説明

経編裏地

【課題】環境に調和した編物裏地を提供することにある。さらには裏地の要求特性である制電性および/または寸法安定性を兼ね備えた経編裏地を提供することにある。
【解決手段】セルロースアセテートプロピオネート80〜95重量%と、下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物5〜20重量%とを含む熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維からなることを特徴とする経編裏地。
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(但し、R1、R2はH、アルキル基およびアシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維を使用した経編裏地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロースおよびセルロースエステル、セルロースエーテルなどのセルロース誘導体は、地球上で最も大量に生産されるバイオマス系材料として、また、環境中にて生分解可能な材料として昨今の大きな注目を集めつつある。現在商業的に利用されているセルロースエステルの代表例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレートなどが挙げられ、プラスチック、フィルター、塗料など幅広い分野に利用されている。
【0003】
衣料の分野でも化繊裏地など様々な商品が販売されているが、その繊維の製造方法はレーヨンのように、セルロースを二硫化炭素などの特殊な溶媒系で溶解させ湿式紡糸法での製糸を行うか、セルロースアセテートのように、セルロースを誘導体化して、塩化メチレンやアセトンなどの有機溶媒に溶解させた後、この溶媒を蒸発させながら紡糸する乾式紡糸法での製糸を行うしか方法がなかった。これらの湿式紡糸法あるいは乾式紡糸法では、紡糸速度が遅いため、生産性が低いという問題があるだけでなく、使用する二硫化炭素、アセトン、塩化メチレンなどの有機溶剤が環境に対して悪影響を及ぼす懸念が強いという問題があった。
【0004】
他方、従来の有機溶媒を用いて製造されるセルロースアセテート繊維はセルロース繊維が親水性に優れる素材であるために洗濯後の寸法安定性に劣ることが問題であり、樹脂加工を施し寸法安定性を付与する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、樹脂加工を施すことで素材本来の特長を生かしきれなくなるばかりでなく、樹脂加工によるホルマリンの問題が発生する懸念もあった。
【0005】
それに対し溶融紡糸法を用いる方法としては、セルロースアセテートにポリエチレングリコールのような水溶性可塑剤を配合して溶融紡糸を行い、中空糸用の繊維を製造するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、平均分子量200〜1000のポリエチレングリコールを多量に使用した場合、紡糸の際の断糸率の点から、低い紡糸ドラフトでないと溶融紡糸は困難である。また、製造された繊維は強度が0.5g/d以下と非常に弱く、衣料用テキスタイルに使用できない特性を有する繊維であった。
【0006】
このように、従来の有機溶媒を用いて製造されるセルロースアセテートは繊維は、織編物にした時に絹のような優雅な光沢を有する素材となるが、環境には調和できておらず、また溶融紡糸法で製造されたセルロース繊維は実用に耐えられないのが現状である。
【特許文献1】特開昭51−70316号公報
【特許文献2】特開平8−100346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記のような従来の問題点を克服した経編裏地を提供することにある。さらには、裏地の要求特性である制電性および/または寸法安定性を兼ね備えた経編裏地を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した本発明の課題は、セルロースアセテートプロピオネート80〜95重量%と、下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物5〜20重量%とを少なくとも含んでなることを特徴とする熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維を用いた編物裏地とすることで解決することができる。
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(但し、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
【発明の効果】
【0009】
本発明のセルロース脂肪酸混合エステルおよび可塑剤を少なくとも含んでなるセルロース脂肪酸混合エステル組成物よりなる繊維を用いた裏地は、良好な裏地風合いと制電性・寸法安定性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、さらに詳しく本発明の経編裏地について説明する。
【0011】
本発明の経編裏地には、熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維を用いる。
【0012】
本発明におけるセルロースアセテートプロピオネートとしては、セルロースの水酸基の少なくとも一部がアセチル基およびプロピオニル基によって置換されているものが適用できる。具体的なアシル化剤としては、酸塩化物、酸無水物、カルボン酸化合物、カルボン酸化合物誘導体などが挙げられるが特に限定されない。
【0013】
本発明において用いられるセルロースエステルの製造方法に関しては、従来公知の方法にて行えばよく、特に限定されない。アセチル基のみで置換されたセルロースアセテートはそれ自身の熱可塑性が不十分であるため、良好な熱流動性を有するためには多量の可塑剤を添加することが重要である。プロピオニル基によりセルロースをアシル化することにより、セルロースエステルの製造時にブチリル基より長鎖のアシル基によってアシル化するよりも反応性が高いため生産性がよい。
【0014】
熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物中のセルロースアセテートプロピオネートの含有量は80〜95重量%とするものである。含有量を95重量%以下にすることにより、ポリエーテル化合物を加えたことによる熱可塑化効果が増し、溶融成形性が良好になる。含有量を80重量%以上にすることで、セルロースエステルの有する特徴である強度が増し、機械的特性の優れた繊維が得られる。
【0015】
本発明は、下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物を可塑剤として用いる。
【0016】
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(但し、R1、R2はH、アルキル基、アシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数)
これは、上記一般式(1)で示されるポリエーテル化合物がセルロースアセテートプロピオネートとの相溶性に優れるため熱可塑化効果が顕著に表れるばかりか、ポリエーテル化合物自身の耐熱性が良好なため、添加したポリマーの色調も良好になる効果を有するからである。さらには、上記一般式(1)で示されるポリエーテル化合物は生分解性の低いフェニル基、アルキルフェニル基、アリールフェニル基などの芳香族で置換されていないため生分解性が良好である特徴も有している。
【0017】
具体的なポリエーテル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンジメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレートなどが挙げられるがこれに限定されない。
【0018】
この中でも、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジラウレートが好ましい。
【0019】
ポリエーテル化合物の分子量としては、200〜1000であることでポリエーテル化合物の揮発が抑えられ、セルロースアセテートプロピオネートとの相溶性も良好となるため好ましい。300〜800がより好ましい。
【0020】
ポリエーテル化合物の配合量は、5〜20重量%とするものである。配合量を20重量%以下とすることにより、機械的特性が良好となり、加熱時のポリエーテル化合物の揮発が抑えられる。また、溶融紡糸性の点から強度が高くなり紡糸断糸率が低下する。一方、配合量を5重量%以上とすることにより、熱流動性の点から、成形温度を低くすることができ、組成物の熱分解が抑制され得られるポリマーの色調が良好になる。
【0021】
本発明においては必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、エポキシ化合物、弱有機酸、ホスフェイト、チオフォスフェイトなどを単独または2種類以上混合して添加してもよい。また、その他有機酸系の生分解促進剤、滑剤、帯電防止剤、染料、顔料、潤滑剤、艶消剤などの添加剤を配合することは何らさしつかえない。
【0022】
本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物からなる繊維糸条の強度は、0.5〜4.5cN/dtexであることが好ましい。強度を0.5cN/dtex以上とすることで、製編時など高次加工工程を通過させることが可能となり、また最終製品の強力も不足することがないので好ましい。さらに好ましくは良好な強度特性の観点から、糸の強度は0.7cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。
【0023】
また本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート組成物からなる繊維糸条の伸度は、2〜50%であることが好ましい。伸度を2%以上とすることにより、製編や製編時など高次加工工程において糸切れが多発することがない。また、50%以下では低い応力であれば変形することがなく、製編時の緯ひけなどにより最終製品の染色欠点を生じることがないため好ましい。良好な伸度としては、5〜45%であることがより好ましく、10〜40%であることが最も好ましい。
【0024】
本発明では溶融紡糸法が好ましく用いられる。溶融紡糸法では、前記した組成物を公知の溶融紡糸機において、加熱溶融した後に口金から押出し、紡糸し、必要に応じて延伸し巻取ることができる。この際、紡糸温度は190℃〜250℃が好ましく、さらに好ましくは200℃〜240℃である。紡糸温度を190℃以上とすることにより、溶融粘度が低くなり溶融紡糸性が向上するので好ましい。また250℃以下にすることにより、組成物の熱分解が抑制されるため好ましい。
【0025】
本発明のセルロースアセテートプロピオネート組成物からなる繊維は、優れた機械的特性および繊度の均一性を有し、生分解性に優れており、前記繊維を製造する際に熱流動性が優れるため紡糸時の断糸率が極めて少なく、生産性に優れている。
【0026】
本発明のこれら熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維は、丸断面あるいは扁平、三〜八葉、C型、H型、中空などの異型断面であってもよいし、少なくとも1成分が熱可塑性セルロースアセテートプロピオネートからなる芯鞘型、偏心芯鞘型、サイドバイサイド型、割繊維分割型など、あるいは海島型などの1成分を溶出するタイプの複合繊維であってもよい。また、通常のフラットヤーン以外に仮撚加工糸、強撚糸、“タスラン”加工糸、太細糸、混繊糸などのフィラメントヤーンであってもよく、ステープルファイバーやトウ、あるいは紡績糸などの各種形態の繊維であってもよい。
【0027】
本発明の熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維の単繊維繊度の範囲は、0.5〜5dtexが分散染料の繊維内部への均染性および繊維構造物の発色性、布帛としてのハリ、コシが優れているので好ましく、布帛の風合いの観点から1.0〜3dtexの範囲がより好ましい。
【0028】
本発明では上述のように、得られた熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維のみを用いて編立てもよいし、他の繊維と交編してもよい。他の繊維と交編する場合は、その繊維に特に規定はないが、分散染料で染めることのできるポリエステル系繊維が同色性および汚染を防止できる観点から好ましい。ポリエステル系繊維の断面形状・繊維形態も特に規定はないが、裏地の滑り感を実現するためにはフラットヤーンが好ましい。
【0029】
さらに本発明の経編裏地を構成する繊維糸条の総繊度は、30〜135dtexが好ましい。繊度が30dtex未満では布帛引き裂き強度が低下する傾向があり、また135dtexを越えると布帛が厚くなり裏地として適さない場合がある。
【0030】
さらに、洗濯による寸法変化率がタテ、ヨコそれぞれ2.5%以下であることが好ましい。布帛の寸法安定性は繊維の親水性に左右され、樹脂加工を施すなど疎水化すれば向上させることができるが、完全に疎水性にしてしまうと寸歩安定性は良好であるが、制電性が悪化し、実着用事に静電気の発生が著しい。そのため、本発明の経編編物裏地はこの特性を得るために熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維の吸湿性を温度30℃、湿度65%の環境化で吸湿率0.5%以上5.0%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.0%以上3.0%以下とすることが寸法安定性と制電性を両立する上で好ましい。一般に市販されている再生セルロース繊維は吸湿性が5%またはそれ以上あるため、吸湿による膨潤効果により2.5%以下の寸法安定性は得ることができず、繊維を疎水化させるために樹脂加工を施すなどの処理が必要であるが、風合いが粗硬化するため好ましくない。
【0031】
本発明では熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維にセルロースアセテートプロピオネート80〜95重量%と、前記ポリエーテル化合物5〜20重量%とを少なくとも含ませることで後加工による親水性を阻害することなく本効果を得ることができる。なおここで制電性は摩擦耐電圧で評価を行い、経編裏地のタテ方向、ヨコ方向とも3KV以下とすることが好ましい。摩擦耐電圧は3KVを超えると着用時に静電気による不快感が発生し、また冬場などの低湿度での使用条件を加味すると1KV以下とすることがより好ましい。
【0032】
本発明における経編裏地の編組織は特に限定されるものでなく、スナッグ、寸法安定性が良好であればどのような組織でもよい。すなわち、一般的に裏地として適している、ダブルデンビー組織、ハーフトリコット組織、マーキーゼット組織、クィーンズコード組織、メッシュ組織などでも良いし、目付を軽くするために糸抜きにした組織でも良い。また、仕上げ密度はウエル、コース共に、5〜30本/cmが好ましい。5本/cm未満では布帛の目が大きすぎるため、スナッグが劣り、着用時の引っかかりが発生し、裏地には適さない。また、30本/cmを越えると、目付が重たくなる他、十分なストレッチ性能が得られないため、経編裏地の特性が発揮できない。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、セルロースアセテートプロピオネートの強伸度、摩擦耐電圧、洗濯収縮率は以下の方法で評価した。
(1)強伸度
オリエンテック社製テンシロンUCT−100型を用い、試料長20cm、引張速度20mm/minの条件で引張試験を行って、最大荷重を示した点の応力を繊維の強度(cN/dtex)とした。また、破断時の伸度を繊維の伸度(%)とした。
(2)摩擦耐電圧
JIS−L−1094B法に基づく。測定は20℃×30%RHにて実施した。
(3)洗濯収縮率(洗濯による寸法変化率)
JIS−L−0217法に基づく。
【0034】
合成例1
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)30gに酢酸20gとプロピオン酸90gを加え、55℃で30分混合した。混合物を室温まで冷却した後、氷浴中で冷却した無水酢酸10g、無水プロピオン酸140g、硫酸1.2gを加えてアシル化を行った。アシル化において、40℃を超える時は水浴で冷却した。撹拌を150分間行った後、反応停止剤として酢酸30gと水10gの混合溶液を20分間かけて添加して、過剰の無水物を加水分解した。その後、酢酸100gと水30gを加え60℃で1時間加熱撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム2g含む水溶液を加えて析出したセルロースアセテートプロピオネートを濾別、続いて水で洗浄した後、60℃で4時間乾燥した。
【0035】
実施例1
合成例1で得られたセルロースアセテートプロピオネート92量%と可塑剤としてポリエチレングリコール(分子量600)8重量%をニーダー中220℃で混合し、混合ポリマーを得た。これを5mm角程度にカッティングし熱可塑性セルロースエステル組成物のペレットとした。このペレットを80℃に加熱した熱風乾燥機中で10時間乾燥させた。
【0036】
得られたペレットを単軸エクストルーダー式溶融紡糸機で、溶融温度220℃、パック部温度220℃にて溶融し、0.20mmφ−0.30mmLの口金孔を36ホール有する口金より紡出した。紡出糸は25℃のチムニー風により冷却した後、600m/minの速度でゴデットローラーにより引き取り、ワインダーにて巻き取ったところ、紡糸糸切れは認められなかった。本組成物の製糸性は非常に良好であった。
【0037】
得られた繊維糸条は、110デシテックス(dtex)−36フィラメントであり、強度が1.3cN/dtex、伸度が23%であり、機械的特性に優れていた。またこの繊維の20℃65%RHの時の吸湿率は1.5%だった。
【0038】
この繊維糸条をフロント・バックの筬に用い、フロントの組織が10/12/10/12/34/32/34/32、バックの組織が34/32/34/32/10/12/10/12かつ3本in1本outの配列で、メッシュ組織を作成した。この生機を三洋化成(株)製界面活性剤“グランアップ”US−20を1g/L、炭酸ナトリウム1g/Lを含む精練溶液で60℃×20分間精練を行った後、130℃×2分間乾熱セットを施した。このようにして得られた該経編地を用いて、以下の染色を行った。
染料Kayalon Polyester Blue EBL−E
(日本化薬(株)製)
染料濃度 1.0%owf
浴比 1:30
染液pH 5
染色時間 60分
染色温度 90℃
染色後の布帛は十分水洗の後、三洋化成(株)製界面活性剤“グランアップ”US−20を1g/L含んだ洗浄液で、60℃20分洗浄を行い、水洗、乾燥、さらに120℃×2分で仕上げセットを施した。仕上げ密度は28W×45Cであり、仕上げ目付は111g/mであった。
【0039】
同布帛は裏地として適切な風合い・発色を有していた。さらに摩擦耐電圧を測定した結果、タテ方向1.9KV、ヨコ方向2.3KVと良好な制電性を有していた。洗濯寸法変化はタテ、ヨコそれぞれ−1.8%、−1.5%と衣服として問題ないレベルであった。
【0040】
実施例2
セルロースアセテートプロピオネートを91重量%、可塑剤としてアジピン酸ジオクチルを9重量%含有したセルロースアセテートプロピオネート(屈折率1.45、アセチル置換度0.1、プロピオニル置換度2.7、総置換度2.8、平均重合度240)を用い、口金孔のホール数を24ホールとした以外は実施例1と同様にして溶融紡糸し、84dtex、24フィラメントの繊維糸条を得た。この繊維糸条の20℃65%RHの時の吸湿率は1.4%だった。この繊維糸条をフロント・バックの筬に用い、フロントの組織が10/12、バックの組織が23/10のフルセット配列で、逆ハーフ組織の生地を作成した。この生機を実施例1と同様に精練、乾熱セットを施した。このようにして得られた該経編地を用いて、染料濃度が2.0%owfである以外は実施例1と同様にして染色を行った。染色後の布帛は実施例1と同様に水洗、洗浄を行い、乾燥、仕上げセットを行った。仕上げ密度は28W×54Cであり、仕上げ目付は91g/mであった。得られた染色後の編物はソフトな手触りを有しており、さらに実施例1と同様に摩擦耐電圧を測定した結果、タテ方向1.8KV、ヨコ方向2.4KVと良好であり、また洗濯寸法変化率はタテ、ヨコそれぞれ−1.0%、−0.5%であった。
【0041】
実施例3
実施例1と同様のポリマーを用い、口金孔の断面形状を三角断面にした以外は実施例1と同様に溶融紡糸し、84dtex、36フィラメントの繊維糸条を得た。この繊維糸条の20℃65%RHの時の吸湿率は1.5%だった。この繊維糸条をフロント・バックの筬に用い、フロントの組織が10/12、バックの組織が12/10のフルセット配列で、ダブルデンビー組織の生地を作成した。この生機を実施例1と同様に精練、乾熱セットを施した。この様にして得られた編物を用いて、実施例1と同様にして染色を行った。染色後の布帛は実施例1と同様に水洗、洗浄を行い、乾燥した。得られた染色後の編物はソフトな手触りおよび高光沢を有しており、さらに実施例1と同様に摩擦耐電圧を測定した結果、タテ方向1.9KV、ヨコ方向2.3KVと良好であり、また洗濯寸法変化率はタテ、ヨコそれぞれ−1.5%、−1.2%であった。
【0042】
比較例1
セルローストリアセテート(屈折率1.47、アセチル置換度2.9、炭素数3〜18のアシル基は無し、総置換度2.9、平均重合度270をメチレンクロライド及びメタノールの混合溶媒に溶解させ、乾式紡糸して得られた、110デシテックス36フィラメントの繊維糸条(20℃65%RHの時の吸湿率5.9%)を用い、実施例1と同様にしてメッシュ編物を作成し、実施例1と同様に精練、乾熱セットを施した。このようにして得られた経編地を用いて、染色温度が110℃である以外は実施例1と同様にして染色加工を行った。
【0043】
得られた染色後の経編地はソフトな手触りを有していた。また摩擦耐電圧を測定した結果、タテ方向2.1KV、ヨコ方向2.3KVと良好であったが、洗濯寸法変化率はタテ、ヨコ3.0×2.7%と実用上洗濯できない状態であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアセテートプロピオネート80〜95重量%と、下記一般式(1)で表されるポリエーテル化合物5〜20重量%とを含む熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維からなることを特徴とする経編裏地。
R1−O−{(CH2)nO}m−R2 ・・・(1)
(但し、R1、R2はH、アルキル基およびアシル基よりなる群から選ばれた同一または異なる基を表す。nは2〜5の整数、mは3〜30の整数。)
【請求項2】
前記熱可塑性セルロースアセテートプロピオネート繊維糸条の糸強度が0.5〜4.5cN/dtexであることを特徴とする請求項1に記載の経編裏地。
【請求項3】
摩擦帯電圧がタテ方向、ヨコ方向とも3KV以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の経編裏地。
【請求項4】
洗濯による寸法変化率がタテ、ヨコそれぞれ2.5%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の経編裏地。

【公開番号】特開2007−56408(P2007−56408A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243903(P2005−243903)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】