説明

給気風量の制御方法

【課題】本発明は、給気風量の制御方法に関し、従来の給気風量の制御方法における給気量変更時に、室圧の大きな変動を伴うことが課題であって、それを本発明により解決することである。
【解決手段】給気風量を制御する対象の対象室1に、一定風量を給気する給気側におけるファンと定風量装置及び該定風量装置の運転を制御する制御装置3と、前記対象室の室圧を制御する排気側における室圧測定装置13と風量制御ダンパと該風量制御ダンパの動作速度を前記室圧測定装置からの信号により制御する制御装置及びファンとで、前記対象室の給気風量を一定量制御する方法において、前記対象室の現在室圧と設定室圧との圧力差を求め、その圧力差が少なくなるように給気側の給気風量を増減させるべくダンパ4の動作速度を制御することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム等の空調対象室に対する給気風量の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空調対象室としてのクリーンルーム1においては、高度な清浄度を実現するために、図4に示すように、一定風量を給気する定風量装置12(CAV:Constant Air Volume)が用いられ、従来の定風量装置は、熱線式風速センサーや風車式風速センサーなどにより測定された給気ダクトの風速をもとに、比例積分(PID)制御や間欠作動によりダンパ開度を調節して、風量(風速)が設定値となるように制御するものである(特許文献1参照)。図中の符号13は圧力計(Pと表記)を、14は制御部を、15はモータダンパ(MDと表記)を、16a,16bはファン(FANと表記)を、17はフィルターを示している。
【0003】
また、外気等の流速が一定値以下では開の位置にあって、一定値を越えるとコイルバネの付勢力に抗してダンパが自動的に閉方向に閉じるようにしているものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09−119669号公報
【特許文献2】特開平09−287768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、夜間など対象室を使用しない時には、給気風量を減じて省エネルギーが図られる場合が多いが、給気側のCAVにより風量を減じようとした場合、従来の給気風量の制御方法においては、モータダンパ(MD)により室圧の保持が可能範囲を超える風量変化があった場合には、図5に示すように、クリーンルーム1の室圧において、大きな圧力の変動が生じ、コンタミネーションリスク(contamination risk:汚染の危険性)が増大してしまうという課題がある。本発明に係る給気風量の制御方法は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る給気風量の制御方法の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、給気風量を制御する対象の対象室に、一定風量を給気する給気側におけるファンと定風量装置及び該定風量装置の運転を制御する制御装置と、前記対象室の室圧を制御する排気側における室圧測定装置と風量制御ダンパと該風量制御ダンパの動作速度を前記室圧測定装置からの信号により制御する制御装置及びファンとで、前記対象室の給気風量を一定量制御する方法において、前記対象室の現在室圧と設定室圧との圧力差を求め、その圧力差が少なくなるように給気側の給気風量を増減させるべくダンパの動作速度を制御することである。
また、前記圧力差は、排気側の室圧測定装置からの圧力データ信号を給気側の定風量装置の制御装置に伝達することで求められること、を含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の給気風量の制御方法によれば、設定室圧と現在室圧との偏差が大きい場合には、給気側の風量を変更させるダンパの動作速度を遅くするので、室圧の変動を伴わずに風量変更が可能となる。また、従来では室圧を保持しながら風量変更を行うため、施工時に定風量装置(CAV),可変定風量装置(VAV:Variable Air Volume )の制御パラメータの調整に時間が掛かっていたが、その調整も本発明により不要となって、施工時の工期短縮となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る給気風量の制御方法を示す構成図である。
【図2】同本発明の給気風量の制御方法における対象室の圧力偏差と減速率との関係の一例を示す図である。
【図3】同本発明による風量変更時の室圧変動の一例を示す図である。
【図4】従来例に係る制御方式の一例を示す構成図である。
【図5】従来例に係る制御方式における、風量変更時の室圧変動の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る給気風量の制御方法は、室圧の急激な変動がないように、給気側での給気風量の変更時においてダンパの動作速度を制御することで、目的を達成するものである。
【実施例1】
【0010】
本発明に係る給気風量の制御方法は、図1に示すように、給気風量を制御する対象の対象室1に、一定風量を給気する給気側におけるファン16aと風量測定装置3aとモータダンパ4及び該定風量装置の運転を制御する制御装置3とがある。
【0011】
そして、前記対象室1の室圧を制御する排気側における室圧測定装置(圧力計)13と風量制御ダンパ(モータダンパ)15と該風量制御ダンパ15の動作速度を前記室圧測定装置13からの信号により制御する制御部14及びファン16bとで、前記対象室1の給気風量を一定量制御する方法において、前記対象室1の現在室圧と設定室圧との圧力差を求め、その圧力差(圧力偏差ともいう)が少なくなるように給気側の給気風量を増減させるべく、モータダンパ4の動作速度を制御するものである。
【0012】
前記圧力差は、排気側の室圧測定装置(圧力計)13からの現状室圧の圧力データ信号を、給気側の定風量装置の制御装置3に、新しく設けた伝達経路(電気配線、構内ランなど)2を介して伝達することで求められる。
【0013】
前記制御装置3においては、前記室圧測定装置(圧力計)13の出力信号をアナログからデジタルに変換して、それを対象室1内の設定圧との差を求めるものである。例えば、昼間から夜間に移行すると、給気風量が減るのでその変更時には一時的に室圧が下がる。逆に、夜間から昼間に移行するときには給気風量が増加するので、一時的に室圧が上がることになる。
【0014】
前記室圧の圧力差が、図2及び図3に示すように、昼間から夜間に移行する際には、給気側のモータダンパ4が給気風量を減らすために閉じる方向に動作する。この場合、給気ダクト内の回転軸を中心にして回転するダンパであれば回転速度(角速度ω)が動作速度である。この動作速度は、例えば30秒以内で回転が完了するという早い動作速度であるため、室圧が急激に低くなる(マイナス)。すると排気側の室圧制御が間に合わなくなり、給気側のモータダンパ4の動作速度を減速させる必要がある。
【0015】
そこで、圧力差が大きいと、モータダンパ4の減速率({(元の回転速度−変更後の回転速度)/元の回転速度}×100%)を大きくして、モータダンパ4の動作速度を減速させる。圧力差が小さい場合には、減速率を小さくして、モータダンパ4の動作速度を速くする。このような制御を行うことで、排気側の一定室圧に保つ排気量の制御が間に合うようになる。図3に示すように、給気風量の減少・増加の変更に時間が掛かるようになるが、室圧(Pa)には大きな変動が無く、室圧が一定に保持されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0016】
このような室圧の給気風量の制御方法は、給気風量の変更時に室圧の大きな変動を避けたい場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0017】
1 対象室(クリーンルーム)、
2 伝達経路、
3 制御装置、 3a 風量測定装置、
4 モータダンパ、
12 定風量装置、
13 室圧測定装置(圧力計)、
14 制御部、
15 風量制御ダンパ(モータダンパ)、
16a,16b ファン、
17 フィルター。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気風量を制御する対象の対象室に、一定風量を給気する給気側におけるファンと定風量装置及び該定風量装置の運転を制御する制御装置と、前記対象室の室圧を制御する排気側における室圧測定装置と風量制御ダンパと該風量制御ダンパの動作速度を前記室圧測定装置からの信号により制御する制御装置及びファンとで、前記対象室の給気風量を一定量制御する方法において、
前記対象室の現在室圧と設定室圧との圧力差を求め、その圧力差が少なくなるように給気側の給気風量を増減させるべくダンパの動作速度を制御すること、
を特徴とする給気風量の制御方法。
【請求項2】
圧力差は、排気側の室圧測定装置からの圧力データ信号を給気側の定風量装置の制御装置に伝達することで求められること、
を特徴とする請求項1に記載の給気風量の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−7391(P2011−7391A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149709(P2009−149709)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(594187253)岡谷精立工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】