説明

経編ファスナーテープ製造機

【課題】メリヤスの柔軟性を喪失せず、必要な太さの芯紐を編込むことができ、芯紐の編込みにより形成される膨大部がテープの表裏に均整に膨出し、エレメントの均一な取付けを可能とするファスナーテープをニードルの折損なく効率的に製造する経編ファスナーテープの製造機を提供。
【解決手段】経編ファスナーテープ製造機は一列に並列して配された多数の編針2 をそれぞれの摺動溝1aに沿って摺動可能に案内する単一の針床1 と、スウィング動作及びショギング動作をする編糸ガイド4 と、芯紐7,8 を案内する第1芯紐ガイド5,6 と、針床1 の編口部における芯紐7,8 の編込道に配されて芯紐7,8 を案内する第2芯紐ガイド9とを備える芯紐付きファスナーテープを単床式経編機を使い編成する為、編成効率が向上し、第2芯紐ガイド9 を設けたのでニードル2a,2b を折損なく、芯紐7,8 を正確円滑に案内することができ、テープ表裏面に均等な膨大部が形成されエレメント取付強度が向上。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は経編組織からなるファスナーテープの長手側縁部に沿って、テープの編成と同時に芯紐を編み込むスライドファスナー用の経編ファスナーテープの製造機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来も、この種の経編組織によりファスナーテープを編成するとき、同時に芯紐を編み込んだスライドファスナー用の経編ファスナーテープは、例えば実公昭56−16088号公報(特許文献1)、特開平8−56713号公報(特許文献2)などに開示されている。
【0003】
特許文献1によれば、その第1実施例としてテープ主体部を複列ニードルによる二重組織をもって編成すると共に、同取付部に接続されるエレメント取付部を芯材を包囲するように、同じく複列ニードルによるダブルトリコット編組織をもって編成し、膨大部を形成している。また同文献1の第2実施例では、テープ主体部のエレメント取付部の若干手前側と外側の端縁部分とを複列ニードルによる二重組織をもって構成すると共に、その中間のエレメント取付部を芯材を包囲するように、同じく複列ニードルによるダブルトリコット編組織をもって編成している。
【0004】
また、上記特許文献2によれば、テープ主体部を表面側または裏面側のニードルのみの一重組織にて編成すると共に、エレメント取付部を、芯材とその両側に配置された2本の編成糸条により編成される二重の鎖編組織と、該鎖編組織の編目間を表裏で左右対称に振られながら挿入される緯挿入糸による緯糸挿入組織と、トリコット編組織、鎖編組織及び通常の緯糸挿入組織からなる前記テープ主体部の組織の一部を構成する緯糸挿入組織とから構成している。エレメント取付部の二重の前記鎖編組織と緯挿入糸とをそれぞれテープ主体部の表面側と裏面側とに交互に編み込み、エレメント取付部をほぼ完全な矩形断面に形成している。
【0005】
この種の経編組織からなるスライドファスナー用のファスナーテープにあっては、上述のとおりテープ主体部を単列ニードルによる一重組織とするか、或いは複列ニードルによる二重組織とするかに関わらず、いずれも前記エレメント取付部は長手方向に延在する芯材を複列ニードルによる二重の経編組織をもって包囲するように編み込み、同エレメント取付部をテープ主体部よりも分厚い隆起状に形成するのが一般的である。
【0006】
これに対して、単一の針床からなる経編機を使って、芯紐を編み込みながら単列ニードルによる一重組織にてテープ主体部及びエレメント取付部を編成することも提案されている。例えば、特公昭54−21781号公報(特許文献3)によれば、ファスナーテープのエレメント取付部の外側端縁の2つのウェール間に2本の芯紐をファスナーテープ面に対し上下に重ねた状態で全長にわたって編み込まれている。外側端縁の2つのウェールには、地緯挿入糸が緯挿入され、芯紐に対する2本の緊締緯糸が互いに逆方向から綴れ編状に緯挿入されている。この2本の緯挿入糸はマーキゼット組織からなり、かつウェール間で互いに重なることのないよう緯入れされている。2つの前記ウェールに緯挿入された地緯挿入糸は、上下に重ねられている芯紐の間に通され、緊締緯糸が上側の芯紐の上面を走行し、他方の緊締緯糸が下側の芯紐の下面を通り、この3種の各緯挿入糸により2本の芯紐をそれぞれ上下両面から固定している。端縁の2つのウェールと緊締緯糸であるマーキゼット編糸とはそれぞれが各ウェールとの折返し点が重ならないようにして、全長にわたり一様な厚さが得られるようにされている。
【特許文献1】実公昭56−16088号公報
【特許文献2】特開平8−56713号公報
【特許文献3】特公昭54−21781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、一般的にはエレメント取付部の膨大部をテープ主体部に接続させて一体に経編成する場合、前後の針とこを備えた複列ニードル編機によって編成されている。そして、芯紐が編み込まれるエレメント取付部を編成するには、芯紐を複列ニードルの中間に供給している。
【0008】
テープ主体部をエレメント取付部と同様に複列ニードルにより二重組織で編成する場合には、テープを表裏対称な形態となるように編成することが可能であるため、芯紐はテープ主体部の一端縁の端面中心を通る長手方向の直線上に配すことができ、エレメント取付部の表裏面における膨大部も表裏対称に形成することができる。一方、近年はスライドファスナーが各種の柔軟な衣料に多く取り付けられるようになっており、ファスナーテープ自体の柔軟性が強く要求されている。しかるに、前述のようにテープ主体部を二重組織にて編成すると、テープ主体部が肉厚となって剛直性が増し、メリヤスに期待される柔軟性が失われかねない。
【0009】
他方、テープ主体部を複列ニードルの一方のニードル列だけを使った一重組織により編成すると、上記特許文献2に開示された第1実施例のファスナーテープにあっては当然であるが、仮に上記特許文献2の第2実施例に開示されているような、テープ主体部の一側縁部が二重組織により編成されたとしても、芯紐はテープ主体部の前記一端縁部の端面中心から複列ニードルの他方の側に偏位して編成されることになる。その結果、エレメント取付部の膨大部も必然的に他方の側に偏位することになり、エレメントの植え付けにあたって、ファスナーテープの端縁の中心面上にエレメントを均等に植え付けることができず、スライダーの摺動操作が円滑に行えなくなるなどの諸々の不具合が生じる。
【0010】
ところで、複列ニードルによる編成は、たとえ複列ニードルの一方のニードル列だけが使われるとしても、同一編成時間では単列ニードルと比較して1/2の編目しか形成できず、稼働効率が著しく低下することになる。その点、上記特許文献3に開示されたファスナーテープの編成では、ファスナーテープの全てにわたり単床からなる一重組織により編成するため編成効率は2倍高くなる。またテープの編成と同時に、1本又は2本の芯紐をテープを挟んで表裏に重ねるように編み込んでいるため、緊締緯糸により芯紐を被覆して得られる膨大部は表裏対称となり、エレメントの均一な植え付けを可能にする。特に2本の芯紐を編み込む場合には、前記膨大部も大きくなり、エレメントの取付強度も向上する。
【0011】
しかしながら、上記特許文献1〜3のいずれにあっても、ファスナーテープの端縁部に芯紐を編み込むとき、同端縁部の2列のウェールを形成する隣接する2本のニードル間の間隔が狭いため、芯紐の太さが太いことと相まって芯紐とニードルとが干渉しやすく、芯紐がニードル間を円滑に通過しがたく、ニードルと接触してニードルを折損させることが多く、これを回避するには芯紐の太さを細くする以外なかった。
【0012】
本発明の目的は、メリヤスの本来の柔軟性を喪失せず、必要な太さの芯紐を編み込むことができ、しかも芯紐の編込みにより形成される膨大部がテープの表裏に均整に膨出し、エレメントの均一な取付けを可能とするファスナーテープをニードルの折損なく効率的に製造するための経編ファスナーテープの製造機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的は、本発明の主要な構成である、経編組織からなるテープの編成と同時に、同テープの一側縁部に沿って芯紐を連続して編込むスライドファスナー用の経編テープの製造機であって、一列に並列して配された多数の編針を、それぞれの針溝に沿って摺動可能に案内する単一の針床と、スウィング動作及びショギング動作をする編糸ガイドと、芯紐を案内する第1ガイドと、前記針床の編口部における前記芯紐の編込道に配され、芯紐を案内する第2ガイドとを備えてなることを特徴とする経編ファスナーテープ製造機により効率的に達成される。
【0014】
本発明にあっては、芯紐用の前記第1ガイドが1本の芯紐を案内する単一のガイドからなる場合をも当然に含むが、好ましい態様によれば芯紐用の前記第1ガイドが2本の芯紐をそれぞれ案内する一対のガイドから構成される。前記第2ガイドは、前記針床の針溝とは反対側の編口部表面に形成された第1案内溝と前記編口部表面に沿って配された板材の前記第1案内溝に対向する面に形成された第2案内溝とを有することができる。
【作用効果】
【0015】
本発明の経編ファスナーテープは、単床式経編機を使ってファスナーテープを一重組織をもって編成するとともに、そのファスナーテープの一側縁部に沿って地組織の一部に芯紐が編み込まれる。複床式経編機による編成の略2倍の編成速度が得られるため高い製造効率が得られる。芯紐は1本であっても2本であっても、その編み込まれた部分は表裏両面に均等に膨出する膨大部を形成するため、エレメントがファスナーテープに対して表裏いずれかに偏ることがなく、エレメントを均整に取り付けることができる。
【0016】
また、特に本発明にあっては通常の芯紐ガイドに加えて、編口部における芯紐の編込道に芯紐の自由な動きを抑制しつつ案内する第2の芯紐ガイドを設けているため、芯紐は芯紐の編込道に隣接するニードルと干渉することなく円滑に通過でき、ニードルの折損を招くことがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を図示実施例に基づいて具体的に説明する。
図1及び図2は本発明の第1実施例である経編ファスナーテープTの製造機によるファスナーエレメント列の成形及び主要部の編成動作を示す斜視図である。本実施例にあっては、前記製造機の本体は通常の垂直床式のシングルラッシェル機、クロッシェ編機、又はトリコット編機が使用される。従って、その機構の細部は図示を省略している。
【0018】
これらの図において、符号1は長さ方向に一直線上に並列して配される多数の編針(以下、ニードルという。)2を各摺動溝1aに沿って上下に摺動可能に収容する針床、3は地組織用の編糸、4は各編糸3を対応するニードル2に導入すると共に編目形成のためのスウィング動作及びショギング動作を行う編糸ガイドである。ここで、前記針床1、各ニードル2、編糸ガイド4はこの種のラッシェル機に通常備えられている部材であり、本発明に特有の部材ではない。また、これらのニードル2、編糸ガイド4の作動部材は、それぞれが図示せぬ駆動源に連結され所定のタイミングをもって同調して作動する。なお、本実施例では前記針床1の中央部を挟んで左右対称に前記ニードル2及び編糸ガイド4が配されており、一度の編成で左右一対のファスナーテープTを製造する。
【0019】
符号5及び6は、2本の芯紐7,8を案内する一対の第1芯紐ガイドであり、これらの芯紐ガイド5,6は筒状体からなり、図3を参照してファスナーテープTの最も左端縁の第1ウェールW1と同ウェールW1に隣接する第2ウェールW2との間の編口に2本の芯紐7,8を導入するために各ニードル2の上方前後に配されている。ここで芯紐とは、ファスナーテープTに特有の構成部材の一つである。ファスナーテープTの一側縁部に沿って多数のエレメントが取り付けられるが、そのエレメントの取付けには縫製により取り付ける場合、金属製エレメントを加締めることにより取り付ける場合、エレメントの成形と同時にテープ側縁部に一体的に取り付ける場合、或いはファスナーテープを編成又は織成しながら、同時に螺旋状又はジグザグ状に成形された合成樹脂材料からなる単線条(モノフィラメント)を編込み又は織り込むことにより取り付ける場合とがある。前記芯紐は、特に金属製エレメントを加締めて取り付ける場合、合成樹脂製エレメントを成形一体化する場合に有効である。
【0020】
加締めや成形によりエレメントをファスナーテープTに取り付けるとき、そのエレメント取付部がファスナーテープ本体と同様に単なるシート状に形成されていると金属を加締め又は合成樹脂を成形一体するだけでは所要の取付強度が得られない。この加締め又は成形時にエレメントが前記芯紐により膨大化したテープ縁部を噛み込むようにすると、所要の取付強度が得られるようになる。従って、この芯紐はファスナーテープTに特有の構成部材であり、通常のテープ類には不要な部材である。また、この芯紐は編口の所定の位置に正確に導入する必要がある。そのため、ファスナーテープに芯紐を編み込むときには上述のごとく芯紐用のガイドが必要になる。
【0021】
従来、一般的には前記芯紐は1本からなるが、本実施形態では上記一対の第1芯紐ガイド5,6に案内される2本の芯紐7,8をファスナーテープTの表裏に配して同テープTのエレメント取付部に編み込んでいる。ただし本発明にあっては、1つの芯紐用ガイドによって1本の芯紐を案内しファスナーテープのエレメント取付部に編み込む場合をも、当然に含んでいる。本実施形態にあって一対の第1芯紐ガイド5,6の間には、前記第1及び第2ウェールW1,W2をコース方向に走行して編成される地組織の一部を形成する第2の編糸3bを案内するための第2編糸ガイド4bが配されている。本実施形態において、前記第1ウェールW1を形成して地組織を構成する第1の編糸3dは1−0/0−1の鎖編糸であり、前記第2の編糸3aは0−0/4−4の緯挿入糸である。この緯挿入糸に代えてサテン編糸(1−0/3−4)を使うこともできる。
【0022】
一対の第1芯紐ガイド5,6により案内される2本の芯紐7,8を第1ウェールW1及び第2ウェールW2のループを形成する第1ニードル2aと第2ニードル2bとの間の編口に単に導入しようとすれば、芯紐7,8と第1ニードル2a及び/又は第2ニードル2bとが干渉して、芯紐7,8が円滑に通過できなくなるばかりでなく、第1ニードル2a又は第2ニードル2bを折損しかねない。
【0023】
そこで本実施形態にあっては、前記芯紐7,8を前記編口に円滑に導入案内するための本発明の特徴部をなす第2芯紐ガイド9を備えている。この第2芯紐ガイド9は、上記針床1の各ニードル2の摺動溝1aが形成されている側の面と反対側の表面であって、第1及び第2ニードル2a,2bの中間部位に形成された第1芯紐案内溝1bと、同中間部位に編成されるファスナーテープTが通過できる間隔をおいて対設された板材10とから構成される。この板材10の前記第1芯紐案内溝1bと対面する部位には第1芯紐案内溝1bと同じ形状の第2芯紐案内溝10aが形成されている。第1及び第2の芯紐案内溝1b,10aは、芯紐7,8の編込道、すなわちファスナーテープTに編み込まれる芯紐7,8に沿って直線的に案内するために形成される。この第1及び第2の芯紐案内溝1b,10aの断面形状は、それぞれ半円状に形成されている。
【0024】
前記第1芯紐案内溝1bには上記一対の第1芯紐ガイド5,6のうち後方に配された第1芯紐ガイド5により案内される第1芯紐7が導入され、前記第2芯紐案内溝10aには一対の第1芯紐ガイド5,6のうち前方に配された第2芯紐ガイド6により案内される第2芯紐8が導入される。
【0025】
また本実施形態にあって、上記ニードル2の大半は、ファスナーテープTの地組織を編成するニードルであり、針床1の長手方向の中央を挟んで左右の全ての摺動溝1a,1a,1a,…に、第1、第2、第3、…のニードル2a,2b,2c,…をそれぞれ収容して、編成を行うようにしている。図示例では、第1ニードル2aと第2ニードル2bとの間隔を、前記第1及び第2の芯紐7,8が通過するに十分な間隔に設定している。そのため、編目密度が粗くなる可能性もあり、所望の編目密度を得ようとする場合には、例えば編目密度の粗くなる部分に挿入される緯挿入糸に熱収縮性の高い材質を採用することで解決できる。
【0026】
針床1の上方に配設される編糸ガイド4a,4b,4c,…は、編組織によって決められた各ニードル2a,2b,2c,…のそれぞれの上下動に応じて、編糸3a,3b,3c,…をラッピングするように各ニードル2a,2b,2c,…の間を前後方向にスウィングすると共に、横方向にショギングするように作動する。このような編糸ガイド4a,4b,4c,…のラッピング動作と各ニードル2a,2b,2c,…の上下動作とにより、対応する各ニードル2a,2b,2c,…に編糸3a,3b,3c,…が導入されて、それぞれの編目が形成される。
【0027】
図3は、上述の構成を備えたファスナーテープ製造機により製造されるファスナーテープの一例を示している。図示例によれば、第1ウェールW1は、鎖編糸3d(0−1/1−0)、第1トリコット編糸3b(0−1/2−3)、第2トリコット編糸3c(2−3/1−0)及び第1緯挿入糸3a(0−0/3−3)により形成されている。また第2ウェールW2は、鎖編糸3d(0−1/1−0)、第1トリコット編糸3b(0−1/2−3)、第2トリコット編糸3c(2−3/1−0)及び第2緯挿入糸3e(0−0/4−4)により形成されている。第3及び第4ウェールW3,W4は、それぞれが鎖編糸3d(0−1/1−0)、第2緯挿入糸3e(0−0/4−4)、及び第2トリコット編糸3c(2−3/1−0)により形成されている。この第1〜第4ウェールW1〜W4は図示せぬエレメントの取付部Aとなる。
【0028】
第5〜第9ウェールW5〜W9は、第2トリコット編糸3c(2−3/1−0)及び第2緯挿入糸3e(0−0/4−4)により形成されている。また第10〜第12ウェールは、鎖編糸3d(0−1/1−0)、第2トリコット編糸3c(2−3/1−0)及び第2緯挿入糸3e(0−0/4−4)により形成されている。この第5〜第12ウェールW5〜W12は、テープ主体部Bを構成し、このうち第10〜第12ウェールは耳部BEである。ここで、各ウェールW1〜W12を構成する編糸のうち組織が同じ編糸には同一符号を付しているが、鎖編糸は全て異なる編糸であり、トリコット編糸と緯挿入糸については一部が共通の編糸となるが、残るウェールについては一部で異なる編糸からなる。
【0029】
前記第1ウェールW1と第2ウェールW2との間に上記第1及び第2の芯紐7,8がウェールに沿って経挿入される。具体的には、第1芯紐7は上記第2トリコット編糸3cのシンカーループと第1緯挿入糸3aとの間に挿入され、第2芯紐8は同第1緯挿入糸3aと第1トリコット編糸3bのシンカーループとの間に挿入される。つまり、第1芯紐7及び第2芯紐8は、それぞれが第1緯挿入糸3aを挟んで第2トリコット編糸3cと第1トリコット編糸3bとにより締め付けられながらファスナーテープTのエレメント取付部Aの外側端縁に沿って編み込まれる。
【0030】
このとき、第1及び第2芯紐7,8はそれぞれ一対の第1芯紐ガイド5,6に案内されて、第1ニードル2aと第2ニードル2bとの間の針床1と板材10の編口に形成された第2芯紐ガイドである第1芯紐案内溝1b及び第2芯紐案内溝10aに前後に重なるようにして導入される。このとき相対して設けられた第1芯紐案内溝1b及び第2芯紐案内溝10aに導入される第1芯紐7及び第2芯紐8は、その紐間隔や紐位置が変化することなく前後に重なる状態で常に安定して案内される。その結果、第1及び第2の芯紐7,8は、地組織の一部である第1緯挿入糸3aを挟んで前後に相対し、第1及び第2ニードル2a,2b間にて編成される第1及び第2トリコット編糸3b,3cの各シンカーループにより締め付けられた状態で固定され、ファスナーテープTのエレメント取付部Aの外側端縁部に沿って前後両面に均等に膨出する膨大部Cを形成する。この均等な大きさをもつ膨大部Cによって、以降に取り付けられるエレメントの取付強度が向上する。
【0031】
図4は本発明の第2実施形態であるファスナーテープTの製造装置を示しており、上述の第1実施形態と異なるところは、上記第1実施形態では第2芯紐ガイドの一部構成部材である板材10が単一板材から構成されているため、同板材10を図示せぬ支持部材をもって支持固定するとともに、左右一対のファスナーテープTを、例えば図示せぬ連結編糸をもって連結しながら同時に編成することができるのに対して、本実施形態では前記単一の板材10に代えて2枚の第1及び第2の板材11a,11bを針床1の中央部で直接支持している。この実施形態では、左右一対のファスナーテープTを独立して編成する。前記第1及び第2の板材11a,11bに形成される第2芯紐案内溝11cは、針床1に形成された第1芯紐案内溝1bに相対して形成される。
【0032】
ところで、上記第1実施形態にあっても本実施形態にあっても、上述のように第1ニードル2aと第2ニードル2bとの間の間隔を芯紐一本分が通過がしやすいように他のニードル間の間隔よりも倍程に広く設定しているため、第1ウェールW1と第2ウェールW2との間の編目密度が粗くなる。そこで、本実施形態では上記第1ウェールW1の鎖編糸3dと第1〜第3ウェールW1間を走行する第1緯挿入糸3aとに高収縮糸を使うとよい。このときの収縮度は12〜24%とすることが好ましい。また、第1及び第2の芯紐7,8を固定する第1及び第2ウェールW1,W2の間で編成される上記第1及び第2トリコット編糸3b,3cの太さを他の編糸3a,3d,3eよりも1〜3倍太くすると、更に膨大部が大きくなり、エレメントの取付強度が大幅に増加する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の経編ファスナーテープ製造機の第1の実施形態を概略で示す単床式ラッセル経編機の編口部における部分斜視図である。
【図2】同製造機の側面図である。
【図3】前記製造機により編成された経編ファスナーテープの編み組織の一例を模式的に示す部分平面図である。
【図4】本発明の経編ファスナーテープ製造機の第2の実施形態を概略で示す単床式ラッセル経編機の編口部における部分斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 針床
1a 摺動溝
1b 第1芯紐案内溝
2 編針(ニードル)
2a,2b,2c,… 第1、第2、第3ニードル…
3 編糸
3a,3e 第1及び第2緯挿入糸
3b,3c 第1及び第2トリコット編糸
3d 鎖編糸
4 編糸ガイド
4a,4b,… 第1、第2編糸ガイド…
5,6 第1芯紐ガイド
7,8 第1及び第2芯紐
9 第2芯紐ガイド
10 板材
10a,11c 第2芯紐案内溝
11a,11b 第1及び第2板材
T ファスナーテープ
A エレメント取付部
B テープ主体部
BE 耳部
C 膨大部
W1〜W12 第1ウェール〜第12ウェール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経編組織からなるテープの編成と同時に、同テープの一側縁部に沿って芯紐を連続して編込むスライドファスナー用の経編テープの製造機であって、
一列に並列して配された多数の編針(2) を、それぞれの摺動溝(1a)に沿って摺動可能に案内する単一の針床(1) と、スウィング動作及びショギング動作をする編糸ガイド(4) と、芯紐(7,8) を案内する第1芯紐ガイド(5,6) と、前記針床(1) の編口部における芯紐(7,8) の編込道に配されて芯紐(7,8) を案内する第2芯紐ガイド(9) とを備えてなることを特徴とする経編ファスナーテープ製造機。
【請求項2】
前記第1芯紐ガイド(5,6) が1本の芯紐(7,8) を案内する単一のガイドからなる請求項1記載の経編ファスナーテープ製造機。
【請求項3】
前記第1芯紐ガイド(5,6) が2本の芯紐(7,8) をそれぞれ案内する一対のガイドからなる請求項1記載の経編ファスナーテープ製造機。
【請求項4】
前記第2芯紐ガイド(9) が、前記針床(1) の摺動溝(1a)とは反対側の編口部表面に形成された第1芯紐案内溝(1b)と前記編口部表面に沿って配された板材(10,11a,11b)の前記第1芯紐案内溝(1b)に対向して形成された第2芯紐案内溝(11c) とを有してなる請求項1〜3のいずれかに記載の経編ファスナーテープ製造機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−2367(P2007−2367A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185206(P2005−185206)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】