説明

結晶性trans−桂皮酸ジエステルとアモルファスイソソルビドオリゴマーとを含有する転相インク

【課題】溶融した液体状態から固体状態に鋭敏かつ迅速に相転移を示し、紙基材への接着性に優れ、良好な耐引っかき性、インク堅牢性、「紙の折りたたみ」性能を示し、画像の亀裂および折り目を減らし、書類への裏移り性能、着色剤との相溶性が良好で、生分解性の要素を含有する転相インクを提供する。
【解決手段】(a)結晶性trans−桂皮酸ジエステルと、(b)イソソルビドおよび二酸のアモルファスオリゴマーとを含む転相インク。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性trans−桂皮酸ジエステルとアモルファスイソソルビドオリゴマーとを含有する転相インクに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の転相インクは、一般的に、結晶性ワックスや、溶融した液体状態から固体状態に鋭敏かつ迅速に相転移可能な他の材料のような要素を含有する。しかし、多くの既知の転相インクは、コーティングされた紙基材への接着性が悪いという欠点があり、そのため、耐引っかき性が悪く、画像の堅牢性が悪く、硬く脆い性質をもち、書類を折りたたむときに「紙の折りたたみ」性能が悪い(例えば、画像に亀裂および折り目が生じる)、書類の裏移りが起こる。さらに、これらのインク要素は非極性であるため、一般的に市販されている染料および顔料との相溶性に問題があることが多く、インク担持剤への溶解性または分散性を良好にし、着色剤の分解または着色剤の移動を防ぐ長期間熱安定性が良好な、高価で特注の着色剤が必要である。さらに、多くの既知の転相インクから作られた印刷物には、ペンで書くことができない。
【0003】
また、顧客は、生物由来であるか、または少なくとも部分的に再生可能な資源に由来する材料の需要を生み出している。エネルギー政策および環境政策、揮発性油の価格上昇、地球の化石資源がみるみる枯渇していることに対する公共/政治的な意識から、生物材料から誘導される持続可能な材料を発見する必要性がでてきた。生物系の再生可能な原料を用いることによって、製造業者は、カーボンフットプリントを減らし、ゼロカーボンまたはカーボンニュートラルフットプリントに移行することができる。生物由来ポリマーは、特定のエネルギーおよび排出量の節約という観点でも非常に魅力的である。生物由来の原料を用いることによって、埋め立てにまわるプラスチックの量を減らし、国内農業の新しい収入源を与え、不安定な領域から輸入される石油に頼ることに関連する経済的な危険および不確実性を減らすことができる。
【0004】
したがって、この目的に既知の材料およびプロセスが適しているものの、改良された転相インクが必要である。それに加え、溶融した液体状態から固体状態に鋭敏かつ迅速に相転移を示す転相インクが必要である。さらに、コーティングされた紙基材への接着性が良好な転相インクが必要である。さらに、良好な耐引っかき性を示す転相インクが必要である。また、良好なインク堅牢性を示す転相インクが必要である。それに加え、書類が折りたたまれたときに良好な「紙の折りたたみ」性能を示し、画像の亀裂および折り目を減らす転相インクが必要である。さらに、書類への裏移り性能が良好な転相インクが必要である。さらに、市販の着色剤との相溶性が良好な転相インクが必要である。それに加え、生物由来または再生可能な資源に少なくとも部分的に由来する少なくともある種の材料を含有する転相インクも依然として必要である。さらに、望ましくは低コストで調製することが可能な転相インクも依然として必要である。さらに、ペンで書くことができる印刷物を生成する転相インクも依然として必要である。また、ある程度生分解性の要素を含有する転相インクも必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書には、(a)結晶性trans−桂皮酸ジエステルと、(b)イソソルビドおよび二酸のアモルファスオリゴマーとを含む転相インクが開示される。また、本明細書には、(1)(a)インク担持体の約65〜約95重量%の量の結晶性trans−桂皮酸ジエステル、(b)インク担持体の約5〜約35重量%の量のイソソルビドおよび二酸のアモルファスオリゴマーを含むインク担持体と、(2)着色剤とを含む転相インクも開示される。さらに、本明細書には、(1)(a)以下の式の結晶性trans−桂皮酸ジエステル
【化1】

(式中、Rは、(i)アルキレン基(置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよい);(ii)アリーレン基(置換および非置換のアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アリーレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよい);(iii)アリールアルキレン基(置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アリールアルキレン基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよい);または(iv)アルキルアリーレン基(置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキルアリーレン基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよい)であり、ここで、2個以上の置換基が接続して環を形成していてもよい);および(b)以下の式を有する、イソソルビドおよび二酸のアモルファスオリゴマー
【化2】

(式中、R’は、(i)アルキレン基(置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよい)、(ii)アリーレン基(置換および非置換のアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アリーレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよい);(iii)アリールアルキレン基(置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アリールアルキレン基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよい);または、(iv)アルキルアリーレン基(置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキルアリーレン基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよい)であり、2個以上の置換基が結合して環を形成していてもよく、nは、約2〜約10である)を含むインク担持体と、(2)着色剤とを含む転相インクが開示される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書に開示するインクは、trans−桂皮酸から誘導される結晶性ジエステルを含有する。trans−桂皮酸は、桂皮油、またはバルサム(例えば、エゴノキまたはシアバター)中に見いだされる天然材料である。trans−桂皮酸は、フェニルアラニンアンモニア−リアーゼ酵素を用い、天然アミノ酸フェニルアラニンから誘導されてもよい。式HO−R−OHのさまざまなジオールをtrans−桂皮酸と反応させ、ジエステルを得てもよい。
【0007】
適切なtrans−桂皮酸ジエステルの例としては、(限定されないが)以下の式を有するもの
【化3】

が挙げられ、式中、Rは、(1)アルキレン基(直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよく、一実施形態では、少なくとも約2個の炭素原子を含み、別の実施形態では、少なくとも約3個の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、少なくとも約4個の炭素原子を含み、一実施形態では、約20個以下の炭素原子を含み、別の実施形態では、約10個以下の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、約8個以下の炭素原子を含むが、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよい)、(2)アリーレン基(置換および非置換のアリーレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリーレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよく、一実施形態では、少なくとも約6個の炭素原子を含み、別の実施形態では、少なくとも約7個の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、少なくとも約8個の炭素原子を含み、一実施形態では、約20個以下の炭素原子を含み、別の実施形態では、約18個以下の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、約16個以下の炭素原子を含むが、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよい)、例えば、フェニレンなど、(3)アリールアルキレン基(置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリールアルキレン基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、一実施形態では、少なくとも約7個の炭素原子を含み、別の実施形態では、少なくとも約8個の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では少なくとも約9個の炭素原子を含み、一実施形態では、約20個以下の炭素原子を含み、別の実施形態では、約18個以下の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では約16個以下の炭素原子を含むが、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよい)、例えば、ベンジレンなど、または、(4)アルキルアリーレン基(置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分が、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アルキルアリーレン基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、一実施形態では、少なくとも約7個の炭素原子を含み、別の実施形態では、少なくとも約8個の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、少なくとも約9個の炭素原子を含み、一実施形態では、約20個以下の炭素原子を含み、別の実施形態では、約18個以下の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、約16個以下の炭素原子を含むが、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよい)、例えば、トリレンなどであり、ここで、置換アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基、アルキルアリーレン基の置換基の上の置換基は、(限定されないが)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アンモニウム基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。
【0008】
適切なtrans−桂皮酸から誘導されるジエステルの特定の例としては、(限定されないが)以下の式のプロパン−1,3−trans−シンナメート

【化4】

など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0009】
ある特定の実施形態では、ジオールは、生物由来または再生可能な資源から誘導されるように選択される。生成物が石油由来であるか、再生可能な資源由来であるかを14C放射性炭素年代測定法によって調べることができる。石油由来の生成物は、再生可能な資源に由来する生成物では非常に最近または現在の放射性炭素値を有するのに対し、数百万年のかなり大きな14C放射性炭素年代測定値を有するだろう。適切な生物由来のジオールの例としては、限定されないが、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールなどが挙げられ、これらは、糖類から得ることができる。この様式で、trans−桂皮酸ジエステル材料全体を生物由来であるように、または「環境に優しい」ように選択することができる。
【0010】
trans−桂皮酸ジエステルは、インク担持体中、任意の望ましい量または有効な量で存在し、一実施形態では、少なくとも65重量%、別の実施形態では、少なくとも約70重量%、さらに別の実施形態では、少なくとも約75重量%、一実施形態では、約95重量%以下、別の実施形態では、約90重量%以下、さらに別の実施形態では、約85重量%以下の量で存在するが、この量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0011】
本明細書に開示するインクは、イソソルビドおよび二酸のアモルファスオリゴマーも含有している。トウモロコシや小麦のような植物の糖およびデンプンから誘導される天然材料である以下の式を有するイソソルビド
【化5】

を、式HOOC−R’−COOHの二酸と反応させ、本明細書に開示するインクに入れるのに適した以下の式のオリゴマー
【化6】

を生成し、式中、nは、一実施形態では、少なくとも約2、別の実施形態では、少なくとも約3、一実施形態では、約10以下、別の実施形態では、約8の整数であるが、nの値は、これらの範囲からはずれていてもよく、R’は、(1)アルキレン基(直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和、環状、置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)がアルキレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよく、一実施形態では、少なくとも約2個の炭素原子を含み、一実施形態では、約10個以下の炭素原子を含むが、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよい)、(2)アリーレン基(置換および非置換のアリーレン基を含み、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)がアリーレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよく、一実施形態では、少なくとも約6個の炭素原子を含み、別の実施形態では、少なくとも約7個の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、少なくとも約8個の炭素原子を含み、一実施形態では、約20個以下の炭素原子を含み、別の実施形態では、約18個以下の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、約16個以下の炭素原子を含むが、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよい)、例えば、フェニレンなど、(3)アリールアルキレン基(置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、アリールアルキレン基のアルキル部分は、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)が、アリールアルキレン基のアルキル部分およびアリール部分のうち、片方または両方に存在していてもよく、存在していなくてもよく、一実施形態では、少なくとも約7個の炭素原子を含み、一実施形態では、約20個以下の炭素原子を含み、別の実施形態では、約18個以下の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、約16個以下の炭素原子を含むが、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよい)、例えば、ベンジレンなど、または(4)アルキルアリーレン基(置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、アルキルアリーレン基のアルキル部分は、直鎖、分枝鎖、飽和、不飽和および/または環状であってもよく、ヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素など)は、アルキルアリーレン基のアルキル部分およびアリール部分のうち、片方または両方に存在していてもよく、存在していなくてもよく、一実施形態では、少なくとも約7個の炭素原子を含み、一実施形態では、約20個以下の炭素原子を含み、別の実施形態では、約18個以下の炭素原子を含み、さらに別の実施形態では、約16個以下の炭素原子を含むが、炭素原子の数は、これらの範囲からはずれていてもよい)、例えば、トリレンなどであり、置換アルキレン基、アリーレン基、アリールアルキレン基およびアルキルアリーレン基の置換基上の置換基は、(限定されないが)ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アミン基、イミン基、アンモニウム基、シアノ基、ピリジン基、ピリジニウム基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、エステル基、アミド基、カルボニル基、チオカルボニル基、サルフェート基、スルホネート基、スルホン酸基、スルフィド基、スルホキシド基、ホスフィン基、ホスホニウム基、ホスフェート基、ニトリル基、メルカプト基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホン基、アシル基、酸無水物基、アジド基、シアネート基、イソシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、カルボキシレート基、カルボン酸基、ウレタン基、尿素基、これらの混合物などであってもよく、2個以上の置換基が結合して環を形成していてもよい。
【0012】
適切なイソソルビドオリゴマーの特定の例としては、イタコン酸を含むもの(ここで、R’は、
【化7】

である)、コハク酸を含むもの(R’は、−CHCH−である)、酒石酸を含むもの(R’は、
【化8】

である)など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0013】
ある特定の実施形態では、二酸は、生物由来または再生可能な資源から誘導されるように選択される。適切な生物由来の二酸の例としては、限定されないが、コハク酸、イタコン酸、アゼライン酸などが挙げられ、これらは農業資源および森林資源から誘導される。この様式で、イソソルビドオリゴマー材料全体が生物由来であるか、または「環境に優しい」ように選択することができる。
【0014】
イソソルビドのオリゴマーは、インク担持体中に任意の望ましい量または有効な量で存在し、一実施形態では、少なくとも約5重量%、別の実施形態では、少なくとも約10重量%、さらに別の実施形態では、少なくとも約15重量%、一実施形態では、約35重量%以下、別の実施形態では、約30重量%以下、さらに別の実施形態では、約28重量%以下の量で存在するが、この量はこれらの範囲からはずれていてもよい。
【0015】
さらなる任意要素(例えば、粘度調整剤)がインク担持体に含まれていてもよく、例えば、ソルビタントリステアレートエステル、例えば、Crodaから入手可能なSPAN 65が、インク担持体中に、一実施形態では、少なくとも約0.5重量%、別の実施形態では、少なくとも約1重量%、さらに別の実施形態では、少なくとも約1.5重量%、一実施形態では、約15重量%以下、別の実施形態では、約10重量%以下、さらに別の実施形態では、約8重量%以下の量で含まれていてもよいが、この量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0016】
インク担持体は、転相インク中、任意の望ましい量または有効な量で存在し、一実施形態では、インクの少なくとも約0.1重量%、別の実施形態では、少なくとも約50重量%、さらに別の実施形態では、少なくとも約90重量%、一実施形態では、約99重量%以下、別の実施形態では、約98重量%以下、さらに別の実施形態では、約95重量%以下の量で存在するが、この量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0017】
インク担持剤内容物の供給源を注意深く選択することによって、インク担持剤は、生物由来の再生可能な内容物(BRC)の量を多くすることができる。イソソルビドは、100%BRCであり、これと反応してオリゴマーを生成することができる多くの酸(例えば、コハク酸、イタコン酸、アゼライン酸)は、100%BRCである。trans−桂皮酸は、BRC源を特定することができるのであれば、100%BRCになる可能性がある材料である。現在、trans−桂皮酸は、合成プロセスによって製造される。天然アミノ酸フェニルアラニンからこの物質を製造する試みがある。このプロセスがうまくいけば、生物的に再生可能なtrans−桂皮酸の供給源となるだろう。この物質とエステルを形成する多くのジオール(例えば、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール)は、糖類から得られ、したがって、100%BRCであり、したがって、これらの材料は、100%BRCである。したがって、一実施形態では、インク担持体(着色剤や、酸化防止剤などのような他の少量添加剤以外のインク部分と定義される)は、BRCが少なくとも約10%、別の実施形態では、少なくとも約20%、さらに別の実施形態では、少なくとも約30%であるが、この量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0018】
それに加え、結晶性trans−桂皮酸ジエステルも、イソソルビドのアモルファスオリゴマーも、両方ともエステルであり、これらは、容易に生分解可能であることが知られている物質群であり、本明細書に開示するインクの「環境に優しい」性質をさらに高める。
【0019】
インク組成物は、着色剤も含有している。着色剤としては、染料、顔料、これらの混合物などが挙げられる。
【0020】
減法三原色以外の他のインクの色は、転相印刷を用いる郵便消印、工業用マーキング、ラベリングのような用途に望ましい場合があり、このインクを、これらの需要に応用することができる。さらに、赤外線(IR)または紫外線(UV)を吸収する染料を、製品の「目に見えない」コード化またはマーキングのような用途で使用するためにインクに組み込むこともできる。このような赤外線または紫外線を吸収する染料は、例えば、米国特許第5,378,574号、米国特許第5,146,087号、米国特許第5,145,518号、米国特許第5,543,177号、米国特許第5,225,900号、米国特許第5,301,044号、米国特許第5,286,286号、米国特許第5,275,647号、米国特許第5,208,630号、米国特許第5,202,265号、米国特許第5,271,764号、米国特許第5,256,193号、米国特許第5,385,803号、米国特許第5,554,480号に開示されている。
【0021】
着色剤は、望ましい色または色相を得るのに望ましい任意の量または有効な量で存在し、一実施形態では、インクの少なくとも約0.1重量%、別の実施形態では、少なくとも約0.2重量%、一実施形態では、約15重量%以下、別の実施形態では、約8重量%以下の量で存在するが、この量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0022】
インクは、場合により、酸化防止剤も含有していてもよい。インク組成物の任意要素の酸化防止剤は、画像が酸化するのを防ぎ、さらに、インク調製プロセスの加熱部分の間にインク要素が酸化するのを防ぐ。適切な酸化防止剤の特定の例としては、NAUGUARD(登録商標)524、NAUGUARD(登録商標)445、NAUGUARD(登録商標)76、NAUGUARD(登録商標)512(Uniroyal Chemical Company(オックスフォード、CT)から市販)、IRGANOX(登録商標)1010(BASFから市販)などが挙げられる。任意要素の酸化防止剤が存在する場合、この酸化防止剤は、インク中に任意の望ましい量または有効な量で存在し、一実施形態では、インクの少なくとも約0.01重量%、別の実施形態では、少なくとも約0.05重量%、さらに別の実施形態では、少なくとも約0.1重量%、さらになお別の実施形態では、少なくとも約1重量%、一実施形態では、約20重量%以下、別の実施形態では、約5重量%以下、さらに別の実施形態では、約3重量%以下の量で存在するが、この量は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0023】
インク組成物を、任意の望ましい方法または適切な方法によって調製することができる。例えば、インク成分を混合した後、一実施形態では、少なくとも約100℃、一実施形態では、約140℃以下の温度まで加熱し(この温度は、これらの範囲からはずれていてもよい)、均質なインク組成物が得られるまで撹拌し、次いで、インクを周囲温度(典型的には、約20〜約25℃)まで冷却してもよい。インクは、周囲温度で固体である。特定の実施形態では、作成プロセス中、溶融状態のインクを型に注ぎ、次いで、冷却して固化させ、インクスティックを作成する。
【0024】
インク組成物は、一実施形態では、ピーク融点が約65℃以上、別の実施形態では、約66℃以上、さらに別の実施形態では、約67℃以上であり、融点が、一実施形態では、約150℃以下、別の実施形態では、約140℃以下、さらに別の実施形態では、約130℃以下の温度であるが、ピーク融点は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0025】
インク組成物は、一実施形態では、ピーク結晶化温度が約65℃以上、別の実施形態では、約66℃以上、さらに別の実施形態では、約67℃以上であり、ピーク結晶化温度が、一実施形態では、約150℃以下、別の実施形態では、約140℃以下、さらに別の実施形態では、約130℃以下であるが、ピーク結晶化温度は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0026】
融点および結晶化温度は、Q1000 Differential Scanning Calorimeter(TA Instruments)を用い、−50℃から200℃、次いで−50℃までを10℃/分の速度で、中点値を用いて測定することができる。
【0027】
インク組成物は、一般的に、吐出温度(一実施形態では、約75℃以上、別の実施形態では、約85℃以上、さらに別の実施形態では、約95℃以上、一実施形態では、約150℃以下、別の実施形態では、約140℃以下であるが、吐出温度は、これらの範囲からはずれていてもよい)での溶融粘度が、一実施形態では、約30センチポイズ以下、別の実施形態では、約20センチポイズ以下、さらに別の実施形態では、約15センチポイズ以下、一実施形態では、約2センチポイズ以上、別の実施形態では、約5センチポイズ以上、さらに別の実施形態では、約7センチポイズ以上であるが、溶融粘度は、これらの範囲からはずれていてもよい。別の特定の実施形態では、約120、130および/または140℃でのインクの粘度は、約7〜約15センチポイズである。
【0028】
本明細書に開示するインクは、PTC(登録商標)Durometer Model PS 6400−0−29001(Pacific Transducer Corp.(ロサンゼルス)から入手可能)に、標準負荷1kgを加えたModel 476 Standを取り付けて約25℃で測定した硬度値が、一実施形態では、少なくとも約65、別の実施形態では、少なくとも約68、さらに別の実施形態では、少なくとも約70であるが、この値は、これらの範囲からはずれていてもよい。
【0029】
特定の実施形態では、固体インク組成物を、直接印刷するインクジェットプロセスのための装置で使用することができ、この場合、溶融したインクの液滴を記録基材の上に画像の模様になるように吐出し、この場合の記録基材は、例えば、ダイレクト・トゥ−・ペーパー用途の最終的な記録基材であるが、基材は紙に限定されない。基材は、任意の適切な材料、例えば、紙、厚紙、布地、透明物、プラスチック、ガラス、木材などであってもよい。直接印刷プロセスは、例えば、米国特許第5,195,430号にも開示されている。
【0030】
または、このインクを間接的な(オフセット)印刷インクジェット用途で使用することができ、溶融インクの液滴を、記録基材の上に画像の模様になるように吐出し、この場合の記録基材は、中間転写体であり、次いで、画像の模様になったインクを、中間転写体から最終的な記録基材に転写する。オフセット印刷プロセスまたは間接印刷プロセスは、例えば、米国特許第5,389,958号に開示されている。
【0031】
任意の適切な基材または記録シートを用いてもよく、普通紙(例えば、XEROX(登録商標)4200紙、XEROX(登録商標)Image Series紙、Courtland 4024 DP紙、罫線入りノートの紙、ボンド紙、シリカでコーティングされた紙(例えば、Sharp Company製シリカでコーティングされた紙、JuJo紙、HAMMERMILL LASERPRINT(登録商標)紙、Xerox Digital Color Elite Gloss(DCEG)、Xerox DURAPAPERなど)、透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマーフィルム、無機基材、例えば、金属および木材などが挙げられる。
【0032】
他の意味であると示されない限り、すべての部およびパーセントは重量基準である。以下の実施例において、融点は、温度を上げつつ測定し、結晶化温度は、温度を下げつつ測定し、その中点値を報告した。DSCによって測定した温度は、TA instruments製のQ1000 DSCを用い、−20℃から150℃、次いで−20℃まで10℃/分の速度で測定したものであった。レオロジーによって測定した温度は、RFS3歪み制御型Rheometer(TA Instruments)にPeltier加熱板を取り付け、25mm平行板を用いて測定した。使用した方法は、高温から低温まで温度を5℃刻みで下げ、それぞれの温度間のソーク(平衡)時間120秒、1Hzの一定頻度で測定する温度スイープ法であった。分子量は、Waters 2690 Separation Moduleを用いたゲル透過クロマトグラフィーによって測定した。
【0033】
(実施例I)
(ブタン−1,4−trans−シンナメートの合成)
【化9】

【0034】
3ッ口500mL丸底フラスコにdean starkトラップと凝縮器、熱電対、アルゴン注入口を取り付け、これにtrans−桂皮酸(100g、674mmol、Sigma−Aldrichから得た)、1,4−ブタンジオール(30.4g、337mmol、Sigma−Aldrichから得た)、FASCAT 4201ジブチルスズオキシド触媒(0.12g、0.1wt%、Arkema Inc.から得た)を入れた。アルゴン下、この混合物を120℃までゆっくりと加熱し、この間にtrans−桂皮酸が溶融した。次いで、温度を180℃まで上げ、150℃付近で縮合が始まった。反応混合物を180℃で一晩(約20時間)撹拌した。その後、約20分間、減圧状態(1〜2mm−Hg)にした。dean starkトラップに合計で5.3mLの水が集まった。アルゴン下、反応混合物を約100℃まで冷却し、アルミニウムトレーに取り出し、室温まで冷却し、生成物110gをオフホワイト色固体として得た。生成物を500mLのエレンマイヤーフラスコに移し、これに、約125mLのイソプロピルアルコールを加え、約85℃まで加熱し、この間に生成物が溶解した。次いで、このフラスコを室温まで冷却し、この間に生成物が晶出し、これを濾過し、減圧乾燥器中、60℃で一晩乾燥させ、生成物90gをオフホワイト色固体として得た(収率79%)。生成物は、NMRから純粋であることが示された。Tmelt(DSC)=93℃;Tcryst(DSC)=72℃;Tcryst(レオロジー)=87℃。
【0035】
(実施例II)
(プロパン−1,3−trans−シンナメートの合成)
【化10】

【0036】
1,4−ブタンジオールの代わりに1,3−プロパンジオールを用いたこと以外は、実施例Iのプロセスを繰り返した。Tmelt(DSC)=89.9℃;Tcryst(DSC)=72℃(5℃/分でDSCを用いて測定)。
【0037】
(実施例III)
(イソソルビド/コハク酸オリゴマーの合成)
【化11】

【0038】
1ッ口500mL丸底フラスコにdean starkトラップと凝縮器を取り付け、これにイソソルビド(27.61g、189mmol、Archer Daniels Midland(IL)から得た)、コハク酸(10.63g、90mmol、Sigma−Aldrichから得た)、p−トルエンスルホン酸(0.17g、0.90mmol、Sigma−Aldrichから得た)、トルエン(200mL)を入れた。反応混合物を加熱し(設定温度125℃)、この間に、トルエンが環流し始めた。混合物を一晩(約22時間)環流させ、この間に、dean starkトラップに水約3mLが集まった。反応混合物を室温まで冷却し、生成物が褐色がかった残渣としてフラスコ底部に沈殿した。トルエンをデカンテーションし、その後、生成物をジクロロメタン(300mL)に溶解し、飽和NaHCOで洗浄し(200mL×2回)、次いで、水で洗浄した(200mL×1回)。この溶液をMgSOで乾燥させ、ロータリーエバポレーターによって溶媒を除去し、減圧ポンプで一晩乾燥させ、オフホワイト色のふわふわした固体を得た。この生成物を減圧乾燥器(約200mm−Hg、120℃)でさらに一晩乾燥させた。生成物を室温まで冷却し、ガラス状物質を得た(15g)。Tg(DSC)=35℃;130℃での粘度=516cp;65℃での粘度=1.3×10cp。Mn(GPC)=1045;Mw(GPC)=1204;多分散性(Pd)(GPC)=1.15。
【0039】
(実施例IV)
(イソソルビド/コハク酸オリゴマーの合成)
【化12】

【0040】
1LのParr反応器に二重タービンアジテーターと蒸留装置を取り付け、これに483.3gのイソソルビド、186.2gのコハク酸、2.0gのVERTEC AC422触媒(Johnson Matthey(TX)から得た有機チタネート)を入れた。内容物を3時間かけて180℃まで加熱し、さらに4時間撹拌し、次いで、温度を195℃まで上げ、反応混合物を一晩撹拌し、この間に、35gの水が集まった。次いで、圧力を約1時間で200mm−Hgまで下げ、その後、温度を200℃まで上げ、圧力を1時間で約1〜2mm−Hgまで下げた。窒素下、混合物を200℃で約2時間撹拌し、さらに1時間、減圧状態(1〜2mm−Hg)にして、その後、混合物を窒素下で冷却し、120℃でアルミニウム皿に取り出した。反応中、合計55gの水が集まった。NMRから、イソソルビドが残存していることが示された。次いで、1Lのエレンマイヤーフラスコにこの生成物を約150g入れ、ジクロロメタン(約300mL)に溶解し、飽和NaHCOで洗浄し(200mL×2回)、次いで、水で洗浄した(200mL×1回)。この溶液をMgSOで乾燥し、ロータリーエバポレーターによって溶媒を除去し、減圧ポンプで一晩乾燥させ、オフホワイト色のふわふわした固体を得た。さらに、この生成物を減圧乾燥器(約200mm−Hg、120℃)で一晩乾燥させた。生成物を室温まで冷却し、ガラス状物質を得た(70g)。Tg(DSC)=33℃;130℃での粘度=439cp;65℃での粘度=1.7×10cp。Mn(GPC)=1078;Mw(GPC)=1276;Pd(GPC)=1.18。
【0041】
(実施例V)
(イソソルビド/イタコン酸オリゴマーの合成)
【化13】

【0042】
3ッ口250mL丸底フラスコにdean starkトラップと凝縮器を取り付け、これにイソソルビド(40.0g、273.9mmol、Archer Daniels(ミッドランド、IL)から得た)、イタコン酸(32.39g、248.9mmol、Sigma−Aldrichから得た)、FASCAT 4201ジブチルスズオキシド触媒(0.07g、0.1wt%、Arkema Inc.から得た)を入れた。アルゴン下、混合物を120℃までゆっくりと加熱し、この間に、試薬が溶融した。次いで、温度を180℃まで上げ、150℃付近で縮合が始まった。反応混合物を180℃で一晩(約20時間)撹拌した。その後、約30分間、減圧状態(1〜2mm−Hg)にした。dean starkトラップに合計で3.0mLの水が集まった。アルゴン下、反応混合物を約100℃まで冷却し、アルミニウムトレーに取り出し、室温まで冷却し、生成物65gをガラス状物質として得た。Tg(DSC)=19.5℃;130℃での粘度=769cp;70℃での粘度=6.63×10cp。Mn(GPC)=689;Mw(GPC)=1245;Pd(GPC)=1.80。
【0043】
(実施例VI)
(イソソルビド/リンゴ酸オリゴマーの合成)
【化14】

【0044】
3ッ口250mL丸底フラスコにdean starkトラップと凝縮器を取り付け、これにイソソルビド(40.0g、273.9mmol、Archer Danielsから得た)、リンゴ酸(30.60g、228.22mmol、Sigma−Aldrichから得た)、FASCAT 4201ジブチルスズオキシド触媒(0.07g、0.1wt%、Arkema Inc.から得た)を入れた。アルゴン下、混合物を120℃までゆっくりと加熱し、この間に、試薬が溶融した。次いで、温度を180℃まで上げ、150℃付近で縮合が始まった。反応混合物を180℃で一晩(約20時間)撹拌した。dean starkトラップに合計で3.0mLの水が集まった。アルゴン下、反応混合物を約100℃まで冷却し、アルミニウムトレーに取り出し、室温まで冷却し、生成物63gをガラス状物質として得た。Tg(DSC)=23.2℃;130℃での粘度=1019cp;70℃での粘度=8.08×10cp。Mn(GPC)=567;Mw(GPC)=868;Pd(GPC)=1.53。
【0045】
(実施例VII)
(インクAの調製)
30mLのガラス容器に、3.9gのブタン 1,4−trans−シンナメート(78wt%、実施例Iに記載したように調製)、0.98gのイソソルビド/コハク酸オリゴマー(19.5wt%、実施例IIIに記載したように調製)をこの順序で入れた。この材料を130℃で1時間かけて溶融し、その後、この溶融混合物に、0.13g(2.5wt%)のCiba(現在はBASF)から得たORASOL BLUE GN染料を着色剤として加えた。着色したインク混合物を300rpmで撹拌しつつ、130℃でさらに2.5時間加熱した。次いで、暗青色の溶融インクを型に注ぎ込み、室温まで冷却し、固化させた。130℃での粘度=12.14cp;80℃での粘度(ピーク粘度)=5.4×10cp;Tcryst(レオロジー)=81℃。
【0046】
(実施例VIII)
(インクBの調製)
成分を以下のようにする以外は、実施例VIIのプロセスを繰り返した。1,4−trans−シンナメート(72wt%、実施例Iに記載したように調製);イソソルビド/コハク酸オリゴマー(20wt%、実施例IIIに記載したように調製);ソルビタントリステアリン酸エステル粘度調整剤(5.5wt%、SPAN 65、Crodaから得た)、(2.5wt%)ORASOL BLUE GN染料。130℃での粘度=11.09cp;65℃での粘度(ピーク粘度)=8.2×10cp;Tcryst(レオロジー)=69℃。
【0047】
(実施例IX)
(インクCの調製)
成分を以下のようにする以外は、実施例Vのプロセスを繰り返した。1,4−trans−シンナメート(75wt%、実施例Iに記載したように調製)、イソソルビド/コハク酸オリゴマー(20wt%、実施例IVに記載したように調製)、ソルビタントリステアリン酸エステル粘度調整剤(2.5wt%、SPAN 65)、(2.5wt%)ORASOL BLUE GN染料。130℃での粘度=10.89cp;74℃での粘度(ピーク粘度)=7.8×10cp;Tcryst(レオロジー)=75℃。
【0048】
(レオロジー特性)
温度範囲65〜130℃でのインクA、BおよびCの複素粘度を以下の表に記載している。
【表1】

【0049】
(インクの硬度評価)
各々のインクを真鍮製の型に流し込み、厚みが約5mmのインク円板サンプルを調製することによって、インクの硬度を測定した。インクの硬度は、針の先端がインク円板表面に対して90°の入射角で(インク円板表面に対して垂直に)衝突する針入度試験(Durometer装置を用いる)を用いて評価され、硬度100%の値は、非通過性の表面(硬い金属、ガラスなど)を示す。結果は以下のとおりであった。
【表2】

【0050】
(印刷物の作成および評価)
各インクサンプルを、加圧ロールを低圧に設定して取り付けたK−prooferグラビア印刷板を用い、Xerox Digital Color Elite Glossコーティング紙(120gsm束)に印刷した。このグラビア板の温度コントローラを142℃に設定したが、実際の板の温度は約134℃であった。
【0051】
K−proofによるインク印刷物の画像堅牢度を、「コイン」による引っかき試験および指状物による引っかきを用いて評価した。この試験は、面取りをした縁をもつ「コイン」型器具を印刷物表面に走らせた後、コーティングからインクがどれほど剥がれたかを見るものであった。この試験のために、特注の「コイン」型引っかき先端を備えるように改変したTaber Industries Linear Abraser(Model 5700)を用いた。引っかき用連結部(「コイン」ホルダ−、引っかき先端、取り付け部の集合体)は、100gであり、これを試験サンプルに向かって下げ、次いで、25回/分の頻度で3回または9回引っかいた。印刷物が損傷したかどうかを見るために、2インチ長のひっかき傷を調べた。次いで、コーティング紙から剥がれた物質の量は、まず、上の引っかき傷の長さ方向に走査し(フラットベッドスキャナ)、引っかいた領域にある元々のインク量に対し、眼に見える紙の領域を数える画像分析ソフトウェアを用いることによって測定した。
【0052】
インクA、BおよびCは、この装置を用いて引っかいたとき、顕著なインク剥がれを示さなかった。この性能は、多くの市販の固体転相インクよりも優れていた。
【0053】
K−proofによる印刷物の上にPAPERMATEボールペンを用いて書き込んでみると、印刷物によるインク画像に良好に受け入れられ、このことは、固体転相のインクによって製造した画像では通常みられないことであった。
【0054】
インクA、BおよびCを、改変したXEROX(登録商標)PHASER 8860プリンタに組み込むと、Digital Color Elite Gloss、120gsm(DCEG)およびXerox Business 4200(75gsm)紙の上に印刷物が生成し、基材から簡単には剥がすことができない堅牢性の高い画像が生成すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)結晶性trans−桂皮酸ジエステルと、
(b)イソソルビドおよび二酸のアモルファスオリゴマーとを含む、転相インク。
【請求項2】
着色剤をさらに含む、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記trans−桂皮酸ジエステルが以下の式を有し、
【化1】

式中、Rが、
(a)アルキレン基(置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよい);
(b)アリーレン基(置換および非置換のアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アリーレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよい);
(c)アリールアルキレン基(置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アリールアルキレン基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよい);または
(d)アルキルアリーレン基(置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキルアリーレン基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよい)であり、
2個以上の置換基が接続して環を形成していてもよい、請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記trans−桂皮酸ジエステルが、プロパン−1,3−trans−シンナメート、ブタン−1,4−trans−シンナメート、ヘキサン−1,6−trans−シンナメート、trans−シクロヘキサン−1,4−ジメタノール−trans−シンナメート、para−フェニル 1,4−ジメタノール−trans−シンナメート、ビス(ヒドロキシメチル)フラン−trans−シンナメート、2,5−ジヒドロキシメチル−テトラヒドロフラン−trans−シンナメート、またはこれらの混合物である、請求項1に記載のインク。
【請求項5】
前記trans−桂皮酸ジエステルが、インク中に、インクの約65〜約95重量%の量で存在する、請求項1に記載のインク。
【請求項6】
イソソルビドのオリゴマーが、以下の式を有し、
【化2】

式中、R’が、
(a)アルキレン基(置換および非置換のアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよい);
(b)アリーレン基(置換および非置換のアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アリーレン基中に存在していてもよく、存在していなくてもよい);
(c)アリールアルキレン基(置換および非置換のアリールアルキレン基を含み、ヘテロ原子が、アリールアルキレン基のアルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよい);または
(d)アルキルアリーレン基(置換および非置換のアルキルアリーレン基を含み、ヘテロ原子が、アルキルアリーレン基アルキル部分およびアリール部分のいずれかまたは両方に存在していてもよく、存在していなくてもよい)であり、
2個以上の置換基が接続して環を形成していてもよく、
nが、約2〜約10である、請求項1に記載のインク。
【請求項7】
イソソルビドのオリゴマーが、イソソルビド−コハク酸オリゴマー、イソソルビド−イタコン酸オリゴマー、イソソルビド−酒石酸オリゴマー、イソソルビド−リンゴ酸オリゴマー、またはこれらの混合物である、請求項1に記載のインク。
【請求項8】
イソソルビドのオリゴマーは、インク中、インクの約5〜約35重量%の量で存在する、請求項1に記載のインク。
【請求項9】
硬度値が少なくとも約70である、請求項1に記載のインク。
【請求項10】
結晶化温度が、示差走査熱分析法によって測定した場合、約65〜約150℃である、請求項1に記載のインク。

【公開番号】特開2013−32520(P2013−32520A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−163444(P2012−163444)
【出願日】平成24年7月24日(2012.7.24)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】