説明

結束テープ用布帛及び結束テープ

【課題】結束機能と保護機能とを兼ね備えた上で、手切れ性の良い結束テープ用布帛及び結束テープを得る。
【解決手段】結束テープ10は、基材11と、同基材11における電線束Wの外周面と接触する裏面側に形成された粘着層12とから構成される。基材11は、1枚の布帛20から構成され、この布帛20はともにポリエステル繊維からなる経糸21と緯糸22とを用い、経編緯糸挿入形式で編まれた編布からなる。経糸21の太さが22〜56デシテックスで、緯糸22の太さが440デシテックス以上であり、かつ経糸21の密度が10〜30ウェール/インチである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス等を結束することに用いる結束テープ用布帛及び結束テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等に配設されるワイヤハーネスを構成する電線束を保護する対策として、コルゲートチューブを用いたものが知られている(特許文献1参照)。このものは、電線束に対して、PVC(ポリ塩化ビニル)、不織布等を基材とした粘着テープを巻いて(下巻き)結束し(結束機能)、そののち同電線束を、軸線方向に沿って切られたスリットを開きつつコルゲートチューブ内に収容し(保護機能)、さらにスリットの開き防止のためにコルゲートチューブの外周に上記の粘着テープが巻かれた(上巻き)構造となっている。しかしながらこのものは、作業工程が多く、また部品点数も多いことから、コスト高を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−353432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため近年、結束機能と保護機能とを兼ね備えた結束テープが種々提案されるようになったが、いずれもテープ基材の強度が高くて手で切ることができず、はさみ等の道具を用いる必要があるために、結局は作業に手間が掛かるという問題が残り、さらなる改良が切望されていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、結束機能と保護機能とを兼ね備えた上で、手で切ることができるすなわち手切れ性の良い結束テープ用布帛及び結束テープを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の結束テープ用布帛は、太さが22〜56デシテックスのポリエステル繊維からなる経糸と、太さが440デシテックス以上のポリエステル繊維からなる緯糸とにより経編緯糸挿入形式で編まれ、かつ前記経糸の密度が10〜30ウェール/インチであるところに特徴を有する。
【0006】
上記構成の布帛によれば、曲げ剛性等の適度の剛性を有し、電線束に巻いた場合にも破れることなく結束状態に保持できるすなわち結束機能が担保され、また適度な耐摩耗性を有しすなわち保護機能も担保される。一方、布帛を手で切る場合には、所定箇所における隣り合う緯糸同士の間を、経糸を切りつつ切り裂くことになるが、剪断強度が制限された太さ(22〜56デシテックス)の経糸が、比較的粗い密度(10〜30ウェール/インチ)で配されているから、布帛は、各経糸が少本数ずつ順次に切られながら、手で切り裂くことができる。すなわち手切れ性に優れている。
【0007】
結束テープ用布帛として、以下のような構成としてもよい。
(1)前記経糸と前記緯糸の少なくともいずれか一方が熱融着性を有しており、前記経糸と前記緯糸とが熱融着されている。経糸と緯糸とが熱融着された状態となっているから、布帛を手で切った場合に、切断部分において経糸の先等がほつれることが防止される。
(2)布帛が、粘着剤を介して複数層積層されている。手切れ性の良さを担保したまま、結束機能、保護機能を向上させることができる。
(3)前記緯糸のポリエステル繊維が、複数本のポリエステルフィラメントを撚った撚り糸により構成されている。繊維が分散することに起因して毛羽が出ることが抑制される。
(4)前記複数本のポリエステルフィラメントのうち一部のみが熱融着性を有している。熱融着性を有する緯糸を得る場合に安価に対応できる。
【0008】
また本発明の結束テープは、上記各構成の布帛の片面には、粘着層が形成されているところに特徴を有する。
各布帛の効果に対応した効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、結束機能と保護機能とを兼ね備えた上で、手切れ性の良い結束テープ用布帛及び結束テープを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1に係る結束テープの断面図
【図2】布帛を構成する編布の模式図
【図3】結束テープの巻物の斜視図
【図4】結束テープを電線束に巻き付ける形態を示す側面図
【図5】実施形態2に係る結束テープの断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1を図1ないし図4を参照しつつ説明する。この実施形態では、自動車に配線されるワイヤハーネスを構成する電線束Wを結束することに用いられる結束テープ10を例示する。電線束Wは、図4に示すように、複数本の被覆電線wあるいはシールド電線を一束に纏めたものである。
【0012】
結束テープ10は、基材11と、同基材11における電線束Wの外周面と接触する裏面側に形成された粘着層12とから構成されている。
基材11は、1枚の布帛20から構成されている。この布帛20は、ともにポリエステル繊維からなる経糸21と緯糸22とを用い、経編緯糸挿入形式で編まれた編布からなる。経編緯糸挿入形式の編布とは、図2に模式的に示すように、経糸21をループが連続した形態とし、緯糸22を同ループに挿通して形成された布である。
【0013】
より詳細には、経糸21は、熱融着性を有する複数本のポリエステルファイバ(単糸)を無撚り状態で纏めた糸からなり、この経糸21の太さとしては、22〜56デシテックス(dtex)が好ましい。22デシテックス未満では、剪断強度が小さ過ぎ、逆に56デシテックスを越えると、剪断強度が大きくなり過ぎる。
緯糸22は、複数本のポリエステルファイバ(単糸)を仮撚加工したポリエステル仮撚加工糸からなり、この緯糸22の太さとしては、440デシテックス以上が好ましい。440デシテックス未満であると、編布となった場合における曲げ剛性等の剛性が不足する。
【0014】
上記した太さを持った経糸21と緯糸22とが経編緯糸挿入形式で編まれることで編布が形成されるが、さらにその密度は、経糸21側では、10〜30ウェール(wale:本)/インチが好ましく、また緯糸22側では、40〜60コース(coarse:本)/インチが好ましい。
また、上記のように編まれた編布が熱処理されることによって、経糸21と緯糸22が熱溶着され、最終的な布帛20が完成される。
【0015】
このように形成された布帛20は、主に、上記のような太さ(440デシテックス以上)の緯糸22が、40〜60コース/インチの密度で編み込まれていることから、曲げ剛性等の適度の剛性を有し、電線束Wに巻いた場合にも破れることなく結束状態に保持できる、すなわち結束機能が担保される。
一方、保護機能については、耐摩耗性で評価される。「摩耗」について、同布帛20が電線束Wに巻かれた状態で布帛20が外部から荷重を受けた場合に、内側の電線束Wが外部に露出する程度に孔が開くことであるとすると、本実施形態の布帛20は、上記のように適度な剛性を保有することで、必要な耐摩耗性を有していると言える。これは、JISに規定された耐摩耗試験機でも実証され、すなわち保護機能も担保される。
【0016】
また、同布帛20を手で切る場合には、所定箇所における隣り合う緯糸22同士の間を、経糸21を切りつつ切り裂くことになるが、剪断強度が制限された太さ(22〜56デシテックス)の経糸21が、比較的粗い密度(10〜30ウェール/インチ)で配されているから、布帛20は、各経糸21が少本数ずつ順次に切られながら、手で切り裂くことができる。すなわち手切れ性に優れている。
ここで、経糸21の密度が30ウェール/インチを超えた高密度となると、一度に多数本の経糸21を切る必要があって、簡単には手で切ることができず、一方、10ウェール/インチ未満の低密度となると、不用意に切り裂かれてしまうおそれがある。
より好適な経糸21の密度は、18〜22ウェール/インチである。
【0017】
さらに、経糸21に熱融着性を有する繊維が用いられ、経糸21と緯糸22とが熱融着された状態となっているから、上記したように布帛20を手で切った場合に、切断部分において経糸21の先等がほつれることが防止される。
また、本実施形態の布帛20は、基本的には編布であって、適度な厚さと弾力性とを備えているから、布帛20に他部材が当たった場合の打音と、布帛20に他部材が擦られた場合の擦れ音を抑えることに優れ、すなわち消音性にも優れている。
なお緯糸22は、複数本のポリエステルファイバを撚った撚り糸により形成されているから、繊維が分散することに起因して毛羽が出ることが抑制される。
【0018】
結束テープ10は、以下のようにして製造される。図1に示すように、上記のように形成された基材11である1枚の布帛20の裏面に、粘着層12が形成される。粘着層12を構成する粘着剤には、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤が挙げられる。
このような裏面に粘着層12が形成された布帛20(基材11)が、緯糸22に沿った方向に所定間隔を開けて、経糸21に沿った方向に切断されることで、経糸21を長さ方向に沿って配した所定幅の結束テープ10が形成される。
結束テープ10の幅は例えば100mm未満に設定され、同結束テープ10は、図3に示すように、紙製の芯管31に巻き付けられた、いわゆる巻物30として準備される。
【0019】
そして、ワイヤハーネスの一部を構成する電線束Wを保護するに当たっては、同電線束Wに結束テープ10が手作業によって巻き付けられる。この実施形態では、図4に示すように、結束テープ10は、巻物30から繰り出されつつ、電線束Wの外周に対して、側縁をラップさせつつ螺旋巻きされ、裏面の粘着層12が電線束Wの外周面に接着される。ラップの形態は、全幅の1/4をラップさせる(1/4ラップ)、あるいは全幅の半分をラップさせる(ハーフラップ)等が挙げられる。
【0020】
電線束Wの所定長さ領域に亘って結束テープ10が巻き付けられたら、同結束テープ10を切る必要がある。結束テープ10は幅方向に沿って切られる、すなわち隣り合う緯糸22同士の間を経糸21を切りつつ切り裂くことになるが、上記したように同方向については、手切れ性に優れているから、簡単に手で切ることができる。ここで、経糸21と緯糸22とは熱融着されているから、切った後に経糸21の先等がほつれることが回避される。
【0021】
本実施形態の結束テープ10を電線束Wに巻き付けた場合は、以下のような利点を得ることができる。
結束テープ10の基材11(布帛20)は、所定の結束機能と保護機能とを有していることで、電線束Wを確実に結束しかつ保護することができる。
その上で、結束テープ10の装着は、同結束テープ10を、巻物30から繰り出しつつ、電線束Wの外周に対して、側縁をラップさせつつ螺旋状に巻き付けるだけでよく、特に、同結束テープ10は手切れ性に優れているから、所定の巻き付けが終わって切断する場合も、簡単に手で切ることができ、もって保護材としての結束テープ10の装着作業を能率良く行うことができる。
また結束テープ10は消音性に優れているから、振動等に伴ってワイヤハーネスが周辺の機材等に当たったり、擦れたりした場合の騒音の発生も有効に抑えることができる。
【0022】
<実施形態2>
図5は、本発明の実施形態2を示す。この実施形態では、結束テープ10Aの基材11Aが、上記実施形態1に例示した2枚の布帛20(編布)を接着剤25で貼り合わせた3層の積層構造となっている。接着剤25としては、ポリアミド系接着剤が例示される。また、同基材11Aの裏面には、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等の粘着剤を塗布した粘着層12が形成されている。
【0023】
本実施形態2に例示する基材11Aでは、3層構造とされていることにより剛性が高められ、結束機能が向上する。また、保護機能については、外部から荷重を受けた場合に、主に2枚の布帛20に荷重が分散し、すなわち応力緩和されることで摩耗し難いと考えられ、結果、保護機能は向上する。
一方、手切れ性については、基本的には、布帛20(編布)を構成する経糸21の太さと密度とによるから、それぞれ許容範囲内の小さい方に設定した布帛20(編布)を用いることにより、同布帛20を2枚備えた3層構造であっても、手切れ性の良いものとすることができる。
実施形態2の結束テープ10Aによれば、結束機能と保護機能とを向上させた上で、手切れ性にも優れたものにでき、消音性についてもさらに向上させることができる。
【0024】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、経糸が熱融着性を有している場合を例示したが、緯糸も含めて同特性を有していないものであってもよく、そのようなものも本発明の技術的範囲に含まれる。
(2)逆に熱融着性について、経糸に限らず、緯糸側、さらには経糸と緯糸の両方に同特性を持たせるようにしてもよい。なお、緯糸の場合は、同緯糸を構成する複数本のポリエステルフィラメントのうち一部のみに熱融着性を有するものを使用するようにしてもよい。
(3)布帛の積層構造は、同布帛を3枚以上用いた積層構造としてもよい。
【0025】
(4)上記実施形態では、緯糸を構成するポリエステル繊維が撚り糸である場合を例示したが、無撚りの糸であってもよい。
(5)結束テープの巻き付け方としては、上記実施形態に例示した螺旋巻きに限らず、両側縁をラップさせつつ円筒形をなして巻くいわゆるすし巻き状に巻く、また両側縁を合掌貼りしつつ円筒形をなして巻く等、他の巻き方を採用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10,10A…結束テープ
11,11A…基材
12…粘着層
20…布帛
21…経糸
22…緯糸
25…粘着剤
W…電線束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太さが22〜56デシテックスのポリエステル繊維からなる経糸と、太さが440デシテックス以上のポリエステル繊維からなる緯糸とにより経編緯糸挿入形式で編まれ、かつ前記経糸の密度が10〜30ウェール/インチであることを特徴とする結束テープ用布帛。
【請求項2】
前記経糸と前記緯糸の少なくともいずれか一方が熱融着性を有しており、前記縦糸と前記緯糸とが熱融着されていることを特徴とする請求項1記載の結束テープ用布帛。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の布帛が、粘着剤を介して複数層積層されていることを特徴とする結束テープ用布帛。
【請求項4】
前記緯糸のポリエステル繊維が、複数本のポリエステルフィラメントを撚った撚り糸により構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の結束テープ用布帛。
【請求項5】
前記複数本のポリエステルフィラメントのうち一部のみが熱融着性を有していることを特徴とする請求項4記載の結束テープ用布帛。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の布帛の片面には、粘着層が形成されていることを特徴とする結束テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−26717(P2011−26717A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171078(P2009−171078)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(594040198)東海サーモ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】