説明

給湯制御システム

【課題】 給湯器の運転が不要な状況にあることを迅速に把握して消費エネルギを低減させることが可能な給湯制御システムを提供する。
【解決手段】 給水路15のお湯を循環させる給湯器1についての給湯制御システム100であって、循環流路10と、熱交換器30と、循環ポンプ20と、予測センサ群61〜64と、制御部とを備えている。循環流路10は、給水路15の少なくとも一部を含んで循環する流路を構成する。熱交換器30は、循環流路10内の少なくとも一部においてお湯を対象として熱の供給を行う。循環ポンプ20は、循環流路10にお湯を循環させる。予測センサ群61〜64は、お湯が利用される状況に関連する所定のデータを取得する。コントローラ40は、予測センサ群61〜64による取得データに基づいて循環ポンプ20の運転を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯制御システム、特に、給水路のお湯を循環させる給湯器についての給湯制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保温用循環流路を有し、循環ポンプによってこの保温用循環流路内にお湯を循環させておくことにより、給湯栓を開くと即時にお湯が得られるように設計されている即出湯給湯器が知られている。
この即出湯給湯器には、即出湯運転モードの切り換え部が設けられており、即出湯運転モードが選択されると、給湯栓が開けられたことを検出した場合に循環ポンプの運転を停止させ、ガス圧を制御することにより給湯器の出湯温度を調整する。また、給湯栓が閉じられたことを検出した場合に循環ポンプを駆動させ、熱交換器によって加熱されたお湯を循環流路において循環させる。これにより、給湯栓が閉じられた状況においても循環流路内に加熱されたお湯が流れている状態を維持することができ、給湯栓を開くと即時に温湯を得ることができる。
【0003】
これに対して、以下の特許文献1に示すように、給湯栓の開閉頻度を検出して、使用状況に応じて消費エネルギを低減させる即出給湯器が提案されている。この即出給湯器では、タイマー等によって給湯使用頻度を検出して、使用頻度が低い場合には循環させるお湯の設定温度を低くして加熱運転を弱めたり停止するように制御している。また、使用頻度がさらに低い場合には、循環ポンプによるお湯の循環を停止し、ポンプの駆動に要する消費エネルギを低減させている。
【特許文献1】特開平5−149567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に記載の即出給湯器では、タイマー等によって使用頻度を検出して、循環させるお湯の温度制御、循環状態の制御を行っているが、予め定められた所定時間が経過しない限り、運転状態が持続されてしまう。このため、既に給湯器の運転が不要な状況となっている場合であっても、所定時間が経過するまでは、無駄なエネルギを消費してしまうことがある。
【0005】
本発明は上述した点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、給湯器の運転が不要な状況にあることを迅速に把握して消費エネルギを低減させることが可能な給湯制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る給湯制御システムは、給水路のお湯を循環させる給湯器についての給湯制御システムであって、循環流路と、熱供給部と、循環ポンプと、データ取得部と、制御部とを備えている。循環流路は、給水路の少なくとも一部を含んで循環する流路を構成する。熱供給部は、循環流路内の少なくとも一部においてお湯を対象として熱の供給を行う。循環ポンプは、循環流路にお湯を循環させる。データ取得部は、お湯が利用される状況に関連する所定のデータを取得する。制御部は、データ取得部による取得データに基づいて循環ポンプの運転を停止させる。なお、ここでの所定のデータとしては、例えば、家の照明が全て消えたか否かを検出するためのデータや、ドアノブに設けられた外出検出データ等が含まれる。
【0007】
従来の給湯制御システムでは、給湯器の運転が不要な状況となっている場合であっても、所定時間が経過するまでは、無駄な保温循環運転を持続しており、エネルギを無駄に消費することがある。
これに対して第1発明の給湯制御システムでは、ユーザがお湯を使用しない状態では、循環流路を流れるお湯は熱供給部によって熱を受けて循環し、保温循環運転を行うことができる。また、制御部は、ユーザがお湯の利用する可能性がある状況や可能性がない状況を、データ取得部による取得データの検出によって予め察知できる。そして、制御部は、予め得られる取得データに基づいてユーザがお湯を使用しない状況にあることを予測して、循環ポンプの運転を停止する制御を行うことができる、
これにより、従来のように所定時間の経過を待つまでもなく、ユーザの状況を予測して保温循環運転の予測停止制御を行うことができる。これにより、お湯が利用されないと予測される場合には、従来よりも迅速に循環ポンプの運転を停止できる。したがって、保温循環運転によって必要な時に迅速にお湯を得ることができるとともに、ユーザにとって給湯器の保温循環運転が不要な状況にあることを迅速に把握し、消費エネルギを低減させることが可能になる。
【0008】
なお、例えば、所定のデータとして、家の照明が全て消えたか否かを検出するためのデータや、ドアノブに設けられた外出検出データ等を取得する場合には、ユーザが就寝していることや、ユーザが不在であること等によりしばらくの間お湯が利用されないことを予測することが可能になる。これにより、循環運転を予測によって従来よりも迅速に停止させ、エネルギロスを低減させることが可能になる。
【0009】
第2発明に係る給湯制御システムは、第1発明の給湯制御システムであって、制御部は、データ取得部による取得データに基づいて循環ポンプの運転を開始させる。
従来の即出給湯器では、タイマー等によって使用頻度を検出して、循環させる水の温度制御、保温循環状態の制御を行っているが、使用される各回毎のお湯の即出所要時間の短縮化には限界がある。特に、使用頻度が低い状況において循環させる水の温度を高温に維持する制御を行わずに、水が冷めてしまっている場合には、お湯が得られるのに要する所要時間はよりいっそう長くなってしまう。
【0010】
これに対して第2発明の給湯制御システムでは、制御部は、循環ポンプの運転を開始させることについても取得データから予測して制御を行う。すなわち、制御部は、取得データに基づいてユーザがお湯を利用する可能性がある状態を把握し、お湯が利用されることを予測して、予め循環ポンプの運転を開始させる。
このため、ユーザがお湯を利用する状況を予測することで、予め加熱されたお湯を用意しておくことができ、従来の給湯制御システムよりもお湯が得られるまで水を出し続ける無駄を低減することが可能になる。そして、無駄な消費水量を削減することが可能になる。
【0011】
また、ユーザはお湯の利用を望む場合において迅速な出湯が可能になるため、利便性を向上できる。
なお、ここでは、給水路が短く設計されているほど、給水路内に存在する十分に加熱されていない水は少量となる。これにより、出湯をより迅速に行うことが可能になる。
【0012】
第3発明に係る給湯制御システムは、第1発明または第2発明の給湯制御システムであって、データ取得部は、所定温度以上のお湯が利用される状況に関する所定のデータを取得する。
ここでは、給湯器のあらゆる利用のうち、冷たい水の利用状況についてのデータではなく、所定温度以上のお湯が使われたという状況のデータを厳選して取得する。そして、厳選して取得されたデータに基づいて予測制御が行われる。
これにより、水ではなくお湯が利用される状況をより適格に予想して、お湯の準備をする予測制御が可能になり、省エネ効果をさらに向上できる。
【0013】
第4発明に係る給湯制御システムは、第1発明から第3発明のいずれかの給湯制御システムであって、制御部は、データ取得部による取得データに基づいて熱供給部の運転を停止および/または開始させるように制御する。なお、例えば、熱供給部は、熱交換器と、この熱交換器を加熱するヒータ等によって構成され、ヒータの駆動が制御されることで熱供給機能を発揮するもの等が含まれる。
【0014】
ここでは、制御部は、循環ポンプだけでなく、熱供給部についても取得データに基づいて予測による運転の停止制御や予測による運転の開始制御を行う。このため、制御部が、ユーザがお湯を利用しない状況になったことを予測した場合には、迅速に熱供給部の運転が停止される。
これにより、熱供給部において消費されるエネルギをいっそう低減させることが可能になる。
【0015】
第5発明に係る給湯制御システムは、第1発明から第4発明のいずれかの給湯制御システムであって、第1記憶部と、利用状況把握部と、第2記憶部と、学習部とをさらに備えている。第1記憶部は、データ取得部による取得データに応じた制御内容データを互いに関連付けた対応制御データを予め格納させている。利用状況把握部は、所定温度以上のお湯が利用される状況を検出する。第2記憶部は、データ取得部の取得データと、利用状況把握部によって検出されたデータと、を対応付けた履歴データを格納する。学習部は、第2記憶部に格納された複数の履歴データに基づいて相互に関連するパターンデータを抽出し、第1記憶部の対応制御データに反映させる。なお、所定温度以上のお湯が利用される状況としては、例えば、使用されるお湯の温度、または、温水蛇口の使用の有無等によって把握される状況等が含まれる。
【0016】
ここでは、第1記憶部に格納されている取得データに応じた制御内容データに基づいて制御部が行う予測制御と、その予測制御が行われた場合において利用状況把握部により把握される実際のユーザによる利用状況と、を対比させて履歴データとして第2記憶部に格納している。そして、学習部は、第2記憶部に格納されている履歴データに基づいて、複数の各履歴データ間において相互に関連するパターンデータを抽出する。このため、第1記憶部において取得データに応じて格納されている制御内容データについて、実際に必要とされている制御との一致、相違を把握できる。そして、学習部により得られるパターンデータは、第1記憶部に格納されている対応制御データに反映されて、新たな修正データに更新される。
【0017】
これにより、給湯器の予測制御の精度を向上させることが可能になる。
また、予測制御の精度を向上させることにより、ユーザがお湯を利用する状況か否かについてより適切に予測されたデータに基づいて制御できるため、さらなる省エネ化を図ることも可能になる。
【0018】
第6発明に係る給湯制御システムは、第1発明から第5発明のいずれかの給湯制御システムであって、データ取得部は、給水路近傍に設置されているトイレの利用の有無を検出する。
ここでは、制御部は、データ取得部によってトイレの利用を検出した場合に、ユーザがトイレの利用後に手洗い等でお湯を利用することを予測して、予めお湯の準備を開始させる制御を行う。
これにより、ユーザは、より迅速にお湯を利用することができ、利便性が向上される。
【0019】
第7発明に係る給湯制御システムは、第1発明から第6発明のいずれかの給湯制御システムであって、データ取得部は、給水路近傍の空間における人間の動きを検出する。
ここでは、データ取得部が人間の動きを検出することにより、例えば、所定時間動きが無い場合は就寝したもしくは外出したと等判断して、しばらくの間はお湯が利用されないということを予測した制御を行う。一方、人間の動きがあった場合には、人間が起床したもしくは帰宅したと等判断して、予めお湯の準備を開始させておく制御を行う。
これにより、ユーザは何ら意識することなく省エネ効果を得ることが可能になる。また、同時に、より迅速にお湯を利用できるようになるという利便性の向上が図られる。
【発明の効果】
【0020】
第1発明に係る給湯制御システムでは、保温循環運転によって必要な時に迅速にお湯を得ることができるとともに、ユーザにとって給湯器の保温循環運転が不要な状況にあることを迅速に把握し、消費エネルギを低減させることが可能になる。
第2発明に係る給湯制御システムでは、ユーザがお湯を利用する状況を予測することで、予め加熱されたお湯を用意しておくことができ、従来の給湯制御システムよりもお湯が得られるまで水を出し続ける無駄を低減することが可能になる。
【0021】
第3発明に係る給湯制御システムでは、水ではなくお湯が利用される状況をより適格に予想して、お湯の準備をする予測制御が可能になり、省エネ効果をさらに向上できる。
第4発明に係る給湯制御システムでは、熱供給部において消費されるエネルギをいっそう低減させることが可能になる。
第5発明に係る給湯制御システムでは、給湯器の予測制御の精度を向上させることが可能になる。
【0022】
第6発明に係る給湯制御システムでは、ユーザは、より迅速にお湯を利用することができ、利便性が向上される。
第7発明に係る給湯制御システムでは、ユーザは何ら意識することなく省エネ効果を得ることが可能になる。また、同時に、より迅速にお湯を利用できるようになるという利便性の向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<発明の概略>
本発明は、給水路のお湯を循環させる給湯器についての給湯制御システムを提供する。本発明の給湯制御システムでは、必要な時にお湯が迅速に得られる熱供給部を利用した循環ポンプによる保温循環運転を前提として、この即出湯機能を保持しつつ、ユーザの状況による予測制御により省エネ化を図っている。すなわち、お湯の利用状況を把握するデータを取得して、保温循環運転が不要な状況になったことをいち早く把握して、循環ポンプの駆動を迅速に予測停止させる。本発明は、これにより、保温循環運転によって必要な時は迅速にお湯が得られるとともに、ユーザにとって保温循環運転が不要である場合には省エネ効果が得られるという点に特徴がある。また、運転を停止させる制御とは逆に、お湯が必要になることを予測して循環ポンプの運転を再開させ、迅速にお湯が得られるようにして、ユーザの利便性を向上させた点にも特徴がある。
【0024】
以下、本発明の給湯制御システム100について、具体的に説明する。
<給湯制御システム100の概略構成>
図1に、本発明の一実施の形態が採用された給湯制御システム100の概略構成を示す。また、図2に給湯制御システム100のブロック構成図を示す。
この給湯制御システム100は、マンションやアパートなどの集合住宅に設けられ、集合住宅の各戸に設置される給湯器1に対して温水を供給するためのシステムであり、保温循環運転を行うことで必要な時に迅速にお湯が得られる給湯制御システムである。
【0025】
給湯制御システム100は、主として、給湯器1と、管理サーバ70と、予測センサ群60と、利用状況把握部80とが互いにネットワーク90を介して接続されることにより構成されている。
給湯器1は、図1および図2に示すように、集合住宅の各戸に設けられ、風呂や台所などに温水を供給するための機器であり、主として、循環流路10と、給水路15と、循環ポンプ20と、熱交換器30と、熱源器35、冷媒配管36と、コントローラ40とを有している。
【0026】
循環流路10は、熱交換器30と蛇口11との間において、保温循環運転を行う場合に温水を循環させるための流路である。循環流路10の流路の壁面は、断熱性の高い部材で構成されており、循環運転時におけるお湯を効果的に保温することで、省エネ効果が得られるようにしている。ここでは、蛇口11は、温水蛇口12と冷水蛇口13とを有しており、加熱されたお湯と水道水とを混合させてユーザの望む温度の温水が得られるように、必要に応じて開度を調整できる混合弁(図示せず)が設けられている。
【0027】
なお、ここでは、循環部分と蛇口11との間に位置する給水路15は、できるだけ短くなるように設計されている。これにより、給水路15内に存在している十分に加熱されていない水を少なくする構造となり、蛇口11を開いた後にお湯が迅速に得られる。
循環ポンプ20は、循環流路内に設けられおり、運転状態においては循環流路内にお湯を循環させ、さらに温水を温水蛇口12まで搬送する。この循環ポンプ20は、コントローラ40によって予測制御され、必要な時だけ駆動するように制御されて省エネ運転が行われる。また、コントローラ40によって、予測制御される場合に、ユーザの行動を検出して、ユーザにお湯が利用される前から予め循環流路10内を循環させるように制御されたりする。
【0028】
熱交換器30は、保温循環運転時には、ユーザが望む時にいつでも即時にお湯が得られるように、循環流路10内を流れるお湯を加熱している。ここでのお湯の加熱を行うための熱は、熱源器35から冷媒配管36を介して受け取る。コントローラ40によって予測制御される点については、上記循環ポンプ20と同様である。
熱源器35は、集合住宅の屋上や地下室などに設けられ、冷媒配管36を介して熱交換器30に接続されている。この熱源器35には、図示は省略するが、圧縮機、熱交換器等が設けられており、これらの機器が連動することにより高圧高温の冷媒を発生させている。この冷媒が、冷媒配管を介して、熱交換器30に供給され、水を加熱させている。
【0029】
熱交換器30に接続される熱源器35と、熱源器35は、冷媒配管内に冷媒を循環させることにより、熱交換器30に熱エネルギを供給する。熱交換器30は、供給された熱エネルギを循環流路10を流れる水に対して供給することで温水を循環させる。
コントローラ40は、CPU41、ROM42、RAM43および制御データ44を有している。制御データ44には、取得データ類型D1と、これに対応する制御内容データD2(デフォルトとしての制御内容データ)とが互いに関連付けられて格納されている。制御データ44は、コントローラ40が行う循環ポンプ20や熱源器35の予測制御において、CPU41、ROM42、RAM43等が協働して用いられる。コントローラ40は、予測センサ群60からの取得データを受付けると、制御データ44において該当する取得データ類型D1を特定し、この取得データ類型D1に対応する制御内容データD2に基づいて循環ポンプ20や熱源器35を運転させたり、停止させたりする予測制御を行う。
【0030】
管理サーバ70は、給湯器1の制御管理を行う装置でありネットワーク90を介して給湯器1のコントローラ40と接続されており、対応制御データ71と、履歴データ72と、パターンデータ抽出部73とを有している。
対応制御データ71には、後述する予測センサ群60が取得するデータ毎に応じた制御データ(コントローラ40の制御内容データD2と同内容)が格納されている。
【0031】
履歴データ72には、対応制御データ71の制御内容データD2と、その制御内容データD2によって実際に予測制御が行われた場合において利用状況把握部80により把握されるユーザによる実際の冷水・温水の利用状況と、を対比させて格納している。
パターンデータ抽出部73は、履歴データ72として格納されているデータに基づいて、複数の各履歴のデータ間において相互に関連するパターンデータを抽出する。
【0032】
そして、パターンデータ抽出部73により得られるパターンデータは、対応制御データ71に反映させて新たな修正データに更新する。また、パターンデータ抽出部73は、ネットワーク90を介してコントローラ40の制御データ44のデフォルトとしての制御内容データD2を、新しい内容の制御内容データD2に更新させる。
予測センサ群60は、給湯器1の予測制御を行うために必要となるデータを取得するセンサ群であり、トイレ使用センサ61と、照明センサ62と、ドアノブセンサ63と、人感知センサ64とを有している。
【0033】
トイレ使用センサ61は、トイレの近傍にユーザが近づいたことを把握する赤外線センサである。
照明センサ62は、家の照明が全て消えたか否かを検出するセンサである。
ドアノブセンサ63は、ドアノブの部屋側(外出検出)と外側(帰宅検出)とロック部分(外出検出)とに設けられて接触を検出するセンサであり、ユーザの外出や帰宅を検出するセンサである。
【0034】
人感知センサ64は、台所等の水周りに設けられ、人間の存在の有無を検出するセンサである。これらにより、ユーザの行動を予め把握して、コントローラ40による予測制御のためのデータとして利用される。
利用状況把握部80は、蛇口11の温水蛇口12部分に設けられた温水蛇口センサ81と、冷水蛇口13部分に設けられた冷水蛇口センサ82とを有している。温水蛇口センサ81は、温水蛇口12が利用されたことを検出する。冷水蛇口センサ82は、冷水蛇口13が利用されたことを検出する。これらのデータは、ネットワーク90を介して、予測制御と共に履歴データ72として格納され、よりユーザの仕様に適した予測制御ができるようにパターンデータ抽出部73によるデータ解析に用いられる。
【0035】
<デフォルト出湯予測アルゴリズム>
以下、図3および図4を参照しつつ、デフォルト出湯アルゴリズムについて説明する。
ここでは、パターンデータの抽出が反映されていない、コントローラ40による、制御データ44の制御内容データD2に基づいた基本的な制御について説明する。
例えば、図3に示すように、保温循環運転が停止されている状況における制御アルゴリズムは、ステップS1において、コントローラ40では、トイレ使用センサ61からのデータの取得があったか否かを判断する。ここで、トイレ使用センサ61からのデータの取得があった場合には、ステップS2に移行して、循環ポンプ20や熱源器35の運転を開始する予測制御を行う。これにより、トイレの利用を終えたユーザは、温水蛇口12から迅速にお湯を得ることができ、利便性のよい給湯システムを実現している。
【0036】
また、例えば、図4に示すように、保温循環運転が行われている状況における制御アルゴリズムは、ステップS3において、コントローラ40では、照明センサ62や人感知センサ64からの取得データの有無によって、家の中に人が入るか否かを判断する。ここで、家の中に人がいると判断された場合には、ステップS4に移行する。ステップS4では、ドアノブセンサ63からの取得データによって、ドアノブの内側からの検出データの取得やロックされたことについてのデータの取得があったか否かが判断される。ここで、データの取得がないと判断されれば、ステップS3にもどる。一方、データの取得があったと判断された場合には、ステップS5に移行する。ステップS5では、循環ポンプ20や熱源器35の運転を停止する予測制御を行う。これにより、外出するユーザは、給湯器1の電源を落とす等の作業を特に意識することなく、循環ポンプ20や熱源器35の予測停止による省エネ効果が得られる。
【0037】
<パターン抽出アルゴリズム>
以下、図5(a)および図5(b)を参照しながら、パターン抽出アルゴリズムについて説明する。
ここでは、例えば、図5(a)に示すように、予測センサ郡60から得られるデータに対応する制御内容データD2に基づいてお湯の準備をする予測制御をした場合において、予測制御から所定時間内に、ユーザが温水蛇口12もしくは冷水蛇口13を開けたか否かを温水蛇口センサ81もしくは冷水蛇口センサ82の検出により把握する。具体的には、コントローラ40によって実行されている予測制御と、その際のユーザの利用状況と、を対応付けたユーザの行動パターンが反映されている履歴データ72を格納する。
【0038】
こうして得られたユーザの行動パターン(履歴データ72)は、コントローラ40の制御データ44のデフォルトの制御内容データD2を更新するために用いられる。
ここでは、図5(b)に示すように、ステップS6において、コントローラ40が、予測センサ郡60から取得されたデータに対応する更新された制御内容データD2を参酌することで、出湯が予測される状況にあるか否かを判断する。ここで、出湯が予測される場合には、ステップS7に移行する。ステップS7では、循環ポンプ20や熱源器35の運転を予め開始させる予測制御を行う。これにより、ユーザは、必要な時に迅速にお湯を利用することができるため、利便性が向上されている。
【0039】
<本実施形態の給湯制御システム100の特徴>
(1)
従来の給湯制御システムでは、保温循環運転によって有る程度お湯を迅速に提供できるようにしているが、温水蛇口を開けてから実際にお湯が出るまでにしばらくの間冷水が出続け、お湯が出るのを待たなければならないことがある。
【0040】
これに対して、本実施形態における給湯制御システム100では、ユーザがお湯を使用しない状態においては、保温循環運転が行われることによって循環流路10を流れるお湯は熱交換器30によって熱を受けて循環し、所定の温度に保つことができる。そして、循環しているお湯を温水蛇口81まで搬送するための給水路15は短く設計されている。これにより、次回、ユーザがお湯を利用しようとして蛇口を開ける際に、即時に出湯させることができる。
【0041】
(2)
また、従来の給湯制御システムでは、給湯器の運転が不要な状況となっている場合であっても、予め時間設定されたタイマーによって所定時間の経過を検知するまでは、無駄な保温循環運転を持続しており、エネルギを無駄に消費することがある。また、タイマーにおいて設定されたスケジュールと異なる行動をとった場合に、迅速にお湯が得られない。
【0042】
これに対して、本実施形態における給湯制御システム100では、コントローラ40は、予測センサ群50による取得データの検出によって、ユーザがお湯の利用する可能性がある状況や可能性がない状況について予め察知できる。そして、コントローラ40は、この予め取得される取得データに基づいて、制御データ44の該当する取得データ類型D1と対応付けて格納されている制御内容データD2に基づいて循環ポンプ20の循環予測制御および熱源器35の加熱予測制御を行うことができる。
【0043】
このため、予測センサ群60によりお湯が利用されない状況にあると予測された場合には、循環ポンプ20の循環予測制御および熱源器35の加熱予測制御をコントローラ40が迅速に停止する制御を行うことができる。これにより、従来のようにタイマーによる所定時間の経過を待つまでもなく、ユーザの状況を予測して保温循環運転を予測停止することができる。したがって、従来よりも迅速に循環ポンプの運転を停止できる。また、従来とは異なり、タイマーにスケジュールを設定する必要もなく、仮にスケジュールが変更されても迅速にお湯が得られる。
以上によって、保温循環運転が行われている状態ではユーザが必要とする時に迅速にお湯を得ることができるとともに、ユーザにとって保温循環運転が不要な状況にあることを迅速に把握し、消費エネルギのロスを低減させることができる。
【0044】
(3)
本実施形態における給湯制御システム100では、コントローラ40は、循環ポンプ20や熱源器35の運転を開始させることについて、予測センサ群60から得られるデータによって、制御データ44の該当する取得データD1に対応する制御内容データD2に基づいて予測制御を行う。すなわち、コントローラ40は、取得されるデータに基づいてユーザがお湯を利用する可能性がある状態を把握し、お湯が利用されることを予測して、予め循環ポンプ20や熱源器35の運転を開始させることができる。
【0045】
このため、ユーザがお湯を利用する状況を予測して、予め加熱されたお湯を準備しておくことができる。これにより、従来の給湯制御システムにおいて、お湯が出るまで冷水を出す必要が減少し、お湯が得られるまで水を出し続けるという無駄を低減できる。そして、無駄な消費水量を削減することが可能になる。また、ユーザはお湯の利用を望む時に迅速に出湯させることができる、お湯を利用する際の利便性が向上される。
なお、ここでは、給水路15が短く設計されているほど、給水路15内に存在する十分に加熱されていない水が少量となる。このため、出湯をより迅速に行うことができる。
【0046】
(4)
本実施形態における給湯制御システム100では、利用状況把握部80には冷水蛇口センサ82と温水蛇口センサ81とが設けられており、給湯器1のあらゆる利用状況のうち、冷たい水の利用状況についてのデータと、所定温度以上のお湯、温水が使われたという状況のデータとを区別しうる態様で取得する。そして、温水蛇口センサ81によって検出されたデータに基づいてお湯を準備する予測制御を行う。
【0047】
このため、水ではなくお湯が利用される状況をより適格に予想して、お湯が利用されるであろうと予想される状況の場合に限ってお湯の準備をする予測制御を行うことができる。これにより、蛇口が開けられるけれども、冷水しか利用されないような場合にまでお湯を予測準備してしまう制御を止めることができ、お湯の予測準備はお湯が利用されると予測される場合に限って行うことができる。
これにより、単に水が利用される場合においてお湯の準備に要するエネルギを削減でき、省エネ効果をさらに向上できる。
【0048】
(5)
本実施形態における給湯制御システム100では、管理サーバ70の対応制御データ71として格納されている予測センサ群により取得されるデータに応じた制御内容データD2と、その制御内容データD2による予測制御が行われた場合において利用状況把握部80により把握される実際のユーザによる冷水・温水の利用状況と、を対比させて管理サーバ70の履歴データ72として格納している。そして、管理サーバ70のパターンデータ抽出部73は、格納されている履歴データ72に基づいて、複数の各履歴のデータ間において相互に関連するパターンデータを抽出する。このため、予測センサ群40により取得されるデータに応じた制御内容データD2について、実際に必要とされている制御との一致、相違を把握できる。そして、パターンデータ抽出部73によりパターンデータが得られて、対応制御データ71に反映されて、新たな修正データに更新される。
【0049】
このようにして新たなデータに更新された対応制御データ71の内容は、ネットワーク90を介してコントローラ40の制御データ44の制御内容データD2に反映される。
これにより、コントローラ40は、新たに更新された制御内容データD2に基づいて予測制御を行うことができ、ユーザの状況に応じた予測制御の精度を向上できる。
また、予測制御の精度を向上させることにより、ユーザがお湯を利用する状況か否かについてより適切に予測されたデータに基づいて制御できるため、さらなる省エネ効果が得られる。
【0050】
(6)
本実施形態における給湯制御システム100では、コントローラ40は、予測センサ群60のトイレ使用センサ61の検出によってトイレが利用されたことを検出した場合に、ユーザが直後に手洗い等でお湯を利用するであろうと予測し、予めお湯の準備を開始させる制御を行う。これにより、ユーザは、より迅速にお湯を利用することができ、利便性が向上される。
【0051】
また、同様に、コントローラ40は、予測センサ群60の人感知センサ64が人の存否を検出することにより予測制御を行う。一方、照明センサ62が家の中の照明が点灯されたと検出した場合には、人間が起床したと判断して、予めお湯の準備を開始させておく制御を行う。また、ドアノブセンサ63については、ユーザの外出や帰宅を検出して、上述と同様の予測制御ができる。人感知センサ64も同様である。
これにより、ユーザは何ら意識することなく省エネ効果を得ることができる。また、同時に、より迅速にお湯を利用できるようになるという利便性の向上が図られる。
【0052】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
上記実施形態における給湯制御システム100では、予測センサ群60においてトイレ使用センサ61と、照明センサ62と、ドアノブセンサ63と、人感知センサ64とが設けられている場合を例に挙げて説明した。
しかし、本発明はこれに限られるものではなく、予測センサ群60においては、カメラ等の人動検知センサによって画像解析を行うことでユーザの行動を把握するセンサであってもよい。この場合、画像内の物の動きにより人間の動きを推定して予想制御を行う。この人動検知センサは、例えば、ユーザが動いていないことにより就寝と推定することや、ユーザが動いていることにより起床していることを推定することに用いられる。
【0054】
また、エアコンの利用状況の有無によって人の在・不在を判断するセンサ等であってもよい。例えば、照明センサによって全ての照明が消えていることが検出された場合には、お湯が利用されない状況であると予想することができる。また、エアコンが利用されていない場合についても、お湯が利用されない状況であると予測することができる。
したがって、これらのセンサによっても、上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、給湯器の運転が不要な状況にあることを迅速に把握して消費エネルギを低減させることが可能になるため、給水路のお湯を循環させる給湯器についての給湯制御システムへの適用が特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施形態が採用される給湯制御システムの概略構成図。
【図2】給湯制御システムのブロック構成図。
【図3】循環停止時のデフォルト給湯制御のフローチャート。
【図4】循環時のデフォルト給湯制御のフローチャート。
【図5】パターン抽出アリゴリズムの給湯制御のフローチャート。
【符号の説明】
【0057】
1 給湯器
10 循環流路
11 蛇口
12 温水蛇口
13 冷水蛇口
20 循環ポンプ
30 熱交換器(熱供給部)
35 熱源器(熱供給部)
36 冷媒配管
40 コントローラ(制御部)
44 制御データ(制御部)
60 予測センサ群(データ取得部)
61 トイレ使用センサ
62 照明センサ
63 ドアノブセンサ
64 人感知センサ
70 管理サーバ
71 対応制御データ(第1記憶部)
72 履歴データ(第2記憶部)
73 パターンデータ抽出部(学習部)
80 利用状況把握部
81 温水蛇口センサ
82 冷水蛇口センサ
100 給湯制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水路(15)のお湯を循環させる給湯器(1)についての給湯制御システム(100)であって、
前記給水路(15)の少なくとも一部を含んでお湯を循環させる循環流路(10)と、
前記循環流路(10)内の少なくとも一部においてお湯を対象として熱の供給を行う熱供給部(30)と、
前記循環流路(10)にお湯を循環させる循環ポンプ(20)と、
お湯が利用される状況に関連する所定のデータを取得するデータ取得部(60)と、
前記データ取得部(60)による取得データに基づいて前記循環ポンプ(20)の運転を停止させる制御部(40)と、
を備えた給湯制御システム(100)。
【請求項2】
前記制御部(40)は、前記データ取得部(60)による取得データに基づいて前記循環ポンプ(20)の運転を開始させる、
請求項1に記載の給湯制御システム(100)。
【請求項3】
前記データ取得部(60)は、所定温度以上のお湯が利用される状況に関する所定のデータを取得する、
請求項1または2に記載の給湯制御システム(100)。
【請求項4】
前記制御部(40)は、前記データ取得部(60)による取得データに基づいて前記熱供給部(30)の運転を停止および/または開始させるように制御する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の給湯制御システム(100)。
【請求項5】
前記データ取得部(60)による取得データに応じた制御内容データを互いに関連付けた対応制御データを予め格納させた第1記憶部(71)と、
所定温度以上のお湯が利用される状況を検出する利用状況把握部(80)と、
前記データ取得部(60)の取得データと、前記利用状況把握部(80)によって検出されたデータと、を対応付けた履歴データを格納する第2記憶部(72)と、
前記第2記憶部(72)に格納された複数の履歴データに基づいて相互に関連するパターンデータを抽出し、前記第1記憶部(71)の前記対応制御データに反映させる学習部(73)と、
をさらに備えた、
請求項1から4のいずれか1項に記載の給湯制御システム(100)。
【請求項6】
前記データ取得部(61)は、前記給水路(15)近傍に設置されているトイレの利用の有無を検出する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の給湯制御システム(100)。
【請求項7】
前記データ取得部(64)は、前記給水路(15)近傍の空間における人間の動きを検出する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の給湯制御システム(100)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−17128(P2007−17128A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−201638(P2005−201638)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】