説明

給湯機、および給湯機の空気抜き方法

【課題】加熱手段とタンクとを連絡する配管に止水弁を取り付ける必要のない給湯機を提供する。
【解決手段】給湯機1では、三方弁38によって、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態、タンクと戻り管との間に水を流通させ且つタンクと排水管との間の水の流通を遮断する第2状態、及びタンクと排水管との間に水を流通させ且つタンクと戻り管との間の水の流通を遮断する第3状態のいずれかに切り替えられる。その結果、従来の給湯機で必要であった2つの止水弁を廃止することができ、施工作業の手間が軽減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱手段で加熱された水をタンクに貯える給湯機に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯機の加熱手段として使用されるヒートポンプユニットと加熱された水が貯えられるタンクとは、往き管と戻り管と呼ばれる連絡配管によって連絡されている。往き管には、ポンプが設けられており、さらに加熱手段とポンプとの間に止水弁が設けられている(例えば、特許文献1参照)。止水弁は、タンク及び配管に進入した空気を抜く作業のとき、空気抜き栓と共に開閉操作されるが、給湯機が正規に使用されているときは開状態のまま放置される。
【特許文献1】特開2004−20075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような止水弁は給湯機据付時に取り付けられるので、作業手間が掛かり、コストアップの要因にもなっている。
【0004】
本発明の課題は、加熱手段とタンクとを連絡する連絡配管に止水弁を取り付ける手間を解消した給湯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係る給湯機は、加熱手段で加熱された水をタンクに貯える給湯機であって、戻り管と、排水管と、第1三方弁とを備えている。戻り管は、加熱手段から戻る水を、配管継手を経由させてタンク下部へ導く。排水管は、タンクの水を排水口へ導く。第1三方弁は、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態、タンクと戻り管との間に水を流通させ且つタンクと排水管との間の水の流通を遮断する第2状態、及びタンクと排水管との間に水を流通させ且つタンクと戻り管との間の水の流通を遮断する第3状態のいずれかに切り替えられる。
【0006】
従来、給湯機の据付時、戻り管に止水弁が取り付けられていた。しかし、第1発明に係る給湯機では、第1三方弁が、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態、タンクと戻り管との間に水を流通させ且つタンクと排水管との間の水の流通を遮断する第2状態、及びタンクと排水管との間に水を流通させ且つタンクと戻り管との間の水の流通を遮断する第3状態のいずれかに切り替えられるので、従来の止水弁を廃止することができ、その止水弁の取り付けに要していた手間が不要になる。
【0007】
第2発明に係る給湯機は、第1発明に係る給湯機であって、往き管と、第2三方弁とをさらに備えている。往き管は、タンクの水をポンプによって加熱手段へ向わせる。第2三方弁は、戻り管上に配置され、配管継手からタンクに向う水をタンク上部に通じる分岐管へ流れるように切り替える。ポンプは、戻り管のうち配管継手から第2三方弁を経てタンクの底部に接続される配管の最上部よりも低い位置に配置されている。
【0008】
この給湯機では、給湯機の施工時にタンク内へ注水する際、配管内に存在していた空気はポンプよりも高い位置へ移動するので、ポンプ内が確実に水で満たされ、ポンプ動作時のエア噛みが防止される。
【0009】
第3発明に係る給湯機の空気抜き方法は、第1発明又は第2発明に係る給湯機、の空気抜き方法であって、給湯機が、空気抜き栓をさらに備えている。空気抜き栓は、タンクから水と共に移動してきた空気を放出する。タンクが空水から満水になったときに、空気抜き栓から空気混じりの水を放出させる空気抜き操作が行われる。その空気抜き操作の前に、第1三方弁が第1状態に切り替えられる。
【0010】
従来、戻り管に止水弁が取り付けられ、空気抜き操作の前にその止水弁を閉じる作業を必要とした。しかし、第3発明に係る給湯機の空気抜き方法では、第1三方弁の1回の操作によって、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態に切り替えられるので、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作は確実に行われる。
【0011】
第4発明に係る給湯機の空気抜き方法は、第1発明に係る給湯機、の空気抜き方法であって、給湯機が、第2三方弁と、制御部と、空気抜き栓とをさらに備えている。第2三方弁は、戻り管上に配置され、配管継手からタンクに向う水を、タンク上部に通じる分岐管へ流れるように切り替える。制御部は、第2三方弁を制御する。空気抜き栓は、タンクから水と共に移動してきた空気を放出する。タンクが空水から満水になり、且つ制御部が第2三方弁を介して分岐管へ水を流通させている状態のときに、空気抜き栓から空気混じりの水を放出させる空気抜き操作が行われる。その空気抜き操作の前に、第1三方弁が第1状態に切り替えられる。
【0012】
従来、戻り管に止水弁が取り付けられ、空気抜き操作の前にその止水弁を閉じる作業を必要とした。しかし、第4発明に係る給湯機の空気抜き方法では、第1三方弁の1回の操作によって、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態に切り替えられるので、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作は確実に行われる。また、空気抜き操作時、加熱手段から戻る水をタンク上部に戻すので空気が抜け易くなる。
【0013】
第5発明に係る給湯機の空気抜き方法は、第2発明に係る給湯機、の空気抜き方法であって、給湯機が、制御部と、空気抜き栓とをさらに備えている。制御部は、第2三方弁を制御する。空気抜き栓は、タンクから水と共に移動してきた空気を放出する。タンクが空水から満水になり、且つ制御部が第2三方弁を介して分岐管へ水を流通させている状態のときに、空気抜き栓から空気混じりの水を放出させる空気抜き操作が行われる。その空気抜き操作の前に、第1三方弁が第1状態に切り替えられる。
【0014】
従来、戻り管に止水弁が取り付けられ、空気抜き操作の前にその止水弁を閉じる作業を必要とした。しかし、第5発明に係る給湯機の空気抜き方法では、第1三方弁の1回の操作によって、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態に切り替えられるので、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作は確実に行われる。また、空気抜き操作時、加熱手段から戻る水をタンク上部に戻すので空気が抜け易くなる。
【0015】
第6発明に係る給湯機の空気抜き方法は、第1発明又は第2発明に係る給湯機、の空気抜き方法であって、給湯機が、空気抜き栓をさらに備えている。空気抜き栓は、タンクから水と共に移動してきた空気を放出する。また、空気抜き栓は、水側空気抜き栓と湯側空気抜き栓とを含んでいる。水側空気抜き栓は、加熱手段の水の入口側に設けられる。湯側空気抜き栓は、加熱手段の水の出口側に設けられる。タンクが空水から満水になったときに、空気抜き栓から空気混じりの水を放出させる空気抜き操作が行われる。空気抜き操作は、第1空気抜き操作と第2空気抜き操作とを含んでいる。第1空気抜き操作は、水側空気抜き栓及び湯側空気抜き栓の両方から空気混じりの水を放出させる操作である。第2空気抜き操作は、第1空気抜き操作の後に、湯側空気抜き栓だけから空気混じりの水を放出させる操作である。第2空気抜き操作の前に、第1三方弁が前記第1状態に切り替えられる。
【0016】
従来、戻り管に止水弁が取り付けられ、空気抜き操作の前に止水弁を閉じる作業を必要とした。しかし、第6発明に係る給湯機の空気抜き方法では、第1三方弁の1回の操作によって、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態に切り替えられるので、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作は確実に行われる。
【0017】
第7発明に係る給湯機の空気抜き方法は、第3発明から第6発明のいずれか1つに係る給湯機の空気抜き方法であって、空気抜き操作の後、第1三方弁が第2状態に切り替えられる。
【0018】
従来、戻り管に止水弁が取り付けられ、空気抜き操作の前に止水弁を閉じ空気抜き操作の後に止水弁を開ける作業を必要とした。しかし、第7発明に係る給湯機の空気抜き方法では、第1三方弁の1回の操作によって、タンクと戻り管との間に水を流通させ且つタンクと排水管との間の水の流通を遮断する第2状態に切り替えられるので、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作後の作業が支障なく行われる。
【発明の効果】
【0019】
第1発明に係る給湯機では、従来の止水弁を廃止することができ、その止水弁の取り付けに要していた手間が不要になる。
【0020】
第2発明に係る給湯機では、給湯機の施工時にタンク内へ注水する際、配管内に存在していた空気はポンプよりも高い位置へ移動するので、ポンプ内が確実に水で満たされ、ポンプ動作時のエア噛みが防止される。
【0021】
第3発明に係る給湯機の空気抜き方法では、第1三方弁の1回の操作によって、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態に切り替えられるので、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作は確実に行われる。
【0022】
第4発明又は第5発明に係る給湯機の空気抜き方法では、第1三方弁の1回の操作によって、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態に切り替えられるので、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作は確実に行われる。また、空気抜き操作時、加熱手段から戻る水をタンク上部に戻すので空気が抜け易くなる。
【0023】
第6発明に係る給湯機の空気抜き方法では、第1三方弁の1回の操作によって、タンクと戻り管および排水管との間の水の流通を遮断する第1状態に切り替えられるので、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作は確実に行われる。
【0024】
第7発明に係る給湯機の空気抜き方法では、第1三方弁の1回の操作によって、タンクと戻り管との間に水を流通させ且つタンクと排水管との間の水の流通を遮断する第2状態に切り替えられるので、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作後の作業が支障なく行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0026】
〔第1実施形態〕
<給湯機1の構成>
図1は本発明の第1実施形態に係る給湯機の外観斜視図である。図1おいて、給湯機1は、ヒートポンプユニット(加熱手段)2と貯湯装置3とによって構成され、ヒートポンプユニット2のケーシング120内には、蒸気圧縮式の冷凍回路が収納され、貯湯装置3のケーシング130内には、タンク31が収納されている。
【0027】
ヒートポンプユニット2と貯湯装置3とは、水が流通できるように往き管36及び戻り管37によって連絡されている。タンク31の水は、往き管36を通ってヒートポンプユニット2へ進入する。ヒートポンプユニット2で加熱された水は、戻り管37を通ってタンク31に戻る。
【0028】
ヒートポンプユニット2と往き管36との接続部には、水側空気抜き栓27aが設けれ、ヒートポンプユニット2と戻り管37との接続部には、湯側空気抜き栓27bが設けられている。便宜上、水側空気抜き栓27a及び湯側空気抜き栓27bを総称して空気抜き栓27と呼ぶ。空気抜き栓27は、タンク31が空状態から満水状態になったとき、タンク31及び配管に進入した空気を抜くために使用される。
【0029】
貯湯装置3の下部には、三方弁38の操作レバー38aと排水口40が設けられている。図1を正面から視て、作業者が操作レバー38aを右側へ向けることによって、タンク31内の水が排水口40へ向う。作業者が操作レバー38aを左側へ向けることによって、タンク31内の水が戻り管37へ向う。そして、作業者が操作レバー38aを真下に向けることによって、タンク31内の水は、戻り管37及び排水口40のどちらへも向わない状態になる。
【0030】
貯湯装置3の上部には、逃し弁75の操作レバー75aが設けられている。作業者はタンク31内に水を給水するときは、操作レバー75aを上に向けて、逃し弁75を開状態とする。タンク31内が満水になり、タンク31から溢れた水は、逃し弁75を通って排水ホース140へ流れる。
【0031】
図2は第1実施形態に係る給湯機の概略構成図である。図2において、ヒートポンプユニット2は、マフラー21a、圧縮機21、水熱交換器22内の冷媒管22a、減圧手段としての膨張弁23、及び空気熱交換器24が、冷媒配管25によって環状に接続された蒸気圧縮式の冷媒回路20を有する。
【0032】
また、冷媒回路20には、水熱交換器22から出る高圧高温の冷媒と、空気熱交換器24から出る低圧低温の冷媒との間で熱交換を行うため、液ガス熱交換器26が配置されている。具体的には、水熱交換器22と膨張弁23とを連結する冷媒通路と、空気熱交換器24と圧縮機21とを連結する冷媒通路との間で熱交換が行われる。
【0033】
貯湯装置3は、タンク31、水熱交換器22内の水管22b及び水循環ポンプ32が、水循環配管34によって環状に接続された水循環回路30を有する。制御部4は、ヒートポンプユニット2と貯湯装置3を運転制御する。
【0034】
<貯湯装置3>
図3は、第1実施形態に係る給湯機の貯湯装置と負荷とを連絡する配管の回路図である。なお、ここで述べる負荷とは、給湯と風呂を指す。給湯管71は、タンク31の頭部と給湯混合弁73とを連絡する。給湯管71は第1給湯分岐管71a及び第2給湯分岐管71bを有しており、第1給湯分岐管71aは、給湯管71とお湯はり混合弁74とを連絡し、第2給湯分岐管71bは、給湯管71と逃し弁75を連絡している。
【0035】
給水管72は、水供給源と給湯混合弁73を連絡する。給水管72は、第1給水分岐管72a及び第2給水分岐管72bを有しており、第1給水分岐管72aは、給水管72とお湯はり混合弁74とを連絡し、第2給水分岐管72bは、給水管72とタンク31の底部とを連絡している。なお、第1給水分岐管72aと第2給水分岐管72bとの上流には減圧逆止弁76が接続されている。また、第2給水分岐管72bのタンク31から離れた位置には、水温センサ41が設けられており、水温センサ41が、タンク31から温度影響を受けないように配慮されている。
【0036】
湯循環配管77は、タンク31の頭部とタンク31の底部を連絡しており、途中には追焚熱交換器78と循環ポンプ79が接続されている。
【0037】
第2給湯管81は、給湯混合弁73と給湯口82とを連絡し、途中に給湯水量センサ42aが配置されている。第3給湯管83は、お湯はり混合弁74と風呂水循環配管91とを連絡しており、途中に複合水弁84が配置されている。複合水弁84は、お湯はり電磁弁84aと、排水弁84bと、お湯はり水量センサ42bとで構成されている。
【0038】
風呂水循環配管91は、浴槽92から出て浴槽92に戻り、途中に風呂水循環ポンプ93が接続されている。なお、追焚熱交換器78において、風呂水循環配管91と湯循環配管77との間で熱交換が行われる。
【0039】
往き管36は、タンク31の底部とヒートポンプユニット2とを連絡している。補助戻り管35a及び戻り管37は、ヒートポンプユニット2とタンク31の底部とを連絡している。補助戻り管35aと戻り管37とは、三方弁38を介して接続されている。つまり、補助戻り管35aは三方弁38の入口Aに接続され、戻り管37は三方弁38の出口Cに接続される。
【0040】
戻り管37の途中には、戻り三方弁52が設けられている。戻り三方弁52は、制御部4によって制御される。戻り分岐管37aは、戻り三方弁52とタンク31の頭部とを連絡している。制御部4は、戻り三方弁52を介して戻り管37内の水をタンク31の頭部へ流す。
【0041】
補助排水管35b及び排水管39とは、タンク31の底部と排水口40とを連絡している。補助排水管35bと排水管39とは、三方弁38を介して接続されている。つまり、補助排水管35bは三方弁38の入口Aに接続され、排水管39は三方弁38の出口Bに接続される。補助戻り管35aと補助排水管35bとは、三方弁38の入口Aに接続されるので1つの配管で共有してもよい。本実施形態では1本の共通管35によって共有している。
【0042】
タンク31の側壁には、頭部から底部へ向かい一定間隔をおいて残湯量検知手段としての温度センサ44a〜44eが設けられている。タンク31の各高さ位置の湯温を温度センサ44a〜44eで検知することによって湯の温度と残湯量が算出される。なお、タンク31は、側部全周、頭部および底部を断熱材で覆われている。
【0043】
<三方弁38の操作と水の流れ方向>
ここでは、図1と図3を参照しながら、三方弁38の操作レバー38aの操作によって、水がどのように流れるのかを説明する。操作レバー38a(図1参照)を真下に向けると、三方弁38(図3参照)の入口Aは、出口B及び出口Cのいずれにも繋がらず、タンク31内の水は共通管35内で停止した状態となる。この状態を第1状態と呼ぶ。
【0044】
操作レバー38a(図1参照)を左側へ向けることによって、三方弁38(図3参照)の入口Aと出口Cとが繋がり、タンク31の底部、共通管35及び戻り管37が繋がる。戻り管37の途中には戻り三方弁52が設けられている。タンク31の底部、共通管35、戻り管37及びヒートポンプユニット2が、水が流通できるように繋がった状態を第2状態と呼ぶ。
【0045】
操作レバー38a(図1参照)を右側へ向けることによって、三方弁38(図3参照)の入口Aと出口Bとが繋がり、タンク31内の水は、共通管35から排水管39へ流れる。排水管39内の水は、排水口40を通って外部へ流出する。この状態を第3状態と呼ぶ。
【0046】
<空気抜き作業>
給湯機1を据付けたときは、空気抜き作業をしなければならない。図4は、本発明の第1実施形態に係る給湯機の空気抜き作業のフローであり、以下、図4を参照しながら空気抜き作業について説明する。作業者は、S1からS12までの12の作業手順にしたがって、空気抜き作業を行う。ここで言う作業者には、給湯機1の据付作業者、一般使用者が含まれる。
【0047】
作業者は、先ず、作業手順S1として、三方弁38の操作レバー38aを左に向けて、タンク31と戻り管37との間で水が流通できる状態にする。
【0048】
次に、作業手順S2として、逃し弁75の操作レバー75aを上に向け、逃し弁75を開状態とする。作業手順S3として、給水管72からタンク31の底部へ給水する。作業手順S4として、タンク31が満水になったか否かを判断する。
【0049】
水はタンク31の底部から頭部にむかって上昇してくるので、タンク31が満水になって溢れ出た水は、逃し弁75から排水ホース140を経て外部に流出する。それゆえ、作業者は、排水ホース140の出口から水が連続して出ることを確認し、タンク31が満水になったと判断する。作業者は、排水ホース140の出口から水が連続して出ることを確認した後に、作業手順S5として、逃し弁75の操作レバー75aを下に向けて、逃し弁75を閉状態にする。
【0050】
次に、作業手順S6として、水側空気抜き栓27a及び湯側空気抜き栓27bを開けて水を出す。作業手順S7として、水側空気抜き栓27a及び湯側空気抜き栓27bから、連続的に水がでることを確認する。タンク31内及び配管内に空気が混じっているときは、水側空気抜き栓27a及び湯側空気抜き栓27bから空気が混じった水が出る。作業手順S7は、第1空気抜き操作と呼ばれる。
【0051】
作業者は、水側空気抜き栓27a及び湯側空気抜き栓27bから連続的に水がでることを確認した後に、作業手順S8として、水側空気抜き栓27aを閉じ、湯側空気抜き栓27bだけが開いた状態にする。作業手順S9として、三方弁38の操作レバー38aを真下に向けて、タンク31の水が戻り管37及び排水管39のいずれにも流れないようにする。
【0052】
次に、作業手順S10として、湯側空気抜き栓27bから、連続的に水がでることを確認する。タンク31内及び配管内にまだ空気が混じっているときは、湯側空気抜き栓27bから空気が混じった水が出る。作業手順S10は、第2空気抜き操作と呼ばれる。
【0053】
作業者は、湯側空気抜き栓27bから連続的に水がでることを確認した後に、作業手順S11として、湯側空気抜き栓27bを閉じる。最後に、作業手順S12として、三方弁38の操作レバー38aを左に向けて、タンク31と戻り管37との間で水が流通できる状態にする。
【0054】
<排水作業>
給湯機1を長期間使用しないときは、タンク31内の水を全て排出しておくことが好ましい。図5は、本発明の一実施形態に係る給湯機の排水作業のフローであり、以下、図5を参照しながら排水作業について説明する。作業者は、S21からS24までの4つの作業手順にしたがって、排水作業を行う。ここで言う作業者には、給湯機1の据付作業者、一般使用者が含まれる。
【0055】
作業者は、先ず、作業手順S21として、逃し弁75の操作レバー75aを上に向け、逃し弁75を開状態として、タンク31内が負圧になるのを防ぐ。次に、作業手順S22として、三方弁38の操作レバー38aを右に向けて、タンク31の水が排水管39へ流れる状態にし、排水口40からタンク31内の水を出す。
【0056】
作業手順S23として、排水口40から水が出なくなり排水が完了したことを確認する。作業者は、排水が完了したことを確認した後に、作業手順S24として、三方弁38の操作レバー38aを左に向けて、三方弁38の入口Aと出口Cとを繋ぐ。
【0057】
<特徴>
(1)
給湯機1では、三方弁38によって、タンク31と戻り管37および排水管39との間の水の流通を遮断する第1状態、タンク31と戻り管37との間に水を流通させ且つタンク31と排水管39との間の水の流通を遮断する第2状態、及びタンク31と排水管39との間に水を流通させ且つタンク31と戻り管37との間の水の流通を遮断する第3状態のいずれかに切り替えられる。その結果、従来の給湯機に必要であった止水弁を廃止することができ、その止水弁の取り付けに要していた手間が不要になる。
【0058】
(2)
給湯機1では、タンク31が空水から満水になったときに、作業者によって、第1空気抜き操作と第2空気抜き操作とが行われる。第1空気抜き操作は、水側空気抜き栓27a及び湯側空気抜き栓27bの両方から空気混じりの水を放出させる操作である。第2空気抜き操作は、第1空気抜き操作の後に、湯側空気抜き栓27bだけから空気混じりの水を放出させる操作である。作業者は、第2空気抜き操作の前に、三方弁38を操作して第1状態に切り替え、第2空気抜き操作の後に、三方弁38を操作して第2状態に切り替える。その結果、止水弁が廃止された状態であっても空気抜き操作は確実に行われる。
【0059】
<空気抜き作業の変形例>
上記実施形態では、空気抜き操作として、第1空気抜き操作と第2空気抜き操作とが行われているが、空気抜き操作を1回にして手間を減らすことができる。図6は、本実施形態に係る給湯機の空気抜き作業の変形例のフローであり、以下、図6を参照しながら空気抜き作業について説明する。作業者は、S101からS111までの9つの作業手順にしたがって、空気抜き作業を行う。
【0060】
作業者は、先ず、作業手順S101として、三方弁38の操作レバー38aを左に向けて、タンク31と戻り管37との間で水が流通できる状態にする。
【0061】
次に、作業手順S102として、逃し弁75の操作レバー75aを上に向け、逃し弁75を開状態とする。作業手順S103として、給水管72からタンク31の底部へ給水する。作業手順S104として、タンク31が満水になったか否かを判断する。
【0062】
水はタンク31の底部から頭部にむかって上昇してくるので、タンク31が満水になって溢れ出た水は、逃し弁75から排水ホース140を経て外部に流出する。それゆえ、作業者は、排水ホース140の出口から水が連続して出ることを確認し、タンク31が満水になったと判断する。
【0063】
作業者は、排水ホース140の出口から水が連続して出ることを確認した後に、作業手順S105として、逃し弁75の操作レバー75aを下に向けて、逃し弁75を閉状態にする。
【0064】
作業者は、作業手順S106として、制御部4を操作して、戻り三方弁52を戻り分岐管37a側へ強制的に切り替える。次に、作業手順S107として、湯側空気抜き栓27bを開けて水を出す。そして、作業手順S108として、三方弁38の操作レバー38aを真下に向けて、タンク31の水が戻り管37及び排水管39のいずれにも流れないようにする。
【0065】
作業者は、作業手順S109として、湯側空気抜き栓27bから、連続的に水がでることを確認する。タンク31内及び配管内にまだ空気が混じっているときは、湯側空気抜き栓27bから空気が混じった水が出る。作業手順S109は、空気抜き操作と呼ばれる。
【0066】
作業者は、湯側空気抜き栓27bから連続的に水がでることを確認した後に、作業手順S110として、湯側空気抜き栓27bを閉じる。最後に、作業手順S111として、三方弁38の操作レバー38aを左に向けて、タンク31と戻り管37との間で水が流通できる状態にする。
【0067】
<空気抜き作業の変形例の特徴>
給湯機1では、タンク31が空水状態から満水状態になり、且つ制御部4が戻り三方弁52を介して戻り分岐管37aへ水を流通させている状態のときに、作業者は、湯側空気抜き栓27bから空気混じりの水を放出させる空気抜き操作を行なう。その結果、さらに空気が抜け易くなる。
【0068】
〔第2実施形態〕
上記空気抜き作業の説明で記載したように、給湯機1の据付時、水は、給水管72からタンク31の底部へ供給され満水となる。第2実施形態に係る給湯機1では、水がタンク31に供給される際に、水循環ポンプ32内に空気が滞留しないように、水循環ポンプ32は、戻り管継手28bから戻り三方弁52を経てタンク31の底部に接続される配管の最上部よりも低い位置に配置されている。以下、図面を参照しながら、水循環ポンプ32が上記配管の最上部よりも高い位置にある場合と、上記配管の最上部よりも低い位置にある場合との違いについて説明する。
【0069】
図7(a)は、戻り管継手から戻り三方弁を経てタンクの底部に接続される配管の最上部より高い位置にポンプがある給湯機の概略構成図である。(b)は、戻り管継手から戻り三方弁を経てタンクの底部に接続される配管の最上部より低い位置にポンプがある給湯機の概略構成図である。図7(a),(b)において、図中の配管の黒塗部分は水の存在を意味し、配管の白塗部分は空気の存在を意味する。なお、第2実施形態の構成部品は第1実施形態と同様であるので、構成部品には第1実施形態と同様の符号を使用し、説明を省略する。
【0070】
図1、図3、図7(a)及び(b)において、往き管36のうち、貯湯装置3内にある管と貯湯装置3外にある管とは往き管継手28aによって連結されている。また、戻り管37のうち、貯湯装置3内にある管と貯湯装置3外にある管とは戻り管継手28bによって連結されている。また、給湯機1の据付時、戻り三方弁52は、水をタンク31の底部へ戻す側に開いている。
【0071】
図7(a)に示すように、仮に、水循環ポンプ32が、戻り管継手28bから戻り三方弁52を経てタンク31の底部に接続される配管の最上部より高い位置にある場合、給水管72からタンク31の底部に供給された水は、タンク31の底部から往き管36及び戻り管37に流入し、ヒートポンプユニット2に向かう。給水前に往き管36及び戻り管37に存在していた空気は、往き管36及び戻り管37から流れてくる水に押され、循環路の最上位置にある水循環ポンプ32に集まる。その結果、水循環ポンプ32は空気に挟まれた状態となる。タンク31の水位が上昇し満水になっても、水循環ポンプ32の両端は同じ水圧であるので空気は移動できない。この状態で水循環ポンプ32が動作したとき、水循環ポンプ32は空気を噛んでいるので正常に送水することができず、水が配管内を循環することができない。
【0072】
しかし、第2実施形態に係る給湯機1では、図7(b)に示すように、水循環ポンプ32が、戻り管継手28bから戻り三方弁52を経てタンク31の底部に接続される配管の最上部より低い位置にある場合、給水管72からタンク31の底部に供給された水は、タンク31の底部から往き管36及び戻り管37に流入し、ヒートポンプユニット2に向かう。給水前に往き管36及び戻り管37に存在していた空気は、往き管36及び戻り管37から流れてくる水に押され、循環路の最上位置にある戻り三方弁52に集まる。その結果、戻り三方弁52は空気に挟まれた状態となる。タンク31の水位が上昇し満水になっても、戻り三方弁52の両端は同じ水圧であるので空気は移動できない。この状態で水循環ポンプ32が動作したとき、水循環ポンプ32は空気を噛んでいないので、正常に送水することができる。その結果、水が配管内を十分に循環するので、空気が水に押され、タンク31の底部を経てタンク31の頭部まで移動し、最終的に大気中へ抜ける。
【0073】
仮に、空気抜き作業を行った後、配管内に空気が残っていた場合でも、第2実施形態のように水循環ポンプ32に空気が集まらないようにすることによって、空気は最終的に大気中へ抜ける。
【0074】
<第2実施形態の特徴>
給湯機1では、水循環ポンプ32が、戻り管継手28bから戻り三方弁52を経てタンク31の底部に接続される配管の最上部よりも低い位置に配置されている。その結果、施工時、タンク31内に水を供給する際、水循環ポンプ32内に確実に水が入るので、ポンプのエア噛みが防止される。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上のように、本発明によれば、タンクと加熱手段との間で水を循環させるタイプの給湯機に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の第1実施形態に係る給湯機の外観斜視図。
【図2】給湯機の概略構成図。
【図3】給湯機の貯湯装置と負荷とを連絡する配管の回路図。
【図4】給湯機の空気抜き作業のフロー。
【図5】給湯機の排水作業のフロー。
【図6】給湯機の空気抜き作業の変形例のフロー。
【図7】(a)戻り管継手から戻り三方弁を経てタンクの底部に接続される配管の最上部より高い位置にポンプがある給湯機の概略構成図。(b)戻り管継手から戻り三方弁を経てタンクの底部に接続される配管の最上部より低い位置にポンプがある給湯機の概略構成図。
【符号の説明】
【0077】
1 給湯機
2 ヒートポンプユニット(加熱手段)
4 制御部
27 空気抜き栓
27a 水側空気抜き栓
27b 湯側空気抜き栓
28b 戻り管継手
31 タンク
32 水循環ポンプ
35a 補助戻り管(戻り管)
35b 補助排水管(排水管)
36 往き管
37 戻り管
37a 戻り分岐管
38 三方弁(第1三方弁)
39 排水管
40 排水口
52 戻り三方弁(第2三方弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段(2)で加熱された水をタンク(31)に貯える給湯機であって、
前記加熱手段(2)から戻る水を、配管継手(28b)を経由させて前記タンク(31)下部へ導く戻り管(35a,37)と、
前記タンク(31)の水を排水口(40)へ導く排水管(35b,39)と、
前記タンク(31)と前記戻り管(37)および前記排水管(39)との間の水の流通を遮断する第1状態、前記タンク(31)と前記戻り管(37)との間に水を流通させ且つ前記タンク(31)と前記排水管(39)との間の水の流通を遮断する第2状態、及び前記タンク(31)と前記排水管(39)との間に水を流通させ且つ前記タンク(31)と前記戻り管(37)との間の水の流通を遮断する第3状態のいずれかに切り替えられる第1三方弁(38)と、
を備えた、
給湯機(1)。
【請求項2】
前記タンク(31)の水をポンプ(32)によって前記加熱手段(2)へ向わせる往き管(36)と、
前記戻り管(37)上に配置され、前記配管継手(28b)から前記タンク(31)に向う水を、前記タンク(31)上部に通じる分岐管(37a)へ流れるように切り替える第2三方弁(52)と、
をさらに備え、
前記ポンプ(32)は、前記戻り管(37)のうち前記配管継手(28b)から前記第2三方弁(52)を経て前記タンク(31)の底部に接続される配管の最上部よりも低い位置に配置されている、
請求項1に記載の給湯機(1)。
【請求項3】
前記タンク(31)から水と共に移動してきた空気を放出するための空気抜き栓(27)をさらに備えた請求項1又は請求項2に記載の給湯機(1)、
の空気抜き方法であって、
前記タンク(31)が空水から満水になったときに、前記空気抜き栓(27)から空気混じりの水を放出させる空気抜き操作が行われ、
前記空気抜き操作の前に、前記第1三方弁(38)が前記第1状態に切り替えられる、
給湯機(1)の空気抜き方法。
【請求項4】
前記戻り管(37)上に配置され、前記配管継手(28b)から前記タンク(31)に向う水を、前記タンク(31)上部に通じる分岐管(37a)へ流れるように切り替える第2三方弁(52)と、
前記第2三方弁(52)を制御する制御部(4)と、
前記タンク(31)から水と共に移動してきた空気を放出するための空気抜き栓(27)と、
をさらに備えた請求項1に記載の給湯機(1)、
の空気抜き方法であって、
前記タンク(31)が空水から満水になり、且つ前記制御部(4)が前記第2三方弁(52)を介して前記分岐管(37a)へ水を流通させている状態のときに、前記空気抜き栓(27)から空気混じりの水を放出させる空気抜き操作が行われ、
前記空気抜き操作の前に、前記第1三方弁(38)が前記第1状態に切り替えられる、
給湯機(1)の空気抜き方法。
【請求項5】
前記第2三方弁(52)を制御する制御部(4)と、
前記タンク(31)から水と共に移動してきた空気を放出するための空気抜き栓(27)と、
をさらに備えた請求項2に記載の給湯機(1)、
の空気抜き方法であって、
前記タンク(31)が空水から満水になり、且つ前記制御部(4)が前記第2三方弁(52)を介して前記分岐管(37a)へ水を流通させている状態のときに、前記空気抜き栓(27)から空気混じりの水を放出させる空気抜き操作が行われ、
前記空気抜き操作の前に、前記第1三方弁(38)が前記第1状態に切り替えられる、
給湯機(1)の空気抜き方法。
【請求項6】
前記タンク(31)から水と共に移動してきた空気を放出するための空気抜き栓(27)をさらに備えた請求項1又は請求項2に記載の給湯機(1)、
の空気抜き方法であって、
前記空気抜き栓(27)は、
前記加熱手段(2)の水の入口側に設けられる水側空気抜き栓(27a)と、
前記加熱手段(2)の水の出口側に設けられる湯側空気抜き栓(27b)と、
を含み、
前記タンク(31)が空水から満水になったときに、前記空気抜き栓(27)から空気混じりの水を放出させる空気抜き操作が行われ、
前記空気抜き操作は、
前記水側空気抜き栓(27a)及び前記湯側空気抜き栓(27b)の両方から空気混じりの水を放出させる第1空気抜き操作と、
前記第1空気抜き操作の後に、前記湯側空気抜き栓(27b)だけから空気混じりの水を放出させる第2空気抜き操作と、
を含み、
前記第2空気抜き操作の前に、前記第1三方弁(38)が前記第1状態に切り替えられる、
給湯機(1)の空気抜き方法。
【請求項7】
前記空気抜き操作の後、前記第1三方弁(38)が前記第2状態に切り替えられる、
請求項3から請求項6のいずれか1項に記載の給湯機(1)の空気抜き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−156495(P2010−156495A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334597(P2008−334597)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)