説明

結晶シリコン基板の表面の下処理を含む光起電セルの製造方法

少なくとも1つの光起電セルを製造するための方法が、結晶シリコン基板(1)の表面(1a)の異方性エッチングと、前記表面(1a)の等方性エッチング処理とを連続的に含んでいる。等方性エッチング処理は、10nm〜500nmの間の範囲の制御された平均厚さを有する酸化シリコン薄膜(11)を形成することと、そのようにして形成された前記薄膜を除去することとからそれぞれなる少なくとも2つの連続的な作業を含む。基板(1)の面(1a)に酸化シリコン薄膜(11)を形成することからなる作業は、熱によって活性化される乾式酸化によって実行される。このような方法は、異方性のやり方でエッチングされた後の基板(1)の表面(1a)の表面品質の改善を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの光起電セルを製造するための方法であって、以下の一連のステップ、すなわち
結晶シリコン基板の表面に異方性エッチングを施すステップ、および
前記表面に、酸化シリコンの形成および該酸化シリコンの除去を含む、等方性エッチング処理を施すステップ
を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光起電セルは、受光される光子の電気信号への直接的な変換を可能にする多層積層体で形成される。
【0003】
例えば、そのような光起電セルは、光起電ヘテロ接合セルであってよい。ヘテロ接合は、とくには、所与の型のドーピング(nまたはp)を有する結晶シリコン基板と、基板の種類と反対の型の非晶質シリコン層とによって形成される。さらに、ヘテロ接合の界面特性を改善し、したがって変換の有効性を改善するために、「パッシベーション」層と呼ばれる中間層が、通常はヘテロ接合を形成している2つの構成要素の間に配置される。米国特許出願公開第2001/0029978号明細書に示されているとおり、この中間層は、通常は、真正非晶質シリコンの層である。
【0004】
例として、図1が、米国特許出願公開第2001/0029978号明細書に記載のとおりの先行技術による光起電ヘテロ接合セルの特定の実施の形態を示している。光起電ヘテロ接合セルが、例えばn型にドープされた結晶シリコン基板1を備えており、この基板は、
真正非晶質シリコンの層2、
基板1とヘテロ接合を形成するように例えばp型にドープされた非晶質シリコンの層3、
例えば酸化インジウムスズ(すなわち、ITO)で作られた電極4、および
例えばくし形の集電体5
によって一様かつ連続的に覆われた前面1aを含んでいる。
【0005】
さらに、セルの光の閉じ込めを向上させるために、基板1の前面1aにテクスチャが施されている(すなわち、基板1の表面1aが構造化されている)。
【0006】
図1において、基板1の裏面1bは平坦であり、電極6で覆われている。しかしながら、他の場合においては、テクスチャを施し、図2に示されているように多層積層体で覆うことも可能である。したがって、この実施の形態においては、基板1の裏面1bが、
真正非晶質シリコンの層7、
例えばn型にきわめて高濃度にドープされた非晶質シリコンの層8、
例えばITOで作られた電極9、および
くし形を有する集電体10
によって一様かつ連続的に覆われる。
【0007】
このように、図1および図2に示されている光起電ヘテロ接合セルなどの光起電セルは、少なくとも一方の面にテクスチャが施されている基板へと、複数のきわめて微細な層(およそ数ナノメートルから数十ナノメートル)を一様に付着させることを必要とする。薄い層の一様な付着(「順応的付着」とも称される)とは、薄い層を、この薄い層の付着先の面の起伏に沿うように、実質的に一定の厚さで付着させることと理解される。
【0008】
しかしながら、基板の少なくとも1つの面にテクスチャを施す工程は、これらの層の良好な順応(または、一様な分布)を促進することがない。
【0009】
さらに、光起電セルの分野においては、基板の少なくとも1つの面に図1および図2に示されているようなピラミッドの形態のテクスチャを施すことが一般的である。しかしながら、得られたピラミッドの側面が多くの場合にきわめて粗く、ピラミッドの頂点および谷が険しい(30nm未満の曲率半径)ことが、このテクスチャを有する面に順に付着させられる各層の完璧な順応にとって不利である。
【0010】
一般に、テクスチャは、水酸化カリウム(KOH)または水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ溶液を使用する異方性エッチングという少なくとも1つの工程によって有利に施される。粗さの現象を抑えるために、アルカリ溶液にイソプロパノール(IPA)などの界面活性剤を添加することも提案されている。
【0011】
例として、米国特許出願公開第2001/0029978号明細書においては、基板1の表面を洗浄し、次いで前記異方性エッチングを実行すべく、洗浄後の基板をNaOHなどのアルカリ溶液(イソプロパノールを(IPA)を添加してもよい)へと沈めることによって、基板1にテクスチャが施されている。
【0012】
異方性エッチングに起因するいくつかの問題を回避するために、さらに米国特許出願公開第2001/0029978号明細書は、異方性エッチングの工程の後で、異方性エッチングの工程において形成された2つのピラミッドの間の領域(図1の領域「b」)に丸みをつける工程を実行することを提案している。このために、基板に、等方性エッチングの工程に先立って、フッ酸(HF)および硝酸(HNO)を1:20の比で含んでいる水溶液に約30秒間にわたって浸漬させることによる一連の洗浄の工程が加えられる。次いで、基板に洗浄の工程(脱イオン水(DI水とも称される)、次いでHF+水、その後にDI)が加えられる。このようにして、HFおよびHNOの混合物による等方性エッチングの工程が、公知のやり方で、硝酸の酸化作用のおかげで酸化シリコンの形成を可能にし、フッ酸の攻撃作用(attack action)のおかげで前記酸化シリコンをエッチングプロセスによって除去することを可能にする。米国特許出願公開第2001/0029978号明細書に記載の代案によれば、水性混合物がCHCOOHも含むことができる。
【0013】
しかしながら、米国特許出願公開第2001/0029978号明細書において提案されている湿式等方性エッチングは大きすぎる(too important)(約2μmまたはそれ以上)。したがって、ナノメートルレベルのピラミッドの側面の平滑化を得ることも、ピラミッドの頂上に丸みをつけることも、可能にしない。
【0014】
米国特許出願公開第2001/0029978号明細書においては、HFおよびHNOによる湿式等方性エッチングを、混合気体CF/Oを使用する乾式エッチングによって置き換えることも提案されている。しかしながら、そのようなエッチング作業は、結晶の乱れを表面に(さらには、表面下にも)生じさせることによってそのように処理される表面の品質を損ない、パッシベーションの問題を生じさせかねない。
【0015】
国際公開第2009/120631号パンフレットにおいては、光起電セルの製造が、例えばピラミッドの形態を有するパターンを形成するために、表面にテクスチャを施す工程を含んでいる。さらに、国際公開第2009/120631号パンフレットに記載の方法は、表面の酸化作業およびその後のエッチング作業とによって実行される、事後洗浄の工程を含むこともできる。酸化作業は、1ppm〜30ppmの間のオゾンを含む脱イオン水浴(1体積%のHClを含んでもよい)など、溶液への浸漬によって化学的に実行される。結果として、この化学的な酸化作用によってきわめて微細な酸化物が生じるが、その厚さは、処理対象の表面にテクスチャが施されている場合、一様ではない。このような酸化物のエッチングによる除去は、表面の洗浄には充分であるが、テクスチャの角に丸みをつけ、あるいはテクスチャの角を和らげることを目的とするテクスチャの平滑化には、依然として不充分である。このため、国際公開第2009/12631号パンフレットにおいては、得られたテクスチャの角に丸みをつけ、あるいは得られたテクスチャの角を和らげることが望まれる場合に、上述の事後洗浄の工程に先立って、特有の平滑化の工程がとくに実行される。米国特許出願公開第2001/0029978号明細書と同様に、この随意による平滑化の工程は、湿式プロセスによって実行され、上記で詳しく述べた欠点がつきまとう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、少なくとも1つの光起電セルを製造するための方法において、ひとたび異方性エッチングされた後の結晶シリコン基板の表面の品質を、先行技術において提案されている等方性エッチング処理と比べて改善できるようにする等方性エッチング処理を提案することにある。とくには、ピラミッドの形態のテクスチャが施された基板表面について、本発明の目的は、頂点および2つのピラミッドの間の領域に丸みをつけ、さらには前記ピラミッドの側面を平滑にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明によれば、この目的が、以下の連続的なステップ、すなわち
結晶シリコン基板の表面に異方性エッチングを施すステップ、および
前記表面に、酸化シリコンの形成および前記酸化シリコンの除去を含む等方性エッチング処理を施すステップ
を含んでいる少なくとも1つの光起電セルを製造するための方法であって、
前記表面の等方性エッチング処理が、基板の前記表面に熱によって活性化される乾式酸化によって2nm〜500nmの間の厚さを有する酸化シリコン薄膜を形成すること、および前記酸化シリコン薄膜を除去することからそれぞれなる2つの連続的な作業を含むことを特徴とする方法によって達成される。
【0018】
本発明の発展によれば、2つの連続的な作業が、等方性エッチング処理の際に少なくとも1回繰り返される作業サイクルを構成する。
【0019】
他の利点および特徴が、本発明を限定するものではない例として提示されて添付の図面に示される本発明の特定の実施の形態についての以下の説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】先行技術による光起電セルの第1の実施の形態を概略の断面図にて示している。
【図2】先行技術による光起電セルの第2の実施の形態を概略の断面図にて示している。
【図3】本発明による少なくとも1つの光起電セルを製造するための特定の方法の各段階を示している。
【図4】本発明による少なくとも1つの光起電セルを製造するための特定の方法の各段階を示している。
【図5】本発明による少なくとも1つの光起電セルを製造するための特定の方法の各段階を示している。
【図6】本発明による少なくとも1つの光起電セルを製造するための特定の方法の各段階を示している。
【図7】本発明による少なくとも1つの光起電セルを製造するための特定の方法の各段階を示している。
【図8】本発明による少なくとも1つの光起電セルを製造するための特定の方法の各段階を示している。
【図9】本発明による少なくとも1つの光起電セルを製造するための特定の方法の各段階を示している。
【図10】本発明による代案の実施の形態を示している。
【図11】本発明による代案の実施の形態を示している。
【図12】本発明による代案の実施の形態を示している。
【図13】本発明による代案の実施の形態を示している。
【図14】本発明による代案の実施の形態を示している。
【図15】本発明による代案の実施の形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
光起電ヘテロ接合セルなどの少なくとも1つの光起電セルの特定の実施の形態の種々の段階が、図3〜図9に示されている。
【0022】
最初に、例えばn型にドープされた結晶シリコン基板1の実質的に平坦な前面1aに、異方性エッチングの作業が加えられる。
【0023】
とくには、図3および図4において、基板1の前面1aの異方性エッチングが、前面1aをピラミッド形に構造化する(すなわち、前面1aにピラミッド形のテクスチャを施す)ことを可能にする。これは、例えば基板1の前面1aを水酸化カリウム(KOH)およびイソプロパノール(IPA)を含む水性の異方性エッチング液に30分間にわたって80℃の温度において浸すことによって実行される。さらに、図3および図4に示されるように基板1の前面1aだけを構造化する場合、前記裏面1bを保護するために、KOH含有の水溶液による異方性エッチングに耐える保護マスク(例えばSiOまたはSiからなる)で裏面1bを覆ってもよい。
【0024】
表面に対して垂直に向いた結晶軸(100)を有するシリコン基板において、得られるピラミッドの側面「f」は、通常は面1aの主平面「P」(すなわち、テクスチャが施される前の面1aの平面)と54.7°の角度を形成する。さらに、ピラミッドの幅は、水溶液の濃度およびエッチング時間に応じて、0.1μm〜40μmの間の範囲であり、好都合には1μm〜30μmの範囲である。
【0025】
基板1の前面1aの一部分の拡大図Aによって示されるように、異方性エッチングの作業の後の前記面1a(とくには、ピラミッドの側面「f」)の表面の品質は粗く(これが、図5に破線によって概念的に示されている)、ピラミッドの頂上「s」ならびに2つのピラミッドの間の領域「b」は険しい(とくには、曲率半径が30nm未満である)。
【0026】
異方性エッチングの作業の後の面1aの表面の品質を改善し、とくには好都合に生成されたピラミッドの側面「f」を平滑化し、2つのピラミッドの間の「b」と呼ばれる領域および前記ピラミッドの頂点「s」に丸みをつけるために、少なくとも2つの連続する作業を含む等方性エッチング処理を実行することが提案される。各作業は、制御された厚さを有する酸化シリコンの薄膜を形成すること、および、そのようにして形成された前記薄膜を好ましくは一様に除去すること、で構成される。さらに、酸化シリコンの薄膜の厚さが2nm〜500nmの間であり、少なくともピラミッドの側面「f」において優先的に一様であり、好都合にはすべての処理面において一様である。
【0027】
基板1の面1aへの酸化シリコンの薄膜の形成は、熱によって活性化される乾式酸化の作業によって、すなわち基板の面を室温よりも高い温度に維持しつつ非液体の酸化剤を用いて基板の面を酸化させることによって、実行される。酸化剤は、とくには気体の形態であってよく、あるいはプラズマに含まれてもよい。酸化剤は、例えば酸素、オゾン、または水の単独または混合物であってよい。さらに詳しくは、乾式酸化の熱による活性化は熱量を加えることによって、基板の面へとエネルギーをもたらすことからなり、この熱量は、室温よりも高く、好ましくは40℃以上である少なくとも1つの温度によって定められる。さらに、そのような熱量は、好都合には、酸化シリコンの薄膜を生成するための高速かつ充分に大きい温度上昇と、シリコン基板の表面または体積(volume)の特性が損なわれないような高すぎない最終温度と、の間の妥協を得ることを可能にするように調節される。
【0028】
実際、特定の制御された厚さを有する酸化シリコンの薄膜を形成し、その後に除去することによって、
・基板のテクスチャが施された面の表面の粗さを大いに軽減することで、前記基板の表面へと直接付着されるように意図された薄い層との界面における最小レベルのエネルギー状態密度を保証し、
・構造の角(ピラミッドの頂点「s」および領域「b」)に丸みを付け、後に付着される薄い層のより良好な順応を可能にする
ことができる。
【0029】
さらに、処理は、テクスチャが施されたシリコン基板においてとくに重大である粒子汚染の大部分を取り除くこともできる。
【0030】
より詳しくは、等方性エッチング処理を、種々のやり方で実行することができる。
【0031】
とくには、熱によって活性化される乾式酸化の作業は、熱酸化であってよく、すなわち気体の形態またはプラズマに含まれる少なくとも1つの酸化剤を用い、室温よりも高く、好ましくは40℃以上である温度を基板の面へと加えることによる酸化であってよい。とくには、加えられる温度は、1100℃よりも低い。より詳しくは、このような作業が、等方性の酸化を得るために、「急速加熱処理」または「RTP」とも称される高速処理プロセスによって実行される。したがって、乾式酸化の作業は、好ましくはきわめて高速な温度上昇(例えば、100℃/s〜200℃/sの間)にて実行される。他方で、この温度上昇の終わりにおいて得られる最終的な温度は、好ましくは基板の処理後の表面の品質および体積の特性を損なうことがないように控え目である。
【0032】
熱によって活性化される乾式酸化の作業を、0.15μm〜0.4μmの範囲の波長、好都合には約254nmおよび約185nmの波長を有する紫外線を加えることによって補助する、あるいは、得ることができる。同じやり方で、熱によって活性化される乾式酸化の作業を、例えば高周波、マイクロ波、または超高周波によって活性化されるプラズマ処理によって補助する、あるいは、得ることもできる。プラズマは、例えば誘導プラズマまたは反応性イオンエッチング(RIE)プラズマなどのプラズマであってよい。酸化剤は、酸素、オゾン、水蒸気を含むことができる気体または気体混合物であってよく、あるいは分子、イオン、ラジカル状、または原子の形態の別の酸化性の気体の種(単独または組み合わせ)であってよい。酸化の作業の際の全圧は、任意の種類であってよく、すなわち大気圧、大気圧未満、または大気圧よりも高くてよい。全圧に応じて酸化剤を構成する各々の種の分圧を変えることも可能である。とくには、各々の種の分圧を、所望の酸化速度に応じて調節することができる。
【0033】
第1の例によれば、酸化の作業が、酸素およびオゾンの気体混合物(とくには、Oに対して3〜4%のO)を用いて約400℃の温度で実行される熱酸化であってよい。このような作業は、酸化シリコン薄膜であって、ひとたび除去されたときに表面の品質を改善する充分な厚さの酸化シリコン薄膜を得ることを可能にする。10nmよりも大きい厚さを選択することが有利であり、このような厚さは例えば3時間にわたる450℃の温度で得ることができる。温度を高くする、および/または、処理時間を長くすることによって、厚さをより大きくすることができる。例えば、4時間にわたる550℃の温度において、酸化シリコンの25nmの膜を得ることができる。等方性エッチング処理の作業の間に生じる酸化シリコン膜の厚さを増やすために、連続する酸化および除去の作業からなる作業サイクルを繰り返すこともでき、このことは後に詳しく述べる。酸化シリコンの厚さが、同じ温度での酸素のみによる酸化によって得られる膜と比べて、4倍になる。
【0034】
第2の例によれば、酸化の作業が、酸素およびオゾンの気体混合物(Oに対しておよそ2ppmのO)において紫外線照射によって補助され、700℃〜800℃の間で実行される熱酸化であってよい。このような作業は、酸化シリコン薄膜であって、ひとたび除去されたときに表面の品質を改善する充分な厚さの酸化シリコン薄膜を得ることを可能にする。酸化シリコンの厚さが、酸素のみによる酸化によって得られる膜と比べて、50%〜100%増加する。生成される酸化シリコンの膜の厚さは、好都合には10nmよりも大きくなるように選択される。例えば、140分間にわたる800℃での酸化において、約25nmの厚さを有する酸化シリコンの膜が得られる。同じ継続時間において、900℃では60nmの厚さを有する膜が得られ、700℃では5nmの厚さを有する膜が得られる。等方性エッチング処理の作業の際に生成される酸化シリコンの厚さを、酸化および除去の作業からなる作業サイクルによって増やすこともでき、このことは後に詳しく述べる。
【0035】
第3の例によれば、酸化の作業が、マイクロ波(2.45GHz)によって活性化され、DCマグネトロン分極(100V)によって補助される、約100mTの酸素分圧でのプラズマ処理によって得られる酸化であってよい。この場合、形成される酸化物薄膜が、表面温度が約600℃に維持されるシリコン板の表面において、1時間の酸化継続時間において約400nmの厚さを有する。
【0036】
酸化の作業に直接続く酸化シリコンの薄膜の除去の作業を、例えば反応性イオンエッチング(RIE)による乾式法で実行することができ、あるいは例えば基板1の面1aを塩酸(HCl)およびフッ酸(HF)(おそらくは、バッファードフッ酸(BHF))を含む溶液に浸すことによる湿式法で実行することができる。除去の作業を、例えば水素雰囲気のもとでの熱処理の実行など、還元性媒質における処理によって実行することもできる。除去工程のこれらの例は、一様な除去工程になることが知られており、すなわちテクスチャにかかわらず一定の除去速度での表面の除去になることが知られている。
【0037】
さらに、好都合には、これら2つの連続する作業が、少なくとも1回の繰り返しが可能な作業サイクルを構成する。そのような繰り返しは、とくには形成される酸化シリコンの薄膜が約2nmの厚さを有する場合に好都合となりうる。酸化および酸化シリコンの薄膜の除去という2つの連続する作業の繰り返しは、本方法の最適化を可能にし、とくには時間の節約を可能にする。
【0038】
さらに、この実施の形態において、等方性エッチング処理の際に形成される酸化シリコンの合計の(または、累積の)厚さは、好都合には10nmよりも大きく、好ましくは20nmよりも大きい。酸化シリコンの合計の厚さとは、この実施の形態において、処理の際に連続的に形成される酸化シリコンの薄膜の厚さの合計と理解され、より正確には、除去作業による中断がないものと仮定して、種々の連続的な酸化の作業の全体によって形成される酸化シリコンの膜の厚さに相当する。
【0039】
動作のサイクルを繰り返す必要がない場合、処理の1回の熱によって活性化される乾式酸化の作業において形成される酸化シリコンの薄膜の厚さも、好都合なやり方において、10nmよりも大きく、好ましくは20nmよりも大きい。この場合にも、等方性エッチング処理において形成される酸化シリコンの合計の厚さを同様に述べることができる。
【0040】
動作の1つ以上のサイクルの実行は、テクスチャの光の閉じ込めをきわめて良好なレベルに維持しつつ、ピラミッドの側面を平滑化し、ピラミッドの頂点の形状だけでなく、ピラミッド間の領域の形状も変更することによるきわめて小さいシリコンのエッチングを含む。
【0041】
基板1の面1aの等方性エッチング処理が、例えば図6〜図8に示されている。図6の矢印Fが、基板1の面1aに酸化シリコン薄膜11を形成する、熱によって活性化された乾式酸化の作業を示しており、この作業により、ピラミッドの頂点「s」およびピラミッドの間の谷の領域「b」に丸みをつけることができる。ひとたび作業が完了すると、酸化シリコン薄膜11が取り除かれる(図7)。図8に示した拡大図A’が、ひとたび薄膜11が取り除かれた後の、そのようなピラミッドの頂点「s」およびピラミッドの間の谷の領域「b」の丸みづけならびに側面「f」の平滑化(図8の実線)を示している。
【0042】
次いで、図9に示されるように、等方性エッチングの作業に続き、
・図9において、パッシベーション層を形成している真正非晶質シリコンの薄い層2と、
・ドーピングの型が結晶シリコン基板のドーピングの型と反対である、非晶質シリコンの薄い層3と、
・電極4と、
・集電体5と
を連続的に含む多層積層体の前記表面への形成を行なうことができる。
【0043】
さらに、等方性エッチング処理の後かつ多層積層体の形成の前に、結晶シリコン基板1の前面1aに対して、少なくとも1つの洗浄の工程および乾燥の工程を加えることができる。すなわち、一例として、表面の新たな汚染を回避するために、基板1の面1aに、フッ酸および塩酸(HF/HCl)の低HF含有量の混合物による処理を加えることができる。洗浄処理を、フッ酸(HF)の蒸気によって実行し、その後に酸素による表面の汚染を防止するために、遊離酸素を含まない脱気水とHClとの混合物によるリンスプロセスを行なうことも可能である。この汚染は、表面の良好なパッシベーションにとって有害な自然酸化物の時期尚早な形成を伴うと考えられる。さらに、乾燥作業を、ピラミッドへの汚染の付着を防止するために続けることができる。乾燥作業は、例えば、気化したイソプロパノール(IPA)によって実行され、表面張力の弱い液体において実行され、あるいは脱気水などの溶液への浸漬と、その後の好ましくは加熱されたIPAの溶液への浸漬とによって行なわれる。次いで、好都合には、例えばプラズマエンハンスド化学気相成長法(PECVD)による多層積層体の形成を、得られる光起電セルの出力を減らすことなく、乾燥プロセスの後で最大30分間にわたって実行することができる。
【0044】
図1および図2に示した実施の形態と同様に、基板1の裏面1bを、好都合には少なくとも1つの薄い層によって覆うことができる。例えば、図1に示されているような電極6によって覆うことができ、あるいは図2に示されているような多層積層体によって覆うことができる。
【0045】
さらに、本発明は、とくに基板1ならびに非晶質シリコンの層3および8のドーピングの型に関して、上述した実施の形態に限られない。したがって、本発明は、n型にドープされた結晶シリコンからなる基板と、p型およびn型にそれぞれドープされた非晶質シリコンの層3および8とを備える実施の形態に限られない。光起電セルのヘテロ接合を形成するために、非晶質シリコンの層3は基板1のドーピングの型とは反対のドーピングの型を有し、基板1の裏面1bの側の非晶質シリコンの層8が、とくには基板1のドーピングの型と同一のドーピングの型を有する。さらに、薄い層3および8を、非晶質シリコンで製作する代わりに、微結晶シリコンで製作することも可能である。
【0046】
同じやり方で、上述の実施の形態は、基板1の前面1aの異方性エッチングおよび等方性エッチング処理を示している。しかしながら、これらのエッチングを、基板1の前面1aにではなく、裏面1bに使用することが可能であり、あるいは基板1の前面1aに加えて基板1の裏面1bに使用することさえ可能である。この場合、裏面1bの多層積層体の非晶質または微結晶シリコンの薄い層8は、結晶シリコン基板1のドーピングの型と同一のドーピングの型を有する。
【0047】
さらに、代案の実施の形態によれば、基板1とは異なる性質および/または結晶構造および/または形態を有する材料の層を形成する工程を、異方性エッチングの工程と等方性エッチング処理との間に実行することができる。そのような層を、非晶質シリコンまたは多結晶シリコンによって形成でき、あるいは酸化シリコンまたは高い誘電率(High−K)を有する酸化物(HfOまたはAlまたはZrOなど)によって形成することができる。例えば、適切な温度(例えば、100℃〜800℃)での化学気相成長(CVD)法による形成が可能である。
【0048】
したがって、一例として、図10〜図12においては、非晶質または多結晶シリコンによって形成された層12aが、異方性エッチングの工程と等方性エッチング処理との間において、基板1の前面1aに成膜されている。この場合、熱によって活性化される乾式酸化の作業により、前記層12が形成される基板の面1aと同時に、酸化シリコン薄膜11を形成すべく層12aのシリコンを酸化させることができる。
【0049】
図13〜図15においては、酸化シリコンによって形成された層12bが、基板1の前面1aにテクスチャが施された後で、前記前面1aへと成膜されている。この場合、熱によって活性化される乾式酸化の作業が、基板1と層12bとの間に酸化シリコン薄膜11を形成すべく、層12bを介して基板1の前面を酸化させることを可能にする。
【0050】
すべての場合において、図12および図15に示されるように、層12aまたは12bは、酸化シリコン薄膜11を除去する作業の際に取り除かれる。また、この層12aまたは12bは、充分に厚くなければならない(例えば、約100ナノメートル程度)。層12aまたは12bは、等方性エッチングによって処理される表面の表面品質の改善を支援するように意図されている。とくには、この層の成膜時に、ピラミッドの頂点「s」およびピラミッドの間の領域「b」に丸みが形成される。したがって、側面「f」の酸化を領域「b」の酸化から区別することができ、頂点「s」をピラミッドの側面「f」に対して区別することができ、これが側面「f」の平滑化ならびに領域「b」および頂点「s」の丸みづけを改善する。
【0051】
例として、最初に表面に対して垂直な方向を向いた結晶軸<100>を有する基板に、表面にピラミッドを有するようにテクスチャが施され、ピラミッドの頂点「s」およびピラミッドの間の谷「b」の各々が、典型的には30nmの平均曲率半径を有している。それは基板であってよい。約100nmの厚さを有するシリコンの層12aが、500〜620℃の温度の範囲において、LPCVDによって前記表面へと成膜される。このようにして成膜されるシリコンは、非晶質または多結晶である。さらに、必要に応じて、この層12aにドープすることができる。層12aの成膜後に、層12aによって形成される頂点「s」および谷「b」が丸みを帯びていることに、注意すべきである。この丸みが、ピラミッドの谷に一致した約200nmの曲率半径を得ることを可能にする。さらに、ユーザのニーズに応じた所望の曲率半径に従って層12aの厚さを調節することが可能である。次いで、この層が、例えば蒸気のもとでの950℃での酸化(「蒸気」モード)により、熱によって酸化させられ、厚さのすべてを消費する。酸化の際に、シリコンの層12aの表面の丸みの存在するために、ピラミッドの間の谷に一致した約200〜300nmの曲率半径を有するピラミッドの頂点および谷において、初期のシリコン基板の表面に丸みが生じる。酸化物の除去後に、この丸みを帯びた形態は維持される。
【0052】
別の代案の実施の形態によれば、図9の真正非晶質シリコンの薄い層2によって形成されるパッシベーション層を、少なくとも、等方性エッチングによって前もって処理された基板の表面へと直接成膜される結晶酸化シリコンの薄い層により形成することができる。そのような結晶酸化シリコンの薄い層は、例えば酸素ならびに/あるいはオゾンおよび/または水から得られる酸素化ラジカルによる基板(1)の表面のラジカル表面酸化によって好都合に得られ、除去されることがない。好都合にはそれは2nm以下の厚さを有し、非晶質酸化シリコンで覆うことが可能である。例として、基板1の表面部分の酸化を、酸素および160nm〜400nmの間の波長範囲の紫外線から実行することができる。使用される紫外線の波長は、例えば約185nmおよび約254nmである。この特定の実施の形態において、酸素が紫外線の作用のもとでフリーラジカルOおよびオゾンへと解離し、前記フリーラジカルが、シリコンの表面を酸化し、結晶酸化シリコンの薄い層を少なくとも形成する。
【0053】
さらに、他の代案の実施の形態においては、パッシベーション層を、結晶酸化シリコンの薄い層および真正非晶質シリコンの薄い層によって形成することができ、前記薄い層は、結晶酸化シリコンの薄い層と非晶質または微結晶シリコンの薄い層との間に成膜される。
【0054】
最後に、上述の実施の形態は、光起電ヘテロ接合セルに関係している。しかしながら、これらのさまざまな実施の形態において公表された等方性エッチング処理を、任意の種類の光起電セル、さらに詳しくは光起電ホモ接合セルを製造するために、事前に異方性エッチングの工程が加えられた結晶シリコン基板の表面に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の連続的なステップ、すなわち
結晶シリコン基板(1)の表面(1a、1b)に異方性エッチングを施すステップと、
前記表面(1a、1b)に等方性エッチング処理を施すステップであって、この処理は酸化シリコンの形成および前記酸化シリコンの除去を含むステップと、を含む、少なくとも1つの光起電セルを製造するための方法であって、
前記表面(1)に等方性エッチング処理を施すステップは、
熱によって活性化される乾式酸化によって、前記基板(1)の前記表面(1a、1b)に2nm〜500nmの間の範囲の厚さを有する酸化シリコン薄膜(11)を形成することと、
前記酸化シリコン薄膜(11)を除去することと、からそれぞれなる2つの連続的な作業を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記熱によって活性化される乾式酸化の作業は、
前記基板(1)の前記表面(1a、1b)に、室温よりも高い温度を加えることと、
気体状の酸化剤またはプラズマに含まれる酸化剤を使用することと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱によって活性化される乾式酸化の作業は、前記基板(1)の前記表面(1a、1b)に紫外線を当てることを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱によって活性化される乾式酸化の作業は、マイクロ波、高周波、または超高周波によって活性化されるプラズマ処理を含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記酸化シリコン薄膜(11)を除去する作業は、乾式法によって実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸化シリコン薄膜(11)を除去する作業は、湿式法によって実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化シリコン薄膜(11)を除去する作業は、還元性媒質における処理によって実行されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記2つの連続的な作業は、等方性エッチング処理の際に少なくとも1回繰り返される作業サイクルを構成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記等方性エッチング処理の際に形成される酸化シリコンの合計の厚さは、10nmよりも大きいことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記基板(1)の表面(1a、1b)は、等方性エッチングによって処理された後に、
パッシベーション層(2)と、
所定のドーピング型を有する非晶質または微結晶シリコンの薄い層(3、8)と、
電極(4)と、
集電体(5)と
を順に備える多層積層体で少なくとも部分的に覆われることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記非晶質または微結晶シリコンの薄い層(3)のドーピング型は、結晶シリコン基板(1)のドーピング型とは反対であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記非晶質または微結晶シリコンの薄い層(8)のドーピング型は、結晶シリコン基板(1)のドーピング型と同一であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記基板(1)とは異なる性質および/または結晶構造および/または形態を有する材料で形成される層(12a、12b)を成膜するステップを含み、
前記ステップは、表面(1a、1b)の異方性エッチングと等方性エッチング処理との間に実行され、
前記層は、酸化シリコン薄膜(11)を除去する作業の際に除去されることを特徴とする請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記パッシベーション層(2)は、真正非晶質シリコンの少なくとも1つの薄い層(2)によって形成されることを特徴とする請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
パッシベーション層(2)が、基板(1)の前記表面(1a、1b)に直接接触した結晶酸化シリコンの少なくとも1つの薄い層によって形成されることを特徴とする請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−518425(P2013−518425A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550487(P2012−550487)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/FR2011/000049
【国際公開番号】WO2011/092401
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】