説明

結晶化硝子製品の製造方法

【課題】下水汚泥溶融スラグや一般ごみ焼却灰スラグ及び石炭灰などのいわゆる廃棄物の有効利用。
【解決手段】粉末スラグ100重量部と石炭灰50〜150重量部に粘結材5〜20重量部から成る原料を成分割合でAl23>15重量%であるように調合、混合して、成形した後、この成形体を1100℃から1250℃で焼成して灰長石を主結晶とする結晶化硝子製品を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は下水汚泥溶融スラグや一般ごみ焼却灰スラグ及び石炭灰などのいわゆる廃棄物の有効利用に関するもので、更に具体的には、前述の廃棄物が持つ反応特性を利用して製造した縁石、タイルなどの建材、土木資材などの提供に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開平9−68468は石炭灰および溶炉溶融スラグの利用に関するもので、石炭灰および溶炉溶融スラグの低温軟化溶融性を利用して焼成温度を800〜1000℃としタイル、瓦などの窯業製品を省エネルギーで生産しているが、スラグ溶融物で石炭灰粒子間を充填しているにすぎないから、石炭灰とスラグ溶融物バインダーとの間の膨張係数の相違などから微細なクラックが発生しやすく、骨材のサイズのものは製造できても、例えば、大型タイルのような、比較的強度を必要とする窯業製品を製造することはできなかった。また、溶炉溶融スラグと下水汚泥溶融スラグや一般ごみ焼却灰スラグなどとのスラグ構成成分の相違もあって、この製造技術が、必ずしも、下水汚泥溶融スラグや一般ごみ焼却灰スラグなどにも適応できるものではなかった。
【特許文献1】特開平9−68468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、各地の下水処理場やごみ焼却場から発生する下水汚泥やごみはそのまま埋立投棄すると衛生上あるいは悪臭公害上問題があるので、大部分は焼却処分され、焼却灰として埋立投棄されていたが、埋立用地確保が難しくなってきているうえに、焼却灰からの重金属の溶出など、その埋立処分に伴う二次公害が大きな社会問題となった。その後、これら焼却灰は減容化と安定化のためにさらに溶融スラグ化されているが、それをそのままコンクリート用骨材とするには、その強度と、モルタル付着性に難点があり、結局、その多くは埋め立て処分に回されている現状があり、何れにしても、溶融スラグが有効利用されているとは言い難い現状がある。
【0004】
一方、石炭灰は火力発電所の微粉炭燃焼に伴い発生する副産物であるが、セメント混和材やセメント原料の粘土成分代替材料などが主な使用途で、その他の大量に消費できる有効な利用途は未だ見出せていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
下水汚泥溶融スラグや一般焼却灰スラグを主とする廃棄物スラグを粉砕し、粘土中に石炭灰等と共に混ぜ込み、成形、焼成して、いわゆる焼き物をつくることは容易に着想されるところである。しかしながら、この焼き物を強度の観点から見ると、焼成温度1100℃では焼結による結合は弱く、1200℃以上では焼却灰スラグや汚泥溶融スラグ自体が溶融軟化して、焼き物としての形状を保持できなくなるなどの現象が生じ、いずれにしてもその焼成物の強度は弱く、一定の強度が必要な床タイルなどには利用することはできなかった。
【0006】
しかしながら、これら下水汚泥スラグやごみ焼却灰溶融スラグ及び石炭灰などはいわゆるガラス体であって、通常の熱処理ではそれ自体単独では結晶化しないが、窯業原料としては反応性に富み、所定の組成範囲で混合されるときには、相互に比較的低温で反応して、結晶化硝子になることが分かっている。低温で原料相互の反応性を促進するためには原料が細粒化されていることも必要で、粒径は2mm以下、望ましくは0.5mm以下である。
【0007】
使用した下水汚泥溶融スラグ、ごみ焼却灰溶融スラグ及び石炭灰の成分割合(重量%)は表1のとおりである。
【0008】
【表1】

【0009】
本発明者は粉砕した上記スラグと石炭灰を所定の割合に混合し、粘結材を用いて成形したものを、加熱、熱処理すれば、ガラス材料から成る原料は相互に反応し、結晶化して磁器製品ができることを見いだした。
【0010】
下水汚泥溶融スラグ、一般ごみ焼却灰溶融スラグ及び石炭灰と本結晶化硝子製品の各々のX線回折結果によれば、下水汚泥溶融スラグ、一般ごみ焼却灰溶融スラグ及び石炭灰には結晶を示す明らかなピークがなく、本結晶化硝子製品には灰長石のピークが見られた。
【0011】
概して言えば、陶磁器用粘土の場合、焼成温度が高いほど、焼結、結晶化は進みその強度は高くなる。しかしながら、スラグ単独の場合、そのままでは1100℃程度の温度になると再び軟化溶融して成形体は形状保持ができなくなる。スラグに適当量の石炭灰を加えると、その添加量に応じて灰長石を析出して、より耐火性と強度のある結晶化硝子製品若しくは結晶化ガラスをバインダーとする焼結体ができる。
【0012】
本発明の結晶化硝子の製造方法は、成形体を乾式成形法で造るので、含水率が高い粘土成形品と比較すると、焼成時の自己収縮が少なく、而も、焼成品は灰長石を主結晶とする結晶化硝子なので膨張係数が低く、形状的ひずみが少なくなると同時に、冷却時の熱ひずみも少ないので亀裂が生じ難く、従って、大型の焼き物に適している。
【0013】
廃棄物スラグも石炭灰も鉄分の含有率が高いが、それが焼き物の着色に寄与して黄土色に近い、自然景観を害さない風味を与える着色剤となっている。
【0014】
表2にスラグ100重量部に対して石炭灰の量を変えた場合の強度と析出した主結晶を示す。
【0015】
【表2】

【0016】
粘結材としては無機系粘結材にベントナイト、カオリン、有機系粘結材にカルボキシメチルセルロース、デンプン、リグニン、ポリビニールアルコールなどがあげられる。
【0017】
以下に原料割合の限定の理由を示す。
【0018】
粉末スラグ100部(重量割合)に対して石炭灰が50〜150重量部に限定される理由は、50部に満たないと石炭灰を加える効果が少なく、結晶化率が低くなる。150重量部を越えると強度ある結晶化硝子製品が得られない。
【0019】
粉末スラグ100部(重量割合)に対して粘結材が5〜20重量部に限定される理由は、5部に満たないと造粒が難しく、20部を越えると結晶化硝子製品の強度を低下させる恐れがある。
【0020】
Al23成分含有率が15重量%以上に限定される理由は、Al23成分が15重量%以上でないと、灰長石としての結晶化率が低くなり結晶化硝子製品の軟化変形が大きい。
【0021】
原料として本結晶化硝子製品の破砕粉末を30重量部以下で添加することは結晶化を促進する上で望ましいが、30重量部を越えた添加は製品の強度を低下させる。
【0022】
次に実際の製造工程を例に本発明の製造方法を記述する。
【0023】
下水汚泥スラグを粉砕し、ボールミルで更に粉末にした。この粉末スラグ100重量部と石炭灰75重量部に粘結剤としてベントナイトとメチルセルローズ10重量部を添加し、水20重量部を加えて混練する。この調合粉体を加圧式成形機にかけて、300X300x25mmの板状成形体を得る。この板状成形体を耐火性の棚板上に積載し、電気炉で1180℃の温度に2時間保持して、板状成形体を軟化融着結晶化させて約300X300x25mmの板を造った。この斑状の模様をもつ板の曲げ強度は25MPaであった。
【発明の効果】
【0024】
本発明の効果は、埋め立て地に処分されるしかなかった廃棄物スラグの有効利用を図る一方で、石炭灰も含め、原料を極めて安価なものに限った、建築、土木資材、具体的には大型の磁器製タイル、縁石などが比較的容易に生産できる。この陶磁器製の建築、土木資材はきわめて自然景観に適合したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
下水汚泥スラグを粉砕し、ボールミルで更に粉末にした。この粉末スラグ100重量部と石炭灰100重量部に水酸化アルミニューム10重量部を加え粘結剤としてベントナイトとメチルセルローズ10重量部を添加し、水20重量部を加えて混練する。この調合粉体を加圧式成形機にかけて、300X25x50mmの階段状成形体を得る。この階段状成形体を耐火性の棚板上に積載し、電気炉で1200℃の温度で2時間保持して、成形体を軟化融着結晶化させて約300X25x50mmの階段状陶磁器製品を得る。この階段状陶磁器製品は道路用縁石として用いられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末スラグ100重量部と石炭灰50〜150重量部に粘結材5〜20重量部から成る原料を成分割合でAl23>15重量%であるように調合、混合して、成形した後、この成形体を1100℃から1250℃で焼成して灰長石を主結晶とする結晶化硝子製品を製造する方法。
【請求項2】
請求項1の製造方法の調合、混合において、原料として本結晶化硝子製品の破砕粉末を30重量部以下で添加することを特徴とした結晶化硝子製品の製造方法。

【公開番号】特開2008−266048(P2008−266048A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108468(P2007−108468)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(306008229)
【Fターム(参考)】