴペプチドの化学合成を、本発明の抗原を得るために使用することもできる。糖ペプチドは、ポリペプチドの1タイプと考えられる。6基から20基からなるオリゴペプチド長さが好ましい。ポリペプチドも、分枝鎖構造として合成することができる。抗原性ポリペプチドには例えば、合成又は組換えB細胞及びT細胞エピトープ、普遍的(universal)T細胞エピトープ及び1種の生体又は疾患からの混合T細胞エピトープ及び別の生体又は疾患からのB細胞エピトープが含まれる。組換え技術又はペプチド合成を介して得られる抗原、さらに天然源又は抽出物から得られた抗原を、抗原の物理的及び化学的特性により、好ましくは分割又はクロマトグラフィにより精製することができる。組換え体は、抗原断片と組み合わせるか、それと融合させて、キメラにすることができる。多価抗原処方物を使用して、同時に、1個より多い抗原に対する免疫応答を誘発させることができる。複合体を使用して、複数抗原に対する免疫応答を誘発させるか、免疫応答を強化するか、その両方を行うことができる。経皮免疫を使用して、経口、鼻又は他の非経口経路などによる他の免疫系路により初めは誘発された応答を強化することができる。このような経口/経皮又は経皮/経口免疫は、粘膜免疫が防御と関連している疾患で粘膜免疫を強化するために特に重要である。
【0062】
抗原を、緩衝液又は水又はアルコール又はDMSOなどの有機溶剤中に可溶化するか、ゲル、エマルション、脂質ミセル又はベシクル及びクリームに導入することができる。適切な緩衝液には、これらに限らないが、Ca++/Mg++不含のリン酸緩衝食塩水、リン酸緩衝食塩水、正常食塩水(水中に150mMのNaCl)及びHepes又はトリス緩衝液が含まれる。中性緩衝液に可溶性ではない抗原は、10mMの酢酸中で可溶化して、PBSなどの中性緩衝液で所望の容量に希釈することができる。酸性pHでのみ可溶性な抗原の場合には、酸性pHのPBS酢酸塩を、希酢酸中で可溶化した後に、希釈剤として使用することができる。ジメチルスルホキシド及びグリセロールが、本発明で使用するために適した非水性緩衝液である。
【0063】
疎水性抗原は、洗浄剤又は界面活性剤、例えば、膜貫通(membrane−spanning)ドメインを含有するポリペプチド中で可溶化することができる。さらに、リポソームを含有する処方物では、洗浄剤溶液中の抗原(例えば、細胞膜抽出物)を、脂質と混合し、次いで希釈、透析又はカラムクロマトグラフィにより界面活性剤を除去することにより、リポソームを生じさせることができる。一定の抗原(例えば、膜タンパク質)は、それ自体可溶性である必要はないが、脂質膜(例えば、ヴィロソーム)、ビリオン単独の懸濁液、あるいは抗原提示細胞を活性化することにより取り込むことができる熱不活化細菌又は微小球の懸濁液(例えば、オプソニン作用)中に直接挿入することができる。抗原を、WO第99/43350号に記載されている浸透増強剤と混合することもできる。
【0064】
ヒト又は動物対象のワクチン接種に使用することができ、特定の病原体に対して特異的な免疫応答を誘発する多くの抗原、さらに、抗原を調製し、抗原の適切な容量を決定し、免疫応答を誘発するためにアッセイし、病原体(例えば、細菌、ウイルス、カビ又は原生動物)による感染を治療する方法は、当技術分野で知られている。アレルゲン、さらに、哺乳類ホスト(例えば、ヒト、動物)の自己抗原が、病原体に由来しない抗原の例である。経皮免疫のための処方物及びワクチンを製造するために使用される抗原は、天然製品そのもの、その遺伝的に改変又は化学的に合成された形、その断片、融合体又は複合体であってよい。免疫応答は通常、抗原の一部のみを認識する(例えば、1個又は複数の免疫原性エピトープ)。
【0065】
Plotkin及びMortimer(Vaccine、2nd Ed.、Philadephia:W.B.Saunders、1994)は、特定の病原体に特異的な免疫応答を誘発するためにヒト又は動物にワクチン接種するために使用することができる抗原、さらに、抗原を調製し、抗原の適切な用量を決定し、免疫応答の誘発をアッセイし、病原体による感染を治療するための方法を提供する。
【0066】
細菌には例えば、炭疽(anthrax)、カンピロバクター(Campylobacter)、コレラ菌(Vibrio cholera)、クロストリジウムディフィシレ(Clostridium difficile)を含むクロストリジウム属、ジフテリア(Diphtheria)、腸管出血性大腸菌(enterohemorrhagic E.coli)、毒素原性大腸菌(enterotoxigenic E.coli)、ジアルジア(Giardia)、淋菌(gonococcus)、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)、ヘモフィルスインフルエンザB(Hemophilus influenza B)、型別不能ヘモフィルスインフルエンザ(Hemophilus influenza nontypeable)、レジオネラ(Legionella)、髄膜炎菌(meningococcus)、結核、ヒト型結核をもたらす微生物を含むミコバクテリア(Mycobacteria)、百日咳、肺炎球菌(pneumococcus)、サルモネラ(salmonella)、シゲラ(shigella)、スタヒロコッカス(Staphylococcus)、A群β溶血ストレプトコッカス(Group A beta−hemolytic streptococcus)、ストレプトコッカスB(StreptococcusB)、テタヌス(tetanus)、ボレリアブルクドルフィ(Borrelia burgdorfi)及びエルシニア(Yersinia)が含まれる。これらの産物を抗原として使用することもできる。抗原には例えば、毒素、トキソイド、そのサブユニット又はこれらの組合せ;ビルレンス又は定着因子;及び産物が含まれる。
【0067】
ウイルスには例えば、アデノウイルス、デングセロタイプ1から4、エボラ、エンテロウイルス、ハンタウイルス、肝炎セロタイプAからE、単純ヘルペスウイルス1又は2、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ、麻疹、ノーウォーク、日本ウマ脳炎、パピローマウイルス、パルボウイルスB19、ポリオ、狂犬病、RSウイルス、ロタウイルス、風疹、はしか、セントルイス脳炎、ワクシニア、マラリア抗原などの他の抗原をコードする遺伝子を含有するウイルス発現ベクター、水痘及び黄熱が含まれる。これらのウイルス産物又は誘導体を、抗原のための源として使用することができる。
【0068】
カビには、体部白癬、爪白癬、スポロトリクム症、アスペルギルス症、カンジダをもたらす実体及び他の病原性カビが含まれる。そのカビ産物又は誘導体を、抗原のための源として使用することができる。
【0069】
原生動物には例えば、赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)、プラスモジウム(Plasmodium)、リーシュマニア(Leishmania)及び蠕虫(Helminthes);住血吸虫(Schistosomes);及びこれらの産物が含まれる。その原生動物産物又は誘導体を、抗原のための源として使用することができる。
【0070】
粘膜表面上で、又はそれを介して侵入する病原体、例えば、細菌のアクチノマイセス属の病原体種、エロモナス(Aeromonas)、バシラス(Bacillus)、バクテロイデス(Bacteroides)、ボルデテラ(Bordetella)、ブルセラ(Brucella)、カンピロバクター(Campylobacter)、キャプノサイトファガ(Capnocytophaga)、クラミジア(Clamydia)、クロストリジウム(Clostridium)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、エイケネラ(Eikenella)、エリジペロスリックス(Erysipelothrix)、エシェリキア(Escherichia)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、ヘモフイルス(Hemophilus)、クレブシエラ(Klebsiella)、レジオネラ(Legionella)、レプトスピラ(Leptospira)、リステリア(Listeria)、マイコバクテリア(Mycobacterium)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、ナイセリア(Neisseria)、ノカルジア(Nocardia)、パスツレラ(Pasteurella)、プロテウス(Proteus)、シュードモナス(Pseudomonas)、リケッチア(Rickettsia)、サルモネラ(Salmonella)、セレノモナス(Selenomonas)、シゲラ(Shigella)、スタヒロコッカス(Staphylococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、トレポネーマ(Treponema)、ビブリオ(Vibrio)及びヴェルシニア(Versinia);アデノウイルス群からの病原性ウイルス株、コロナウイルス(Coronavirus)、ヘルペスウイルス、オルソミクソウイルス(Orthomyxovirus)、ピコルノウイルス(Picornovirus)、ポックスウイルス(Poxvirus)、レオウイルス(Reovirus)、レトロウイルス(Retrovirus)、ロタウイルス、アスペルギルス属からの病原性カビ、ブラストミセス、カンジダ、コクシジオイデス(Coccidiodes)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ヒストプラスマ(Histoplasma)及びフィコマイス(phycomyces)及びアイメリア、エントアメーバ、ギアリダ及びトリコモナス属の病原性原生生物が、特に重要である。
【0071】
癌、アレルギー及び自己免疫疾患の治療として、ワクチン接種を使用することもできる。例えば、腫瘍抗原(例えば、HER2、前立腺特異的抗原)のワクチン接種は、抗体、CTL及びリンパ球増殖の形の免疫応答を誘発し、これにより、腫瘍細胞を認識し、撲滅する体の免疫系が可能となる。ワクチン接種のために使用することができる腫瘍抗原が、白血病、リンパ腫及び黒色腫に関して記載されている。動物(例えば、トリ、ネコ、イヌ、げっ歯類)、ゴキブリ、ノミ、ダニ及び植物花粉(例えば、草、樹木)が、アレルゲンとして知られている。T細胞受容体又は自己抗原(例えば、すい島抗原)のワクチン接種は、自己免疫疾患の進行を停止させる免疫応答を誘発しうる。
【0072】
アジュバント
処方物は、アジュバントを含有するが、単一の分子が、アジュバントと抗原特性の両方を有してもよい(例えば、ADPリボシル化外毒素)。大抵のアジュバントは、免疫原活性を有し、抗原と見なされるので、アジュバントも、抗原の前記の特性及び特徴を有すると予測される。例えば、アジュバント及び抗原を、同じ技術を使用して調製することができる(前記参照)。
【0073】
アジュバントは、おそらく抗原提示細胞(例えば、皮膚の様々な層中の樹状細胞、特に、ランゲルハンス細胞)の活性化を介して、特異的に、又は非特異的に抗原特異的免疫応答を強化するために使用することができる物質である。Elson et al.も参照(Handbook of Mucosal Immunology、Academic Press、1994)。活性化は当初、表皮又は真皮中で生じうるが、効果は、リンパ系及び循環を介しての樹状細胞移動として持続しうる。アジュバントを処方し、抗原と共に、又はこれを伴わずに適用するが、通常、アジュバントによる抗原提示細胞の活性化は、抗原の提示前に生じる。もしくは、これらは、短い時間間隔内で別々に提示されるが、同じ解剖学的領域をターゲットとしてよい(例えば、同じ排出性リンパ節界)。
【0074】
アジュバントには例えば、ケモカイン(例えば、デフェンシン、HCC−1、HCC−4、MCP−1、MCP−3、MCP−4、MIP−1α、MIP−1β、MIP−1δ、MIP−3α、MIP−2、RANTES);ケモカイン受容体の他のリガンド(例えば、CCR1、CCR−2、CCR−5、CCR−6、CXCR−1);サイトカイン(例えば、IL−1β、IL−2、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12;IFN−γ、TNF−α;GM−CSF);これらのサイトカインのための受容体の他のリガンド、細菌のDNA又はオリゴヌクレオチド中の免疫賦活性CpGモチーフ;ムラミルジペプチド(MDP)及びその誘導体(例えば、ムラブチド(murabutide)、トレオニル−MDP、ムラミルトリペプチド);熱ショックタンパク質及びその誘導体;eIF4aのリーシュマニア同族体及びその誘導体;細菌ADPリボシル化外毒素及びその誘導体(例えば、遺伝突然変異体、A及び/又はBサブユニット含有断片、化学的にトキソイド化した変異型;細菌ADPリボシル化外毒素又はその誘導体を含有する化学的複合体又遺伝的組換え体;C3dタンデム配列;脂質A及びその誘導体(例えば、モノホスホリル又はジホスホリル脂質A、脂質A類似体、AGP、AS02、AS04、DC−Chol、Detox、OM−174);ISCOMS及びサポニン(例えば、Quil A、QS−21);スクアレン;超抗原;又は塩(例えば、水酸化又はリン酸アルミニウム、リン酸カルシウム)が含まれる。他の有効なアジュバントに関しては、Nohria et al.(Biotherapy、7:261−269、1994)及びRichards et al.(in Vaccine Design、Eds.Powell et al.、Plenum Press、1995)も参照。
【0075】
抗体又は細胞性エフェクター、特異的抗体アイソタイプ(例えば、IgM、IgD、IgA1、IgA2、分泌性IgA、IgE、IgG1、IgG2、IgG3及び/又はIgG4)又は特異的T細胞サブセット(例えば、CTL、Th1、Th2及び/又はTDTH)が優先的に誘発されるように、アジュバントを選択することができる。例えば、抗原提示細胞は、クラスII制限的抗原を前駆体CD4+T細胞を提示し、Th1又はTh2経路に侵入しうる。活発にサイトカインを分泌するTヘルパー細胞が主な、エフェクター細胞であり;これは、静止している場合には、免疫記憶細胞である。免疫記憶細胞の再活性化により、免疫記憶エフェクター細胞が産生される。Th1は特徴的にIFN−γを分泌し(TNF−β及びIL−2も分泌されうる)、細胞性免疫の「ヘルプ」に関連し、Th2は特徴的にIL−4を分泌し(IL−5及びIL−13も分泌されうる)、液性免疫の「ヘルプ」に関連している。疾患病理に依存して、Th2応答(例えば、抗原特異性抗体)に対してTh1応答(例えば、抗原特異性細胞溶解細胞)を選ぶように、アジュバントを選択することができる。
【0076】
非メチル化CpGジヌクレオチド又は同様のモチーフは、Bリンパ球及びマクロファージを活性化させることが知られている(米国特許第6218371号参照)。細菌DNAの他の形態をアジュバントとして使用することもできる。細菌DNAは、その病原体の起源を免疫系に認識させ、先天免疫応答を刺激して適応免疫応答をもたらすパターンを有する一群の構造の1つである。これらの構造は、病原体関連分子パターン(Pathogen−associated molecular patterns;PAMP)と称され、リポ多糖類、タイコ酸、非メチル化CpGモチーフ、二本鎖RNA及びマンニン(mannin)を含有する。PAMPは、炎症応答を仲介し、T細胞機能の同時刺激物質として作用し、エフェクター機能を制御しうる内在シグナルを誘発する。これらの応答を誘発するPAMPの能力は、アジュバントとしてのその可能性で役割を果たしており、そのターゲットは、樹状細胞及びマクロファージなどの抗原提示細胞である。皮膚の抗原提示細胞は、皮膚を透過したPAMPにより刺激されるようである。例えば、樹状細胞の1タイプであるランゲルハンス細胞は、経皮的には低い免疫原性の分子を有する皮膚では、溶液のPAMPにより活性化されて、移動し、この低い免疫原性の分子をリンパ節中のT細胞に提示し、これにより、低い免疫原性の分子に対する抗体応答を誘発させる。PAMPは、コレラ毒素などの他の皮膚アジュバントと一緒に使用されると、様々な同時刺激分子を誘発し、例えば、Th2からTh1応答への免疫応答を誘導するように様々なエフェクター機能を制御することができる。
【0077】
大抵のADPリボシル化外毒素(bARE)は、A:Bへテロ二量体として構成されており、この際、Bサブユニットは、受容体結合活性を有し、Aサブユニットは、ADPリボシルトランスフェラーゼ活性を有する。代表的なbAREには、コレラ毒素(CT)、E.coli易熱性エンテロトキシン(LT)、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素A(ETA)、百日咳毒素(PT)、C.ボツリヌス毒素C2、C.ボツリヌス毒素C3、C.リモスム外酵素、B.セレウス外酵素、シュードモナス外毒素S、S.オーレウス(S.aureus)EDIN及びB.スファエリクス(B.sphaericus)毒素が含まれる。例えば、トリプシン分割部位の突然変異を含む突然変異bARE(例えば、Dickenson et al.、Infect Immun、63:1617−1623、1995)又はADPリボシル化に影響を及ぼす突然変異(例えば、Douce et al.、Infect Immun、65:28221−282218、1997)を使用することができる。
【0078】
TCIは、CT、LT又そのサブユニット(例えば、CTB又はLTB)のガングリオシドGM1結合活性を介して達成することができる。ガングリオシドGM1は、全ての哺乳動物細胞中に存在する汎存性(ubiquitous)細胞膜糖脂質である。ペンタマーCTBサブユニットは、細胞表面に結合し、親水性細孔が生じて、これにより、Aサブユニットが、脂質二重層へと挿入しうる。APC上の他の結合ターゲットを使用することもできる(例えば、ETAは、α2−マクログロブリン受容体−低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質と結合する)。LTBサブユニットは、ガングリオシドGM1、加えて、他のガングリオシドに結合し、その結合活性によって、LTが、皮膚上で極めて免疫原性であるという事実が説明される。
【0079】
bARE又はBサブユニット含有断片又その複合体を伴うTCIは、そのガングリオシドGM1結合活性を必要とする。マウスをCT、CTA及びCTBで経皮的に免疫化する場合、免疫応答を誘発するためにCT及びCTBを必要とした。CTAは、ADPリボシル化外毒素活性を有するが、結合活性を有するCT及びCTBだけが、免疫応答を誘発することができ、このことは、Bサブユニットが、皮膚を介しての免疫には必要かつ十分であることを示している。CTBがその細胞表面に結合することにより、ランゲルハンス細胞又は他のAPCは活性化されて、経皮免疫応答が生ずると、我々は結論付ける。
【0080】
異なる細胞結合部位を有するにも関わらず、CT、LT、ETA及びPTは、IgG抗体を誘発するが、IgE抗体は誘発しない経皮免疫のための強力なアジュバントである。CTを伴わないCTBも、IgG抗体を誘発しうる。したがって、bARE及びその誘導体の両方が、皮膚に経皮的に適用されると有効に免疫しうる。しかしながら、アジュバント及び抗原としての天然LTは明らかに、天然CTほど強力ではない。しかし活性化bAREは、経皮免疫系での弱い免疫原性抗原のためのアジュバントとして作用しうる。したがって、1種又は複数の抗原を用いての治療的免疫を、予防的又は治療的免疫応答を誘発する抗原提示細胞の免疫刺激と別々に、又はそれと一緒に使用することができる。
【0081】
通常、毒素を、化学的に不活化して、免疫原性のままではあるが毒性は低いトキソイドを生じさせることができる。毒素ベースの免疫原及びアジュバントを使用する経皮免疫系により、これらの疾患に対する保護に適した抗毒素レベルが達成されると、我々は考えている。抗毒素抗体を、毒素又はその遺伝的に解毒されたトキソイドを用いる、あるいはトキソイド及びアジュバントを用いる免疫を介して誘発することができる。変更されたADPリボシル化外毒素活性又はトリプシン分割部位を有するが、結合活性は有しない遺伝的にトキソイド化された毒素は、経皮免疫で使用される抗原提示細胞の非毒性活性化物質として特に有効であり、毒素使用に対する懸念を低減しうると考えられる。
【0082】
bAREは、経皮免疫を介して抗原特異性CTLを誘発するためのアジュバントとしても作用しうる。bAREアジュバントを、例えば、炭水化物、ポリペプチド、糖脂質及び糖タンパク質抗原を含む他の抗原と化学的に複合させることができる。毒素、そのサブユニット又はトキソイドとこれらの抗原との化学的複合は、経皮的に適用された場合のこれらの抗原に対する免疫応答を増強すると予測される。毒素の毒性に関する問題を克服し(例えば、ジフテリア毒素は、1分子が細胞を殺しうるほどの毒性を有することが知られている)、破傷風のような強力な毒素を用いて作業するという問題を克服するために、数人の従事者が、遺伝的に製造されたトキソイドに対する組換え手法に取り組んできた。これは、遺伝的欠失によりADPリボシルトランスフェラーゼの触媒活性を不活化することに基づく。これらの毒素は、そのままの毒素の結合能は保持しているが、毒性は欠いている。このような遺伝的にトキソイド化された外毒素は、経皮免疫応答を誘発し、アジュバントとして作用すると予測される。これらは、経皮免疫系の利点はもたらしうるが、その際、安全性に関する懸念は生じない。それというのも、トキソイドは、毒性を有するとは考えられないためである。しかしながら、トリプシン分割などの技術を介しての活性化により、トリプシン様酵素を欠いている皮膚を介してのLTのアジュバント品質が増強されると予測される。加えて、毒素を化学的に変性するためのいくつかの技術が存在し、これらは、同じ問題に取り組んでいる。これらの技術は、特定の適用、特に小児適用で重要であり、この際、摂取された毒素は、不利な反応をもたらしうる。
【0083】
アジュバントを、天然源から生化学的に精製するか(例えば、pCT又pLT)、組換えにより製造することができる(例えば、rCT又はrLT)。ADPリボシル化外毒素を、タンパク質分解(即ち、活性化)の前又は後に精製することができる。ADPリボシル化外毒素のBサブユニットを使用することもでき;タンパク質分解の後に天然酵素から精製するか、酵素の全体コード領域の断片から製造することができる。ADPリボシル化外毒素のサブユニットは、別々に(例えば、CTB又はLTB)、又は一緒に(例えば、CTA−LTB、LTA−CTB)、化学的複合又遺伝的融合により使用することができる。その細胞膜受容体に結合する能力を保持しているADPリボシル化外毒素の断片を生化学的に精製又は組換えにより生産し、次いで、Bサブユニットの代わりに使用することもできる。
【0084】
点突然変異(例えば、1回、2回又は3回アミノ酸置換)、欠失(例えば、プロテアーゼ認識部位)及びADPリボシル化外毒素の単離された機能領域を、アジュバントとして使用することもできる。毒性が低いか、そのADPリボシル化活性を失っているが、そのアジュバント活性を保持している誘導体は、記載されている。E.coli易熱性エンテロトキシンの特異的突然変異体には、LT−K63、LT−R72、LT(H44A)、LT(R192G)、LT(R192G/L211A)及びLT(Δ192〜194)が含まれる。毒性は、Y−1副腎皮質細胞アッセイでアッセイすることができる(Clements and Finkelstein、Infect.Immun.、24:760−769、1979)。ADPリボシル化は、NADアグマチンADP−リボシルトランスフェラーゼアッセイでアッセイすることができる(Moss et al.、J.Biol.Chem.、268:6383−6387、1993)。特殊なADPリボシル化外毒素、その誘導体及びその製造プロセス及び特徴は、米国特許第4666837号、同第4935364号、同第5308835号、同第5785971号、同第6019982号、同第6033673号及び同第6149919号に記載されている。
【0085】
ランゲルハンス細胞の活性化物質を、アジュバントとして使用することもできる。このような活性化剤の例には:熱ショックタンパク質の誘導因子;接触感作物質(例えば、トリニトロクロロベンゼン、ジニトロフルオロベンゼン、ナイトロジェン−マスタード、ペンタデシルカテコール);毒素(例えば、志賀毒素、ブドウ球菌(Staph)エンテロトキシンB);リポ多糖類(LPS)、脂質A又はこれらの誘導体;細菌DNA;ケモカイン、サイトカイン、分化ファクター又は成長因子(例えば、TGFβスーパーファミリーのメンバー);及び細胞外カルシウム又は細胞内[Ca++]を増やすカルシウムイオノホアが含まれる。米国特許第6210672号参照。
【0086】
抗原及びアジュバントの両方であるLTの場合のように、免疫化抗原が、十分なランゲルハンス細胞活性化能を有する場合には、別のアジュバントは必要とされない。もしくは、このような抗原は、アジュバントを必要とするとは考えられない。それというのも、これらは、十分に免疫原性であるためである。生細胞又はウイルス製剤、弱毒化生細胞又はウイルス、死細胞、不活化ウイルス及びDNAプラスミドを、経皮免疫のために有効に使用することができると考えられる。皮膚病変を誘発することなく、免疫応答を誘発するために、低濃度のランゲルハンス細胞の接触感作物質又はその他の活性化物質を使用することもできる。
【0087】
ADPリボシル化因子によりADPリボシル化外毒素のアジュバント活性を増強するために、処方物に界面活性剤及び/又はリン脂質を加えるなどの、アジュバントの活性を増強するための他の技術も有効でありうる。1種又は複数のADPリボシル化因子(ARF)を、bAREのアジュバント活性を増強するために使用することができる(例えば、ARF1、ARF2、ARF3、ARF4、ARF5、ARF6、ARD1)。同様に、1種又は複数のARFを、そのアジュバント活性を増強するためにADPリボシル化外毒素と共に使用することもできる。
【0088】
望ましくない特性又は有害な副作用(例えば、アレルギー性又は過敏性反応;アトピー、接触皮膚炎又は湿疹;全身毒性)を、経皮免疫でのその有効性を破壊することなく、修飾により低減することができる。修飾は、例えば、可逆的化学修飾(例えば、タンパク質分解)の除去又は、処方物の1種又は複数の成分を免疫系から可逆的に隔離するコーティング中へのカプセル封入を伴う。脂質ベシクル中へのカプセル封入は、経皮免疫のためには必要なく、マイナスの効果を有すると明らかになっているが、例えば、処方物の1種又は複数の成分を、送達のために粒子中にカプセル封入することができる(例えば、マイクロスフェア、ナノ粒子)。粒子の食細胞活動は単独で、MHC I群及び/又はII群分子及び/又は共同刺激分子(例えば、CD40、CD80及びCD86などのB7ファミリー員)の発現をアップレギュレーションすることにより、抗原提示細胞の活性化を増強することができる。抗原提示細胞を活性化することによりこのような分子をアップレギュレーションする別の方法も知られている(前記参照)。
【0089】
処方
薬剤処方物を製造するためのプロセスはよく知られている。処方物の成分を、薬剤学的に許容されるキャリヤ又は溶剤と、さらに、場合による添加物(例えば、少なくとも1種の結合剤、緩衝剤、着色剤、乾燥剤、希釈剤、湿潤剤、防腐剤、安定剤、他の賦形剤又これらの組合せ)の組合せと組み合わせることができる。一般に、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、6thEd.(electronic edition、1998);Remington’s Pharmaceutical Sciences、22nd(Gennaro、1990、Mack Publishing);Pharmaceutical Dosage Forms、2ndEd.(various editors、1989−1998、Marcel Dekker);及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(Ansel et al.、1994、Williams & Wilkins)参照。
【0090】
良好な製造実施が、薬剤工業では知られており、官庁により規制されている(例えば、米国食品薬品局)。処方物の所定の成分を十分な量の適切な溶剤に溶解させることにより、液体処方物を調製することができる。通常、処方物の様々な成分を、分散媒体を含有する賦形剤に導入することにより、分散液を調製する。液体処方物から固体形を製造するために、溶剤を室温又はオーブン中で蒸発させることができる。表面上に窒素又は空気流を吹き付けることにより、乾燥を促進する;もしくは、真空乾燥又は凍結乾燥を使用することができる。固体剤形(例えば、粉末、顆粒、ペレット、錠剤)、液体剤形(例えば、アンプル、カプセル、バイアル中の液体)及びパッチを、処方物の少なくとも1種の活性原料又は成分から製造することができる。
【0091】
様々な剤形を製造するための適切な手順及びパッチの製造は、知られている。少なくとも1種の活性原料又は成分の固体又は液体形をカプセル封入するか、これらを別々の区画又は室に保持することにより、処方物を製造することもできる。パッチは、溶剤(例えば、生理食塩水)を含有する区画を含有してもよく、これは、圧力により破れて、その後パッチの乾燥処方物を可溶化する。様々な剤形を製造し、パッチを生産するために適した手順は知られている。各用量サイズ及び対象への投与間隔を利用して、容器、区画又はチャンバーの適切なサイズ及び形を決定することができる。
【0092】
ヒト又は動物に投与するために適した薬剤学的に許容される組成物を提供することができるようなキャリヤ又は適切な量の溶剤と共に、有効量の活性成分(例えば、少なくとも1種のアジュバント及び/又は1種又は複数の抗原)を処方物は含有する。賦形剤を含有する処方物は、クリーム、エマルション、ゲル、ローション、軟膏、ペースト、溶液、懸濁液又は当技術分野で知られている他の液体形であってよく、特に、皮膚水和を増強するものである。パッチでは、処方物の連続的なコーティングを、基材に適用することができるか、いくつかの処方物を含有する層を、積層して、活性成分のためのその能力を高めることができる。
【0093】
用量及び投与スケジュール内での活性成分の相対量を、対象(例えば、動物又はヒト)への有効な投与のために適切に調整することができる。この調整は、対象の特定の疾患又は状態に、さらに治療又は予防が意図されているかどうかに依存してよい。対象への処方物の投与を簡単にするために、各単位用量は、免疫の1回ラウンドのために予め決定された量で、活性成分を含有する。
【0094】
タンパク質不安定性、加水分解及び変性を含む劣化には、数多くの原因が存在する。変性の場合には、タンパク質の立体配座が妨害され、タンパク質が、通常の球状構造から開いてしまう。その本来の立体配座に再び戻るよりもむしろ、疎水性相互作用によって、分子同士が集中(即ち、凝集)するか、又は不自然な立体配座に再び戻る。これらの結果のいずれかは、抗原又はアジュバント活性の減損又は損失を伴いうる。安定剤を加えて、このような問題を少なくするか、防止することができる。
【0095】
処方物又はその製造の際の中間体を、保護剤(即ち、凍結保護物質及び乾燥安定剤)で予め処理し、次いで、氷晶形成を最低化するような冷却速度及び最終温度にする。凍結保護因子を適切に選択し、予め選択された乾燥パラメーターを使用することにより多くの場合に、処方物を、適切な所望の最終用途のために低温調製することができる。
【0096】
次の検討では、結合剤、緩衝液、着色剤、乾燥剤、希釈剤、湿潤剤、防腐剤及び安定剤などの付加的な添加剤を、その機能によって記載することを理解されたい。したがって、特定の化学薬品が、前記のいくつかの組合せとして作用することもある。このような化学薬品は、免疫学的に不活性とみなされる。それというのも、これらは、免疫応答を直接的には誘発せずに、抗原又はアジュバントの免疫活性を増強することにより、例えば、抗原又はアジュバントの変質あるいは乾燥及び水和サイクルの間の変性を低減することにより、応答を高めるからである。
【0097】
安定剤には、デキストラン及びデキストリンが含まれ;グリコール、アルキレングリコール、ポリアルカングリコール及びポリアルキレングリコール、糖及びデンプン、及びこれらの誘導体が適している。好ましい添加剤は、非還元糖及びポリオールである。特に、グリセロール、トレハロース、ヒドロキシメチル又ヒドロキシエチルセルロース、エチレン又はプロピレングリコール、トリメチルグリコール、ビニルピロリドン及びこれらのポリマーを加えることができる。アルカリ金属塩、硫酸アンモニウム、塩化マグネシウム及び界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤)は、タンパク質様アジュバント又は抗原を安定化し;場合によって、キャリヤ(例えば、寒天、アルブミン、ゼラチン、グリコーゲン、ヘパリン)を加え、凍結乾燥すると、さらに安定性を増強することができる。例えば、単糖類、二糖類、糖アルコール及びこれらの混合物(例えば、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、マンニトール、マンノース、ソルビトール、スクロース、キシリトール)などの糖と接触させることにより、ポリペプチドを安定化することもできる。ポリオールは、ポリペプチドを安定化することができ、水混和性又は水溶性である。アミノ酸、脂肪酸及びリン脂質、金属、還元剤及び金属キレート化剤を含む様々な他の賦形剤も、ポリペプチドを安定化しうる。
【0098】
安定剤又は他の賦形剤を適切に選択することにより、単一用量処方物を、ポリ(乳酸)(PLA)及びポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)マイクロスフェア中で安定化することができる。添加剤としてトレハロースを使用するのが有利である。それというのも、これは、非還元糖であり、したがって、タンパク質などのアミノ基を有する物質とアミノカルボニル反応を起こさないためである。高濃度の糖などの安定剤は、細菌及びカビなどの微生物の成長を撲滅するが、防腐剤は、微生物の成長を活発に除去するか(例えば、殺菌)、微生物の成長を低減する(例えば、静菌)する典型的な抗菌物質である。酸化防止剤を、処方物の活性成分の酸化を防止するために使用することもできる。
【0099】
乾燥した非液体(即ち、固体)の形で対象に投与することができる処方物又はパッチは、コールドチェーンを必要としない状態での貯蔵を可能にすると考えられる。抗原を、異種アジュバントと混合し、包帯の上に置いてパッチを生じさせ、完全に乾燥させることができる。次いで、この乾燥パッチを、一定期間、皮膚に直接接触させて、包帯と共に皮膚の上に置き、閉鎖性裏当て層(例えば、プラスチック又はワックスフィルム)でカバーして一定の場所に保持することができる。
【0100】
パッチ材料は、不織布又は織布であってよい(例えば、ガーゼ包帯)。層は、処理の間に積層することもできる。これは、非閉鎖性又は閉鎖性であってよいが、後者は、裏当て層には好ましい。付加的な放出ライナーは、可能ならばシリコーン又はフルオロタイプの剤でフィルムを変えることによって、著しい量の処方物を吸収しないのが好ましい。パッチを好ましくは、貯蔵のために、気密封止する(例えば、ホイル包装)。パッチを皮膚の上に保持して、パッチの成分を、様々な接着剤を使用して一緒に保持することができる。アジュバント及び/又は抗原の1種又は複数を、パッチの基材又は接着部分に導入することができる。通常、パッチは、平坦かつ柔軟で、均一な形で製造することができる。付加的な添加剤は、パッチの柔軟性を維持するための可塑剤、パッチと皮膚との付着を補助するための粘着性付与剤及び少なくとも処理の間、処方物の粘度を増加させるための増粘剤である。
【0101】
金属ホイル、セルロース、布(例えば、アセテート、木綿、レーヨン)、アクリルポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸エチレン)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、塩化ポリビニリデン(SARAN)、天然又は合成ゴム、シリコーンエラストマー及びこれらの組合せが、パッチ材料(例えば、包帯、裏当て層、放出ライナー)の例である。
【0102】
接着剤は、水性接着剤(例えば、アクリレート又はシリコーン)であってよい。アクリル接着剤は、複数の商業的源から入手することができる。アクリルポリマーは、C4〜C18脂肪族アルコールとメタクリル酸アルキルエステルとのコポリマーあるいはC4〜C18アルキルを有するメタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸及び又他の官能性モノマーからなるコポリマーであってよい。メタクリル酸アルキルエステルの例には、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸デシルなどが含まれる。
【0103】
官能性モノマーの例には、ヒドロキシル基を含有するモノマー、カルボキシル基を含有するモノマー、アミド基を含有するモノマー、アミノ基を含有するモノマーが含まれる。ヒドロキシル基を含有するモノマーには、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルなどのメタクリル酸ヒドロキシアルキルが含まれる。カルボキシル基を含有するモノマーには、アクリル酸、メタクリル酸など;リンゴ酸ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸;フマル酸;クロトン酸など;及び乾燥マレイン酸などのα−β不飽和カルボン酸が含まれる。アミド基を含有するモノマーの例は、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドなどのアルキルメタクリルアミド;ブトキシメチルアクリルアミド、エトキシメチルアクリルアミドなどのアルキルエチルメチロールメタクリルアミド;ジアセトンアクリルアミド;ビニルピロリドン;ジメチルアミノアクリレートが含まれる。共重合のための前記のモノマーに加えて、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、塩化ビニル、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどを使用することもできる。
【0104】
市販のアクリル接着剤は、商品名AROSET、DUROTAK、EUDRAGIT、GELVA及びNEOCRYLで販売されている。EUDRAGITポリマーは、ポリマーの多様なファミリーを生じさせ、その一般的な形態は、胃腸管と相容性のポリアクリル酸又はポリメタクリル酸バックボーンであり、これは、薬剤調製で、特に錠剤のためのコーティングとして幅広く使用されているが、他の薬物装置のためのコーティングとしても使用されている。EUDRAGITポリマーは、(1)遊離カルボキシル基とエステル基との比がほぼ1:1である、メタクリル酸とメタクリル酸メチルをベースとするアニオンコポリマー、(2)遊離カルボキシル基とエステル基との比がほぼ1:2である、メタクリル酸とメタクリル酸メチルをベースとするアニオンコポリマー、(3)アンモニウム基と残りの中性メタクリル酸エステルとのモル比が1:20である、低含有率の4級アンモニウム基を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルをベースとするコポリマー及び(4)アンモニウム基と残りの中性メタクリル酸エステルとのモル比が1:40である、低含有率の4級アンモニウム基を有するアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルをベースとするコポリマーとして特徴付けられる。これらのコポリマーは、商品名EUDRAGIT L、EUDRAGIT S、EUDRAGIT RL及びEUDRAGIT RSで販売されている。EUDRAGIT Eは、ジエチルアミノエチルメタクリレート及び中性メタクリル酸エステルをベースとするカチオンコポリマーであり;EUDRAGIT NEは、ポリメタクリレートの中性コポリマーである。メタクリレート又はアクリレートポリマーでは、EUDRAGIT RS、EUDRAGIT RL及びEUDRAGIT NEが存在し;EUDRAGIT RS−100、EUDRAGIT L−90、EUDRAGIT NE−30、EUDRAGIT L−100、EUDRAGIT S−100、EUDRAGIT E−100、EUDRAGIT RL−100、EUDRAGIT RS−100、EUDRAGIT RS−30D、EUDRAGIT E−100R及びEUDRAGIT RTMを入手することができる。
【0105】
さらに、接着層の水分吸収能を高めるか、低下させる目的のために、アクリルポリマーを、親水性モノマー、カルボキシル基を含有するモノマー、アミド基を含有するモノマー、アミノ基を含有するモノマーなどと共重合させることができる。ゴム状又はシリコーン樹脂を、接着樹脂として使用することもでき;これらを、粘着付与剤又は他の添加剤を有する接着層に導入することもできる。
【0106】
もしくは、接着層の水分吸収能を、その中に高吸水性ポリマー、ポリオール及び吸水性無機物質を導入することにより調節することもできる。高吸水性樹脂の例には、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸などのムコ多糖類;キチン、キチン誘導体、デンプン及びカルボキシメチルセルロースなどの分子中に多数の親水基を有するポリマー;及びポリアクリル酸、ポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール及びポリアクリロニトリルなどの高吸水性ポリマーが含まれる。吸水能を調節するために接着層に導入することができる吸水性無機物質の例は、粉末シリカ、ゼオライト、粉末セラミックなどが含まれる。
【0107】
可塑剤は、例えば、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、アセチルクエン酸トリエチル(ATEC)及びクエン酸トリエチル(TEC)などのクエン酸トリアルキルであってよい。可塑剤は、接着処方物の0.001%(w/v)から5%(w/v)であってよい。接着層の柔軟性を選択し、脆性を回避することにより、適切な濃度を経験的に決定することができる。
【0108】
代表的な粘着性付与剤はグリコールであり(例えば、グリセロール、1,3ブタンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール);200、300、400、800、3000などの平均分子量を、ポリアルキレングリコールでは利用することができる。コハク酸は、別の粘着性付与剤である。粘着性付与剤は、接着処方物の0.1%(w/v)から10%(w/v)であってよい。接着層の脆性を回避すること及びその柔軟性により、適切な濃度を経験的に決定することができる。
【0109】
接着剤又免疫原性処方物の粘度を高めるために、増粘剤を加えることができる。増粘剤は、ヒドロキシアルキルセルロース又はデンプン、あるいは水溶性ポリマー;例えば、ポロキサマー、ポリエチレンオキシド及びその誘導体、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールエステルであってよい。しかし、溶液の粘度を高めるために役立つ分子であれば、パッチを製造している間の処方物の取り扱いを改善するために適している。例えば、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルセルロースは、接着剤又は免疫原性処方物の1%(w/v)から10%(w/v)であってよい。層としての処方物は、フィルムキャスティング又は押出しすることができ、次いで、層を、パッチを製造する間に被覆又は積層することができる。複数の薄い接着層を一緒に連続して塗布又は積層することにより、タンパク質の容積を高めることができる。もしくは、アジュバント又は抗原などの免疫的に活性な成分の損失を最小にしつつ、粘性処方物を基材(例えば、裏当て層又は粘着層)の上に広げることができる。増粘剤は、NATROSOLヒドロキシエチルセルロース及びKLUCELヒドロキシプロピルセルロースとして販売されている。
【0110】
ゲル及びエマルション系を、パッチ送達系に導入するか、パッチとは別に製造するか、ヒト又は動物対象に適用する前にパッチに施与することができる。ゲル又はエマルションは、最小限の損失で容易に取り扱うことができる粘性の処方物をもたらすことにより、製造を簡単にする同じ目的のために役立つ。「ゲル」との用語は、共有結合しているか、非架橋ヒドロゲルマトリックスのことである。ヒドロゲルは、PIAパッチのための免疫活性を有する少なくとも1種のタンパク質と共に処方することができる。付加的な賦形剤を、ゲル系に加えることができ、これにより、抗原/アジュバント送達、皮膚水和及びタンパク質安定性を増強することができる。「エマルション」との用語は、油中水型クリーム、水中油型クリーム、軟膏及びローションなどの処方物に関する。エマルション系は、ミセルベース、脂質ベシクルベースあるいはミセル及び脂質ベシクルの両方のベースであってよい。エマルション系は、タンパク質接着剤系として少なくとも1種のアジュバント及び/又は抗原と共に処方することができる。付加的な賦形剤をエマルション系に加えることができ、これにより、抗原/アジュバント送達、皮膚水和及びタンパク質安定性を増強することができる。
【0111】
液体又は準液体処方物を、皮膚に直接施与し、空気乾燥させるか;皮膚又は頭皮に擦り込むか;特に動物では、耳、鼠径部又は間擦領域に置くか;肛門/直腸組織に置くか;包帯、パッチ又は吸着材料で一定の位置に保持するか;浸漬するか;又は、ストッキング、スリッパ、手袋又はシャツなどの器具により保持するか;又は皮膚と最大接触するように皮膚に噴霧することができる。処方物を、吸着性包帯又はガーゼに適用することもできる。処方物を、例えば、AQUAPHOR(Beiersdorfからの、ワセリン、鉱油、鉱ろう、羊毛ろう、パンテノール、ビサボール及びグリセロールからなるエマルション)、プラスチックフィルム、COMFEEL(Coloplast)又はVASELINE石油ゼリーなどの閉鎖性包帯で;又は例えば、TEGADERM(3M)、DUODERM(3M)又はOPSITE(Smith & Napheu)などの非閉鎖性包帯で覆うことができる。閉鎖性包帯は、水の通過を排除する。このような処方物は、単一又は複数の部位に、単一又は複数の肢に、又は皮膚の大きな表面に、完全な液浸により適用することができる。処方物を直接皮膚に適用することもできる。使用することができる他の基材は、アクリル、ポリイソブチレン及びシリコーンなどの感圧接着剤である。処方物を、多孔性パッド(例えば、コットンガーゼ)又は胆汁性(bilious)細片(例えば、セルロース紙)に吸着させる代わりに、場合によって接着剤自体を伴うこのような基材に直接導入することができる。
【0112】
接着剤及び免疫原性処方物を少なくとも部分的に混合するか、十分にブレンドし、次いで、裏当て層に付着させることができる。免疫活性な成分を処方物中に分散又は溶解させることができる。接着剤を、剥離性ライナーと接触させることができる。装置を処方物でコーティングするか、それに浸漬させて、乾燥させるか、あるいは、装置に処方物を噴霧することにより、接着剤及び免疫原性処方物を、顕微ブレード(microblade)又は顕微針アレイ又は顕微針の歯先と接触させることもできる。処方物を少なくとも部分的に混合するか、十分にブレンドし、次いで、裏当て層に付着させることができる。免疫活性な成分を、処方物に分散又は溶解させることができる。もしくは、Meyerロッドを使用して接着剤の上にコーティングするか又は延ばすか、層をキャスティングし、次いでローラーを使用して接着剤と緊密に並置させて積層するか、グラビア印刷などを使用して接着剤を印刷することにより、免疫原性処方物を接着層の表面に施与することができる。
【0113】
処方物に加えられたポリマーは、活性成分の安定剤又は他の賦形剤として作用し、活性成分の少なくとも部分的に乾燥された形(即ち、乾燥又は半流動体)を水和するために使用されている溶液を飽和させて、活性成分の濃度を低下させることができる。ポリマーは、溶剤中の「空の」スペースを満たすことにより、有効自由体積を減らすので、このような低減が起こる。こうすると、アジュバント/抗原の量を、飽和溶液の量を低減することなく節約することができる。重要な熱力学的な問題点は、飽和溶液中の活性成分が、低濃度の領域で「駆動」することである(例えば、皮膚を介して)。少なくとも1種のアジュバント及び/又は1種又は複数の抗原を分散又は溶解させるために、ポリマーで、処方物のこれらの成分のアジュバント/抗原活性を安定化することができる。このようなポリマーには、エチレン又はプロピレングリコール、ビニルピロリドン及びβ−シクロデキストリンポリマー及びコポリマーが含まれる。
【0114】
経皮送達
処方物の経皮送達は、ランゲルハンス細胞をターゲットとし、したがって、有効かつ有能な免疫を達成することができる。これらの細胞は、皮膚に大量に存在し、T細胞記憶及び強力な免疫応答をもたらしうる有能な抗原提示細胞(APC)である。皮膚中に大量のランゲルハンス細胞が存在するので、経皮送達の有効性は、抗原及びアジュバントにさらされる表面積に関連している。実際に、経皮免疫がこのように有効である理由は、これが、筋肉内免疫よりも大量のこれら有効な抗原提示細胞をターゲットとしていることである。
【0115】
化学的又は物理的浸透を伴う、又は伴わない無損傷皮膚への、場合によって閉鎖性包帯で覆われている抗原及びアジュバントからなる簡単な処方物の皮膚表面への適用を使用して、又は他のパッチ技術を使用することにより、免疫を達成することができる。本発明による経皮免疫は、抗原及びアジュバントを免疫系、特に皮膚の下に位置する特殊な抗原提示細胞(例えば、ランゲルハンス細胞などの樹状細胞)に送達することができる方法をもたらす。
【0116】
慣用のワクチンでは、その処方物を皮膚を介して、注射針を用いて注射した。注射針を使用するワクチンの注射は、無菌注射針及びシリンジ、ワクチンを投与するための熟練した医療職員、注射による不快、注射針原性疾患(needle−born disease)及び潜在的に再使用可能な注射針で皮膚を穿つことによりもたらされるうる一定の欠点を持っている。皮下注射針の使用を伴わずに皮膚から免疫することは、皮下注射針を回避することによるワクチン送達の利点をもたらす。
【0117】
さらに、経皮免疫は、皮下注射針を使用する免疫よりも優れている。それというのも、皮膚の大きな表面積をターゲットとする複数位置を使用することにより、より多い免疫細胞をターゲットとすることができるであろう為である。免疫応答を誘発するために十分な抗原の治療的に有効な量を、単一の皮膚位置で、又は排出性リンパ節界(例えば、頚部、腋窩、鼠径部、上腕骨の内側上顆、膝窩、腹部及び胸部のもの)を覆っている皮膚面上で経皮的に送達することができる。体全体位置する数多くの異なるリンパ節に近接しているこのような位置は、少量の抗原を、真皮内、皮下又は筋肉内注射により単一の位置に注射するよりも、免疫系に広範な刺激をもたらす。
【0118】
皮膚への、又は皮膚を介して通過した抗原は、抗原を処理する抗原提示細胞と遭遇し、一部では、免疫応答を誘発する。複数の免疫部位は、より大量の抗原提示細胞を集め、集められた抗原提示細胞のより高い集団が、免疫応答のより高い誘発をもたらす。皮膚の使用は、抗原を、例えば樹状細胞、ランゲルハンス細胞、マクロファージ及び他の皮膚抗原提示細胞などの皮膚の食細胞へと送達することができ、抗原は、血流又はリンパ球を介して抗原提示細胞として役立つと考えられている肝臓、脾臓及び骨髄の食細胞へと送達される。
【0119】
そのアシアログリコプロテイン受容体、マンノース受容体、Fcy受容体CD64、IgEの高親和性受容体又は他の高発現膜タンパク質を使用して、ランゲルハンス細胞、他の樹状細胞、マクロファージ又はこれらの組合せを特異的にターゲットとすることができる。これらの受容体のいずれかに特異的なリガンド又は抗体は、アジュバント、抗原又はその両方と複合させるか、タンパク質融合体として組換えにより製造することができる。さらに、アジュバント、抗原又はその両方を、Bリンパ球の表面免疫グロブリンをターゲットとするために、タンパク質A又はタンパク質Gと複合させるか、タンパク質融合体として組換えにより製造することができる。想定される結果は、達成されたとしても、現行の免疫実施では稀な、抗原提示細胞への抗原の幅広い分布である。
【0120】
特異的免疫応答は、液性(即ち、抗原特異的抗体)及び/又は細胞性(即ち、Bリンパ球、CD4+T細胞、CD8+T細胞、CTL、Th1細胞、Th2細胞及び/又はTDTH細胞などの抗原特異的リンパ球)エフェクターアームを含む。さらに、免疫応答は、NK細胞及び、抗体依存性細胞仲介細胞毒性(ADCC)を仲介する他の白血球を含む。
【0121】
本発明の処方物により誘発された免疫応答には、抗原特異的抗体及び/又はリンパ球の誘発が含まれる。抗体は、イムノアッセイ技術により検出することができる。様々な抗体アイソタイプ(例えば、IgM、IgD、IgA1、IgA2、分泌IgA、IgE、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)の検出は、全身又は部分免疫応答を示す。免疫応答は、中和アッセイにより検出することもできる。抗体は、Bリンパ球により産生される保護タンパク質である。これらは、高次に特異的で、通常、抗原の1つのエピトープをターゲットとする。免疫は、アレルゲン、細胞侵入(cell−entry)受容体、成長因子受容体又は毒素の生物活性を中和する抗体を誘発することができる。例えば、抗体の誘発は、病原体又は癌に由来する抗原(例えば、コレラ毒、HER2、インフルエンザヘマグルチニン)と特異的に反応することにより、疾患を治療することができる。病原体による感染又は毒素の投与を使用するホストでの攻撃研究、免疫された集団と対照集団との罹患率又は死亡率の比較、あるいは他の臨床判定基準(例えば、高い抗体力価又は粘膜中でのIgA抗体分泌細胞の産生を、代理マーカーとして使用することができる)の測定により、疾患に対する保護又は存在する疾患の治療を証明することができる。
【0122】
CTLは、病原体による感染に対して保護するために産生される免疫細胞である。これらも、高次に特異的である。免疫は、自己−主要組織適合複合体抗原に関連して、抗原に特異的なCTLを誘発しうる。経皮送達系で免疫により誘発されるCTLは、病原体感染細胞又は癌を撲滅しうる。抗体及びCTLでの応答の強化、抗原に刺激されたリンパ球培養の増殖及び抗原単独の真皮内皮膚攻撃に対する遅延型過敏性(DTH)応答により示されるように、免疫は、記憶応答をもたらしうる。
【0123】
次いで、本発明を詳述するが、次の実施例によって、本発明の実施は、なんらの制限又は制約を受けることはない。
【0124】
(実施例)
材料及び方法
ワクチン。破傷風トキソイド及び多価インフルエンザワクチンを、本発明を例示する目的で使用した。破傷風トキソイドワクチンを与えられる動物を、両大腿部の筋肉の間に体積用量(0.5LF)を分割することによりワクチン接種した。インフルエンザワクチンは、ヒトから元々単離された3種の株からなった(パナマA株/2007/99、ヨハネスブルクB株/15/99及びニューカレドニア/20/99)。ワクチンを、等量のタンパク質量のそれぞれの株の混合物として調製した。一実施例では、インフルエンザワクチンを、両方の大腿部の筋肉の間に用量(三価インフルエンザ5μg)を分配することにより注射した。別の実施例では、動物に、尾の基部の背側尾部表面に皮下注射することにより三価インフルエンザ1.5μgを与えた。アジュバント含有パッチを適用する直前に、全ての動物を非経口で免疫した。
【0125】
LT含有パッチ。マウスをワクチン接種の前に、尾の基部の背側尾部表面で剃毛した(24時間から48時間)。ケタミン(100mg/ml)及びキシラジン(100mg/ml)からなる混合物25μlを腹腔内注射することにより、全てのマウスに麻酔をかけた。水又は、グリセロール10%、イソプロピルアルコール70%及び水20%からなる水溶液を用いて水和することにより、剃毛された皮膚を予備処置した。適用の直前に、粘着裏当てに貼り付けられているガーゼパッド(約1cm2)に、中性リン酸緩衝生理食塩水及びラクトース5%中に処方されているLT10μg又は50μgを含有する溶液25μlを負荷した。パッチを、水和された皮膚表面に1時間適用し、パッチを除去し、皮膚を、過剰のLTを除去するために水ですすいだ。
【0126】
ワクチン接種計画。破傷風トキソイドを用いる研究では、マウスに、3回の筋肉内注射(パッチと共に)を0日目、14日目及び28日目に与えた。血清を、3回目の免疫の14日後に集めた(49日目)。2種のワクチン接種計画を使用して、三価インフルエンザワクチンでマウスを免疫した:(i)第2ワクチンの2週間後(28日目)の血清採集を伴う、研究の0日目及び14日目での2回の筋肉内注射(LTパッチを用いる)あるいは(ii)第3用量の2週間後(42日目)の血清採集を伴う、研究の0日目、14日目及び28日目での3回の筋肉内又は皮下注射(LTパッチを用いる)。
【0127】
サンプル採集。尾の静脈を傷つけることにより、末梢血を得た。血液を管に集め、血餅にし、遠心分離した。血清を集め、次いで、ELISA法によりアッセイするまで、−20℃で貯蔵した。
【0128】
ELISA法。血清IgGを評価するために、固相酵素免疫吸着測定法を使用した。96ウェルプレートを、1ウェル当たり100μl(1〜2μg抗原)で4℃で一晩被覆した。インフルエンザでは、ELISAプレートを別に、三価ワクチンで使用されたインフルエンザ株それぞれ(即ち、パナマA株、ニューカレドニアA株及びヨハネスブルクB株)からの抗原で被覆した。リン酸緩衝液生理食塩及びツゥイーン20(PT緩衝液)で洗浄した後に、プレートを、ブロッキング緩衝液(カゼイン0.5%及びウシ血清アルブミン0.5%)100μlで、室温で1時間ブロックした。プレートをPT緩衝液で洗浄し、血清を、ウェル中で倍数系列希釈した。プレートを、4℃で一晩インキュベーションした。プレートをPT緩衝液及びHRP(BioRad)と複合している1:2000希釈ヒツジ抗マウスIgG100μlで、各ウェルに加えるように洗浄した。プレートを室温で2時間インキュベーションし、PT緩衝液で洗浄し、基質ABTS(KPL)100μlをウェルに加えた。約30分間、色を展開させた。1%SDS溶液(GIBCO BRL)100μlを加えることにより、反応を停止させた。光学密度を、ELISAプレートリーダーを用いて405nmで測定し、Softmax Pro2.4ソフトウェア(Molecular Devices)を使用して、データを分析した。結果を、ELISA Unit(EU)で表現するが、これは、光学密度(OD)をもたらす血清希釈であり、405nmで1ODに等しいと読む。各血清サンプルでのEUを、各グラフに示された、群(Bar)での相乗平均力価(GMT)と共にプロットした。
【実施例1】
【0129】
大腿部筋肉で、低用量の破傷風トキソイドでワクチン接種されたマウスでの、アジュバントにより誘発される全身免疫賦活
アジュバントの皮膚表面への適用が、ワクチン接種の通常経路である骨格筋内で投与される低用量の破傷風トキソイドにより誘発された免疫応答を刺激するかどうかを決定した。この研究では、全てのマウスを、大腿部筋肉で破傷風トキソイドでワクチン接種した。ワクチン接種の直後に、尾の基部の所の剃毛された皮膚表面を、グリセロール10%、イソプロピルアルコール70%及び水20%で水和させた。ワクチン接種されたマウスの半分に、溶液(ラクトース5%を有するPBS)中のLT50μgを含有するガーゼパッチ(粘着裏当て上)を与えた。パッチを、水和された皮膚に1時間適用した。パッチを除去し、皮膚を洗浄した。この研究では、マウスに、3回のワクチン接種(パッチと共に)を0日目、14日目及び28日目に与えた。血清を、3回目の免疫の後3週間目に集め、破傷風トキソイドに対する抗体力価を、動物の両方の群で決定した。図1は、LT含有経皮パッチが、ワクチンに対する免疫応答に対して有する効果に関して、2つの重要なポイントを証明している。第1に、LTパッチを与えられなかった群(GMT=1:10196)に比較して、LTパッチを与えられた動物(GMT=1:74155)は、抗体力価の統計的に著しい増加(p>0.005)を示している。第2に、LTパッチを伴う動物の群は、血清抗体応答でより高い規模を示すだけではなく、その力価は、LTパッチを伴わずに筋肉内ワクチン接種された群での力価の幅(1:500から1:100000)に比較して、(1:74000)付近で狭く分布する傾向を有した。これらの結果は、LTは、そうでなければ不均一な応答を示すはずの、ワクチンに対してあまり応答しない動物を含む集団の免疫応答を均一に刺激することを示している。このことは、LT仲介免疫賦活は、免疫無防備状態の対象などの低い免疫応答者に対しても、積極的に影響を及ぼしうることを示している。
【実施例2】
【0130】
骨格筋又は皮下組織で非経口投与される三価インフルエンザワクチンに対する免疫応答の刺激に関するアジュバント含有パッチの効果の比較
次に、インフルエンザワクチン接種の組織位置が、皮膚表面から適用されるアジュバントの免疫賦活活性に影響を及ぼすかどうか、さらに、LT用量を、パッチ中で50μgから10μgに減らすことができるかどうかを決定した。両大腿筋肉の間に分配された三価インフルエンザ(1株当たり1.7μg)ワクチン5μgの筋肉内注射により、マウスの群をワクチン接種した。注射の直後に、尾の基部の所の剃毛された皮膚表面を、水で水和させた。パッチを、水和された皮膚に適用した。1/3のマウスに、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、溶剤対照)を含有するパッチに与え;1/3のマウスに、LT10μgを含有するパッチを与え;1/3に、LT50μgを負荷されたパッチを与えた。パッチを、1時間適用し、除去し、皮膚を過剰のLTを除去するためにすすいだ。全てのマウスに2回ワクチン接種し(研究0及び14日目)、血清を、第2の免疫及びパッチの2週間後に採集した。パナマA株に対する血清抗体力価を、ELISA法を使用して測定した。結果を、図2Aに示す。図面から分かるように、LTパッチ50μgを伴う群は、インフルエンザ抗原に対して非常に高い血清抗体力価を展開し(GMT=1:276485)、これは、陰性対照パッチを伴う群(GMT=1:40531)よりも著しく高かった(p=0.005)。LT10μgパッチを伴う群は、陰性対照群(p=0.192)よりも、インフルエンザワクチンに対して高い力価を有する傾向を示した(GMT=1:67617)。
【0131】
ワクチン接種部位の上に貼ったLTパッチと共に、インフルエンザワクチンを皮下組織に入れることができるかどうかを決定するために、別の研究を行った。この研究では、全てのマウスに、非常に低用量(1.5μg)の三価インフルエンザワクチン(各株0.5μg)をワクチン接種した。注射前に水で水和された尾の基部の剃毛された背側尾部表面で、皮下注射液を投与した。注射の数分後に、パッチを、注射部位の上に適用した。1/3のマウスには、PBSを含有するパッチを与え(陰性対照)、1/3のマウスには、LT10μgを含有するパッチを与え、1/3には、LT50μgを負荷されたパッチを与えた。パッチを1時間適用し、除去し、過剰のLTを除去するために皮膚をすすいだ。全てのマウスに、研究0日目及び14日目に2回(パッチを伴う)、ワクチン接種した。第2免疫の後、2週目(第28日目)に、血清を集めた。パナマA株に対する血清IgG力価を、ELISA法を使用して測定した。これらの結果を、図2Bに示す。この場合にも、陰性対照パッチを与えられた群(GMT=11793)に比較して、LTパッチ50μgを与えられたマウスは、著しく(p=0.001)高い抗体力価(GMT=1:111434)を示した。LTパッチ10μgを与えられた群は、陰性対照パッチを与えられた群(p=0.08)に比較して、インフルエンザワクチンに対して5倍高い力価を有した(GMT=52606)。
【0132】
アジュバント含有パッチを皮膚表面に適用すると、不活化三価インフルエンザワクチンに対する免疫応答が著しく刺激された。ワクチン接種の部位は、皮膚表面に適用されたLTの免疫賦活作用に影響は及ぼさないようであった。ワクチンが、骨格筋又は皮下組織のいずれに注射されたかに関わらず、アジュバントは、免疫応答を刺激した。これらの2つの研究も、非常に低用量のインフルエンザワクチン(筋肉内に三価5μg又は、皮下に三価1.5μg)を投与して、重要な抗体力価を、アジュバントの経皮送達により刺激することができる(>1:100000)ことを証明している。
【実施例3】
【0133】
アジュバント含有パッチは、骨格筋内に注射された多価インフルエンザワクチンに対する免疫応答を刺激する
この研究の目的は、LTパッチは、三価ワクチン中のインフルエンザの各株に対する免疫応答を刺激することを証明することであった。この研究では、両大腿筋肉に低用量(5μg)の三価インフルエンザワクチンを注射することにより、全てのマウスにワクチン接種した。注射の直後に、尾の基部の剃毛された皮膚表面(48時間前に剃毛)を、水で水和させた。マウスの半分に、LT50μgを負荷されたパッチを、水和された皮膚で適用した。他方の半分には、LTパッチを与えなかった。他の研究と同様に、パッチを、皮膚に1時間適用し、除去し、過剰のLTを除去するために皮膚をすすいだ。両方の群を、3回(0日目、14日目及び28日目)インフルエンザワクチンでワクチン接種した。3回目の免疫の2週間後に、血清を集め、ワクチン中のインフルエンザの各株に対する抗体力価を決定した。インフルエンザワクチンの筋肉内注射と共にLTパッチを与えられた群は、筋肉内注射のみを与えられた群の3倍から4倍の力価を示した(図3)。加えて、このことも、LTパッチは、ワクチン中のインフルエンザの全ての3種の株に対する全身免疫応答を刺激することを証明している(パナマ、図3A;ヨハネスブルク、図3B;及びニューカレドニア、図3C)。
【0134】
経皮的に送達されたアジュバントと、経皮以外の他の経路で送達された抗原とが、リンパ系の同じ領域をターゲットとすることが重要である。ランゲルハンス細胞及び他の皮膚樹状細胞の移動の後に、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)を皮膚表面から適用した。抗原提示細胞(APC)は、食細胞で、皮膚を出て、局所リンパ節に移動する前に、FITCを摂取する。蛍光活性化細胞分析器をリンパ節の免疫表現型細胞に使用して、APCにより貪食されたFITCを検出した。CD11b−抗体により、APCは染色された。標識抗体を使用して、MHC II群分子及び同時刺激分子のアップレギュレーションにより、活性化APCを検出した。アジュバントは、経皮免疫が生じた皮膚の下に位置するAPCを活性化することができる。FITC及びアジュバントの両方を、皮膚の上の同じ位置に適用した。
【0135】
動態研究は、アジュバントを皮膚表面に適用した後に、APCがリンパ節付近に交通したことを示した:FITC標識APCは、免疫賦活の約7時間後に検出され始め、その大多数が、約24時間目にピークに達し、多くのFITC標識APCは、免疫賦活の約48時間後に低下し始め、FITC標識APCは、約72時間後には検出されなかった。
【0136】
移動APCの位置限定は、皮膚の下に位置するこれらは、同じ局所リンパ節に交通することを示した。動物の尾の後ろ及び基部に適用されたFITC及びアジュバントにより、APCは、最も近い鼠径部リンパ節に移動した。アジュバントが動物の尾の後ろ及び基部に適用された後には、APCは、遠位の頚部リンパ節に移動しないようであった。対照的に、頚部に適用されたFITC及びアジュバントは、逆の交通パターンを有した:APCは、遠位の鼠径部リンパ節の代わりに、最も近い頚部リンパ節に移動した。
【0137】
したがって、アジュバントを用いる免疫(即ち、経皮的免疫賦活)及びワクチンを用いる免疫(即ち、ワクチン接種)を、72時間以上離さずに、一日に数時間内で行うことが好ましい。さらに、経皮的免疫賦活及びワクチン接種が行われる部位は、APCが少なくとも1つの共通のリンパ節に移動するように、十分に相互に近接しているべきであることを、局所リンパ節へのAPC交通は示している。
【0138】
2種の異なるモデルワクチンを使用すると、これらの実施例により、皮膚表面に適用されたアジュバント含有パッチは、異なる経路で投与されたワクチンに対する免疫応答を刺激することが証明される。他の経路(例えば、腸内、粘膜、循環への注射)を介してのアジュバントの投与に伴う毒性は、経皮免疫では生じなかった。これらの結果は、皮膚表面に適用されるアジュバントの使用は、有効な免疫応答を刺激する際に安全かつ有効であることを証明している。
【実施例4】
【0139】
LT含有パッチのための、接着剤中タンパク質及び空気乾燥パッチ処方物
パッチは、皮膚表面への適用により皮膚にアジュバントを送達するための多目的装置をもたらす。ここでは、LTを、4種の異なるパッチ構成を使用して処方した。第1の処方物のためにLT(10μg)を、ラクトース5%(w/v)を含有する中性pHリン酸緩衝生理食塩水からなる水溶液に処方した。この処方物を、グリセロール10%、イソプロピルアルコール70%及び水20%で水和された皮膚に直接適用した。溶液を、何もせずそのままにするか、ガーゼパッドで1時間覆った。第2の処方物のために、LTを、感圧EUDRAGIT EPO接着剤、KLUCEL増粘剤及びスクロース1%の安定剤とブレンドした。次いで処方物を、薄いコーティングとして、閉鎖性裏当てに広げた。LTを、微細フィルムとしてグラビア印刷で広げて、10μg/cm2面積の有効濃度にした。フィルムを室温で空気乾燥させたが、含水率は、水0.2%未満から5%の範囲であった。パッチ(約1cm2)を、シートから打ち抜いた。少なくとも部分的に乾燥させたパッチを、周囲温度で貯蔵したが、4℃で、同じ送達特性を示した。第3の処方物のために、LTを、NU−GAUZEパッドに直接施与し、表面上に平らに広げて、10μg/cm2の濃度にし、少なくとも部分的に乾燥したパッチを、一晩空気乾燥させた。第4の処方物のために、水性処方物中のLT(PBS25μl及びラクトース5%中10μg)を、接着裏当てを備えたガーゼパッド(約1cm2)の上に直接たらした。これらのパッチを、周囲温度で一晩空気乾燥させた。少なくとも部分的に乾燥させたパッチは、4℃又は室温で1カ月以上、使用前に貯蔵することができる。
【0140】
前記のマウスモデルを使用して、パッチを、LT抗原の送達に関して比較した。ここでは、尾の基部の所の剃毛された皮膚を水和させ、軽石含有綿棒(グリセロール10%、イソプロピルアルコール70%及び水20%の水溶液)を用いて予備処理して、角質層を破壊した。5匹のマウスからなる群に、0日目に第1のパッチを与え、14日目に第2のパッチを与えた。空気乾燥させたパッチを、適用の前に水25μlで再水和した。パッチを、24時間後に除去した。液体処方物のために、LT含有溶液を皮膚の上に1時間放置し、その後、水ですすいで、過剰のLTを除去した。第2の免疫の2週間後(28日目)に、各動物から血清を集めた。これらの結果は、全ての方法が、皮膚表面を介してのLTの送達に適していることを証明している。この実施例は、パッチ処方物は、皮膚に直接適用され、パッチで覆われる水性液体;接着剤内に導入され(接着剤中タンパク質)、閉鎖性裏当て上の薄いコーティングとして広げられたLTを有する乾燥パッチ;LTが、溶液として適切な表面に直接適用され、空気乾燥されているパッチ;又は皮膚にパッチを適用する直前に、LT溶液の適切な量を、パッチ表面に直接適用する水和されたパッチとしてであってよいことを示している。
【0141】
前記の参考文献の全て(例えば、論文、書籍、特許及び特許出願)は、当技術分野の専門家のレベルを示しており、参照して援用することができる。
【0142】
請求項の意図及びその法的同等物の範囲内での変更及び置き換えは全て、その範囲内に包含されるべきである。接続句(transition)「含む」を使用する請求項は、請求項の範囲内である他の要素の包含を許容する;本発明は、接続フレーズ「主に〜からなる」(即ち、本発明の実施に実質的に影響を及ぼさない場合に、請求項の範囲内である他の要素の包含を許容する)及び「含む」との用語の代わりに、接続句「〜からなる」(即ち、本発明に通常関連する不純物又は多少の活量以外は、請求項に挙げられた要素のみを許容する)を使用するような請求項によっても記載されている。請求項中に明らかに関連が記載されていない限り、請求項間で、又は請求項内に特別な関連は意図されていない(例えば、物質請求項中での成分の配置、又は方法請求項中でのステップの順序は、そのように特に記載されていない限り、請求項の制限ではない)。したがって、ここに開示されている個々の要素の全ての可能な組合せ又は並べ替えは、本発明の考慮される部分である。
【0143】
前記から、本発明は、その意図又は基本的な特徴から逸脱することなく、他の特殊な形態で実施することができることは、当技術分野の専門家には明らかであろう。本発明に与えられる法的保護の範囲は、この明細書によってではなく添付の請求項によって示されているので、前記の実施形態は、例示としてのみ考慮されるべきで、制限的なものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ワクチンによる免疫を必要とする対象を用意するステップ、
(b)少なくとも1種のアジュバントを皮膚表面から患者の皮膚に適用するステップ、及び
(c)経皮以外の投与経路によりワクチンで対象を免疫し、ワクチンが1種又は複数の抗原を含有するステップ、
を含み、これにより、少なくとも1種の該アジュバントが、1種又は複数の該抗原に特異的な免疫応答を誘発することによって、経皮的免疫賦活を起こし、かつ、少なくとも1種の該アジュバントにより賦活された免疫応答は、少なくとも1種の該アジュバントがない場合よりも有効である、
経皮的免疫賦活方法。
【請求項2】
対象が65歳以上である請求項1記載の方法。
【請求項3】
対象が免疫無防備状態である請求項1記載の方法。
【請求項4】
対象が免疫抑制状態である請求項1記載の方法。
【請求項5】
アジュバントなしでは、抗原特異的免疫応答を誘発するには十分でない量の1種又は複数の抗原をワクチンが含有する請求項1記載の方法。
【請求項6】
ワクチンが経口投与される請求項1記載の方法。
【請求項7】
ワクチンが鼻腔内投与される請求項1記載の方法。
【請求項8】
ワクチンが注射により投与される請求項1記載の方法。
【請求項9】
アジュバントが、皮膚の下にある抗原提示細胞を活性化させる請求項1記載の方法。
【請求項10】
抗原提示細胞がリンパ節に移動する請求項9記載の方法。
【請求項11】
1種又は複数の抗原が抗原提示細胞に接触し、1種又は複数の該抗原の少なくとも1種の免疫原性エピトープが、抗原提示細胞によって提示される請求項9記載の方法。
【請求項12】
皮膚を水和するステップをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
1種又は複数の化学薬剤及び/又は物理的破壊装置を用いて、少なくとも1種のアジュバントによる皮膚の浸透を増強するステップをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
ワクチンがアジュバントを欠いている請求項1記載の方法。
【請求項15】
ワクチンが少なくとも1種のアジュバントをさらに含有する請求項1記載の方法。
【請求項16】
ワクチンは用いるが、少なくとも1種のアジュバントは用いない免疫が、疾患の治療及び/又は疾患からの保護をもたらす請求項1記載の方法。
【請求項17】
アジュバント賦活免疫応答が、疾患の治療及び/又は疾患からの保護をもたらす請求項1記載の方法。
【請求項18】
経皮的免疫賦活用の薬剤を製造するためのアジュバントの使用であって、
(a)ワクチンによる免疫を必要とする対象を用意するステップ、
(b)少なくとも1種のアジュバントを皮膚表面から患者の皮膚に適用するステップ、及び
(c)経皮以外の投与経路によりワクチンで対象を免疫し、ワクチンが1種又は複数の抗原を含有するステップ、
を含み、
これにより、少なくとも1種の該アジュバントが、1種又は複数の該抗原に特異的な免疫応答を誘発することによって、経皮的免疫賦活を起こし、かつ、少なくとも1種の該アジュバントにより賦活された免疫応答は、少なくとも1種の該アジュバントがない場合よりも有効である、
上記使用。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−292830(P2009−292830A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180508(P2009−180508)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【分割の表示】特願2002−572955(P2002−572955)の分割
【原出願日】平成14年3月19日(2002.3.19)
【出願人】(501459251)インターセル ユーエスエイ、インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】