説明

結晶系太陽電池モジュールの製造方法および結晶系太陽電池モジュールの製造システム

【課題】結晶系太陽電池モジュールの発電性能を安定させる。
【解決手段】複数の結晶系太陽電池セルを準備するセル工程S100と、複数の結晶系太陽電池セルを互いに電気的に接続して結晶系太陽電池モジュールを作製するモジュール工程S120とを備える。モジュール工程S120は、接続前の複数の結晶系太陽電池セルを加熱してこの結晶系太陽電池セルの発電性能に係る特性値を補償する加熱工程S124を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶系太陽電池モジュールの製造方法および結晶系太陽電池モジュールの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶系太陽電池セルおよび結晶系太陽電池モジュールの製造方法を開示した先行文献として、特開2009−290105号公報(特許文献1)がある。特許文献1に記載された結晶系太陽電池セルおよび結晶系太陽電池モジュールの製造方法において、結晶系太陽電池モジュールは、複数の結晶系太陽電池セルが互いに電気的に接続されることにより構成されている。また、結晶系太陽電池セルは、半導体基板に光電変換層が形成されることにより構成されている。よって、結晶系太陽電池モジュールの製造方法は、結晶系太陽電池セルを作製するセル工程と、結晶系太陽電池モジュールを作製するモジュール工程とに大別される。
【0003】
一般的に、セル工程を経て作製された結晶系太陽電池セルは、一旦保管された後、モジュール工程に投入される。また、結晶系太陽電池セルを製造して、その結晶系太陽電池セルを結晶系太陽電池モジュールを製造するメーカーに販売する太陽電池セルの製造専業メーカーも存在する。そのため多くの場合、結晶系太陽電池セルは作製された後、単体の状態で保管される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−290105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結晶系太陽電池セルは、単体の状態で所定時間経過すると、発電性能に関する特性値が低下することがある。結晶系太陽電池セルの発電性能が低下すると、結晶系太陽電池モジュールの発電性能も低下する。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、安定した発電性能を得られる、結晶系太陽電池モジュールの製造方法および結晶系太陽電池モジュールの製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく第1の局面において、結晶系太陽電池モジュールの製造方法は、複数の結晶系太陽電池セルを準備するセル工程と、複数の結晶系太陽電池セルを互いに電気的に接続して結晶系太陽電池モジュールを作製するモジュール工程とを備える。モジュール工程は、接続前の複数の結晶系太陽電池セルを加熱してこの結晶系太陽電池セルの発電性能に係る特性値を補償する加熱工程を含む。
【0008】
本発明の一形態においては、セル工程は、複数の結晶系太陽電池セルの特性値を測定する第1測定工程を含む。モジュール工程は、接続前の複数の結晶系太陽電池セルの特性値を測定する第2測定工程を含む。加熱工程は、第2測定工程において測定された上記特性値が、第1測定工程において測定された上記特性値より所定の値以上低い場合に行なわれる。
【0009】
本発明の一形態においては、結晶系太陽電池モジュールの製造方法は、セル工程とモジュール工程との間で、複数の結晶系太陽電池セルを保管する保管工程をさらに備える。第2測定工程は、保管工程が所定時間以上である場合に行なわれる。
【0010】
好ましくは、加熱工程における加熱温度が100℃以上600℃以下である。
本発明に基づく第2の局面において、結晶系太陽電池モジュールの製造システムは、複数の結晶系太陽電池セルを作製するセル製造装置と、セル製造装置により作製された複数の結晶系太陽電池セルを互いに電気的に接続して結晶系太陽電池モジュールを作製するモジュール製造装置とを備える。モジュール製造装置は、接続前の複数の結晶系太陽電池セルを加熱してこの結晶系太陽電池セルの発電性能に係る特性値を補償する加熱部を含む。
【0011】
本発明の一形態においては、セル製造装置は、複数の結晶系太陽電池セルの上記特性値を測定する第1測定部を含む。モジュール製造装置は、接続前の複数の結晶系太陽電池セルの上記特性値を測定する第2測定部を含む。加熱部は、第2測定部において測定された上記特性値が、第1測定部において測定された上記特性値より所定の値以上低い場合に稼動する。
【0012】
本発明の一形態においては、結晶系太陽電池モジュールの製造システムは、接続前の複数の結晶系太陽電池セルを保管する保管部をさらに備える。第2測定部は、保管部で複数の結晶系太陽電池セルが所定時間以上保管される場合に稼動する。
【0013】
好ましくは、加熱部における加熱温度が100℃以上600℃以下である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、結晶系太陽電池モジュールの発電性能を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造方法のセル工程で作製する結晶系太陽電池セルの構成の一例を示す斜視図である。
【図2】同実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】同実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造方法を示すフローチャートである。
【図4】結晶系太陽電池セルの発電性の特性値の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造方法および結晶系太陽電池モジュールの製造システムについて説明する。以下の実施形態の説明においては、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造方法のセル工程で作製する結晶系太陽電池セルの構成の一例を示す斜視図である。なお、本実施形態においては、裏面電極型の結晶系太陽電池セルについて説明するが、本発明は両面電極型の結晶系太陽電池セルにも適用可能である。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造方法のセル工程で作製する結晶系太陽電池セル100は、基板110、パッシベーション膜120、電極130および反射防止膜140を有している。
【0019】
基板110は、結晶シリコンで構成されており、結晶シリコンの導電型はn型およびp型のいずれでもよい。基板110の内部の裏面側に、リンなどのn型不純物が拡散されたn型不純物拡散領域111と、ボロンなどのp型不純物が拡散されたp型不純物拡散領域112とが形成されている。n型不純物拡散領域111とp型不純物拡散領域112とは、平面視において互いに交互に形成されている。
【0020】
結晶系太陽電池セル100の裏面となる、基板110の裏面上にパッシベーション膜120が形成されている。パッシベーション膜120は、SiO2またはSiNなどから構成されている。パッシベーション膜120にはコンタクトホールが形成されている。
【0021】
パッシベーション膜120に設けられたコンタクトホールを通してn型不純物拡散領域111に接続されたn型用電極131が、パッシベーション膜120の裏面側に突出するよう形成されている。
【0022】
パッシベーション膜120に設けられたコンタクトホールを通してp型不純物拡散領域112に接続されたp型用電極132が、パッシベーション膜120の裏面側に突出するよう形成されている。
【0023】
基板110の表面は、テクスチャー構造を有している。結晶系太陽電池セル100の受光面となる、基板110の表面上に反射防止膜140が形成されている。反射防止膜140は、PTG(Phospho Titanate Glass)膜で構成されている。
【0024】
このような構成を有する複数の結晶系太陽電池セル100を、櫛歯状の配線を有する配線シートなどで互いに電気的に接続することにより、結晶系太陽電池モジュールを作製することができる。本実施形態においては、セル工程において結晶系太陽電池セル100を作製する場合について説明するが、セル工程において既製の結晶系太陽電池セル100を準備するようにしてもよい。
【0025】
図2は、本実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造システムの構成を模式的に示すブロック図である。図3は、本実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造方法を示すフローチャートである。なお、図2においては、結晶系太陽電池モジュールの製造システムの一部の構成のみ示している。
【0026】
図2に示すように、本実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造システム10は、セル製造装置1と保管部2とモジュール製造装置3と制御装置4とを含む。結晶系太陽電池セル100は、矢印11で示すように、セル製造装置1から保管部2に搬送され、保管部2で保管された後、矢印12で示すように、保管部2からモジュール製造装置3に搬送される。
【0027】
セル製造装置1は、複数の結晶系太陽電池セル100を作製する。また、セル製造装置1は、複数の結晶系太陽電池セル100の発電性能に係る特性値を測定する第1測定部1aを含む。発電性能に係る特性値としては、たとえば、開放電圧および短絡電流密度などがある。
【0028】
モジュール製造装置3は、セル製造装置1により作製された複数の結晶系太陽電池セル100を互いに電気的に接続して結晶系太陽電池モジュールを作製する。また、モジュール製造装置3は、接続前の複数の結晶系太陽電池セル100の上記特性値を測定する第2測定部3aを含む。
【0029】
第1測定部1aおよび第2測定部3aの各々は、擬似太陽光を照射するソーラーシミュレータと、n型用電極131およびp型用電極132に接触して出力電圧および出力電流を検出するプローブとを含む。
【0030】
さらに、モジュール製造装置3は、接続前の複数の結晶系太陽電池セル100を加熱してこれらの結晶系太陽電池セル100の上記特性値を補償する加熱部3bを含む。ここで、補償するとは、製造直後の結晶系太陽電池セル100が有していた上記特性値に対して低下した上記特性値を、再び製造直後の結晶系太陽電池セル100が有していた上記特性値に近づけることをいう。
【0031】
加熱部3bは、たとえば、ランプヒータまたは熱風炉などで構成されている。加熱部3bとして熱風炉を用いる場合には、熱風炉内に空気、活性または不活性ガス、またはそれらの混合ガスを導入して種々の雰囲気中で加熱することができる。加熱時間は、ランプヒータでは30秒、熱風炉では30分程度である。
【0032】
保管部2は、接続前の複数の結晶系太陽電池セル100を保管する。具体的には、保管部2は、複数の結晶系太陽電池セル100収容可能なカセットで構成されている。
【0033】
制御装置4は、セル製造装置1、保管部2およびモジュール製造装置3と接続されている。制御装置4は、矢印41,43a,43bで示すように、第1測定部1a、第2測定部3aおよび加熱部3bの稼動のON/OFFを制御する。
【0034】
また、制御装置4には、矢印41,43aで示すように、第1測定部1aおよび第2測定部3aから上記特性値の測定結果が入力される。制御装置4は、第1測定部1aおよび第2測定部3aから入力された上記特性値の差分を算出する演算部を含む。さらに、制御装置4には、矢印42で示すように、保管部2から保管部2での結晶系太陽電池セル100の保管時間が入力される。
【0035】
図3に示すように、本実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造方法は、セル工程S100と保管工程S110とモジュール工程S120とを含む。セル製造装置1においてセル工程S100が行なわれ、保管部2において保管工程S110が行なわれ、モジュール製造装置3においてモジュール工程S120が行なわれる。
【0036】
セル工程S100においては、まず、基板110にn型不純物拡散領域111およびp型不純物拡散領域112を形成してpn接合を有する光電変換層を形成する(S101)。次に、n型用電極131およびp型用電極132からなる電極130を形成する(S102)。電極形成工程S102を終えた段階で、結晶系太陽電池セル100が完成している。なお、パッシベーション膜120を形成する工程もセル工程S100に含まれる。
【0037】
その後、上記のように制御装置4によって稼動を開始した第1測定部1aにより、完成直後の結晶系太陽電池セル100の上記特性値が測定される(S103)。測定結果は、制御装置4に入力される。
【0038】
次に、作製された結晶系太陽電池セル100が、セル製造装置1から搬出される(S104)。以上のS101〜104の工程をセル工程S100は含む。
【0039】
本実施形態においては、セル製造装置1から搬出された結晶系太陽電池セル100は、保管部2で保管される。保管部2での保管時間は様々であり、短い場合は数分、長い場合は1年以上に及ぶ。
【0040】
なお、保管部2は必ずしも設けられなくてもよく、結晶系太陽電池セル100がセル製造装置1からモジュール製造装置3に直接搬送されてもよい。この場合、保管時間は、セル製造装置1からモジュール製造装置3までの輸送時間となる。
【0041】
保管時間または輸送時間は、制御装置4に入力される。本実施形態においては、制御装置4に予め所定時間が入力されている。所定時間は、たとえば、48時間である。制御装置4は、入力された保管時間または輸送時間とその所定時間との長短を比較し、その比較結果に基づいてモジュール製造装置3を稼動させる。
【0042】
モジュール製造装置3において結晶系太陽電池セル100の受入準備が整って保管工程S110を終えると、保管部2で保管された結晶系太陽電池セル100をモジュール製造装置3に投入する(S121)。
【0043】
まず、投入された結晶系太陽電池セル100に欠けまたは割れが発生していないか、目視または画像認識装置により検査する(S122)。保管工程S110において制御装置4に入力された保管時間または輸送時間が所定時間以上である場合、制御装置4はモジュール製造装置3の第2測定部3aを稼動させる。
【0044】
制御装置4によって稼動を開始した第2測定部3aにより、結晶系太陽電池セル100の上記特性値が測定される(S123)。測定結果は、制御装置4に入力される。
【0045】
上記のように、第1測定工程S103において、制御装置4には第1測定部1aによる測定結果がすでに入力されている。制御装置4は、第1測定部1aにおいて測定された上記特性値と、第2測定部において測定された上記特性値との差分を演算部において算出し、その算出結果に基づいて加熱部3bを稼動させる。
【0046】
具体的には、加熱部3bは、第2測定部3aにおいて測定された上記特性値が、第1測定部1aにおいて測定された上記特性値より所定の値以上低い場合に稼動する。所定の値とは、たとえば、1つの結晶系太陽電池セル100の出力電圧において30mVである。
【0047】
制御装置4により稼動を開始した加熱部3bにより、結晶系太陽電池セル100が加熱される(S124)。加熱部3bにおける加熱温度は、100℃以上600℃以下であることが好ましい。
【0048】
加熱温度が100℃より低い場合、結晶系太陽電池セル100が吸湿した水分を十分に蒸発させることができない。加熱温度が600℃より高い場合、結晶系太陽電池セル100のn型不純物拡散領域111およびp型不純物拡散領域112に拡散している不純物が相互に拡散して各領域が小さくなり、キャリアの再結合確率が増加して発電効率が低下する。また、加熱温度が600℃より高い場合、電極130がファイヤースルーを生じて変形し、電極130の特性が劣化する恐れがある。
【0049】
次に、結晶系太陽電池セル100を配線基板上にマウントする(S125)。配線基板にはn配線およびp配線が形成されている。n配線とn型用電極131とが接触し、p配線とp型用電極132とが接触するように、配線基板上に複数の結晶系太陽電池セル100が設置される。
【0050】
n配線とn型用電極131との電気的接続およびp配線とp型用電極132との電気的接続をそれぞれ、たとえば、半田または導電性接着剤などの接着材料により行なう(S126)。配線基板上に設置した複数の結晶系太陽電池セル100を透光性封止材、ガラスなどの透光性部材および耐候性基材により封止する(S127)。
【0051】
次に、接続された複数の結晶系太陽電池セル100の周囲を覆っている封止樹脂の端面を切削して除去する(S128)。その後、端子ボックスを結晶系太陽電池セル100の裏面側に取り付ける(S129)。さらにその後、接続された複数の結晶系太陽電池セル100の周囲に、エチレンプロピレンゴムまたはエラストマーなどの絶縁材料を取り付けることにより、端面を封止する(S130)。最後に、アルミフレームなどの外枠を取り付けることにより結晶系太陽電池モジュールが完成する(S131)。
【0052】
その後、完成した結晶系太陽電池モジュールの絶縁耐圧試験を行なう(S132)。さらに、完成した結晶系太陽電池モジュールの最大出力などの発電性能に係る特性値を検査する(S133)。検査後、結晶系太陽電池モジュールはモジュール製造装置3から搬出される(S134)。以上のS121〜134の工程をモジュール工程S120は含む。
【0053】
図4は、結晶系太陽電池セルの発電性の特性値の変化を示すグラフである。図4においては、縦軸に規格化した特性値、横軸に測定時期を示している。なお、特性値として開放電圧を測定した。
【0054】
図4に示すように、結晶系太陽電池セル100の製造直後の開放電圧を1.0としたとき、それから3日経過後の開放電圧は0.952に低下し、加熱後の開放電圧は0.976まで回復した。
【0055】
時間経過とともに結晶系太陽電池セル100の発電性能に係る特性値が低下する原因としては、結晶系太陽電池セル100の吸湿、電極130の表面への異物の付着、および、結晶系太陽電池セル100内のSiとSiO2との界面の状態の変化などが考えられる。
【0056】
その結晶系太陽電池セル100が加熱されることにより、吸湿した水分の蒸発、付着した異物の焼失、および、SiとSiO2との界面状態の回復などの現象が生じて、結晶系太陽電池セル100の発電性能に係る特性値が元の値に近づくように補償されると考えられる。
【0057】
よって、本実施形態に係る結晶系太陽電池モジュールの製造方法のように、単体の状態で所定時間経過して発電性能に関する特性値が低下した複数の結晶系太陽電池セル100を加熱して互いに接続することにより、結晶系太陽電池モジュールの発電性能を安定させることができる。
【0058】
本実施形態においては、封止工程S127において封止材を溶解させるための加熱処理を行なっている。封止工程S127においては、結晶系太陽電池セル100の両面は、防湿性を有する透光性部材および耐候性基材で覆われている。そのため、封止工程S127における加熱処理では、結晶系太陽電池セル100から水分を蒸発させて除去することが難しい。よって、加熱工程S124は、結晶系太陽電池セル100が封止材で覆われる前に行なわれることが好ましい。
【0059】
また、結晶系太陽電池セル100を配線基板上にマウントした後で加熱工程S124を行なった場合、熱変形によって結晶系太陽電池セル100の設置位置がずれることがある。そのため、加熱工程S124は、結晶系太陽電池セル100を配線基板上にマウントする前に行なわれることが好ましい。
【0060】
複数の結晶系太陽電池セル100の発電性能は、製造直後から若干のバラツキを有している。そのため、第1測定工程S103における測定結果と第2測定工程S123における測定結果との比較は、同一の結晶系太陽電池セル100について行なわれることが好ましい。
【0061】
そこで、結晶系太陽電池セル100に識別用のIDまたはバーコードなどを印字しておき、第1測定工程S103および第2測定工程S123においてその識別用IDなどを認識しつつ測定を行ない、各結晶系太陽電池セル100の測定結果を個別に制御装置4に記憶させることが好ましい。
【0062】
また、結晶系太陽電池セル100を生産ロット毎に管理するようにしてもよい。この場合、第1測定工程S103および第2測定工程S123においてその生産ロットを認識しつつ測定を行ない、複数の結晶系太陽電池セル100の測定結果を生産ロット毎に区分して制御装置4に記憶させる。
【0063】
これらの方法により、第1測定工程S103における測定結果と第2測定工程S123における測定結果とをひも付け(関連付け)することができる。
【0064】
なお、本実施形態においては、保管時間または輸送時間が所定時間以上である場合に、第2測定部3aを稼働させている。そのため、保管時間または輸送時間が所定時間より短くて結晶系太陽電池セル100の上記特性値の低下の可能性が低い場合には、第2測定部3aによる測定および加熱部3bによる加熱を行なわずに結晶系太陽電池モジュールを製造することが可能になっている。このようにすることにより、結晶系太陽電池モジュールの製造工程の効率化を図ることができる。
【0065】
ただし、保管時間または輸送時間と所定時間との比較結果により上記のようにモジュール製造装置3の稼働を変更することは必須ではない。常に第2測定工程S123および加熱工程S124を行なうようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態においては、第2測定工程S123における上記特性値の測定結果が、第1測定工程S103における上記特性値の測定結果より所定の値以上低い場合に、加熱部3bを稼働させている。
【0067】
そのため、上記特性値の低下分が所定の値より小さい場合には、加熱部3bによる加熱を行なわずに結晶系太陽電池モジュールを製造することが可能になっている。このようにすることにより、結晶系太陽電池モジュールの製造工程の効率化を図ることができる。
【0068】
ただし、第2測定工程S123における上記特性値の測定結果と、第1測定工程S103における上記特性値の測定結果との比較結果により上記のように加熱部3bの稼働を変更することは必須ではない。常に加熱工程S124を行なうようにしてもよい。この場合、第1測定工程S103および第2測定工程S123は不要になる。
【0069】
さらに、本実施形態においては、結晶系太陽電池モジュールの製造システム10は制御装置4を備えていたが、必ずしも制御装置4を備えなくてもよく、たとえば、人がセル製造装置1およびモジュール製造装置3の稼働を制御してもよい。
【0070】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 セル製造装置、1a 第1測定部、2 保管部、3 モジュール製造装置、3a 第2測定部、3b 加熱部、4 制御装置、10 製造システム、100 結晶系太陽電池セル、110 基板、111 n型不純物拡散領域、112 p型不純物拡散領域、120 パッシベーション膜、130 電極、131 n型用電極、132 p型用電極、140 反射防止膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の結晶系太陽電池セルを準備するセル工程と、
前記複数の結晶系太陽電池セルを互いに電気的に接続して結晶系太陽電池モジュールを作製するモジュール工程と
を備え、
前記モジュール工程は、接続前の前記複数の結晶系太陽電池セルを加熱して該結晶系太陽電池セルの発電性能に係る特性値を補償する加熱工程を含む、結晶系太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記セル工程は、前記複数の結晶系太陽電池セルの前記特性値を測定する第1測定工程を含み、
前記モジュール工程は、接続前の前記複数の結晶系太陽電池セルの前記特性値を測定する第2測定工程を含み、
前記加熱工程は、前記第2測定工程において測定された前記特性値が、前記第1測定工程において測定された前記特性値より所定の値以上低い場合に行なわれる、請求項1に記載の結晶系太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記セル工程と前記モジュール工程との間で、前記複数の結晶系太陽電池セルを保管する保管工程をさらに備え、
前記第2測定工程は、前記保管工程が所定時間以上である場合に行なわれる、請求項2に記載の結晶系太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程における加熱温度が100℃以上600℃以下である、請求項1から3のいずれかに記載の結晶系太陽電池モジュールの製造方法。
【請求項5】
複数の結晶系太陽電池セルを作製するセル製造装置と、
前記セル製造装置により作製された前記複数の結晶系太陽電池セルを互いに電気的に接続して結晶系太陽電池モジュールを作製するモジュール製造装置と
を備え、
前記モジュール製造装置は、接続前の前記複数の結晶系太陽電池セルを加熱して該結晶系太陽電池セルの発電性能に係る特性値を補償する加熱部を含む、結晶系太陽電池モジュールの製造システム。
【請求項6】
前記セル製造装置は、前記複数の結晶系太陽電池セルの前記特性値を測定する第1測定部を含み、
前記モジュール製造装置は、接続前の前記複数の結晶系太陽電池セルの前記特性値を測定する第2測定部を含み、
前記加熱部は、前記第2測定部において測定された前記特性値が、前記第1測定部において測定された前記特性値より所定の値以上低い場合に稼動する、請求項5に記載の結晶系太陽電池モジュールの製造システム。
【請求項7】
接続前の前記複数の結晶系太陽電池セルを保管する保管部をさらにを備え、
前記第2測定部は、前記保管部で前記複数の結晶系太陽電池セルが所定時間以上保管される場合に稼動する、請求項6に記載の結晶系太陽電池モジュールの製造システム。
【請求項8】
前記加熱部における加熱温度が100℃以上600℃以下である、請求項5から7のいずれかに記載の結晶系太陽電池モジュールの製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−105945(P2013−105945A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249747(P2011−249747)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】