説明

給水式圧縮機

【課題】圧縮機本体の起動時に乾燥運転となるのを抑えることができ、信頼性を高めることができる給水式圧縮機を提供する。
【解決手段】制御装置30は、圧縮機本体1の停止中に運転スイッチ32から圧縮機本体1の起動指示信号が入力された場合、給水弁15を閉状態に維持しつつ、補給弁17を開状態に制御して、補給ライン16から給水ライン12に水を補給する。その際、セパレータ4内の水位が上限水位h1まで上昇したかどうか判定することにより、水クーラ13が満水状態であるかどうかを判断する。そして、水クーラ13が満水状態であると判断された場合、補給弁16を閉状態に切換えて給水ライン12への水の補給を停止するとともに、給水弁12を開状態に切換えて給水ライン12から圧縮機本体1への給水を開始する。その後、圧縮機本体1を起動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機本体の水潤滑部に水を供給する給水式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機本体の作動室に油を供給することにより、油の冷却・シール効果によって圧縮効率を高めることができる給油式圧縮機が知られている。また、圧縮空気中に油分を含ませることなく圧縮機効率を高めるために、圧縮機本体の作動室に水を供給する給水式圧縮機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の給水式圧縮機は、空気を圧縮するスクリュー型の圧縮機本体と、この圧縮機本体より吐出された圧縮空気から水を分離するとともに、分離した水を貯留する水回収器と、この水回収器から圧縮機本体の作動室へ水を供給する送水ラインと、この送水ラインに設けられ、水を冷却する水クーラと、送水ラインにおける水クーラの下流側に設けられ、水中の不純物を取り除く水フィルタと、送水ラインにおける水フィルタの下流側に設けられた第1自動弁と、水回収器の上部と圧縮機本体の吸込側との間で接続された放出ラインと、この放出ラインに設けられた第2自動弁と、第1自動弁及び第2自動弁を制御する制御装置とを備えている。なお、水回収器に貯留された水は、所定の水位を超えると、排水ラインから排水されるようになっている。
【0004】
制御装置は、圧縮機本体の運転時に、第1自動弁を開弁し、第2自動弁を閉弁する。これにより、水回収器内の圧縮空気の圧力(すなわち、圧縮機本体から吐出された圧縮空気の圧力)によって、水回収器から圧縮機本体の作動室へ水を供給するようになっている。また、制御装置は、圧縮機本体の停止時に、第1自動弁を閉弁し、第2自動弁を開弁する。これにより、水回収器内の圧縮空気が放出され、水回収器内の圧力が低圧(例えば大気圧)となる。その結果、圧縮機本体の再起動時に、モータの駆動電流が過大となるのを防ぐようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−180099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、圧縮機本体の停止時に水回収器内が大気圧となって、時間が経過すると、圧縮機本体の内部が乾燥状態になる。その状態で、圧縮機本体を再起動すると、水回収器内の圧力が上昇するまでに(すなわち、圧縮機本体への給水を開始するまでに)例えば5〜10秒程度の時間がかかるため、それまでの間、乾燥状態の運転(以降、乾燥運転と称す)を行うことになる。
【0007】
ここで、例えば雌雄一対のスクリューロータが互いに接触して回転するような圧縮機本体を採用し、ロータ同士の接触部における潤滑水作用のために圧縮機本体へ水を供給する給水式圧縮機を想定する。この給水式圧縮機においては、上述した乾燥運転によってロータ同士の接触部が摩耗し、ロータの損傷や寿命低下、圧縮機の性能低下といった不具合が生じる。また、例えば圧縮機本体内のシール(例えばメカニカルシール等)の摺動面における潤滑水作用のために圧縮機本体へ水を供給するような給水式圧縮機を想定する。この給水式圧縮機においては、上述した乾燥運転によってシールの摺動面が摩耗し、シールの損傷や寿命の低下といった不具合が生じる。
【0008】
本発明は、上述した事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮機本体の起動時に乾燥運転となるのを抑えることができ、信頼性を高めることができる給水式圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、空気を圧縮する圧縮機本体と、前記圧縮機本体より吐出された圧縮空気から水を分離する分離部と、前記分離部で分離された水を貯留する貯留部と、前記貯留部内の水位を検出する水位検出器と、前記貯留部から前記圧縮機本体の水潤滑部へ水を供給する給水経路と、前記給水経路に設けられ、水を冷却する冷却器と、前記給水経路における前記冷却器より前記圧縮機本体側に設けられ、給水状態・止水状態に切換え可能な切換手段と、前記給水経路における前記冷却器と前記切換手段との間に接続され、外部から前記給水経路に水を補給可能な補給手段とを備えた給水式圧縮機において、前記圧縮機本体の起動・停止を指示する指示手段と、前記圧縮機本体の起動が指示された場合、前記切換手段を止水状態に制御しつつ、前記補給手段を制御して前記給水経路に水を補給する補給制御手段と、前記切換手段が止水状態であって前記補給手段から前記給水経路に水が補給された場合、前記貯留部内の水位が予め設定された第1の水位まで上昇したかどうか判定することにより、前記冷却器が満水状態であるかどうかを判断する第1の水位判定手段と、前記冷却器が満水状態であると判断された場合、前記補給手段による前記給水経路への水の補給を停止するとともに、前記切換手段を止水状態から給水状態に切換えて前記給水経路から前記圧縮機本体の水潤滑部への給水を開始する給水制御手段と、前記給水経路から前記圧縮機本体の水潤滑部への給水を開始した後、若しくは同時か直前に、前記圧縮機本体を起動する起動制御手段とを備える。
【0010】
このような本発明においては、圧縮機本体の起動が指示された場合、切換手段を止水状態としつつ外部から給水経路に水を補給し、冷却器が満水状態となって貯留部内の水位が第1の水位まで上昇したら水の補給を停止する。その後、切換手段を止水状態から給水状態に切換えて圧縮機本体の水潤滑部(詳細には、例えばロータ同士の接触部やシールの摺動面)への給水を開始し、その後(若しくは同時か直前に)、圧縮機本体を起動する。これにより、圧縮機本体の起動時に乾燥運転となるのを抑えることができる。したがって、例えばロータ同士の接触部やシールの摺動面における摩耗を低減することができ、信頼性を高めることができる。
【0011】
また、通常であれば、圧縮機本体を1回でも駆動し、その後の停止時に切換手段を止水状態とすることにより、冷却器に水を貯めることが可能である。しかし、圧縮機本体の初めての起動時や、凍結防止のために水抜きを行った後の圧縮機本体の起動時は、冷却器に水が貯められていない。このような場合にも対応するため、本発明では、切換手段を止水状態としつつ外部から給水経路に水を補給しており、水の補給の完了を判断するために、冷却器が満水状態であるかどうかを確認している。そして、本発明では、冷却器が満水状態であるかどうかを確認するために、貯留部内の水位を検出する水位検出器を利用する。これにより、新たな検出器を設ける必要がないので、部品点数を軽減することができ、コスト低減を図ることができる。
【0012】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記切換手段は、開状態・閉状態に切換え可能な給水弁であり、前記冷却器は、前記圧縮機本体及び前記貯留部より上方に配置され、かつ前記冷却器の被冷却水入口が被冷却水出口より高くなるように配設されており、前記圧縮機本体の起動が指示された場合で前記給水弁が閉状態から開状態に切換えられたときに、前記冷却器に貯められた水を自重によって前記圧縮機本体の水潤滑部へ供給するように構成する。
【0013】
これにより、水を圧送するためのポンプを不要とし、コスト低減を図ることができる。また、冷却器に水を貯めるので、貯留部の貯水容量を低減することができ、コスト低減を図ることができる。
【0014】
(3)上記(1)又は(2)において、好ましくは、前記貯留部に貯留された水を外部に排出可能な排出手段と、前記圧縮機本体の起動が指示された場合、前記排出手段を制御して前記貯留部に貯留された水を排出し、その際、前記貯留部内の水位が予め前記第1の水位より低く設定された第2の水位まで下降したことを、前記水位検出器で検出したかどうか判定することにより、前記水位検出器が正常であるかどうかを判断する第2の水位判定手段と、前記水位検出器が正常ではないと判断された場合に報知する報知手段とを備え、前記補給制御手段は、前記水位検出器が正常であると判断された場合に、前記切換手段を止水状態に制御し、前記補給手段を制御して前記給水経路に水を補給する。
【0015】
これにより、圧縮機本体の起動時に、水位検出器の正常・異常を判断することができ、給水経路への水の補給制御における信頼性を高めることができる。
【0016】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、好ましくは、前記貯留部内の空気を放気可能な放気手段を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、圧縮機本体の起動時に乾燥運転となるのを抑えることができ、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態における給水式圧縮機の構成を表す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における圧縮機本体の構造を表す断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における制御装置を関連機器とともに表すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における圧縮機本体起動時の制御装置の制御処理内容を表すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態における圧縮機本体起動時の制御装置の制御処理内容を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態を、図1〜図4により説明する。
【0020】
図1は、本実施形態における給水式圧縮機の構成を表す概略図である。図2は、本実施形態における圧縮機本体の構造を表す断面図である。図3は、本実施形態における制御装置を関連機器とともに表すブロック図である。
【0021】
図1で示すように、給水式圧縮機は、空気を圧縮する圧縮機本体1と、この圧縮機本体の吸入側に設けられた吸込みフィルタ2及び吸込み絞り弁3と、圧縮機本体1より吐出された圧縮空気から水を分離するとともに、分離した水を貯留するセパレータ4と、このセパレータ4で分離した圧縮空気を導出する圧縮空気ライン5(圧縮空気経路)と、この圧縮空気ライン5に設けられた逆止弁6と、この圧縮空気ライン5における逆止弁6の下流側に設けられ、圧縮空気を除湿する除湿器7と、この圧縮空気ライン5における逆止弁6の上流側に設けられた電磁式の放気弁8とを備えている。セパレータ4は、圧縮機本体1からの圧縮空気を周方向に旋回させ、圧縮空気に含まれる水を遠心分離する分離部4a(言い換えれば、二重円筒構造となる水容器の上部)と、この分離部4aで分離されて落下した水を貯留する貯留部4b(言い換えれば、水容器の下部)とが一体的に構成されたものである。
【0022】
また、給水式圧縮機は、セパレータ4内の水位(液面位置)を検出する例えばフロート式のレベルスイッチ(水位検出器)9と、セパレータ4の下部に接続された排出ライン10(排出経路)と、この排出ライン10に設けられた電磁式の排出弁11と、セパレータ4から圧縮機本体1の水潤滑部(詳細は後述)へ水を供給する給水ライン12(給水経路)と、この給水ライン12に設けられた水クーラ13(冷却器)と、給水ライン12における水クーラ13の下流側(言い換えれば、圧縮機本体1側)に設けられ、水中の不純物を除去する水フィルタ14と、給水ライン12における水フィルタ14の下流側に設けられた電磁式の給水弁15と、給水ライン12における水クーラ13と水フィルタ14との間(言い換えれば、水クーラ13と給水弁15との間)に接続された補給ライン16(補給経路)と、この補給ライン16に設けられた電磁式の補給弁17とを備えている。
【0023】
レベルスイッチ9は、例えば、セパレータ4内の水位として複数(本実施形態では2つ)のポイントを検出可能とするものである。すなわち、セパレータ4内の水位が予め設定された上限水位h1及び下限水位h2(但し、h2<h1)に達しているかどうかを検出可能とし、その検出信号を出力するようになっている。
【0024】
水クーラ13は、圧縮機本体1及びセパレータ4より上方に配置され、かつ水クーラ13の被冷却水入口13aが被冷却水出口13bより高くなるように配設されている。また、水クーラ13は、例えば空冷式の冷却器であって、冷却ファン18で生起された冷却風によって、例えば外気温度に対し10℃前後に保つように水を冷却するようになっている。
【0025】
図2で示すように、圧縮機本体1は、雌雄一対のスクリューロータ20A,20Bと、これらスクリューロータ20A,20Bを収納するケーシング21と、雄ロータ20Aを回転可能に支持する吸入側軸受22A及び吐出側軸受23Aと、雌ロータ20Bを回転可能に支持する吸入側軸受22B及び吐出側軸受23Bとを備えている。雄ロータ20Aの吸入側端部にはモータ24(図1参照)の回転軸が連結されており、モータ24の駆動によって雄ロータ20Aが回転する。また、雄ロータ20Aの回転に伴い、雌ロータ20Bが雄ロータ20Aと接触して噛み合うように回転するようになっている。
【0026】
雄ロータ20A及び雌ロータ20Bの歯溝には作動室が形成されており、雄ロータ20A及び雌ロータ20Bの回転に伴い、作動室はロータ軸方向(図2中右方向)に移動してその容積が変化するようになっている。これにより、吸入口25から作動室内に空気を吸入して圧縮し、圧縮空気を吐出口26から吐出するようになっている。
【0027】
吐出側軸受22A,22Bと作動室との間には、高圧シールとして例えばメカニカルシール27A,27B(詳細には、例えばカーボンやセラミック等の材質で形成されたもの)が設けられており、吸入側軸受23A,23Bと作動室との間には、低圧シールとして例えばリップシール28A,28Bが設けられている。なお、本実施形態では、低圧シールとしてリップシール28A,28Bを設けたが、これに代えて、メカニカルシールを設けてもよい。
【0028】
上述した圧縮機本体1においては、ロータ20A,20B同士の接触部及びシール27A,27B,28A,28Bの摺動面を潤滑する必要があるため、給水ライン12からの水が潤滑水として供給されるようになっている。すなわち、給水ライン12からの水の一部がケーシング21の注水口29Aを介し作動室に注入されており、ロータ20A,20B同士の接触部を潤滑するとともに、水のシール・冷却効果によって圧縮効率を高める。また、給水ライン12からの水の一部がケーシング21の注水口29Bに注入されており、この注水口29Bに注入された水がシール27A,27Bの摺動面を潤滑する。また、給水ライン12からの水の一部がケーシング21の注水口29C(図示せず)に注入されており、この注水口29Cに注入された水がシール28A,28Bの摺動面を潤滑する。なお、注水口29A〜29Cには、セパレータ4側の圧力を保持したまま適用の水を噴射するためのノズル(図示せず)が設けられている。また、シール27A,27B,28A,28Bの摺動面を潤滑した水は、作動室に流出するようになっている。
【0029】
給水式圧縮機は、上述した圧縮機本体1の駆動・停止(すなわち、モータ24の駆動・停止)を制御するとともに、上述した放気弁8、排出弁11、給水弁15、及び補給弁17の開閉を制御する制御装置30(図3参照)と、この制御装置30からの表示信号を入力して圧縮機の運転状態等を表示するモニタ31(図3参照)とを備えている。
【0030】
制御装置30は、第1の制御機能として、圧縮機本体1の運転中等に、レベルスイッチ9からの検出信号を入力し、これに応じて排出弁11の開閉等を制御するようになっている。詳しく説明すると、レベルスイッチ9からの検出信号により、セパレータ4内の水位が上限水位h1以上であるどうかを判定しており、上限水位h1以上である場合に排出弁11を開状態に制御して、排出ライン10を介しセパレータ4内の水を排出するようになっている。また、レベルスイッチ9からの検出信号により、セパレータ4内の水位が下限水位h2未満であるかどうかを判定しており、下限水位h2未満である場合に補給ライン(図示しないが、例えばセパレータ4に直接接続された補給ライン)に設けられた補給弁を開状態に制御して、その補給ラインを介し外部からセパレータ4内に水を補給するようになっている。
【0031】
また、制御装置30は、第2の制御機能として、圧縮機本体1の起動・停止を指示する運転スイッチ32からの指示信号を入力し、これに応じてモータ24の駆動・停止を制御するとともに、放気弁8、給水弁15、及び補給弁17の開閉を制御するようになっている。詳しく説明すると、圧縮機本体1の運転中、放気弁8及び補給弁17を閉状態に制御し、給水弁15を開状態に制御する。これにより、セパレータ4内の圧縮空気の圧力(例えば0.7MPa程度)によって、セパレータ4内の水が給水ライン12を介し圧縮機本体1の注水口29A〜29Cへ供給される。そして、圧縮機本体1の運転中に運転スイッチ32から停止指示信号が入力された場合、モータ24を停止して圧縮機本体1を停止するとともに、給水弁15を閉状態に制御して、給水ライン12から圧縮機本体1の注水口29A〜29Cへの給水を停止する。同時に、放気弁8を開状態に制御して、セパレータ4内の圧縮空気を大気に放出する。これにより、セパレータ4内の圧力が大気圧となり、圧縮機本体1の再起動時に、モータ24の駆動電流が過大となるのを防ぐようになっている。
【0032】
次に、圧縮機本体1の停止時に運転スイッチ32から起動指示信号が入力された場合の制御手順について説明する。図4は、本実施形態における圧縮機本体1の起動時の制御装置30の制御処理内容を表すフローチャートである。
【0033】
この図4において、まず、ステップ100にて、運転スイッチ32から起動指示信号が入力されると、ステップ110に進み、給水弁15を閉状態に維持しつつ、補給弁17を開状態に制御して、補給ライン16を介し外部から給水ライン12に水を補給する。このとき、放気弁8を閉状態に制御する。その後、ステップ120に進み、レベルスイッチ9からの検出信号に基づいてセパレータ4内の水位が上限水位h1まで上昇したかどうか判定することにより、水クーラ13が満水状態(例えば10リットル=0.01m程度)であるかどうかを判断する。例えばセパレータ4内の水位が上限水位h1まで上昇していない場合(すなわち、水クーラ13が満水状態にないと判断された場合)は、ステップ120の判定が満たされず、前述のステップ110に戻って同様の手順を繰り返す。
【0034】
一方、例えばセパレータ4内の水位が上限水位h1まで上昇した場合(すなわち、水クーラ13が満水状態にあると判断された場合)は、ステップ120の判定が満たされ、ステップ130に移る。ステップ130では、補給弁17を閉状態に制御して給水ライン12への水の補給を停止するとともに、給水弁15を閉状態から開状態に切換えて圧縮機本体1の注水口29A〜29Cへの給水を開始する。その後、ステップ140に進み、給水弁15を開状態に切換えてから予め設定された所定時間(詳細には、給水弁15から圧縮機本体1の内部に水が到達するまでの時間を考慮した時間であって、例えば数秒)が経過した後、モータ24を駆動して圧縮機本体1を起動する。
【0035】
なお、上記において、給水弁15は、特許請求の範囲に記載の給水経路における冷却器より圧縮機本体側に設けられ、給水状態・止水状態に切換え可能な切換手段を構成する。また、補給ライン16及び補給弁17は、給水経路における冷却器と切換手段との間に接続され、外部から給水経路に水を補給可能な補給手段を構成する。また、運転スイッチ32は、圧縮機本体の起動・停止を指示する指示手段を構成する。また、放気弁8は、貯留部内の空気を放気可能な放気手段を構成する。
【0036】
また、制御装置30が行う前述のステップ110は、特許請求の範囲に記載の圧縮機本体の起動が指示された場合、切換手段を止水状態に制御しつつ、補給手段を制御して給水経路に水を補給する補給制御手段を構成する。また、制御装置30が行う前述のステップ120は、切換手段が止水状態であって補給手段から給水経路に水が補給された場合、貯留部内の水位が予め設定された第1の水位まで上昇したかどうか判定することにより、冷却器が満水状態であるかどうかを判断する第1の水位判定手段を構成する。また、制御装置30が行う前述のステップ140は、冷却器が満水状態であると判断された場合、補給手段による給水経路への水の補給を停止するとともに、切換手段を止水状態から給水状態に切換えて給水経路から圧縮機本体の水潤滑部への給水を開始する給水制御手段を構成する。また、制御装置30が行う前述のステップ150は、給水経路から圧縮機本体の水潤滑部への給水を開始した後、圧縮機本体を起動する起動制御手段を構成する。
【0037】
以上のように構成された本実施形態の動作及び作用効果を説明する。
【0038】
運転スイッチ32で圧縮機本体1の起動が指示されると、給水弁15を閉状態に維持しつつ外部から給水ライン12に水を補給し、水クーラ13が満水状態となってセパレータ4内の水位が上限水位h1まで上昇したら、給水ライン12への水の補給を停止する。その後、給水弁15を閉状態から開状態に切換えて、水クーラ13に貯められた水を自重によって圧縮機本体の水潤滑部(詳細には、ロータ20A,20B同士の接触部やシール27A,27B,28A,28Bの摺動面)へ供給する。そして、所定時間経過後、圧縮機本体1を起動する。
【0039】
したがって、本実施形態においては、圧縮機本体1の起動時に乾燥運転となるのを抑えることができる。これにより、ロータ20A,20B同士の接触部やシール27A,27B,28A,28Bの摺動面における摩耗を低減することができ、信頼性を高めることができる。
【0040】
また、通常であれば、圧縮機本体1を1回でも駆動し、その後の停止時に給水弁15を閉状態とすることにより、水クーラ13に水を貯めることが可能である。しかし、圧縮機本体1の初めての起動時や、凍結防止のために水抜きを行った後の圧縮機本体1の起動時は、水クーラ13に水が貯められていない。このような場合にも対応するため、本実施形態では、給水弁15を閉状態としつつ外部から給水ライン12に水を補給しており、水の補給の完了を判断するために、水クーラ13が満水状態であるかどうかを確認している。そして、本実施形態では、水クーラ13が満水状態であるかどうかを確認するために、セパレータ4内の水位を検出するレベルスイッチ9を利用している。これにより、新たな検出器を設ける必要がないので、部品点数を軽減することができ、コスト低減を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態では、圧縮機本体1の起動前(すなわち、セパレータ1内の圧力が上昇する前)、水クーラ13に貯められた水を自重によって圧縮機本体1の水潤滑部へ供給するので、水を圧送するポンプを不要とし、コスト低減を図ることができる。また、水クーラ13に水を貯めるので、セパレータ4の貯水容量を低減することができ、コスト低減を図ることができる。
【0042】
本発明の第2の実施形態を、図5により説明する。本実施形態は、レベルスイッチ9が正常であるかどうかを判断し、レベルスイッチ9が正常であると判断した場合に給水ライン12に水を補給する実施形態である。なお、本実施形態は、上記第1の実施形態と同様の構成であり、制御装置の制御処理内容だけが異なるため、適宜説明を省略する。
【0043】
図5は、本実施形態における圧縮機本体1の起動時の制御装置30Aの制御処理内容を表すフローチャートである。
【0044】
この図5において、まず、ステップ100にて、運転スイッチ32から起動指示信号が入力されると、ステップ101に進み、排出弁11を開状態に制御して、排出ライン10を介しセパレータ4内の水を排出する。このとき、水が排出しやすいように、放気弁8を開状態に制御する。その後、ステップ102に進み、レベルスイッチ9からの検出信号に基づいてセパレータ4内の水位が下限水位h2まで下降したかどうか判定することにより、レベルスイッチ9が正常であるかどうかを判断する。例えばセパレータ4内の水位が下限水位h2まで下降していない場合は、ステップ102の判定が満たされず、ステップ103に移る。ステップ103では、予め設定された所定時間(詳細には、例えばセパレータ4内の水位が上限水位h1から下限水位h2まで下降するまでの時間を含むように設定された時間)が経過したかどうかを判定する。例えば所定時間が経過していなければ、ステップ103の判定が満たされず、前述のステップ102に戻って同様の手順を繰り返す。
【0045】
そして、例えばステップ103にて所定時間が経過した場合(すなわち、セパレータ4内の水位が下限水位h2まで下降したことをレベルスイッチ9が検出せず、レベルスイッチ9が異常であると判断された場合)は、その判定が満たされ、ステップ104に移る。ステップ104では、モニタ31に異常表示信号を出力して、モニタ31に「レベルスイッチ異常」のメッセージを表示させる。
【0046】
一方、例えばステップ102にてセパレータ4内の水位が下限水位h2まで下降した場合(すなわちレベルスイッチ9が正常であると判断された場合)は、その判定が満たされ、ステップ105に移る。ステップ105では、排出弁11を閉状態に制御してセパレータ4からの水の排出を停止する。その後、ステップ110に進み、上記第1の実施形態と同様、給水弁15を閉状態に維持しつつ、補給弁17を開状態に制御して、補給ライン16を介し外部から給水ライン12に水を補給する。このとき、放気弁8を閉状態に制御する。その後、ステップ120に進み、上記第1の実施形態と同様の手順を行う。
【0047】
なお、上記において、排出ライン10及び排出弁11は、特許請求の範囲に記載の貯留部に貯留された水を外部に排出可能な排出手段を構成する。制御装置30Aが行う前述のステップ101〜103は、圧縮機本体の起動が指示された場合、排出手段を制御して貯留部に貯留された水を排出し、その際、貯留部内の水位が予め第1の水位より低く設定された第2の水位まで下降したことを、水位検出器で検出したかどうか判定することにより、水位検出器が正常であるかどうかを判断する第2の水位判定手段を構成する。また、制御装置30Aが行う前述のステップ104及びモニタ31は、水位検出器が正常ではないと判断された場合に報知する報知手段を構成する。また、制御装置30Aが行う前述のステップ110は、水位検出器が正常であると判断された場合に、切換手段を止水状態に制御し、補給手段を制御して給水経路に水を補給する補給制御手段を構成する。
【0048】
以上のように構成された本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様、圧縮機本体1の起動時に乾燥運転となるのを抑えることができる。これにより、ロータ20A,20B同士の接触部やシール27A,27B,28A,28Bの摺動面における摩耗を低減することができ、信頼性を高めることができる。また、本実施形態では、圧縮機本体1の起動時に、レベルスイッチ9の正常・異常を判断することができ、給水ライン12への水の補給制御における信頼性を高めることができる。
【0049】
なお、上記第2の実施形態においては、レベルスイッチ9が正常ではないと判断された場合に報知する報知手段として、モニタ30に「レベルスイッチ異常」のメッセージを表示する場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えばブザーを吹鳴させたり、表示灯を点灯させたりしてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0050】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、セパレータ4内の水位を検出する水位検出器として、フロート式のレベルスイッチ9を設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば超音波式、静電容量式、又は圧力式のレベルスイッチを設けてもよい。また、複数のポイントを検出可能なレベルスイッチに代えて、セパレータタンク4内の水位を連続的に検出可能なレベル計を設けてもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、分離部4a及び貯留部4bが一体的に構成されたセパレータ4を備えた場合を例にとって説明したが、これに限られず、分離部4a及び貯留部4bが別体に構成されてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、給水ライン12における水クーラ13より圧縮機本体1側に設けられ、給水状態・止水状態に切換え可能な切換手段として、開状態・閉状態に切換え可能な給水弁15を設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、給水弁15に代えて、コストが増加するものの、例えば駆動状態・停止状態に切換え可能な給水ポンプを設けてもよい。この場合には、水クーラ13は、圧縮機本体1及びセパレータ4より上方に配置されなくともよいし、水クーラ13の被冷却水入口13aが被冷却水出口13bより高くなるように配設されなくともよい。
【0053】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、制御装置30,30Aは、前述のステップ150にて、給水弁15を開状態に切換えてから所定時間が経過した後、圧縮機本体1を起動する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、給水弁15から圧縮機本体1の内部に水が到達するまでの時間が短いか、若しくは圧縮機本体1の起動初期(低回転数域)においてロータ20A,20Bやシール27A,27B,28A,28Bの摩耗が生じないのであれば、給水弁15を開状態に切換えるのと同時又は直前に、圧縮機本体1を起動してもよい。
【0054】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、制御装置30,30Aは、運転スイッチ32からの指示信号に応じて圧縮機本体1の駆動・停止を制御するとともに、放気弁8、排出弁11、給水弁15、及び補給弁17の開閉を制御する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、圧縮機本体1の運転・停止時間が予め計画されて記憶された記憶装置を備え、この記憶装置からの指示信号に応じて制御してもよい。
【0055】
また、上記第1及び第2の実施形態においては、給油式圧縮機は、雄ロータ20A及び雌ロータ20Bが互いに接触して噛み合うように回転する圧縮機本体1を採用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えばタイミングギヤを用い、雄ロータ及び雌ロータが互いに接触しないで同期して回転する圧縮機本体を採用してもよい。この場合、ロータ同士の接触部を潤滑する必要がないため、給水ライン12からの水を注水口29Aに注入せず、注水口29B,29Cに注入するように構成してもよい。また、スクリュー型の圧縮機本体1に限られず、例えばスクロール型等の他の圧縮機本体を採用してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 圧縮機本体
4 セパレータ
4a 分離部
4b 貯留部
8 放気弁(放気手段)
9 レベルスイッチ
10 排出ライン(排出手段)
11 排出弁(排出手段)
12 給水ライン
13 水クーラ
13a 被冷却水入口
13b 被冷却水出口
15 給水弁(切換手段)
16 補給ライン(補給手段)
17 補給弁(補給手段)
30 制御装置(補給制御手段、第1の水位判定手段、給水制御手段、起動制御手段)
30A 制御装置(補給制御手段、第1の水位判定手段、給水制御手段、起動制御手段、第2の水位判定手段)
31 モニタ(報知手段)
32 運転スイッチ(指示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する圧縮機本体と、
前記圧縮機本体より吐出された圧縮空気から水を分離する分離部と、
前記分離部で分離された水を貯留する貯留部と、
前記貯留部内の水位を検出する水位検出器と、
前記貯留部から前記圧縮機本体の水潤滑部へ水を供給する給水経路と、
前記給水経路に設けられ、水を冷却する冷却器と、
前記給水経路における前記冷却器より前記圧縮機本体側に設けられ、給水状態・止水状態に切換え可能な切換手段と、
前記給水経路における前記冷却器と前記切換手段との間に接続され、外部から前記給水経路に水を補給可能な補給手段とを備えた給水式圧縮機において、
前記圧縮機本体の起動・停止を指示する指示手段と、
前記圧縮機本体の起動が指示された場合、前記切換手段を止水状態に制御しつつ、前記補給手段を制御して前記給水経路に水を補給する補給制御手段と、
前記切換手段が止水状態であって前記補給手段から前記給水経路に水が補給された場合、前記貯留部内の水位が予め設定された第1の水位まで上昇したかどうか判定することにより、前記冷却器が満水状態であるかどうかを判断する第1の水位判定手段と、
前記冷却器が満水状態であると判断された場合、前記補給手段による前記給水経路への水の補給を停止するとともに、前記切換手段を止水状態から給水状態に切換えて前記給水経路から前記圧縮機本体の水潤滑部への給水を開始する給水制御手段と、
前記給水経路から前記圧縮機本体の水潤滑部への給水を開始した後、若しくは同時か直前に、前記圧縮機本体を起動する起動制御手段とを備えたことを特徴とする給水式圧縮機。
【請求項2】
請求項1記載の給水式圧縮機において、
前記切換手段は、開状態・閉状態に切換え可能な給水弁であり、
前記冷却器は、前記圧縮機本体及び前記貯留部より上方に配置され、かつ前記冷却器の被冷却水入口が被冷却水出口より高くなるように配設されており、
前記圧縮機本体の起動が指示された場合で前記給水弁が閉状態から開状態に切換えられたときに、前記冷却器に貯められた水を自重によって前記圧縮機本体の水潤滑部へ供給するように構成したことを特徴とする給水式圧縮機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の給水式圧縮機において、
前記貯留部に貯留された水を外部に排出可能な排出手段と、
前記圧縮機本体の起動が指示された場合、前記排出手段を制御して前記貯留部に貯留された水を排出し、その際、前記貯留部内の水位が予め前記第1の水位より低く設定された第2の水位まで下降したことを、前記水位検出器で検出したかどうか判定することにより、前記水位検出器が正常であるかどうかを判断する第2の水位判定手段と、
前記水位検出器が正常ではないと判断された場合に報知する報知手段とを備え、
前記補給制御手段は、前記水位検出器が正常であると判断された場合に、前記切換手段を止水状態に制御し、前記補給手段を制御して前記給水経路に水を補給することを特徴とする給水式圧縮機。
【請求項4】
請求項1〜3記載の給水式圧縮機において、
前記貯留部内の空気を放気可能な放気手段を備えたことを特徴とする給水式圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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