説明

経自然開口的な医療行為に用いる器具

【課題】必要な送気量を確保しつつ、患者の咽頭部への負担を軽減すること。
【解決手段】本発明の経自然開口的な医療行為に用いる器具は、患者に装着されて用いられ、内視鏡を挿入案内するオーバーチューブと、経口的にまたは経鼻的に患者に装着されて用いられる気管チューブとを備え、前記オーバーチューブが患者に装着された際に前記オーバーチューブの前記気管チューブと重なり合う部分に、断面非円状とされて前記気管チューブと面接触可能な気管チューブ収納部が形成された、経自然開口的な医療行為に用いる器具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経自然開口的な医療行為に用いる器具に関する。
本出願は、2006年1月13日出願の米国特許出願第11/331,977号を基礎出願とし、その内容をここに取り込むものとする。
【背景技術】
【0002】
人体の臓器などに対して医療行為(観察、処置などを含む。以下、同じ)を行う場合には、腹壁を大きく切開する代わりに、腹壁に開口を複数開けて、開口のそれぞれに硬性の腹腔鏡や、鉗子、メスを挿入して手技を行う腹腔鏡手術が知られている。腹腔鏡手術は、腹部に小さい開口を開けるだけで済むので、患者の回復が早いという利点がある。
【0003】
しかしながら、近年では患者への負担をさらに低減する手法として、患者の口や鼻、肛門などの自然開口から軟性の内視鏡を挿入して手技を行うことが提案されている。このような医療行為の一例は、下記特許文献1に開示されている。この医療行為について説明する。患者の口から軟性の内視鏡を挿入し、胃壁に形成した開口から腹腔に内視鏡を送り出す。腹腔の観察は、内視鏡の先端に設けた観察装置で行う。さらに、内視鏡に通した処置具や、胃に開けた他の開口又は肛門から挿入して下部消化管に空けた開口を通して腹腔に挿入した処置具を使用して器官を処置する。腹腔内での手技が終了したら、内視鏡用処置具を抜いて開口を塞ぐ。開口を塞ぐ際には、開口の周囲の組織を吸引し、Oリングで組織を束ねるようにして開口を閉じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5458131号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る経自然開口的な医療行為に用いる器具は、患者に装着されて用いられ、内視鏡を挿入案内するオーバーチューブと、経口的にまたは経鼻的に患者に装着されて用いられる気管チューブとを備え、前記オーバーチューブが患者に装着された際に前記オーバーチューブの前記気管チューブと重なり合う部分に、断面非円状とされて前記気管チューブと面接触可能な気管チューブ収納部が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態の気管チューブを示す図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】気管チューブの断面図である。
【図4】気管チューブを患者に装着するときの説明図である。
【図5】気管チューブを患者に装着するときの説明図である。
【図6】第2の実施形態の気管チューブを示す図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】第3の実施形態の気管チューブを示す図である。
【図10】図9のX−X線に沿う断面図である。
【図11】図9のXI―XI線に沿う断面図である。
【図12】図9のXII―XII線に沿う断面図である。
【図13】第4の実施形態の気管チューブを示す図である。
【図14】図13のXIV―XIV線に沿う断面図である。
【図15】気管チューブの説明図である。
【図16】気管チューブを患者に装着するときの説明図である。
【図17】気管チューブを患者に装着するときの説明図である。
【図18】第5の実施形態の経自然開口的な医療行為に用いる器具の分解図である。
【図19】図18のIXX―IXX線に沿う断面図である。
【図20】経自然開口的な医療行為に用いる器具を組み合わせた状態の図である。
【図21】図20のXXI―XXI線に沿う断面図である。
【図22】経自然開口的な医療行為に用いる器具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施態様について以下に詳細に説明する。なお、以下において同じ構成要素には同一の符号を付してある。また、重複する説明は省略する。
〔第1の実施態様〕
図1に第1の実施態様の気管チューブを示す。この気管チューブ1は、経口的に患者に装着されて用いられる。また、気管チューブ1は、経口的に用いられる、内視鏡を案内するためのオーバーチューブ(患者の体内に挿入される挿入部を有するデバイスの一例)2と併用して、患者に装着されて用いられる。なお、この気管チューブ1は、オーバーチューブ2を用いずに経口的に用いられる内視鏡(デバイスの他の例)と併用して、患者に装着されて用いられる場合もある。
【0008】
気管チューブ1は、チューブ本体3と、チューブ本体3の基端側に取り付けて人工呼吸器と接続される接続部4と、この気管チューブ1を患者PTの体内の所定箇所に留置する留置部5とから構成される。留置部5は、カフバルーン5aと、カフバルーン5aにエアーを送るカフチューブ5bから構成される。
【0009】
チューブ本体3は、人体に害のないゴム等の柔軟性を有する材料から作られる。チューブ本体3の基端部3Aおよび先端部3Bは、それぞれ断面円状に形成される。チューブ本体3の中間部に扁平状とされた扁平部6が形成されている。ここでいう扁平部6とは、図2に示すように断面が三日月状に限られることなく、その他、断面が長方形状、半円状、あるいは楕円状等を含む。つまり、扁平部6は、要は、断面が非真円状で、長手方向と短手方向とが特定できるものをいう。
チューブ本体3の扁平部6が形成される部分は、この気管チューブ1が患者PTに経口的に装着された際に、患者PTに経口的に挿入される内視鏡または内視鏡を案内するためのオーバーチューブ2と重なり合う部分(干渉する部分)、すなわち、患者側から言えば、患者PTの喉頭部7から横披裂筋8に位置する部分である。具体的には、扁平部6は、気管チューブ1の先端から基端側に向けておおよそ50mm〜150mmの範囲に形成される。
【0010】
そして、気管チューブ1が患者PTに経口的に装着され、かつ、内視鏡またはオーバーチューブ2が患者PTに経口的に装着された際に、気管チューブ1の扁平状に形成された部分、つまり扁平部6は、その断面長手方向の外面部6aが、図2に示すように、前記内視鏡または前記オーバーチューブ2と接触される。
扁平部6の断面積は、気管チューブ1の基端部あるいは先端部の断面円状部分の断面積とほぼ同等に設定される。また、扁平部6の短手方向における外径(内径も同様)は、基端部3Aあるいは先端部3Bの外径(内径)よりも小さく設定される。
【0011】
次に、この第1の実施形態の作用について説明する。以下においては、医療行為の一例として、患者の口から内視鏡(医療行為を行うために用いるデバイス)1を挿入して胃壁に形成した開口を通して腹腔内で所望の医療行為を行う手技について説明する。医療行為としては、例えば縫合や観察、切開、細胞の採取、臓器の摘出、管腔臓器同士の吻合、など種々の行為が当てはまる。
【0012】
まず、患者に対して麻酔を行う。
ついで、図4に示すように、患者PTの頭を、気管9および食道10がほぼ直線状となるように、頭部を下方に傾けて固定する。これにより、患者PTの喉頭部7から横披裂筋8までを直線的にすることができ、さらには、後に装着するオーバーチューブ2と気管チューブ1との干渉部を短くすることができる。
ついで、図4に示すように、喉頭鏡11を用いて患者PTの口腔12から気管チューブ1を挿管する。気管チューブ1の先端が、輪状軟骨よりも肺側に所定距離達した時点で、留置部5によって気管チューブ1を留置する。すなわち、カフチューブ5bを介してカフバルーン5aにエアーを送り、カフバルーン5aを膨らませることによって、気管チューブ1を留置する。このとき、気管チューブ1の扁平部6は、患者PTの喉頭部7から横披裂筋8に至る部分に位置する。
そして、留置した気管チューブ1の接続部4を人工呼吸器に接続することによって、患者PTの肺に、必要な空気、酸素ガス、あるいは麻酔ガスを供給し、患者の呼吸を人工的に管理する。
【0013】
ついで、図5破線で示すように、オーバーチューブ(内視鏡と同様、医療行為を行うために用いるデバイス)2の先端を、患者PTの口腔12から食道10内に達するまで挿入する。このときには、内視鏡を併用してオーバーチューブ内を体内に挿入していく。
このとき、予め留置してある気管チューブ1と、新たに挿入するオーバーチューブ2とが、患者PTの喉頭部7から横披裂筋8に至る部分で干渉するが、気管チューブ1には扁平部6が設けられ、この扁平部6の長手方向の外面部6aがオーバーチューブ2と接触される。また、扁平部6の短手方向における外径は、基端部3Aあるいは先端部3Bの外径よりも小さく設定される。従って、図2に示すように、気管チューブ1の扁平部6とオーバーチューブ(あるいは内視鏡などの挿入物)の重なり合った部分の幅寸法Lを比較的小さくできる(扁平部6を設けない略円形の気管チューブを用いた場合と比較して、挿入物と重なり合った部分の幅寸法を小さくできる)。この結果、患者PTの咽頭部7への負担を軽減することができる。このとき、扁平部6の断面積を、気管チューブの先端部あるいは基端部の断面円状部分とほぼ同等としているので、気管チューブ1による送気量が、扁平部6を形成したために減少するといった不具合は生じない。
【0014】
なお、従来の、基端から先端まで断面円状に形成された気管チューブを用いた場合であると、患者PTの喉頭部7から横披裂筋8に至る部分(消化器系と呼吸器系とが交叉する部位)では、互いに断面円状に形成された気管チューブとオーバーチューブとが重なり合うことなり、その重なり合った部分の幅寸法は非常に大となる。このため、患者の咽頭部の負担は非常に大になる。内視鏡の先端が胃まで達すると、内視鏡のチャンネルを利用して胃の内部に気体を送り込み、胃を膨らませる。そして、内視鏡のチャンネルに挿入した高周波ナイフで胃壁を切開する。
【0015】
ついで、患者PTの腹部に気腹針を刺入し、腹腔に炭酸ガスなどを送気して腹腔を膨らませる。腹腔を膨らませることは、腹腔で医療行為を行う際に空間を確保するためである。腹腔を膨らませる方法としては、気腹針を用いる代わりに、内視鏡のチャンネルを利用して、腹腔に炭酸ガスなどを送気してもよい。
腹腔への気腹時には患者PTの横隔膜を圧迫する。特に麻酔の量が多いと自然呼吸が難しくなるため、気管チューブ1を用いて患者の呼吸を管理する。
ついで、必要に応じて、オーバーチューブ2や内視鏡を入れ替えながら、前記胃壁の切開により形成された開口部分から腹腔内に、内視鏡の挿入部を進入させて、内視鏡により腹腔内における所定の処置を行う。
【0016】
なお、オーバーチューブ2を必要に応じて入れ替えるのは、胃の内部と腹腔の内部とでは、要求される清浄度が異なるためであり、また、内視鏡を入れ替えるのは、オーバーチューブ2と同様、胃の内部と腹腔の内部とで要求される清浄度が異なるため、また、その時点の処置に合致する最適のデバイスを用いるためである。しかしながら、同じデバイスを用いて処理を行うことが容易にできる場合や、腹腔内にアプローチせずに管腔臓器内で医療行為を行う場合などの場合にはオーバーチューブや内視鏡などのデバイスを必ずしも入れ替えなくても良い。
【0017】
このようにオーバーチューブ2や内視鏡を入れ替えるときにも、患者PTにとって狭い咽頭部で多大な負担を負うことが懸念されるが、この場合でも、前述したように気管チューブ1の患者PTの咽頭部におけるオーバーチューブ2と重なり合う部分が扁平部6とされ、それら気管チューブ1とオーバーチューブとの重なり合う部分の幅寸法Lを小さくできるので、患者PTの咽頭部の負担を小さくできる。
また、このように気管チューブ1を用いて呼吸管理を行っているので、必要に応じて、処置の途中で、内視鏡を用いた手技から、腹壁を大きく切開する手技に切り替えることも可能である。
【0018】
腹腔内で必要な処置が終わると、内視鏡の先端を胃壁の内部まで後退させ、縫合用の処置具によって開口部を縫合する。本発明における縫合とは、管腔臓器内と腹腔内との連通を閉塞することであり、吻合などの手段による管腔臓器内と腹腔内との連通の閉塞も縫合の範疇に含まれる。
ついで、内視鏡およびオーバーチューブ2をそれぞれ患者PTから抜去し、患者の呼吸の管理が不要となった時点で、さらに気管チューブ1を患者PTから抜去する。
【0019】
また、第1の実施形態では、患者PTの咽頭部において、気管チューブ1のオーバーチューブと重なり合う部分に扁平部6を形成したが、図3に示すように、この扁平部6の内部に長手方向の内面略中央部に、扁平部6の短手方向の圧縮を抑制するリブ6bなどの補強部材を設けても良い。この場合、オーバーチューブ2や咽頭部等から気管チューブ1を押しつぶすような外力が加わる場合でも、リブ6bによって扁平部6のつぶれを抑制することができ、柔軟な材質で気管チューブを生成した場合であっても扁平部6内の空間をより確実に確保することができる。なお、リブ6bは複数も受けても良い。また、補強部材として、扁平部の短手方向の圧縮を抑制するワイヤなどの棒状部材をリブ6bの代わりに少なくとも扁平部を挿通するように設けても良い。
【0020】
〔第2の実施態様〕
図6に第2の実施態様の気管チューブを示す。この気管チューブ20も、前述の第1の実施形態と同様、経口的に患者に装着されて用いられる。この気管チューブ20の特徴は、患者に装着された際に、チューブ本体21の、患者PTに経口的に挿入される内視鏡またはオーバーチューブ2と重なり合う部分(干渉する部分)が、複数(図7では2個)の枝管路22によって形成され、これら枝管路22の間に、前記オーバーチューブ2が通される点である。これら複数の枝管路22もそれぞれ扁平状に形成されている。扁平状に形成された枝管路22は、図7に示すように、断面長手方向Mが互いに平行となるように形成される。また、複数の枝管路22の断面積の総和は、気管チューブ20の基端部20Aあるいは先端部の断面円状部分の断面積とほぼ同等に設定される。枝管路22の断面長手方向Mに略直交する短手方向における幅の総和は、この枝管路22よりも先端側あるいは基端側における気管チューブの外径よりも小さく設定される。
【0021】
この気管チューブ20を用いた場合、図7に示すように、気管チューブ1の枝管路22同士とオーバーチューブ2の重なり合った部分の幅寸法Lを比較的小さくでき、この結果、気管チューブ20による必要な送気量を確保しつつ、患者の咽頭部への負担を軽減することができる。加えて、チューブ本体21の途中部分が複数の枝管路22に分かれているので、内視鏡やオーバーチューブを挿入する際に、患者の咽頭部周辺の組織の圧迫を軽減することができ、この点において、患者の咽頭部への負担をより一層軽減することができる。
なお、前記図6、図7では、枝管路22が2つ形成された例について説明しているが、これに限られることなく、枝管路22が3個以上あってもよい。さらに、第1の実施の形態の同様に、枝管路22の短手方向の圧縮を抑制する補強部材を設けても良い。
【0022】
〔第3の実施態様〕
図9に第3の実施態様の気管チューブを示す。この気管チューブ30も、前述の第1の実施形態と同様、経口的に患者に装着されて用いられる。この気管チューブ30の特徴は、基端側にマウスピース31が取り付けられた点である。マウスピース31の中央部には、内視鏡またはオーバーチューブ2を挿通させる挿通孔32が形成されている。マウスピース31の挿通孔32の外側には空間33が形成されている。空間33は、マウスピース31の前板部34に設けられた接続部35と連通するとともに、マウスピース31の底板部36に挿入される挿入される枝管路37、37と連通している。枝管路37の断面長手方向Mに略直交する短手方向における幅の総和は、この枝管路37よりも先端側あるいは基端側における気管チューブの外径よりも小さく設定される。
【0023】
なお、図9において、符号39はマウスピース31を患者の口に固定するための紐であって、患者の後頭部を通されて結ばれる。この気管チューブ30では、この気管チューブ30が患者に装着された際に、チューブ本体の、患者PTに経口的に挿入される内視鏡またはオーバーチューブ2と重なり合う部分(干渉する部分)まで、チューブ本体38の枝管路37が分かれて形成されている。この気管チューブ30においても、図12に示すように、枝管路37、37とオーバーチューブ2の重なり合った部分の幅寸法Lを比較的小さくでき、この結果、必要な送気量を確保しつつ、患者PTの咽頭部への負担を軽減することができる。本実施形態においても第1の実施の形態と同様、枝管路37の短手方向の圧縮を抑制する補強部材を設けても良い。
【0024】
〔第4の実施態様〕
図13に第4の実施態様の気管チューブを示す。気管チューブ40は、経鼻的に患者に装着されて用いられる。この気管チューブ40の特徴は、患者に装着された際に、チューブ本体41の、患者に経口的に挿入される内視鏡またはオーバーチューブ2と重なり合う部分(干渉する部分)が、複数(図13では2個)の枝管路42によって形成されていること、また、枝管路42が互いの平坦部42aが対向する断面半円状に形成されていることである。これら枝管路22の間に、内視鏡またはオーバーチューブ2が通される点は、前述の第2の実施形態、第3の実施形態と同様である。気管チューブ40においても、2個の枝管路42の断面積の総和は、気管チューブ40の基端部あるいは先端部の断面円状部分の断面積とほぼ同等に設定される。
【0025】
気管チューブ40で枝管路42を断面半円状に形成したのは、この気管チューブ40を患者に装着する際に、患者の鼻を通過させるためである。つまり、咽頭鼻部の通路は断面円状になっている。この部分を通りやすくするため、二つの枝管路42,42が合わさった際に、ちょうど断面略円状にさせるためである。
詳しくは、図14に示すように、二つの枝管路42同士が合わさった際の、断面長手方向の寸法L2が、断面短手方向の総和寸法L1よりも大となるように、それぞれの枝管路42の形状が設定されている。このように二つの枝管路42,42が合わさった際に、その断面が、真円ではなく枝管路42の長手方向に延びる扁平状に設定したのは、枝管路42と患者に経口的に挿入される内視鏡またはオーバーチューブ2との重なり合う部分の最大外径を小さくすることを、考慮したためである。本実施の形態において、寸法L2は寸法L1よりも若干大きくなるように設定することで鼻からの挿入性を良好に保っている。
【0026】
図16は、気管チューブ40を患者PTに経鼻的に装着する状態を説明するものである。気管チューブ40の先端を気管9に導かせるために、必要に応じて口腔12から挿入した鉗子を用いてもよい。このように、気管チューブ40を患者PTの鼻から挿入して留置した後に、図17破線で示すように、例えば、オーバーチューブ2を患者PTの口腔から挿入する。このとき、図15、図17で示すように、両枝管路42,42を開かせ、その間を通す。
なお、この気管チューブ40は、適宜弾性を有する材料により作られ、外力が加わらないときには、それ自体の弾性によって、両枝管路42,42同士が合わさった状態が保持できるようにしてもよい。この場合、両枝管路42、42の間に、内視鏡やオーバーチューブ2を通すときには、鉗子等の適宜治具を利用して、それら枝管路42、42を開ければよい。
【0027】
この気管チューブ40においても、枝管路42、42とオーバーチューブ2の重なり合った部分の幅寸法を比較的を小さくでき、この結果、必要な送気量を確保しつつ、患者PTの咽頭部への負担を軽減することができる。
また、この気管チューブ40によれば、経鼻的に装着されるので、内視鏡やオーバーチューブなどのデバイスとの干渉する部分の長さを短くできる。つまり、経口的に気管チューブを挿入する場合に比べて、経口的に挿入される内視鏡やオーバーチューブなどのデバイスとオーバーラップする部分の長さを短くできるため、患者の負担を、より一層低減することができる。また、患者の口腔での干渉がないので、内視鏡等を挿脱する際に抜けにくい利点も得られる。
【0028】
〔第5の実施態様〕
図18に、第5の実施態様の経自然開口的な医療行為に用いる器具を示す。この器具50は、気管チューブ51とオーバーチューブ52から構成される。気管チューブ51は、経口的にまたは経鼻的に患者に装着されて用いられる。オーバーチューブ52は、経口的に患者に装着されて用いられる。
【0029】
オーバーチューブ52が患者に装着された際に、このオーバーチューブ52の、患者に装着された気管チューブ51と重なり合う部分には、断面非円状とされて気管チューブ51と面接触可能な気管チューブ収納部53が形成されている。気管チューブ収納部53は、断面で言うと円の一部が平坦状に欠かれた断面形状となっている。
一方、気管チューブ51の前記気管チューブ収納部53に対応する位置には、断面半円状部54が形成されている。断面半円状部54は、前記気管チューブ収納部53の欠かれた部分に相当する形状である。つまり、気管チューブ収納部53と断面半円状部54の平坦部53a、54aが重なり合うと、図21に示すように、断面円状になる。
前述の経自然開口的な医療行為に用いる器具50を用いた場合であっても、気管チューブ51とオーバーチューブ52の重なり合った部分、つまり、気管チューブ収納部53と断面半円状部54の合わせた幅寸法を比較的小さくでき、この結果、必要な送気量を確保しつつ、患者の咽頭部への負担を軽減することができる。
【0030】
なお、気管チューブ51とオーバーチューブ52の組み合わせは、図18、図19に示されたものに限定されることなく、図22に示すように、気管チューブ51の一部を収納する溝部55によって気管チューブ収納部53を構成してもよい。また、オーバーチューブの断面形状は気管チューブと干渉する部分のみ異形にしても良く、オーバーチューブの挿入部の先端から基端の全ての領域を異形にしても良い。
【0031】
以上、本発明の実施態様を説明したが、本発明は前記の実施態様に限定されることはない。例えば、実施の形態では、胃壁に開口を形成し、この開口を通して腹腔内にデバイスを導入して所望の医療行為を行う手技について説明したが、開口を形成する管腔臓器は胃に限らず、食道や十二指腸など、経口的にアプローチできる臓器であればどこでも良い。また、腹腔内にアプローチせずに管腔臓器内で医療行為を行う手技であっても良い。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で構成の付加、省略、置換、及びその他の交換が可能である。本発明は、上記の説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、気管チューブのデバイスと重なり合う部分が扁平状に形成され、これにより気管チューブのデバイスと重なり合う部分の幅寸法が小さくなっているので、患者への負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 気管チューブ
2 オーバーチューブ
3 チューブ本体
3A 基端部
3B 先端部
4 接続部
5 留置部
5a カフバルーン
5b カフチューブ
6 扁平部
6a 外面部
6b リブ
7 喉頭部
8 横披裂筋
9 気管
10 食道
11 喉頭鏡
12 口腔
20 気管チューブ
20A 基端部
21 チューブ本体
22 枝管路
30 気管チューブ
31 マウスピース
32 挿通孔
33 空間
34 前板部
35 接続部
36 底板部
37 枝管路
38 チューブ本体
40 気管チューブ
41 チューブ本体
42 枝管路
42a 平坦部
50 器具
51 気管チューブ
52 オーバーチューブ
53 収納部
53a 平坦部
54 断面半円状部
55 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に装着されて用いられ、内視鏡を挿入案内するオーバーチューブと、
経口的にまたは経鼻的に患者に装着されて用いられる気管チューブとを備え、
前記オーバーチューブが患者に装着された際に前記オーバーチューブの前記気管チューブと重なり合う部分に、断面非円状とされて前記気管チューブと面接触可能な気管チューブ収納部が形成された、経自然開口的な医療行為に用いる器具。
【請求項2】
請求項1記載の経自然開口的な医療行為に用いる器具であって、
前記気管チューブ収納部は、前記気管チューブの一部を収納する溝部により構成される。
【請求項3】
請求項1記載の経自然開口的な医療行為に用いる器具であって、
前記オーバーチューブの前記気管チューブ収納部に前記気管チューブが収納されたとき、前記オーバーチューブと前記チューブとの重なりあった、両チューブの外形は、断面円状に形成される。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−130762(P2012−130762A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−48595(P2012−48595)
【出願日】平成24年3月5日(2012.3.5)
【分割の表示】特願2008−532254(P2008−532254)の分割
【原出願日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)