結束具
【課題】少なくとも一部が環状に巻かれた線状部材における該環状部分を結束する結束具において、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間を短縮する。
【解決手段】ファイバクリップ2は、可撓性を有するシート状部材12を備えており、シート状部材12に、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔22,32を、この第1及び第2孔22,32間に第1及び第2孔22,32が互いにつながるように切れ目42を、それぞれ形成する。そして、線状部材11の環状部分11aを切れ目42を介して第1及び第2孔22,32に挿通させることにより、シート状部材12が撓んだ状態で線状部材11の環状部分11aを結束する。
【解決手段】ファイバクリップ2は、可撓性を有するシート状部材12を備えており、シート状部材12に、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔22,32を、この第1及び第2孔22,32間に第1及び第2孔22,32が互いにつながるように切れ目42を、それぞれ形成する。そして、線状部材11の環状部分11aを切れ目42を介して第1及び第2孔22,32に挿通させることにより、シート状部材12が撓んだ状態で線状部材11の環状部分11aを結束する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が環状に巻かれた線状部材における該環状部分を結束する結束具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一部が環状に巻かれた光ファイバ心線などの線状部材におけるその環状部分を結束することが従来技術として知られている。
【0003】
このような線状部材の環状部分を結束する結束具として、例えば、特許文献1に示すものがある。この結束具は、線状部材を保持する丸穴状の収納部が形成され且つ径方向に弾性変形可能な可撓性を有する円筒状の集束体と、この集束体の外周面に嵌合されて収納部を緊締する弾性変形可能な環状の締結体とを備えている。集束体には、集束体の外周面と収納部とを連通して線状部材を収納部に導く切割部が形成されている。締結体には、線状部材を通過させ得る切欠部が形成されている。
【0004】
そして、特許文献1のものでは、線状部材を切割部から導いて、収納部に収めると、線状部材の本数や径の大きさに応じて、集束体と収納部との形状が変化して、線状部材は収納部内に束ねられる。一方、線状部材を切欠部から通過させて、切欠部と切割部とが同一方向にならないように、締結体を集束体に嵌合すると、収納部が締め付けられることにより、線状部材は緊締されると共に、収納部内の線状部材が切割部から抜け出さない。また、線状部材に曲げ応力が作用すると、集束体はこの応力に応じて、線状部材が折れ曲がらないように撓む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−42723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものでは、線状部材を結束する際において、線状部材を集束体の切割部から導いて、収納部に収めるとともに、締結体を集束体に嵌合する必要があるため、その作業に時間がかかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、少なくとも一部が環状に巻かれた線状部材における該環状部分を結束する結束具において、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、少なくとも一部が環状に巻かれた線状部材における該環状部分を結束する結束具であって、可撓性を有するシート状部材を備えており、上記シート状部材には、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔が、該第1及び第2孔間に該第1及び第2孔が互いにつながるように切れ目が、それぞれ形成されており、上記線状部材の上記環状部分を上記切れ目を介して上記第1及び第2孔に挿通させることにより、上記シート状部材が撓んだ状態で上記線状部材の上記環状部分を結束するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
これによれば、可撓性を有するシート状部材に、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔を、この第1及び第2孔間に第1及び第2孔が互いにつながるように切れ目を、それぞれ形成しており、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させることにより、シート状部材が撓んだ状態で線状部材の環状部分を結束する。このように、線状部材の環状部分を結束するのに、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させる作業だけで済むので、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間を短縮することができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記切れ目は、上記第1及び第2孔間を結ぶ直線に対して該直線方向と直交する方向の一方側に突出するように形成された少なくとも1つの突出部を有していることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、切れ目は、第1及び第2孔間を結ぶ直線に対してこの直線方向と直交する方向の一方側に突出するように形成された少なくとも1つの突出部を有している。そして、切れ目の突出部部分は、大きく開口させることができる。このため、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させる際において、線状部材の環状部分を切れ目に簡単に通すことができ、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間をより一層短縮することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記切れ目は、上記突出部に加えて、上記第1孔と該突出部との間に上記直線方向に延びるように形成された直線状の第1直線部と、上記第2孔と上記突出部との間に上記直線方向に延びるように形成された直線状の第2直線部とをさらに有していることを特徴とするものである。
【0013】
これによれば、切れ目は、突出部に加えて、第1孔と突出部との間に第1及び第2孔間を結ぶ直線方向に延びるように形成された直線状の第1直線部と、第2孔と突出部との間に直線方向に延びるように形成された直線状の第2直線部とをさらに有している。そして、切れ目の第1及び第2直線部部分は、大きく開口させることはできない。このため、線状部材の環状部分を結束した後において、結束具が線状部材の環状部分から脱落する(即ち、線状部材の環状部分が切れ目を介して第1及び第2孔から外れる)のを抑制することができる。
【0014】
第4の発明は、上記第2又は3の発明において、上記突出部は、V字状のものであることを特徴とするものである。
【0015】
これによれば、突出部をV字状のものにしているので、切れ目の突出部部分を簡単に形成することができる。
【0016】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記シート状部材は、紙をラミネート加工してなるものであることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、シート状部材を紙をラミネート加工してなるものにしているので、第1及び第2孔や切れ目を簡単に形成することができ、また、ラミネート加工することにより、シート状部材の強度や防水性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可撓性を有するシート状部材に、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔を、この第1及び第2孔間に第1及び第2孔が互いにつながるように切れ目を、それぞれ形成しており、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させることにより、シート状部材が撓んだ状態で線状部材の環状部分を結束しており、このように、線状部材の環状部分を結束するのに、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させる作業だけで済むので、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るファイバクリップを示す平面図である。
【図2】略環状に巻かれた光ファイバ心線をファイバクリップで結束した様子を示す平面図である。
【図3】ファイバクリップの光ファイバ心線への取付け工程の一部を示す斜視図である。
【図4】ファイバクリップの光ファイバ心線への取付け工程の一部を示す斜視図である。
【図5】ファイバクリップの光ファイバ心線への取付け工程の一部を示す斜視図である。
【図6】ファイバクリップの光ファイバ心線からの取外し工程の一部を示す斜視図である。
【図7】ファイバクリップの光ファイバ心線からの取外し工程の一部を示す斜視図である。
【図8】光ファイバ心線の端末保護具の側面図である。
【図9】図8のIX−IX線における矢視断面図である。
【図10】ストッパーの断面図である。
【図11】光ファイバ心線へのストッパーの取付状態を説明する図である。
【図12】光ファイバ心線に取り付けられた端末保護具を示す図9相当図である。
【図13】端末保護具を光ファイバ心線の端部から退避させた状態を説明する図である。
【図14】光ファイバ心線の端末保護具の斜視図である。
【図15】図14のXV方向の矢視図である。
【図16】図14のXVI方向の矢視図である。
【図17】図14のXVII方向の矢視図である。
【図18】図14のXVIII方向の矢視図である。
【図19】図14のXIX方向の矢視図である。
【図20】光ファイバ心線に取り付けられた端末保護具を示す図15相当図である。
【図21】光ファイバ心線に取り付けられた端末保護具を示す図18相当図である。
【図22】折り曲げ前の保護カバーを示す図である。
【図23】端末保護具の組立状況を説明する図である。
【図24】端末保護具の組立状況を説明する図である。
【図25】端末保護具の組立状況を説明する図である。
【図26】端末保護具の組立状況を説明する図である。
【図27】光ファイバ心線への端末保護具の取付状態を説明する図である。
【図28】光ファイバ心線への端末保護具の取付状態を説明する図である。
【図29】光ファイバ心線を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は、(a)のXXIXb−XXIXb線における矢視断面図である。
【図30】光ファイバ心線への端末保護具の取付状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係るファイバクリップの平面図であり、図2は、略円環状に巻かれた光ファイバ心線をファイバクリップで結束した様子を示す平面図であり、このファイバクリップ2(結束具)は、少なくとも一部(図2では両端部以外の部分)が略円環状に巻かれた可撓性且つ弾性を有する医療用の光ファイバ心線11(線状部材)におけるその環状部分11aを結束することにより、その束形状を保持するものであって、光ファイバ心線11端(以下、光ファイバ心線11端を「被保護部」とも言う)を研磨したり、光ファイバ心線11端の外被を除去したりする等、光ファイバ心線11を端末加工するときや、光ファイバ心線11を運搬するとき、光ファイバ心線11を出荷梱包するときなどに用いられる。ファイバクリップ2は、光ファイバ心線11の環状部分11aを少なくとも1箇所結束するため、光ファイバ心線11に少なくとも1つ取り付けられており、図2では、例えば、光ファイバ心線11の環状部分11aを2箇所結束するため、光ファイバ心線11に2つ取り付けられている。光ファイバ心線11の環状部分11aは、二重以上に巻かれており、図2では、例えば、四重に巻かれている。尚、図2では、光ファイバ心線11の両端部以外の部分を略円環状に巻いているが、これに限らず、例えば、光ファイバ心線11の運搬時や出荷梱包時など、光ファイバ心線11の略全部を略円環状に巻いてもよい。
【0022】
ファイバクリップ2は、紙をラミネート加工(パウチ加工)してなる可撓性且つ弾性を有するシート状部材12からなる。ラミネート加工は、例えば以下のように行う。つまり、紙(シート)を、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPE(ポリエチレン)などの樹脂製のシートに接着剤を塗布してなるラミネートシートで挟み込んで熱や圧力をかけることで、紙をラミネートシートで覆うことにより行う。ラミネートシートや接着剤は、透明のものであるのが望ましい。こうすることにより、紙に記載・表示した情報を視認することができ、また、それを保護することができる。また、ラミネートシートは、一層でもよいが、積層してもよい。
【0023】
シート状部材12は、長方形状のシート状部材の四隅部をそれぞれ三角形状に切り取ったような八角形状のものである。シート状部材12の長手方向長さ(横)は、例えば44mm、その短手方向長さ(縦)は、例えば17mm、その厚さは、例えば300μm〜600μmであり、400μm〜600μmであれば、線状部材の保持力やシート状部材12そのものの耐久性が向上するので好ましい。シート状部材12は、光ファイバ心線11へ取り付けていないときには、水平状態になっている。シート状部材12は、例えば、両面にラミネートフィルム(パウチフィルム)がそれぞれ1枚ずつ積層・接着された図面用紙をカッターで切ってなる。以下の説明では、シート状部材12の長手方向を左右方向と、その短手方向を上下方向とする。また、シート状部材12の図1で見える側の面を表面と、見えない側の面を裏面とする。
【0024】
シート状部材12には、互いに左右方向に所定間隔を隔てるように円状の第1及び第2孔22,32が、この第1及び第2孔22,32間に第1及び第2孔22,32が互いにつながるように切れ目(切り込み)42が、それぞれ貫通形成されている。つまり、第1孔22、切れ目42、及び第2孔32は、左右方向に連続している。第1孔22は、シート状部材12の左端部の上下方向中央部に、第2孔32は、シート状部材12の右端部の上下方向中央部に、それぞれ形成されている。第1及び第2孔22,32の直径は、光ファイバ心線11の環状部分11aが挿通可能な互いに同じ長さであり、例えば5mmである。第1孔22の中心から第2孔32の中心までの距離(即ち、上記所定間隔)は、例えば29mmである。第1及び第2孔22,32は、例えば、パンチで打ち抜かれている。
【0025】
上記切れ目42は、非直線状のものである。具体的には、切れ目42は、第1及び第2孔22,32の中心間を結ぶ直線L(図1のみ図示)に対して下側(即ち、その直線Lの延びる方向と直交する方向の一方側)に突出するように形成されたV字状の1つの突出部42aと、第1孔22と突出部42aとの間に左右方向(直線L方向)に延び且つ第1孔22と突出部42aとが互いにつながるように形成された一直線状の第1直線部42bと、第2孔32と突出部42aとの間に左右方向に延び且つ第2孔32と突出部42とが互いにつながるように形成された一直線状の第2直線部42cとを有している。突出部42aの左右方向長さは、例えば14mm、その上下方向長さは、例えば5mmである。第1及び第2直線部42b,42cは、第1及び第2孔22,32の上下方向中央から左右方向の内側にそれぞれ直線Lに重なるように延びている。第1及び第2直線部42b,42cの左右方向長さは互いに同じ長さであり、突出部42aの左右方向長さよりも短い。切れ目42は、例えば、カッターで切られている。
【0026】
尚、シート状部材12の表面は、結束する線状部材に関する情報や作業記録などを記載・表示可能に構成してもよい。
【0027】
−ファイバクリップの光ファイバ心線への脱着方法−
以下、図3〜図7を参照しながら、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11への脱着方法について説明する。
【0028】
先ず、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11への取付け方法の一例について説明する。最初に、シート状部材12における切れ目42の上側部分を保持した状態で、シート状部材12における切れ目42の下側部分を切れ目42の上側部分に対してその裏面側に折り曲げることにより、切れ目42を開口させる。そして、図3に示すように、光ファイバ心線11の環状部分11aを開口した切れ目42に挟む。それから、図4、図5に示すように、シート状部材12における第1及び第2直線部42b,42cの下側部分をそれぞれその裏面側から順に押し上げる。すると、光ファイバ心線11の環状部分11aが、第1及び第2孔22,32の左右方向の外側でシート状部材12の表面側を、第1及び第2孔22,32間(第1及び第2孔22,32の左右方向の内側)でその裏面側を通った状態で、第1及び第2孔22,32に挿通されるとともに、シート状部材12が弾性変形してその左右方向中央部が両端部よりもその表面側に突出するように撓む。このようにして、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11の環状部分11aに取り付けられ、光ファイバ心線11の環状部分11aがファイバクリップ2で結束される。
【0029】
ところで、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11への取付け時には、上述のように、シート状部材12は撓んでいるため、元の水平状態に戻ろうとする。また、ファイバクリップ2で結束された光ファイバ心線11の環状部分11aの束のうち、光ファイバ心線11の端部(即ち、光ファイバ心線11のうちファイバクリップ2と光ファイバ心線11端との間の一直線状の部分(以下、直線状部分11bとも言う))に連続する1本が、元の直線状に戻ろうとして第1及び第2孔22,32内で外側に広がろうとする。そして、シート状部材12が水平状態に戻ろうとする弾性力(復元力)と光ファイバ心線11の環状部分11aの束のうち1本が第1及び第2孔22,32内で外側に広がろうとする弾性力とによって、ファイバクリップ2による光ファイバ心線11の結束位置が任意の位置に保持される。
【0030】
また、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11への取付け時には、上述のように、光ファイバ心線11の環状部分11aは第1及び第2孔22,32に挿通されているため、シート状部材12は光ファイバ心線11の環状部分11aに案内されてこれに沿ってスライド移動可能になっている(図2の二点鎖線を参照)。このシート状部材12のスライド移動によって、ファイバクリップ2による光ファイバ心線11の結束位置が変更される。そして、ファイバクリップ2による光ファイバ心線11の結束位置を変更すると、光ファイバ心線11の直線状部分11bの長さが変更される。
【0031】
次に、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11からの取外し方法の一例について説明する。最初に、図6に示すように、シート状部材12における切れ目42の下側部分を切れ目42の上側部分に対してその裏面側に折り曲げることにより、切れ目42を開口させる。すると、図7に示すように、光ファイバ心線11の環状部分11aが開口した切れ目42を通ってその外側に出る。このようにして、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11の環状部分11aから取り外される。
【0032】
以上のように、ファイバクリップ2は光ファイバ心線11に対してワンタッチで脱着することができる。
【0033】
ところで、光ファイバ心線11の環状部分11aをビニタイや紐などで巻き付けたり、スパイラルチューブやテープなどで固定したりすることにより、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束することが一般的に知られている。
【0034】
しかしながら、光ファイバ心線11の環状部分11aをビニタイなどで結束する場合、その作業に時間がかかる。同様に、ビニタイなどを光ファイバ心線11から取り外す場合も、その作業に時間がかかる。また、光ファイバ心線11を端末加工する場合、その作業性を向上させるため、光ファイバ心線11の端部を直線状にすることが通常行われている。このため、その光ファイバ心線11端部近傍のビニタイなどを光ファイバ心線11から一旦取り外す必要があるが、光ファイバ心線11の端末加工の作業終了後、光ファイバ心線11の環状部分11aをビニタイなどで再結束しなければならず、結局、その作業に時間がかかる。このように、ビニタイなどを光ファイバ心線11から一旦取り外した後、光ファイバ心線11の環状部分11aをビニタイなどで再結束する場合、その際に光ファイバ心線11を擦るなどして、光ファイバ心線11が損傷する虞もある。また、光ファイバ心線11の環状部分11aをテープで固定すると、その粘着剤が光ファイバ心線11に付着する虞もある。
【0035】
ここで、本実施形態によれば、上述のように、ファイバクリップ2は光ファイバ心線11に対してワンタッチで脱着することができるため、その脱着作業に時間がかからず、ひいては、光ファイバ心線11の端末加工の作業に時間がかからない。また、上述のように、ファイバクリップ2による光ファイバ心線11の結束位置を変更することにより、光ファイバ心線11の直線状部分11bの長さを変更することができるため、そもそも、光ファイバ心線11を端末加工する際にファイバクリップ2を光ファイバ心線11から取り外す必要がない。このため、光ファイバ心線11が損傷するのを抑制することができる。さらに、接着剤が光ファイバ心線11に付着する虞もない。
【0036】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、可撓性を有するシート状部材12に、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔22,32を、この第1及び第2孔22,32間に第1及び第2孔22,32が互いにつながるように切れ目42を、それぞれ形成しており、光ファイバ心線11の環状部分11aを切れ目42を介して第1及び第2孔22,32に挿通させることにより、シート状部材12が撓んだ状態で光ファイバ心線11の環状部分11aを結束する。このように、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束するのに、光ファイバ心線11の環状部分11aを切れ目42を介して第1及び第2孔22,32に挿通させる作業だけで済むので、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束する際の作業時間を短縮することができる。
【0037】
また、切れ目42は、第1及び第2孔22,32間を結ぶ直線Lに対してこの直線L方向と直交する方向の一方側に突出する1つの突出部42aを有している。そして、切れ目42の突出部42a部分は、大きく開口させることができる。このため、光ファイバ心線11の環状部分11aを切れ目42を介して第1及び第2孔22,32に挿通させる際において、光ファイバ心線11の環状部分11aを切れ目42に簡単に通すことができ、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束する際の作業時間をより一層短縮することができる。
【0038】
また、切れ目42は、突出部42aに加えて、第1孔22と突出部42aとの間に第1及び第2孔22,32間を結ぶ直線L方向に延びるように形成された直線状の第1直線部42bと、第2孔32と突出部42aとの間に直線L方向に延びるように形成された直線状の第2直線部42cとをさらに有している。そして、切れ目42の第1及び第2直線部42b,42c部分は、大きく開口させることはできない。このため、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束した後において、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11の環状部分11aから脱落する(即ち、光ファイバ心線11の環状部分11aが切れ目42を介して第1及び第2孔22,32から外れる)のを抑制することができる。
【0039】
また、突出部42aをV字状のものにしているので、切れ目42の突出部42a部分を簡単に形成することができる。
【0040】
また、シート状部材12を紙をラミネート加工してなるものにしているので、第1及び第2孔22,32や切れ目42を簡単に形成することができ、また、ラミネート加工することにより、シート状部材12の強度や防水性を向上させることができる。
【0041】
(実施形態2)
本実施形態は、上記ファイバクリップ2を用いることによる端末加工の作業効率を維持しながら、光ファイバ心線11の不良発生をより一層抑えるために、端末保護具を用いるものである。
【0042】
より詳しくは、上記光ファイバ心線11の端部に作業者の手等が当たったりすることによって、端部が損傷する虞がある。このような、端部の損傷を抑えるために、ファイバクリップ2に結束された光ファイバ心線11の端部には、ファイバクリップ2とともに1つの端末加工用ユニットを構成する端末保護具1が取り付けられている。
【0043】
このように、光ファイバ心線11の両端部に端末保護具1を取り付けた場合は、即ち、ファイバクリップ2と端末保護具1,1とを端末加工用ユニットとして用いる場合は、端部の加工を行う際、後述するように端末保護具1を光ファイバ心線11の先端とは反対側にスライドさせて退避させ、光ファイバ心線11の一端を研磨したり、検査したりする。そうして、各工程が終了すると、端末保護具1を光ファイバ心線11の先端側にスライドさせる。
【0044】
以下、実施形態1と異なる点、即ち、端末保護具1について説明する。
【0045】
図8は、光ファイバ心線の端末保護具の側面図であり、図9は、図8のIX−IX線における矢視断面図であり、図12は、光ファイバ心線への端末保護具の取付状態を説明する図である。この端末保護具1は、光ファイバ心線11の端部(一端部)11eを保護するためのものである。尚、本実施形態では、光ファイバ心線11の被保護部31とは、研磨端(加工部)又は加工予定部に余裕長(約5mm)を加えた部分を意味する。
【0046】
端末保護具1は、光ファイバ心線11を挿通可能な孔部33aが形成されたストッパー(固定部材)33と、当該ストッパー33に装着される、光ファイバ心線11の被保護部31を保護するための保護チューブ(保護部材)57とを備えており、これらストッパー33と保護チューブ57とは、別体に形成されている。
【0047】
ストッパー33は、ポリ塩化ビニル(PVC)製であり、図10に示すように、孔部33aが形成された一端から、他端に向けて外径が拡径するように形成されている。具体的には、ストッパー33は、孔部33aが形成された頂部33bと、当該頂部33bよりも外径が大きい胴部33cとを有していて、全体として略錘状をなしている。
【0048】
この孔部33aは、光ファイバ心線11を挿通可能であればよく、光ファイバ心線11の外径に対して極端に小さかったり、大きかったりしなければ、その内径は特に規定されない。すなわち、孔部33aの孔径は、光ファイバ心線11の外径よりも僅かに大きくてもよいし、僅かに小さくてもよい。例えば、孔部33aの孔径を光ファイバ心線11の外径と略等しい径とすれば、ストッパー33が弾性材料(PVC製)であることから、ファイバ軸方向に力を加えると、孔部33aの周壁が光ファイバ心線の外被11bに弾性的に接触しながらファイバ軸方向に摺動する一方、ファイバ軸方向に力を加えなければ、孔部33aの周壁と光ファイバ心線の外被11bとの摩擦により、光ファイバ心線11上の所望の位置に止まるという効果が得られる。
【0049】
保護チューブ57は、ラミネートフィルム等に用いられるポリエチレンテレフタレートからなる透明な樹脂成形品であり、筒状に形成されている。この保護チューブ57は、光ファイバ心線11の外径よりも大きい内径を有し、且つ、ストッパー33の最大外径よりも小さい内径を有する筒状であり、端末保護具1が光ファイバ心線11に取り付けられると、その被保護部31を径方向に間隔をあけて囲む。
【0050】
保護チューブ57とストッパー33とは、保護チューブ57の筒軸方向一方側にストッパー33をその頂部33b側から圧入することで接続されるようになっており、ストッパー33の柔軟性は保護チューブ57の柔軟性よりも大きく設定されている。
【0051】
ここで、「柔軟性」とは、「硬さ」や「形状」などに起因するものであるが、本実施形態では、複雑な形状によるコストの上昇を避けるために、「柔軟性」を硬さで規定した。換言すると、「形状」による要因を考慮しなくても、使用する材料の硬さの大小によって柔軟性が定性的に評価できるように、ストッパー33及び保護チューブ57の材料を選定した。つまり、ストッパー33の硬さが、保護チューブ57の硬さより小さければよく、その組合せとしては、例えば、本実施例の如く、ポリエチレンテレフタレート(ロックウエル硬さ(M)95)からなる保護チューブ57と、ポリ塩化ビニル(ロックウエル硬さ(M)72)からなるストッパー33を組み合わせることが望ましい。
【0052】
このような硬さのストッパー33と保護チューブ57とを組み合わせることにより、孔部33aに光ファイバ心線11が挿通されたストッパー33を、保護チューブ57に圧入させることで孔部33aが変形し、保護チューブ57がストッパー33を介して光ファイバ心線11の外周に固定される。より詳しくは、ストッパー33が頂部33b側から保護チューブ57に圧入されると、頂部33b及び胴部33cが圧縮されて孔部33aが窄まる(変形する)。このように、孔部33aが窄まることで、光ファイバ心線11に対するストッパー33による締付力が発生し、ストッパー33が光ファイバ心線11の被保護部31近傍に強固に固定される。尚、ストッパー33の圧縮度合いに応じて孔部33aは窄まるので、ストッパー33による光ファイバ心線11に対する締付力は、保護チューブ57の圧入の程度によって調整可能となっている。
【0053】
次いで、端末保護具1の使用方法について説明する。
【0054】
この端末保護具1は、光ファイバ心線11の研磨が行われる前、例えば、光ファイバ心線11の端部をディスクカッタ等で切断した後に、光ファイバ心線11に取り付けられる。この際、光ファイバ心線11に対するストッパー33の変形による締付力が発生しないように、先ず、ストッパー33のみを光ファイバ心線11の被保護部31近傍に取り付ける。すなわち、図11に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31を、保護チューブ57に圧入していないストッパー33の孔部33aに挿入して、当該ストッパー33のみを光ファイバ心線11の被保護部31近傍(外被11bの先端から5mm以上離れた位置)に係止させる。
【0055】
次いで、保護チューブ57の内部に光ファイバ心線11の被保護部31が収まるように、保護チューブ57をストッパー33の頂部33bに近づけ、図12に示すように、保護チューブ57をその頂部33b側から保護チューブ57の内部に圧入する。これにより、ストッパー33の胴部33c及び頂部33bが圧縮されて孔部33aが窄まり、ストッパー33による締付力が発生するので、端末保護具1が光ファイバ心線11の被保護部31近傍に強固に固定される。
【0056】
ここで、ストッパー33は、その全長に亘って光ファイバ心線の外被11bに接触しているのではなく、頂部33bの略肉厚分の小さい面積でしか光ファイバ心線の外被11bに接触していないので、当該ストッパー33に接続される保護チューブ57は、ファイバ軸方向に対し傾き易くなっているが、このような締付力が発生することで保護チューブ57がセンタリングされる(保護チューブ57の軸心とファイバ軸心とが略一致する)。
【0057】
そうして、フラット研磨又は斜め研磨する工程等、光ファイバ心線11の被保護部31を加工するときは、図13に示すように、端末保護具1(保護チューブ57を取り外したストッパー33のみでもよい)を、光ファイバ心線11の被保護部31側とは反対側に摺動(スライド)させて光ファイバ心線11の被保護部31から退避させる。
【0058】
一方、工程間搬送等、光ファイバ心線11を加工していないときは、端末保護具1を、光ファイバ心線11の先端側にスライドさせて、図12に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31を径方向に間隔をあけて囲むことにより保護する。尚、保護チューブ57を透明とすることで、端末保護具1が光ファイバ心線11に取り付けられていても、光ファイバ心線11の被保護部31の状態(欠けや汚れの発生)の確認が容易となる。
【0059】
そうして、例えば、光ファイバ心線11の被保護部31の外被11bを除去して内部の光ファイバ素線を露出させる工程の前に、端末保護具1を光ファイバ心線11から取り外す。この場合には、保護チューブ57をストッパー33から取り外してから、ストッパー33を光ファイバ心線11の先端側にスライドさせて、光ファイバ心線11から抜き取る。この際、ストッパー33の孔部33aの周壁が、光ファイバ心線11の被保護部31と不可避的に接触するが、上述の如く、保護チューブ57を取り外すことでストッパー33の変形による締付力が消失していること、及び、ストッパー33は小さい面積でしか光ファイバ心線11に接触しないことから、ストッパー33を光ファイバ心線11から抜き取る際にも、加工部は損傷し難い。
【0060】
−効果−
本実施形態によれば、保持具2とともに1つの端末加工用ユニットを構成する端末保護具1,1を用いることにより、作業効率を維持しつつ、光ファイバ心線11の不良発生をより一層抑えることができる。
【0061】
さらに、ストッパー33の柔軟性が保護チューブ57の柔軟性よりも大きいことから、ストッパー33を保護チューブ57に圧入又は嵌合させることで、ストッパー33の孔部33aが変形する。これにより、光ファイバ心線11に対するストッパー33による締付力が発生するので、端末保護具1を光ファイバ心線11上の所望の位置により確実に止めることができる。したがって、端末保護具1が作業の邪魔にならず、また、当該端末保護具1を端末より必要以上に離さなくても良くなるので、保護具の着脱にかかる時間が短縮され、作業効率の低下が抑えられる。
【0062】
また、ストッパー33が圧縮されるほどその孔部33aが変形するので、光ファイバ心線11に対するストッパー33による締付力を、ストッパー33の保護チューブ57への圧入の程度によって調整することができる。そうして、端末保護具1を光ファイバ心線11から取り外す際には、ストッパー33と保護チューブ57とを分離することによって、ストッパー33の変形による締付力が消失するので、ストッパー33を光ファイバ心線11から引き抜き易くなるとともに、ストッパー33と光ファイバ心線11の被保護部31とが接触し難くなる。
【0063】
一方、保護チューブ57は、ストッパー33を介して光ファイバ心線11の外周に固定されるので、光ファイバ心線11に接触することがない。これにより、光ファイバ心線11の被保護部31を保護するために、端末保護具1を光ファイバ心線11の先端側に移動させても、又は、光ファイバ心線11の被保護部31を露出させるために、端末保護具1を光ファイバ心線11の被保護部31から遠ざけても、ストッパー33が被保護部31近傍の外被に接触するだけで、端末保護具1は光ファイバ心線11の被保護部31と接触し難い。
【0064】
以上により、光ファイバ心線11の被保護部31の保護及び露出を複数回繰り返す場合にも、光ファイバ心線11の被保護部31が損傷するのを抑えつつ、光ファイバ心線11の被保護部31の保護及び露出を容易に行うことができる。
【0065】
また、ストッパー33は頂部33b側から胴部33cに向けて外径が拡径するように形成されていることから、当該ストッパー33を孔部33aが形成された頂部33b側から筒状の保護チューブ57に圧入し易くなる。さらに、保護チューブ57は、ストッパー33の最大外径よりも小さい内径を有しているので、ストッパー33を保護チューブ57に圧入することで、当該ストッパー33を確実に変形させることができる。
【0066】
さらに、保護チューブ57として透明な樹脂成形品を用いているので、端末加工の際、端末保護具1で保護された光ファイバ心線11の被保護部31の状態を容易に確認することができる。
【0067】
−実施形態2の変形例−
本変形例は、上記ストッパー33及び保護チューブ57を用いた端末保護具とは、構造が異なる端末保護具1を用いたものである。より詳しくは、上記ストッパー33及び保護チューブ57を用いた端末保護具は、光ファイバ心線11上の所望の位置に止まることから、その着脱に関わる時間短縮は達成できるが、少なくとも着ける際又は外す際に光ファイバ心線11の被保護部31に接触する可能性があるため、本変形例では、光ファイバ心線11の被保護部31への接触がない構造を採用している。以下、本変形例の端末保護具1について説明する。
【0068】
本変形例の端末保護具1は、ファイバクリップ2に結束された光ファイバ心線11の両端部に取り付けられることで、ファイバクリップ2とともに、作業効率を維持しつつ光ファイバ心線11の不良発生をより一層抑えるための、端末加工用ユニットとして用いられる。この場合、端末保護具1を光ファイバ心線11から取り外し、光ファイバ心線11の一端の研磨などを行う。そうして、各工程が終了すると、加工された端部に端末保護具1を取り付ける。
【0069】
図14〜図19は、本変形例に係る端末保護具を示し、図20及び図21は、光ファイバ心線に取り付けられた端末保護具を示す。この端末保護具1は、光ファイバ心線11の被保護部31を保護するためのものである。
【0070】
尚、本変形例では、光ファイバ心線11の被保護部31とは、外被11bが取り除かれていない場合は、研磨端(加工部)及び加工予定部に余裕長(約5mm)を加えた部分を意味し、外被11bが取り除かれている場合は、光ファイバ素線11aに余裕長(約5mm)を加えた部分を意味する。また、以下の説明では、保護カバー7の開口47側を上側とし、保護カバー7の底壁部17側を下側とし、保護カバー7の長手方向におけるクリップ3で挟まれていない側を前側とし、保護カバー7の長手方向におけるクリップ3で挟まれている側を後側とする。
【0071】
また、光ファイバ心線11の軸方向とは、図29(a)に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31(光ファイバ素線11a)の中心軸の延びる方向Aを意味し、光ファイバ心線11の径方向とは、図29(b)に示すように、軸方向Aと垂直な方向Dを意味する。尚、図29(b)に示す8つの径方向Dは例示であり、中心軸から放射状に延びる他の方向も径方向Dに含まれる。
【0072】
端末保護具1は、図20及び図21に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31を全周に亘って囲むように構成されている。この端末保護具1は、クリップ(挟持部材)3と、ゴムシート(弾性部材)5と、保護カバー(保護部材)7と、保護チューブ9とを備えている。
【0073】
クリップ3は、公知のクリップであれば限定されないが、中でも挟持力、作業性の点で、ターンクリップ(ダブルクリップ:固定金具部15mm)が好ましく、ターンクリップは、断面略二等辺三角形状に形成され且つその頂部(はさみ口)23aが開閉する固定金具部23と、当該はさみ口23aを梃子の原理で開く相対向する一対の開閉レバー13,13とを有している。開閉レバー13,13は、その一方側の端部(固定端)が、固定金具部23のはさみ口23aにそれぞれ回動自在に連結されている。
【0074】
固定金具部23は、作業者が、例えば親指と人差し指とで開閉レバー13,13の他方側の端部(自由端)をつまみ、当該自由端同士が接近するように両方の指に力を加えることで、はさみ口23aが開く一方、当該自由端同士が遠ざかるように両方の指の力を抜くことで、はさみ口23aが閉じるように構成されている。固定金具部23は、保護カバー7の前後方向(長手方向)の一部、具体的には、保護カバー7の前後方向中央よりも後側の部分(後端部)と、後述の如く保護カバー7の内側に配設されたゴムシート5とを挟んでおり、これにより、クリップ3は、保護カバー7に装着されるとともに、光ファイバ心線11の被保護部31近傍を保護カバー7及びゴムシート5を介して挟持するようになっている。
【0075】
ゴムシート5は、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)製シートであり、図23に示すように、ゴムシート本体15と、当該ゴムシート本体15の長手方向中央部に取り付けられる補助ゴムシート25とを有している。このゴムシート5は、その長手方向中央部が、図17及び図24に示すように、保護カバー7の後端部(重合挟持部7a)に当該保護カバー7の内面に沿うように重ね合わされていて、当該長手方向中央部が保護カバー7を介して固定金具部23に挟まれる一方、長手方向両端部が開閉レバー13,13に係合している。換言すると、ゴムシート5は、略W字状に折り曲げられていて、断面W字状のクリップを上方にオフセットしたような態様で、当該Wクリップに巻き付けられている。
【0076】
ゴムシート本体15は、長方形状に形成されており、四隅が隅切りされているとともに、クリップ3の開閉レバー13,13を挿通するための挿通孔15a,15a,…がパンチ穴加工によって両端部に2つずつ形成されている。補助ゴムシート25は、固定金具部23に挟まれたゴムシート5及び保護カバー7と当該固定金具部23との密着性が高まるように、ゴムシート5の厚みを増すために用いられるものであり、両面テープ(図示せず)によってゴムシート本体15に取り付けられている。
【0077】
このように、クリップ3がゴムシート5を介して光ファイバ心線11を挟み込むことで、光ファイバ心線の外被11bのある部分を弾性的に挟持するようになっているので、換言すると、固定金具部23が光ファイバ心線11を直接挟み込むことがないので、光ファイバ心線11の外被11bの剥離や、固定金具部23と外被11bとの間に生じる滑りが抑えられる。つまり、ゴムシート5は、光ファイバ心線11に対する保護材としての役割のみならず、端末保護具1の摺動に対するブレーキとしての役割も備えている。
【0078】
保護カバー7は、細長に(前後方向に延びるように)形成され、底壁部17と側壁部27,27と傾斜壁部37,37とを有していて、図20及び図21に示すように、光ファイバ心線11に接触することなく、当該光ファイバ心線11の被保護部31を3方向(左右方向及び下方向)から囲むように断面略コ字状をなしている。換言すると、当該保護カバー7には、両側壁部27,27の上端によって区画される、光ファイバ心線11を上側(光ファイバ心線11の径方向D)から挿通することが可能であり且つ光ファイバ心線11に取り付けられた状態では当該光ファイバ心線の軸方向(ファイバ軸方向)Aと略平行に(前後方向に)延びる開口47が形成されている。
【0079】
保護カバー7は、図22に示す略長方形状に切り抜いた透明なラミネートフィルム(ポリエチレンテレフタレート、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等の樹脂成形品)を折り曲げたものであり、可撓性を有している。尚、底壁部17と側壁部27,27との境目及び側壁部27,27と傾斜壁部37,37との境目には、硬質針等で折線を引くことで浅い溝が形成されていて、折り曲げ易くなっている。この保護カバー7は、前端側では、図16に示すように、底壁部17と両側壁部27,27とが直角をなすように折り曲げられていて、両側壁部27,27の上端同士が離間して開口47を形成している一方、後端側では、図17に示すように、中央で折り曲げられた補助ゴムシート25に巻き付くように底壁部17と両側壁部27,27の下端部とが円弧状に湾曲し、且つ、クリップ3のはさみ口23aで挟まれることで両側壁部27,27の上端同士が近接している。
【0080】
保護カバー7は、可撓性を有しており、当該保護カバー7の内面に沿うように重ね合わされ且つクリップ3に巻き付けられたゴムシート5と、当該保護カバー7を外側から挟む固定金具部23とでサンドウィッチ状に挟まれることで、重合挟持部7a(ゴムシート5が重ね合わされ且つクリップ3で挟まれた部分)の開口47が、固定金具部23の開閉に伴って開閉するようになっている。より詳しくは、保護カバー7は、開閉レバー13,13の自由端同士が接近することで、前後方向全長に亘って開口47が形成されて、光ファイバ心線11を上方(ファイバ軸方向Aと直交する方向)から受け容れることが可能となる一方、開閉レバー13,13の自由端同士が遠ざかることで、開口47の一部が閉じて、光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定される。これにより、保護カバー7は、図20に示すように、クリップ3がゴムシート5を介して光ファイバ心線11を挟持することにより、重合挟持部7aが当該光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定されるようになっている。
【0081】
このように、クリップ3で光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定された保護カバー7は、重合挟持部7aよりも前側の部分(以下、開放部分という)のうち、前後方向中央よりも後側の部分で、光ファイバ心線11の被保護部31を非接触状態で三方向から囲んでいる。すなわち、保護カバー7は、重合挟持部7aが光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定された状態で、当該重合挟持部7aよりも前側(光ファイバ心線一端側)の部分が、光ファイバ心線11に接触しないようになっている。この保護カバー7には、当該保護カバー7よりも前後方向(開口47が延びる方向)に短く、且つ、当該保護カバー7に対して前後方向に摺動可能な上記保護チューブ9が嵌められている。
【0082】
保護チューブ9は、透明なスミチューブA(商品名)を20mmに切断したものであり、開放部分の略半分の長さを有している。この保護チューブ9は、端末保護具1が光ファイバ心線11に取り付けられていない状態では、開放部分のうち前後方向中央よりも前側の部分に位置しており、端末保護具1が光ファイバ心線11に取り付けられると、開放部分の後側にスライドして、光ファイバ心線11の被保護部31を全周に亘って覆うようになっている。
【0083】
保護カバー7の各側壁部27,27の前端部には、保護チューブ9の脱落を防止するために、上方に突出する突起部27a,27aが形成されている。また、開放部分の後側には、後側にスライドさせた保護チューブ9を張った状態にして固定するために、両側壁部27,27の上端から上方に行くほど外側に傾斜して断面ハ字状に拡がる傾斜壁部37,37が形成されている。各傾斜壁部37,37の前端部は、保護チューブ9が後側へ円滑にスライドするように(傾斜壁部37,37に乗り上げ易くなるように)隅切り部37a,37aが形成されている。
【0084】
−変形例の端末保護具の組立及び取付手順−
先ず、図23に示すように、ゴムシート本体15の中央部に両面テープを用いて補助ゴムシート25を取り付ける。次いで、図24に示すように、保護カバー7とゴムシート5とが逆T字状をなすように、ゴムシート5(補助ゴムシート25)の中央部に両面テープを用いて保護カバー7の重合挟持部7a(後端部)を取り付ける。
【0085】
そうして、図25に示すように、ゴムシート5をその両端が上方を向くように折り畳むとともに、両側壁部27,27が底壁部17に対して直角をなし、且つ、傾斜壁部37,37が上方に行くほど外側に傾斜するように保護カバー7を折り曲げる。このように上から順に保護カバー7、補助ゴムシート25、ゴムシート本体15が重なった状態で、クリップ3を下方から近づけて、図26に示すように、これらを纏めて挟み込む。
【0086】
次いで、図27に示すように、ゴムシート5の両端を下方に折り返すとともに、クリップ3の各開閉レバー13をゴムシート5に形成された長手方向内側の挿通孔15aに対し内側から外側へ挿入した後、長手方向外側の挿通孔15aに対し外側から内側へと縫うように挿入して、ゴムシート5の端部を開閉レバー13,13に係合させる。これにより、各開閉レバー13,13の自由端がゴムシート5の内側に隠れることになり、クリップ3操作時の作業者の指への反発力が軽減され、挟持固定する作業を繰り返すことにより作業者の指にかかる負担が低減される。そうして、突起部27a,27aを保護チューブ9に潜らせて、保護チューブ9を保護カバー7の開放部分の前側に嵌める。
【0087】
この状態で、端末保護具1の上方から光ファイバ心線11の被保護部31を近づける。そうして、開閉レバー13,13によって固定金具部23を開くと、図28に示すように、はさみ口23aが開くのに伴って、保護カバー7の後端側でも両側壁部27,27の上端同士が開き、光ファイバ心線11を上方から挿入するための開口47が保護カバー7の全長に亘って形成される。
【0088】
光ファイバ心線11の被保護部31が保護カバー7の形成する空間に収まった後、固定金具部23のはさみ口23aを閉じ、保護チューブ9を、隅切り部37a,37aを滑らせるようにして開放側の後側にスライドさせ、図20及び図21に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31の保護が完了する。尚、保護チューブ9及び保護カバー7を共に透明とすることで、端末保護具1が光ファイバ心線11の被保護部31に取り付けられていても、光ファイバ心線11の被保護部31の状態(欠けや汚れの発生)の確認が容易となる。
【0089】
また、端末保護具1を取り外すときは、保護チューブ9を前側にスライドさせてから、開閉レバー13,13を操作して固定金具部23のはさみ口23aを開くことにより、保護カバー7の両側壁部27,27の上端同士が開くので、端末保護具1を光ファイバ心線11の被保護部31から容易に取り外すことができる。
【0090】
−変形例の効果−
本変形例によれば、保護カバー7には、光ファイバ心線11を径方向Dから挿通することが可能であり且つ当該光ファイバ心線11に取り付けられた状態ではファイバ軸方向Aと略平行に延びる開口47が設けられていることから、チューブや貫通孔に光ファイバ心線11の端部を挿通するタイプの保護具とは異なり、光ファイバ心線11の被保護部31を、保護カバー7と接触させることなく、保護カバー7内部にセットすることができる。
【0091】
また、保護カバー7の重合挟持部7aを挟むことで当該保護カバー7に装着されるクリップ3が、光ファイバ心線11の被保護部31近傍を挟持することにより、保護カバー7の重合挟持部7aが光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定されるが、この状態で、保護カバー7の重合挟持部7aよりも前側の部分が、光ファイバ心線11に接触しないので、光ファイバ心線11の被保護部31との非接触状態を保ったまま当該被保護部31を保護することができる。
【0092】
さらに、クリップ3が光ファイバ心線の被保護部31近傍をゴムシート5を介して挟持するので、クリップ3と光ファイバ心線の外被11bとの間に生じる滑りを抑制して、端末保護具1を光ファイバ心線11に対してしっかりと固定するとともに、光ファイバ心線の外被11bが傷付くのを抑えることができる。
【0093】
そうして、保護カバー7は、重合挟持部7aの開口47が、クリップ3の開閉に伴って開閉するように構成されているので、クリップ3を開くことで保護カバー7の開口47をその全長に亘って開き、光ファイバ心線11の被保護部31を開口47から保護カバー7に挿入し、クリップ3を閉じるという一連の動作で端末保護具1を光ファイバ心線11に容易に取り付けることができる。一方、端末保護具1を光ファイバ心線11から取り外すときは、これと全く逆の動作で容易に取り外すことが可能となる。
【0094】
以上により、光ファイバ心線11への着脱を容易に行うことができるとともに、光ファイバ心線11の被保護部31への接触がない構造を実現することができる。
【0095】
さらに、保護チューブ9は保護カバー7よりも前後方向に短く、且つ、当該保護カバー7に対して前後方向に摺動可能なので、光ファイバ心線11を開口47から保護カバー7に挿入する際、保護チューブ9を当該挿入位置から退避させておけば、光ファイバ心線11の挿入の支障にならない。そうして、光ファイバ心線11の被保護部31を保護カバー7に挿入した後、保護チューブ9を保護カバー7に沿って当該挿入位置まで摺動させることにより、光ファイバ心線11の被保護部31を全周に亘って覆うことができる。これにより、簡単な構造で、保護カバー7の開口47から入り込んだ異物(例えば他の光ファイバ心線の端部)が、光ファイバ心線11の被保護部31に接触するのを抑えることができる。
【0096】
また、汎用性のある部材を用いた簡単な構造で、クリップ3が光ファイバ心線11の被保護部31近傍を弾性的に挟持する構造を実現することができるとともに、ゴムシート5の厚さを変更することにより、クリップ3により発生する固定力を調節することが可能となる。
【0097】
さらに、保護カバー7として透明な樹脂成形品を用いているので、端末加工の際、端末保護具1で保護された光ファイバ心線11の被保護部31の状態を容易に確認することができる。
【0098】
尚、本実施形態では、研磨され又は外被11cが除去された光ファイバ心線11の加工部を含む被保護部31を保護するようにしたが、これに限らず、例えば、図30に示すように、光ファイバ心線11に装着されたフェルール21を保護するようにしてもよい。
【0099】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、本発明の結束具を光ファイバ心線11の環状部分11aを結束するのに用いているが、これに限らず、例えば、医療以外用の光ファイバ心線の環状部分を結束するのに用いてもよく、あるいは、ワイヤやSUS製の電線などの光ファイバ心線以外の線状部材の環状部分を結束するのに用いてもよい。
【0100】
また、上記各実施形態では、シート状部材12を紙をラミネート加工してなるもので構成しているが、可撓性を有するものである限り、上記のものに限定されない。例えば、プラスチック製のものや金属製のもの、紙製のものなどで構成してもよい。尚、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11から脱落するのを抑制する観点からは、シート状部材12は、ある程度剛性を有するのが望ましい。
【0101】
また、上記各実施形態では、シート状部材12を紙の両面にラミネートフィルムをそれぞれ1枚ずつ積層・接着してなるもので構成しているが、2枚以上ずつ積層・接着してなるもので構成してもよい。この場合、シート状部材12の剛性をより一層向上させることができ、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11から脱落するのをより一層抑制することができる。
【0102】
また、上記各実施形態では、シート状部材12を八角形状に形成しているが、これに限らず、例えば、矩形状や半円状などに形成してもよい。尚、ファイバクリップ2の取扱い性の観点からは、シート状部材12は、あまり大きくないのが望ましい。
【0103】
また、上記各実施形態では、第1及び第2孔22,32を円状に形成しているが、これに限らず、例えば、長穴状に形成してもよい。但し、第1及び第2孔22,32の形成の容易性の観点からは、円状に形成するのが望ましい。
【0104】
また、上記各実施形態では、切れ目42を突出部42aと第1及び第2直線部42b,cとで構成しているが、これに限らず、例えば、左右方向に延びる一直線状のものだけで構成してもよい。但し、光ファイバ心線11を結束する際の作業時間の短縮化の観点からは、突出部を有するのが望ましい。あるいは、突出部だけで構成してもよい。但し、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11から脱落するのを抑制する観点からは、第1及び第2直線部を有するのが望ましい。
【0105】
また、上記各実施形態では、突出部42aを1つ形成しているが、2つ以上形成してもよい。但し、光ファイバ心線11を結束する際の作業時間の短縮化の観点からは、1つ形成するのが望ましい。
【0106】
また、上記各実施形態では、突出部42aを下側に突出するように形成しているが、上側に突出するように形成してもよい。
【0107】
また、上記各実施形態では、突出部42aをV字状に形成しているが、これに限らず、例えば、半円状に形成してもよい。但し、切れ目42の突出部42a部分の形成の容易性の観点からは、V字状に形成するのが望ましい。
【0108】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0109】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明にかかる結束具は、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間を短縮することが必要な用途等に適用できる。
【符号の説明】
【0111】
11 光ファイバ心線(線状部材)
11a 環状部分
2 ファイバクリップ(結束具)
12 シート状部材
22 第1孔
32 第2孔
42 切れ目
42a 突出部
42b 第1直線部
42c 第2直線部
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部が環状に巻かれた線状部材における該環状部分を結束する結束具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
少なくとも一部が環状に巻かれた光ファイバ心線などの線状部材におけるその環状部分を結束することが従来技術として知られている。
【0003】
このような線状部材の環状部分を結束する結束具として、例えば、特許文献1に示すものがある。この結束具は、線状部材を保持する丸穴状の収納部が形成され且つ径方向に弾性変形可能な可撓性を有する円筒状の集束体と、この集束体の外周面に嵌合されて収納部を緊締する弾性変形可能な環状の締結体とを備えている。集束体には、集束体の外周面と収納部とを連通して線状部材を収納部に導く切割部が形成されている。締結体には、線状部材を通過させ得る切欠部が形成されている。
【0004】
そして、特許文献1のものでは、線状部材を切割部から導いて、収納部に収めると、線状部材の本数や径の大きさに応じて、集束体と収納部との形状が変化して、線状部材は収納部内に束ねられる。一方、線状部材を切欠部から通過させて、切欠部と切割部とが同一方向にならないように、締結体を集束体に嵌合すると、収納部が締め付けられることにより、線状部材は緊締されると共に、収納部内の線状部材が切割部から抜け出さない。また、線状部材に曲げ応力が作用すると、集束体はこの応力に応じて、線状部材が折れ曲がらないように撓む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−42723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のものでは、線状部材を結束する際において、線状部材を集束体の切割部から導いて、収納部に収めるとともに、締結体を集束体に嵌合する必要があるため、その作業に時間がかかった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、少なくとも一部が環状に巻かれた線状部材における該環状部分を結束する結束具において、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間を短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、少なくとも一部が環状に巻かれた線状部材における該環状部分を結束する結束具であって、可撓性を有するシート状部材を備えており、上記シート状部材には、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔が、該第1及び第2孔間に該第1及び第2孔が互いにつながるように切れ目が、それぞれ形成されており、上記線状部材の上記環状部分を上記切れ目を介して上記第1及び第2孔に挿通させることにより、上記シート状部材が撓んだ状態で上記線状部材の上記環状部分を結束するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
これによれば、可撓性を有するシート状部材に、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔を、この第1及び第2孔間に第1及び第2孔が互いにつながるように切れ目を、それぞれ形成しており、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させることにより、シート状部材が撓んだ状態で線状部材の環状部分を結束する。このように、線状部材の環状部分を結束するのに、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させる作業だけで済むので、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間を短縮することができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記切れ目は、上記第1及び第2孔間を結ぶ直線に対して該直線方向と直交する方向の一方側に突出するように形成された少なくとも1つの突出部を有していることを特徴とするものである。
【0011】
これによれば、切れ目は、第1及び第2孔間を結ぶ直線に対してこの直線方向と直交する方向の一方側に突出するように形成された少なくとも1つの突出部を有している。そして、切れ目の突出部部分は、大きく開口させることができる。このため、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させる際において、線状部材の環状部分を切れ目に簡単に通すことができ、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間をより一層短縮することができる。
【0012】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記切れ目は、上記突出部に加えて、上記第1孔と該突出部との間に上記直線方向に延びるように形成された直線状の第1直線部と、上記第2孔と上記突出部との間に上記直線方向に延びるように形成された直線状の第2直線部とをさらに有していることを特徴とするものである。
【0013】
これによれば、切れ目は、突出部に加えて、第1孔と突出部との間に第1及び第2孔間を結ぶ直線方向に延びるように形成された直線状の第1直線部と、第2孔と突出部との間に直線方向に延びるように形成された直線状の第2直線部とをさらに有している。そして、切れ目の第1及び第2直線部部分は、大きく開口させることはできない。このため、線状部材の環状部分を結束した後において、結束具が線状部材の環状部分から脱落する(即ち、線状部材の環状部分が切れ目を介して第1及び第2孔から外れる)のを抑制することができる。
【0014】
第4の発明は、上記第2又は3の発明において、上記突出部は、V字状のものであることを特徴とするものである。
【0015】
これによれば、突出部をV字状のものにしているので、切れ目の突出部部分を簡単に形成することができる。
【0016】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか1つの発明において、上記シート状部材は、紙をラミネート加工してなるものであることを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、シート状部材を紙をラミネート加工してなるものにしているので、第1及び第2孔や切れ目を簡単に形成することができ、また、ラミネート加工することにより、シート状部材の強度や防水性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可撓性を有するシート状部材に、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔を、この第1及び第2孔間に第1及び第2孔が互いにつながるように切れ目を、それぞれ形成しており、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させることにより、シート状部材が撓んだ状態で線状部材の環状部分を結束しており、このように、線状部材の環状部分を結束するのに、線状部材の環状部分を切れ目を介して第1及び第2孔に挿通させる作業だけで済むので、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るファイバクリップを示す平面図である。
【図2】略環状に巻かれた光ファイバ心線をファイバクリップで結束した様子を示す平面図である。
【図3】ファイバクリップの光ファイバ心線への取付け工程の一部を示す斜視図である。
【図4】ファイバクリップの光ファイバ心線への取付け工程の一部を示す斜視図である。
【図5】ファイバクリップの光ファイバ心線への取付け工程の一部を示す斜視図である。
【図6】ファイバクリップの光ファイバ心線からの取外し工程の一部を示す斜視図である。
【図7】ファイバクリップの光ファイバ心線からの取外し工程の一部を示す斜視図である。
【図8】光ファイバ心線の端末保護具の側面図である。
【図9】図8のIX−IX線における矢視断面図である。
【図10】ストッパーの断面図である。
【図11】光ファイバ心線へのストッパーの取付状態を説明する図である。
【図12】光ファイバ心線に取り付けられた端末保護具を示す図9相当図である。
【図13】端末保護具を光ファイバ心線の端部から退避させた状態を説明する図である。
【図14】光ファイバ心線の端末保護具の斜視図である。
【図15】図14のXV方向の矢視図である。
【図16】図14のXVI方向の矢視図である。
【図17】図14のXVII方向の矢視図である。
【図18】図14のXVIII方向の矢視図である。
【図19】図14のXIX方向の矢視図である。
【図20】光ファイバ心線に取り付けられた端末保護具を示す図15相当図である。
【図21】光ファイバ心線に取り付けられた端末保護具を示す図18相当図である。
【図22】折り曲げ前の保護カバーを示す図である。
【図23】端末保護具の組立状況を説明する図である。
【図24】端末保護具の組立状況を説明する図である。
【図25】端末保護具の組立状況を説明する図である。
【図26】端末保護具の組立状況を説明する図である。
【図27】光ファイバ心線への端末保護具の取付状態を説明する図である。
【図28】光ファイバ心線への端末保護具の取付状態を説明する図である。
【図29】光ファイバ心線を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は、(a)のXXIXb−XXIXb線における矢視断面図である。
【図30】光ファイバ心線への端末保護具の取付状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係るファイバクリップの平面図であり、図2は、略円環状に巻かれた光ファイバ心線をファイバクリップで結束した様子を示す平面図であり、このファイバクリップ2(結束具)は、少なくとも一部(図2では両端部以外の部分)が略円環状に巻かれた可撓性且つ弾性を有する医療用の光ファイバ心線11(線状部材)におけるその環状部分11aを結束することにより、その束形状を保持するものであって、光ファイバ心線11端(以下、光ファイバ心線11端を「被保護部」とも言う)を研磨したり、光ファイバ心線11端の外被を除去したりする等、光ファイバ心線11を端末加工するときや、光ファイバ心線11を運搬するとき、光ファイバ心線11を出荷梱包するときなどに用いられる。ファイバクリップ2は、光ファイバ心線11の環状部分11aを少なくとも1箇所結束するため、光ファイバ心線11に少なくとも1つ取り付けられており、図2では、例えば、光ファイバ心線11の環状部分11aを2箇所結束するため、光ファイバ心線11に2つ取り付けられている。光ファイバ心線11の環状部分11aは、二重以上に巻かれており、図2では、例えば、四重に巻かれている。尚、図2では、光ファイバ心線11の両端部以外の部分を略円環状に巻いているが、これに限らず、例えば、光ファイバ心線11の運搬時や出荷梱包時など、光ファイバ心線11の略全部を略円環状に巻いてもよい。
【0022】
ファイバクリップ2は、紙をラミネート加工(パウチ加工)してなる可撓性且つ弾性を有するシート状部材12からなる。ラミネート加工は、例えば以下のように行う。つまり、紙(シート)を、PET(ポリエチレンテレフタレート)やPE(ポリエチレン)などの樹脂製のシートに接着剤を塗布してなるラミネートシートで挟み込んで熱や圧力をかけることで、紙をラミネートシートで覆うことにより行う。ラミネートシートや接着剤は、透明のものであるのが望ましい。こうすることにより、紙に記載・表示した情報を視認することができ、また、それを保護することができる。また、ラミネートシートは、一層でもよいが、積層してもよい。
【0023】
シート状部材12は、長方形状のシート状部材の四隅部をそれぞれ三角形状に切り取ったような八角形状のものである。シート状部材12の長手方向長さ(横)は、例えば44mm、その短手方向長さ(縦)は、例えば17mm、その厚さは、例えば300μm〜600μmであり、400μm〜600μmであれば、線状部材の保持力やシート状部材12そのものの耐久性が向上するので好ましい。シート状部材12は、光ファイバ心線11へ取り付けていないときには、水平状態になっている。シート状部材12は、例えば、両面にラミネートフィルム(パウチフィルム)がそれぞれ1枚ずつ積層・接着された図面用紙をカッターで切ってなる。以下の説明では、シート状部材12の長手方向を左右方向と、その短手方向を上下方向とする。また、シート状部材12の図1で見える側の面を表面と、見えない側の面を裏面とする。
【0024】
シート状部材12には、互いに左右方向に所定間隔を隔てるように円状の第1及び第2孔22,32が、この第1及び第2孔22,32間に第1及び第2孔22,32が互いにつながるように切れ目(切り込み)42が、それぞれ貫通形成されている。つまり、第1孔22、切れ目42、及び第2孔32は、左右方向に連続している。第1孔22は、シート状部材12の左端部の上下方向中央部に、第2孔32は、シート状部材12の右端部の上下方向中央部に、それぞれ形成されている。第1及び第2孔22,32の直径は、光ファイバ心線11の環状部分11aが挿通可能な互いに同じ長さであり、例えば5mmである。第1孔22の中心から第2孔32の中心までの距離(即ち、上記所定間隔)は、例えば29mmである。第1及び第2孔22,32は、例えば、パンチで打ち抜かれている。
【0025】
上記切れ目42は、非直線状のものである。具体的には、切れ目42は、第1及び第2孔22,32の中心間を結ぶ直線L(図1のみ図示)に対して下側(即ち、その直線Lの延びる方向と直交する方向の一方側)に突出するように形成されたV字状の1つの突出部42aと、第1孔22と突出部42aとの間に左右方向(直線L方向)に延び且つ第1孔22と突出部42aとが互いにつながるように形成された一直線状の第1直線部42bと、第2孔32と突出部42aとの間に左右方向に延び且つ第2孔32と突出部42とが互いにつながるように形成された一直線状の第2直線部42cとを有している。突出部42aの左右方向長さは、例えば14mm、その上下方向長さは、例えば5mmである。第1及び第2直線部42b,42cは、第1及び第2孔22,32の上下方向中央から左右方向の内側にそれぞれ直線Lに重なるように延びている。第1及び第2直線部42b,42cの左右方向長さは互いに同じ長さであり、突出部42aの左右方向長さよりも短い。切れ目42は、例えば、カッターで切られている。
【0026】
尚、シート状部材12の表面は、結束する線状部材に関する情報や作業記録などを記載・表示可能に構成してもよい。
【0027】
−ファイバクリップの光ファイバ心線への脱着方法−
以下、図3〜図7を参照しながら、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11への脱着方法について説明する。
【0028】
先ず、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11への取付け方法の一例について説明する。最初に、シート状部材12における切れ目42の上側部分を保持した状態で、シート状部材12における切れ目42の下側部分を切れ目42の上側部分に対してその裏面側に折り曲げることにより、切れ目42を開口させる。そして、図3に示すように、光ファイバ心線11の環状部分11aを開口した切れ目42に挟む。それから、図4、図5に示すように、シート状部材12における第1及び第2直線部42b,42cの下側部分をそれぞれその裏面側から順に押し上げる。すると、光ファイバ心線11の環状部分11aが、第1及び第2孔22,32の左右方向の外側でシート状部材12の表面側を、第1及び第2孔22,32間(第1及び第2孔22,32の左右方向の内側)でその裏面側を通った状態で、第1及び第2孔22,32に挿通されるとともに、シート状部材12が弾性変形してその左右方向中央部が両端部よりもその表面側に突出するように撓む。このようにして、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11の環状部分11aに取り付けられ、光ファイバ心線11の環状部分11aがファイバクリップ2で結束される。
【0029】
ところで、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11への取付け時には、上述のように、シート状部材12は撓んでいるため、元の水平状態に戻ろうとする。また、ファイバクリップ2で結束された光ファイバ心線11の環状部分11aの束のうち、光ファイバ心線11の端部(即ち、光ファイバ心線11のうちファイバクリップ2と光ファイバ心線11端との間の一直線状の部分(以下、直線状部分11bとも言う))に連続する1本が、元の直線状に戻ろうとして第1及び第2孔22,32内で外側に広がろうとする。そして、シート状部材12が水平状態に戻ろうとする弾性力(復元力)と光ファイバ心線11の環状部分11aの束のうち1本が第1及び第2孔22,32内で外側に広がろうとする弾性力とによって、ファイバクリップ2による光ファイバ心線11の結束位置が任意の位置に保持される。
【0030】
また、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11への取付け時には、上述のように、光ファイバ心線11の環状部分11aは第1及び第2孔22,32に挿通されているため、シート状部材12は光ファイバ心線11の環状部分11aに案内されてこれに沿ってスライド移動可能になっている(図2の二点鎖線を参照)。このシート状部材12のスライド移動によって、ファイバクリップ2による光ファイバ心線11の結束位置が変更される。そして、ファイバクリップ2による光ファイバ心線11の結束位置を変更すると、光ファイバ心線11の直線状部分11bの長さが変更される。
【0031】
次に、ファイバクリップ2の光ファイバ心線11からの取外し方法の一例について説明する。最初に、図6に示すように、シート状部材12における切れ目42の下側部分を切れ目42の上側部分に対してその裏面側に折り曲げることにより、切れ目42を開口させる。すると、図7に示すように、光ファイバ心線11の環状部分11aが開口した切れ目42を通ってその外側に出る。このようにして、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11の環状部分11aから取り外される。
【0032】
以上のように、ファイバクリップ2は光ファイバ心線11に対してワンタッチで脱着することができる。
【0033】
ところで、光ファイバ心線11の環状部分11aをビニタイや紐などで巻き付けたり、スパイラルチューブやテープなどで固定したりすることにより、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束することが一般的に知られている。
【0034】
しかしながら、光ファイバ心線11の環状部分11aをビニタイなどで結束する場合、その作業に時間がかかる。同様に、ビニタイなどを光ファイバ心線11から取り外す場合も、その作業に時間がかかる。また、光ファイバ心線11を端末加工する場合、その作業性を向上させるため、光ファイバ心線11の端部を直線状にすることが通常行われている。このため、その光ファイバ心線11端部近傍のビニタイなどを光ファイバ心線11から一旦取り外す必要があるが、光ファイバ心線11の端末加工の作業終了後、光ファイバ心線11の環状部分11aをビニタイなどで再結束しなければならず、結局、その作業に時間がかかる。このように、ビニタイなどを光ファイバ心線11から一旦取り外した後、光ファイバ心線11の環状部分11aをビニタイなどで再結束する場合、その際に光ファイバ心線11を擦るなどして、光ファイバ心線11が損傷する虞もある。また、光ファイバ心線11の環状部分11aをテープで固定すると、その粘着剤が光ファイバ心線11に付着する虞もある。
【0035】
ここで、本実施形態によれば、上述のように、ファイバクリップ2は光ファイバ心線11に対してワンタッチで脱着することができるため、その脱着作業に時間がかからず、ひいては、光ファイバ心線11の端末加工の作業に時間がかからない。また、上述のように、ファイバクリップ2による光ファイバ心線11の結束位置を変更することにより、光ファイバ心線11の直線状部分11bの長さを変更することができるため、そもそも、光ファイバ心線11を端末加工する際にファイバクリップ2を光ファイバ心線11から取り外す必要がない。このため、光ファイバ心線11が損傷するのを抑制することができる。さらに、接着剤が光ファイバ心線11に付着する虞もない。
【0036】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、可撓性を有するシート状部材12に、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔22,32を、この第1及び第2孔22,32間に第1及び第2孔22,32が互いにつながるように切れ目42を、それぞれ形成しており、光ファイバ心線11の環状部分11aを切れ目42を介して第1及び第2孔22,32に挿通させることにより、シート状部材12が撓んだ状態で光ファイバ心線11の環状部分11aを結束する。このように、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束するのに、光ファイバ心線11の環状部分11aを切れ目42を介して第1及び第2孔22,32に挿通させる作業だけで済むので、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束する際の作業時間を短縮することができる。
【0037】
また、切れ目42は、第1及び第2孔22,32間を結ぶ直線Lに対してこの直線L方向と直交する方向の一方側に突出する1つの突出部42aを有している。そして、切れ目42の突出部42a部分は、大きく開口させることができる。このため、光ファイバ心線11の環状部分11aを切れ目42を介して第1及び第2孔22,32に挿通させる際において、光ファイバ心線11の環状部分11aを切れ目42に簡単に通すことができ、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束する際の作業時間をより一層短縮することができる。
【0038】
また、切れ目42は、突出部42aに加えて、第1孔22と突出部42aとの間に第1及び第2孔22,32間を結ぶ直線L方向に延びるように形成された直線状の第1直線部42bと、第2孔32と突出部42aとの間に直線L方向に延びるように形成された直線状の第2直線部42cとをさらに有している。そして、切れ目42の第1及び第2直線部42b,42c部分は、大きく開口させることはできない。このため、光ファイバ心線11の環状部分11aを結束した後において、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11の環状部分11aから脱落する(即ち、光ファイバ心線11の環状部分11aが切れ目42を介して第1及び第2孔22,32から外れる)のを抑制することができる。
【0039】
また、突出部42aをV字状のものにしているので、切れ目42の突出部42a部分を簡単に形成することができる。
【0040】
また、シート状部材12を紙をラミネート加工してなるものにしているので、第1及び第2孔22,32や切れ目42を簡単に形成することができ、また、ラミネート加工することにより、シート状部材12の強度や防水性を向上させることができる。
【0041】
(実施形態2)
本実施形態は、上記ファイバクリップ2を用いることによる端末加工の作業効率を維持しながら、光ファイバ心線11の不良発生をより一層抑えるために、端末保護具を用いるものである。
【0042】
より詳しくは、上記光ファイバ心線11の端部に作業者の手等が当たったりすることによって、端部が損傷する虞がある。このような、端部の損傷を抑えるために、ファイバクリップ2に結束された光ファイバ心線11の端部には、ファイバクリップ2とともに1つの端末加工用ユニットを構成する端末保護具1が取り付けられている。
【0043】
このように、光ファイバ心線11の両端部に端末保護具1を取り付けた場合は、即ち、ファイバクリップ2と端末保護具1,1とを端末加工用ユニットとして用いる場合は、端部の加工を行う際、後述するように端末保護具1を光ファイバ心線11の先端とは反対側にスライドさせて退避させ、光ファイバ心線11の一端を研磨したり、検査したりする。そうして、各工程が終了すると、端末保護具1を光ファイバ心線11の先端側にスライドさせる。
【0044】
以下、実施形態1と異なる点、即ち、端末保護具1について説明する。
【0045】
図8は、光ファイバ心線の端末保護具の側面図であり、図9は、図8のIX−IX線における矢視断面図であり、図12は、光ファイバ心線への端末保護具の取付状態を説明する図である。この端末保護具1は、光ファイバ心線11の端部(一端部)11eを保護するためのものである。尚、本実施形態では、光ファイバ心線11の被保護部31とは、研磨端(加工部)又は加工予定部に余裕長(約5mm)を加えた部分を意味する。
【0046】
端末保護具1は、光ファイバ心線11を挿通可能な孔部33aが形成されたストッパー(固定部材)33と、当該ストッパー33に装着される、光ファイバ心線11の被保護部31を保護するための保護チューブ(保護部材)57とを備えており、これらストッパー33と保護チューブ57とは、別体に形成されている。
【0047】
ストッパー33は、ポリ塩化ビニル(PVC)製であり、図10に示すように、孔部33aが形成された一端から、他端に向けて外径が拡径するように形成されている。具体的には、ストッパー33は、孔部33aが形成された頂部33bと、当該頂部33bよりも外径が大きい胴部33cとを有していて、全体として略錘状をなしている。
【0048】
この孔部33aは、光ファイバ心線11を挿通可能であればよく、光ファイバ心線11の外径に対して極端に小さかったり、大きかったりしなければ、その内径は特に規定されない。すなわち、孔部33aの孔径は、光ファイバ心線11の外径よりも僅かに大きくてもよいし、僅かに小さくてもよい。例えば、孔部33aの孔径を光ファイバ心線11の外径と略等しい径とすれば、ストッパー33が弾性材料(PVC製)であることから、ファイバ軸方向に力を加えると、孔部33aの周壁が光ファイバ心線の外被11bに弾性的に接触しながらファイバ軸方向に摺動する一方、ファイバ軸方向に力を加えなければ、孔部33aの周壁と光ファイバ心線の外被11bとの摩擦により、光ファイバ心線11上の所望の位置に止まるという効果が得られる。
【0049】
保護チューブ57は、ラミネートフィルム等に用いられるポリエチレンテレフタレートからなる透明な樹脂成形品であり、筒状に形成されている。この保護チューブ57は、光ファイバ心線11の外径よりも大きい内径を有し、且つ、ストッパー33の最大外径よりも小さい内径を有する筒状であり、端末保護具1が光ファイバ心線11に取り付けられると、その被保護部31を径方向に間隔をあけて囲む。
【0050】
保護チューブ57とストッパー33とは、保護チューブ57の筒軸方向一方側にストッパー33をその頂部33b側から圧入することで接続されるようになっており、ストッパー33の柔軟性は保護チューブ57の柔軟性よりも大きく設定されている。
【0051】
ここで、「柔軟性」とは、「硬さ」や「形状」などに起因するものであるが、本実施形態では、複雑な形状によるコストの上昇を避けるために、「柔軟性」を硬さで規定した。換言すると、「形状」による要因を考慮しなくても、使用する材料の硬さの大小によって柔軟性が定性的に評価できるように、ストッパー33及び保護チューブ57の材料を選定した。つまり、ストッパー33の硬さが、保護チューブ57の硬さより小さければよく、その組合せとしては、例えば、本実施例の如く、ポリエチレンテレフタレート(ロックウエル硬さ(M)95)からなる保護チューブ57と、ポリ塩化ビニル(ロックウエル硬さ(M)72)からなるストッパー33を組み合わせることが望ましい。
【0052】
このような硬さのストッパー33と保護チューブ57とを組み合わせることにより、孔部33aに光ファイバ心線11が挿通されたストッパー33を、保護チューブ57に圧入させることで孔部33aが変形し、保護チューブ57がストッパー33を介して光ファイバ心線11の外周に固定される。より詳しくは、ストッパー33が頂部33b側から保護チューブ57に圧入されると、頂部33b及び胴部33cが圧縮されて孔部33aが窄まる(変形する)。このように、孔部33aが窄まることで、光ファイバ心線11に対するストッパー33による締付力が発生し、ストッパー33が光ファイバ心線11の被保護部31近傍に強固に固定される。尚、ストッパー33の圧縮度合いに応じて孔部33aは窄まるので、ストッパー33による光ファイバ心線11に対する締付力は、保護チューブ57の圧入の程度によって調整可能となっている。
【0053】
次いで、端末保護具1の使用方法について説明する。
【0054】
この端末保護具1は、光ファイバ心線11の研磨が行われる前、例えば、光ファイバ心線11の端部をディスクカッタ等で切断した後に、光ファイバ心線11に取り付けられる。この際、光ファイバ心線11に対するストッパー33の変形による締付力が発生しないように、先ず、ストッパー33のみを光ファイバ心線11の被保護部31近傍に取り付ける。すなわち、図11に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31を、保護チューブ57に圧入していないストッパー33の孔部33aに挿入して、当該ストッパー33のみを光ファイバ心線11の被保護部31近傍(外被11bの先端から5mm以上離れた位置)に係止させる。
【0055】
次いで、保護チューブ57の内部に光ファイバ心線11の被保護部31が収まるように、保護チューブ57をストッパー33の頂部33bに近づけ、図12に示すように、保護チューブ57をその頂部33b側から保護チューブ57の内部に圧入する。これにより、ストッパー33の胴部33c及び頂部33bが圧縮されて孔部33aが窄まり、ストッパー33による締付力が発生するので、端末保護具1が光ファイバ心線11の被保護部31近傍に強固に固定される。
【0056】
ここで、ストッパー33は、その全長に亘って光ファイバ心線の外被11bに接触しているのではなく、頂部33bの略肉厚分の小さい面積でしか光ファイバ心線の外被11bに接触していないので、当該ストッパー33に接続される保護チューブ57は、ファイバ軸方向に対し傾き易くなっているが、このような締付力が発生することで保護チューブ57がセンタリングされる(保護チューブ57の軸心とファイバ軸心とが略一致する)。
【0057】
そうして、フラット研磨又は斜め研磨する工程等、光ファイバ心線11の被保護部31を加工するときは、図13に示すように、端末保護具1(保護チューブ57を取り外したストッパー33のみでもよい)を、光ファイバ心線11の被保護部31側とは反対側に摺動(スライド)させて光ファイバ心線11の被保護部31から退避させる。
【0058】
一方、工程間搬送等、光ファイバ心線11を加工していないときは、端末保護具1を、光ファイバ心線11の先端側にスライドさせて、図12に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31を径方向に間隔をあけて囲むことにより保護する。尚、保護チューブ57を透明とすることで、端末保護具1が光ファイバ心線11に取り付けられていても、光ファイバ心線11の被保護部31の状態(欠けや汚れの発生)の確認が容易となる。
【0059】
そうして、例えば、光ファイバ心線11の被保護部31の外被11bを除去して内部の光ファイバ素線を露出させる工程の前に、端末保護具1を光ファイバ心線11から取り外す。この場合には、保護チューブ57をストッパー33から取り外してから、ストッパー33を光ファイバ心線11の先端側にスライドさせて、光ファイバ心線11から抜き取る。この際、ストッパー33の孔部33aの周壁が、光ファイバ心線11の被保護部31と不可避的に接触するが、上述の如く、保護チューブ57を取り外すことでストッパー33の変形による締付力が消失していること、及び、ストッパー33は小さい面積でしか光ファイバ心線11に接触しないことから、ストッパー33を光ファイバ心線11から抜き取る際にも、加工部は損傷し難い。
【0060】
−効果−
本実施形態によれば、保持具2とともに1つの端末加工用ユニットを構成する端末保護具1,1を用いることにより、作業効率を維持しつつ、光ファイバ心線11の不良発生をより一層抑えることができる。
【0061】
さらに、ストッパー33の柔軟性が保護チューブ57の柔軟性よりも大きいことから、ストッパー33を保護チューブ57に圧入又は嵌合させることで、ストッパー33の孔部33aが変形する。これにより、光ファイバ心線11に対するストッパー33による締付力が発生するので、端末保護具1を光ファイバ心線11上の所望の位置により確実に止めることができる。したがって、端末保護具1が作業の邪魔にならず、また、当該端末保護具1を端末より必要以上に離さなくても良くなるので、保護具の着脱にかかる時間が短縮され、作業効率の低下が抑えられる。
【0062】
また、ストッパー33が圧縮されるほどその孔部33aが変形するので、光ファイバ心線11に対するストッパー33による締付力を、ストッパー33の保護チューブ57への圧入の程度によって調整することができる。そうして、端末保護具1を光ファイバ心線11から取り外す際には、ストッパー33と保護チューブ57とを分離することによって、ストッパー33の変形による締付力が消失するので、ストッパー33を光ファイバ心線11から引き抜き易くなるとともに、ストッパー33と光ファイバ心線11の被保護部31とが接触し難くなる。
【0063】
一方、保護チューブ57は、ストッパー33を介して光ファイバ心線11の外周に固定されるので、光ファイバ心線11に接触することがない。これにより、光ファイバ心線11の被保護部31を保護するために、端末保護具1を光ファイバ心線11の先端側に移動させても、又は、光ファイバ心線11の被保護部31を露出させるために、端末保護具1を光ファイバ心線11の被保護部31から遠ざけても、ストッパー33が被保護部31近傍の外被に接触するだけで、端末保護具1は光ファイバ心線11の被保護部31と接触し難い。
【0064】
以上により、光ファイバ心線11の被保護部31の保護及び露出を複数回繰り返す場合にも、光ファイバ心線11の被保護部31が損傷するのを抑えつつ、光ファイバ心線11の被保護部31の保護及び露出を容易に行うことができる。
【0065】
また、ストッパー33は頂部33b側から胴部33cに向けて外径が拡径するように形成されていることから、当該ストッパー33を孔部33aが形成された頂部33b側から筒状の保護チューブ57に圧入し易くなる。さらに、保護チューブ57は、ストッパー33の最大外径よりも小さい内径を有しているので、ストッパー33を保護チューブ57に圧入することで、当該ストッパー33を確実に変形させることができる。
【0066】
さらに、保護チューブ57として透明な樹脂成形品を用いているので、端末加工の際、端末保護具1で保護された光ファイバ心線11の被保護部31の状態を容易に確認することができる。
【0067】
−実施形態2の変形例−
本変形例は、上記ストッパー33及び保護チューブ57を用いた端末保護具とは、構造が異なる端末保護具1を用いたものである。より詳しくは、上記ストッパー33及び保護チューブ57を用いた端末保護具は、光ファイバ心線11上の所望の位置に止まることから、その着脱に関わる時間短縮は達成できるが、少なくとも着ける際又は外す際に光ファイバ心線11の被保護部31に接触する可能性があるため、本変形例では、光ファイバ心線11の被保護部31への接触がない構造を採用している。以下、本変形例の端末保護具1について説明する。
【0068】
本変形例の端末保護具1は、ファイバクリップ2に結束された光ファイバ心線11の両端部に取り付けられることで、ファイバクリップ2とともに、作業効率を維持しつつ光ファイバ心線11の不良発生をより一層抑えるための、端末加工用ユニットとして用いられる。この場合、端末保護具1を光ファイバ心線11から取り外し、光ファイバ心線11の一端の研磨などを行う。そうして、各工程が終了すると、加工された端部に端末保護具1を取り付ける。
【0069】
図14〜図19は、本変形例に係る端末保護具を示し、図20及び図21は、光ファイバ心線に取り付けられた端末保護具を示す。この端末保護具1は、光ファイバ心線11の被保護部31を保護するためのものである。
【0070】
尚、本変形例では、光ファイバ心線11の被保護部31とは、外被11bが取り除かれていない場合は、研磨端(加工部)及び加工予定部に余裕長(約5mm)を加えた部分を意味し、外被11bが取り除かれている場合は、光ファイバ素線11aに余裕長(約5mm)を加えた部分を意味する。また、以下の説明では、保護カバー7の開口47側を上側とし、保護カバー7の底壁部17側を下側とし、保護カバー7の長手方向におけるクリップ3で挟まれていない側を前側とし、保護カバー7の長手方向におけるクリップ3で挟まれている側を後側とする。
【0071】
また、光ファイバ心線11の軸方向とは、図29(a)に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31(光ファイバ素線11a)の中心軸の延びる方向Aを意味し、光ファイバ心線11の径方向とは、図29(b)に示すように、軸方向Aと垂直な方向Dを意味する。尚、図29(b)に示す8つの径方向Dは例示であり、中心軸から放射状に延びる他の方向も径方向Dに含まれる。
【0072】
端末保護具1は、図20及び図21に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31を全周に亘って囲むように構成されている。この端末保護具1は、クリップ(挟持部材)3と、ゴムシート(弾性部材)5と、保護カバー(保護部材)7と、保護チューブ9とを備えている。
【0073】
クリップ3は、公知のクリップであれば限定されないが、中でも挟持力、作業性の点で、ターンクリップ(ダブルクリップ:固定金具部15mm)が好ましく、ターンクリップは、断面略二等辺三角形状に形成され且つその頂部(はさみ口)23aが開閉する固定金具部23と、当該はさみ口23aを梃子の原理で開く相対向する一対の開閉レバー13,13とを有している。開閉レバー13,13は、その一方側の端部(固定端)が、固定金具部23のはさみ口23aにそれぞれ回動自在に連結されている。
【0074】
固定金具部23は、作業者が、例えば親指と人差し指とで開閉レバー13,13の他方側の端部(自由端)をつまみ、当該自由端同士が接近するように両方の指に力を加えることで、はさみ口23aが開く一方、当該自由端同士が遠ざかるように両方の指の力を抜くことで、はさみ口23aが閉じるように構成されている。固定金具部23は、保護カバー7の前後方向(長手方向)の一部、具体的には、保護カバー7の前後方向中央よりも後側の部分(後端部)と、後述の如く保護カバー7の内側に配設されたゴムシート5とを挟んでおり、これにより、クリップ3は、保護カバー7に装着されるとともに、光ファイバ心線11の被保護部31近傍を保護カバー7及びゴムシート5を介して挟持するようになっている。
【0075】
ゴムシート5は、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)製シートであり、図23に示すように、ゴムシート本体15と、当該ゴムシート本体15の長手方向中央部に取り付けられる補助ゴムシート25とを有している。このゴムシート5は、その長手方向中央部が、図17及び図24に示すように、保護カバー7の後端部(重合挟持部7a)に当該保護カバー7の内面に沿うように重ね合わされていて、当該長手方向中央部が保護カバー7を介して固定金具部23に挟まれる一方、長手方向両端部が開閉レバー13,13に係合している。換言すると、ゴムシート5は、略W字状に折り曲げられていて、断面W字状のクリップを上方にオフセットしたような態様で、当該Wクリップに巻き付けられている。
【0076】
ゴムシート本体15は、長方形状に形成されており、四隅が隅切りされているとともに、クリップ3の開閉レバー13,13を挿通するための挿通孔15a,15a,…がパンチ穴加工によって両端部に2つずつ形成されている。補助ゴムシート25は、固定金具部23に挟まれたゴムシート5及び保護カバー7と当該固定金具部23との密着性が高まるように、ゴムシート5の厚みを増すために用いられるものであり、両面テープ(図示せず)によってゴムシート本体15に取り付けられている。
【0077】
このように、クリップ3がゴムシート5を介して光ファイバ心線11を挟み込むことで、光ファイバ心線の外被11bのある部分を弾性的に挟持するようになっているので、換言すると、固定金具部23が光ファイバ心線11を直接挟み込むことがないので、光ファイバ心線11の外被11bの剥離や、固定金具部23と外被11bとの間に生じる滑りが抑えられる。つまり、ゴムシート5は、光ファイバ心線11に対する保護材としての役割のみならず、端末保護具1の摺動に対するブレーキとしての役割も備えている。
【0078】
保護カバー7は、細長に(前後方向に延びるように)形成され、底壁部17と側壁部27,27と傾斜壁部37,37とを有していて、図20及び図21に示すように、光ファイバ心線11に接触することなく、当該光ファイバ心線11の被保護部31を3方向(左右方向及び下方向)から囲むように断面略コ字状をなしている。換言すると、当該保護カバー7には、両側壁部27,27の上端によって区画される、光ファイバ心線11を上側(光ファイバ心線11の径方向D)から挿通することが可能であり且つ光ファイバ心線11に取り付けられた状態では当該光ファイバ心線の軸方向(ファイバ軸方向)Aと略平行に(前後方向に)延びる開口47が形成されている。
【0079】
保護カバー7は、図22に示す略長方形状に切り抜いた透明なラミネートフィルム(ポリエチレンテレフタレート、2軸延伸ポリプロピレンフィルム等の樹脂成形品)を折り曲げたものであり、可撓性を有している。尚、底壁部17と側壁部27,27との境目及び側壁部27,27と傾斜壁部37,37との境目には、硬質針等で折線を引くことで浅い溝が形成されていて、折り曲げ易くなっている。この保護カバー7は、前端側では、図16に示すように、底壁部17と両側壁部27,27とが直角をなすように折り曲げられていて、両側壁部27,27の上端同士が離間して開口47を形成している一方、後端側では、図17に示すように、中央で折り曲げられた補助ゴムシート25に巻き付くように底壁部17と両側壁部27,27の下端部とが円弧状に湾曲し、且つ、クリップ3のはさみ口23aで挟まれることで両側壁部27,27の上端同士が近接している。
【0080】
保護カバー7は、可撓性を有しており、当該保護カバー7の内面に沿うように重ね合わされ且つクリップ3に巻き付けられたゴムシート5と、当該保護カバー7を外側から挟む固定金具部23とでサンドウィッチ状に挟まれることで、重合挟持部7a(ゴムシート5が重ね合わされ且つクリップ3で挟まれた部分)の開口47が、固定金具部23の開閉に伴って開閉するようになっている。より詳しくは、保護カバー7は、開閉レバー13,13の自由端同士が接近することで、前後方向全長に亘って開口47が形成されて、光ファイバ心線11を上方(ファイバ軸方向Aと直交する方向)から受け容れることが可能となる一方、開閉レバー13,13の自由端同士が遠ざかることで、開口47の一部が閉じて、光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定される。これにより、保護カバー7は、図20に示すように、クリップ3がゴムシート5を介して光ファイバ心線11を挟持することにより、重合挟持部7aが当該光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定されるようになっている。
【0081】
このように、クリップ3で光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定された保護カバー7は、重合挟持部7aよりも前側の部分(以下、開放部分という)のうち、前後方向中央よりも後側の部分で、光ファイバ心線11の被保護部31を非接触状態で三方向から囲んでいる。すなわち、保護カバー7は、重合挟持部7aが光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定された状態で、当該重合挟持部7aよりも前側(光ファイバ心線一端側)の部分が、光ファイバ心線11に接触しないようになっている。この保護カバー7には、当該保護カバー7よりも前後方向(開口47が延びる方向)に短く、且つ、当該保護カバー7に対して前後方向に摺動可能な上記保護チューブ9が嵌められている。
【0082】
保護チューブ9は、透明なスミチューブA(商品名)を20mmに切断したものであり、開放部分の略半分の長さを有している。この保護チューブ9は、端末保護具1が光ファイバ心線11に取り付けられていない状態では、開放部分のうち前後方向中央よりも前側の部分に位置しており、端末保護具1が光ファイバ心線11に取り付けられると、開放部分の後側にスライドして、光ファイバ心線11の被保護部31を全周に亘って覆うようになっている。
【0083】
保護カバー7の各側壁部27,27の前端部には、保護チューブ9の脱落を防止するために、上方に突出する突起部27a,27aが形成されている。また、開放部分の後側には、後側にスライドさせた保護チューブ9を張った状態にして固定するために、両側壁部27,27の上端から上方に行くほど外側に傾斜して断面ハ字状に拡がる傾斜壁部37,37が形成されている。各傾斜壁部37,37の前端部は、保護チューブ9が後側へ円滑にスライドするように(傾斜壁部37,37に乗り上げ易くなるように)隅切り部37a,37aが形成されている。
【0084】
−変形例の端末保護具の組立及び取付手順−
先ず、図23に示すように、ゴムシート本体15の中央部に両面テープを用いて補助ゴムシート25を取り付ける。次いで、図24に示すように、保護カバー7とゴムシート5とが逆T字状をなすように、ゴムシート5(補助ゴムシート25)の中央部に両面テープを用いて保護カバー7の重合挟持部7a(後端部)を取り付ける。
【0085】
そうして、図25に示すように、ゴムシート5をその両端が上方を向くように折り畳むとともに、両側壁部27,27が底壁部17に対して直角をなし、且つ、傾斜壁部37,37が上方に行くほど外側に傾斜するように保護カバー7を折り曲げる。このように上から順に保護カバー7、補助ゴムシート25、ゴムシート本体15が重なった状態で、クリップ3を下方から近づけて、図26に示すように、これらを纏めて挟み込む。
【0086】
次いで、図27に示すように、ゴムシート5の両端を下方に折り返すとともに、クリップ3の各開閉レバー13をゴムシート5に形成された長手方向内側の挿通孔15aに対し内側から外側へ挿入した後、長手方向外側の挿通孔15aに対し外側から内側へと縫うように挿入して、ゴムシート5の端部を開閉レバー13,13に係合させる。これにより、各開閉レバー13,13の自由端がゴムシート5の内側に隠れることになり、クリップ3操作時の作業者の指への反発力が軽減され、挟持固定する作業を繰り返すことにより作業者の指にかかる負担が低減される。そうして、突起部27a,27aを保護チューブ9に潜らせて、保護チューブ9を保護カバー7の開放部分の前側に嵌める。
【0087】
この状態で、端末保護具1の上方から光ファイバ心線11の被保護部31を近づける。そうして、開閉レバー13,13によって固定金具部23を開くと、図28に示すように、はさみ口23aが開くのに伴って、保護カバー7の後端側でも両側壁部27,27の上端同士が開き、光ファイバ心線11を上方から挿入するための開口47が保護カバー7の全長に亘って形成される。
【0088】
光ファイバ心線11の被保護部31が保護カバー7の形成する空間に収まった後、固定金具部23のはさみ口23aを閉じ、保護チューブ9を、隅切り部37a,37aを滑らせるようにして開放側の後側にスライドさせ、図20及び図21に示すように、光ファイバ心線11の被保護部31の保護が完了する。尚、保護チューブ9及び保護カバー7を共に透明とすることで、端末保護具1が光ファイバ心線11の被保護部31に取り付けられていても、光ファイバ心線11の被保護部31の状態(欠けや汚れの発生)の確認が容易となる。
【0089】
また、端末保護具1を取り外すときは、保護チューブ9を前側にスライドさせてから、開閉レバー13,13を操作して固定金具部23のはさみ口23aを開くことにより、保護カバー7の両側壁部27,27の上端同士が開くので、端末保護具1を光ファイバ心線11の被保護部31から容易に取り外すことができる。
【0090】
−変形例の効果−
本変形例によれば、保護カバー7には、光ファイバ心線11を径方向Dから挿通することが可能であり且つ当該光ファイバ心線11に取り付けられた状態ではファイバ軸方向Aと略平行に延びる開口47が設けられていることから、チューブや貫通孔に光ファイバ心線11の端部を挿通するタイプの保護具とは異なり、光ファイバ心線11の被保護部31を、保護カバー7と接触させることなく、保護カバー7内部にセットすることができる。
【0091】
また、保護カバー7の重合挟持部7aを挟むことで当該保護カバー7に装着されるクリップ3が、光ファイバ心線11の被保護部31近傍を挟持することにより、保護カバー7の重合挟持部7aが光ファイバ心線11の被保護部31近傍に固定されるが、この状態で、保護カバー7の重合挟持部7aよりも前側の部分が、光ファイバ心線11に接触しないので、光ファイバ心線11の被保護部31との非接触状態を保ったまま当該被保護部31を保護することができる。
【0092】
さらに、クリップ3が光ファイバ心線の被保護部31近傍をゴムシート5を介して挟持するので、クリップ3と光ファイバ心線の外被11bとの間に生じる滑りを抑制して、端末保護具1を光ファイバ心線11に対してしっかりと固定するとともに、光ファイバ心線の外被11bが傷付くのを抑えることができる。
【0093】
そうして、保護カバー7は、重合挟持部7aの開口47が、クリップ3の開閉に伴って開閉するように構成されているので、クリップ3を開くことで保護カバー7の開口47をその全長に亘って開き、光ファイバ心線11の被保護部31を開口47から保護カバー7に挿入し、クリップ3を閉じるという一連の動作で端末保護具1を光ファイバ心線11に容易に取り付けることができる。一方、端末保護具1を光ファイバ心線11から取り外すときは、これと全く逆の動作で容易に取り外すことが可能となる。
【0094】
以上により、光ファイバ心線11への着脱を容易に行うことができるとともに、光ファイバ心線11の被保護部31への接触がない構造を実現することができる。
【0095】
さらに、保護チューブ9は保護カバー7よりも前後方向に短く、且つ、当該保護カバー7に対して前後方向に摺動可能なので、光ファイバ心線11を開口47から保護カバー7に挿入する際、保護チューブ9を当該挿入位置から退避させておけば、光ファイバ心線11の挿入の支障にならない。そうして、光ファイバ心線11の被保護部31を保護カバー7に挿入した後、保護チューブ9を保護カバー7に沿って当該挿入位置まで摺動させることにより、光ファイバ心線11の被保護部31を全周に亘って覆うことができる。これにより、簡単な構造で、保護カバー7の開口47から入り込んだ異物(例えば他の光ファイバ心線の端部)が、光ファイバ心線11の被保護部31に接触するのを抑えることができる。
【0096】
また、汎用性のある部材を用いた簡単な構造で、クリップ3が光ファイバ心線11の被保護部31近傍を弾性的に挟持する構造を実現することができるとともに、ゴムシート5の厚さを変更することにより、クリップ3により発生する固定力を調節することが可能となる。
【0097】
さらに、保護カバー7として透明な樹脂成形品を用いているので、端末加工の際、端末保護具1で保護された光ファイバ心線11の被保護部31の状態を容易に確認することができる。
【0098】
尚、本実施形態では、研磨され又は外被11cが除去された光ファイバ心線11の加工部を含む被保護部31を保護するようにしたが、これに限らず、例えば、図30に示すように、光ファイバ心線11に装着されたフェルール21を保護するようにしてもよい。
【0099】
(その他の実施形態)
上記各実施形態では、本発明の結束具を光ファイバ心線11の環状部分11aを結束するのに用いているが、これに限らず、例えば、医療以外用の光ファイバ心線の環状部分を結束するのに用いてもよく、あるいは、ワイヤやSUS製の電線などの光ファイバ心線以外の線状部材の環状部分を結束するのに用いてもよい。
【0100】
また、上記各実施形態では、シート状部材12を紙をラミネート加工してなるもので構成しているが、可撓性を有するものである限り、上記のものに限定されない。例えば、プラスチック製のものや金属製のもの、紙製のものなどで構成してもよい。尚、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11から脱落するのを抑制する観点からは、シート状部材12は、ある程度剛性を有するのが望ましい。
【0101】
また、上記各実施形態では、シート状部材12を紙の両面にラミネートフィルムをそれぞれ1枚ずつ積層・接着してなるもので構成しているが、2枚以上ずつ積層・接着してなるもので構成してもよい。この場合、シート状部材12の剛性をより一層向上させることができ、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11から脱落するのをより一層抑制することができる。
【0102】
また、上記各実施形態では、シート状部材12を八角形状に形成しているが、これに限らず、例えば、矩形状や半円状などに形成してもよい。尚、ファイバクリップ2の取扱い性の観点からは、シート状部材12は、あまり大きくないのが望ましい。
【0103】
また、上記各実施形態では、第1及び第2孔22,32を円状に形成しているが、これに限らず、例えば、長穴状に形成してもよい。但し、第1及び第2孔22,32の形成の容易性の観点からは、円状に形成するのが望ましい。
【0104】
また、上記各実施形態では、切れ目42を突出部42aと第1及び第2直線部42b,cとで構成しているが、これに限らず、例えば、左右方向に延びる一直線状のものだけで構成してもよい。但し、光ファイバ心線11を結束する際の作業時間の短縮化の観点からは、突出部を有するのが望ましい。あるいは、突出部だけで構成してもよい。但し、ファイバクリップ2が光ファイバ心線11から脱落するのを抑制する観点からは、第1及び第2直線部を有するのが望ましい。
【0105】
また、上記各実施形態では、突出部42aを1つ形成しているが、2つ以上形成してもよい。但し、光ファイバ心線11を結束する際の作業時間の短縮化の観点からは、1つ形成するのが望ましい。
【0106】
また、上記各実施形態では、突出部42aを下側に突出するように形成しているが、上側に突出するように形成してもよい。
【0107】
また、上記各実施形態では、突出部42aをV字状に形成しているが、これに限らず、例えば、半円状に形成してもよい。但し、切れ目42の突出部42a部分の形成の容易性の観点からは、V字状に形成するのが望ましい。
【0108】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0109】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書には何ら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上説明したように、本発明にかかる結束具は、線状部材の環状部分を結束する際の作業時間を短縮することが必要な用途等に適用できる。
【符号の説明】
【0111】
11 光ファイバ心線(線状部材)
11a 環状部分
2 ファイバクリップ(結束具)
12 シート状部材
22 第1孔
32 第2孔
42 切れ目
42a 突出部
42b 第1直線部
42c 第2直線部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が環状に巻かれた線状部材における該環状部分を結束する結束具であって、
可撓性を有するシート状部材を備えており、
上記シート状部材には、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔が、該第1及び第2孔間に該第1及び第2孔が互いにつながるように切れ目が、それぞれ形成されており、
上記線状部材の上記環状部分を上記切れ目を介して上記第1及び第2孔に挿通させることにより、上記シート状部材が撓んだ状態で上記線状部材の上記環状部分を結束するように構成されていることを特徴とする結束具。
【請求項2】
請求項1記載の結束具において、
上記切れ目は、上記第1及び第2孔間を結ぶ直線に対して該直線方向と直交する方向の一方側に突出するように形成された少なくとも1つの突出部を有していることを特徴とする結束具。
【請求項3】
請求項2記載の結束具において、
上記切れ目は、上記突出部に加えて、上記第1孔と該突出部との間に上記直線方向に延びるように形成された直線状の第1直線部と、上記第2孔と上記突出部との間に上記直線方向に延びるように形成された直線状の第2直線部とをさらに有していることを特徴とする結束具。
【請求項4】
請求項2又は3記載の結束具において、
上記突出部は、V字状のものであることを特徴とする結束具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の結束具において、
上記シート状部材は、紙をラミネート加工してなるものであることを特徴とする結束具。
【請求項1】
少なくとも一部が環状に巻かれた線状部材における該環状部分を結束する結束具であって、
可撓性を有するシート状部材を備えており、
上記シート状部材には、互いに間隔を隔てるように第1及び第2孔が、該第1及び第2孔間に該第1及び第2孔が互いにつながるように切れ目が、それぞれ形成されており、
上記線状部材の上記環状部分を上記切れ目を介して上記第1及び第2孔に挿通させることにより、上記シート状部材が撓んだ状態で上記線状部材の上記環状部分を結束するように構成されていることを特徴とする結束具。
【請求項2】
請求項1記載の結束具において、
上記切れ目は、上記第1及び第2孔間を結ぶ直線に対して該直線方向と直交する方向の一方側に突出するように形成された少なくとも1つの突出部を有していることを特徴とする結束具。
【請求項3】
請求項2記載の結束具において、
上記切れ目は、上記突出部に加えて、上記第1孔と該突出部との間に上記直線方向に延びるように形成された直線状の第1直線部と、上記第2孔と上記突出部との間に上記直線方向に延びるように形成された直線状の第2直線部とをさらに有していることを特徴とする結束具。
【請求項4】
請求項2又は3記載の結束具において、
上記突出部は、V字状のものであることを特徴とする結束具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の結束具において、
上記シート状部材は、紙をラミネート加工してなるものであることを特徴とする結束具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2011−27991(P2011−27991A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173402(P2009−173402)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】
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