説明

給水管路洗浄装置及びこれを用いた歯科用診療装置

【課題】給水管路中の給水量の変化に拘らず、管路洗浄に用いられる薬液希釈混合水の薬液濃度を一定に保つことができ、加えて、薬液濃度を診療にも使用し得るような調整も可能な給水管路洗浄装置と、これを用いた歯科用診療装置を提供することを目的とする。
【解決手段】診療器具3〜9と、該診療器具3〜9に診療用水を給水する為の給水管路31〜38と、該給水管路31〜38に薬液を供給する薬液供給手段13と、前記給水管路31の途中に設けられ前記薬液供給手段13からの薬液と診療用水とを混合する薬液混合希釈手段11と、制御手段16とを含む給水管路洗浄装置であって、前記診療器具3〜9における給水量を検出する給水量検出手段12を備え、前記制御手段16は、前記薬液供給手段13から薬液混合希釈手段11に薬液を供給させ、且つ、前記給水量検出手段12による給水量検出情報に基づき、前記薬液混合希釈手段11における薬液混合希釈水を所定の薬液濃度に保つよう前記薬液供給手段13からの薬液供給量を制御するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診療器具、特に歯科用診療器具に給水する給水管路等を洗浄する為の管路洗浄装置と、これを用いた歯科用診療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のような歯科用診療装置は、患者が着座乃至仰臥して診療を受ける歯科用診療台と、該診療台に付設された各種インスツルメントと、患者のうがい用スピットンとを含んで構成される。これらインスツルメントは、給水源から給水管路を経て先端より水を診療用水として患部に噴射させる為の注水手段を備えたインスツルメント(エアタービンハンドピース、マイクロモータハンドピース、スケーラ、ウォータシリンジ等)や、口腔内の唾液或いは処置汚物等を吸引排出するインスツルメント(バキュームシリンジ、サライバエジェクタ等)に類別される。前者のインスツルメントの場合、使用時には、給水源から常に清浄な水や低濃度の薬液混合希釈水が供給されるが、使用後は各給水管路に水が残留する。この残留水を給水管路内に長く放置すると、雑菌が増殖し、水垢が発生することになるので、残留水を定期的に排出させると共に管路内を洗浄する必要がある。また、スピットンにはコップ給水の為の給水管路が配管されており、このスピットン用給水管路においても、雑菌の増殖や、水垢の発生を防止する為に、管路内の残留水の排出及び洗浄を行う必要がある。
【0003】
特許文献1には、各歯科用診療器具に対する給水管路に、予め濃度調整された高濃度の消毒液(薬液)を導入し、スピットンに排出させることによって、給水管路の洗浄を行うようにした医療機器が開示されている。この医療機器において、薬液で給水管路の洗浄を行う際には、給水管路に設けられた切替制御弁によって給水源からの給水系は閉止される。
【0004】
また、特許文献2には、給水管路の途中に薬液供給管路を合流させ、この合流部で水と薬液とを混合して所定濃度に調整された消毒洗浄水とし、この消毒洗浄水を給水管路に流して給水管路を消毒洗浄する方法が記載されている。薬液の混合は、滴下量が設定された薬液滴下ポンプでなされる。そして、本特許文献2には、高濃度の消毒洗浄水によって給水管路の消毒洗浄を行う場合は、洗浄水を診療器具からは排水させずに診療装置に設けられた排出先に排水する方法と、低濃度の消毒洗浄水によって給水管路の消毒洗浄を行う場合は、洗浄液を診療器具からは排水させる方法とを併用する例も開示されている。
【特許文献1】特開2000−5200号公報
【特許文献2】特開2002−209917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された給水管路の洗浄方法の場合、給水管路の洗浄の都度、予め所定濃度に調整された薬液を準備する必要があり、ユーザにとってはこれが煩雑であるという指摘もされていた。また、給水管路の洗浄時には給水源からの給水を停止させる為に、給水管路には切替制御弁を設けることが必要とされ、管路構成やシーケンスが複雑となる。更に、前記切替制御弁は給水源側の給水管路と、薬液供給管路とを切替えるものであるから、給水源側の給水に薬液を混合希釈させて低濃度の薬液とし、通常の診療時に各診療機器よりこの低濃度の薬液を注水させるという考えはなく、このようなニーズには応えることができなかった。
【0006】
特許文献2に開示された給水管路の洗浄方法の場合、給水源からの水に混合される薬液量は、薬液滴下ポンプにおいて予め設定されている。従って、高濃度洗浄および低濃度洗浄の併用が可能に構成される場合は、それぞれの条件に設定された2種の滴下ポンプとこれに付随する管路等を設ける必要がある。また、給水管路中の給水量が変化すると、混合希釈後の薬液濃度が変動する。高濃度での管路洗浄の場合、診療器具より排水させることなく排出先に排水するようにしているから、給水管路中の給水量の変化が少なく、混合希釈後の薬液濃度を所期の濃度に維持することは可能であるが、薬液洗浄水を診療器具より排水させて洗浄を行う場合、診療器具によって給水量が異なる為、混合希釈後の薬液濃度が変動する。特に、コップ給水の場合の給水量は多く、インスツルメントを基準に薬液滴下量を設定すると、所期の薬液濃度にならず、充分な洗浄効果が得られないことがある。一方、コップ給水を基準に薬液滴下量を設定すると、インスツルメント用しては薬液濃度が過剰となる。更に、歯科用のインスツルメントの場合、各インスツルメント毎に、手操作或いは足踏み操作できる注水量可変絞り手段が設けられており、術者によってこの可変絞り手段が適宜操作されているから、管路洗浄の際にはインスツルメント毎に給水量が異なり、従って、管路洗浄に使用される薬液混合希釈水の薬液濃度がインスツルメント毎に異なることになる。そして、通常診療に低濃度の希釈薬液を用いる場合は、このような薬液の濃度の変動は、診療に影響を及ぼすことになり好ましくない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、給水管路中の給水量の変化に拘らず、管路洗浄に用いられる薬液希釈混合水の薬液濃度を一定に保つことができ、加えて、薬液濃度を診療にも使用し得るような調整も可能な給水管路洗浄装置と、これを用いた歯科用診療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る給水管路洗浄装置は、診療器具と、該診療器具に診療用水を給水する為の給水管路と、該給水管路に薬液を供給する薬液供給手段と、前記給水管路の途中に設けられ前記薬液供給手段からの薬液と診療用水とを混合する薬液混合希釈手段と、制御手段とを含む給水管路洗浄装置であって、前記診療器具における給水量を検出する給水量検出手段を備え、前記制御手段は、前記薬液供給手段から薬液混合希釈手段に薬液を供給させ、且つ、前記給水量検出手段による給水量検出情報に基づき、前記薬液混合希釈手段における薬液混合希釈水を所定の薬液濃度に保つよう前記薬液供給手段からの薬液供給量を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明において、前記給水量検出手段を、前記薬液混合希釈手段の下流側の給水管路に設けられた流量計とし、或いは、前記各診療器具に対応して設けられた可変絞り弁手段とすることができる。
【0010】
また、本発明において、前記薬液供給手段を、薬液ボトルと、該薬液ボトルを保持する保持部と、該保持部及び前記薬液混合希釈手段間を接続する薬液配管と、該薬液配管の途中に設けられた薬液ポンプとより構成しても良い。この場合、前記薬液ボトルを、前記保持部に対して着脱自在に装着されるよう構成しても良い。更に、前記保持部が、設置された薬液ボトル内の薬液量を検出する薬液量検出手段を備え、前記制御手段には報知手段が更に接続され、該制御手段は、前記薬液量検出手段からの薬液なし乃至は少の検出情報に基づき、前記報知手段をしてその旨の報知を行わせるよう制御するようにしても良い。報知手段としては、音、光、ディスプレイ表示等のいずれか、或いはこれらの組み合わせによるものが採用される。
【0011】
また、本発明において、更に管路洗浄スイッチを備え、該管路洗浄スイッチを、診療時の薬液低濃度モードから、洗浄時の薬液高濃度モードに切り換えるものとし、前記制御手段は、該管路洗浄スイッチがオン操作されたときには、当該高濃度モードに基づき前記薬液混合希釈水を前記所定の薬液濃度に保つよう薬液供給手段からの薬液供給量を制御するようにしても良い。この場合、前記制御手段は、前記管路洗浄スイッチのオン操作による高濃度モードでの管路洗浄の後、前記低濃度モードによる薬液混合希釈水又は薬液を含まない診療用水を用いて前記給水管路内を洗浄するよう前記薬液供給手段からの薬液供給量を制御するようにしても良い。
【0012】
第2の発明に係る歯科用診療装置は、患者が着座乃至仰臥する歯科用診療台と、前記のいずれかの給水管路洗浄装置とを備え、前記診療器具が歯科診療器具であって、該歯科診療器具が前記歯科用診療台に付設されていることを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記歯科診療器具が、複数の歯科用インスツルメントと、スピットンに備えられたコップ給水部とからなり、前記スピットンは、前記インスツルメントの先端を差込保持し、排水管路に通じる洗浄水受タンクを備えているものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明に係る給水管路洗浄装置によれば、前記給水管路の途中に設けられた前記薬液混合希釈手段において、前記薬液供給手段から薬液混合希釈手段に薬液が供給され、給水管路中の診療用水と混合されて薬液混合希釈水が生成される。この薬液混合希釈水は給水管路を経て診療器具に給水される。従って、給水管路及び診療器具が薬液混合希釈水によって洗浄され、繁殖する細菌等を確実に滅菌除去することができる。このとき、前記制御手段によって、前記給水量検出手段による給水量検出情報に基づき、前記薬液混合希釈手段における薬液混合希釈水を所定の薬液濃度に保つよう前記薬液供給手段からの薬液供給量が制御されるから、給水管路の給水量が変化しても薬液混合希釈水の薬液濃度が一定に保たれ、各診療器具およびこれに接続される給水管路に対する所期の洗浄効果が、確実且つ均等に発現される。
【0015】
前記給水量検出手段を、前記薬液混合希釈手段の下流側の給水管路に設けられた流量計とした場合、この流量計によって給水管路を流れる給水量が計時的に検出され、この検出情報に基づき、制御手段により前記薬液供給手段からの薬液供給量が制御されるから、薬液混合希釈水の薬液濃度の維持が的確になされる。また、前記給水量検出手段を前記各診療器具に対応して設けられた可変絞り弁手段とした場合、可変絞り弁手段の操作により各診療器具毎に給水量が異なっていても、この可変絞り弁手段による給水量検出情報に基づき薬液混合希釈水の薬液濃度の維持が的確になされる。特に、給水管路洗浄は、通常各診療器具毎になされるから、各診療器具固有の給水量に対応させることができる。
【0016】
前記薬液供給手段を、薬液ボトルと、該薬液ボトルを保持する保持部と、該保持部及び前記薬液混合希釈手段間を接続する薬液配管と、該薬液配管の途中に設けられた薬液ポンプとより構成した場合、原液或いは高濃度の薬液が充填された薬液ボトルから薬液ポンプによって適量が薬液配管を通じて薬液混合希釈手段に供給される。そして、前記薬液ボトルを、前記保持部に対して着脱自在に装着するようにすれば、薬液ボトル内への薬液の補充や薬液ボトルの交換が容易になされる。更に、前記保持部が、前記薬液量検出手段を備え、制御手段が、前記薬液量検出手段からの薬液なし乃至は少の検出情報に基づき、前記報知手段をしてその旨の報知を行わせるよう制御するものとした場合、この報知により、薬液ボトル内への薬液の補充等が必要であることが知らされるから、薬液欠乏等による洗浄不十分な事態を未然に回避することができる。
【0017】
管路洗浄スイッチを更に設け、この管路洗浄スイッチは、診療時の薬液低濃度モードから、洗浄時の薬液高濃度モードに切り換えるものとである。前記制御手段は、該管路洗浄スイッチがオン操作されたときには、当該高濃度モードに基づき前記薬液混合希釈水を前記所定の高濃度薬液に保つよう薬液供給手段からの薬液供給量を制御するようにした場合、管路洗浄スイッチが操作されないときには、診療時の薬液低濃度モードに基づき前記薬液混合希釈水を前記所定の低濃度又は薬液を含まない診療用水に保つよう薬液供給手段からの薬液供給量を制御されているから、診療時に各診療器具が個々に操作された際、それぞれの診療器具から、低濃度の薬液混合希釈水が注出され診療に供される。この場合、前記制御手段は、前記管路洗浄スイッチのオン操作による高濃度モードでの管路洗浄の後、前記低濃度モードによる薬液混合希釈水又は薬液を含まない診療用水を用いて前記給水管路内を洗浄するよう前記薬液供給手段からの薬液供給量を制御するようにすれば、高濃度薬液混合希釈水による管路洗浄の後、引き続いて低濃度の薬液混合希釈水又は薬液を含まない診療用水で管路がすすぎ洗浄されるから、各診療器具を通常の診療時に即使用し得るような状態に自動的に整えられることになる。
【0018】
第2の発明に係る歯科用診療装置によれば、前記診療器具が歯科用診療台に付設された歯科診療器具であるから、前記給水管路洗浄装置によって、各診療器具及び給水管路が常時清潔な状態に保たれ、適正な歯科診療を実施することができる。この場合、前記歯科診療器具が、複数の歯科用インスツルメントと、スピットンに備えられたコップ給水部とからなるものとすれば、各インスツルメント及びコップ給水部が、給水管路洗浄装置によって常時清潔に保たれる。そして、前記スピットンが、前記インスツルメントの先端を差込保持し、排水管路に通じる洗浄水受タンクを備えているものとすれば、管路洗浄時に各インスツルメントを洗浄水受タンクに差込保持させて前記管路洗浄スイッチをオンとすれば、各インスツルメントからの洗浄水は自動的に排水管路より排出される。また、コップ給水部からの洗浄水はスピットンに備えられたベースンより前記排水管路に排出される。従って、洗浄作業時毎にスピットンのベースン上にセットして用いる洗浄タンク(例えば、特許文献1及び特許文献2に開示された洗浄タンク)のような、使用上及び保管上の煩わしさがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の形態について図面に基づき説明する。図1は本発明の給水管路洗浄装置の一実施形態を示す配管系統図、図2は同給水管路洗浄装置の制御ブロック図、図3は同給水管路洗浄装置による洗浄工程のタイムチャート図、図4(a)(b)は同給水管路洗浄装置に用いられる薬液供給手段の一実施形態を示す概念図であり(a)は薬液ボトルの装着前の状態を、(b)は装着した状態を夫々示す。図5(a)(b)は同薬液供給手段に用いられる薬液ポンプの一実施形態の断面図であり、(a)(b)はその動作状態を示す。図6は同給水管路洗浄装置を用いた歯科用診療装置の斜視図、図7(a)は同歯科用診療装置におけるスピットン部分の別角度から見た斜視図、(b)は同スピットン部分の断面図、図8は他の実施形態の給水管路洗浄装置の配管系統図、図9は同給水管路洗浄装置の制御ブロック図、図10(a)(b)(c)はスピットン部分の他の実施形態を示し(a)は斜視図、(b)(c)はその使用状態の部分破断側面図を示す。図11は他の実施形態のスピットン部分を備えた歯科用診療装置の斜視図、図12(a)(b)は同歯科用診療装置におけるスピットン部分の平面図及び縦断面図、図13は更に他の実施形態のスピットン部分の斜視図である。
【0020】
先ず、図6を参照して本発明に係る歯科用診療装置について概説する。図6に示す歯科用診療装置Aは、患者が着座乃至は仰臥した状態で診療を受けることができる歯科用診療台1と、該診療台1の側部に設置されたスピットン2と、診療台1の背板1cに繰出し自在に装備された複数の歯科用インスツルメント(歯科診療器具)3〜8(図1参照)とを備えている。歯科用診療台1は、基台1aと、該基台1a上に昇降自在に設置された座板1bと、該座板1bの一端に起伏自在に連接された背板1cと、該背板1cの上端に傾動自在に取付けられたヘッドレスト1dとより構成され、図例では側部にアームレスト1eも備えている。スピットン2は、図例では座板1bの側部に座板1bと共に上下昇降可能に設置されているが、床面に立設されるものであっても良い。スピットン2は、胴部2aと、その上端に設置されたベースン2bと、ベースン2bに設置された歯科診療器具としてのコップ給水栓(コップ給水部)9とより構成される。該胴部2aには、後記する洗浄水受タンク10が出没自在に設けられている。前記歯科用インスツルメント3〜8は、電気やエア等の作用媒体供給用ホース3a〜8aの先端に接続され、背板1cの肩部より繰出し自在に装備されている。図6では、これらインスツルメント3〜8を背板1cの肩部より繰出し、後記する管路洗浄の為、その先端部を前記洗浄水受けタンク10に差込装着した状態を示している。図示のインスツルメント3〜8は、夫々第1のエアタービンハンドピース(ハイスピードハンドピース)、第2のエアタービンハンドピース(同)、マイクロモータハンドピース(ロースピードハンドピース)、超音波スケーラ、ドクター側スリーウェイシリンジ及びアシスタント側スリーウェイシリンジとされている。
尚、インスツルメント3〜8は、診療台1の側部に旋回自在或いは移動自在に装備される不図示のトレーテーブルに設けられたホルダーに係止されるよう構成しても良いし、背板1cの肩部の左右にどのように配置しても構わない。
【0021】
次に、本発明に係る給水管路洗浄装置の管路構成を含む前記各インスツルメント用作用媒体(給水、給気)の管路構成について説明する。図1において、給水用管路(スピットン用給水管路含む)は、診療用水の水元(給水源、水道水)30に接続された主給水管路31と、この主給水管路31から分岐する分岐給水管路32〜39とよりなる。主給水管路31には、手動の元弁31a、給水元電磁弁31b、除菌フィルタ31c、後記する薬液混合希釈手段11、後記する流量計12及びウォーマ31d等が配設されている。分岐給水管路32は第1のエアタービンハンドピース3に、分岐給水管路33は第2のエアタービンハンドピース4に、分岐給水管路34はマイクロモータハンドピース5に、分岐給水管路35は超音波スケーラ6に、分岐給水管路36はドクター側スリーウェイシリンジ7に、分岐給水管路37はアシスタント側スリーウェイシリンジ8に、分岐給水管路38はコップ給水栓9に、分岐給水管路39はスピットン2におけるベースン2bの所謂鉢洗い用給水部2cに、夫々接続されている。
【0022】
分岐給水管路32〜35の途中には、電磁弁32a,33a,34a,35aが配設されている。これら給水管路32〜35に対応するインスツルメント3〜6の通常の使用時においては、いずれかのインスツルメントがホルダー(不図示)から取外されたことがホルダーに設けられたセンサ(不図示)により検出され、フートスイッチ(不図示)の操作がなされると、取外されたインスツルメントに対応する電磁弁が開となって、当該インスツルメントの注水口から注水がなされる。また、分岐給水管路38の途中には、電磁弁38aが配設され、コップ給水栓9下の患者等の手及びコップの存在を検出するとこの電磁弁38aが開となって、コップ給水栓9からの給水がなされる。分岐給水管路39の途中には、電磁弁39aが配設され、スピットン2の使用時毎にこの電磁弁39が開とされ、ベースン2bの鉢洗いがなされる。
【0023】
ドクター側スリーウェイシリンジ7及びアシスタント側スリーウェイシリンジ8に接続される分岐給水管路36及び37の途中には、上記のような電磁弁は存在せず、これらスリーウェイシリンジ7,8は、そのグリップ部にメカバルブ(不図示)及び操作レバー(不図示)を備え、ドクター及びアシスタントによる操作レバーの押圧操作によって先端ノズル部からの注水がなされる。また、前記インスツルメント3〜6に対応する電磁弁32a〜35aの下流側近傍の分岐給水管路32〜35には、可変絞り弁32b〜35bが配設され、スリーウェイシリンジ7,8に対応する分岐給水管路36,37には前記操作レバーに連動する可変絞り弁36a,37aが設けられている。
【0024】
エア供給管路は、コンプレッサー(不図示)による圧縮空気源としてのエア元40と、このエア元40に接続された主エア供給管路41と、この主エア供給管路41から分岐する分岐エア供給管路42〜50とよりなる。エア供給管路42,43はエアタービンハンドピース3,4のタービン駆動用であり、その途中には、フートスイッチの足踏み操作により開閉する電磁弁(いずれも不図示)が配設される。エア供給管路44〜47は、前記給水管路32〜35から供給される水を噴霧させるチップエア用として各インスツルメント(エアタービンハンドピース、マイクロモータハンドピース、超音波スケーラ)3〜6に導入されるもので、途中にフートスイッチの足踏み操作により開閉する電磁弁44a〜47aが配設されている。また、エア供給管路50は、マイクロモータハンドピース5の発熱を防ぐ為のクーリングエアを噴出させるもので、途中に上記同様フートスイッチの足踏み操作により開閉する電磁弁50aが配設されている。
【0025】
エア供給管路48,49は、ドクター側スリーウェイシリンジ7及びアシスタント側スリーウェイシリンジ8に接続され、その先端ノズル部よりエアを噴出させるようにしたもので、このエア供給管路48,49の途中には上記のような電磁弁は存在せず、これらスリーウェイシリンジ7,8は、そのグリップ部にエア用メカバルブ(不図示)及びエア用操作レバー(不図示)を備え、ドクター及びアシスタントによる操作レバーの押圧操作によって先端ノズル部からのエアの噴出がなされる。このエア操作レバーは、前記給水用操作レバーと並設され、ドクター及びアシスタントによって両者が選択的に或いは同時に押圧操作される。主エア供給管路41の途中に、手動の元弁41aが配設され、この元弁41aの下流側には、除菌フィルタ41b等が設けられている。
【0026】
前記薬液混合希釈手段(薬液混合タンク)11には、薬液供給手段13が接続されている。該薬液供給手段13は、薬液ボトル14と、該薬液ボトル14内の薬液を適量ずつ薬液混合希釈手段11に供給する薬液ポンプ15とよりなる。薬液供給手段13の詳細構成については後記する。スピットン2からの排水及び後記する洗浄水受タンク10からの排水は、排水管路61を経て、排水先60に排水される。通常の診療作業においては、スリーウェイシリンジ7,8を除くインスツルメント3〜6が夫々のホルダー(不図示)から取外され、所望の作用媒体に対応するフートスイッチを足踏み操作すると、取外されたインスツルメントに所望の作用媒体が供給される。スリーウェイシリンジ7,8の使用時には、上述のように各グリップ部に設けられた操作レバー(不図示)の押圧操作により、先端部から所望の作用媒体を噴出させることができる。
【0027】
図2は、給水管路洗浄装置を含む前記管路構成における制御ブロック図である。図2において、CPUからなる制御手段16が、全体の制御を司る。この制御手段16には、前記各インスツルメント等(歯科診療器具)の前記電磁弁等を駆動させる為の駆動回路17、管路洗浄スイッチ18、表示手段19、報知手段20、薬液供給手段13、流量計12及び薬液量検出手段21が接続されている。管路洗浄スイッチ18は、前記歯科用診療台1(図6参照)の側部に移動可能に設置されるトレーテーブル(不図示)等に設けられ、給水管路の洗浄の際にドクター若しくはアシスタント等によって操作される。表示手段19は、同トレーテーブル等に設置され、診療等に関する各種情報が表示される。報知手段20は、後記する薬液ボトル14内の薬液量が薬液量検出手段21によって少なくなったことが検出された場合や、その他の装置での異常を検知した場合等において、その旨の報知を行うべく機能する。
【0028】
図4及び図5は、薬液供給手段13を構成する薬液ボトル14及び薬液ポンプ15の概要を示している。図4において薬液ボトル14は、筒状口部14aと、該筒状口部14aの開口部に取付けられた逆止弁部材14bとを備え、椀型のボトル保持部22に着脱自在に装着可能とされる。ボトル保持部22は、底部に前記筒状口部14aを受容する受支筒22aを備え、該受支筒22aには薬液混合希釈手段11に通じる薬液配管23の基端部23aが水密的に挿通されている。図4(a)は、例えば、過酸化水素水や、次亜塩素酸ナトリウム等の薬液が充填された薬液ボトル14をボトル保持部22に装着する過程を示しており、薬液ボトル14は前記筒状口部14aを下向きにして装着される。図4(b)に示すように筒状口部14aを受支筒22aに挿入受容させると、前記薬液配管23の斜めにカットされた基端部23aが逆止弁部材14bを押上げて筒状口部14aの開口部が開放され、薬液ボトル14内の薬液が薬液配管23内に流入する。薬液配管23内に流入した薬液は、薬液ポンプ15によって弁制御され、逐次薬液混合希釈手段11に供給される。また、薬液配管23の少なくともボトル保持部22の近傍部位には透光部が形成され、この透孔部を挟んで発光部21aと受光部21bとよりなる薬液量検出手段(センサ)21が設置されている。この薬液量検出手段21により薬液ボトル14内の薬液量(有無)が検出される。この薬液量検出手段21としては、例示のものに限らず、薬液ボトル14内に設置されるフロート式等の水位センサ等であっても良い。
【0029】
前記薬液配管23の途中には図5に示す薬液ポンプ15が設けられている。この薬液ポンプ15は、前記特許文献2の図2に示されたものと略同様の構成を備えたものであり、図5(a)は薬液吸引時の状態を、(b)は薬液送り出し時の状態を示している。この薬液ポンプ15は、主に、第1ポンプケース151、第2ポンプケース152、これらのケース151、152に収容されたベロフラム153、ピストン154、圧縮バネ155、それぞれ鋼球で構成された逆止弁体156、157から構成されている。第1ポンプケース151は、内室151aを備え、該内室151aは、ソケット151bを介して接続された圧縮エア管路151cに通じている。この圧縮エア管路151cは、前記主エア供給管路41(図1参照)から分岐され、その途中にポンプ駆動用の電磁弁(不図示)が配設されている。このポンプ駆動用の電磁弁が開となり、内室151aに加圧空気が供給されると、ベロフラム153及びピストン154を圧縮バネ155の弾力に抗して押上げ(図5(b)の状態)、当該ポンプ駆動用の電磁弁が閉となると、圧縮バネ155の弾力によってベロフラム153及びピストン154が押下げられ、内室151a内の空気が排出される(図5(a)の状態)よう構成されている。第2ポンプケース152は、第1ポンプケース151の内室151aに対応する内室152aを備え、この内室152a内に前記圧縮バネ155が弾装されている。また、この内室152aの上部に連接され左右側方に貫通する2個の弁室152b、152cを備えている。
【0030】
これらの弁室152b,152cの内、弁室152bはソケット152dを介して前記薬液ボトル14側の薬液配管23bに接続され、弁室152cはソケット152eを介して前記薬液混合希釈手段11側の薬液配管23cに接続されている。そして、各弁室152b,152cに逆止弁体156、157が、多孔性の規制部材156a,157aによって抜出不能の状態で内装されている。また、弁室152bにおけるソケット152dの端面が、逆止弁体156が接離する弁座152fとされ、弁室152bにおける前記内室152aとの境界の小径孔が形成された壁部が、逆止弁体157が接離する弁座152gとされている。
【0031】
図5(a)に示すように、前記ポンプ駆動用の電磁弁が閉となり、ベロフラム153及びピストン154が押下げられ、第1ポンプケース15の内室151a内の空気が排出されると、第2ポンプケースの内室152a内が負圧となり、これに伴い、逆止弁体156が弁座152fから離れて該弁座152fが開となると共に、逆止弁体157が弁座152gに接して該弁座152gが閉となる。従って、薬液配管23bから薬液が内室152a内に吸入される。また、図5(b)に示すように、前記前記ポンプ駆動用の電磁弁が開となり、加圧空気が第1ポンプケース15の内室151a内に導入されると、ベロフラム153及びピストン154が圧縮バネ154の弾力に抗して押上げられ、第2ポンプケースの内室152a内が加圧され、これに伴い、逆止弁体156が弁座152fに接して該弁座152fが閉となると共に、逆止弁体157が弁座152gから離れて該弁座152gが開となる。従って、内室152a内に吸入されていた薬液は薬液配管23cから前記薬液混合希釈手段11側に排出される。これを繰り返し、ポンプ駆動用の電磁弁の動作によって、前記薬液ボトル内の薬液が、薬液混合希釈手段11に適量ずつ供給される。即ち、ポンプ駆動用の電磁弁の動作タイミング及び速度を適宜制御することによって、薬液供給手段13から薬液混合希釈手段11への薬液の供給量が調整され、薬液混合希釈手段11による薬液混合希釈水の薬液濃度の設定が適宜なされる。
【0032】
図7(a)(b)は、図6の歯科用診療装置Aに設置されたスピットン部分を示す図である。図において、スピットン2は、胴部2a上に設置されたうがい水の排出用ベースン2bと、このベースン2bに設けられたコップ給水栓9とを含む。コップ給水栓9の下にはうがい用コップcが置かれる。胴部2aには洗浄水受タンク10を収納するための空洞部2dが形成されている。この空洞部2dの開口部には上下に開閉する開閉扉2eが取付けられている。ベースン2bには、胴部2a内から装置外の排水系(不図示)に通じる排水管路2fが接続されている。前記空洞部2dには、洗浄水受タンク10が引出し自在に収納されている。洗浄水受タンク10は、タンク本体10aと、この上面開口部を覆う天板部10bとよりなる。天板部10bには上記各種インスツルメント3〜8の先側を差込保持するための複数の保持孔10c…が設けられている。タンク本体10aの背面壁部に排水口10dが設けられ、この排水口10dと上記胴部2a内のスピットン排水管路2fとが、フレキシブルチューブからなる排水管10eにより連結されている。
【0033】
図7(b)では、排水口10dはタンク本体10aの壁部中間位置に設けられ、タンク本体10aに溜まった排液がオーバフローして排出される例を示しているが、この排水口10dをタンク本体10aの底部に設けて排液を逐次排出するようになすことも可能である。タンク本体10aの前面壁部には取手10fが設けられ、洗浄水受タンク10の取出しに便なように配慮がなされている。上記空洞部2d内には水平な棚部2gが設けられ、洗浄水受タンク10の収納時にはこの棚部2g上に洗浄水受タンク10が静置される。洗浄水受タンク10を使用の為取り出す際は、開閉扉2eを開け、取手10fを引き洗浄水受タンク10を空洞部2d外に引出す。この引出し方向は診療台1側に向けられ、従って引出された状態では洗浄水受タンク10は、各インスツルメント3〜8が届く範囲に位置することになる。
尚、図7(b)では、前記保持孔10cにバキュームシリンジvcが差込保持された状態を示しているが、これは後記するインスツルメント3〜8の管路洗浄の際に排出されタンク本体10aに溜まった排液を吸引して、バキュームシリンジvc関連の配管の洗浄、消毒することができることを示している。
【0034】
次に、上記構成における給水管路洗浄装置における洗浄工程について、図3のタイムチャート図も参照して説明する。給水管路洗浄操作に先立ち、各インスツルメント3〜8を前記洗浄水受タンク10の前記所定の保持孔10cに差込装着する。この装着状態では、スリーウェイシリンジ7及びスリーウェイシリンジ8の前記操作レバーが作動して各可変絞り弁36a,37aが開状態とされるが、これらの制御元弁(不図示)はオフ状態とされる。そして、図3において管路洗浄スイッチ18がオン操作されると、薬液ポンプ15が動作状態(オン状態)とされると共に給水元電磁弁31bがオン(開)とされる。同時にマイクロモータハンドピース5の給水電磁弁34a(図1参照)がオン(開)とされる。前記制御手段16は流量計12の検出流量を監視し、予め設定された高濃度モードに基づき、薬液混合希釈手段11における薬液混合希釈水が当該高濃度モードに対応する薬液濃度となるよう、薬液ポンプ15を作動させて薬液ボトル14から薬液を薬液混合希釈手段11に供給制御し、給水元30からの診療用水に薬液を混合して希釈する。生成された薬液混合希釈水を主給水管路31及び分岐給水管路32を経てマイクロモータハンドピース5の先端注水口より洗浄水受タンク10内に排出する。予め設定された時間が経過するまでを高濃度薬液の作成工程S1として、これを継続する。ここで、マイクロモータハンドピース5関連の給水管路に薬液混合希釈水を流すことから開始してこれを高濃度薬液の作成工程S1としたのは、マイクロモータハンドピース5に対する給水量は他の診療機器に比べて最も少なく、従って、薬液混合希釈手段11による薬液混合希釈水を所定の高濃度に早く到達させることができるからである。
【0035】
前記高濃度薬液の作成工程S1が終了すると、マイクロモータハンドピース5の給水電磁弁34aがオフ(閉)とされ、同時にコップ給水栓9の給水電磁弁38a(図1参照)がオン(開)とされる。前記制御手段16は、ここでも流量計12の検出流量を監視し、薬液ポンプ15を作動させ、予め設定された高濃度モードに基づき、薬液混合希釈手段11における薬液混合希釈水が当該高濃度モードに対応する薬液濃度を維持するよう薬液を薬液混合希釈手段11に供給する。生成された薬液混合希釈水は、主給水管路31及び分岐給水管路38を経てコップ給水栓9よりベースン2bに排出される。この間、主給水管路31、分岐給水管路38及びコップ給水栓9内の給水管路、更にはベースン2b内が洗浄され、消毒される。
【0036】
所定時間経過後、コップ給水栓9の給水電磁弁38aがオフ(閉)とされ、引続き、スリーウェイシリンジ7の前記制御元弁(不図示)、スリーウェイシリンジ8の前記制御元弁(不図示)、エアタービンハンドピース3の給水電磁弁32a、エアタービンハンドピース4の給水電磁弁33a、超音波スケーラ6の給水電磁弁35a及びマイクロモータハンドピース5の給水電磁弁34aが、夫々に定められた所定時間オン(開)状態とされ、この順序でこのオン状態が順次切換わってゆく。各給水電磁弁等がオンの間、各インスツルメント7,8,3,4,6,5の注水口からは、薬液混合希釈水が夫々の分岐給水管路36,37,32,33,35,34を経て洗浄水受タンク10内に排出され、各給水管路及びインスツルメント内の注水管路が洗浄され、消毒される。また、各インスツルメント及びその分岐給水管路の洗浄の間、制御手段16は流量計12の検出流量を監視し、薬液ポンプ15を作動させ、予め設定された高濃度モードに基づき、薬液混合希釈手段11における薬液混合希釈水が当該高濃度モードに対応する薬液濃度を維持するよう薬液を薬液混合希釈手段11に供給する。コップ給水栓9からマイクロモータハンドピース5に至る一連の洗浄が洗浄工程S2とされる。この一連の洗浄順序は設計給水量が多いもの順とされる。そして、各インスツルメント3〜8は、通常の診療時の各可変絞り弁32b〜35b、36a,37aが術者によって適宜調整がなされているから、実際の給水量は設計値とは一致しておらず、従って、流量計12による検出流量に基づき薬液供給量を制御することにより、いずれの場合も略等しい薬液濃度で洗浄がなされることになる。
【0037】
マイクロモータハンドピース5関連の管路洗浄が終了すると、薬液ポンプ15がオフとされ、同時にコップ給水栓9の給水電磁弁38aがオンとされる。給水元30からは引続き主給水管路31を経て診療用水としての水道水が薬液混合希釈手段11に供給される。薬液混合希釈手段11では、薬液ポンプ15がオフとされていることにより薬液の供給が停止されているから、生成される薬液混合希釈水の薬液濃度が経時的に低下し、やがて原水の状態(薬液濃度がゼロの状態)となって、分岐給水路38を経てコップ給水栓9よりベースン2bに排出される。この間に、分岐給水路38からコップ給水栓9までの給水管路が、低薬液濃度乃至は薬液濃度がゼロの水によってすすぎ洗浄がなされ、すすぎ洗浄工程S3が開始される。このように、コップ給水栓9関連の給水管路からすすぎ洗浄を開始するようにしたのは、コップ給水栓9の給水量が多いので、薬液混合希釈手段11内の薬液濃度を早く低下させることができるからである。
【0038】
所定時間コップ給水栓9関連の給水管路のすすぎ洗浄を行った後、給水電磁弁38aがオフとされ、同時にスリーウェイシリンジ7の前記制御元弁(不図示)がオンとされ、スリーウェイシリンジ7関連の給水管路のすすぎ洗浄がなされる。以後、前記と同様の順序で、スリーウェイシリンジ8、エアタービンハンドピース3、エアタービンハンドピース4、超音波スケーラ6及びマイクロモータハンドピース5の各関連給水管路のすすぎ洗浄が、各所定時間毎に順次なされる。マイクロモータハンドピース5関連のすすぎ洗浄が終了すると、管路洗浄スイッチ18が自動的にオフとされ、同時に給水元電磁弁31bもオフとされる。前記高濃度薬液の作成工程S1から、管路洗浄工程S2及びすすぎ洗浄工程S3への一連の工程は、管路洗浄スイッチ18のオン操作により、予め定められたシーケンスに従ってなされる。
【0039】
前記管路洗浄スイッチ18は、単なる管路洗浄のオン・オフの切り換えだけでなく、通常の診療時の薬液低濃度モードから、洗浄時の薬液高濃度モードに切り換えるものとしても良い。この場合、管路洗浄スイッチ18を薬液高濃度モードに切り換えると、前記高濃度薬液の作成工程S1から、管路洗浄工程S2及びすすぎ洗浄工程S3への一連の工程が、薬液高濃度モードに基づき予め定められたシーケンスに従ってなされる。そして、管路洗浄スイッチ18を薬液低濃度モードに戻すと、薬液ポンプ15が再び動作状態とされる。各インスツルメント3〜8及びコップ給水栓9の使用に伴う流量計12による診療用水の検出流量に応じて、薬液ポンプ15から薬液が薬液混合希釈手段11に供給される。薬液混合希釈手段11により生成される薬液混合希釈水の薬液濃度は、薬液低濃度モードに基づき予め定められており、前記制御手段16は、診療用水の検出流量に応じ、薬液混合希釈水をこの所定の薬液濃度に維持するよう、薬液ポンプ15をして薬液混合希釈手段11への薬液の供給量を制御する。このように、薬液混合希釈手段11により生成された低濃度の薬液混合希釈水は、診療用水として通常の診療に供せられる。
【0040】
図8及び図9は、本発明に係る管路洗浄装置の他の実施形態を示す。この実施形態は、前記給水量検出手段を、前記実施形態の流量計12に代え、各インスツルメント3〜8及びコップ給水栓9毎に設けられる可変絞り弁32b〜35b、36a,37a,38bとした点で特徴付けられる。即ち、図8に示すように、主給水管路31における薬液混合希釈手段11の下流側の流量計をなしとし、コップ給水栓9用の分岐給水路38における電磁弁38aの下流側に、新たに可変絞り弁38bを設けている。図9ではこれら可変絞り弁32b〜35b、36a,37a,38bをまとめて流量調整手段24として示している。このような可変絞り弁32b〜35b、36a,37a,38bは、通常の診療時には、不図示のトレーテーブルに設置された操作パネル(ディスプレイに表示されるタッチパネルも含む)やその他の操作手段(例えば、フートスイッチ等)によって、術者が個々に開度調整するものである。
【0041】
而して、本実施形態では、前記制御手段16が、各可変絞り弁毎の開度と流量との対応テーブル(不図示)を備え、管路洗浄の際には、このテーブルを参照し、各可変絞り弁毎に通常の診療時に設定された開度に対応する流量に基づき、前記薬液供給手段13から薬液混合希釈手段11への薬液量の供給制御がなされる。そして、図3に示すタイムチャートに基づき、各インスツルメント3〜8及びコップ給水栓9とこれらに関連する給水管路の洗浄及びすすぎ洗浄(工程S1〜S3)がなされる。実際の管路洗浄の際には、これら可変絞り弁を全て全開として洗浄を実施しても良く、これによって、洗浄時間の短縮が図られる。
図8及び図9におけるその他の構成は、図1及び図2と同様であるから、共通部分に同一の符号を付し、ここではその説明を割愛する。
【0042】
次に図10〜図13を参照してスピットン部分の他の実施形態について説明する。図10(a)(b)(c)において、スピットン2の胴部2aに形成された空洞部2dには、支持板10gに支持された洗浄水受タンク10が傾動自在に収納されている。洗浄水受タンク10の前面壁部を兼ねる支持板10gは、空洞部2dの開口下辺部に枢軸10gaを介し回動可能に取付けられ、この支持板10gの背面に洗浄水受タンク10が一体的に固設されている。また、支持板10gの前面には取手10gbが設けられている。図10(b)の収納状態では、この支持板10gが胴部2aの外壁の一部をなすことを示している。この収納状態から、取手10gbを引っ張り支持板10gを枢軸10gaを支点として傾動させると、図10(a)及び(c)に示すように天板部10bが診療台側に露出する。従って、天板部10bに形成された複数の保持孔10c…に、各種インスツルメント3〜8の先側を差込保持させれば、上記と同様にインスツルメント及び関連管路の洗浄作業を実施することができる。タンク本体10a内に溜まった洗浄排液は、該タンク本体10aに接続されたフレキシブルチューブからなる配水管10e及び排水管路61を経て装置外(前記排水先60・・図1参照)に排出される。
【0043】
図11及び図12(a)(b)において、スピットン2の胴部2aに形成された空洞部2dには、洗浄水受タンク10がベースン2bの支柱を兼ねた排水管路2fの廻りに水平旋回可能(図11の矢印参照)に設置されている。洗浄水受タンク10が図12(b)のように収納位置にあるときは、該洗浄水受タンク10の外壁が胴部2aの外壁の一部をなす。図12(a)のように、洗浄水受タンク10を排水管路2fの廻りに水平旋回させると、天板部10bが診療台1側に露出し、該天板部10bに形成された保持孔10cに各種インスツルメント3〜8の先側を差込保持させることができる。従って、この状態で上記と同様に管路の洗浄作業を実施することができる。スピットン2の排水管路2fで洗浄水受タンク10内を貫通する部分には枝管2hが設けられている。この枝管2hは、タンク本体10a内に臨み、タンク本体10a内の排液は該枝管2hから排水管路2fに排出される。該枝管2hには逆止弁2iが取付けられ、ベースン2bからの排液がタンク本体10aに流入することを防止している。
尚、この枝管2h及び逆止弁2iによらず、上記と同様のフレキシブルチューブをタンク本体10aに接続して、タンク本体10aの排液の排出をおこなうようになすことも可能であることは言うまでもない。
【0044】
図13において、洗浄水受タンク10には、インスツルメント3〜8を区別的に差込装着し得る保持孔10ca〜10cfと、バキュームシリンジ及びサライバエジェクタ(不図示)を夫々差込装着し得る保持孔10cg、10chとが形成されている。ここに、保持孔10ca、10cbは夫々エアタービンハドピース3,4用、保持孔10cはマイクロモータハンドピース5用、保持孔10cdは超音波スケーラ6用、保持孔10ce,10cfはそれぞれスリーウェイシリンジ7,8用とされ、各インスツルメント3〜8の形状特性に応じて各保持孔10ca〜10cfに連なるガイド凹部の形状が設定されており、これにより各インスツルメントの保持安定性が図られている。また、各保持孔10ca〜10chの近傍には、図示のように、対応するインスツルメントを指し示す略称が刻印等により付されている。
【0045】
図13に示す洗浄水受タンク10は、スピットン2における胴部2aの空洞部2d内に設置されており、診療台1(図6参照)に仰臥する患者の頭部側の胴部2aの側壁部には開口部2jが形成されている。この開口部2jには開閉自在な開閉扉2eが取付けられており、該開閉扉2eを開けると、前記各保持孔10ca〜10chが露見されるよう構成されている。洗浄水受タンク10とスピットン2の胴部2a内における排水系との関係は、前記と同様に構成され、従って、各保持孔10ca〜10cfにインスツルメント3〜8を差込装着させることによって、前記と同様に給水管路洗浄を実施することができる。また、保持孔10cg、10chに不図示のバキュームシリンジ及びサライバエジェクタを夫々差込装着することによって、洗浄水受タンク10内に溜った管路洗浄水を吸引させ、バキュームシリンジ及びサライバエジェクタとこれらに関連するバキューム管路を洗浄することができる。
【0046】
尚、前記実施形態では、歯科用診療装置に本発明に係る給水管路洗浄装置を適用した例について述べたが、耳鼻科用或いは産婦人科用等の診療装置にも適用することができる。また、図4では薬液ボトル及びその保持部を概念的に示したが、実際の設計上はこれと異なる構造になることは言うまでもない。そして、薬液ボトルの着脱機構も図例のものに限定されるものではない。更に、インスツルメントとして、エアタービンハンドピース、マイクロモータハンドピース、超音波スケーラ及びスリーウェイシリンジを例示したが、これらに限定されず、或いはこれらの一部であっても良い。スケーラとしては、超音波式スケーラ以外のスケーラであっても良い。また、本装置で使用する薬液としては、過酸化水素水や次亜塩素酸ナトリウムだけでなく、これらと同等の殺菌消毒効果のある薬液であれば、同様に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の給水管路洗浄装置の一実施形態を示す配管系統図である。
【図2】同給水管路洗浄装置の制御ブロック図である。
【図3】同給水管路洗浄装置による洗浄工程のタイムチャート図である。
【図4】(a)(b)は同給水管路洗浄装置に用いられる薬液供給手段の一実施形態を示す概念図であり(a)は薬液ボトルの装着前の状態を、(b)は装着した状態を夫々示す。
【図5】(a)(b)は同薬液供給手段に用いられる薬液ポンプの一実施形態の断面図であり、(a)(b)はその動作状態を示す。
【図6】同給水管路洗浄装置を用いた歯科用診療装置の斜視図である。
【図7】(a)は同歯科用診療装置におけるスピットン部分の別角度から見た斜視図であり、(b)は同スピットン部分の断面図である。
【図8】他の実施形態の給水管路洗浄装置の配管系統図である。
【図9】同給水管路洗浄装置の制御ブロック図である。
【図10】(a)(b)(c)はスピットン部分の他の実施形態を示し(a)は斜視図、(b)(c)はその使用状態の部分破断側面図を示す。
【図11】他の実施形態のスピットン部分を備えた歯科用診療装置の斜視図である。
【図12】(a)(b)は同歯科用診療装置におけるスピットン部分の平面図及び縦断面図である。
【図13】更に他の実施形態のスピットン部分の斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 歯科用診療台
2 スピットン
3〜8 歯科用インスツルメント(診療器具)
9 コップ給水栓(コップ給水部、診療器具)
10 洗浄水受タンク
11 薬液混合希釈手段
12 流量計(給水量検出手段)
13 薬液供給手段
14 薬液ボトル
15 薬液ポンプ
16 制御手段
18 管路洗浄スイッチ
21 薬液量検出手段
22 保持部
23 薬液配管
31 主給水管路(給水管路)
32〜38 分岐給水管路(給水管路)
32b〜35b 可変絞り弁(給水量検出手段)
36a,37a 可変絞り弁(給水量検出手段)
38a 可変絞り弁(給水量検出手段)
61 排水管路
A 歯科用診療装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診療器具と、該診療器具に診療用水を給水する為の給水管路と、該給水管路に薬液を供給する薬液供給手段と、前記給水管路の途中に設けられ前記薬液供給手段からの薬液と診療用水とを混合する薬液混合希釈手段と、制御手段とを含む給水管路洗浄装置であって、
前記診療器具における給水量を検出する給水量検出手段を備え、前記制御手段は、前記薬液供給手段から薬液混合希釈手段に薬液を供給させ、且つ、前記給水量検出手段による給水量検出情報に基づき、前記薬液混合希釈手段における薬液混合希釈水を所定の薬液濃度に保つよう前記薬液供給手段からの薬液供給量を制御することを特徴とする給水管路洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の給水管路洗浄装置において、
前記給水量検出手段が、前記薬液混合希釈手段の下流側の給水管路に設けられた流量計であることを特徴とする給水管路洗浄装置。
【請求項3】
請求項1に記載の給水管路洗浄装置において、
前記給水量検出手段が、前記各診療器具に対応して設けられた可変絞り弁手段であることを特徴とする給水管路洗浄装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の給水管路洗浄装置において、
前記薬液供給手段は、薬液ボトルと、該薬液ボトルを保持する保持部と、該保持部及び前記薬液混合希釈手段間を接続する薬液配管と、該薬液配管の途中に設けられた薬液ポンプとよりなることを特徴とする給水管路洗浄装置。
【請求項5】
請求項4に記載の給水管路洗浄装置において、
前記薬液ボトルは、前記保持部に対して着脱自在に装着されるよう構成されていることを特徴とする給水管路洗浄装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の給水管路洗浄装置において、
前記保持部は、設置された薬液ボトル内の薬液量を検出する検出する薬液量検出手段を備え、前記制御手段には報知手段が更に接続され、該制御手段は、前記薬液量検出手段からの薬液なし乃至は少の検出情報に基づき、前記報知手段をしてその旨の報知を行わせるよう制御することを特徴とする給水管路洗浄装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の給水管路洗浄装置において、
更に管路洗浄スイッチを備え、
前記管路洗浄スイッチは、診療時の薬液低濃度モードから、洗浄時の薬液高濃度モードに切り換えるものであって、前記制御手段は、該管路洗浄スイッチがオン操作されたときには、当該高濃度モードに基づき前記薬液混合希釈水を前記所定の薬液濃度に保つよう薬液供給手段からの薬液供給量を制御することを特徴とする給水管路洗浄装置。
【請求項8】
請求項7に記載の給水管路洗浄装置において、
前記制御手段は、前記管路洗浄スイッチのオン操作による高濃度モードでの管路洗浄の後、前記低濃度モードによる薬液混合希釈水又は薬液を含まない前期診療用水を用いて前記給水管路内を洗浄するよう前記薬液供給手段からの薬液供給量を制御することを特徴とする給水管路洗浄装置。
【請求項9】
患者が着座乃至仰臥する歯科用診療台と、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の給水管路洗浄装置とを備え、前記診療器具が歯科診療器具であって、該歯科診療器具が前記歯科用診療台に付設されていることを特徴とする歯科用診療装置。
【請求項10】
請求項9に記載の歯科用診療装置において、
前記歯科診療器具が、複数の歯科用インスツルメントと、スピットンに備えられたコップ給水部とからなり、前記スピットンは、前記インスツルメントの先端を差込保持し、排水管路に通じる洗浄水受タンクを備えていることを特徴とする歯科用診療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−104655(P2010−104655A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281165(P2008−281165)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000138185)株式会社モリタ製作所 (173)
【Fターム(参考)】