説明

結晶酸化シリコンパッシベーション薄膜を含む太陽電池及びその製造方法

ヘテロジャンクション太陽電池は、結晶シリコン基板(1)の正面又は背面(1a)のいずれかに直接配置され、且つ、前記基板(1)とアモルファス又は微結晶のシリコンの層(3)との間に配置される結晶酸化シリコン薄膜(11)を少なくとも1つ備える。前記薄膜(11)は、前記基板(1)の前記面(1a)のパッシベーションとなることができる。特に、前記薄膜(11)は、アモルファスシリコンの層(3)の堆積の前に、前記基板(1)の表面部分をラジカル酸化することにより得られる。さらに、真性アモルファスシリコン又は微量ドーピングされたアモルファスシリコンの薄層(2)は、前記薄膜(11)と前記アモルファス又は微結晶シリコンの層との間に配置することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロジャンクション太陽電池(photovoltaic cell)に関するものであり、この太陽電池は、所定のドーピングタイプを有する結晶シリコン基板と、アモルファス又は微結晶シリコンの層とを有する。同時に、本発明は、このような太陽電池を少なくとも1つを製造する製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロジャンクション太陽電池は、受け取った光子を電気信号に直接変換することを可能にする多層スタック(multi-layer stack)から形成される。特に、ヘテロジャンクションは、所定のドーピングタイプ(n型又はp型)の結晶シリコン基板と、この基板と反対のドーピングタイプのアモルファスシリコン層とにより形成される。
【0003】
さらに、ヘテロジャンクションの界面特性を改善し、変換効率を改善するために、通常、「電気的パッシベーション(electric passivation)」層と呼ばれる中間層は、ヘテロジャンクションを形成する2つの要素(element)の間に位置する。特許出願US2001/0029978に示されるように、通常、この中間層は真性アモルファスシリコン(intrinsic amorphous silicon)の層である。
【0004】
例えば、図1には、特許出願US2001/0029978に記載された先行技術にかかる太陽電池の特有の実施形態を示す。ヘテロジャンクション太陽電池は結晶シリコン基板1を備え、例えば、結晶シリコン基板は、n型にドーピングされ、正面1aを含み、正面は均一に、且つ、連続的に以下の膜に覆われている:
− 真性アモルファスシリコンの層2と、
− アモルファスシリコンの層3であって、例えば、基板1とヘテロジャンクションを形成するために例えばp型にドーピングされているようなアモルファスシリコンの層と、
− 電極4であって、例えば酸化インジウムスズ(ITO)からなる電極と、
− 櫛型状の電流コレクタ5と。
【0005】
さらに、電池の光学的封じ込め(optical containment)を増加させるために、基板1の正面1aは凹凸状(textured)(又は組織状(structured))である。
【0006】
図1においては、基板1の背面1bは平坦であり、且つ、電極6に覆われている。しかしながら、他の場合においては、背面1bは凹凸状であり、図2に示されるような多層スタックにより覆われるようにすることもできる。従って、この実施形態においては、基板1の背面1bは、均一に、且つ、連続的に以下の膜に覆われている:
− 真性アモルファスシリコンの層7と、
− 強くドーピングされた(very strongly doped)アモルファスシリコンの層8であって、例えば、n型にドープされている層と、
− 電極9であって、例えばITOからなる電極と、
− 櫛型状の電流コレクタ10と。
【0007】
従って、図1及び図2に示すように、ヘテロジャンクション太陽電池は、その少なくとも1つの面を有利には凹凸状とすることができる基板に、非常に薄い(数ナノメートルから数十ナノメートル)複数の層を均一に堆積することを必要とする。薄層(thin layer)のコンフォーマルな堆積と呼ばれることがある薄層の均一な堆積により、薄層が堆積される面の起伏(relief)に沿ってほぼ一定の膜厚を有する薄層が堆積されることが明らかである。
【0008】
しかしながら、ほぼ常に必要とされる基板の少なくとも1つの面を凹凸状にするステップは、これらの層を精度良く均一に分配(distribution)することができない。特に、凹凸状にするステップは露出した表面領域を非常に増加させることとなる。さらに、太陽電池の分野においては、基板の少なくとも1つの面をピラミッド状に凹凸化する(texture)ことが一般的である。しかしながら、得られたピラミッドの側面は非常に粗い場合があり、ピラミッドの頂上及び谷は険しいものであり(通常、曲率半径は30nm未満である)、凹凸状の面に連続的に堆積した層の膜厚の完全な均一性を劣化させることとなる。例えば、特許出願US2001/0029978では、2つのピラミッドの間の領域「b」に丸みをつけるために、フッ酸(HF)と硝酸との溶液を用いた等方性ウエットエッチングを行うことが提案されている。しかしながら、このエッチングは非常に重要であり、2μm又はそれ以上のものといった程度であり、ナノメートルレベルにおいてピラミッドの側面を滑らかにすることを可能にするものではない。
【0009】
加えて、凹凸化ステップと、洗浄ステップと、エッチングステップと、堆積を行う前の待機時間とは、基板の凹凸状の面の表面の(粒子、及び/又は、金属の)汚染を生じさせることがあり、この汚染は、凹凸状の基板の表面の状態密度(state density)を非常に増加させることとなる。従って、この汚染の問題は、パッシベーション層としての真性アモルファスシリコンのトランジション層を使用しているにもかかわらず、表面の良好なパッシベーションと高出力とを悪化させる。
【0010】
J.Sritharathiikhunらの文献“Optimization of Amorphous Silicon Oxide Buffer Layer for High-Efficiency p-Type Hydrogenated Microcrystalline Silicon Oxide/n-type Crystalline Silicon Heterojunction Solar Cell”(Japanese Journal of Applied Physics,Vol.47, N11,2008,pp8452-8455)においては、n型にドーピングされた結晶シリコン基板(n−c−Si:H)とp型にドーピングされた微結晶酸化シリコンの層(p−μc−SiO:H)との間に、真性アモルファス酸化シリコンの表面パッシベーション層(i−a−SiO:H)を用いることが提案されている。このようなパッシベーション層は、非常に高い周波数でのプラズマ化学気相成長技術(VHF−PECVD)により堆積される。さらに、このような層の最適な膜厚は6nmである。しかしながら、このようなパッシベーション層を形成することは、n型にドーピングされた結晶シリコン基板とこのパッシベーション層との間の界面に多くの欠陥の生成を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、実施が容易であり、良好な表面のパッシベーションを有するヘテロジャンクション太陽電池を提案することである。
【0012】
本発明によれば、この目的は以下のことから達成される。すなわち、所定のタイプのドーピングを有する結晶シリコン基板と、アモルファス又は微結晶のシリコンの層とを有するヘテロジャンクション太陽電池であって、少なくとも1つの結晶酸化シリコン薄膜(crystalline silicon oxide thin film)を備え、この結晶酸化シリコン薄膜は、前記基板と前記アモルファス又は微結晶のシリコンの層との間であって、基板の面の上に直接堆積される、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の実施形態によれば、結晶酸化シリコン薄膜は、ラジカル酸化により得られた基板の表面部分から構成される。
【0014】
本発明の他の実施形態によれば、結晶酸化シリコン薄膜は2ナノメートル以下の膜厚を有する。
【0015】
本発明によれば、この目的は以下のことから達成される。すなわち、アモルファス又は微結晶シリコンの層の形成前に、結晶酸化シリコン薄膜は基板の表面のラジカル表面酸化により得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、先行技術にかかる太陽電池の特有の実施形態の断面を模式的に示す。
【図2】図2は、図1にかかる太陽電池の他の実施形態の断面を模式的に示す。
【図3】図3は、本発明にかかる太陽電池の様々な実施形態を示す。
【図4】図4は、本発明にかかる太陽電池の様々な実施形態を示す。
【図5】図5は、本発明にかかる太陽電池の様々な実施形態を示す。
【図6】図6は、本発明にかかる太陽電池の様々な実施形態を示す。
【図7】図7は、本発明にかかる太陽電池の様々な実施形態を示す。
【図8】図8は、本発明にかかる太陽電池の様々な実施形態を示す。
【図9】図9は、本発明にかかる太陽電池の様々な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
他の利点及び特徴は、本発明の特有の実施形態についての下記の説明により、さらに明らかにされる。本発明の特有の実施形態は、単なる例示であって、本発明を限定するものではない。本発明の特有の実施形態は、添付の図面により示される。
【0018】
図3にかかる太陽電池は、図1に示される太陽電池のものとほぼ同等の多層スタックを有する。しかしながら、図3においては、結晶酸化シリコン薄膜11は、結晶シリコン基板1と真性アモルファスシリコンの層2との間に堆積される。
【0019】
薄膜11と、真性アモルファスシリコンの層2と、p型にドーピングされたアモルファスシリコンの層3と、電極4と、電流コレクタ5とにより形成されたユニットは、基板1の正面1aに配置された多層スタックを構成し、図3においてはA1により示される。
【0020】
さらに詳細には、薄膜11は、n型にドーピングされた結晶シリコンの基板1の正面1aの上に直接配置され、且つ、その基板1と真性アモルファスシリコンの層2との間に配置される。従って、基板1の正面1aと直接接することとなる。加えて、有利には2ナノメートル以下の膜厚を有し、さらに有利には0.1nmから2nmの間であって、典型的には約0.5nmである膜厚を有する。
【0021】
さらに詳細には、薄膜11は、スタックA1の薄層2、3、4及び5を連続的に形成する前に、基板1の表面部分のシリコンを酸化することにより得られた薄膜である。基板1の表面部分により、基板1の自由面から基板1の内側(interior)にまで伸びる基板1の領域が、非常に薄い膜厚(有利には2nm未満)を有することが明らかである。さらに、薄膜11は、結晶状に形成された酸化物といった結晶酸化シリコンにより形成される。特に、酸化シリコンから形成される結晶が、特定の場合、結晶面(100)を有するシリコン基板としてのトリディマイト構造をとることができる。
【0022】
さらに、この酸化は、例えば、ラジカル(フリーラジカル)を用いて行われる酸化といったラジカル表面酸化である。特に、このようなラジカルは、例えば、酸素、オゾン、及び/又は、水から得ることができる酸化ラジカルである。
【0023】
従って、このように得られたラジカルは、基板1の表面部分の上のシリコンを酸化する。さらに、ラジカル酸化の間に得られた酸化シリコンは少なくとも部分的に結晶構造を有する。詳細には、シリコン基板のラジカル表面酸化は、有利にはシリコン基板の表面上の結晶薄膜を形成するようにコントロールされる。しかしながら、基板のラジカル表面酸化は、特定の場合には、結晶酸化シリコンの上にアモルファス状の酸化シリコンを付加的に形成することを含むことができる。しかしながら、薄膜11を形成する結晶酸化シリコンは、基板1とアモルファス酸化シリコンとの間に挿入されることとなる。さらに有利には、ラジカル表面酸化の間に形成されるアモルファス酸化シリコンは、ラジカル表面酸化に続く中間ステップの間に、さらに詳細には、スタックA1の他の層を形成する前に、ストリッピングにより除去することもできる。
【0024】
有利には、プラズマ、又は、酸化しようとする基板の表面に紫外線を照射することにより酸化を支援する。特に、プラズマ処理又は紫外線処理は、基板1のシリコンを酸化させるために用いられるフリーラジカルの形成を行う。フリーラジカルは、処理のタイプに応じたO・、O・、及び/又は、OH・タイプのラジカルであり、特に、酸素、及び/又は、オゾン、及び/又は、水から得られる。
【0025】
特有の実施形態によれば、基板1の表面部分の酸化は、酸素と160nmから400nmの間の波長を有する紫外線とにより行うことができる。用いられる紫外線の波長は、例えば、約185nmと、約254nmとである。この特有の実施形態においては、紫外線の作用の下では、酸素はフリーラジカルO・、及び、オゾンに解離する。フリーラジカルはシリコン表面を酸化することができる。
【0026】
さらに、酸化オペレーションの間の温度は、室温から約900℃の間にすることができ、その際の圧力は、約10−4から10Paの間にすることができる。しかしながら、温度と圧力とをそれぞれ室温と大気圧とにすることが有利な方法である。
【0027】
薄膜11を形成した後に少なくとも1つの太陽電池を形成する方法は、連続的に薄層を堆積することを継続する。特に、図3に示される実施形態においては、薄膜11の形成の直後に、以下の堆積を連続して行う:
− 真性アモルファスシリコンの薄層2を堆積し、
− 前記薄膜11の上にp型にドーピングされたアモルファスシリコンの薄層3を堆積し、
− 薄層3の上に電極4を堆積し、
− 電極4の上に電流コレクタ5を堆積し、
− 基板1の背面1b上に電極6を堆積する。
【0028】
先に説明したように、ラジカル酸化のオペレーションの間に薄膜11の上に形成される場合があるアモルファス酸化シリコンを除去するための中間ステップは、前記複数の薄層の連続的な堆積の前に行うことができる。
【0029】
従って、基板1の複数の面のうちの1つの上の結晶酸化シリコン薄膜の存在は、特にラジカル酸化により得られたものである場合には、重要なパッシベーション特性を得ることを可能にし、この結晶酸化シリコンは非常に良好な固有の品質(intrinsic quality)を有する。よって、このような結晶酸化シリコン薄膜は、再結合中にチャージキャリアがトラップされることを避けることができる。従って、基板1の表面パッシベーションを保証することにより、結晶酸化シリコン薄膜はトンネル酸化物の役割(part)を果たすこととなる。よって、太陽電池の開回路電圧(open circuit tension)を増加させ、潜在的に短絡開路電流(short-circuit current)を増幅させ、且つ、出力を劣化させることなく電池の形状ファクタ(form factor)を変化させることができる。
【0030】
さらに、1つ又はそれ以上の太陽電池を形成する方法を行うことを可能にする。実際、酸化物の薄膜で覆われている基板1の表面は長い期間安定しており、それにより、製造方法の以下の複数のステップ(他の複数の薄層を堆積する)を行う前に、待機可能時間(possible waiting time)を長くすることができる。さらに、特定の場合においては、洗浄条件に応じて結晶酸化シリコン薄膜の形成の前に基板1の表面の上に存在する自然酸化物(native oxide)の除去を必要としない。特定の条件の下で、ラジカル酸化のステップの間に自然酸化物を結晶状に変化させる(transform)ことができる。最終的には、パッシベーション層として少なくとも1つの結晶酸化シリコン薄膜を形成することは、真性アモルファスシリコンを堆積する前にフッ酸を用いて基板を洗浄するステップからプロセスを解放することを可能にし、このことはプロセスの安全性を改善することを可能にする。
【0031】
図3においては、基板1の背面1bは平坦であり、図1にかかる実施形態のように電極6で覆われている。一方、図4に示されるように、背面1bは凹凸状であることもでき、図2に示すような多層スタックにより覆われるようにすることができる。例えば、背面は、以下のような膜に均一に、且つ、連続的に覆われている:
− 真性アモルファスシリコンの層7と、
− 非常に強くドーピングされたアモルファスシリコンの層8であって、例えばn型にドーピングされた層と、
− 例えばITOからなる電極9と、
− 櫛形状の電流コレクタ10と。
【0032】
加えて、付加薄膜(additional thin film)12を堆積することができ、特定の実施形態においては、基板1の背面1bの上に堆積することができる。
【0033】
従って、他の実施形態においては、図5に示すように、電池は、図3及び図4に示された多層スタックA1と同様のものに覆われた正面1aを備えることができる。一方、正面1aと同様に、基板1の背面1bは凹凸状であり、さらに、結晶酸化シリコン付加薄膜(additional crystalline silicon oxide thin film)12により覆われている。この付加薄膜12は、真性アモルファス薄層7と、n型にドーピングされたアモルファスシリコンの薄層8と、電極9と、電流コレクタ10とからなる多層スタックにより覆われており、基板1の背面1bを覆う多層スタックを形成するユニットは、図5のB1として示される。
【0034】
特定の場合には、結晶酸化シリコンの非常に良好な固有の品質は、良好な表面パッシベーションを得るためには十分なものであり、結晶酸化シリコン薄膜とドーピングされたアモルファスシリコンの薄層との間における真性アモルファスシリコンのパッシベーション薄層2の必要性を避けることができる。
【0035】
次いで、薄膜11は、基板1とp型にドーピングされたアモルファスシリコンの層3との間に直接堆積することができる。従って、これらの実施形態においては、多層スタックA1を、スタックA1とは異なる多層スタックA2により置き換えることも考えられ、そこでは薄膜11とp型にドーピングされたアモルファスシリコンの薄層3との間の真性シリコンの薄層2が削除されている。このようなスタックA2は、図6から9に示される基板1の背面1bに関する様々な実施形態と結びつけることができる。
【0036】
従って、図6においては、基板1の正面1aを覆うこのスタックA2は、基板1の平坦な背面1bを覆う電極6と関連づけられる。
【0037】
図7においては、背面1bは、基板1の正面1aのように凹凸状であり、図2で示されるような多層スタックにより覆われている。例えば、この多層スタックは結晶酸化シリコン付加薄膜12を含むものではない。
【0038】
図8においては、基板1の背面1bは基板の正面1aのように凹凸状であり、多層スタックB1により覆われている。例えば、このスタックは、基板1とn型にドーピングされたアモルファスシリコンの薄層8との間に挿入された付加薄膜12を含む。
【0039】
最後に、図9において、基板1の背面1bは、基板の正面1aのように凹凸状であり、多層スタックB2により覆われている。多層スタックB2はスタックB1とは異なり、追加薄膜12とアモルファスシリコンの層8との間に配置される真性アモルファスシリコンの層7を含むものではない。
【0040】
太陽電池が、基板1の正面1aに配置された薄膜11と、基板1の背面1bに配置された付加薄膜12とを備える場合には、2つの薄膜11と12とは、同時に又は連続的な方法で実現することができる。
【0041】
2つの薄膜11と12とを連続的な方法で実現する場合には、有利には太陽電池は以下のように形成することができる:
− 基板1の正面1aの上に、薄膜11と、可能であれば真性アモルファスシリコンの薄層2と、p型にドーピングされたアモルファスシリコンの層3とを連続的に形成して、ヘテロジャンクションを形成し、
− 次いで、基板1の背面1bの上に、付加薄膜12と、可能であれば真性アモルファスシリコンの薄層7と、n型にドーピングされたアモルファスシリコンの層8とを連続的に形成し、
− 最後に、電極4と9と、電極4と9とにそれぞれ対応する電流コレクタ5と10とを、これらのスタックの上にそれぞれ形成する。
【0042】
有利には、2つの薄膜11及び12のそれぞれは、可能であればプラズマ処理又は紫外線の支援を受けた酸化ラジカルといったフリーラジカルを用いたラジカル酸化により形成される。
【0043】
他の実施形態によれば、太陽電池は、1つの結晶酸化シリコン薄膜のみを有することができ、この結晶酸化シリコン薄膜は、基板1の正面1aの上に配置されているのではなく(図3、4、6及び7の場合)、基板1の背面1bの上に配置されている。結晶酸化シリコン薄膜は、有利には、常に、可能であればプラズマ処理又は紫外線の支援を受けた酸化ラジカルといったフリーラジカルを用いたラジカル酸化により形成される。この場合、有利には、正面1aは、基板1とp型にドーピングされたアモルファスシリコンの薄層3との間に配置された真性アモルファスシリコンの薄層2により覆われている。背面1bは、結晶酸化シリコン薄膜とドーピングされたアモルファスシリコンの層8との間の真性アモルファスシリコンの薄層7を備えることができる(又は、備えないこともできる)。
【0044】
本発明は、これまで説明した実施形態に限定されるものではなく、特に、基板1や、ドーピングされたアモルファスシリコンの層3及び8のドーピングのタイプ(n型又はp型)に関して、限定されるものではない。
【0045】
従って、本発明は、n型にドーピングされた結晶シリコン基板と、アモルファスシリコンの層3及び8であってそれぞれp型とn型にドーピングされた実施形態に限定されるものではない。ヘテロジャンクションを形成するために、アモルファスシリコンの層3は、基板1のドーピングタイプ(n型又はp型)と反対のドーピングタイプ(p型又はn型)を有していれば良く、基板1の背面1bのサイドの上に配置されるアモルファスシリコンの層8は、基板1のもの(n型又はp型)と同じドーピングタイプ(n型又はp型)であれば良い。
【0046】
加えて、アモルファスシリコンを形成する代わりに、薄層3及び8は微結晶シリコンから形成することができる。
【0047】
さらに、層2及び7として真性アモルファスシリコンを用いる代わりに、微量ドーピング(microdoped)と呼ばれる急峻に(slightly)ドーピングされたアモルファスシリコンを用いることができ、この急峻にドーピングされたアモルファスシリコンは、層2又は7の上に配置されることとなるアモルファスシリコンの層3又は8のものと同じドーピングタイプを有する。急峻なドーピング又は微量ドーピングされたアモルファスシリコンより、通常用いられるドーピングレベルよりも実質的に低いドーピングであることが明らかである。従って、例えば、アモルファスシリコンの層2及び7のそれぞれのドーピング物質の濃度は、1×1016から1×1018at/cmであることができ、さらに、アモルファスシリコンの薄層3及び8のそれぞれは、1×1019at/cmから1×1022at/cmの間であるドーピング物質の濃度を有することができる。
【0048】
真性アモルファスシリコンを微量ドーピングされたアモルファスシリコンに置き換えることは、低いドーピングレベルにより、低い局在状態密度(localized state density )を得ることを可能にし、従って、基板との界面におけるキャリアの低い再結合割合を得ることを可能にし、ひいては高い開回路電圧を得ることを可能にする。さらに、微量ドーピングされたアモルファス層は、真性アモルファス層のものと比べて実質的に高い導電性を有し、これによって、電池のシリーズ抵抗(series resistance)を減少させ、電池の形状ファクタを実質的に改善する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のタイプのドーピングを有する結晶シリコン基板(1)と、アモルファス又は微結晶のシリコンの層(3、8)とを有するヘテロジャンクション太陽電池であって、結晶酸化シリコン薄膜(11)を少なくとも1つ備え、前記結晶酸化シリコン薄膜(11)は、前記基板(1)と前記アモルファス又は微結晶のシリコンの層(3、8)との間であって、前記基板(1)の面(1a、1b)の上に直接配置されている、ことを特徴とする電池。
【請求項2】
前記結晶酸化シリコン薄膜(11)は、ラジカルにより酸化された前記基板(1)の表面部分により構成される、ことを特徴とする請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記結晶酸化シリコン薄膜(11)は、2ナノメートル以下の膜厚を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
真性アモルファスシリコン又は微量ドーピングされたアモルファスシリコンの薄層(2、7)は、前記結晶酸化シリコン薄膜(11)と前記アモルファス又は微結晶のシリコンの層(3、8)との間に挿入される、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の電池。
【請求項5】
前記結晶酸化シリコン薄膜(11)は、前記アモルファス又は微結晶のシリコンの層(3、8)に直接接している、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の電池。
【請求項6】
前記アモルファス又は微結晶のシリコンの層(8)は、前記結晶シリコン基板(1)と同じタイプのドーピングを有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の電池。
【請求項7】
前記アモルファス又は微結晶のシリコンの層(3)は、前記結晶シリコン基板(1)と反対のタイプのドーピングを有する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の電池。
【請求項8】
結晶酸化シリコン付加薄膜(12)を備え、前記結晶酸化シリコン付加薄膜(12)は、前記基板(1)とアモルファス又は微結晶のシリコンの付加層(8)との間であって前記基板(1)の他の面(1b)の上に直接配置され、前記アモルファス又は微結晶のシリコンの付加層(8)は、前記結晶シリコン基板(1)と同じタイプのドーピングを有する、ことを特徴とする請求項7に記載の電池。
【請求項9】
真性アモルファスシリコン又は微量ドーピングされたアモルファスシリコンの付加薄層(7)は、前記結晶酸化シリコン付加薄膜(12)と前記アモルファス又は微結晶のシリコンの付加層(8)との間に挿入される、ことを特徴とする請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記結晶酸化シリコン付加薄膜(12)は、前記アモルファス又は微結晶のシリコンの付加層(8)に直接接している、ことを特徴とする請求項8に記載の電池。
【請求項11】
前記結晶シリコン基板(1)の少なくとも1つの面(1a、1b)は凹凸状である、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の電池。
【請求項12】
アモルファス酸化シリコンの層は、前記結晶酸化シリコン薄膜と前記アモルファス又は微結晶のシリコンの層(3,8)との間であって、前記結晶酸化シリコン薄膜(11、12)の上に直接配置される、ことを特徴とする請求項1から11のいずれか1つに記載の電池。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1つに記載の太陽電池を少なくとも1つ製造する製造方法であって、前記アモルファス又は微結晶のシリコンの層(3、8)を形成する前に、前記基板(1)の表面をラジカル表面酸化することにより前記結晶酸化シリコン薄膜(11、12)を形成する、ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記ラジカル表面酸化は、酸素、及び/又は、オゾン、及び/又は、水から得られた酸素化ラジカルを用いて行われる、ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記基板(1)の表面の前記表面酸化は、前記表面に紫外線を照射することにより支援される、ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記酸化ラジカルは少なくとも酸素から得られ、前記紫外線は160nmから400nmの間の波長を有する、ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基板(1)の表面の前記表面酸化はプラズマにより支援される、ことを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項18】
前記基板(1)の表面の前記ラジカル表面酸化に続いて、ラジカル表面酸化の間に前記薄膜(11、12)の表面の上に形成されたアモルファス中にある酸化シリコンの一部を除去するためのストリッピングステップを行う、ことを特徴とする請求項13から17のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2013−518426(P2013−518426A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550488(P2012−550488)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【国際出願番号】PCT/FR2011/000050
【国際公開番号】WO2011/092402
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【Fターム(参考)】